『失われた時を求めて』第6篇『消え去ったアルベルチーヌ』を読む
1. 恋人アルベルチーヌは突然マルセルと別れ、その出奔後に落馬事故に遭い、死亡する。主人公マルセルは絶望にかられるが、アルベルチーヌの真の姿を知ろうとして、彼女が生前に見せたさまざまな面を思い出しては、真実の追求を様々な角度から続ける。しかし、彼女の同性愛疑惑についても、確証は得られない。 やがて、忘却の時期が始まり、それは三つの段階にわたって詳述される。確かに、アルベルシーヌは少しずつ消えてゆく。しかし特徴的な点は、習得を重ねつつ「書く」という実践へと向かういわば肯定的なプロセスも同時に描かれていることだ。アルベルチーヌの失踪、そして忘却へ向かう動きとは反対に、次篇『見出された時』掉尾でマル…
2025/05/21 11:00