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カイト・カフェ https://kite-cafe.hatenablog.com/

教育を中心に日々の関心事を書いています。基本的に週日更新。学校に合わせて長期休業も取っています。

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2017/12/16

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  • 「裏切りと、没落と、あまりにも人間的な死」~今日はジャンヌ・ダルクの命日

    今日はジャンヌ・ダルク火刑に処せられた日、 15世紀の半ばフランスの農家の娘は神の啓示を受け、 軍を率いて戦い、勝ち、裏切られて、殺された。 何が奇跡を起こしたのか、どうして私は知っているのか、という話。(写真:フォトAC) 【ジャンヌ・ダルクの死】 今日、5月30日はジャンヌ・ダルクが火刑にあった日だそうです(1431)。 日本では室町時代の中期、“万人恐怖”と呼ばれ、嘉吉の乱(1441)で暗殺された6代将軍足利義教(あしかがよしのり)が、権力への階段を昇り始める、その直前のころです。 ジャンヌ・ダルク(1412年頃 ? 1431年)は、フランス百年戦争中に活躍した農民出身の少女であり、フラ…

  • 「日本の教師、飲まない馬に水を飲ませる」~それでも私はいまの学校を大事にしたい③

    子どもの能力は、試され、鍛えられ、 限界まで引き出されてから、判断されなければならない。 そのためにも子どもには暖かく厳しい指導が必要だ。 そうでなければ、子どもたちは立ち向かっていかない。という話。(写真:フォトAC) 【飲まない馬に水を飲ませる】 「馬を川に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」 しかし現実問題として、川に連れて行っても水を飲まない馬はいます。「この先かなり長い時間、水を飲む機会はないのかもしれないよ」「気温が上がる、熱中症が心配だから今のうちに飲んでおこう」「もうすぐレースだ。飲んでおかないと絶対潰れるぞ」等々、怒ったり宥めたり、いろいろやっても飲まない馬…

  • 「馬を川に連れて行く日本の教育」~それでも私はいまの学校を大事にしたい②

    運動能力は外から見えやすい、 しかし他の能力はなかなか限界が見えて来ない。 だからそれは試され、鍛えられ、判断されなければならない。 日本では子どもたちが、学校を通して試される、という話。 (写真:フォトAC) 【我が子が大谷翔平でなかったことに関する思い】 ドジャースの大谷翔平選手、昨日の段階で本塁打19本。これはジャッジ選手(ヤンキース)、シュワバー選手(フィリーズ)を抜いてMLB全体で単独トップだそうです。 大谷選手と言えばつい先日、フォーブス誌の「世界で最も稼いだアスリート」ランキングに第9位でランクインしていて、過去12か月間の推定収入は1億250万ドル(約149億円)だそうです。 …

  • 「ある国の学校教育のありかた」~それでも私はいまの学校を大事にしたい①

    私は日本の学校教育を信じている、 すばらしいものだと思っている。 しかし同じものを見ても、 違う考え方をする人は、やはりいるものだ。という話。(写真:フォトAC) 【日本の教育は、どこの国を手本にすべきか】 世界にはさまざまに優れた国があり優れた人々がいますから、ひとことで「日本は世界一」とは言いませんが、こと学校教育に関しては、おそらく日本の教育が世界一優れていると私は信じています。 それはもちろん、勉強量で言えば中国や韓国の子どもははるかに多そうですし、ジョブズ、ゲイツ、マスクといった逸材はなかなか日本から出てきません。しかしだからと言って、「それなら中国や韓国、あるいは合衆国の教育を目指…

  • 「人生に必要なものは、すべて家庭科の中にある」~間もなく技術家庭科もなくなるかもしれない

    英語もAIも、生きていく上で最重要ではない、 賢い買い物ができて食事がつくれること、 家庭内の簡単な修理・修繕ができること、 家庭科を制する者は人生を制する、という話。(写真:フォトAC) 【生まれ変わったら何の教師になる?】 一週間も前の話ですが先週の日本テレビ「月曜から夜更かし」では、恒例の「生まれ変わったらシリーズ」の対象が“学校の先生”でした。生まれ変わったらどの教科を教えたいのかという話で、例えばある数学の先生は国語を教えてみたいと言っています。「国語の教科に精通していると、人生が豊かになるような気がします。本を読んだりして知識があると、映画を観ているときなども、見方が変わって羨まし…

  • 「敢えて厳しさを求める若者もいるはずだ」~人生は相変わらず甘すぎるほど甘いものではないから

    才能があるにしてもないにしても、 人生はそれなりに難しい。 だから学びたい、だから経験したいと、 敢えて厳しさを求める若者もいるのではないか? という話。(写真:フォトAC) 【ちょっと気になる芸能ゴシップ】 芸能人のゴシップにはあまり興味はないのですが、それでも贔屓筋のスキャンダルとなると落ち着きません。いまこころ動かされているのは永野芽郁さんです。 バラエティなど素の姿で出ているところをあまり見ていないので分からないのですが、この人はどんな役が回って来ても、どこか地に足のついていない、なにか“天然”の匂いがするところがあって、そこがいいのです。 綾瀬はるかさんの素は“天然”ぽいのにどんな役…

  • 「甘いイチゴの育て方・偉い子どもの育て方」~結局、作物も人間も同じ

    イチゴも、何でも良ければ面倒はないが、 甘いイチゴを育てるとなると大変だ。 良き土、善き肥料、適切な手入れ――。 結局、子育てと似たようなものだ、という話。(写真:SuperT) これから「甘いイチゴの育て方」という話をします。イチゴづくりの話ですが、人間づくりの話として聞いてくださるとありがたい。もちろん畑もないし子育てにも興味がないという方もあろうかと思いますが、イチゴはプランターでも栽培することのできる作物ですから、一度、ベランダで試してみるのも面白いかも知れません。案外、こころ癒されるかもしれません。 【段取り八分(はちぶ)、土づくり】 たいていのことは「段取り八分」。計画と準備が大切…

  • 「61万人の予備軍」~東大前駅切りつけ犯にみるこの国の未来③

    名前のない人、肩書のない人は、自ら名乗るしかない。 「義務教育への復讐者」あるいは「過剰家庭教育への警鐘者」。 けれど彼らは、もともと一切の名を持たぬ不安な人たちのだ。 そして間もなく、この人たちは一斉に外に出て来る、という話。(写真:SuperT) 【自らに名前をつける】 ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」の前半のクライマックスは、主人公が滅びゆく物語の国・ファンタージエンの崩壊を食い止めるために、女王「幼心の君」に新たな名前を付ける場面で終わります。そこには“名前のないものは存在できない”という独特の哲学があります。 東大前駅切りつけ事件の犯人も、もしかしたら「何者でもない透明なボク」…

  • 「ボクは“何者でもない透明なボク”ではない」~東大前駅切りつけ犯にみるこの国の未来②

    「東大前駅切りつけ事件」の犯人は1982年生れ、 その世代には特徴的な人々がいる。 戦後80年で最も暗い時代に思春期を迎えた若者たちは、 何かを証明せずにはいられないのかもしれない。という話。(写真:フォトAC) 【透明なボク】 経典や神話に書かれている内容はすべて完全に事実だと信じる立場を原理主義と言います。原理主義者はどの世界にもいて、例えばキリスト教原理主義者はノアの箱舟や紅海が裂けて道ができた出エジプトなどを実際にあったことと固く信じています。そのうえで歴史上実際に起こった証拠を探したり、それを裏付ける研究を支持したりしているのです。 もちろん非キリスト教徒のほとんどは、これらが象徴的…

  • 「あまりにも情けない男の重すぎる宿命」~東大前駅切りつけ犯にみるこの国の未来①

    東京メトロ「東大前駅」で起きた切りつけ事件、 43歳中年の、あまりにも杜撰で拙い殺人未遂。 だが犯人はある意味で特別な人間なのだ。 引きこもりで、就職超氷河期世代で、酒鬼薔薇世代。という話。(写真:フォトAC) 【東大前駅切りつけ事件】 5月7日夜、東京メトロ南北線「東大前駅」で起きた切り付け事件、殺人未遂で現行犯逮捕された43歳の男は「教育熱心な親のせいで不登校になり苦労した。東大を目指す教育熱心な世間の親たちに度が過ぎると子どもがグレて私のように罪を犯すということを示したかった」、そう発言して世間の耳目を集めました。 この話を聞いて思い出したのは、とんでもなく遠いところにあった別の記憶です…

  • 「子どもたちの嫌がることは何も起こらない」~アンドロイドに子育て代行の夢を見るのか②

    5歳児をAIロボットの前に立たせるNTTの実験、 それ自体は大したものでないが、示した可能性は大きい。 辛抱強く、拒否的になることの決してない生成AI。 それを搭載したロボットに育てられる子どもたち――、という話。(写真:ChatGPTが作成) 5歳児はAIロボットに心を感じるという5月13日のYahooニュース*1について話しています。 【どこまで信頼できる実験だったのだろう?】 NTTが行ったというこの実験、おそらく実験そのものよりも報道の仕方が悪いと思うのですが、科学実験としてはいささかお粗末なように感じます。 実験の方法として、 「発話や身振りを交えたやり取りが可能なロボット」「プログ…

  • 「人間には感じられない『心』の存在を、子どもはロボットに感じることができる」~アンドロイドに子育て代行の夢を見るのか①

    5歳の子どもたちはAIロボットに「心」を感じ、 その目を意識して正しい行いをするようになるという。 人間相手の場合は奔放で傍若無人、 テレビカメラを向けられも意識もしないというのに。という話。(写真:フォトAC) 【AIロボットに心を感じる】 一昨日のYahooニュースに『5歳児、AIロボットを「心を持った存在」と認識 面前で「いい子」の態度 NTT実験』という記事が出ていました。元は産経新聞の記事です*1。 内容は、『NTTは13日、5歳児が人工知能(AI)などを搭載し、発話や身振りを交えた柔軟なやり取りができるロボットと交流すると、ロボットが見ている前では他人のための行動をとる「いい子」と…

  • 「学校が彼らを育てるべきだった」~あの人たちに対して、私たちができること⑥

    宗教的・政治的な支えのない日本では、 学校だけが組織的に子どもの道徳性を育てる場である。 しつけ、道徳性の涵養は学校の仕事だ。 そのためなら、どうでもいいことはすべて捨ててしまえ、という話。(写真:フォトAC) 【「しつけ」は学校の仕事ではないのか】 教員の働き方改革に関係して、SNSなどで「しつけは学校の仕事ではない」とか「しつけは親が行うべき」といった意見が多く見られます。これに対する反論はさまざまにありますが、その第一は法律面からのものです。 【まず法律】 教育基本法の第6条第2項には、(法律の定める)学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的…

  • 「宗教的な支えのない国の道徳律」~あの人たちに対して、私たちができること⑤

    何やかや言ってもアメリカにはキリスト教の基盤がある。 寄って立つ道徳律が教会によって守られている。 しかし日本は、宗教的あるいは政治的な基盤がないのに、 人々は高い道徳性と統一性を保っている、一部を除いて。という話。(写真:フォトAC) 【ドラマの主人公が愚かな夫と離婚できない】 アマゾンのプライムビデオで、シーズン6エピソード13まで、足掛け7年におよぶ長大な刑事ドラマを観ていて、ずっと違和感のあったことが最後の方でようやく理解できるということがありました。主人公がものすごく頭のいい敏腕刑事なのにロクでもない夫がいて、別居のまま何十年も離婚せずにいるという設定に対する違和感です。あんな賢い人…

  • 「幸せな人は良いものだけを見て育つ」~あの人たちに対して、私たちができること④

    子どもは皆、心豊かで愛情深い環境で育つべきだ。 川崎女性遺棄事件と高田馬場ライバー刺殺事件の、 それぞれの被害者と加害者たち。 あの人たちはどんな世界で成長してきたのだろう?という話。(写真:フォトAC) 【幸せな人は良いものだけを見て育つ】 鑑定士の中島誠之助さんは「鑑定士は良いものだけを見て育てくる」と言います。本物と偽物を見比べながら勉強するのではなく、「いいもの」だけを見て育った目には、偽物やまがい物はすぐにピンとくる、というのです。ある種「熱湯ガエル」の話と似た部分があって、ぬるま湯からズルズルと熱せられたカエルは逃げ出す時期を逸して死ぬが、いきなり熱湯に入れられたカエルは必死に飛び…

  • 「大丈夫。滅多にあんな人たちは出て来ない」~立川市立小学校襲撃事件

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「本人に覚悟がなければ逃げ切れない」~あの人たちに対して、私たちができること③

    川崎の女性遺棄事件の、どこに行き違いがあったのか、 遺族・友人と警察の間に、どういう齟齬があったのか、 たくさんの手がありながら、なぜ守り切れなかったのか、 本人は何を考えていたのだろう、という話。(写真:フォトAC) 【真剣味の伝わらないヘルプコール】 「不運は手を携えてやって来る」と言いますが、うまくいかないときにはさまざまなものが悪い方向へと進みます。川崎女性遺棄事件の被害者親族は、被害者が失踪の直前、「9回も電話して助けを求めたのに」と警察を責めますが、9回の内容は必ずしも危機を訴えていると認識できるようなものではありませんでした*1。 最初の2回は2024年12月9日午後6時35分と…

  • 「結局、『被害届の取り下げ』がすべてだった」~あの人たちに対して、私たちができること②

    川崎の女性遺棄事件、警察の手ぬるさが、 遺族・友人によって厳しく追及されている。 メディアも、もっと粘り強く対応すべきと言うが、 今の警察にそんな余力があるのだろうか、という話。(写真:フォトAC) 【基本的に自転車盗は捜査しない】 自転車盗難の被害届は簡単に受理してもらえるのに経済事件などの重大犯罪の被害届は簡単に受理してもらえない、このことには理由があります。自転車盗などの被害届については「本格的な捜査をしなくてもよい」「何かのついでに見つかるようなことがあったら優先的に知らせる、その程度でいい」という暗黙の了解があるからです。 これは1989年(平成元年)の警察庁通達によって「自転車盗の…

  • 「大型連休が悲劇の場であった人々」~あの人たちに対して、私たちができること①

    2025年の大型連休が終わった。 多くの人々にとっての楽しい日々が、 しかし人生最大の悲劇の場だった人たちがいる。 その人たちに対して、私たちは何ができるのか、という話。(写真:フォトAC) 【大型連休のあれこれ】 大型連休後半も終わり、長い長い日常生活が始まりました。 驚いたことに「のび太の嫌いな6月」(祝日がないので)を含んで今日から75日間、海の日(7月21日)まで、土日以外の休日はないのです。一年で一番長い“単調な日々”、落ち着いてがんばりまししょう。 ところでこの大型連休、皆様方にはいかがお過ごしだったでしょう? 私たち夫婦は永遠の毎日が日曜日。別の言い方をすれば“毎日がウィークデイ…

  • 「長ネギは谷底から山頂をめざす」~作物にいろいろがありすぎて②

    文化が異なれば常識も異なる。 学ばなければ鍬の使い方も分からないし、 タマネギや長ネギの育て方も分からない。 ピーナッツも何かも、知らないのかもしれない。という話。(写真:フォトAC) 【やろうと思ったら鍬の使い方が分からない】 親が買った土地に30年前、家を建てて現在も住んでいます。細かな点については端折りますが、土地を買った際に隣接する1アールほどの畑が周囲から孤立する形で残ってしまい、地主から頼まれてその部分も畑のまま購入したようです。「畑のまま」というのは宅地に転用できないので、そのまま畑作をしなくてはならないという意味です。 そこで家を建てると同時に私も俄か百姓を始めたのですが、鍬を…

  • 牛はどんなふうにトウモロコシを食べているのか」~作物にいろいろがありすぎて①

    牛はどんなふうにトウモロコシを食べているのか。 焼きトウモロコシやポップコーンではないにしても。 パイナップルは畑でどんなふうに育っているのか。 ヤシの実のようにか、土の上に置いたようにか、という話。(写真:フォトAC) 【牛はどんなふうにトウモロコシを食べているのか】 もう40年以上も前、私が独身だったころの話です。 教員になって2~3年目。週日はもちろん忙しく、土日祝日も部活に明け暮れていた時期の晩夏か初秋のころ、私は疲れ切って人里を離れ、広大な農地の端に車を停めて、半分まどろみながら農作業の様子を眺めていました。ちょうどトウモロコシの収穫作業をしているところで、男性が運転するコンバイン(…

  • 「必要な情報に近づけない」~ネット社会にずっぽりハマる情報弱者たち

    「EXPO 2025大阪・関西万博」、 閑古鳥が鳴くはずが実は大盛況。 大盛況にも関わらず目標に遠く及ばないという。 何が起きているのか、調べるほどに分からなくなる情報社会の不思議という話。(写真:フォトAC) 【大阪・関西万博は必ず失敗する】 「EXPO 2025大阪・関西万博」が始まって半月以上が経ちました。 事前の報道ではまったくの不人気で、入場券は半分も売れず、パビリオンも多くが未完成。大阪府は会場に閑古鳥が鳴くのを怖れて府内の小中学校に無料券を配りまくったものの、学校は何とか行かずに済ませる方法はないかとあの手この手の思案の結果、多くが土壇場キャンセルみたいなやり方で見送り。ほとんど…

  • 「“どうして昭和の日はあるのに平成の日はないの?”と訊かれたら」~昭和の日のウンチク付き

    知らないことを子どもに訊かれたら、 まず「知らない」と正直に言い。 「一緒に調べよう」または「調べて教えてくれる?」。 それが自ら学ぶ子の育て方。という話。(写真:フォトAC) 【知らないことを子どもに訊かれたら】 子どもというのはしばしば突拍子もないことを言い出したりしますが、その実、本質的な問いである場合も少なくありません。「昭和の日って何なの?」「そもそも昭和って何?」「昭和って何時頃のことなの?」 当然このあたりだと想像はつきますし、答えの用意もあります。しかし、「どうして昭和の日はあるのに平成の日はないの?」と訊かれると、“たぶんこんなふうじゃないのかな?”と思うところはあっても、迂…

  • 「令和の残酷」~2024年度東京都新任教員のうち100人弱が心を病んで教職を去った

    「キース・アウト」更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「創作のマグマは日本に偏在していた」~日本人の能力③

    初音ミクの成功の要因はさまざまに検討された。 しかし多くは結果論で、開発の動機ではなかった。 初めからわかっていたことは、ただひとつ、 この国に創作のマグマが充満していたことだ。という話。(写真:フォトAC) 【初音ミクはいかにして世界に広がったか】 NHKのふたつの番組*1が分析した初音ミクのヒットの要因は、次のようにまとめることができます。 初音ミクが無色透明で汗や匂いを感じさせない“空っぽの箱”だったので、リスナーは感情を投影しやすかったこと。 無機質な声、無機質な歌い方であるため、人間の歌い手だとアクが強すぎる「居場所がない」とか「声が出せない」とか「愛されたい」といった生々しく暗い感…

  • 「余白の文化:初音ミクはすべてを背負える」~日本人の能力②

    電子音の名残を残す平べったい声、 未来から来たアンドロイドという性格付け、 熱も匂いも感じられない初音ミクの存在が、 私たちの想いを鏡のようにはっきりと映す。という話。(写真:フォトAC) 【日本の曲が日本語のまま世界に出て行く】 先月(2025年3月)16日に放送され、今月17日にも再放送されたNHKスペシャル(以下、Nスペ)「新ジャポニズ 第2集 J-POP“ボカロ”が世界を満たす」では、冒頭、タイで開かれたYOASOBIのコンサートで、1万人近い観客が日本語で「夜に駆ける」の大合唱する場面から始まりました。タイは言うまでもなく英語圏ではありませんから、英語も日本語も同じ外国語。アメリカン…

  • 「ボーカロイド『初音ミク』の誕生」~日本人の能力①

    他の世界では常識のど真ん中にある話が、 私の世界ではまったく知られていないことがある。 別の島宇宙に住む者どうしだからだ。 あちらでは今、初音ミクが革命を起こしているらしいが――。という話。(写真:フォトAC) 【情熱の連鎖が生んだ音楽革命】 先週土曜日(4月19日)の新プロジェクトXは「情熱の連鎖が生んだ音楽革命~初音ミク 誕生秘話~」というタイトルでした。 初音ミクというのは二つの側面で説明しなくてはならないのですが、ひとつは未来から来たボーカロイド(ボーカルのできるアンドロイド)のひとり、青く長い髪をした少女というキャラクター。もうひとつは2007年に北海道のクリプトン・フューチャー・メ…

  • 「自分だけの体験・自分がつかんできた事実」~“ガンかもしれない”以降②

    結局ガンの話はなくてメデタシメデタシなのだが、 何となく釈然としない。 あれほど調べて、あれほど大きな体験をしたのに、 何でもないでは済まされない(?)という話。(写真:フォトAC) 【小賢しい子の話】 小学校の高学年になるとクラスには必ず一人くらい、「物知りくん」とあだ名されるような子が出てきます。どんな話にも首を突っ込んできて、「あ、ボク、それ、知ってる」という感じで中心に座ろうとする子です。本人に悪気はなく、主役になりたいわけでもなく、ただ自分がそれを知っていることが嬉しくてついつい割り込んでしまうのですが、周囲からは必ずしも歓迎されているわけではありません。ときどき「博士」だとか「教授…

  • 「9連休を画策する保護者に」~もうすぐゴールデン・ウィーク

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「前立腺の生検(生体組織検査)を受ける」~“ガンかもしれない”以降①

    前立腺の腫瘍マーカーが基準値を越え MRIでも小さく薄いながら影が見つかった。 ガンの疑いが消せない。 そこで生検(生体組織検査)を受けることにした、という話。(写真:フォトAC) 【「ガンかもしれない」の続き】 今月3日の『「夫の賞味期限、消費期限」~老後の夫婦の生き方②』という記事の中で、「ガンかもしれない」というお話をしました。1月に受けた人間ドックでPSAという前立腺ガンの可能性を示す腫瘍マーカー(ガン細胞が作り出すことの多いタンパク質)が基準値を超え、2月の末にMRIを撮影したところ薄く小さい影が2個見つかったという話です。ガンではないかもしれないが何かあることは確からしい――前回は…

  • 「アマゾン・アレクサが言うことをきかなくなった――」~妻とAIスピーカの難聴問題

    妻の耳が遠くなり、アレクサ(AIスピーカー)の耳も悪くなった。指示が通らない。言うことを聞かない。そこで調べると、意外な犯人が浮かび上がってきた。という話。(写真:フォトAC) 【妻もアレクサも老いた。耳が聞こえなくなる】 2年ほど前から妻の耳の聞こえが悪くなったようで、しばしば言葉が通じないことがあります。私も何度も同じことを言いますが、妻も何回も聞き返すようになり、そのうち互いに会話をすることが面倒くさくなって無言の時間が長くなります。 一般に難聴の人は認知症になり易いと言われますが、難聴だから会話が進まない、進まないから話さない、話さないから脳を使わなくなる、脳を使わないから認知症が進む…

  • 「紙の教科書とデジタル教科書、生き残るのは?」~紙の本の効能④

    教科書はそもそもデジタルに向かないバイキング。 しかしデジタルにはデジタルの凄さがある。 その両方が中身を棲み分けて生き残ればいいが、 さて、そんな贅沢が許されるかどうか。という話。(写真:フォトAC) 【教科書はバイキング書籍。通読して捨てることはない】 デジタル教科書に批判的な1月16日の読売新聞(『デジタル教科書への全面移行、多くの校長は「強い懸念」…海外では「脱デジタル」へ転換も』)は、「フリーズやページめくりの遅さなど通信トラブルが起きやすい」とか「学習用端末の紛失や破損時の対応」など具体的な内容を扱っていますが、私はもっと本質的なところに問題があると感じています。それは学校の教科書…

  • 「いずれ紙の教科書はなくなる?」~紙の本の効能③

    デジタル書籍にも紙の本にも、 それぞれメリット、デメリットがある。 しかしその双方が同時に、 教科書として子どもの前に提示されると――、という話。(写真:フォトAC) 【デジタル書籍のメリット、紙の書籍のメリット】 デジタル書籍のメリットについては一般に、「ひとつの端末に何百冊でも入れておくことができるために紙の書籍のように重く嵩張り、場所を取るということがない」とか、「キーワード検索や目次へのジャンプが便利である」「バックライトのおかげで暗い場所でも読める」などがあげられ、紙の書籍のメリットとしては、「目が疲れにくいので長時間でも読んでいられる」や、「書き込みや付箋がつけやすいので、記憶にも…

  • 「フルコースタイプの書籍とつまみ食いタイプの書籍」~紙の本の効能②

    もっぱらインターネットに頼り、 紙の本はほとんど読まなくなった。 しかしそれでも紙でなくてはならないことが、 山ほどある。という話。(写真:フォトAC) 【文字にはものすごく触れるが本は読まない】 本というものをほんとうに読まなくなりました。定期購読をしている月刊「文芸春秋」を除けば一冊の本も購入しないという月もしょっちゅうで、買った書籍も読み終わらないことがしばしばです。 それでは文字文化に全く触れていないかというとまるで逆で、これまでの人生の中で現在ほど読んで書いている時期はありません。私の一日は非常に単純で、全体の3割が寝て食べて入浴してという生存のための時間、3割が農事・家事、3割が読…

  • 「悔やみを言うということ、最後だと分かっていたらということ」~紙の本の効能①

    値段に見合わない薄っぺらな本を買った。 一期一会、その瞬間を大切にせよという。 こころに留めて、いつでも思い出そう。 そのために本を買ったのだから。という話。(写真:フォトAC) 【最後だとわかっていたなら】 Amazonで本を一冊買いました。 ノーマ コーネット マレック (著), 佐川 睦 (翻訳)「最後だとわかっていたなら」(2007/6/26 ? サンクチュアリ出版)です。 これはアメリカ人女性が亡くなった10歳の息子への気持ちを綴った詩で、9.11同時多発テロ追悼集会で朗読され大きな反響を呼び起こしたそうです。9・11の追悼集会での詩の朗読といえば「線の風になって」が有名で、そちらの…

  • 「面白ければ何でもやる」~メディアの宿業

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「保護者はネットを介して、様々な賛同の声を集めている」~学校と保護者の関係は変わった⑤

    昔の保護者は狭い地域の同質性に支えられていた。 だから学校はそれに合わせて行けば良かった。 しかし現在は、さまざまに特殊な意見が、 意外な人々に支えられてやってくるという話。(写真:フォトAC) 【老人カードと最先端技術】 何年振りかでガストに行ったら、注文の仕方がタッチパネル方式になっていました。それもメニューカードを見ながら番号を打ち込むという至極面倒くさいもので、大変そうです。頑張って扱い方を覚えたとて、今後、死ぬまでにスキルを活かす機会は1回もないのかもしれません。こうしたときに便利なのは「老人カード」を切るという方法です。「ワタシはIT弱者で、こういうものはさっぱりわからん。申し訳な…

  • 「バブルが崩壊して、教師がとつぜん勝ち組になる」~学校と保護者の関係は変わった③

    バブルの間じゅう、教職は忘れ去られた職業だった。 それがバブル崩壊とともに人気の職業となり、 人々から疎ねられるようになる。 私たちは二度と元に戻れない。という話。(写真:フォトAC) 【バブルを目前に、会社を辞めた】 当たったり外れたり、当たりと思ったものが外れだったり、外れのはずが当たりだったり、人生の選択はままならないものです。 昭和30年代の大学エリートは炭鉱に就職したのです。そこが一番儲かる世界だったからです。高度成長期が目前に迫っていました。あれこれ有望な職業は山ほどあって、その頂点が炭鉱だったわけですが、反対側には当時のベンチャー企業、海のものとも山のものともつかないテレビ局があ…

  • 「学校はサービス業、児童生徒・保護者は消費者になった」~学校と保護者の関係は変わった③

    かつて社会全体が不合理の中にあった。 なあなあ、ズブズブ、ドロドロ――。 それが今、合理的な世界に生まれ変わろうとしている。 人々はあらゆるところで賢い消費行動をとるようになった。という話。(写真:フォトAC) 【限りなく透明であることへのあこがれ】 昔、「限りなく透明に近いブルー」というタイトルの小説が芥川賞を取ったことがあります。受賞者の村上龍はそのとき弱冠24歳。私より一つ年上(学年ではふたつ)なだけで華々しいデビューを飾ったのでから、まだ何者でもなかった私は激しく動揺しました(今でも何者でもないけど)。ただその後しばらく経ってから作者の本名が芥川龍之介から採った「村上龍之介」であること…

  • 「あとは周囲と制度がどこまで支えて行けるかだ」~新人教員が希望をもって職場に向かう

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「誰が私たちを引き離したのか」~学校と保護者の関係は変わった②

    昔の教師だって暇だったわけではない。 しかし気持ちに余裕があった。 面倒くさく生臭い付き合いを通して、 それで何とか人間関係をつむいでいた。という話。(写真:フォトAC) 【誰が私たちを引き離したのか】 ほとんどの教師の一番の願いは児童生徒の健やかな成長であり、大部分の保護者の関心は我が子が健康で健やかに育つことだと思っています。その意味で教師と保護者の利害は完全に一致しているのに、なぜこうもうまくいかなくなったのか――。 教師は“もう部活の面倒は見切れん”と言い、保護者は“これ以上、学校にこき使われるのは敵わない”と言う、こうした乖離は、いつから、どんなふうに起き始めたのか――ずっと心を痛め…

  • 「近隣の中学校でPTAと部活が同時になくなる」~結果的には保護者と教師の労力の交換

    2025.04.07 町内会の朝清掃で、中学生の子どもを持つ保護者と話をした。 子どもの通う中学校で、部活とPTAが同時になくなるという。 保護者は放課後や休日の子どものあり方に悩んでいる。 私は学校の行く末が分からなくなり、ただ怯えている。という話。(写真:フォトAC) 【最寄りの学校でPTAと部活が同時になくなる】 昨日は新年度になって最初の日曜日。町内会の私の組では区域にある児童公園の草取りが行われました。 児童公園といっても猫の額ほど狭い場所で、高齢者4名と40歳前後のシングルマザーひとりが20分も働けばあっという間にきれいになってしまう、その程度の軽作業です。4月から10月までは毎月…

  • 「春休みの先生たちはけっこうヒマだ」~という元教師のイチャモンに応えて

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jpharuyasumino

  • 「新年度:子どもたちは生まれ変わる」~入学式のアラカルト

    早ければ今日から、入学式が行われる。 落ち着いた素直な式だが、校長はやりにくい。 担任発表も何かと話題になる。 しかし子どもたちは、意外と前向きにそこにいる。という話。(写真:フォトAC) 【入学式の話】 何時も参考にさせていただいている日本分家研究ブログによると今年度(2025年度)の入学式は最も早い長野市の小中学校と大阪市の中学校の今日、明日土曜日というのが岩手県盛岡市の中学校、他はすべて来週で、7日の月曜日が24の小中学校、以下8日24校、9日28校、10日10校、11日の金曜日が4校となっています。 来週末になってようやく実施する4校はすべて九州の小学校で、中学校の10日(木曜日)の4…

  • 「夫の賞味期限、消費期限」~老後の夫婦の生き方②

    人間ドックの小さな異常が見つかった。 そこで初めて気づいたのだが、 健康に生きられる年月が尽きようとしている。 まもなく人のお荷物になる時代が始まるのだ。という話。(写真:フォトAC) 【ガンかもしれない話】 60歳を過ぎたあたりから人間ドックへ行っても誉められることはなく、「心電図の異常が消えませんねえ」とか「子どものころの中耳炎で聞こえが悪くなったという左耳に、右耳が追い付いてきました(!)」とか、「胆嚢にポリープがありますが大丈夫でしょう」「両腎が石灰化していますが問題ないでしょう」「血糖値に問題があります」「動脈硬化が進んでいます」――で、総合所見は、(もちろんそんなふうには書いてあり…

  • 「配偶者在宅ストレス症候群かもしれない」~初めて夫婦そろって在宅の4月1日

    昨日は朝からずっと奇妙な緊張感に包まれていた。 何かが違う、 何か今までにない特別なことが起ころうとしている、 ――そしてやがてあることに気づいた。という話。(写真:フォトAC) 【なぜか朝から緊張の一日】 一昨日(3月31日)に昨日の分のブログを書こうとして、4月1日の学校の様子を振り返った、そのせいもあるのかもしれませんが、昨日(4月1日)は朝から妙に緊張感の高い日でした。 朝6時のNHKニュース見ながら「もうみんな起きたかな」と心配し、7時のニュースが始まると、「電車に乗ったかな」「自転車の準備はできたかな」「必要なものは車に積んだかな」などと気になります。この場合の「みんな」はかなり漠…

  • 「4月1日が誕生日の子は3月31日生まれ!?」~エイプリル・フールだからではない。

    今日、4月1日生まれの子はひとつ上の学年に入れる。 まさかエイプリル・フールの悪ふざけではないだろう。 しかしどうしてそうなるのか。 そしてエイプリル・フールについて。という話。(写真:フォトAC) 【4月1日の学校の様子(以前の記事へ)】 4月当初の学校の殺人的忙しさと、ベテランの転入職員でさえ戸惑う新年度準備職員会議の膨大な内容、そして新規採用の教員がそれをどのように受け止めるか、どう凌ぐか――といった問題に関して、一度まとめておこうとあれこれ繰っていたら、わずか1年前の今日、4月1日にけっこう詳しく書いてあることが分かりました。(もう自分が何をやって何をしていないか分からなくなっています…

  • 「今日は早く職場を出て、春の土産を拾って帰ろう」~明日から4月、春の息吹を子どもに知らせる。

    明日から4月。生まれ変わりのとき。だが、 子どもたちは新たな春の誕生に気づかない。 大人が気づいて春を拾って帰り、 子どもたちに教えてあげなくてはならない時代だ。という話。(写真:フォトAC) 【生まれ変わりの4月】 2024年度が終わります。 日本の場合は政府の会計年度と学校年度、加えて多くの企業の事業年度が同じ4月からで、就職も一括採用の4月1日入社というところが多く、ですから4月は「1億総取り替え」といった感じになります。 知らなかったのですが、世界的には政府の会計年度と学校年度が一致する方が珍しく、欧米はほとんどが別出そうです。韓国や中国など東アジアの国々には日本と同じように会計年度・…

  • 「掃除ができる子よりも勉強ができる子を育てて、都会に送り出す?」~田舎町の新たな挑戦

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「若いころの夢をかなえる」~今月定年退職する先生方へ⑤最終

    近所に知己を得て農業を学び、 片付かない家を必死に片付け、作品をネットに上げる しかしこの10年、一番やってきたのは文章を書くことだった。 そして私は一瞬にして文筆家となった。という話。(写真:フォトAC) 【「死ぬまでにやっておきたい10のこと」経過】 結局、私は退職してからの12年間、百姓仕事や庭仕事を学び、部屋の片づけをし、家のリフォームをして書類を整理し、毎日のトレーニングに勤しむ生活を送り続けてきました。 畑仕事・庭仕事についてはEテレの「趣味の園芸」を見たりネット記事を読んだりということも多かったのですが、種まきや収穫の時期は地方によってバラバラなので地域の人を頼るしかありません。…

  • 「老人の未来計画:きちんと考えたことはそれなりに現実化する」~今月定年退職する先生方へ④

    職を去っても「今日やること」のある人はいい。 ない人は誰かから譲ってもらうか生み出すしかない。 その際はじっくり考えて書き残しておくことだ。 きちんと考えたことはそれなりに現実化する。という話。(写真:フォトAC) 【年寄りに必要なキョウイクとキョウヨウ】 年寄りには「キョウイク(今日行くところ)」と「キョウヨウ(今日すべき用事)」が必要だという話を聞いたことがあります。別な言い方をすれば、「人間としての居場所」「誰かから必要とされること」「適度なストレス」「毎日の運動」――そういったものが必要だということです。 昨日申し上げた通り私の場合は、定年となったときも行って介護すべき母がいて、支える…

  • 「定年退職後に計画のあった人たちと何もなく退職した人たち」~今月定年退職する先生方へ③

    人生は長い。 定年後に何かを学び始めても、十分に間に合う。 しかしそれは計画があってのことだ。 私の場合、とにかく気づいたらすでに退職していた。という話。(写真:フォトAC) 【定年退職後の時間は十分に長いが、私は何をしたいのだろう?】 20年ほど前、まだ私が現職で、そろそろ定年後のことが気になりだしたころ、ふと娘に相談すると、こんな話をしてくれました。「最近ネットで読んだのだけど、ある人が定年退職を機にバイオリンを始めたんだって。で、それから10年間、毎日きちんと練習していたら、もちろんプロには程遠いんだけど、知り合いを招いてミニコンサートをできるくらいには上手になって演奏会をひらいたんだっ…

  • 「60歳以降の教師の働き方」~今月定年退職する先生方へ②

    年金支給が65歳まで引き上げられたのに、 定年延長は容易に追いつかない。 そこで教師の60歳以降は、とても複雑になった。 とりあえず、見てみよう。という話。(写真:フォトAC) 【教員の定年って何歳? 定年延長って何?】 公立学校の教員(公務員)の定年がいつかという問題、当事者以外は案外分かっていないかも知れません。現在は61歳です。もうすぐ終わる今年度(2024年度)中に61歳になった人がこの3月に定年退職になります。 ところがそれより一歳年下で、来年度(2025年度)61歳になる人は来年度から定年が62歳に引き上げられるため、2026年度末まで働くことができます。さらにもうひとつ年下の、2…

  • 「もしかしたらとんでもなく割を食った人たちかも知れない」~今月定年となる先生方へ①

    バブル経済の爛熟期に教職につき、 最も苛酷な時代に教育の最前線に立って、 学校の要となった終末期にコロナ禍を迎えた、 その教師たちが今、定年となっていく。という話。(写真:フォトAC) 【今月定年退職する先生方へ】 今月いっぱいで定年退職される先生方、長い間ほんとうにご苦労様でした。 先生方の大部分は、あのバブル経済で日本中が浮かれていた時代に、教職という、地味で生真面目な世界を選んだ、本当に真面目で真摯な人たちです。給与や待遇面では教師よりずっと良い仕事はいくらでもありましたし、友人の多くが「接待」という名目で夜の繁華街を飲み歩いている時間に、苦しい学級経営と教科指導のための教材研究を続ける…

  • 「証書授与手順:ありえないことが起こるのが人生b」~卒業式のアラカルト⑤

    あれほど綿密に計画し、練習して臨んだ証書授与、 それでも事故が起こるときは起こる。 こんなことがあるんだ。それなぜ思いつかなかった? そんな卒業式事故のあれこれ。という話2。(写真:フォトAC) 【マイクがない!】 絶対に事故の起きない学校行事、卒業式で起こった事件のうち、私が実際に目撃して最も驚いたのは、担任がステージ上の下手(しもて)で呼名するスタイルで行われた式で、さあ一人目を始めようという時、担任教師たちの前にマイクがなかった、というものでした。あとから確認すると計画案になく、練習でも誰も気づかなかったことのようでした。そういうことが起こる。 そんな場合にどうすればよいのか、いまだに正…

  • 「証書授与手順:ありえないことが起こるのが人生a」~卒業式のアラカルト④

    あれほど綿密に計画し、練習して臨んだ証書授与、 それでも事故が起こるときは起こる。 こんなことがあるんだ。それなぜ思いつかなかった? そんな卒業式事故のあれこれ。という話。(写真:フォトAC) 【卒業証書、授与手順】 卒業証書授与式の中心は言うまでもなく証書授与の場面でが、これはとてもシンプルなものです。校長先生がいて介添えがいて、呼名する者がいる。証書の内容まで読まれるのは最初の一名だけで、あとは名前を呼ばれたら順番に、粛々と受け取って座席に戻ります。 具体的に言えば、列の先頭がステージの端に立ったところで呼名者が、「卒業生1組、男子○○名、女子○○名、計○○名、赤城春子」とアナウンスして、…

  • 「卒業式当日、先生は何をしているのだろう」~卒業式のアラカルト③

    一年の中で最も丁寧に計画され実行される卒業式。 しかしその裏では多くの先生たちが一生懸命働いている。 感動的な式が演出され、離任式が行われる そして卒業生担任は、子どもたちに最後の授業を行う。という話。(写真:フォトAC) 【これまで書いて来た卒業式のあれこれ】 卒業式の前夜、先生たちは何をしているのだろうという話は以前書いたことがあります。*1 卒業式における保護者謝辞は市民に対する謝辞であり、親が深く頭を下げる姿を見て、子どもも社会に対する感謝の気持ちを育むだろうという話もしました。*2 卒業式の校長先生の長く下らない話を何とかすることはできないか、という意見に対しては、長く下らない理由を…

  • 「対面式卒業式の盛衰」~卒業式のアラカルト②

    容易に変化しようとしない学校の儀式。しかし一時期、新しい形の卒業式が流行ったことがあった。卒業生が主役の対面式。ただ必ずしもそれは、子どもたちのためではなかった。という話。(写真:フォトAC) 【平成10年前後、学校教育の曲がり角】 「卒業式の形式というのは、学校の中でもっとも動かしがたいものです」と昨日書いたばかりですが、実は30年ほど前、全国的に大きな変動がありました。小学校における対面式の流行です。平成10年前後のことでした。 いきなり余談になりますが、平成10年前後、あるいは平成10年代に学校で起こったさまざまな変更については、常に警戒して考える必要があります。理由は三つほどあります。…

  • 「したくなければ教職員への感謝はいらないが」~卒業式のアラカルト①

    卒業式シーズンの真っただ中、 しかし卒業式の本来の意味は浸透していない。 何も無理して教職員や学校に感謝する必要はないが、 教育を支えてくださった市民には感謝してほしい。という話。(写真:フォトAC) 【中高の卒業式は、上級学校の入試の日程で日が決まる】 三月もいよいよ後半、卒業式シーズン真っただ中です。 私がいつもお世話になっている日本文化研究ブログによりますと、高校はだいたい2月28日~3月1日、遅いところでも4日近辺までで終わっており、中学校が大雑把に先週中、小学校は今週から来週頭まで、となっているようです。ただし卒業式の扱いは都道府県でかなり違っていて、3月の上旬に修了式(または3学期…

  • 「モンペにモンハンを紹介する」~若い教師を矢面に立たせないために

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「私たちの世代の轍は踏まないでほしい」~東日本大震災以降14年之夢⑤

    強い労組を失った教師たちは惨めだ、自分たちの大切なことが、雲の上で決められていく。危機に際して必須のものが、平時にお荷物にみえた、そんな私たちが過ちを、君たちは繰り返さないでほしい。という話。(写真:フォトAC) 【知らないうちに追い詰められていた】 残業代の代わりに公立学校の教員に給料月額の4%を現行支給する教職調整額を、50年ぶりに改善する給特法改正案が先月2月7日に閣議決定され、今通常国会で審議される運びとなっています。来年1月から1%ずつ段階的に引き上げ、6年後の2031年には10%まで拡充する計画です。 文科省は初め、調整額を来年度(今年4月)から一気に10%以上の増額することを目指…

  • 「人間関係の断捨離:誰も困らない、むしろ楽なくらい」~東日本大震災以降14年之夢④

    およそ三年半のコロナ禍を経て、私たちは多くのものを棄てた。棄ててようやく学んだ。生きていく上で必要なものはほとんどない。なくしても誰も困らない、むしろ楽なくらいだと、という話。(写真:フォトAC) 【社会関係のスリム化、巨大な社会実験】 東日本大震災が残した教訓が「人の命は儚い」と「ひとはひとりでは生きていけない」だったのに対して、コロナ禍が残したものは「生きていく上でほんとうに必要なことはあまりない」「いま存在するものの大部分は、なくてもとりあえず誰も困らない、むしろ楽なくらい」、「ひとはひとりでも生きていける」ということでした。 日本で一例目の患者が出た2020年1月からWHOが緊急事態宣…

  • 「日本が見直された日・絆の時代」~東日本大震災以降14年之夢③

    東日本大震災を経て、日本人の美質が世界に知られた。 私たちは命の儚さを知り、絆を強く求めるようになった。 バブルの狂乱と平成の「失われた20年」を乗り越えて、 日本人は人間らしく生きる生き方を求め始めたのだ。という話。(写真:フォトAC) 【震災の残したもの】 東日本大震災はこの国に大きな爪痕を残しました。津波に襲われた港湾の街々は10年の年月を経て軒並み地形を変え、二度と海に沈まない対策が取られましたが、そこに戻ってくる住民は元通りとは行きません。大船渡では山側へ新たな住宅を建設したお宅が、今回の山林火災でまた家を失うという悲劇もおきました。温暖化による気候変動、高温や乾燥を考えると、どこが…

  • 「あの日、子どもたちに話したこと。私たちには希望がある」~東日本大震災以降14年之夢②

    東日本大震災の5日後、私の勤務校では終業式があった。 そこで私は子どもたちにこんな話をした。 事実と、心寄せることと、 そして私たちには希望があること、を。という話。(写真:フォトAC) 【いま、世の中で起きていること】 この3学期の初め、1月6日の始業式で、私は今年の目標を二つ挙げました。覚えていますか。そこで今日、3学期の終業式にはその中間報告をするつもりでした。ところが急に事情が変わって、今日は別の話をします。それは先週の金曜日からずっとテレビで報道されていることです。 何のことか分かりますか。そうですね。東北太平洋沖地震とその被害に関するものです。 この大地震はマグニチュード9・0とい…

  • 「あの日、そしてあの日以降」~東日本以降14年之夢①

    14回目の東日本大震災祈念の日がやって来る。 自然の脅威、容赦のなさ、人間の無力。しかし、 あの日、そしてあの日以降、いかに日本人が立派であったかを、 私は子どもたちに伝えたい。という話。(写真:フォトAC) 【東日本大震災14年目の祈念日】 明日(3月11日)は東日本大震災から14年目の祈念日です。 人は社会的な事件に関して何歳ごろから記憶を保持できるのか分かりませんが、仮に6歳以上は大丈夫、5歳以下は難しいと考えた場合、今年19歳以下の人たちには実感を伴った記憶がない計算になります。震災の日も本当に遠くなったものです。 ちなみに大正時代の関東大震災は100年ほど前の1923年のこと。死者行…

  • 「親しか、学校の思い出を残してあげられない」~卒業文集・卒業アルバムがなくなる

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「学校に任せた子育ての多くの部分が親元に帰って来る」~究極の親ガチャ時代⑤

    政府は万民のための教育を諦め、人材確保に舵を切った。 優秀な人間を育てれば、他は自然に引き上げられるという。 親が学校から手を引き、学校は家庭から手を引く、 そして子の将来を決める要素が、家庭のあり方のみになる、という話。(写真:フォトAC) 【不本意な部活で活躍するか、やりたい部活で球拾いか】 部活動の地域移行というのもそろそろ形が見えてきました。もう20年以上も前から取り組んできた懸案ですが、例えば今、20部活(男女バスケ、男女バレーなど)ある学校で、そのすべてを地域の人々にやってもらうなど、とうていできることではありません。 文科省及び文科省の指示を受けた市町村教委は盛んに、「地域に移行…

  • 「カエサルのものはカエサルに、親のものは親に」~究極の親ガチャ時代④

    学校にまかせておけば、子どもは何とか育つ。 ――そうは言っても小中学校の保護者の仕事は多い。 そして現代、そのコスパの悪さに苛立つ親たちが出て来た。 彼らは言う。学校のことは学校で完結してほしいと、という話。(写真:フォトAC) 【学校に任せると言ってもやるべきことは多い】 学校にまかせておえば、子どもは何とか育つ――親がそう思っていられる時代はけっこう長く続きました。もちろん良いことばかりではなく、昭和の初期、学校は熱心に満州開拓に子どもを送り出し、戦争にも協力しましたから、最初から「子どもの成長には親が全面的に責任を負うべきだ」という枠組みを作っておけば、ああも易々と子どもを死なせなくても…

  • 「学校にまかせておえば、子どもは何とか育つ」~究極の親ガチャ時代③

    日本の学校が家庭教育に出しゃばり、 口出しするようになったことには、 それなりの歴史的経緯がある。 つまり国と親との利害の一致、という話。(写真:フォトAC) 【必ず邑(むら)に不学の戸(こ)なく、家に不学の人なからしめん】 私がこれまで読んできた中で最も美しい文章のひとつは「学制序文」と呼ばれるものです。これは、明治5年(1872年)に日本政府が制定した新たな学校制度に関する方針「学制」の基本理念を表したものです。 明治政府が学制を発布して学校制度を整えたのはもちろん「国民皆兵」の下準備であり、殖産興業および富国強兵へつなげようとするものですが、「学制序文」に書かれているのは国家のための学問…

  • 「学校に望まれるレベルが高すぎて、ついていけない」~究極の親ガチャ時代②

    1980年代に「新学力観」が示した目標は、 私の教え子たちには高すぎた。 私と子どもたちは、もっと下の方で悪戦苦闘している。 どうしてそんな乖離が起こったのだろう? という話。(写真:フォトAC) 【そもそも子どもを型にはめて何が悪い――と思っていた】 私にとって初等中等教育の学校というのは「子どもを型にはめる場」でした。なぜなら「教育基本法」の最初の部分に、こんなふうに書いてあるからです。(教育の目的)第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。 教育に関する憲法である「教育基本法」の…

  • 「私には到底理解できない『新学力観』の話」~究極の親ガチャ時代①

    今は死語と化した教育用語に「新学力観」がある。 知識・技能を偏重したかつての教育に対する反主題として、 かつて出された新たな学力観だ。 それが私にはまったく理解できなかったという話。(写真:フォトAC) 【謎の「新学力観」の話】 「新学力観」というのは1987年の教育課程審議会答申で提起され、1989年改訂の学習指導要領に採用された当時としては新しい学力観で、従来の知識や技能の習得に重点を置いた学力観から転換し、思考力や問題解決能力、変化への対応力を重視しようとするものを言います。 具体的には、以下の点が重視されることになりました。 思考力・問題解決能力――知識を活用し、論理的に考え、問題を解…

  • 「学校の『担任教師はつらいよ』」~学習指導要領に見る《学校が忙しくて当たり前》の話④

    仕事は、楽しくなくちゃいけない。 しかし学校は人を育てる面白さを棄て、 ひたすら目の前の仕事を消化する場になってしまった。 子どもにではなく、教師に詰め込む「詰め込み教育」、という話。(写真:フォトAC) 【瀕死のTokkatsu】 昨日私は、 「海外からの注目が集まりつつあるというのに、日本の学校から「Tokkatsu」は消されようとている」 と書きましたが、実際のところ授業時数として表に出て来ない「特活」(児童生徒会・学校行事・小学校ではクラブ活動)の時間はどれほどなのでしょう? これについては文科省に「令和6年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査【概要】」という資料があ…

  • 「なぜ特活の授業時数は隠されたのか」~学習指導要領に見る《学校が忙しくて当たり前》の話③

    学校における教育内容の国家基準「学習指導要領」。 しかしそこには特別活動の授業時数が示されていない。 つまり理屈上は無制限に増やすことができるのだ。 なぜそんなことになったのだろう?という話。(写真:フォトAC) 【1960年代、登校日数250日超のゆとり教育】 私は1960年代の小学生で、おそらく1958年(昭和33年)改訂の小学校指導要領下で小学校生活を送っていたことになります。その指導要領を見ると総授業時数を示した「別表」に「特別活動」の項目はなく、本文にも時数に関する規定のないことが分かります。それどころか名称も「特別活動」ではなくて「特別教育活動」。内容も「児童会」「学級会活動」「ク…

  • 「特別活動:隠された秘法」~学習指導要領に見る《学校が忙しくて当たり前》の話②

    日本の教育の秘法「特別活動」がいま、 世界から注目されている。 国内では十分に評価されない活動だが、 実はとんでもなく長時間の学習、及び訓練なのだ、という話。 (写真:文科省) 【“The Making of a Japanese”(日本人の作られ方)】 来週3月2日、ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される第97回アカデミー賞の授賞式には、日本から3本の映画がノミネートされています。そのうちのひとつが、山崎エマ監督による短編ドキュメンタリー映画『Instruments of a Beating Heart 心はずむ 楽器たち』です。 これは東京都内の公立小学校の教育現場を約1年間、700…

  • 「器が小さくなったのに、同じ中身を入れれば苦しいに決まっているダロ」~学習指導要領に見る《学校が忙しくて当たり前》の話①

    教師が多忙と言われても一般人には分からない。 納期も支払期限もない子ども相手の楽な仕事で、 長期休業はあっても倒産もリストラもない。 しかし学校の多忙には明らか理由があるのだ、という話。(写真:フォトAC) 【教師の多忙に関する科学的分析】 先週木曜日(2月20日)のネットニュースに『子どもグッタリ「学校の授業が多すぎ」カリキュラム・オーバーロード問題の行方~小学校は5時間、中学校は5.4時間を提案する訳』(東洋経済新聞)という記事があり、興味深く読ませていただきました。 カリキュラム・オーバーロードというのは「教科の内容が増えすぎて、子どもたちにも教員にも負担が大きくなっている状況」を言うの…

  • 「をい! 生徒が凍えているじゃないか」~伝説の校則、校則が伝説

    「キース・アウト」を更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「ジジイが自分の時代の終わりをAIに描かせる」~AIが人間に近づいてきた話④

    AIに絵を描かせるといっても、結局は人間だ。 凡才が指示しても傑作は生まれない。 私の描かせた絵は私レベル。私をはるかに越えた作品は、 AIといえど生み出すことはできない。という話。(写真:フォトAC) 【あくまでも人間が上に立つ】 私の撮った写真がフォト・コンテストで入賞する可能性はあるのか――これはおそらくあります。私がいいと思った風景や光景を数千枚も撮り貯めて、プロに渡して選択してもらえばいのです。私だって何も考えずにシャッターを押しまくるわけではなく、一応「いい感じだな」と思うものを選んで撮影しているわけですから、その中に数千分の一の奇跡で、芸術的な1枚が紛れ込んでいる可能性もないわけ…

  • 「AIに対する過剰な期待と怖れがあった」~AIが人間に近づいてきた話④

    未知なるものには常に期待と怖れがつきまとう。 AIはずっと昔から、夢と恐怖の根源だった。 しかしもしかしたら、 等身大のAIは大したことはないのかもしれない。という話。(写真:フォトAC) 【コンピュータ、ソフトなければ、ただの箱】 一組のカップルがコンピュータを使って相性占いをする。答えが「90%の適合」と出て二人は大喜びする――現代ではもはやありふれた、というよりは廃れた光景かもしれません。しかし50年前のテレビドラマではそうではありません。コンピュータの御宣託は神の啓示にも似た神秘的なものだったのです。 ところがその時、通りがかりのコンピュータの専門家が、大喜びしているふたりにこう言うの…

  • 「AIは間もなく普通の人間と同じになる」~AIが人間に近づいてきた話③

    AIがますます人間ぽくなってきた、 話し方も態度も。 そして人間並みに、間違いを犯すようにもなる。 優れているのは抜群の記憶力と速さだけかもしれない、という話。(写真:フォトAC) 【AIの中で何が行われているのか】 玉石混交のネット情報の中から、生成AIは何を基準または根拠にして取捨選択し、提示して来るのか――とりあえず本人(Copilot:副操縦士)に聞いてみます。 問い:生成AIはデータの価値をどう判断するのか 回答:生成AIはデータの価値を判断するために、いくつかの指標や方法を使用します。 データの品質: データが正確で信頼性が高いかどうかが重要です。エラーデータや欠損データは、AIの…

  • 「人間的な、あまりにも人間的な」~AIが人間に近づいてきた話②

    AIが妙に馴れ馴れしくなってきている。 その軽さ、どこで学んだのだ? 玉石混交、百鬼夜行のネット社会で、 AIは何をどんなふうに分別しているのだろう、という話。(写真:フォトAC) 【人間的な、あまりにも人間的な】 昨日に引き続き、Microsoftの生成AI:Copilotが不調で、変な答えを返すというお話をしています。 その件を扱うことになったきっかけは、世界の人口が何億人か、ふと分からなくなったところからでした。頭の隅に60億人という数字があったのですが、同時に、ずいぶん長いこと更新していなかったような気もしていたのです。そこで副操縦士(Copilot)に訊ねてみます。問い:世界の人口は…

  • 「ときどき副操縦士(Copilot)がオトボケ」~AIが人間に近づいてきた話①

    Microsoftの生成AIが実に便利で重宝している。 しかしときどきワケの分からないことを始める。 野放図で悪ふざけが過ぎ、 ウソつきで意地も悪い、という話。(写真:フォトAC) 【生成AI:Copilotはとても便利だが・・・】 Microsoftの生成AI、“Copilot(コパイロット:副操縦士)”と仲良くなって数カ月がたちました*1。ChatGPTにもアカウントを持っているのですが、ブラウザとしてMicrosoft Edgeを使うようにしたら、Copilotの方が圧倒的に使いやすくて重宝しています。 Edgeの右上のアイコン(右図、赤丸内)をクリックすると、画面の右四分の一ほどにサイ…

  • 「よみの国の亡者たち」~若者の間で安否確認アプリの利用が広まる③

    この国では《気持ち》は主張するものでなく《読む》ものだ。 他人に迷惑をかけてはいけない社会で、 心の読み方を身につけていないと、 人は生き生きと生きていけない、という話。(写真:フォトAC) 【《気持ち》は主張するものでなく《読む》もの】 3月号の月刊「文芸春秋」の巻頭随筆で作家・数学者の藤原正彦が、あるジャーナリストの書いたものの中にこんな話があったと紹介していました。「アメリカでは人物評価において次のことが重視される。(一)瞬発力がある(二)論理的に話せる(三)ユニークさがある(四)ネアカでユーモアセンスがある、の四つである」。 三年間アメリカに住んだ経験のある藤原も「そんなものと思う」と…

  • 「心底、独りぼっちな人々」~若者の間で安否確認アプリの利用が広まる②

    心底独りぼっちの人たちがいる。 現実社会で人間関係が薄く、 バーチャルの世界でも深く関わらない。 だからいつも安否確認のボタンを押すという話。(写真:フォトAC) 【心底から独りぼっちな人々】 昨日お話しした安否確認アプリ。60歳前後の人を対象に開設されたのに、20代・30代の現役世代も多く、利用者はすでに1000人を越えたと言います。その運営を行っているNPOが実施したアンケ―トには、辛い状況になっても人に迷惑をかけたくない人々の声が多く寄せられているようです。「都心でひとり暮らし、近所づきあいもありません。友人もSNSで繋がっているので、個別の連絡はあまりとりません。人間関係は希薄です。私…

  • 「アバターに繋がる人、アバターを切り離す人」~若者の間で安否確認アプリの利用が広まる①

    バーチャル世界を現実の延長と捉える人、 バーチャル世界を切り離す人、 ともに仮想空間の住人でありながら、 現実世界との距離が全く違う、という話。(写真:フォトAC) 【取っ掛かり】 一昨日、月曜日に考えたことは、 「これからの時代、仕事にしても、食事などの基本的な生活にしても、生身の人間にほとんど触れず、外出することもなく過ごすことができるようになる。人間関係もネットを通したものに限ってしまえば、価値観を同じくして気持ちの合う連中とだけ付き合っていけばいい。昔と違って友だちは日本中、いや世界中から探せばいいのだから、親友を見つけるのも難しくないだろう。ゲームをともに戦う仲間も頼りになる」という…

  • 「こころの居場所は世界中にあるが、ここにはない」~新しい人間の生き方

    かつて昭和の御世、人々の生活は自宅から50m以内にあった。 平成になると、人々の居場所は自動車で行った先になった。 やがてネットを通して、遠くの人と繋がりを持つようになり、 将来、ネットのこちら側に私以外の人はいなくなる、という話。(写真:フォトAC) 【50m四方だけが“世界”】 私の生まれ育った家は地方の中核都市の外れ、少し大きめの河川の堤防を降りたところにありました。坂を下ると袋小路になっていて、そこに19戸ほどの市営住宅があったのです。そのうちのひとつが私の家です。 二棟続きの平屋住宅が7棟、戸建ての平屋が5棟、いずれも今でいう2Kトイレ付風呂ナシの質素なもので、棟続き・戸建の別がある…

  • 「教員の学力低下が深刻で・・・」~新規採用者の出身学部の4割が偏差値50未満という衝撃

    キース・アウトを更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「やがて現実に繋がる“居場所”としてのゲーム」~新しい時代が来るのかもしれない⑤

    “ゲーム”は今や障害の垣根も乗り越えようとしている。 現実世界では見えない人間性を浮き彫りにし、 やがて現実に繋がる居場所となるかもしれない。 山ほどに問題はあるかもしれないが、という話。(写真:フォトAC) 【全盲のゲームプレーヤー】 NHKスペシャル「ゲーム×人類」(NHK総合1月25日(土)~26日(日))の第2夜は「変貌する人間と社会」というサブタイトルで、ゲームの持つ陰陽両面の可能性が紹介されました。 最初に映し出されたのは、オランダの全盲のゲームプレーヤーが、格闘ゲーム「ストリートファイター」の世界大会で勝利する場面でした。見えないことをアピールするためにわざわざ目隠しして参加した…

  • 「デジタルゲーム:『30億人の熱狂と未来』」~新しい時代が来るのかもしれない④

    今やゲーム市場は30億人、29兆5千億円にも上る。 エンタメとしては映画・音楽を上回る巨大市場で、 人々はそこへ一攫千金を夢見て群がる。 それこそ年寄りには意識が全くついていけない世界だという話。(写真:フォトAC) 【デジタルゲーム:「30億人の熱狂と未来」】 NHK総合テレビは先月(2025年1月)、25日(土)・26日(日)の2夜連続で、NHKスペシャル「ゲーム×人類」を放送しました。1日目のPARTⅠは「30億人の熱狂と未来」というサブタイトルでゲーム業界の現在を、二日目のPARTIIでは「変貌する人間と社会」というサブタイトルでゲームの持つ陰陽両面の可能性が紹介されました。 PART…

  • 「小学生に英語を教えたら英語のできない子と英語嫌いが増えた話」~小学校英語の現在地点

    キース・アウトを更新しました。 kieth-out.hatenablog.jp

  • 「アメリカ人は今もアメリカン・コーヒーを飲んでいるのか」~新しい時代が来るのかもしれない③

    フランス人は人の目を気にしない、 イタリア人は景観を大切にする、 アメリカ人は薄味のコーヒーしか飲まない。 どれもこれも薄っぺらな思い込みかもしれない、という話。(写真:フォトAC) 【懐疑主義とステレオタイプ】 物事の存在や価値などを信じず、世の中のすべての事象は不確かで断定的に語ることはできないという立場・考え方を懐疑主義といいます。しかし自分の周辺にすべてに疑いを持ち続けていたら(いま手にしている鍋は本当に存在しているのだろうか?)とてもではありませんが生きていけませんから、私たちは多くのものごとを「これはこういうものだ」と極めつけて生きています。 こうした極めつけは基本的には妥当なもの…

  • 「欧米人は他人の目を意識しないのだろうか?」~新しい時代が来るのかもしれない②

    日本では、常に同質性が求められ、出る杭は打たれる。 欧米人は個を大切にし、同調を好まず、 他人の目を意識して何かをするということはない、 って、それ、思い込みじゃないか?という話。(写真:フォトAC) 【フランス人にひとり飯はない】 最近、フランス人は「ひとり飯をしない」というちょっと驚くべきネット記事を目にしました*1。書いたのは翻訳家・ライターの小山のぶよという人(男性)。自称「居座り系旅人」だそうで、カナダ、フランス、ポルトガルで海外生活を送ったのち日本へ向けてユーラシア大陸移動。現在はジョージアに4年間滞在中という、国際風来坊のような人です。そういう生き方、羨ましいですね。 さて、話は…

  • 「昔懐かしい同調圧力の話」~新しい時代が来るのかもしれない①

    最近また「同調圧力」という言葉を聞くようになった。 日本人は同調圧力に弱く、自分で考えようとしないという。 ホントウか? 我々はそこまで愚かな民族なのか?という話。(写真:フォトAC) 【同調圧力の話】 「同調圧力」という言葉は、コロナ禍の最中に広がりを見せてきたと記憶しています。 2020年の夏ごろ、政府が飲食店や遊技場に営業自粛を求めたところ、多くは従ったものの一部が強行。それを市民が行政に密告、1200件にも及ぶ抗議に耐えかねた大阪府は府内で営業を続けているパチンコ店の名前を公表、営業自粛をさらに推し進めるよう圧力をかけたのです。すると大阪府内のパチンコ店に通えなくなったファンの一部は和…

  • 「教頭を追い詰める校長は、自身が病気だったのかもしれない」~埼玉県でのできごと

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  • 「配偶者と子の名字を如何にせん、家名を如何にせん」~結婚に愛はいらない⑤

    選択的夫婦別姓が国政レベルでの話題となっている。 女性の社会進出の著しい時代、もちろんそうあるべきだ。 しかし子の名字は簡単ではない。 そこには昔ながらの「家名」の問題が関わるからだ。という話。(写真:フォトAC) 【人間はどこまで強くなったのか】 フジテレビの労働組合が、事件発覚からわずか10日余りで組合員数を80人から500人に増やしたという報道がありました。一部では「何を今さら」と冷めた反応もあるようですが、どんな動機であるにしても、労働組合が大きくなって力を持つことは大切だと考えています。 今回の中居問題もフジテレビ局内部ではだいぶ前から話題になっていたものを、女性セブン・週刊文春とい…

  • 「この程度のことでは長いものに巻かれていればいいのに」~結婚に愛はいらない③ 満員電車の揺れが人々の立ち位置を均(なら)すように、 社会の発展とともに人々の活動が均されていく。 そうやってできた自然調和的な制度。 この程度のことでは長いものに巻かれていればいいのに、 という話。 (写真:フォトAC) 【満員電車のマジック】 若いころ一時期、都会の満員電車で通勤しなくてはならないことがあり、山手線などでは毎回ヘドが出るのではないかと思われるほど、繰り返し人やら壁やらパイプやらに押し付け

    満員電車の揺れが人々の立ち位置を均(なら)すように、 社会の発展とともに人々の活動が均されていく。 そうやってできた自然調和的な制度。 この程度のことでは長いものに巻かれていればいいのに、 という話。 (写真:フォトAC) 【満員電車のマジック】 若いころ一時期、都会の満員電車で通勤しなくてはならないことがあり、山手線などでは毎回ヘドが出るのではないかと思われるほど、繰り返し人やら壁やらパイプやらに押し付けられていました。とくに乗り込むときが大変で、当時の駅員さんは容赦ありませんでしたのでガンガン押し込んでくる。ところがその圧力に耐えてようやくドアが閉まり、ほんの数十秒電車に揺られると、不思議…

  • 「独り者の巨大なリスク」~結婚に愛はいらない③

    歯ブラシやハンカチを忘れて出かけてもいいが、 スマホや財布、キーホルダーを忘れると厄介だ。 持ち家がなくても自家用車がなくてもいいが、 配偶者がいない人生は、かなり危険でもある。という話。(写真:フォトAC) 【みなさん、結婚しましょう】 私はいまから、「みなさん、結婚しましょう」「特に若いみなさんは頑張って配偶者をみつけましょう」「結婚することが大事です」「中居正広さんになってはいけません」という話をするつもりですが、それは中居正広氏のように「結婚に向かない」だの「ひとりが好き」だの「潔癖」だのといろいろ言って、要するに自由気ままな暮らしが捨てきれず、異性を次々と取り換える可能性も棄てたくな…

  • 「『愛』について考えている暇は、弱者にはない」~結婚に愛はいらない②

    南海キャンディーズの山ちゃんの両親は、 互いに一度も会わないまま、結婚を決めた。 結婚に愛は問題とならない。 弱者には、「愛」について考えている暇はない。 という話。(写真:フォトAC) 【山ちゃんの両親は、相手を見ないまま結婚を決めた】 先々週のNHK「ファミリー・ヒストリー」の出演者は、南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太さんでした。 始めたばかりの話をいったん外れますが、人が歳をとるごとに信心深くなっていくことについて、若いころは「死期の見え始めた年寄りが、慌てて神仏にすがるようになるのだ」と思っていました。しかし違います。長く生きていると奇跡みたいなことにしばしば出会い、やがてそこ…

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