トランプ米国大統領の政治の特徴に、「アメリカ第一主義」に基づく中国政策にみられる排除と規制がある。現在、米国の輸入関税については、全体として、国際社会は批判の目を向け、近年米国が唱える「経済安全保障(Economic Security)」という概念はともすれば曖昧であり、明示的な定義に欠けるきらいがある。 このようななかで、経済安全保障は、単に国益や安全保障上のリスクに対処するための「防衛的アプローチ」だけで...
世界のなかでアジアの果たす役割が増大しています。これからの日本企業のアジアにおける新しいビジネスのあり方について、ビジネス連携に基づく新しい価値の創出について動向の整理と視点の提示を行います。
東アジア(中国、台湾、韓国)、アセアン10カ国やインドと日本の産業・企業とのビジネス連携のあり方を考えていきます。とりわけ、中国と台湾の情報通信(含む半導体)領域に大きな力点を置いております。
トランプ米国大統領の政治の特徴に、「アメリカ第一主義」に基づく中国政策にみられる排除と規制がある。現在、米国の輸入関税については、全体として、国際社会は批判の目を向け、近年米国が唱える「経済安全保障(Economic Security)」という概念はともすれば曖昧であり、明示的な定義に欠けるきらいがある。 このようななかで、経済安全保障は、単に国益や安全保障上のリスクに対処するための「防衛的アプローチ」だけで...
米国と中国の間で続いてきた関税を巡る貿易摩擦について、米財務長官やホワイトハウスが「近い将来に緊張の緩和がある」と発言したことで、米中間の対立が一定の「軟化」方向へと向かっている可能性が示唆された。これを受け、米国の小売業者は関税によるコスト増を回避するため、有利な条件での取引を求めて政権と対話を進めている。―中国紙China Dailyが4月24日、ニューヨーク発で報じた。 主なポイント ●米政...
トランプ関税、米国のマタニティ・ベビー用品企業の輸入停止で、子育て費用が急増
最近の中国紙の報道によれば、米国の対中関税措置により、マタニティ・ベビー用品を中国から輸入していた多くの米企業が輸入を停止。これにより、乳幼児用製品の価格は上昇し、若年層の家庭に深刻な経済的負担がのしかかっていて米国の出生率低下という社会的課題に拍車をかける恐れがある。 ■ 主要ポイント 1. 米国のマタニティ・ベビー用品業界、輸入停止の動き 米国政府の中国からの輸入関税の大幅増(最...
第一次大戦後の英国の植民地インドのチャンドラボアへ、英国娘アデラは婚約者ロニーを訪ねた。彼は治安判事で、アデラの同行者ムーア夫人は彼の母だ。東洋の神秘に期待したアデラとムーア夫人は、英国人の優越意識と、それを憎悪するインド人の対立感情の存在を知るのだが、インド人医師アジスやインド人哲学者ゴッドボール、英国人教授フィールディングと知り合い、数日後、アデラらはアジスの誘いで、マラバー洞窟へ行く。小さ...
トランプ大統領の貿易戦争のなか、中国はPR攻勢を開始(そして勝利する可能性も)
要旨(サマリー) トランプ大統領による中国輸入関税策を発端に、米中通商摩擦が激化するなかで、中国政府は対外的な広報・宣伝戦略を大々的に展開し、米国とその国民をターゲットとする巧妙な情報発信に乗り出している。従来の堅苦しい宣伝とは一線を画すこの戦略は、国内外の世論を味方に付け、トランプ政権の保護主義的政策に対抗する一種の「PR戦争」として展開されており、中国はこの情報戦で、米国内の不満を増幅させ、外...
中国経済に漂う反転の気配 ― 2025年第一四半期の成長と米中通商の行方
中国紙『財新(Caixin)』の2025年4月16日付ニュースレターが伝えるところによれば、中国経済は予想外の好スタートを切った模様であり、第一四半期のGDP成長率は5.4%と市場予想を上回り、政府関係者や経済界に一定の安心感を与えている。とはいえ、国内には消費の弱さ、国外には対米関係の緊張という重しが残り、複雑な局面が続いている。本稿では、財新の報道をもとに、私たちが注目すべき三点を整理する。 1. 内...
動画、「経済安全保障上の課題への対応(民間ベストプラクティス集)」
今回取りあげるYouTube動画(11分6秒)は、経済安全保障の観点から、日本企業が直面するリスクとその対応策について、民間企業の優れた事例(ベストプラクティス)を紹介するものだ。技術情報の漏洩やサプライチェーンの停滞といったリスクに対して、実践的かつ有効な取り組みを可視化し、他の企業にも参考となる形で共有することを目的としていて参考になる。 動画は、経産省貿易経済安全保障局YouTubeチャネル(m...
アジア太平洋経済、内需と輸出が支えるも成長鈍化へ―アジア開発銀行2025年春予測
4月2日に米国が新たな関税を発表する前に確定したこの地域の予測では、アジア太平洋地域の発展途上地域における経済成長は今年と来年にかけて鈍化すると示されている。不動産セクターの継続的な低迷と米国の関税引き上げによる中国経済の減速は、南アジアの成長率上昇によって部分的に相殺されると予想されている。 この地域は、貿易障壁の高まりと貿易上の大きな不確実性という課題に直面するものの、堅調な国内需要と電子機...
トランプ氏が揺さぶる国際的な半導体貿易と秩序とオープンイノベーション
はじめに:半導体製品の輸入関税? トランプ米国大統領は4月13日、輸入半導体に対する関税率を今後1週間以内に発表すると述べ、同分野の一部企業には柔軟な対応を取ると付け加えた。トランプ氏の表明は、スマートフォンとコンピューターを対中国相互関税の対象から除外する措置が、半導体分野の貿易再編を目指すトランプ大統領にとって短期的なものとなる可能性が高いことを示唆している。 ホワイトハウスは11日に、高額な相...
中国DeepSeekと清華大学、低コスト・高性能のAIモデル訓練手法『SPCT』を発表
中国のAIスタートアップDeepSeek(杭州深度求索、浙江省杭州市)は、AIモデルのオープンソース化と迅速な実装を重視するアプローチにより、大規模言語モデル(LLM)の推論能力を向上させ、今年1月のDeepSeek-R1の打ち上げで、世界のAI領域で一躍脚光を浴びた(「中国スタートアップDeepSeekのAIモデル、世界のAI市場に衝撃」(2025年1月29日)を参照)。 先ごろ、DeepSeekと北京市の清華大学は共同で、膨大なトレー...
ファーウェイ、2024年決算を発表:研究開発投資、AIとHarmonyOSで成長を加速
ファーウェイは先月31日、2024年度年次報告書(Annual Report)を発表した。ファーウェイは2024年度の年次報告書を発表し、業績は予測通りであると述べた。 売上高は8,621億元、純利益は626億元に達し、売上の約21%に相当する1,797億元を研究開発に投資した。コネクティビティ、コンピューティング、デバイス、クラウド、デジタルパワー、車載ソリューションといった多角的な事業が着実に進展し、特にAIとHarmonyOSに...
中国の対トランプ関税戦略:米中対立における“正当性”の主張とは
中国紙China dailyに4月10日に掲載された記事、China hits back at US tariffs to defend rules-based tradeを読み、中国のトランプ政権の関税政策批判と中国の基本的な対応の考え方の特徴についてまとめると、次の5項目のようになる。 ●ルール重視の正統性アピール:中国は自身の対応を「ルールに基づく多国間貿易体制の擁護」と位置づけ、米国の一方的措置を「覇権的」「保護主義的」と非難している。 ●多国間主義の強調...
トランプ氏の関税は「アメリカ後の世界」を現実のものに:アメリカの後退と世界の多極化
“America still dominates the world, but the larger structure of unipolarity―economic, financial, cultural―is weakening.” ― Fareed Zakaria, The post-American World, 2008 はじめに アナリストやコメンテーターたちは、一世代にわたって「アメリカ後の世界(post-American world)」の到来について議論してきた。ジャーナリスト兼アナウンサーのファリード・ザカリア氏...
シンガポールのローレンス・ウォン首相は4月8日、議会で、同国政府が米国のドナルド・トランプ大統領が課した関税の影響に対処するためのタスクフォースを立ち上げると述べた。ウォン首相は、米国が全輸入品に対して10%の一律関税を課す決定を受け、同関税が交渉の余地がなく、シンガポールの貿易依存型経済に深刻な影響を及ぼす可能性があると懸念を示した。 ウォン首相は、シンガポールが直接的な関税の影響...
反トランプ、「Hands Off!(手を出すな!)」デモ、市民権等への政治干渉を拒絶
2025年4月5日、全米および世界各地で「Hands Off!(手を出すな!)」と題された大規模な抗議デモが行われた。このデモは、トランプ大統領とその顧問であるイーロン・マスク氏の政策に反対するもので、社会保障や医療補助、消費者保護の削減、さらには新たな関税政策など、多岐にわたる政策への抗議が含まれている。 抗議デモの概要 規模と範囲: 全米50州および海外で1,300以上のデモが行われ、主要都市では大規...
はじめに 4月2日、トランプ大統領は広範囲にわたる「相互関税」を発表し、これにより国際社会や国内外の市場から極めて強い反発と反応が、さらには共和党内からも反応が寄せられた。以下に、その主なポイントを3点にまとめ記す。これらの反応は、トランプ大統領の関税政策が国内外で大きな波紋を呼んでいることを示すものだ。 1.国際社会の反応 ●欧州連合(EU)は、米国の関税措置に対し、報復関税を検討していると表...
日立が提案する「社会参加のすゝめ」—シニア向けデジタルアプリで健康&つながりを支援
日立製作所(以下、日立)がデジタルの力でめざす未来は人々の快適で豊かな暮らしと、持続可能な地球環境の両立。日立のデジタルの取り組みを紹介する企画
中国経済、成長目標維持と財政赤字拡大:持続可能な成長への試練
「約5%の目標は、私たちの中期および長期の開発目標とよく一致しており、困難に正面から立ち向かい、達成に向けて懸命に努力するという私たちの決意を強調するものである」 ― 先月初旬に全国人民代表大会(全人代)の年次政府活動報告で李強首相は述べた。 年次政府活動報告書によると、中国が2025年に約5%のGDP成長目標を達成するには、①国内需要の刺激、②不動産セクターの安定化、③外部不確実性の乗り越えなど...
逆効果のビザ政策:トランプ政権の留学生締め付けが招く米国の後退
たまたまインドの経済紙、The Economic Timesの記事をながめていて、米国の海外留学生のビザ問題の状況に関する記事、「Leave America! Indian and other students face visa revocations even for an Insta 'like'(アメリカを出て行け!インド人などの学生はインスタグラムの「いいね」をしただけでもビザ取り消しに直面)」が目に留まった。 記事は、米国国務省が留学生に対するビザ取り消し措置を講じている現...
「ブーメランを投げるときは、それが跳ね返って自分に当たらないように注意しなければならない。ドナルド・トランプは同盟国を脅迫することで、そのような跳ね返りを危険にさらしている」 ロイター通信は過日、ロンドン発で― “Donald Trump’s boomerang will hit the US hard”, The Reuters, March 24, 2025を掲載し、「大統領の2期目が始まってわずか2カ月で、かつて友好的だった国々はもはやこの気まぐれな超大...
「AIハンターの井上咲楽さんが、生成AIを活用したシステム開発に精通した日立のGenAIアンバサダーの五十嵐さんへ突撃取材!「日立の生成AIとは?」「実業務にどのように活用したら良いの?」「システム開発に生成AIをどう適用するのか?」といったみなさまの疑問やお悩みにお答えします!」 ここではYouTubeのHitachi Brand Channelに掲載された短い動画(約12分)を視聴し、日立の生成AI活用によるシステム開発の...
中国発Xiaomi、日本で攻勢開始!イオンモールに続々出店へ
小米(Xiaomi、本社:北京市)の日本初となる直営店「Xiaomi Store一号店」がさいたま市の「イオンモール浦和美園」にオープンした。 Xiaomiの趙欣然氏は3月23日、微博Weiboに該当店舗の実際の写真を投稿し、現場は人でいっぱいだったと語った。 これまでの報道によると、小米は日本国内で5位のスマホブランドとしての影響力を生かし、スマホと家電製品を組み合わせた「スマートホーム」ビジネスモデルを中国市場か...
ファーウェイのAI技術開発と成長をNvidiaが指摘:米国制裁下でも着実な成果
ファーウェイは参入しているすべての市場で躍進している。これは私たちが言っているのではなく、NvidiaのCEOであるジェンスン・フアン(Jensen Huang、黃仁勳)氏がファーウェイの AIの進歩について明らかにしたことだ。彼は、Ascendチップメーカーはあらゆる面で強力なライバルになりつつあると述べた。 Nvidiaの会長、フアン氏は、3月19日に英国Financial Times紙のインタビューを受け、会話のなかで、彼はファー...
FRBの見立て:トランプ関税がインフレに与える影響は短期的か
「一時的という良い船」は、不吉な記録にもかかわらず、連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、以下、FRB)にとって再び出航する準備ができているようだ。 中央銀行が3月19日に発表した経済予測によると、当局者は今年のインフレが以前の予想よりも急速に上昇すると見ているが、その傾向は短命であるとも予想している。この見通しはFRBにとって大きな政策上の頭痛の種となっている「一時的」インフレについて...
中国自動車市場:2月の販売は前年同月比34.4%増、NEVが急成長しシェア42%に到達
中国汽車工業協会(CAAM)は3月11日、2025年2月の自動車市場動向を発表した。自動車販売台数が対前年同月比34.4%増の212万9,000台、生産台数が39.6%増の210万3,000台となった。また、同月の自動車販売台数の内訳をみると、国内販売台数が168万8,000台(39.9%増)、輸出台数は44万1,000台(16.9%増)となった。対前月比ではそれぞれ12.2%減、14.1%減だった。 販売台数の内訳は、乗用車が181万5,000台(対前年...
ノートPC業界の大転換:中国依存から東南アジア、そしてインドへ
米国のトランプ政権は中国に対する新関税適用を実行している。世界3大ノートPCブランドであるレノボ、HP、デルは中国以外での生産戦略を強化しており、東南アジアへのシフトが大きな焦点となっている。また、アップル生産拠点の移転を続けるなか、クアンタ、ウィストロン、コンパル、インベンテックなどの大手受託製造業者は、顧客の需要に応えて東南アジアでの展開を積極的に強化している。― 台湾紙、経済日報が3月17日報じた...
アジア経済2025年第1四半期レビュー:各国の動向と注目ポイント
本稿ではアジア経済の足もとの動きをざっとながめていきたい。以下、中国、インド、アセアン諸国(ASEAN)の状況を中心に整理する。4月から5月になれば、アジア経済関連の第1四半期のデータや主要機関の情報が出てくるので、アジア経済の見方もより鮮明になろう。 中国 ●GDP成長率:世界銀行は、中国の2025年の経済成長率を4.5%と予測している。 ●インフレ率:政府は、デフレ圧力を考慮し、インフレ目標を約2...
表面的には、今週発表された2月のインフレデータは、いくつかの心強いニュースをもたらした。しかし、その裏には、金利に関してはFRB(Federal Reserve Board、米連邦準備理事会)が据え置きを続ける可能性が高い兆候があった。― 米CNBCが3月13日報じた。 消費者物価指数(Consumer Price Index、CPI)と生産者物価指数(Producer Price Index、PPI)はどちらも予想を下回ったが、FRBがインフレを測定するために使...
中国の電池メーカーと自動車メーカーは、成長の新たな原動力を求めて、固体電池(solid-state batteries)の小規模な使用を開始する計画を立てている。しかし、広く商業的に使用されるようになるまでには、解決すべき技術的な問題がまだいくつかある。 固体電解質(solid electrolytes)を使用することからその名が付けられた固体電池は、高電圧、高容量のカソードを可能にするため、電気自動車(EV)業界にとって...
次に掲げる記事は6年半ほど前に掲載した記事、【図書】トゥキディデス『戦史』を読む、2019年9月7日である。この記事は第一次トランプ政権のもとでの米国と追いあげる中国の状況をみるなかで描いたものであるが、トランプ政権2.0に入った今も米国と追いあげる中国の地政学的な対立が続いており、参考になると思うので、掲載させていただく。 ―――――――――――――――――――――――――――― ここのところ古代アテナイ(アテネ)の歴史家、...
アップル vs. ファーウェイ:中国プレミアムスマホ市場の覇権争い
香港Counterpoint社の最新のスマートフォンモデル販売データによると、中国のプレミアム(600米ドル以上)スマートフォンセグメントの販売シェアは、2018年の11%から2024年には市場全体の28%に急増した。中国のスマートフォン市場では、2017年以降、プレミアム化への顕著なシフトが見られ、この傾向は米国政府によるファーウェイ規制以降加速した。 アップルとファーウェイは、長い間、中国のプレミアムスマート...
BYD(比亜迪、本社:広東省深圳市)の創業者で、会長兼CEOの王伝福氏は2023年初頭、自動運転を「でたらめ」と呼んでいた。その中国の自動車メーカーが今年2月10日にGod’s Eyeインテリジェント運転システムを搭載した21の低価格モデルを発売したことは驚きだった。 これらのモデルの定価は7万元(9,650ドル、141万8,500円)から20万元で、中国で自動運転機能付き車両を購入するのにかかる費用の下限にあたる。 &...
ファーウェイとTSMCの紛争を受け、米国政府は中国の半導体成長を懸念
ファーウェイと台湾TSMCの半導体チップ紛争は米国と中国の関係の緊張を高めている。米国政府は、輸出規制が厳しくなっているにもかかわらず、中国企業が高度な半導体チップセットを入手していることを懸念している。 トランプ大統領の指名を受けたジェフリー・ケスラー米商務省次官(産業・安全担当)は、2月27日の米国上院銀行委員会の公聴会でTSMCが中国のファーウェイに大量の半導体を供給したとの報道を「大き...
トランプ氏のロシア外交と欧州の独自防衛戦略の模索:「西側」の終焉か?
ワシントン・ポスト紙の3月3日配信のWorldView: Trump and the end of the geopolitical ‘West’と題するニュ-スレターは、ドナルド・トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との衝突、そしてそれが地政学的な「西側」の終焉を示唆する可能性について論じている。主なポイントは、①トランプ政権の対ウクライナ政策が縮小し、ロシアへの譲歩が続く可能性がある、②ヨーロッパの指導者たちはウクライナ支持継続を表明した...
ウクライナのゼレンスキー大統領がワシントンを訪問し、トランプ米大統領と会談した際、両者の間で激しい口論が発生し、米国・ウクライナ首脳会談は決裂し、当初予定されていた鉱物資源の共同開発に関する合意が成立しなかったことは既に報道されている通りである。 今回の米ウクライナ首脳会談に関する米欧の報道は次の通りである。 1.トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談は、ロシアへの対応を巡る意見の相違から...
米国専門家が警告する中国DeepSeekの台頭―AI競争は新局面へ
「人工知能の覇権をめぐる世界的競争はますます激化しており、米国は長らく優位に立ってきた。しかし、中国は単に追い上げているだけだという思い込みで行動している人は、目を覚ます必要がある。中国は単に競争しているのではなく、革新を進めており、そのやり方は世界の AI 環境を根本的に変える可能性がある」。 中国の英字紙China Dailyは2月25日、”DeepSeek a wake-up call for global AI industry”(DeepSee...
ファーウェイ、2024年売上高は22%増、今年も新製品投入で成長継続を目指す
ファーウェイ会長の梁華(ハワード・リャン)氏は、同社の年間売上高が2024年に1,180億米ドルを超えると明らかにしたと報じられた。梁氏は2月5日、広州省で開催された高品質開発フォーラムで基調講演を行った。同氏はスピーチでで、2024年はファーウェイにとって厳しい年だったが、同社はあらゆる状況に対処し、見事にやり遂げたと述べた。― Huaweicentral.comが2月5日報じた。以下、要旨と主要なポイントを記す。 ...
「トランプ氏のロシア戦争発言と『文化的絶望の政治』:民主主義の危機」
はじめに ロシアの独立国家ウクライナに対する一方的な侵略から三年。米国では、ドナルド・トランプ政治2.0が始まってまだ一月あまりに過ぎないが、世界の主要紙にみるトランプ大統領の発言を読むにつけ、ある意味で非理性的不条理を感じる。 トランプ氏が、ビジネス的な発言をしている仮定しても、彼の政治的発言はまるで意味をなさない。こうした人間がロシアとウクライナ戦争に介入するのはいかなる国際的な正義に基づき...
ファーウェイ、中国の半導体チップ不足状況は改善しつつあると発言
ファーウェイは「中国のチップ不足懸念」について習近平主席に前向きなニュースを伝えた。同社は中国の技術が徐々に改善していることを明らかにした。 半導体とOSの状況は制御されており、将来的には改善するだろう。中国の主席は最近民間部門の幹部と会談した。彼は米国を拠点とする障害に関する緊張とそれが中国の技術分野に与える影響について議論した。ファーウェイはこの件で安心感を与えたようだ。ファーウェイ創業者の任...
ファーウェイ、中国の半導体チップ不足状況は改善しつつあると発言
ファーウェイは「中国のチップ不足懸念」について習近平主席に前向きなニュースを伝えた。同社は中国の技術が徐々に改善していることを明らかにした。半導体とOSの状況は制御されており、将来的には改善するだろう。中国の主席は最近民間部門の幹部と会談した。彼は米国を拠点とする障害に関する緊張とそれが中国の技術分野に与える影響について議論した。ファーウェイはこの件で安心感を与えたようだ。ファーウェイ創業者の任正...
【覚書】トランプ大統領の政治介入はいかなる正義に基づきうるか
トランプ大統領の外交は一貫して「アメリカ第一主義(America First)」を掲げ、伝統的な同盟国や国際機関との協調よりも、アメリカの利益を最優先する傾向がある。その結果、多くの「不条理」とも言える状況が生じる。 1. ウクライナ和平交渉の不条理 先頃のトランプ大統領と7プーチン大統領との直接交渉の件でも、ウクライナを交渉の場から排除する形になり、主権国家の意思を無視する「不条理」な構図が浮...
【再掲】米国の「輸出管理(Export Control)」の問題と課題
“A lot of the controls we exercise in Washington are tantamount to damming up the Potomac while all the other rivers flow freely,”̶ Gordon England, Deputy Secretary of Defense, 2008 企業の輸出管理(Export Control)では、輸出管理を直接担当する部門を軸にして、企業のトップ経営者を含めた全員が”Nonproliferation(拡散防止)”を合言葉に輸出管理の努力をしている。筆者が現役時代、例えば、在香港地...
コンサルティング会社ジャンコ・アソシエイツ(Janco Associates)が米国労働省のデータを基に発表したレポートによると、IT 労働者の失業率は昨年12月の3.9%から1月には5.7%に上昇し、先月の全失業率4%を大きく上回り、失業者数は12月の98,000人から先月は152,000人に増加した。 ̶ 米国ウォールストリート・ジャーナルは2月7日付で報じた。以下、記事の最初の部分の要約である。 米国労働省統計局は2月9日、雇用市場は引き...
中国AI産業の未来を切り拓く:ファーウェイとDeepSeekの挑戦
ファーウェイとDeepSeekは、米国の輸出規制対応で、中国AI産業を再編し、米国製品依存を軽減するための取り組みを進めています。ファーウェイは改良されたAIチップ「Ascend 910C」を開発し、DeepSeekはそのチップを活用して高性能で低コストのAIモデルを提供。これにより、中国は米国の技術的な制約に対応する新しい能力を得つつある。 足もとの中国の動きのポイントを示すと次の三点に要約される。 1.技術革...
トランプ大統領、石破首相、USスチールの問題は「買収でなく投資で合意」
トランプ大統領は2月6日、苦境に立たされている鉄鋼メーカーUSスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)とホワイトハウスで会談した。USスチールは長年望まれていた日本製鉄による買収について決定を求めている。 日本製鉄によるUSスチールへの149億ドルの買収提案は先月バイデン前大統領により阻止された。トランプ大統領はこの取引に反対しているが、テクノロジー分野への日本の投資は歓迎している。 ...
米中のライバル関係はゼロサムゲームである必要はない ― 香港紙より
先ごろ、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストは、”The US-China rivalry doesn't have to be a zero-sum game: Jessica Chen Weiss”と題する記事を掲載した。 この記事は、同紙が行った米国の米中関係の専門家であるジェシカ・チェン・ワイス(Jessica Chen Weiss)教授に対するインタビューの記録であり、主なポイントは次の四点である。総じて、ジェシカ・チェン・ワイス教授は、米中関係の現状と将来に対...
米国のドナルド・トランプ大統領はカナダとメキシコに25%の追加関税を課し、中国にも10%の追加関税を課し、2月4日から実施すると発表した。 これはトランプ氏が最初の任期中にやったことよりもはるかに積極的な対応であり、メキシコ、カナダ、中国への追加輸入関税は、トランプ大統領が「史上最高の発明」と評する関税の異例な使い方の大きな試金石となるが、米国のメディアを含め、否定的な論評の報道が相次いでい...
DeepSeek創業者インタビュー「中国AI、米追随を脱す」:日本経済新聞
先日、中国スタートアップDeepSeekが発表した安価で高性能なAIモデルが米国をはじめとする業界に波紋を及ぼしたことは当ブログでも紹介した。中国のAI業界で新しいイノベーション企業が登場し、米国などに斬新なシグナルを送り始めた。 日本経済新聞(以下、日経)は1月30日、このDeepSeekの創業者である梁文鋒氏に昨年7月、中国紙36Krが行ったインタビュー記事の邦訳を紹介する有意義な記事を掲載した。梁氏の次の...
2024年の中国スマートフォン市場:微増する全体販売とブランド間の明暗
香港の調査会社Counterpointは最近、2024年の中国スマートフォン市場に関する新しいレポートを発表し、中国のスマートフォン市場の販売は2024年に対前年比1.5%増加したと述べた。 全体的な成長にもかかわらず、主要ブランドのパフォーマンスには顕著なばらつきがあった。ファーウェイの販売は対前年比36%の驚異的な成長を記録し、小米が10%、vivoが6%で続いた。対照的に、アップルの販売は対前年比13%、OPPOは9%、H...
中国スタートアップDeepSeekのAIモデル、世界のAI市場に衝撃
中国の人工知能(AI)スタートアップであるDeepSeekは、世界トップクラスのチャットボットに匹敵する性能を、その数分の1程度の低コストで実現する画期的な生成AIモデルを披露し、シリコンバレーを感心させると同時に慌てさせている。― 世界のマスメディアが一斉に報じた。 DeepSeek(杭州深度求索、浙江省杭州市)は2023年にヘッジファンド、ハイフライヤー・クオント(幻方量化)のCEOである梁文峰氏によって設...
ファーウェイ欧州のCEO、ケネス・フレドリクセン(Kenneth Fredriksen)氏は、スイスダボスの世界経済フォーラムの特別円卓会議昼食会でEuronews Businessのインタビュー取材で「ファーウェイはトランプ第2次政権の下での課題に取り組む準備が整っている」と語った。 フレドリクセン氏は、トランプ政権の復帰による地政学的な影響にもかかわらず、ファーウェイは十分な準備ができており、欧州市場で引き続き貢献する意向を...
OpenAIが「Operator」を発表 – AIエージェントの新時代到来
OpenAIは1月23 日ブログ投稿を公開し、独自のブラウザを使用してユーザーに代わってタスクを実行するAIエージェント「Operator」のリリースを発表した。今回発表の「Operator」はGPT-4oの視覚機能と強化学習による高度な推論を組み合わせた新しいAIモデル「Computer-Using Agent(CUA)」を使用し、これにより、ウェブページ上の要素を人間のように認識し、クリックや入力などの操作が可能である。 新しいツールは...
はじめに ドナルド・トランプ大統領の二期目が始まり、「アメリカ・ファースト」主義の施策が相次いで出されている。世界最大の経済国家アメリカの保護主義と内向き政治が世界の国や地域に大きな変化をもたらし始めており、この状況のインパクトを踏まえた国際社会の変化と新しい競争がどのように形成されるのかの考察が重要になっている。 米国紙の考察:世界経済フォーラムの状況 ワシントン・ポスト紙が1月2...
NVIDIA CEOが北京で体験、ファーウェイの三つ折りスマホを絶賛
NVIDIA CEO兼創業者のジェンスン・フアン(Jensen Huang、黃仁勳)氏がファーウェイの三つ折りスマートフォンMate XTを絶賛した。同氏は世界初の三つ折り式端末を数分間使用し、その耐久性のある折りたたみを体験して「信じられないくらい素晴らしい」と評した。 ジェンスン・フアン氏は最近、中国北京市で開催されたNVIDIAの春節感謝パーティーに出席した。この祝祭イベントで、同氏は中国文化への愛着を明かし...
【動画】トランプ新大統領 就任演説:「アメリカ・ファースト」強調
ワシントンの連邦議会で20日行われた大統領就任式で、ドナルド・トランプ氏は、宣誓を行い、第47代米国大統領に就任した。 トランプ大統領は、就任演説で、アメリカの歴史と誇りを強調し、国民が一丸となり「偉大なアメリカ」を再建すると訴え、アメリカの利益を最優先にし、国内産業の復活と経済的繁栄を目指すと宣言した。スピーチ全体を通じて、トランプ氏は「アメリカの再建」「愛国心」「経済復活」といったテ...
IMF(国際通貨基金)は1月17日、世界経済見通し(World Economic Outlook、以下。WEO)を更新した。 世界経済の成長率は 2025 年と 2026 年ともに実質3.3%と予測されており、過去 (2000~19年) の平均である3.7%を下回る。2025年の予測は、2024年10月の世界経済見通し (WEO) の予測とほぼ変わらない。これは主に、米国の上方修正が他の主要経済の下方修正を相殺したためである。世界の総合インフレ率は 2025年に4.2...
世界の国や地域は、トランプ次期米大統領の就任に伴う潜在的な政策シナリオを見すえ、対応を模索している。今回は、香港紙、South China Morning Postが1月14日に掲載した記事、” China’s top exporting regions pare back GDP targets under shadow of tariff threats”を取りあげ、中国の輸出地域の状況を記す。 要約 中国の主要な輸出地域は、2025年の国内総生産(GDP)の目標を中程度に設定し、年次業務報告...
iPhoneの出荷減少で、アップルの中国市場シェアが低下:アナリスト・クオ氏
香港の著名な証券アナリスト、ミンチー・クオ(郭明錤、Ming-Chi Kuo)氏は1月10日、iPhoneの出荷減少により、同社は中国での市場シェアを失っていると指摘した。 「アップルは主要サプライヤーと2025年のiPhone生産計画について話し合う際に慎重な姿勢を取っている」とサプライチェーンアナリストのクオ氏は投稿で記した。同氏は、新型iPhone SE 4の発売が予想されるにもかかわらず、2025年上半期の出荷台数は前年...
トランプ氏の関税、貿易政策と企業:潜在的シナリオ対応と経営戦略
はじめに 先日、中国米国商会(中国美国商会、American Chamber of Commerce in China)の機関誌、AmCham China Magazine (Issue 4, 2024)所収の記事、Trump, Tariffs, and Trade: What Businesses Need to Know(トランプ、関税、貿易:企業が知っておくべきこと)を同組織が配信するWeekly Bulletinに拠り読んだ。記事の著者はブランズウィックグループの北京在住のパートナー、ピータージスク(Peter Zysk)氏であり、大変...
アメリカのAIにとっての絶好の機会 ― マイクロソフト副会長
マイクロソフトのブラッド・スミス(副会長兼社長)氏が同社のブログ欄に”The Golden Opportunity for American AI”と題する記事を掲載した。以下、この記事の要約と主なポイントを整理し掲載する。 要約 スミス氏は、AIが米国経済を活性化する「現代の電気」としての可能性を強調し、今後4年間が経済成長を決定づける重要な時期であると述べている。記事では、米国がAI分野でリーダーシップを維持するための戦...
中国の中国の電気自動車領域は、新旧様々な企業が厳しい戦いを繰り広げている。ここでは、新興企業である蔚来汽車(以下、NIO)を取りあげ、最近の動きを記す。 上海市に本社を置く新興電気自動車(EV)メーカーのNIOは2024年12月下旬、広東省広州市で「NIO Day 2024」を開催し、同社を設立した2014年から10年間の技術を集約したスマートEV「NIO ET9」を発表した。 この車は、同社が開発したAI活用の...
中国のAIスタートアップ企業が米国のOpenAIへの挑戦で躍進
OpenAIのChatGPTが2022年後半に生成AIへの世界的な熱狂を引き起こして以来、中国のテクノロジー部門は計算能力と最先端のモデルに焦点を当てた投資が加速している。 中国で最も初期の生成AIスタートアップ企業のひとつである北京智譜華章科技有限公司は、2019年に清華大学計算機系の知識工学実験室の技術成果を基に設立され 新世代の認知知能大規模模モデルの開発に注力し、自社開発の智譜AI(Zhipu AI)により、中...
先ごろ、アリゾナ州のチャータースクール委員会は「アンバウンドアカデミー(Unbound Academy)」が 1 日 2 時間のAI活用のカリキュラムを提供する学校開設の申請を承認した。 新しく承認されたチャータースクール、アンバウンドアカデミーでは、新年度入学の4 年生から 8 年生までの生徒のカリキュラムをAIで教えるというユニークな取り組みを提供する。生徒は通常6時間の授業に出席し、そのうちの2時間はAIアプ...
米国政治が新しい局面に入った。政治が同盟国の企業の米国との産業連携に否を唱える。米国大統領、バイデン氏が日本製鉄のUSスチールの買収の中止に関する発表を出し、日本製鉄は、米政府が命じた米鉄鋼大手USスチールの買収禁止が法令違反に当たるとして、米国政府を提訴する方針を固めたという。 日本製鉄はこれまでUSスチールとの企業連携について、話し合い、プランを策定し、実施可能な買収に基づく新しい現地...
中国電気自動車大手、BYD(比亜迪)は2024年に新エネルギー車(NEV)の販売台数427万2,000台という記録破りの記録を達成し、歴史的な節目を迎えた。プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数が72.83%急増したことが牽引し、前年比41%増となった。BYDのバッテリー電気自動車(BEV)の販売台数は12.08%の小幅な伸びを示し、同社は18.5%のシェアで世界のBEV市場をリードし続けるテスラの強力なライバルであり続けている。 &nb...
明けましておめでとうございます。グローバリゼーションのなかで、変化ながら前進するアジアの姿を考察し、日本へのインパクトなどを考えながらテーマを取り上げ、週3回から4回のペースで、ブログの更新を行いますので、本年もよろしくお願いいたします。年の初めの景気付けに「香港の獅子舞」の写真を添付します。23年前の旧正月に香港のアパートで撮ったものです。...
ファーウェイは、市場にいくつかの象徴的な製品を投入した後、今年を締めくくろうとしている。ハードウェアからソフトウェアまで、同社は2024年に印象的なデバイスを提供してきた。ファーウェイは、次のレベルのイノベーションで2025年に大成功を収める準備ができているようだ。 ファーウェイのコンシューマー事業グループ董事長のリチャード・ユー(余承東)氏は最近、テクノロジーの世界における消費者の絶え間な...
世界銀行:中国経済、成長の勢いを回復させる鍵は国内需要の抜本的拡大
さまざまな課題があるにもかかわらず、中国の経済成長は今年最初の3四半期で4.8%と堅調に推移している。2024年第2四半期以降は、国内需要の低迷と不動産セクターの長期低迷により、成長は鈍化しており、政府は、短期的な国内需要支援と長期的な金融安定目標のバランスを取ることを目的とした政策刺激策を実施している。 世界銀行は12月26日、中国経済の回復のための政策提案、Reviving Demand, Regaining, Moment...
台湾のTSMC熊本工場量産開始 国産半導体、ソニーなどに供給
今年2月に工事が完了した半導体受託製造最大手、TSMC(台湾積体電路製造)の熊本県菊陽町の半導体ウェーハ工場が量産を開始したと国内各紙が12月27日報じた。 熊本県の木村敬知事は27日、TSMCが菊陽町に建設した第1工場で製品の量産を始めたと明らかにした。これまで日本が輸入に頼ってきた経済安全保障上の戦略物資が国内で製造され、ソニーグループなどに供給される。半導体産業の再興を目指し、政府が1兆円超の...
香港のIPO(Initial Public Offering、新規株式公開)市場は2024年12月に回復の兆しを見せており、3年間続いた上場低迷に終止符が打たれる可能性を示す。この回復は主に中国企業の活動増加によるものだ。 足もとの動きをみると、例えば、①今秋10 月、中国の AI チップ企業 北京市のHorizon Robotics は香港の IPO市場で最高価格の設定で、6 億 9,600 万ドルを調達し、この上場の成功は、テクノロジー主導の企業...
クリスマスを終え、今年もいよいよ年の瀬である。現在の資本主義はさまざまな課題を抱えながら新しい年を迎える。今日は、資本主義と倫理の今日的課題について、ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエル(Markus Gabriel)氏の「倫理資本主義」を取りあげ、いくつかのポイントを記し、読者諸氏のご参考に供したい。 マルクス・ガブリエル氏は、現代の資本主義が直面する倫理的課題に対し、「倫理資本主義」という概...
【視点】なぜ中国の消費社会は成長しないのか:政府施策と消費マインドの行方
はじめに:問題の所在 今年一年を振り返ると、中国では個人消費支出の伸びが低迷し、北京政府を悩ませている。本稿は、今年の中国経済のなかで、政府の積極的なマクロ施策にもかかわらず、個人消費支出や消費財の売上が停滞する深刻な状況に的を当て論じる論説を取りあげ紹介する。今回取りあげる論説の著者、Stephen S. Roach氏は米国の経済学者で、イェール大学のジャクソン国際問題研究所のシニアフェローである。 ...
成熟チップ市場で拡大する中国の影響力:米中半導体戦争の新局面 ― 台湾紙
米中半導体チップ戦争はいまだ終わる兆しが見えず、スマートフォンや自動車、家庭などの製品に広く使われる成熟したプロセスのチップでは中国本土が優位に立っている可能性があるとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は分析した。成熟したプロセスチップが幅広く存在するため、中国本土の戦略は新たな競争分野を生み出している。― 台湾の経済日報が12月23日付で報じた。以下、経済日報記事の要約である。 1...
ドナルド・トランプ氏の政権移行チームは、新政権の初日に米国をWHO(世界保健機関)から脱退させようとしていると米欧マスメディアが報じた。以下、英フィナンシャル・タイムズ紙記事の要約である。 1.トランプ氏の政権移行チームによるWHO脱退計画 トランプ氏の政権移行チームは、次期政権の初日に米国をWHOから脱退させる意向を示している。これは、世界保健に壊滅的な影響を与え、WHOの資金不足や公衆衛生...
ファーウェイの自動車ソリューション事業の売上高は2024年に4倍に急増
ファーウェイのスマート自動車ソリューション事業の売上高は2024年に4倍に増加したという。同社はスマートフォン業界で主導権を握っているだけでなく、スマートカーソリューション事業でも成功を収めている。 中国紙、毎日経済新聞は12月18日、ファーウェイの自動車ソリューション事業の売上高が 2024 年に前年比4倍に急増し、HarmonyOS を搭載したスマートカーの出荷台数も7 倍に増加したと報じた。ファーウェイ...
【動画紹介】中国、国際メーカーはトランプ関税にどう備えるか?
国際ビジネスを展開する企業は今、トランプ次期政権下での米国関税の可能性を見越して、生産拠点の多様化を計画している。第1次トランプ政権の高関税実施からほぼ数年あまりが経っており、中国企業も国際企業も生産、販売、設計をはじめ、それぞれの置かれた環境下で企業はより回復力と適応力を高めるよう求められている。 ここでは、掲題のYouTube動画、
今年の世界半導体市場の成長加速:10月の売上高が前年比22.1%増
米国半導体工業会(Semiconductor Industry Association、以下、SIA)は、2024年10月の世界半導体売上高が前年比で22.1%増加し、569億ドルに達したと発表した。前月比では2.8%増で7カ月連続増加した。月間売上高はWSTS(World Semiconductor Trade Statistics)によって集計され、3カ月の移動平均(Three Month Moving Average)値を表している。 さらに、SIA が承認した新しい WSTS 業界予測は、2024年に向け...
ひさしぶりに、足もとで掲載した記事一覧を作成した。なお、本ブログの機能として、①右欄の「アーカイブ」から「年別」「月別」記事の検索ができると同時に、②右上の欄に設置した「ブログ内検索」にキーワードを入れると関連記事の検索ができるのでお試しください。 2024/12/17:トランプ関税、米国も打撃:GDP1.1%減少の試算2024/12/16:中国の半導体企業、米国の最近の輸出規制に対し対応力をつける2024/12/15:...
トランプ次期大統領が掲げる高関税政策は、米国経済のみならず、世界経済にも広範な影響を与える見通しだ。トランプ氏が11月25日に表明した関税政策の影響を、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所が試算した。 米国では、メキシコやカナダ、中国に対する関税引き上げにより、物価上昇や雇用減少が進み、2027年の国内総生産(GDP)は1.1%押し下げられると試算され、特に農業や鉱業が大きな打撃を受け、国内消費の減...
中国の半導体企業は、重要な半導体製造装置や技術を標的とした最近の米国の輸出規制に対し、回復力と適応力を発揮している。主な動向は以下の通り。 1.サプライチェーンの現地化戦略と回復力の向上 多くの中国の半導体企業は、サプライチェーンのローカリゼーションに向けた取り組みを加速させ、規制による混乱を最小限に抑えている。北京華峰試験制御科技などの企業は事業を完全にローカリゼーションしており...
中国商務部が14日に発表したデータによると、今年11月までの全国の外資実際使用額(金融業を除く)は7,497億元、対前年同期比では27.9%減少し、今年10月までの減少幅よりも1.9%ポイント縮小し、3カ連続で減少幅が縮小した。11月の外資実際使用額は対前年同月比6%増加した。また、今年最初の11カ月間で5万2,379社の外資系企業が新たに設立され、対前年同期比8.9%増となった。 投資源からみると、一部の先進国か...
アジア太平洋地域の経済予測2024年12月(アジア開発銀行)
アジア開発銀行(Asian Development Bank、以下、ADB)が12月11日に発表した最新の報告書によると、アジア太平洋地域の経済成長は今年と来年は安定的に推移するが、ドナルド・トランプ次期大統領の政権下で予想される米国の政策変更は、この地域の長期的な見通しに影響を及ぼす可能性が高い。 米国の貿易、財政、移民政策の変更は、アジア太平洋地域の発展途上国の成長を鈍化させ、インフレを加速させる可能性があ...
米国の今年11月のCPIは03.%増、年間インフレ率は2.7%上昇
米国労働局は12月11日、全都市の消費者物価指数(CPI-U、以下、CPI)が季節調整済みで対前月比0.3%上昇し、12カ間のインフレ率は2.7%となったと発表した。 食品とエネルギーを除く全項目指数は過去 12 カ月間で3.3%上昇し、ネルギー指数は11月までの 12 カ月間で3.2%減少した。食品指数は過去1年間で2.4%上昇した。 [参考資料] 米国労働統計局ニュースリリース(2024年12月11日) &nbs...
全般状況 中国の自動車産業は、巨大な国内市場を基盤に成長し、新エネルギー車(新能源汽車)やバッテリー技術を発展させてきた。ここ数年では輸出市場にも進出し、2022年にはドイツを、2023年には日本を抜いて、世界最大の自動車輸出国となった。しかし、現在は以下の課題に直面している。 EUの中国製EVへの追加関税の状況 10月末、欧州委員会(European Commission)は中国から出荷されるバッテリー式電気自...
韓国政府の調査によると、AI競争で重要なAI用半導体分野で、韓国は米国、中国に次いで世界3位の技術力を保有していることが判った。― 韓国紙、BusinessKoreaが12月6日報じた。 政府が発表した「戦略マップ」(論文や特許、定性評価などを基に、各国を戦略技術別に順位付けした文書)によると、AI用半導体技術分野で韓国は61.7点を獲得し、米国(96.7点)と中国(71.6点)に次いで3位、以下は英国(55.8点)、台湾(...
日本の今年7-9月期実質GDP、年率換算で1.2%増に上振れ
内閣府の12月9日発表によると、2024年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で557.1兆円、前期比0.3%増、年率換算で1.2%上昇し、2四半期連続のプラス成長を維持した。 内需では、最新の法人企業統計を反映した結果、企業の設備投資が前期比0.1%減(速報値0.2%減)に上方修正された。住宅投資はリフォームの増加などで0.4%増(同0.1%減)となった。内需の柱である個...
2024年の「AIブーム」と言われるアメリカの株高を演出したエヌビディア。企業の価値を示す時価総額は、およそ560兆円で世界1位だ。そのトップ、ジェンスン・フアンCEOが来日し、「AIサミットジャパン(NVIDIA AI Summit Japan)」と題してイベントを行った。基調講演でフアンCEOと対談したのが、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。ふたりが見据える「AIの未来」とは。11月13日 AIサミットジャパンにおける対談動画(YouTu...
ファーウェイ創業者・任正非:米国技術は素晴らしいが、我々は独自の技術を作らなければならない
出所:South China Morning Post ファーウェイ(Huawei Technologies)の創業者兼CEOである任正非氏は、米国の技術コミュニティの「オープン性と包括性」を高く評価しているが、米国の制裁により、中国企業は「独自のツールを作るしかなかった」と述べた。 任氏(80歳)は、学生や学者との最近の会話の記録によると、ファーウェイは米国の受容的な文化から学ぶ必要があると語った。この文...
2024年7-9月期の世界半導体ファウンドリ売上高は史上最高
台湾の調査会社、TrendForce(集邦科技)の最新レポートによると、世界トップ10のウェハファウンドリの今年第3四半期の総売上高は、下半期に新しいスマートフォンやパソコンが発売されることによるサプライチェーンの在庫の積み増しやAIサーバー関連HPC向け需要が引き続き堅調であることを背景に、前四半期比9.1%増の349億米ドルに達し、史上最高を記録した。 売上ランキング上位5社に関しては、①TSMCは65%近くのシ...
リコージャパンはリコーのグループ会社で販売を担当している。リコージャパンが進める「仕事のAI」は、AI技術を活用して業務を効率化し、従業員のパフォーマンス向上を目指す取り組みである。特に、「RICOHデジタルバディ」は、生成AIとRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)を活用して、社内の膨大な情報を活用しながら、迅速で的確な回答を提供する仕組みである。 このAIは、PDFなどの社内ドキュ...
貿易摩擦の激化を受け、中国は米国への重要鉱物の輸出を原則禁止
中国商務部は12月3日、公告を出し、国家の安全と利益を守るため、米国への重要な鉱物の輸出に対する規制を強化し、軍民両用品目㊟である特定の品目の輸出を原則的に禁止する。この公告は、米国市場のみに適用され、公布後即施行される。 ㊟「軍民両用品」は民事目的と軍事目的の両方に使用できる物品、技術、サービスを指す。 今回の措置により、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、超硬材料に関連する軍民両...
TSMCとアップルの出会い:モリス・チャン自伝が語る協力の始まり
TSMC創設者モリス・チャン氏(張忠謀、以下、チャン氏)の自伝下巻が11月29日に出版され、同書がTSMCの主要顧客であるアップルとの協力関係の始まりの事情に言及した。チャン氏の妻、張淑芬の従弟で、鴻海の創設者でもあるテリー・ゴウ(郭台銘)氏は、ある日、自宅に夕食にお客を連れてきたが、この客はアップルの最高執行責任者ジェフ・ウィリアムズ(Jeff Williams)氏であり、両者の協力への扉が開かれた。― 台湾紙「経済日...
【経済】インド経済、2024-25年度7-9月期は5.4%成長で2年ぶりの低成長
インド経済は2024-25年度㊟第2四半期(2024年7-9月期)の実質GDPの成長率がわずか5.4%となり、約2年ぶりの低成長を記録した。ちなみに、前年度第2四半期の成長率は8.1%、当年度第1四半期は6.7%成長であった。― インド統計省(Ministry of Statistics and Programme Implementation)が11月29日発表した。 ㊟インドの会計年度(fiscal year、FY)は4月に始まり翌年3月に終わる。例えば、2024年4月から2025年3月は、2024-2...
【動画】トヨタバーチャル工場見学「トヨタのクルマができるまで」
トヨタのクルマができるまでの一連の生産工程を、迫力ある映像でお楽しみください。 生産現場における知恵とくふう、モノづくりへのこだわりが詰まったウェブサイト「トヨタバーチャル工場見学」はこちらから! トヨタの自動車ができるまでを紹介するYouTube動画(約5分)を転載します。出所:トヨタ暮らしのブログ 【試行】郷里岡山の農地対応策を練るため生成AIの機能を活用(2024年12月1日) お知らせ 浦...
【図解】中国の11月の製造業購買担当者景気指数は50.3%、前月比0.2ポイント上昇
中国国家統計局の昨日の発表によると、11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.3%と前月比0.2ポイント上昇し、製造業の拡大ペースが若干加速した。 企業規模別では、大企業のPMIは50.9%で前月比0.6ポイント低下、中堅企業のPMIは50.0%で0.6ポイント上昇した。中小企業のPMIは49.1%で前月から1.6ポイント上昇し、臨界点を下回った。サブ指数の観点から見ると、製造業PMIを構成する五つのサブ指数のうち、生産...
【動画】「“Digital for all.”―日立が生成AIと描く、私たちの働き方の未来」
私たちは世界中で今、さまざまな社会課題に直面している。そのなかのひとつが生産年齢人口の減少であり、現場で働く人材の不足や 、高度で熟練された技術の若い世代への伝承の難しさなどが問題となっている。 今回取りあげる掲題のYouTube動画(約3分)では、日立製作所(以下、日立)がそうした社会課題に対し、生成AIなどのデジタルの力を活用し、さまざまな業種での作業の質や生産性を向上させる取り組みについ...
【読書記録】ウリケ・シェーデ著、渡部典子訳『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』日経、2024年
本稿は、先ごろ行った読書会の報告レジュメを取りあげ、読書記録として掲げるものである。題記の図書では日本経営の再評価がポイントになっており、日本の強みをみる方向へと分析の視角を変えることの意味を再認識させられた。これまでに読書会で過去に取りあげた図書一覧を掲げる。 ウリケ・シェーデ著、渡部典子訳『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』日経、2024年 「思史の会東京」(第23回)2024年11月1...
【論説】米国政治専門誌「経験不足は重要:トランプ氏の物議を醸す指名の論理」
問題の所在 ドナルド・トランプ次期大統領の閣僚候補の一部は、これまでの大統領の選出、トランプ氏自身の2016年の選出でさえもそうであったように今、ニュースを独占している。焦点は候補者の経歴の何が問題なのかということに当てられてきたが、私たちはさらに、そこにないもの、つまりマネジメント経験に焦点を合わせるべきだ。― 政治専門紙The Hillが11月23日報じた。 閣僚人事の事例 トランプ氏が国防総省...
【新製品】ファーウェイ、新型戦略スマートフォン、Mate 70シリーズを正式発表
ファーウェイは11月26日、最新のフラッグシップスマートフォンであるMate 70シリーズを発売した。新しいラインナップは、Mate 70、Mate 70 Pro、Mate 70 Pro+、Mate 70 Ultimate Designの四つのモデルで構成されている。 新シリーズ機種は、48MP望遠レンズと40MP超広角レンズで構成される50MPカメラシステムを搭載している。また、OSは、最新の HarmonyOS NEXTオペレーティングシステムであり、ファーウェイエ...
【ご案内】日立製作所・東京大学シンポジウム「価値協創が拓くデータ活用と生成AIの未来」
大きな社会課題になりつつある今後の人手不足、特に現場で働くフロントラインワーカーの仕事は、心身への負担も大きくなりがちで、厳しい状況となっており、日立製作所(以下、日立)はこの問題に対し、生成AIなどのデジタルの力でデータから価値を創出し、生産性の向上と、働きやすさを支援する取り組みに取り組んでいる。― 昨日、11月25日配信されたHitachi IoT Platform Magazineメールは記す。 このようなチャ...
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トランプ米国大統領の政治の特徴に、「アメリカ第一主義」に基づく中国政策にみられる排除と規制がある。現在、米国の輸入関税については、全体として、国際社会は批判の目を向け、近年米国が唱える「経済安全保障(Economic Security)」という概念はともすれば曖昧であり、明示的な定義に欠けるきらいがある。 このようななかで、経済安全保障は、単に国益や安全保障上のリスクに対処するための「防衛的アプローチ」だけで...
米国と中国の間で続いてきた関税を巡る貿易摩擦について、米財務長官やホワイトハウスが「近い将来に緊張の緩和がある」と発言したことで、米中間の対立が一定の「軟化」方向へと向かっている可能性が示唆された。これを受け、米国の小売業者は関税によるコスト増を回避するため、有利な条件での取引を求めて政権と対話を進めている。―中国紙China Dailyが4月24日、ニューヨーク発で報じた。 主なポイント ●米政...
最近の中国紙の報道によれば、米国の対中関税措置により、マタニティ・ベビー用品を中国から輸入していた多くの米企業が輸入を停止。これにより、乳幼児用製品の価格は上昇し、若年層の家庭に深刻な経済的負担がのしかかっていて米国の出生率低下という社会的課題に拍車をかける恐れがある。 ■ 主要ポイント 1. 米国のマタニティ・ベビー用品業界、輸入停止の動き 米国政府の中国からの輸入関税の大幅増(最...
第一次大戦後の英国の植民地インドのチャンドラボアへ、英国娘アデラは婚約者ロニーを訪ねた。彼は治安判事で、アデラの同行者ムーア夫人は彼の母だ。東洋の神秘に期待したアデラとムーア夫人は、英国人の優越意識と、それを憎悪するインド人の対立感情の存在を知るのだが、インド人医師アジスやインド人哲学者ゴッドボール、英国人教授フィールディングと知り合い、数日後、アデラらはアジスの誘いで、マラバー洞窟へ行く。小さ...
要旨(サマリー) トランプ大統領による中国輸入関税策を発端に、米中通商摩擦が激化するなかで、中国政府は対外的な広報・宣伝戦略を大々的に展開し、米国とその国民をターゲットとする巧妙な情報発信に乗り出している。従来の堅苦しい宣伝とは一線を画すこの戦略は、国内外の世論を味方に付け、トランプ政権の保護主義的政策に対抗する一種の「PR戦争」として展開されており、中国はこの情報戦で、米国内の不満を増幅させ、外...
中国紙『財新(Caixin)』の2025年4月16日付ニュースレターが伝えるところによれば、中国経済は予想外の好スタートを切った模様であり、第一四半期のGDP成長率は5.4%と市場予想を上回り、政府関係者や経済界に一定の安心感を与えている。とはいえ、国内には消費の弱さ、国外には対米関係の緊張という重しが残り、複雑な局面が続いている。本稿では、財新の報道をもとに、私たちが注目すべき三点を整理する。 1. 内...
今回取りあげるYouTube動画(11分6秒)は、経済安全保障の観点から、日本企業が直面するリスクとその対応策について、民間企業の優れた事例(ベストプラクティス)を紹介するものだ。技術情報の漏洩やサプライチェーンの停滞といったリスクに対して、実践的かつ有効な取り組みを可視化し、他の企業にも参考となる形で共有することを目的としていて参考になる。 動画は、経産省貿易経済安全保障局YouTubeチャネル(m...
4月2日に米国が新たな関税を発表する前に確定したこの地域の予測では、アジア太平洋地域の発展途上地域における経済成長は今年と来年にかけて鈍化すると示されている。不動産セクターの継続的な低迷と米国の関税引き上げによる中国経済の減速は、南アジアの成長率上昇によって部分的に相殺されると予想されている。 この地域は、貿易障壁の高まりと貿易上の大きな不確実性という課題に直面するものの、堅調な国内需要と電子機...
はじめに:半導体製品の輸入関税? トランプ米国大統領は4月13日、輸入半導体に対する関税率を今後1週間以内に発表すると述べ、同分野の一部企業には柔軟な対応を取ると付け加えた。トランプ氏の表明は、スマートフォンとコンピューターを対中国相互関税の対象から除外する措置が、半導体分野の貿易再編を目指すトランプ大統領にとって短期的なものとなる可能性が高いことを示唆している。 ホワイトハウスは11日に、高額な相...
中国のAIスタートアップDeepSeek(杭州深度求索、浙江省杭州市)は、AIモデルのオープンソース化と迅速な実装を重視するアプローチにより、大規模言語モデル(LLM)の推論能力を向上させ、今年1月のDeepSeek-R1の打ち上げで、世界のAI領域で一躍脚光を浴びた(「中国スタートアップDeepSeekのAIモデル、世界のAI市場に衝撃」(2025年1月29日)を参照)。 先ごろ、DeepSeekと北京市の清華大学は共同で、膨大なトレー...
ファーウェイは先月31日、2024年度年次報告書(Annual Report)を発表した。ファーウェイは2024年度の年次報告書を発表し、業績は予測通りであると述べた。 売上高は8,621億元、純利益は626億元に達し、売上の約21%に相当する1,797億元を研究開発に投資した。コネクティビティ、コンピューティング、デバイス、クラウド、デジタルパワー、車載ソリューションといった多角的な事業が着実に進展し、特にAIとHarmonyOSに...
中国紙China dailyに4月10日に掲載された記事、China hits back at US tariffs to defend rules-based tradeを読み、中国のトランプ政権の関税政策批判と中国の基本的な対応の考え方の特徴についてまとめると、次の5項目のようになる。 ●ルール重視の正統性アピール:中国は自身の対応を「ルールに基づく多国間貿易体制の擁護」と位置づけ、米国の一方的措置を「覇権的」「保護主義的」と非難している。 ●多国間主義の強調...
“America still dominates the world, but the larger structure of unipolarity―economic, financial, cultural―is weakening.” ― Fareed Zakaria, The post-American World, 2008 はじめに アナリストやコメンテーターたちは、一世代にわたって「アメリカ後の世界(post-American world)」の到来について議論してきた。ジャーナリスト兼アナウンサーのファリード・ザカリア氏...
シンガポールのローレンス・ウォン首相は4月8日、議会で、同国政府が米国のドナルド・トランプ大統領が課した関税の影響に対処するためのタスクフォースを立ち上げると述べた。ウォン首相は、米国が全輸入品に対して10%の一律関税を課す決定を受け、同関税が交渉の余地がなく、シンガポールの貿易依存型経済に深刻な影響を及ぼす可能性があると懸念を示した。 ウォン首相は、シンガポールが直接的な関税の影響...
2025年4月5日、全米および世界各地で「Hands Off!(手を出すな!)」と題された大規模な抗議デモが行われた。このデモは、トランプ大統領とその顧問であるイーロン・マスク氏の政策に反対するもので、社会保障や医療補助、消費者保護の削減、さらには新たな関税政策など、多岐にわたる政策への抗議が含まれている。 抗議デモの概要 規模と範囲: 全米50州および海外で1,300以上のデモが行われ、主要都市では大規...
はじめに 4月2日、トランプ大統領は広範囲にわたる「相互関税」を発表し、これにより国際社会や国内外の市場から極めて強い反発と反応が、さらには共和党内からも反応が寄せられた。以下に、その主なポイントを3点にまとめ記す。これらの反応は、トランプ大統領の関税政策が国内外で大きな波紋を呼んでいることを示すものだ。 1.国際社会の反応 ●欧州連合(EU)は、米国の関税措置に対し、報復関税を検討していると表...
日立製作所(以下、日立)がデジタルの力でめざす未来は人々の快適で豊かな暮らしと、持続可能な地球環境の両立。日立のデジタルの取り組みを紹介する企画
「約5%の目標は、私たちの中期および長期の開発目標とよく一致しており、困難に正面から立ち向かい、達成に向けて懸命に努力するという私たちの決意を強調するものである」 ― 先月初旬に全国人民代表大会(全人代)の年次政府活動報告で李強首相は述べた。 年次政府活動報告書によると、中国が2025年に約5%のGDP成長目標を達成するには、①国内需要の刺激、②不動産セクターの安定化、③外部不確実性の乗り越えなど...
たまたまインドの経済紙、The Economic Timesの記事をながめていて、米国の海外留学生のビザ問題の状況に関する記事、「Leave America! Indian and other students face visa revocations even for an Insta 'like'(アメリカを出て行け!インド人などの学生はインスタグラムの「いいね」をしただけでもビザ取り消しに直面)」が目に留まった。 記事は、米国国務省が留学生に対するビザ取り消し措置を講じている現...
「ブーメランを投げるときは、それが跳ね返って自分に当たらないように注意しなければならない。ドナルド・トランプは同盟国を脅迫することで、そのような跳ね返りを危険にさらしている」 ロイター通信は過日、ロンドン発で― “Donald Trump’s boomerang will hit the US hard”, The Reuters, March 24, 2025を掲載し、「大統領の2期目が始まってわずか2カ月で、かつて友好的だった国々はもはやこの気まぐれな超大...
4月下旬の今、中国で各種の展示会やフォーラムが催されている。ここでは今、北京で開催中の自動車展示会をご紹介する。 2024年(第18回)北京国際汽車展覧会(Auto China 2024)が2024年4月25日から5月4日まで中国国際展覧中心の順義ホールと朝陽ホールで開催されている。2024年北京モーターショーのテーマは「新時代、新車」で、117台のワールドプレミアカー(多国籍企業による30台のワールドプレミアカーを含む)...
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、堅調な雇用と健全な消費者金融に支えられた堅調な米国経済に自信を表明した。ダイモン氏は4月23日、ニューヨークのエコノミッククラブのイベントで、米国の経済好況は「信じられない」と語った。 「たとえ景気後退に入ったとしても、消費者は依然として良好な状態にある」。それでも同氏は、国債の増加、インフレ、地政学的紛争がもたらす潜在的な経済的影響に...
中国商務部が4月19日出した発表資料によると、2024年第1四半期(1-3月期)の中国の海外直接投資(金融業を除く)利用額は実行ベース3,016億7,000万元、対前年同期比で26.1%減少し、2023 年の第 4 四半期と比較すると、対前四半期比41.0%㊟増加した。今年第1四半期に中国で新たに設立された外資系企業は12,086社で、対前年同期比20.7%増加した。㊟発表資料では41.7%となっているが、筆者の計算によると41.0%になる。 今...
「Linking Society」―つながっていく社会を支えるデザイン。私たちは、人々がしなやかにつながることで、暮らしの中に幸せを感じる瞬間を増やしたいと考えています。― 日立製作所研究開発のサイト、「Linking Society」はこう訴えかける。 わたしたち研究開発グループは、将来の社会の変化のきざしを敏感に捉えたビジョンと、それを実現する技術を生み出していくことが重要だと考えています。 そのために、経験...
台湾のTSMC(台湾積体電路製造)の創始者、張忠謀Morris Chang氏(92歳)に4月19日、台湾市民に対する最高勲章、「中山勲章」が授与された。― 台湾の経済日報が20日伝えた。 勲章の名称は孫文の号である中山から取られている(孫中山、Sun Yat-sen)。台湾で戦後制定された「中山勲章」の受賞者は、モリス・チャン氏で5人目であり、大変栄誉のある賞である。 台湾の南北を貫く3千メートル級の山脈は「...
日立グループの経験者採用で入社し活躍している若手・中堅社員へのインタビューをご紹介する。今回は、YouTubeのHitachi Brand Channelで4月19日に配信された公共システム部門の営業・システムエンジニアとして働く入社歴1年~3年の方へのインタビュー動画(7分24秒)を転載させていただく。 ちなみに、日立製作所の最近の経験者採用比率(正規雇用労働者の中途採用比率)は、2023年度45%、2022年度...
ファーウェイはPura 70フラッグシップシリーズを正式に発売し、標準のPura 70、Pura 70 Pro、Pura 70 Pro+、およびPura 70 Ultraの4つの新しいモデルを発表したとHuaweicentral.comが4月18日報じた。 今回の新しい戦略機種の公開と販売は、ファーウェイが再び大規模なショーケースイベントを開催せずに行ったものである。ファーウェイの新型スマートフォンPura 70シリーズは、同社が正式に宣伝してから非常に人気...
IMF(国際通貨基金)は4月16日、世界経済見通し(World Economic Outlook、以下、WEO)を発表した。 世界経済成長率は、2023年に3.2%になるとみられており、2024年、2025年とも同じペースが続く見込みである。2024年の成長予測は、2024年1月の世界経済見通し改訂時から0.1%ポイント上方修正された。 先進国は、成長率が2023年の1.6%から2024年は1.7%、2025年は1.8%へやや加速する見込みである一方、新興市場国・発展...
中国国家統計局は4月16日、中国の今年第1四半期GDP実績の発表を行った。発表のタイトルは「国民経済は第 1 四半期に好調なスタートを切った」である。 国家統計局のデータによると、第1四半期の中国のGDPは29兆6,300億元、対前年同期比5.3%増、昨年第4四半期の成長率5.2%を上回り、幸先の良いスタートになった。輸出の拡大と製造業の伸びが背景にある。懸案の消費財小売売上高は12兆327億元に達し、対前年同期比4....
米国調査会社Gartner(コネチカット州スタンフォード) は4月11日、2028 年までに、企業領域のソフトウェアエンジニアの 75%がAIコードアシスタントを使用し、2023 年初頭の 10% 未満から増加すると発表した。 AI コードアシスタントは、人工知能を使用してコードをより効率的かつ正確に作成できるようにするツールであり、企業などのソフトウェア人材は、最新の大規模言語モデル(LLM)を活用することができる。 ...
アジア開発銀行(Asian Development Bank)が4月11日発表した2024年4月のアジア経済見通しによるとアジア太平洋地域の発展途上国経済は、堅調な内需、半導体輸出の改善、観光業の回復を背景に堅調な成長を続けるため、今年平均4.9%成長すると予測され、成長は来年も同じペースで続くだろう。過去 2 年間、多くの国で食品価格が上昇したことによりインフレが上昇した後、2024 年と 2025 年にはインフレが鈍化すると予想されてい...
序言:読書会資料のブログ公開昨年5月から再開された読書会、第20回思史の会東京(コロナ禍後第6回)は、事情があり、急遽中止となり、その代わり、報告者である私の報告資料(ワード文書のPDF化)をメール添付でメンバーに配り、コメントの交換を行い、読書会の記録、「思史の会東京図書一覧」として残すことと相成った。第20回の勉強会では、報告者の私が、中国の近代の幕開けに東奔西走した革命家、孫文の思想と行動の軌跡を考...
米国労働統計局の4月10日発表によると、2024年3月の消費者物価指数(Consumer Price Index、以下、CPI)は、都市消費者、季節調整済みベースで0.4%上昇し、2月と同じ上昇率となり、また過去12カ月のCPIは季節調整前で3.5%上昇した。 3月にはガソリンのCPIと同様に、住居費(shelter)の指数も上昇した。これらふたつの指数を合計すると、全項目の指数の月間上昇率の半分以上に寄与した。エネルギーCPIは月間で1.1...
BCI Researchは最近、2024年第1四半期の中国スマートフォン市場データを発表し、ファーウェイは、スマートフォン出荷台数で他社と僅差の第3位に落ち着き、ファーウェイが再びアップルを追い抜いた。― Huaweicentral.comが4月6日報じた。 中国の2024年第1四半期のスマートフォン市場は、しのぎを削る激戦となるなかで、vivo、Honor、ファーウェイ、アップルの四社が強い地位を維持した。 vivo(含むiQO...
ブルームバーグの4月10日の報道によると、アップルは2024財務年度にインドで140億ドル相当のiPhoneを組み立てるという。事情に詳しい関係者の話によると、アップルは現在、同社の主要デバイスの14%、つまり約7台に1台をインドで生産しているという。 中国が依然として世界最大のiPhone製造拠点であるにもかかわらず、北京と米国の間の地政学的緊張のなかで、アップルは中国を越えてサプライチェーンの多角化を模索し...
テンセントオート(騰訊汽車)がトヨタのグローバルモデルのインテリジェント運転ソリューションが「トヨタ+ファーウェイ+Momenta(北京市)」の三者共同ソリューションモデルを採用することが関係者から分かったと報じた。― IT之家が4月8日伝えた。 トヨタと自動運転会社Momentaとの協力は2020年に始まった。Momentaはカメラビジョン技術に基づく高精度地図サービスをトヨタに提供し、中国での自動地図プラットフ...
ジェトロ(日本貿易振興機構)上海事務所は3月22~24日に浙江省杭州市の杭州国際博覧中心で開催された「CLE2024中国(杭州)アウトドア・キャンプ生活展(CLE2024中国(杭州)戸外露営生活展)」に、キャンプ用品や釣り具、機能性アパレル分野の日本企業18社を取りまとめ、ジャパンブースを設置した。 第2回となる今回の展示会には、中国内外のキャンプ道具、アウトドア調理器具、アウトドアアパレルなど約300以上の出展...
米国労働統計局は4月5日、2024年3月の非農業部門の雇用者数は、大方の予想を上回る30万3,000人増加したが、失業率は3.8%とほとんど変化がなかったと発表した。雇用は、医療、政府、建設業界などの領域で増加した。 今年3月の雇用者増で2024年1-3月期の平均増加数は27.6万人となり、これは昨年の月平均雇用増25.1万人を上回っているが、足もとの雇用増は、米国への移民の増加によるものであり、問題はこの状況がいつまで続くか...
香港ベースの調査会社、Counterpoint Research(以下、Counterpoint)の4月2日付プレスリリースによると、アップルのサービス部門は 2025 年に同社総売上の 4 分の 1 を占める可能性が高い。 Counterpointは、アップルのサービス売上が2025年に初めて年間1,000 億ドルを超えると予想する。さらに、アップルはハードウェアおよびサービス部門の成長に支えられ、今年初めて売上高4,000億ドルを突破するはずだと前掲...
現在進行中の米中対立で東南アジア地域が連携を余儀なくされた場合、米国よりも中国が好ましい選択肢となることが新たな調査結果で明らかになった。― 米国CNBCが4月3日伝えた。 地域調査、The State of Southeast Asia 2024によると、東南アジア人の大多数は、どちらの側を選ぶかを迫られた場合、米国ではなく中国に同調するだろうが、中国政府の南シナ海主張に脅威を感じている一部の国は依然として米国政府を好...