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#自作小説
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【夜想曲32話】愛情たっぷり地獄の晩餐
Dream32.愛情たっぷり地獄の晩餐 「みなさま、本当にありがとうございました。お陰でミルもこの通り、元気に戻ってくることができました。本当に感謝いたします」 素朴だけど、二人暮らしにしてはかなり大きな一枚板のテーブルを囲んで、私たちはミ
2025/03/18 11:03
自作小説
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【残067話】影はいつでもすぐそこに(1)
✚残067話 影はいつでもすぐそこに(1)✚ 夜が明けた。 あれほど激しく降り注いだ雨も明け方には勢いを弱め、日の昇る時分にはもうすっかりと上がっていた。 青く茂る葉からは一粒、また一粒と雨露あまつゆが零れ、鳥たちのさえずりがしんと静まる
2025/03/15 09:28
ショートショート『楽譜倉庫から』
卒業試験のため、篤人は音大の図書館にある楽譜倉庫の扉を開けた。 ひんやりとした冷気が身体中に襲いかかってくる。 まるで冷凍庫のような寒さからは、この部屋で何年も眠り続ける音符たちの「奏でてほしい」という、悲痛な叫びを感じる。 奥の棚の上段に、お目当ての楽譜はあった。 やや背伸びをして引っ張り出すと、埃の煙の中から、一枚の楽譜が舞い降りてきた。 題名はなく、数十小節ほどの音符が手書きで丁寧に書かれていた。 何の曲だろう… 篤人は鼻歌でそのメロディを口ずさむ。 …初めて聴く曲だ。 誰かのオリジナルかもしれないと思いながら裏面を見ると、右下にコメントが書かれていた。 -香奈、今までた
2025/03/13 08:29
ショートショート『眠っていた音』
ふと外の様子を眺めると、空は夕焼けに染まり始めていた。 静かに流れるショパンのピアノを聴きながら、昌和はヴァイオリンのチューニングをする。 毎日この時間になると客は来なくなるので、閉店の準備もしながら、昌和は並んでいる楽器たちとの時間を過ごしている。 「もう今日はお客さん来ないんじゃない?コーヒーでも飲む?」 レジの裏にある事務室から、大学生の娘の彩花が顔を出す。今日はアルバイトが休みらしく、早めに帰ってきてくつろいでいたようだ。夕方にコーヒーなんて飲んだら、夜眠れなくなってしまうだろう。 「お父さんって、いつも音楽のことばかり考えているよね。すごいわ。」 小さな楽器屋の娘ではあるが、
ショートショート『歪んだマグカップ』
「ホットコーヒーお願いします。」 はい、と一言つぶやき、マスターはコーヒーを淹れ始める。 土曜の午後は、このカフェのカウンターで過ごすというのが、圭吾にとっての個人的なルーティンだ。 平日は営業で取引先をまわったり、提案の資料を作成したりと、ほとんど仕事に費やされている圭吾にとって、土曜の朝に家の掃除を片付け、近所にあるこのカフェで午後をゆっくり過ごすのが、至福のひとときだ。 14時になると、カウンターの隣の席に、美咲という同い年くらいの女性が座り、彼女もホットコーヒーを注文する。 マスター曰く、月に2回ほど土曜のこの時間に訪れるらしい。つまり彼女にとってみれば、来れば必ず圭吾がい
2025/03/13 08:28
短編小説『遠くから響く音』
「じゃあ行ってくるね。私はミーティングで夜遅くなると思うけど、ママは多分18時までには帰って来るから。パパはどうだろ?ま、ごゆるりと〜」 絵美は手を振りながら家を出た。ご丁寧に、俺がいるのに鍵まで締めて。 俺は暇でも、周りは仕事なんだよなあと、涼は寝転がったまま白い天井を見上げて考える。 システム開発会社に勤務している涼は、担当していたプロジェクトが一段落したものの、スムーズにすぐに次のプロジェクトというわけにはいかなかった。 もちろん、来月1日からは、製造業のお客様のシステム開発プロジェクトに関わることが決定している。 しかし、31日まで担当するはずだったプロジェクトを、一週間早く
2025/03/13 08:27
【夜想曲31話】セルフ封印を編み出した!2
Dream31.セルフ封印を編み出した!2 「え、ちょっと待って、ホントに良いの?」 封印か消滅かを迫っている側にもかかわらず、夢魔の真意が掴めなくて動揺してしまう。 けれど夢魔は、もう迷いのない瞳で私を見上げた。「良いんです。自分で分から
2025/03/09 10:36
【中年独身男のSF小説】時の交差点で ~時空を越えた絆~
2025年1月を無職で迎えた私。適応障害を患い、療養しながらAIや量子力学を学んでいた。フリーランスとして活動していくことを決め、準備しているところに現れた壮年の男性。声を掛けられ、不思議な親近感と違和感を感じた。彼は一体、何者なのだろうか?
2025/03/06 21:11
【残066話】雨の夜の再会(5)
✚残066話 雨の夜の再会(5)✚ 「エルっ?」 背後から二つの声がエルフェリスの名を呼んでいる。 けれどもその声はもはやエルフェリスの耳には届いていなかった。 ただただ、回廊かいろうの向こうに消えた影だけを追っていたエルフェリスには
2025/03/05 09:57
【夜想曲30話】セルフ封印を編み出した!
Dream30.セルフ封印を編み出した! 私の不用意な一言で夢魔が泣いてしまったが、なんとか一生懸命みんな(主にリュイ)で宥なだめて泣き止ませることに成功した。 はぁ……めんどくさい。 心の底からそう思ったが、それを口にするとまた泣いてし
2025/03/01 17:21
プリ小説と語りの灯火の違い&おすすめ小説紹介
「プリ小説」と「語りの灯火」の違いを徹底比較! 10代向けの夢小説・恋愛小説が豊富なプリ小説と、本格的なオリジナル小説が楽しめる語りの灯火。それぞれの特徴やユーザー層、おすすめ作品を紹介します。あなたにぴったりの小説投稿サイトはどっち?
2025/02/24 16:51
【2025年最新】背筋が凍るホラー小説傑作3選!今年読むべき恐怖の物語
「2025年に読むべきホラー小説を厳選!都市伝説、心霊現象、SNS怪談をテーマにした短編ホラーを紹介。背筋が凍る恐怖の物語があなたを待っている。『語りの灯火』の最新ホラー傑作をチェック!」
2025/02/24 16:49
【残065話】雨の夜の再会(4)
✚残065話 雨の夜の再会(4)✚ 赤くなったり蒼あおくなったり、今夜は本当に忙しい。 心底疲れ果てた体を少し休めようと、エルフェリスもソファに深く身を沈めた。しかしそこでふと気付いたことがあった。 「……てかなんで私たち並んで座ってん
2025/02/15 07:56
【夜想曲29話】どこまでも落第する夢魔2
Dream29.どこまでも落第する夢魔2 そして呟く。「……いない?」 それは茫然自失ぼうぜんじしつとも、喪失感そうしつかんとも言い難がたい声色で辺りに響き渡った。 その瞬間を、セシルドは見逃さない。「あんたの中のアンタならここにいるぜ」
2025/02/10 16:17
小説執筆に役立つ心理描写のテクニック
キャラクターの心理描写を深めるには? 小説執筆に役立つ心理描写のテクニックを解説。直接描写・間接描写・比喩表現などを活用し、読者の共感を呼ぶキャラクターを創り出そう!
2025/02/08 08:58
【残064話】雨の夜の再会(3)
✚残064話 雨の夜の再会(3)✚ 「こっち見ないでよ……」 そんな真面目な顔をして私を見ないで。 そう思いながら、しばしデューンヴァイスから視線を外した。そうでもしないととてもじゃないが心臓がもたない。 普段は調子の良い表情しか見せ
2025/02/07 09:03
【夜想曲28話】どこまでも落第する夢魔
Dream28.どこまでも落第する夢魔 人格が入れ替わった途端にパニックを起こしてぶっ倒れた夢魔を、私たち四人は取り囲むようにして見下ろしていた。 完全に白目を剥むいて、口から泡を吹いて気絶している。 その傍かたわらには小さな黒い珠たまが
2025/02/03 19:44
【残063話】雨の夜の再会(2)
✚残063話 雨の夜の再会(2)✚ それからしばらくして。 「いてー……」 頬に赤いカエデの葉にも似た烙印らくいんを押されたデューンヴァイスとともにハイブリッドヴァンパイアやドールで賑わうロビーまで下りたエルフェリスは、その一角に置かれ
2025/01/27 19:17
グロリアス・イブの贖罪
『次はー鉱金コウガネ、鉱金終点です。KR外環状線、景都ケイト都営地下鉄線はお乗り換えください。本日も景王ケイノウ電鉄をご利用いただきましてありがとうございました』 と、車内放送が鳴り響くと、明雲ア
2025/01/23 18:04
【夜想曲27話】リュイの調べ
Dream27.リュイの調べ 「あーもう、せっかく俺が引き付けてたのに邪魔しやがって、あのバカ金魚が!」 私に向かって突撃してくる夢魔の背を追って、セシルドがぼやきながらもこちらへ進路を変えた。「ミルさんは離れて! リュイの傍そばに!」
2025/01/22 09:50
【残062話】雨の夜の再会(1)
✚残062話 雨の夜の再会(1)✚ 感動の再会に涙する。そんな光景を今まで何度も何度も見てきた。 教会という場所柄、訪れる人々は十人十色じゅうにんといろ。様々な想いを抱いてやって来る。 自らの幸福を願う者、他人の未来を願う者、日々に失
2025/01/18 09:52
【残061話】狂える月(4)
✚残061話 狂える月(4)✚ 急進派とも革新派ともいわれるヘヴンリーらの勢力と真っ向から対立する戦闘集団。 そのトップが……リーディア? エルフェリスの双眸そうぼうが何度も何度も地を這はう。 確かに、リーディアは女性にしては随
2025/01/13 11:16
【夜想曲26話】あの人の為ならとり憑かれたって
Dream26.あの人の為ならとり憑かれたって 「彼はずいぶんと無茶な戦い方をしますねぇ。見てるこちらがハラハラしますよ」「やっぱリュイもそう思う?」 二重人格の夢魔相手にロングソードを巧たくみに操りながら、かつ相手の懐ふところに飛び込むよ
2025/01/12 09:34
【残060話】狂える月(3)
✚残060話 狂える月(3)✚ 彼がどれほどの時を生きてきたのかなどエルフェリスの知るところではなかったが、この目は確かに人を惹き付ける。この存在は確かに人の心を掴むのだ、とエルフェリスは思った。 まるであの空みたいだと。 暑い暑い日
2025/01/09 09:50
【夜想曲25話】ナイト2
Dream25.ナイト2 これはいよいよ本気でヤバそうだ。 セシルドの嘘つき。 夢魔よりも早く戻るって言ったじゃないか。 心の中でセシルドへの恨み言を呟きつつ、頭のスイッチを完全な戦闘モードに切り替える。 額から流れ落ちる汗の感覚に苛いら
2025/01/06 09:30
【残059話】狂える月(2)
✚残059話 狂える月(2)✚ 「癖で人を殺すような男なの? ……ルイって」 頭ではこの場から離れねばと分かっているのに、エルフェリスの中の好奇心がヘヴンリーの話を聞かせろと暴れ回る。 だからエルフェリスはあえて考えるのを止めて、ヘヴン
2025/01/01 21:23
【残058話】狂える月(1)
✚残058話 狂える月(1)✚ もやもやする気分を引きずったまま、エルフェリスは一人、日の差し込まない回廊かいろうをとぼとぼと自室へ向かって歩いていた。 太陽はもう完全に姿を現しているというのに、遮光しゃこうのガラスで覆おおわれたこの城
2024/12/31 08:57
【夜想曲24話】ナイト
Dream24.ナイト さてこの状態どうしよう。 セシルドが消えてから早数分。 言われた通り、ロングソードを握り締めたまま、セシルドがリュイ達を伴ともなって帰るのを待っていた。 それなのに。 なんてお約束な展開。「ちょっとは空気読みなさい
2024/12/29 19:45
赫き彗星、宙に散る最後の機体
劇場版 『逆襲のシャア(Shar's Counterattack)』に登場したシャア専用MS、『MSN-04 SAZABI』、名前の由来は海外の銘柄から、ララが乗っていた『ELMETH』から引き摺っている名前の付け方だ。MSNの型式は初代Gの一年戦争から逆襲のまでの宇宙世紀0079から0093まででたった4機しか存在しないかなり特殊な機動兵器。 01:『Psycommu項起動試験型ZAKU II』 02:『ZEONG(ジオング)』 03:『JAGD DOGA(ヤクト・ドーガ)』 01、02は一年戦争、03、04は逆襲の。その間のOVA含む作品群では一切開発されていない。富野由悠季氏とは別の作家…
2024/12/28 15:30
PG Unleashを超え、RG Ver.2の先へ
Master Gradeの作製を続け早20年、Perfect GradeのRX-78-2を完成させてもう17年、今回は原点回帰ということでMG RX-78-2 Gundam Ver.3.0と量産型ZAKU-06J Ver.2.0の紹介をしよう。 Gundam AGEの次の作品、Gundam Reconguista in G、IRON-BLOODED ORPHAHS、Witch from Mercuryの機体は作らないのかって?Gのレコは車と似たような見た目の進化で昭和に近い車の角ばった見た目の初代から中途半端な丸みを帯びた平成の車と同じような変な丸みを帯びた不格好な造形なので好みではなく、鉄血…
2024/12/28 15:15
【残057話】ある夜の出来事(2)
✚残057話 ある夜の出来事(2)✚ 広くて冷たい回廊を足早に歩く彼の姿を見失わないよう、努つとめて足音を立てないよう注意しながら小走りで付いて行く。 ロイズハルトをはじめとするヴァンパイアは五感が人間よりも優れていると聞くから、エルフ
2024/12/27 09:08
【夜想曲23話】拒む愛妻3
Dream23.拒む愛妻3 「変な……天気。リュイ達の方は大丈夫かなぁ」 ふとあの場に置いてきた二人の事が気になった。 夫婦とはいえ、ミルさんは今夢魔に魅せられている。 もしあの二人の方に夢魔が現れたら? ヒーラーのリュイ一人で太刀打ちでき
2024/12/23 18:12
【残056話】ある夜の出来事(1)
✚残056話 ある夜の出来事(1)✚ 「エルフェリス様、お加減いかがですか?」「うん、もうすっかり元気! 心配かけてごめんなさい」「まったくですわ。しばらく無茶は禁止でしてよ」「はーい。……てか別に無茶なんかしてないんだけどなぁ」「してます
2024/12/22 07:31
【夜想曲22話】拒む愛妻2
Dream22.拒む愛妻2 きれいな放物線を描いて茂みに落下する物体。「っ?」 物体を確認するために恐る恐る茂みをかき分けると、そこには見慣れたあの顔が恨めしそうにこちらを睨み付けていた。 ……。 …………。「……妖怪?」「誰が妖怪だボケ
2024/12/17 18:02
次に、演者をお披露目3-3
今日は頭が良く回る。気分が良いためかも。 アイラは楽屋へ引き返し、空席のソファに座った。取り出したギターを弾きはじめる。皆の視線が音に上乗せ。 ギターケースのポケットに入れた五線譜と鉛筆、そして譜面台を足元に引き寄せる。 空洞の体内、内なる声に耳を傾けた。 聞こえるだろうか、ちょっと心配。 いつもは、示された解答を私に合わせていた。しかし、これは実験。曲に形を完成させる、そして世に送り出す作品の評価を観測しないことには、始まっていない、単なる空想にすぎないのだ。 音色。歌でも声でも鳴き声や奇声とも言いがたい、自然の波。周波数が溶け出すバターのように固体を液体に、同心円状に宙空へ広がる。 流体。…
2024/12/16 05:31
次に、演者をお披露目3-2
「おそらく、それで影響は八割方、回避が見込まれます」カワニは泣き顔に無理やり微笑を足したおかしな表情で続ける。「不本意ですよね?」探るようにきいた。わかっている質問は事実を確かめるためではない、安心と安定。 「起きてしまった過去に囚われる労力は無意味ですから、これからの話をするべき」 「相変わらず強い……んですね」 「いいえ」アイラは首を振る。「過去に興味がない、それだけのこと」 「頑なに出演は拒んできた。そのために売り上げを、目標数を大幅に上回る完璧な達成を果たしたのですよね」 「その答えは前に応えました、重複になるので言わない」 「出演は手を尽くして、数日にまとめてスケジュールを調整します…
2024/12/15 05:59
次に、演者をお披露目3-1
見返りを求めない音はすべて私に返ってくる。妄信とは十二分に理解してる。刑事たちへの対応は心がこもっていない、儀礼としてのお辞儀を体現して、アイラは楽屋に引っ込んだ。ステージと楽屋の出入りは、いつの間にか許されて、ステージ脇のスタッフは楽屋や廊下に固まってこの後のお客の処理に頭を悩ませる。ステージで観客に約束したテレビ収録の件は、以前から再三、出演のオファーを受けては断っていたあるテレビ局の音楽番組にマネジャーのカワニを通じて連絡を取り、来月の出演を取り付けたのである。スタッフは私が一曲奏でたことに気にも留めていない、それよりもファンを失わないための配慮に各方面へ電話をかける人物の多いこと。うっ…
【残055話】ルイの帰還(3)
✚残055話 ルイの帰還(3)✚ † † † † † そしてそれからまた数日後、ついに城内が尋常じんじょうでないほどにざわめき立つ瞬間を迎えた。 城に住まうありとあらゆる者が出迎える中を、帰って来たのだ。あの男が。 けれどエルフェリ
2024/12/14 15:13
次に、演者をお披露目2-4
新谷は手帳を取りして確認。「入れ替えるのはドリンクと軽食が足りなくなった場合のみで、一回目の公演終了後には、オレンジジュースとジンジャーエールを調理場から補充する手はずです。出払った観客を見送ってから行うようですね、ちなみに二回目の講演までは約三時間の空き。一回目終了が遅く、二回目の開場早くても、十分前後の誤差」 「売店が気になります?」熊田がきいた。しかし、聞こえていなかったらしく、美弥都はそのまま階段を下りてしまう。熊田と新谷も一階に降り立つ。すると、ステージ袖からギターを抱えたアイラ・クズミが床を確かめるように視線を落として顔を見せた。 「警察の方ですよね?」その声に新谷が近寄る、尻尾が…
2024/12/14 05:43
次に、演者をお披露目2-3
「鑑識の車両、遅れてるみたいですね」新谷が端末を見つめていた。「本部に戻るまで、まだかかる。結果は頼れなさそうです」 美弥都は後ろ手の二階へ上がっていった。熊田は、数歩遅れて急な階段を踏む。二階、ステージ正面の一段下がるカウンター席とその奥、美弥都が座っていたボックス席はどちらもステージと被害者のテーブルが視界に入る。左右の席も同様に一階を見渡せる。美弥都は下手側の階段から三階へ。 受付に通じるセキュリティドアの向こうで、観客が解放されて移動を始めていた。種田は早速、女性を引き止めてカバンを指差す。 「なんでしょう」美弥都が落ち着いた声を出した。三階に急ぐ。 「なにかありました?」三階席、正面…
2024/12/13 05:57
次に、演者をお披露目2-2
「所持品は持ち去られたと考えるべきか、それとも観客が所持しているのか」熊田は腰に手を当てる。 新谷は持ち込んだ意見に確信を持って言う。「いいえ、初めから会場に移動する前も受付には預けていなかった。そうですね、たぶんどこかで直接手渡した」 「何のためにカバンごと渡す必要があったのかしら」美弥都が質問する。「渡したのが事実ならば、相手は女性に限定される。男性が持っているのは明らかに不自然。所持品検査も行った。そこでは疑わしい人物は見つからなかった、だから手をこまねいて現場を見返している。もしもバッグが観客の誰かの手に渡っていたとしたら、身分を証明する被害者の証拠品、カードや明細書、領収書などは処分…
2024/12/12 07:14
【夜想曲21話】拒む愛妻
Dream21.拒む愛妻 さてさてこれは一体どうしたことか。 あたし、ちょっと邪魔者みたい? ――そんな状況。「帰りましょう? ミル」「……嫌です。ここにいます」「なぜ? ここは夢魔が作り出した偽いつわりの世界ですよ?」「……」 リュイの
2024/12/11 20:32
次に、演者をお披露目2-1
「症状は毒物摂取に似た死因、ふうむ、飲まされたのが被害者にとっては毒だったんだろうかぁ……」熊田と日井田美弥都が無言で現場、被害者のテーブルに惜しみない愛情を注ぐ姿に、いたたまれなく、声を発したのだろう。熊田は若さは沈黙と飢餓に迫られると焦りを抱く、と新谷の言動に解釈をつけた。 遺体は鑑識が階段の急斜面と狭さに苦労しつつ、回収を終えていた。 「荷物はこれだけでしょうか」美弥都はドレスの裾を絞って、しなやかにしゃがむ。テーブル、天板の裏を眺める。 「化粧直しのポーチですか?」新谷も美弥都に習って、這い蹲るよう、床に手を着いて見上げる。 「受付に預けているにしても、食事の後に直すはず……」美弥都は…
2024/12/11 05:56
【残054話】ルイの帰還(2)
✚残054話 ルイの帰還(2)✚ 以前ちらりとレイフィールのドールにそのような話を聞いたことがあったが、それよりもなお計り知れないようなことが、日常的に繰り返されていたとかいなかったとか。 だからあのような結末を迎えたにもかかわらず、ド
2024/12/09 10:16
次に、演者をお披露目1-6
「考えに著作権は発生しない」 「どうも」熊田は美弥都越しに新谷に言う。「ビル内の出入り口を警官に見張らせてください。地上、地下へのエレベーターの乗り降りも禁止、なるべくエスカレーターの移動を促すように、強制ではないことを初めに伝えてください。ただし、不審な行動は疑いを強める行為であるとも付け加えるように」 「警官を集めます」新谷が床を蹴って飛び出そうとしたので、佐山が行動を制する。 「待て!」リスクを恐れた思考。周りが見えていない証拠に、次の一手に目がくらむ。佐山は決断を見切れないでいるようだった。 「犯人を取り逃がす以前に、あなたが取るべき対処、それは着地点の明確化です」美弥都が丁寧に述べた…
2024/12/09 04:39
次に、演者をお披露目1-5
「もう無理ですよ!」心からの悲鳴。新谷は言う。「事情聴取が終わり、所持品検査のほかに何をすれば?配属されて一週間の私に何ができるというのですか?」 指示がなければ、動けない。若い年代に見られる傾向だが、与えられた事柄を命令のよう従う社会に移行しつつあるという見方もできるだろう。彼らのせいではないが、無意識に状況に反応して生きる場面がここ数十年極度に増えた、これらが主たる要因だ。システムの仕組みが、簡易になればなるほど、作り手と使用者で理解度の乖離が進行する傾向が、この状況を物語る。自動車はキーを挿さなくとも、エンジンがかかって、ギアの入れ替えはあるにしてもアクセルを踏めば、操る難しさなしに動き…
2024/12/08 05:48
次に、演者をお披露目1-4
熊田の冷静な応対に佐山は、取り乱した発言を急遽撤回、上った血液は循環を求めて体内を廻り始める。「……そのようなつもりで言ったのではなく、はい、私が指揮を取ってする初めての捜査でして……」 「観客は一度、家に帰すつもりでしょうか?」美弥都がきいた。「ライブ、遠方から来ている人を帰しては、気安く話を聞きに行くのに二の足を踏む。しかし、判断は早急、迅速さが求められる。かれこれ二時間以上かしら」美弥都は首を大きく傾け、佐山の左手の時計に正立する角度をとる。「食事が提供されるにしても、まあ交通網が麻痺している現実、どこへもいけませんから、少なくともビル内に留まる約束を交わしての解放が、双方歩み寄った落と…
次に、演者をお披露目1-3
熊田の勘は当たっていた。美弥都はかなり機嫌がいい。喫茶店での彼女とは、表情の柔らかさが格段に上。これが本来の彼女なのか、つまりお客への対応は仮面をかぶった状態。しかし、どちらが本心かは不明。だが、現状は確実に彼女へ私の印象はぐっと高まった、熊田は女性として美弥都の捉え始めた。 「毒物は検出されませんでした」半分ほどに伸びた灰を落とす。熊田は顔を上げて、質問を何気なく言い出した。「お一人の住まいですか?」 「孤独は嫌いと言いつつ、相手を誘うときは一人が好適。まったく矛盾している。自分さえよければ、いいえ、着飾りたいのでしょうね、埋め尽くした物が思考の停止を、隣のパートナーが悲観に走る思考を止めて…
2024/12/07 07:56
【夜想曲20話】勇気の食卓
Dream20.勇気の食卓 温かいスープが身体中にゆっくり染み渡っていった。 リュイ特製の優しくて美味しいスープ。 私とセシルドがお腹を空かせて帰って来てもいいようにと、あの後すぐにリュイとクライスで作り始めたのだそうだ。 だが……。「ク
2024/12/06 20:23
次に、演者をお披露目1-2
「素敵なお召し物ですね」 「借り物です、私の所有物ではありません」 「どうやってこちらへ抜け出してこられたのか、理由の説明を」 「種田さんと言ったかしら、あの方と話しているところをドアマンの警官に見せて、あなたに用があると言って入れてもらいました」タバコとライターを彼女は裸で持参、女性には特異の行動、いいや男性が単にポケットがついた服を着ているのであって、裸で持ち歩くことにはなんら変わりはない。彼女は火をつけて、息を吐く。拡散、広がる煙は、天井の排気口とテーブル代わりの中央の装置に吸い込まれる。 「大胆なことをしますね」熊田は、機嫌のよさそうな美弥都に事件の感想を聞いた。「どう思われますか?」…
2024/12/06 06:11
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