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「……はい」ーもしかして…それで布団で寝かせてくれたの?ー ヨンはもう一度伸びをすると立ち上がり自分で御衣を脱ぎだした。「!」 サムノムも慌てて立ち上がると「…
こんな風に寝顔をじっくり見るのは2度目だ。ーそういえば抱き締めて寝ていた時も気付かず寝てたなこいつは…ー お陰でバレずに済んだのだが。 上掛けから覗く手をチ…
──翌日 エシムは独舞を完璧に踊ってみせた。 ヨンが細かな修正を加え、陽が傾きかける頃には文句の付けようがないほど美しく素晴らしい舞に仕上がった。 サムノムは…
東宮殿に戻ったヨンは目の前に座るサムノムから目を逸らすように頬杖を付いてそっぽを向いている。 沈黙に耐えかねサムノムは「あの…世子様?」と声をかけた。「………
粥を食べ終わり、一緒に出された杏の砂糖漬けを嬉しそうに食べているサムノムを見てヨンは少し笑うと無言で自分の分の砂糖漬けをサムノムの膳の上に置く。「いいのです…
「何かって…あ、そうだ明日は妓生達に休みを与えてはどうでしょう」「休みだと?」「はい。 一日休みを与えてエシムには独舞の振付を完璧に覚えて貰うのです。図画署に…
「なんかもう…っ 色々すみませんでした!!」「ぶっふっ!」 ヤケクソ気味に額を床に付けたサムノムに辛抱堪らずヨンは盛大に吹き出し「あっはっはっは!」と声を上げ…
独舞の指導が始まって10日が過ぎた。 結局この日も振付は思うように進まず東宮殿に戻ったヨンは机に突っ伏していた。「……」 サムノムはそんなヨンを黙って見つめ…
始まった2人の剣技の凄まじさにサムノムは圧倒され、口を閉じるのも忘れてポカンと見入っていた。ーかっっっっっこいい!ー 刃が交わる度に火花が散り、夕暮れに染ま…
──翌朝 サムノムの起きだす気配を感じ、ビョンヨンは目を覚ました。 チラッと下に目をやると半身を起こして目を閉じたままボ~っとしている。 しばらくして頬を両手…
「お前…そんな事を言ったのか」 ビョンヨンが呆れた様にサムノムを見る。「あの時は…まだ世子様だとは知らなかったので…」 消え入る様に呟くサムノムにまだ“花若様…
用意されたのは初の牛肉に山のような野菜や果物でとてもじゃないが3人では食べきれない。「あの、召し上がるのは世子様とキム別監様と私だけなのでっ」 なんとか尚宮…
こうして初日は“蓮花舞”を完璧に覚える事に終始し、翌日からヨンの指導の下、独舞の稽古が開始された。 特別に用意された東屋の稽古場に独舞に参加する妓生が集めら…
次の日、王宮には華やかな女の色香が舞っていた。 チャン内官の迅速な通達により各地の名だたる妓生が宮中に参内したのだ。 煌びやかな衣装を身に纏い、あわよくば世…
東宮殿に戻りお茶と共にヨンの元へ急ぐ。 部屋の前まで来ると琴の音が聴こえてきた。ーあれ? 他に誰かいるのかなー すごく上手だ。「世子様、入ってもよろしいです…
「何を作ってるんだ?」「世子様がお仕事しながら食べられる物をと思って」 器をビョンヨンに見せる。「団子か…」「さ、汗を流してきて下さい! キム兄貴の分もあるん…
翌日サムノムが東宮殿に行くと既にヨンは起きて仕事をしているとの事だった。「あ、あの朝が苦手な世子様が?!」 チャン内官も初めての事らしく驚いている。「朝食も…
王宮に戻りユンソンと別れたサムノムは東宮殿に向かったが、そこには夜の当番の数人とチャン内官が居るだけだった。「今日はもう皆下がれとのご命令だ。 お前も帰って…
見知らぬ女人に話しかけるなど普段はしないが先程自分と同じ様に雨を受けていた指先が目に焼き付いていたヨンは、この女人に親しみを感じていた。「……そうですね」 …
ユンソンは優しく微笑む。「軒が狭いだろう? ただ雨を避けるためにしばし羽織るだけだ」 サムノムは一瞬服に目をやり、ユンソンを見る。「結構です。 それにその服…
ヨンは茶山に目を向けた。「従順で扱いやすいと思われれば反対はされません」 ニヤリと笑う茶山の目を強く見返す。「私が聞きたいのは許しを得る策ではなく、対等な立…
せっかく2人でいられるチャンスを大事にしようと屏風運びは他の者に任せてユンソンはサムノムと2人で街に出る事にした。 初めてのデートだ。「キム様、まずは何処へ…
「申し訳ありません! チャン内官!」 巻き込まれただけのソンヨルと共にサムノムは御衣を差し出し深く頭を下げる。「ああ、よいよい。いつもの事だ…世子様を止める事…
集中が切れたサムノムは床を拭く手を止めた。ーきた…これがチャン内官が言ってた事だ…きっと…ー「違うといえば嘘になります…」 サムノムはワザと声を落とし自嘲気…
サムノムは慌てて体を離すと一歩下がってヨンから距離を取った。 煩いくらいに早鐘を打つこの胸の鼓動は相手が世子様だからだ。 ただ緊張してるだけ。 そう自分に言…
次に装飾品を着けるためサムノムはヨンから離れた。 盆の上に並ぶ装飾品に手を伸ばしかけて止める。 ー腹痛だと言って逃げようか…ー 迷うフリをしながら、どうに…
資泫堂の外に出たビョンヨンは庭の腰掛けに座る。 “隠し事はありませんか?!” 指の先が白くなる程、強く握りしめた拳で己の胸を叩いた。 偉そうにサムノムに裏切…
ビョンヨンがヨンの部屋に入ると、そこではヨンもサムノムと同様に沈み込んでいた。 この間の様に机に突っ伏している。-似た者同士…-「……ビョンヨン」「はい、世…
ヨンがサムノムの頭をポンと叩くとサムノムはビクッと肩をすくめた。 その様子を見てヨンはため息をつく。「今日はもうよい。資泫堂に帰れ」「……え?」「今のその状…
本棚越しに見え隠れするサムノムの姿を追う。 “もう! 友として忠告してあげてるのに真面目に聞いて下さいよ!” “友だと? いつから私達が友になったのだ?” …
慌てて部屋を出て行ってしまったチャン内官の後を追う。「あの! チャン内官! 世子様が書庫に?! それなら私は無理なんですが…!」 しかし、チャン内官の姿は既…
-花若様はあれが王女様に宛てた恋文だと知ってたんだよね…?- 静かになったサムノムをヨンはジッと見つめる。 妹の代わりにどんな男か確かめようと出向いた先で、出…
お腹が空いたからご飯を食べる。 こんな当たり前の事をサムノムに出会うまでした事がなかった。 自分はどれだけの時間を無意に過ごしてきたのだろう。「ほっ!」 サ…
「花若様、夕食は?」「まだだが…」 実はそれもちょっと期待していた。 だが、サムノムは少し困ったように首を傾げた。「今日は食材がもう葱しか残ってないんですよね…
「ヨンウン王女様が私の髪で遊びたいとおっしゃるので……」 それを聞いたヨンは隠れていることも忘れて思わず覗き見ようとしてハッと思い留まる。 万が一隠れている…
朝議を終え、東宮殿に戻る途中でヨンは淑儀付きの尚宮に呼び止められた。「世子様、淑儀様がお越し頂きたいとの事です」「淑儀が?」 淑儀の方からヨンを呼ぶのは珍し…
ーこれが我が国の世継ぎとは……ー あまりにも情けない世子の姿は到底、代理執政が務まるようには見えない。 どうせ自身も断るだろう。「世子様のご意志が固いのであれ…
──翌朝 便殿では、朝議とは名ばかりの“王様いじめ”が行われていた。 玉座に座る王と傍に控える尚膳。 そして、ずらりと居並ぶ領議政の臣下達。 ここに王の味方は…
サムノムは小首を傾げた。「世子様はお世継ぎなのですから代理執政を命じられてもおかしくはないし、王様がそう判断なさったのなら何の問題もないのでは?」 ヨンはも…
「“キム兄貴”?」「いえ…それは…あいつが勝手に……」 ヨンの冷ややかな声に僅かに後退るビョンヨン。-何故、俺が責められる…?!-「“大好き”と言われたそうだ…
「淑儀様! 入ってもよろしいですか?!」 集福軒に駆け込んだサムノムは取り次ぎの女官を押し切って寝所の前まで来た。 休もうとしていた淑儀は驚いて扉を見る。「何…
「はぁ……」 資泫堂では白紙の返書の束を前に、もう何度目か分からない位ついた溜息を、サムノムは小さく吐き出した。 ビョンヨンは我関せずと天井の梁で剣を磨い…
王は目を逸らし、震えていた。「あなたは…!」 その姿がヨンには歯痒く、ただ悔しかった。 「この朝鮮の…… “王” なのですから…!」 ヨンは立ち上がると挨拶…
「あ……」 サムノムは2人の姿を見留め、気まずそうに伸ばしていた手を下ろす。 ビョンヨンは掴んだ紙が白紙であることを確認し、眉根を寄せてヨンに渡した。 受け取…
夜になってもサムノムは淑儀の文を王に渡せないでいた。 こっそり王殿に忍び込んでみても、王の部屋の前は大勢の内官や女官に阻まれて、とても入れそうにない。-すぐ…
───次の日 サムノムは淑儀から1通の文を渡された。 王様宛だというその文を胸に抱えて歩く。〖必ず父上にお渡ししてねホン内官〗 ヨンウン王女からも念を押され…
「ホントにどこにでも現れますよねあの人!!」 まるでその辺を這っている虫に対するような言い方だ。「近頃では匂いで分かるようになってきましたよ!」「………………
ヨンウンは夢中で蝶についていった。 いつの間にか屋敷の外に出ている事にも気が付かず楽しそうに蝶を追う。 そして蝶だけを見ていたヨンウンはドンっと誰かにぶつか…
サムノムから投げられた問いにヨンは笑って腕を組む。「知りたいか?(笑)」 今、世子だと教えたらどんな顔をするだろうか。「はい、知りたいです。だって内官だった…
2人がどこぞに消えた後、サムノムは集福軒へ向かうべく身支度を整えた。-花若様っていつもどこに帰っていくんだろ- 聞いたって教えてくれないだろう事は分かってる…