5-8-2 リチャード獅子心王
『中世ヨーロッパ世界の歴史5』社会思想社、1974年8くずれゆくアンジュー王国――アンジュー王家の人々Ⅱ――2リチャード獅子心王一一八九年九月三日、リチャードは、ウェストミンスター修道院で戴冠した。明るい陽光のさしこむ堂内だというのに、一羽のこうもりが、王冠のまわりをとびまわったという。およそリチャードほど、イングランド人になじみのうすかった王はいない。彼がイングランドにいたのは、戴冠と十字軍の費用調達のために滞在した一一八九年八月から十二月までの四ヵ月と、十字軍の帰途、ドイツに抑留され、釈放されたのち、身代金調達のために滞在した一一九四年三月からの三ヵ月間だけだった。十年の治世のうち、わずか半年しか、イングランドにいなかったわけである。しかも、十字軍費用の調達も、身代金の工面も、いずれもたいへんな額であ...5-8-2リチャード獅子心王
2023/05/06 23:35