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月夜の猫-BL小説です 春立つ風に12 BL小説 良太が頭の中で瞬時にざっと思い描いたところで、男が徐にサングラスを取った。 「急いでいたとはいえ大変失礼いたしました、マダム、お怪我はありませんか?」 丁寧な日本語でそう言って笑みを浮かべたその男を、良太も、老齢の女性も手を口元に充てたまま、食い入るように
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)11までアップしました BL小説 青山プロダクションとしては初めての一大イベント、社員とその家族のための慰労会が無事終わり、皆が喜んでくれたのが何よりだったのだが、帰りがけにそろそろ風邪を引く頃だから気を付けてと母に念をおされたにもかかわらず、良太
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に11 BL小説 わらわらと寄ってきた猫たちをひとしきり撫でてやりながら、こうして猫たちに会おうと思えば会えるのも有難い、と思う。 さっきより幾分シックなスーツとタイに着替え、ツイードのコートを羽織る。 「ま、いっか」 鏡の中の髪型はいじっても大して変わらない。 ましてや童顔も。
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤と良太)5までアップしました BL小説 青山プロダクションとしては初めての一大イベント、社員とその家族のための慰労会が無事終わり、皆が喜んでくれたのが何よりだったのだが、帰りがけにそろそろ風邪を引く頃だから気を付けてと母に念をおされたにもかかわらず
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に5 BL小説 革のハーフコートを羽織り、ビュービューと冷たい風が吹き抜ける通りを歩きながら、工藤は良太が入社してから何度か寝込んだり倒れたり、入院したりとこれだけ世話を焼かせるやつはいないぞ、などと心の中でブツブツと文句を言った。 だが、工藤自身、実は良太の世話を焼きたがっ
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に2 BL小説 「急ぎの仕事とかあるの?」 「まあ、全部が急ぎと言えば急ぎだけど……、行ってきます。下手してインフルとかだったらシャレにならないし」 ということで良太には行きつけになっている裏の通りにある内科クリニックに駆け込んだのだった。 受付ギリではあったが、良太の顔見知りの
月夜の猫-BL小説です 寒に入り64 BL小説 工藤は珍しく朝もゆっくりしていた。 良太はマグカップにコーヒーを入れて、新聞を広げている工藤の手の傍に置いた。 「俺、朝飯買ってきます」 猫たちにご飯をやってから、良太は部屋を出た。 ここのところ食料品を調達する機会はなかったから、冷蔵庫には古くなったバターや
月夜の猫-BL小説です 寒に入り62 BL小説 フッとほくそ笑み、工藤は「川岸さんには脱帽だ」と続けた。 「撮り直しカット、ほぼ終了した。足を向けて寝られないな」 「すごい集中力ですね、川岸さん!」 「短い時間でいかにやり遂げるかってのを体現してくれているからな、ああいうベテランになると」 炬燵なるものは、
月夜の猫-BL小説です 寒に入り61 BL小説 冷蔵庫にはビールとポカリくらいしか入っていない。 だが、一度気が抜けるともう動きたくない。 そのうち絨毯の上に寝転がると、良太はいつの間にか寝入ってしまった。 突然、ヒヤリ、としたものが頬に触れ、「ひえああっ!」と意味不明な悲鳴を上げて飛び起きた時には既に九時を回
月夜の猫-BL小説です 寒に入り58 BL小説 みんなの笑い声に良太の顔に自然と笑みが浮かぶ。 何かあった時のために、工藤から台本を預かってコピーしてあったのが、今回役に立った。 以前、やはり配役の一人が事故って降板することになった時、代役のために緊急に台本が必要になり大わらわだったのだ。 良太は川岸の車を先導
月夜の猫-BL小説です 寒に入り55 BL小説 付き合っている相手なら。 沢村と佐々木はちゃんと付き合っているから、それでいいのだ。 けれど、工藤と自分の関係って付き合っているっていえるんだろうか、と考え始めると、良太はぐるぐると思考の渦に埋没してしまうのだ。 良太はしばらくタブレットに向かい、家族単位で渡す
月夜の猫-BL小説です 寒に入り54 BL小説 「あいつも今は、俺の関わってる番組にだけは出てくれるし、色々あるんだよ」 「フーン? けど社員さんも所属の俳優さんも、何かみんないい人たちだね」 「うーん、会社自体小さいし、社員も少ないから、文字通りアットホームだけど、その代わり、それぞれが自分の仕事しないと
月夜の猫-BL小説です 寒に入り52 BL小説 「ハハハ……、もうああいうのはごめんです」 「でもさ、『田園』のキャスティング、結局良太ちゃんの意見でほぼメイン決まっちゃったんだよね」 宇都宮が仕事の内々のことを言い出したので良太は焦る。 「宇都宮さん、ちょっとこんなところで」 「まあ、いいじゃない?
月夜の猫-BL小説です 寒に入り49 BL小説 「あ、こちら小笠原祐二のお母さま、ゆかりさんです。こちらはうちの小杉のお嬢さんで美琴さん、あと鈴木さんと亜弓です」 「今日はわざわざありがとうございます、皆さん」 良太の紹介に宇都宮はニコニコと応対する。 「まあ、ホンモノは百倍も凛々しくてらっしゃいますわ。うち
月夜の猫-BL小説です 寒に入り46 BL小説 「ああ、また小林センセのドラマ?」 「秋あたりな。良太が竹野をオファーしたんで、何とか記念番組って頭につけることにしたのさ」 ひとみに今日は何と問われて、工藤は会議の理由をかいつまんで話した。 「あらあ、最近、良太ちゃん、しっかりタズナ握ってるわね」 「ああ。この
月夜の猫-BL小説です 寒に入り44 BL小説 また八木沼が泣きそうな顔になったのを見て、「いやだから、八木沼さん、ほんと、八木沼さんなら絶対いい人が見つかりますって!」と良太は何の根拠もないがそう言って励ました。 しかし、佐々木さんって意図せずしてだけど、罪作り? 「良太って、ええやつやな」 頼りなさげな笑み
月夜の猫-BL小説です 寒に入り42 BL小説 「ほんまに沢村と付き合うてんの?」 身体をかがめて耳打ちする大きな子供のような男を良太はため息交じりに見つめた。 「沢村に言われたんですよね?」 「てことはやっぱほんまなん?」 「はい、諸事情あって絶対マル秘必須ですけど」 昨年末、二人のことではというより沢村のことでは
月夜の猫-BL小説です 寒に入り41 BL小説 いつぞや良太が怪我をして入院した時に、心配して静岡から駆け付けた亜弓と会社で鉢合わせして、小学生かというような低レベルの言い争いをしていたという沢村のことは見なくても大体想像がつく。 恋人の佐々木の前では五歳児レベルのやんちゃ小僧に変貌する。 しかしだ、問題は、たまた
月夜の猫-BL小説です 寒に入り38 BL小説 「前に良太に送ってくださったブランデーケーキ、頂いたんですけどすんごく美味しかったです!」 「あら、嬉しいわ。また焼いて送りますね」 口を挟んだアスカにも百合子はにこにこと笑顔を向ける。 「ケーキと言えば杉田さんもプロ並み。何せ、うちの社長の子どもの頃からケーキ焼いて
月夜の猫-BL小説です 寒に入り35 BL小説 足を止めた良太は結局踵を返して、部屋に入って行く工藤の背中に続いた。 ドアが閉まるなり、工藤は良太の腕を引くとその後ろ頭を持ち上げるようにして唇を重ねてくる。 執拗でエロいキスに酸欠になりそうで喘ぎながら工藤のコートを掴む良太だが、そのうち夢中にさせられて身体から力
月夜の猫-BL小説です 寒に入り29 BL小説 「ニューヨーク支社でビシバシ頭角を現して、一年前第一営業部の本部長に抜擢、ニューヨークのピアニストとの間に子供一人、今は向こうのハイスクールに通ってて、日本と向こうを行き来しているらしいですよ。宮下本部長」 いつの間にか傍に来ていた藤堂がぼそぼそと言った。 「さす
月夜の猫-BL小説です 寒に入り25 BL小説 淑子があの調子で、沢村にはお世話に、なんて宗一郎に言った日には、どういうご関係でなんてことになりかねない。 工藤はもしや、沢村ではなく佐々木のことを気遣ってわざわざ自分から小夜子に声をかけてきたのかも知れないと、良太は思った。 それに、どうも工藤は年上の女性には頭が上が
月夜の猫-BL小説です 寒に入り26 BL小説 「やっぱ良太、工藤病が進んどるな、初釜で仕事の話とか」 「帰ってから連絡しようが今話そうが同じです。工藤病、やめてください」 縁起でもない。 「それより慰労会?」 「ああ、うちの社員とその家族を招いて日頃の労を労おうという、珍しく工藤さんが言い出したんですよ、宴会嫌い
月夜の猫-BL小説です 寒に入り27 BL小説 「兄貴、鮨、向こうに用意したぜ」 直子や洋子と一緒になって片付けを手伝っていた京助が、声をかけた。 「皆さん、少し物足りないなという方は、向こうへどうぞ。軽食をご用意しましたので」 紫紀が言うと、俄かに歓声が上がり、皆がぞろぞろとリビングを出てテーブルのある客間の方へと
月夜の猫-BL小説です 寒に入り27までアップしました BL小説 良太は工藤とともに東洋グループCEO綾小路の初釜に出向くが、そこには財界人やらセレブやらそうそうたる顔ぶれが。沢村や藤堂も次期CEOの紫紀に招かれていたが、綾小路家の茶道師範を務める母淑子に伴って列席している佐々木が目当ての沢村だが、まさかの兄夫妻と顔を合わせることに
月夜の猫-BL小説です 寒に入り24 BL小説 「本日はお招きいただいてありがとうございます」 「工藤さん、こちらこそ、いつも紫紀さんや千雪ちゃん、京助さんがお世話になっております」 小夜子は相変わらず苦労のない笑顔で、工藤に微笑んだ。 表裏がないのは千雪と同じで、工藤の出自やら背景やらには全く興味を持たないが、その実
月夜の猫-BL小説です 寒に入り22 BL小説 「母さんから? 何を聞いたんだよ」 「だから、色々。それより紹介してよ。お友達?」 良太は由樹を見た。 「申し遅れました、私、青山プロダクションの者で広瀬良太と申します」 慌てて名刺を取り出した良太の横で、「俺のリトルリーグからのマブダチ、CMとか仕事でも今世話になってる