ずいぶん昔の話になるが、ある集会で、ある有名牧師が「韓国の教会は素晴らしい。それにひきかえ日本の教会をほめる人は見たことがない。」と言うのを聞いたことがある。とにかく人数が多く、信仰熱心な韓国の教会を賛美し、片や人数が少なく信仰も冷めている(ように見える)日本の教会を自虐していたのだろう。 だが私は、同じ頃ある韓国のクリスチャンが「日本の教会は素晴らしい」とほめる…
「エルサレムよ、わたしはあなたの城壁の上に見張り番を置いた。イザヤ62:6」 ※キリスト教、聖書、イスラエル・ユダヤ関連などについて書いていきます。
ずいぶん昔の話になるが、ある集会で、ある有名牧師が「韓国の教会は素晴らしい。それにひきかえ日本の教会をほめる人は見たことがない。」と言うのを聞いたことがある。とにかく人数が多く、信仰熱心な韓国の教会を賛美し、片や人数が少なく信仰も冷めている(ように見える)日本の教会を自虐していたのだろう。 だが私は、同じ頃ある韓国のクリスチャンが「日本の教会は素晴らしい」とほめる…
聖書に登場する幕屋とその発展形である神殿は、天にある目に見えない「真の聖所」の影、比喩である。ヘブル人への手紙9章には、「第一の幕屋が存続しているかぎり、聖所への道がまだ明らかにされていない」とある(ヘブル9:8)。これが書かれた時はまだ神殿があったが、まもなくローマによって破壊されてしまった。霊的に見れば、イエスが十字架でご自身のからだを完全ないけにえとしてささげ、「…
いわゆる「失われた十部族」について。十二部族から成る古代イスラエル王国は、ユダ族を中心とする二部族から成る南王国「ユダ」と、それ以外の十部族から成る北王国「イスラエル」に分裂した。その後、北王国イスラエルはアッシリアに滅ぼされ、その十部族は行方不明になったとされる。これが「失われた十部族」で、その末裔が日本人になったなどと言われる。一方の南王国ユダもバビロンに滅ぼ…
ルカ16:19〜31にある「金持ちとラザロのたとえ」について。ある人々はこの箇所はたとえ話ではなく実話であり、死後の世界観について語ったものであるという。「よみ(ハデス)」は「地獄(ゲヘナ)」とは別であるとして、死後の救い、いわゆる「セカンドチャンス」の根拠とされることもある。しかし私はこの箇所はあくまでたとえ話であり、その主題も死後の世界とは別のところにあると考える。 そ…
教皇フランシスコが死去し、遺体はローマ市内の「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂」に葬られた。このサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、「聖母マリア」に捧げられた聖堂の中では最も大きく、カトリック教会の中でも格別に権威あるところらしい。 そのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂であるが、かつて「キュベレ」という女神が祀られていた神殿のあった場所に建てられている。女神が祀…
ホアン・カトレット著『薩摩のベルナルドの生涯』(教友社)を読んだ。(厳密に言うと、ずっと前に一度読んだのだが、今回本稿を書くに当たり確認のため図書館で借りて再読した。)薩摩のベルナルド、あるいは鹿児島のベルナルドは、かのフランシスコ・ザビエルが2番目に洗礼を授けた日本人である。本来の日本名は苗字が「河辺(かわなべ)」であったらしいというほかはわかっていない。彼はまだ若い武…
サタンは、イスラエル:ユダヤ人を滅ぼそうと狙っている。神が、イスラエルを特別に選び、愛しておられるから、そしてユダヤ人がイエスを信じてその名を呼び求める時、イエスの再臨が起こるからだ。だから、サタンは多くの国々や勢力、また個人を用いてユダヤ人を迫害してきた。 聖書時代のエジプトやハマン、またアンティオコス・エピファネス、そしてローマ。キリスト教が成立すると、残念…
NHK大河ドラマ『べらぼう』を観ている。第一回目で街が大火事になり、焼けそうになる稲荷神社で少女たちが「お願いかなわなくなっちゃう!」と狐像を運び出そうとしている。それを見つけた主人公の重三郎は、「いや、神様だろ……」と呆れながらも、「焼けなきゃいいんだろ!」とばかりに像をドブの水中に投げ入れる。そして神社の祠を背中に負って、運び出すのであった。以後、作中で重三郎が神…
岩城聰著『鳥瞰するキリスト教の歴史』(ベレ出版)を読んだ。キリスト教の通史であるが、一般史に関する記述も多く、その枠組の中でのキリスト教の位置づけがわかるようになっている。平易な語り口で読みやすかった。著者が聖公会の牧師であるためイングランド国教会・聖公会の記述が詳しいが、それがまた貴重である。 一方、「信徒以外の方にも理解していただけるように、できるだけ客観的な…
ヤフーニュースに、イスラエル人質解放に関する記事が出ていた。それに付されたコメント欄に、クリスチャンと思われる人物から、旧約聖書を引き合いに、ハマス批判と日本はイスラエルに寄り添うべきだとする意見が投稿されていた。私は共感を覚えたので、同意の旨と「イスラエルを祝福する者は祝福される」との原則を書き送った。何回かやりとりがあったが、置換神学の誤りや日ユ同祖論への批判…
イスラエルを祝福する信仰への批判として、「旧約聖書を強調し過ぎている。旧約聖書は、新約聖書の光で照らさなくては正しく読むことはできない」というものがある。「旧約は新約に照らさなくてはならない」というのは全くもって同意する。しかし、逆に私は問いたい。「あなたたちは旧約聖書を軽視し過ぎていませんか?」と。繰り返すが旧約を理解するには新約の光に照らす必要がある。だが一方…
ルカ2:22〜38、シメオンとアンナの箇所を読んだ。この箇所には、「イスラエル」とか「エルサレム」とか、ユダヤ人を象徴する語が複数回登場するので、これらがキーワードだと思った。 「イスラエルの栄光」(32)と呼ばれるイエスによって、万民の中から救われ(31)、啓示の光を照らされた異邦人(32)として、私は、イスラエルが慰められること(25)と、エルサレムの贖い(38)を待ち望む。「イスラ…
正月だ。正月と言えば餅である。私は餅が大好物だ。「一番好きな食べ物」と言ってもいい。最も好きな食べ方は、何も味をつけないで白いまま食べることである。いろいろな味をつけても旨いが、餅そのものが好きなので、素の味を味わいたい。 ところが最近、変化が出てきた。一番好きな食べ物の同列ぐらいにつぶあんが急上昇してきたのである。であれば、餅とつぶあんをかけ合わせれば更におい…
「どうか 神が私たちをあわれみ 祝福し 御顔を私たちの上に 照り輝かせてくださいますように。 あなたの道が地の上で 御救いが すべての国々の間で知られるために。(詩篇67:1〜2)」 詩篇67篇を読んだ。短い詩なのでぜひ直接聖書を確認してほしい。ここでは、「国々」「諸国の民」「地の国民」「地の果てのすべての者」、すなわち世界のあらゆる民族、異邦人(非ユダヤ人)が救われ、彼らの間で…
今、中山茂大著『旅人思考でイスラムと世界を知る本』(言視舎)を読んでいる。イスラム圏を中心に世界を旅した著者が見聞きした、一般市民の生の姿を描き出すショートエッセイ集である。1話につき1〜2頁という短さと、平易な語り口、そして内容のおもしろさからスラスラと読めてしまう。半分ほど読んだところだが、気になる記述が出てきたのでちょっと立ち止まってみた。 この著者、イスラム…
クリスマスは「イエスの誕生日」ではなく、実際は異教の偶像礼拝に起源がある……ということを知った時ひどいショックを受けた、という話は以前書いた。(「仮庵祭にイエスの降誕を思う」http://cavazion.seesaa.net/article/505285027.html 参照。)その時、「なぜ、聖書に根拠のない風習がことごとく否定された宗教改革で、クリスマスだけはその対象にならなかったのか」という疑問を抱いた。何…
ある人(ネット上ではなくリアルの知人)から、次のようなメールをもらった。 「ユダヤ国家が豊富な財産を用いて、キリスト教国アメリカを味方につけるために聖地旅行企画などのプロパガンダを長年続けている。」 陰謀論だ。反ユダヤ主義だ。聴くに値しない。だが、仮にそれが事実だとしても、だから何だと言うのか。私は聖書預言の成就として「ユダヤ国家」が存在していることを素晴らし…
何度も書いていることだが、重要なのでもう一度書く。 現代の「イスラエル国」の存在は、聖書の預言の文字通りの成就である。聖書に書かれているとおり、地の四方から、特に北(旧ソ連)から、たくさんのユダヤ人たちがイスラエルの地に帰ってきて、住み着いている。彼らは荒れ果てていた土地を開拓し、緑あふれる森林と、豊かな産物をもたらす農地を回復させた。廃墟は建て直され、人々が暮ら…
イスラエル(ユダヤ人)は、世界に祝福をもたらすために、特別に選ばれた民族である。具体的には、聖書はイスラエル人を通してもたらされ、救い主イエスはイスラエル人の中から生まれた。イスラエルがイエスを拒んだことさえ、異邦人に福音が広がるきっかけとされた。やがて、イスラエルが民族を挙げてイエスを信じる時に、イエスが再臨する。だから、今もイスラエルの選びに変わりはない。そして…
ユダヤ暦では、今、「仮庵祭(かりいおのまつり)」の最中だ。イスラエル人の先祖たちが荒野を旅していた時、仮庵(テント)生活をしていた事を記念する祭であり、また秋の収穫感謝祭でもある。 毎年この時期になるとSNSで何かしら発信しているのだが、イエスが実際に生まれたのは、この仮庵祭の時期だという説がある。その根拠について詳細は過去記事に譲るが、この説を知ったことは私にとって…
NHK総合の新番組アニメ『チ。ー地球の運動についてー』を、断片的に観た。(深夜枠ということもあり、全編を意識して観たわけではない。) 教会が権力を持ち天動説が支配していた時代、地動説に目覚めた主人公の物語(らしい)。主人公の少年に地動説を教えた、「異端者」の学者のことば。天動説の宇宙観は美しくないと指摘した上で、「神が作られた世界は美しい。」だから、自分は命がけで地動説…
福音を伝えると、教会の外から迫害を受ける。しかし、イスラエルを祝福し、ユダヤ人のためにとりなそうとすると、教会の中から迫害を受ける。教会の中には今だ置換神学とそれに由来する反ユダヤ主義が蔓延しており、その背後にはユダヤ人を滅ぼそうとするサタンがいるから。
よく、今のキリスト教は「パウロ教」だと言われることがある。本来のイエスの教えは素朴な隣人愛を説いたものであったのに、パウロが、イエスの十字架死による贖罪や、信仰義認などの教理を付け加えて改変してしまったというのだ。 このような批判は、パウロ在世当時からあったようだ。これに対して、パウロは、これらの教えは自分が勝手に考え出したものではない、イエスから直接「啓示」を…
「主の御約束に変わりはなし」(♪『歌いつつ歩まん』より) 旧約時代には、イスラエル人(ユダヤ人)が神の祝福の約束を受け継ぐべき選ばれた民とされていた。しかし新約の今は、その地位はキリスト教会に置き換えられ、イスラエル人の選びは廃止された……そう考える「置換神学」が、キリスト教界の大勢を占めている。 しかし、本当にそうだろうか。もしそれが本当なら、神の約束は変わっ…
過去記事「現代に実現している聖書の預言〜20年前のイスラエル旅行2」 http://cavazion.seesaa.net/article/485965814.html より、一部抜粋再掲。 ※※※※※※※※※※※※※ 地中海沿岸のシャロン平原をバスで北上する。周囲には現代的な市街地や、あるいは農地が広がっている。畑には人がいない。コンピューター管理による最先端のハイテク農業が行われているからだ。バナナ、オレン…
愛好家の方には申し訳ないのだが、私はスポーツには全く興味がないので、今回のパリオリンピックも観ていない。だから以下に書くことは、あくまでニュースサイトの範囲内の情報にのみ基づいていることを、予め断っておく。 オリンピック開会式の演出が物議を醸している。キリストの「最後の晩餐」を揶揄する内容だったというのだ。バチカンが批判の声明を出すほどの騒動となっている。 …
ショレム・アレイヘム作『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫)を読んだ。演劇・映画『屋根の上のバイオリン弾き』の原作として知られる、イディッシュ文学の名作である(らしい)。イディッシュ語というのは、東欧のユダヤ人の間で使われていた言語だ。本作の舞台は19世紀末〜20世紀初頭の、当時ロシア領だったウクライナ。貧しいユダヤ人の牛乳屋テヴィエが、作者の「ショレム・アレイヘム先生」に身の上…
そこで使徒たちは、一緒に集まったとき、イエスに尋ねた。「主よ。イスラエルのために国を再興してくださるのは、この時なのですか。」イエスは彼らに言われた。「いつとか、どんな時とかいうことは、あなたがたの知るところではありません。それは、父がご自分の権威をもって定めておられることです。しかし、聖霊があなたがたの上に臨むとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、…
仮にイスラエル人の血を引いていたとしても、日本人は「イスラエルの子孫」ではない
久しぶりに「日ユ同祖論」の話。「古代日本にイスラエル人がやって来て、日本人の先祖になった」と主張するこの説。私は、古代イスラエル人の「一部」が日本列島に渡来して、日本人の先祖の「一部」になった「可能性」はあると思う。 あれだけ世界を股にかけて活躍しているイスラエル(ユダヤ)人のことだ。いわゆる鎖国のイメージから誤解されがちだが、実際は古来意外と外国と交流があった日本に…
「旧約時代のイスラエルの地位は、新約時代には教会に置き換えられた」とする考え方を「置換神学」と言う。この考え方によれば、アブラハムに約束された祝福を現在受け継いでいるのはキリスト教会であり、聖書の中でイスラエルについて言及されている箇所は、教会に適用される。一方イスラエル人(ユダヤ人)は、「神に選ばれた民族」としての特殊な立場を否定され、他の民族と何ら変わりがないこ…
今、イスラエルの地で起こっていること。「聖書預言の成就」である。聖書に書かれているとおり、方々に散らされていたユダヤ人たちがかの地に帰還し、祖国を再建している。 これこそ、聖書が信ずべき神のことばであることの証しだ。ひいては聖書が指し示すイエスの十字架と復活の福音が真実であることの証しでもある。また、神が現代に至るまでユダヤ人を見捨てておられないことは、新約に於…
飯山陽(いいやま・あかり)著『イスラム教の論理』(新潮社)、並びにモサブ・ハッサン・ユーセフ著『ハマスVSイスラエル』(ヒカルランド)を読んだ。飯山陽氏は、高原剛一郎氏がYouTubeで「日本で唯一まともな中東問題解説者」と絶賛しているので、図書館で見つけた時、読んでみようと思った。その時、新着図書として並んでいたのが『ハマスVSイスラエル』である。この本、実はかつて『ハマスの息子…
今、出エジプト記を読んでいる。主は、イスラエル人を奴隷とするエジプトに次々と災いを下した。それは、単にエジプト人を懲らしめるためではなく、エジプトの多神教の神々にさばきを下すためでもあった。すなわち、ナイル川や蛙などエジプト人が神々として拝んでいたものを無力化することによって、神は唯一「主(ヤハウェ)」のみであることを彼らに知らしめたのである。 この「一神教」のメ…
今年(2024年)は、3月31日が、イエス・キリストの復活を祝うイースター(復活祭)であった。ゆかりの地エルサレムでは、キリスト教各教派の礼拝がもたれたもようである。中継動画がYouTubeに上がっていた。 プロテスタントがイエスの墓と見なす「園の墓」では、エレキギターガンガンの、現代的な賛美礼拝がささげられていた。 https://www.youtube.com/live/DB5YctEAs8Q?si=gGAhBlU3nke9nxoy 賛…
シオニズムはユダヤ教から出たものではないが、神のみわざである
「シオニズム」とは、世界各地に離散していたユダヤ人たちが、イスラエルの地に帰還して祖国を再建しようとする運動のことである。19世紀頃に盛んになり始め、1948年の「イスラエル国」建国で頂点を見た。その後もこの流れは続き、現在もロシアやウクライナなどから多くの帰還民が押し寄せている。 シオニズムはユダヤ教から出たと思っている人がいる。シオニズムによって建てられた現代イス…
私がイスラエルについて発言すると、批判されることがある。その中に、「それはディスペンセーション主義神学だ」というものがある。ディスペンセーション主義神学ということばについては、以前から知っていた。だがその内容については、何度か学んでみたのだが、難しくていまいちよく理解できない。確かに自分の立場に似ているようでもあるが、どこか違うようにも思う。 そもそも私は「神学…
高橋沙奈美著『迷えるウクライナ』(扶桑社)を読んだ。ウクライナのキリスト教の歴史と現状について書かれているのだが、同国の宗教事情はかなり複雑である。 ロシア帝国ないしソ連の支配下にあった時代、ウクライナはロシア正教会の管轄であった。ソ連末期になるとウクライナの正教会に自治権が与えられ、「ウクライナ正教会」が成立する。しかしこの教会は組織上はロシア正教会の範疇にあり…
『サザエさん』の作者、故長谷川町子が、クリスチャンホーム生まれのクリスチャンであったことは有名である。ただ、聖霊の導きの下自らの意思で信仰を持った、いわゆる「ボーンアゲイン」したクリスチャンだったのか、単に「家の宗教がキリスト教」というだけの「宗教二世」に過ぎなかったのか、疑問に思っていた。というのも、『サザエさん』を読んでいると、確かに教会が出てくる話も稀にあり…
現在の「イスラエル国」の存在は、聖書の預言の成就なのだろうか。 ある人々は、イスラエルが紛争を繰り返していることを見て困惑し、政治的立場から、イスラエルの正統性を否定する。またある人々は、イスラエル人の大多数が未だイエスを信じていないことを見て、現在の「ユダヤ人」たちは「自称イスラエル人」に過ぎないと見なす。 ところで、バプテスマのヨハネが、イエスが本当にキリ…
イスラエルと、テロ組織ハマスとの戦争が続いている。そのためガザ地区で多くの人命が失われていることを受けて、イスラエルに対する激しい非難の声が世界中から上がっている。だが、初めにハマスが行った残虐非道なテロの数々や、ハマスが一般市民を「人間の盾」にしていることは、忘れられている。キリスト教界でも事情は同じで、パレスチナへの同情・連帯を示しつつ、翻ってイスラエルを批判…
今、井上浩一著『生き残った帝国ビザンティン』(講談社学術文庫)を読んでいるのだが、その中で、キリスト教の起源について興味深い考察があった。 以下、「オリエントの神、ギリシアの神」と題された項(145頁)からかいつまんで引用していく。著者は、「古代の地中海・オリエント世界ではふたつのタイプの神がみられた」と主張する。「ひとつは古代エジプトやバビロニアの神のように、全知全…
アドベント(待降節)である。イエス・キリストの降誕を祝うクリスマス(降誕節)を待ち望み、心備える期間だ。この時期によく歌われる賛美歌のひとつに「わがこころは」がある。(『讃美歌(1954)』95番、『新聖歌』67番。)ルカ1:46~55のいわゆる「マリアの賛歌」を歌ったものだ。 私はこの5節が好きである。「アブラハムの すえをとわに かえりみ イスラエルを 忘れまさで 救いたもう と…
井上浩一著『ビザンツ 文明の継承と変容』(京都大学学術出版会)を読んだ。以下、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)の宦官について解説された章の中の記述についてである。尚、宦官とは主君に忠実に支えるため、去勢(生殖器の切断)手術を施された男性のことだ。原始キリスト教は宦官に好意的だったとして、マタイ19:9~12を引用している(233頁)。 「結婚できないように生まれついた者、人から結婚で…
ユダヤ人を選び、彼らを愛し、彼らへの約束を守って彼らを世界中からイスラエルの地に連れ上り、再び国を建てさせられた神。この真実で恵み深い神、主が、その御子イエス・キリストの十字架のみわざを介して、私たちの神でもあられるのである。 それとも、神はユダヤ人だけの神でしょうか。異邦人の神でもあるのではないでしょうか。そうです。異邦人の神でもあります。神が唯一なら、そうで…
まことに、ユダヤ人は選民である。(「ユダヤ人は選民である」http://cavazion.seesaa.net/article/501369001.html 参照。)今も変わらず選民である。だからこそ、彼らは長い歴史の中で何度も国を滅ぼされ、世界に散らされ、どの民族よりも激しい迫害を受け続けてきたにもかかわらず、決して消滅することなく息ながらえ続け、今やその先祖たちのゆずりの地に国を再建した。神が彼らを特別に守り、…
ユダヤ人(イスラエル人)は神に選ばれた特別な民族である。そして、その選びは今も変わらない。 但し、彼らが特別な民族であるとは、他の民族より優れているとか偉いとかいうことを意味しているのではない(申命記7:7)。その点、誤解されやすいし、ユダヤ人自身の中にもそう誤解して高慢になっている人々がいるかも知れない。 むしろ、他のあらゆる民族に神の祝福をもたらす管としての役割…
もし、あなたがこのようなときに沈黙を守るなら、別のところから助けと救いがユダヤ人のために起こるだろう。しかし、あなたも、あなたの父の家も滅びるだろう。あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、このような時のためかもしれない。エステル4:14 今般のイスラエルの危機に際し、私には「ユダヤ人のために」何もできない。本当に何もできない。でも、「沈黙を守る」ことだけはやめよ…
本来、神の祝福の契約は、アブラハムとその正統な子孫であるユダヤ人に授けられたものであった。けれどもユダヤ人たちがイエスを拒んだ時、それは彼らから取り上げられ異邦人(非ユダヤ人)に授けられた。 しかし、それは実は、はじめから、すべての異邦人に福音を広め救いをもたらすための、壮大な神のご計画の一環であった。ユダヤ人は世界に祝福をもたらすべく選ばれた特別な民族だからこそ…
聖書は、イエスのことを何度か「ユダヤ人の王」と呼んでいる。 まずその生涯の始まりからして、東方の博士たちから「ユダヤ人の王」と呼ばれている(マタイ2:2)。 次は、一気に飛んでその死の場面だ。逮捕されたイエスを尋問したピラトが、「あなたはユダヤ人の王なのか」と言っている(マタイ27:11、マルコ15:2、ルカ23:3、ヨハネ18:3)。ピラトは群衆にイエスの釈放を呼びかける時にも…
イエスが再臨するのはいつか。それは誰にもわからない。イエスが何年何月何日に再臨するか、それを知ることはできない。しかし、イエスの再臨の前兆、すなわち「イエスが再臨する前に実現すること」、言い換えれば「これが実現するまでは再臨は起こらない」ということならば聖書にいくつか預言されている。 その中に、「あらゆる民族に福音が宣べ伝えられる」というものと、「ユダヤ人が民族…
新約聖書には使徒たちの書いた「手紙」が収録されているが、その中で一番多いのはパウロの書いたものである。パウロの手紙は更に、教会宛のものと個人宛のものとに分けられる。 過日ある動画で指摘されているのを見て気づいたのだが、パウロの教会宛の手紙の宛先は七つある。すなわち、ローマ、コリント、ガラテヤ、エペソ、ピリピ、コロサイ、テサロニケの諸教会だ。 七つといういわゆる…
「コリント人への手紙第二」後半には、コリントの教会に入り込んだ「偽使徒」たちの教えから信徒たちを立ち返らせようとするパウロの、厳しくも愛に満ちたことばが記されている。その中でパウロは偽使徒たちを皮肉たっぷりに批判する。そこから、偽使徒たちはユダヤ人であり、「ヘブル人」「イスラエル人」「アブラハムの子孫」(いずれもユダヤ人の血筋を表す)という自分たちの血統を誇っていた…
昨日(2023年9月15日)の日没から、ユダヤ暦5784年の新年が始まった。 ユダヤ暦は、聖書に記された神の天地創造を元年とする。その数値は、アダムの系図など聖書の記述から算出されたものである。もっとも、聖書にすべての数値が記録されているわけではないので、誤差はあるだろう。大雑把に見て6000年といったところか。 もちろん、進化論に立脚した現代科学が説く宇宙の歴史とは全く異なる…
9・11から22年:アメリカ寄り?反アメリカ?それとも......
※2021年9月11日初出「『9・11』20年」(http://cavazion.seesaa.net/article/483356619.html?1694408296)に加筆再掲 9・11テロ事件から22年が経った。あの時の衝撃は忘れない。 当時、ある出版物にこんなことが書いてあった。「みんなはじめはアメリカに同情していたのに、しばらくすると、アメリカのここが悪いあそこが悪いと、評論家のように批判を始めた。」 しかし、私の周囲では、そもそもアメリカに同情する人…
盆踊りの季節である。クリスチャンは、盆踊りに参加しても良いのだろうか。盆踊りは、偶像礼拝に当たるのだろうか。 盆踊りは本来、先祖供養のために行われたものであり、元は仏教行事、根っこの部分では恐らく神道の要素も入っている。起源から考えるなら、盆踊りは宗教行事、立派な偶像礼拝だ。 だが、現在の盆踊りにどれほど宗教的要素が見られるであろう。今は宗教性は全く…
「日本人は古代イスラエル人の子孫である」とする日ユ同祖論者のクリスチャンたちの中には、「日本人が、自分たちのルーツがイスラエルにあるとわかれば、聖書の神とイエス・キリストを信じるようになるだろう」と考える人々がいる。それで、日ユ同祖論こそ日本宣教の鍵であると主張する。しかし、当のイスラエル人(ユダヤ人)こそが、一番頑なでイエスを信じていないという現実を彼らは見落とし…
聖書には「聖絶」という概念がある。(「聖絶 せいぜつ」という訳語は「新改訳」の造語で、「新共同訳」などでは「滅ぼし尽くすべきもの」などと訳されている。)神にささげるために滅ぼし尽くすというような意味だろうか。聖絶の対象が人間である場合、その都市なり民族なりは、男も女も子どもも一人残らず殺されなければならない。 エジプトからやって来たイスラエル人たちは、こうして先住…
マタイの福音書15:21~28及びマルコの福音書7:24~30に、イエスに娘をいやしてもらった異邦人の女の話が出てくる。彼女は必死にイエスに願うが、はじめイエスは彼女を相手にしない。 「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外のところには、遣わされていません。」「子どもたちのパンを取り上げて、小犬に投げてやるのは良くないことです。」すなわち、イエスはユダヤ人を救うためにやっ…
ヨシュア記には、イスラエルの民が「カナン」の地(今のイスラエル、パレスチナ)を占領したことが記されている。そして、彼らが相続した町々の目録が出てくる。現代日本に住む我々にとっては、一見無味乾燥な片仮名の羅列に過ぎないかも知れない。だが、実際にその土地を所有しそこに暮らしたイスラエルの民にとっては、望みであったことあろう。 今もかの地はイスラエルの子孫であるユダヤ人…
私はイスラエル抜きに信仰を成り立たせることはできない。イエスはアブラハム契約の成就者として十字架を成し遂げたのであり(ガラテヤ3章)、私たちはイスラエルというオリーブの根に接ぎ木された枝として救いを受け取っているのだからだ(ローマ11:17~24)。また、現在のユダヤ人帰還とイスラエル国の存在は預言の成就であり、生ける神の真実さの証しである。 私はディスペンセーション神学を…
※関連過去記事 「私がイスラエルに思いを寄せる理由」http://cavazion.seesaa.net/article/499340346.html 「私は実際にどこまでユダヤ人を愛せるか」http://cavazion.seesaa.net/article/499380642.html 「私とイスラエルと教会」http://cavazion.seesaa.net/article/499433161.html 私は20年以上前から、イスラエル、ユダヤ人のために何かしたい、身をささげたいと強く願ってきまし…
「私がイスラエルに思いを寄せる理由」http://cavazion.seesaa.net/article/499340346.html 、「私は実際にどこまでユダヤ人を愛せるか」http://cavazion.seesaa.net/article/499380642.html で書いたように、私はイスラエルのために身をささげたい、イスラエルのために何かしたいと強く願ってきた。これまでの人生、その方向に導かれてきたと実感していた。しかし実際にイスラエルのためにでき…
前回http://cavazion.seesaa.net/article/499340346.html 、「クリスチャンならイスラエルに関心を持ち、好意を抱くようになるのは当たり前だと思っている」「私にイスラエルへの思いが与えられているのは、・・・神の何らかのご計画による導きではないかと、思われてならない」と書いた。だが、そういう私は本当にイスラエル:ユダヤ人を愛し、彼らの味方であり続けることができるだろうか。 …
私がイスラエルに傾倒した理由。以前「私の選民意識が打ち砕かれるまで」http://cavazion.seesaa.net/article/492020247.html#comment で述べたような事情もあるのだが、もっと根本的なこと。それは、「聖書にイスラエルが出てくるから」である。聖書の舞台はイスラエルだ。聖書の物語はイスラエルの歴史を軸としている。そして聖書の登場人物、イエスもその弟子たちもみなイスラエル人(ユダヤ人…
明治天皇の玄孫で評論家の竹田恒泰氏が、日ユ同祖論について語っている短い動画をたまたま見つけた。テレビなどでも有名な彼が同祖論をどう評価するか興味があったので見てみたが・・・ https://www.youtube.com/watch?v=Rj5EBhvMWPM 「おもしろい考えだが、状況証拠だけで根拠がなく、学問とは言えない。発想はよくても、根拠がないものを断定すると陰謀論になってしまう。」うんうん、至…
教会の蔵書を整理することになった。古い本は処分するので、欲しければ持って帰っていいと言う。本は普段は図書館で借りたものを中心に読んでいることもあり、わからなかったのだが、改めて見てみるとなかなか良い本があるではないか。聖地の写真集なども複数ある。 というか、「これは捨ててはいけないのではないの?」と思えるような、貴重な「資料」とでも言うべき本もあった。明治37年発…
うちの教会の伝道所担当牧師(韓国からの宣教師)がイスラエルに行って来た。派遣元の韓国教団が主催するツアーで、本来なら3年前に行くはずだったところコロナで出発前日に延期が決定、この度ようやく実現に至ったのであった。(「切迫したイスラエル旅行」http://cavazion.seesaa.net/article/473757546.html 参照。)礼拝の中で旅のさわりを報告してくれたのだが(全部やっていると説教する時間が…
今日(2023年4月7日)は、イエスが十字架で死んだことを記念する「受難日」であった。私は、かつてイスラエル旅行をした時に尋ねた、「聖墳墓教会」(イエスが刑死したゴルゴタの丘の跡地だと言われている場所)での出来事を思い出した。とても象徴的で印象深い出来事であった。そこで、この時の旅行記である過去記事「『主は今生きておられる』十字架と復活~20年前のイスラエル旅行8 」http://cav…
ちょうど20年前(2003年)の今頃(4月4~7日)4日間、お世話になっていたイスラエル支援団体主催の台湾ツアーに参加した。「『イスラエルのためにアジアに祈りの輪を広げよう!』を合言葉に、台湾の教会に(同団体)の働きを知ってもらい、イスラエルへの重荷を持ってもらうため、とりなしの祈祷団としての台湾ツアー」(当時のアルバムの記録から。) だから、台湾ツアーとは言ってもテーマはあくま…
俳優の団時朗氏が亡くなった。『帰ってきたウルトラマン』で、ウルトラマンに変身する主人公の郷秀樹役を演じたことで知られている。ネット上には、早速追悼の記事やコメントが多数上がっている。 同作品の最終話では、人間としての郷秀樹は、怪獣ゼットンとの戦いで殉職したことになっているが、実際は生きていて、ウルトラマンに変身して「ウルトラの星」へ帰っていく。弟同然に可愛がって…
札幌市の東端、江別市との境界付近に、「北海道百年記念塔」がある。1968年に、北海道開基(開拓開始)百年を記念して建てられたものだ。だが現在、老朽化を理由に解体が始まっている。道民からは「仕方がない」「地域のランドマークがなくなるのは寂しい」など色々な声が上がっている。
聖書には、世界に散らされたユダヤ人たちが、再び集められ、その先祖たちに与えられた「イスラエルの地」に帰還するという預言が繰り返し出てくる。この預言は、BC6世紀、「バビロン捕囚」で捕らわれていたユダヤ人たちが、ペルシア帝国によって解放された時に成就した。 だが、それだけではない。この預言は、もう一度、しかもより鮮やかな形で成就したのである。それは今、私たちが生きてい…
(2015年9月7日初出に加筆) 手塚治虫編『世界の四大聖人―孔子・シャカ・キリスト・マホメット―』(中央公論社)という漫画が家にある。タイトルに挙げられた四人の生涯をそれぞれ描いた作品である。(尚、あくまで手塚治虫「編」であって、各話を描いているのは四人の異なる漫画家であり手塚ではない。)孔子、シャカ、マホメット(ムハンマド)の三人については、キリスト教徒である私には知ら…
タラ・ムーア著『図説クリスマス全史』(原書房)を読んだ。ローマ時代に始まり、○世紀、○世紀と時系列的にクリスマスの変遷を追う通史・・・かと思ったら、そうではなく、テーマ毎に色々な時代の色々な地域のクリスマスにまつわる文化やエピソードを紹介したものであった。 例えば、「異郷でのクリスマス」という章では故郷から離れた地でクリスマスを祝った人々がテーマになっているのだが…
私は、子どもの頃からクリスマスが大好きだった。家庭でのなごやかなクリスマスは思い出深く、クリスチャンホームではなかったが幼稚園の時から教会に通っていたので、クリスマスは「イエスさまの誕生日」として特別な日と認識していた。だから、クリスマスは実際にイエスが生まれた日ではなく、異教(太陽神を拝むミトラ教など)の祭日に起源があると知った時は非常なショックを受けた。以来私は2…
アドベント(待降節)の時期に入っている。イエスの降誕を祝うクリスマスを前にして、心備える期間である。 多くの教会の礼拝説教や、聖書通読誌のプログラムでは、キリストの降誕にまつわる聖書箇所が読まれる。その中でよく取り上げられる箇所のひとつが、マタイの福音書冒頭の「イエスの系図」だ。一見ややこしい片仮名の名前の羅列のようで、苦手に思う人も多いが、この箇所にも神からの色…
イスラエル(ユダヤ人)には、神からの特別な使命が与えられている。イスラエルを通じて、世界は祝福され、救いを受けるのである。 イスラエルの地を舞台として、イスラエル人の手によって、神のことばである聖書は書かれた。救い主イエスは、イスラエル人の中から生まれた。 ある人々は、イエスの到来をもってイスラエルの役割は終わったと考える。そして、その地位は教会に置き換えられた…
2月11日は「建国記念の日」である。「建国記念日」ではない。この日は「日本が建国された日」ではなく「日本が建国されたことを祝う日」だからだ。実際に日本が建国された日はわからないので、神話で初代神武天皇が即位したとされている日に、建国を祝うこととされたのである。「記念の日」という表現にはそんな微妙な意味合いが込められている。 クリスマスも同じだ。クリスマスは「イエス・…
もうずいぶん前になるが、韓国に行った時のこと。ある大きな教会の主日礼拝に出席した。案内してくれた人に通訳してもらって聞いた説教の内容は、次のようなものであった。ローマ11章前半からであったが、11~12節を引用する。 「それでは尋ねますが、彼らがつまずいたのは倒れるためでしょうか。決してそんなことはありません。かえって、彼らの背きによって、救いが異邦人に及び、イスラエ…
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ずいぶん昔の話になるが、ある集会で、ある有名牧師が「韓国の教会は素晴らしい。それにひきかえ日本の教会をほめる人は見たことがない。」と言うのを聞いたことがある。とにかく人数が多く、信仰熱心な韓国の教会を賛美し、片や人数が少なく信仰も冷めている(ように見える)日本の教会を自虐していたのだろう。 だが私は、同じ頃ある韓国のクリスチャンが「日本の教会は素晴らしい」とほめる…
聖書に登場する幕屋とその発展形である神殿は、天にある目に見えない「真の聖所」の影、比喩である。ヘブル人への手紙9章には、「第一の幕屋が存続しているかぎり、聖所への道がまだ明らかにされていない」とある(ヘブル9:8)。これが書かれた時はまだ神殿があったが、まもなくローマによって破壊されてしまった。霊的に見れば、イエスが十字架でご自身のからだを完全ないけにえとしてささげ、「…
いわゆる「失われた十部族」について。十二部族から成る古代イスラエル王国は、ユダ族を中心とする二部族から成る南王国「ユダ」と、それ以外の十部族から成る北王国「イスラエル」に分裂した。その後、北王国イスラエルはアッシリアに滅ぼされ、その十部族は行方不明になったとされる。これが「失われた十部族」で、その末裔が日本人になったなどと言われる。一方の南王国ユダもバビロンに滅ぼ…
ルカ16:19〜31にある「金持ちとラザロのたとえ」について。ある人々はこの箇所はたとえ話ではなく実話であり、死後の世界観について語ったものであるという。「よみ(ハデス)」は「地獄(ゲヘナ)」とは別であるとして、死後の救い、いわゆる「セカンドチャンス」の根拠とされることもある。しかし私はこの箇所はあくまでたとえ話であり、その主題も死後の世界とは別のところにあると考える。 そ…
教皇フランシスコが死去し、遺体はローマ市内の「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂」に葬られた。このサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、「聖母マリア」に捧げられた聖堂の中では最も大きく、カトリック教会の中でも格別に権威あるところらしい。 そのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂であるが、かつて「キュベレ」という女神が祀られていた神殿のあった場所に建てられている。女神が祀…
ホアン・カトレット著『薩摩のベルナルドの生涯』(教友社)を読んだ。(厳密に言うと、ずっと前に一度読んだのだが、今回本稿を書くに当たり確認のため図書館で借りて再読した。)薩摩のベルナルド、あるいは鹿児島のベルナルドは、かのフランシスコ・ザビエルが2番目に洗礼を授けた日本人である。本来の日本名は苗字が「河辺(かわなべ)」であったらしいというほかはわかっていない。彼はまだ若い武…
サタンは、イスラエル:ユダヤ人を滅ぼそうと狙っている。神が、イスラエルを特別に選び、愛しておられるから、そしてユダヤ人がイエスを信じてその名を呼び求める時、イエスの再臨が起こるからだ。だから、サタンは多くの国々や勢力、また個人を用いてユダヤ人を迫害してきた。 聖書時代のエジプトやハマン、またアンティオコス・エピファネス、そしてローマ。キリスト教が成立すると、残念…
NHK大河ドラマ『べらぼう』を観ている。第一回目で街が大火事になり、焼けそうになる稲荷神社で少女たちが「お願いかなわなくなっちゃう!」と狐像を運び出そうとしている。それを見つけた主人公の重三郎は、「いや、神様だろ……」と呆れながらも、「焼けなきゃいいんだろ!」とばかりに像をドブの水中に投げ入れる。そして神社の祠を背中に負って、運び出すのであった。以後、作中で重三郎が神…
岩城聰著『鳥瞰するキリスト教の歴史』(ベレ出版)を読んだ。キリスト教の通史であるが、一般史に関する記述も多く、その枠組の中でのキリスト教の位置づけがわかるようになっている。平易な語り口で読みやすかった。著者が聖公会の牧師であるためイングランド国教会・聖公会の記述が詳しいが、それがまた貴重である。 一方、「信徒以外の方にも理解していただけるように、できるだけ客観的な…
ヤフーニュースに、イスラエル人質解放に関する記事が出ていた。それに付されたコメント欄に、クリスチャンと思われる人物から、旧約聖書を引き合いに、ハマス批判と日本はイスラエルに寄り添うべきだとする意見が投稿されていた。私は共感を覚えたので、同意の旨と「イスラエルを祝福する者は祝福される」との原則を書き送った。何回かやりとりがあったが、置換神学の誤りや日ユ同祖論への批判…
イスラエルを祝福する信仰への批判として、「旧約聖書を強調し過ぎている。旧約聖書は、新約聖書の光で照らさなくては正しく読むことはできない」というものがある。「旧約は新約に照らさなくてはならない」というのは全くもって同意する。しかし、逆に私は問いたい。「あなたたちは旧約聖書を軽視し過ぎていませんか?」と。繰り返すが旧約を理解するには新約の光に照らす必要がある。だが一方…
ルカ2:22〜38、シメオンとアンナの箇所を読んだ。この箇所には、「イスラエル」とか「エルサレム」とか、ユダヤ人を象徴する語が複数回登場するので、これらがキーワードだと思った。 「イスラエルの栄光」(32)と呼ばれるイエスによって、万民の中から救われ(31)、啓示の光を照らされた異邦人(32)として、私は、イスラエルが慰められること(25)と、エルサレムの贖い(38)を待ち望む。「イスラ…
正月だ。正月と言えば餅である。私は餅が大好物だ。「一番好きな食べ物」と言ってもいい。最も好きな食べ方は、何も味をつけないで白いまま食べることである。いろいろな味をつけても旨いが、餅そのものが好きなので、素の味を味わいたい。 ところが最近、変化が出てきた。一番好きな食べ物の同列ぐらいにつぶあんが急上昇してきたのである。であれば、餅とつぶあんをかけ合わせれば更におい…
「どうか 神が私たちをあわれみ 祝福し 御顔を私たちの上に 照り輝かせてくださいますように。 あなたの道が地の上で 御救いが すべての国々の間で知られるために。(詩篇67:1〜2)」 詩篇67篇を読んだ。短い詩なのでぜひ直接聖書を確認してほしい。ここでは、「国々」「諸国の民」「地の国民」「地の果てのすべての者」、すなわち世界のあらゆる民族、異邦人(非ユダヤ人)が救われ、彼らの間で…
今、中山茂大著『旅人思考でイスラムと世界を知る本』(言視舎)を読んでいる。イスラム圏を中心に世界を旅した著者が見聞きした、一般市民の生の姿を描き出すショートエッセイ集である。1話につき1〜2頁という短さと、平易な語り口、そして内容のおもしろさからスラスラと読めてしまう。半分ほど読んだところだが、気になる記述が出てきたのでちょっと立ち止まってみた。 この著者、イスラム…
クリスマスは「イエスの誕生日」ではなく、実際は異教の偶像礼拝に起源がある……ということを知った時ひどいショックを受けた、という話は以前書いた。(「仮庵祭にイエスの降誕を思う」http://cavazion.seesaa.net/article/505285027.html 参照。)その時、「なぜ、聖書に根拠のない風習がことごとく否定された宗教改革で、クリスマスだけはその対象にならなかったのか」という疑問を抱いた。何…
ある人(ネット上ではなくリアルの知人)から、次のようなメールをもらった。 「ユダヤ国家が豊富な財産を用いて、キリスト教国アメリカを味方につけるために聖地旅行企画などのプロパガンダを長年続けている。」 陰謀論だ。反ユダヤ主義だ。聴くに値しない。だが、仮にそれが事実だとしても、だから何だと言うのか。私は聖書預言の成就として「ユダヤ国家」が存在していることを素晴らし…
何度も書いていることだが、重要なのでもう一度書く。 現代の「イスラエル国」の存在は、聖書の預言の文字通りの成就である。聖書に書かれているとおり、地の四方から、特に北(旧ソ連)から、たくさんのユダヤ人たちがイスラエルの地に帰ってきて、住み着いている。彼らは荒れ果てていた土地を開拓し、緑あふれる森林と、豊かな産物をもたらす農地を回復させた。廃墟は建て直され、人々が暮ら…
イスラエル(ユダヤ人)は、世界に祝福をもたらすために、特別に選ばれた民族である。具体的には、聖書はイスラエル人を通してもたらされ、救い主イエスはイスラエル人の中から生まれた。イスラエルがイエスを拒んだことさえ、異邦人に福音が広がるきっかけとされた。やがて、イスラエルが民族を挙げてイエスを信じる時に、イエスが再臨する。だから、今もイスラエルの選びに変わりはない。そして…
ユダヤ暦では、今、「仮庵祭(かりいおのまつり)」の最中だ。イスラエル人の先祖たちが荒野を旅していた時、仮庵(テント)生活をしていた事を記念する祭であり、また秋の収穫感謝祭でもある。 毎年この時期になるとSNSで何かしら発信しているのだが、イエスが実際に生まれたのは、この仮庵祭の時期だという説がある。その根拠について詳細は過去記事に譲るが、この説を知ったことは私にとって…
今、イスラエルの地で起こっていること。「聖書預言の成就」である。聖書に書かれているとおり、方々に散らされていたユダヤ人たちがかの地に帰還し、祖国を再建している。 これこそ、聖書が信ずべき神のことばであることの証しだ。ひいては聖書が指し示すイエスの十字架と復活の福音が真実であることの証しでもある。また、神が現代に至るまでユダヤ人を見捨てておられないことは、新約に於…
飯山陽(いいやま・あかり)著『イスラム教の論理』(新潮社)、並びにモサブ・ハッサン・ユーセフ著『ハマスVSイスラエル』(ヒカルランド)を読んだ。飯山陽氏は、高原剛一郎氏がYouTubeで「日本で唯一まともな中東問題解説者」と絶賛しているので、図書館で見つけた時、読んでみようと思った。その時、新着図書として並んでいたのが『ハマスVSイスラエル』である。この本、実はかつて『ハマスの息子…
今、出エジプト記を読んでいる。主は、イスラエル人を奴隷とするエジプトに次々と災いを下した。それは、単にエジプト人を懲らしめるためではなく、エジプトの多神教の神々にさばきを下すためでもあった。すなわち、ナイル川や蛙などエジプト人が神々として拝んでいたものを無力化することによって、神は唯一「主(ヤハウェ)」のみであることを彼らに知らしめたのである。 この「一神教」のメ…
今年(2024年)は、3月31日が、イエス・キリストの復活を祝うイースター(復活祭)であった。ゆかりの地エルサレムでは、キリスト教各教派の礼拝がもたれたもようである。中継動画がYouTubeに上がっていた。 プロテスタントがイエスの墓と見なす「園の墓」では、エレキギターガンガンの、現代的な賛美礼拝がささげられていた。 https://www.youtube.com/live/DB5YctEAs8Q?si=gGAhBlU3nke9nxoy 賛…
「シオニズム」とは、世界各地に離散していたユダヤ人たちが、イスラエルの地に帰還して祖国を再建しようとする運動のことである。19世紀頃に盛んになり始め、1948年の「イスラエル国」建国で頂点を見た。その後もこの流れは続き、現在もロシアやウクライナなどから多くの帰還民が押し寄せている。 シオニズムはユダヤ教から出たと思っている人がいる。シオニズムによって建てられた現代イス…
私がイスラエルについて発言すると、批判されることがある。その中に、「それはディスペンセーション主義神学だ」というものがある。ディスペンセーション主義神学ということばについては、以前から知っていた。だがその内容については、何度か学んでみたのだが、難しくていまいちよく理解できない。確かに自分の立場に似ているようでもあるが、どこか違うようにも思う。 そもそも私は「神学…
高橋沙奈美著『迷えるウクライナ』(扶桑社)を読んだ。ウクライナのキリスト教の歴史と現状について書かれているのだが、同国の宗教事情はかなり複雑である。 ロシア帝国ないしソ連の支配下にあった時代、ウクライナはロシア正教会の管轄であった。ソ連末期になるとウクライナの正教会に自治権が与えられ、「ウクライナ正教会」が成立する。しかしこの教会は組織上はロシア正教会の範疇にあり…
『サザエさん』の作者、故長谷川町子が、クリスチャンホーム生まれのクリスチャンであったことは有名である。ただ、聖霊の導きの下自らの意思で信仰を持った、いわゆる「ボーンアゲイン」したクリスチャンだったのか、単に「家の宗教がキリスト教」というだけの「宗教二世」に過ぎなかったのか、疑問に思っていた。というのも、『サザエさん』を読んでいると、確かに教会が出てくる話も稀にあり…
現在の「イスラエル国」の存在は、聖書の預言の成就なのだろうか。 ある人々は、イスラエルが紛争を繰り返していることを見て困惑し、政治的立場から、イスラエルの正統性を否定する。またある人々は、イスラエル人の大多数が未だイエスを信じていないことを見て、現在の「ユダヤ人」たちは「自称イスラエル人」に過ぎないと見なす。 ところで、バプテスマのヨハネが、イエスが本当にキリ…
イスラエルと、テロ組織ハマスとの戦争が続いている。そのためガザ地区で多くの人命が失われていることを受けて、イスラエルに対する激しい非難の声が世界中から上がっている。だが、初めにハマスが行った残虐非道なテロの数々や、ハマスが一般市民を「人間の盾」にしていることは、忘れられている。キリスト教界でも事情は同じで、パレスチナへの同情・連帯を示しつつ、翻ってイスラエルを批判…
今、井上浩一著『生き残った帝国ビザンティン』(講談社学術文庫)を読んでいるのだが、その中で、キリスト教の起源について興味深い考察があった。 以下、「オリエントの神、ギリシアの神」と題された項(145頁)からかいつまんで引用していく。著者は、「古代の地中海・オリエント世界ではふたつのタイプの神がみられた」と主張する。「ひとつは古代エジプトやバビロニアの神のように、全知全…
アドベント(待降節)である。イエス・キリストの降誕を祝うクリスマス(降誕節)を待ち望み、心備える期間だ。この時期によく歌われる賛美歌のひとつに「わがこころは」がある。(『讃美歌(1954)』95番、『新聖歌』67番。)ルカ1:46~55のいわゆる「マリアの賛歌」を歌ったものだ。 私はこの5節が好きである。「アブラハムの すえをとわに かえりみ イスラエルを 忘れまさで 救いたもう と…