昔、大学の講義室に座って、眠気と戦いながら先生の話を聞いていた時間が、今となってはなぜか少し懐かしく感じられる。黒板にチョークで何かを書き、それをノートに書き写す。実際にその内容が今の自分にどれだけ役に立っているのかなんてことは、たぶん今もわかっていない。でも、当時はそれが「学ぶ」という行為の、最も正しいやり方なんだと信じていた。でも、今は違う。今、大学の教室にはチョークの粉よりも、タイピングの音が響いている。そして、その音の先には、生成AIがいる。彼ら——大学生たちは、課題の文章を入力し、生成された答えを見つめ、時にそれをコピペして提出する。まるで自動販売機で缶コーヒーを買うように。それがいいことなのか悪いことなのか、僕にはまだよくわからない。でも、確かに言えるのは、何かが大きく変わろうとしているということだ。彼らはAIで課題を出す。ある調査によれば、日本の大学生の生成AI利用率は、わずか1年で1割から5割へと急増したそうだ。爆発的な数字だ。たとえば、文学部の学生が、夏目漱石についてのレポートを書くとき、まずAIにこう尋ねる。「夏目漱石の『こころ』について、1500字で感想を書いてく