神無月の巫女二次創作小説「夜の狽(おおかみ)」(二十一)
邪神ヤマタノオロチの復活が近い。八の首がすぐそばに迫っている。そんな重大な事実をさらっと、こんな甘い夜のあとで言ってしまえるなんて。そんなのずるい。私はまだまだこの余韻に浸っていたいというのに。噛みしめられた痛さもわからぬほど、千歌音の下唇はへこんでいた。「わたしと千歌音はいっしょにいなければいけないわ」知っている、そんなことは。三の首戦での鐘の中に囚われた時の心細かったこと。姫庫(ひめぐら)に閉じ込められていた時の闇よりも、何倍も何万倍もすえ恐ろしかった。孤独だからではない。姫子がたったひとりで戦ってくれていたことが、怖かったのだ。もしその鐘が開いたときに、目にしたものが愛する者の元気な姿ではないのだとしたら、光りさす世界に戻れたとしてもどんな喜びがあるというのか。もう、この世界にひとりだけ取り残される...神無月の巫女二次創作小説「夜の狽(おおかみ)」(二十一)
2023/11/11 07:11