第86話 建巳 act.37 another,side story「陽はまた昇る」
Thataftermanywanderingskenshi―周太24歳4月第86話建巳act.37another,sidestory「陽はまた昇る」窓明るむ青、薄紅かぐわしい。ほら花が舞う、すこし開いたガラス通ってしのびこむ。「お、桜の花びら?」「…ん、」友だちの言葉に肯いて、目の前ふわり花が舞う。つい伸ばした掌ひとひら降りて、廊下のかたすみ立ちどまった。「ここ、きれいに見えるんだよ。毎年さ、」朗らかな声が教えてくれる、自分が知らなかった時間のことだ。まだ去年の春は知らなかった場所で、周太はそっと微笑んだ。「よかった、毎年ちゃんと咲いてて…」立ちどまった窓の桜たち、ひとつは古木でひとつは若い。窓すぐ伸ばされた梢は大らかな繊細ひろやかで、あわい薄紅ふさふさ華やがす。その隣り樹齢30年ほどの若木はまだ朱い芽吹...第86話建巳act.37another,sidestory「陽はまた昇る」
2022/12/16 00:43