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ふでモグラの気ままな日常 https://fudemogura.com/

読書をこよなく好む内向的な元公務員が発信するブログです。 子どもたちの育成を長年担うが早期退職し、第2の人生をスタート。 読んだすべての本の紹介を中心に、旅行やグルメ、日頃気付いたことや感じたことなどをお届けします♪♪

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2022/01/30

  • 【読書】『水を縫う』寺地はるな 著

    【あらすじ&ひとりごと】 寺地はるなさんの作品は、べったこ (id:kuroneko356)さんがたくさん読まれていて、以前から私も読みたいと思っていました。 物語は日常的なことであるけれど、澄んだ言葉が心の中にあたたかく流れていくようで、とても心に響く清々しい家族小説でした。 本作は、六章から構成され、各章の主人公が切り替わり、家族それぞれの視線で描かれています。 物語の中心は松岡清澄(高1)。一歳のときに親が離婚し、母と結婚を控えた姉、そして祖母との四人暮らし。 清澄は、手芸が好きなことで学校で浮いているが、結婚を控えた姉のためにウェディングドレスを手作りしたいと言う。華やかなものが苦手な…

  • 【お散歩】キジが鳴くのは地震の予言⁉

    とても暑くなってきましたね。私は毎朝90分ほど散歩していますが、朝とはいえ気温は上がっていてそろそろ暑さがしんどくなってきました。 いつも河川敷の土手沿いを橋から橋へ一周してくるのですが、最近よく鳴き声や姿を見かけるのがキジです。 私が住んでいるところは田舎なので、カラス(都会でもいるかな)やサギ(シロ、アオ)、カワウの群れはふつうによく見かけます。 でも、河畔林にキジも見かけて国鳥とはいえここではそれほど珍しくありません。(種類はわかりませんが) きょうは、キジを4羽見かけました。(鳴き声はそれ以上です) すべてオスで「ケーン、ケーン」というか金属を擦ったような甲高い鳴き声です。そのとき力を…

  • 【ひとりごと】『自分がどう生きるかを選ぶのは自分』(『嫌われる勇気』)

    人生とは誰かに与えられるものではなく、自ら選択するものであり、自分がどう生きるかを選ぶのは自分なのです。 『嫌われる勇気』を読みました。 今回は【読書】というよりは【ひとりごと】です。 私は自己啓発本というものをあまり読んだことがないのですが、はてなブログでも多くの方が紹介されているので、たまたま中古本が目に留まり購入しました。 哲人と青年の対話構成になっていて、議論にハラハラしますが、それが問題を掘り下げられていてとてもわかりやすかったです。 これは、ソクラテス哲学の伝統を踏まえているわけなんですね。 それはさておき、アドラーの考えにはとても共感することができました。人生の問いに対してとても…

  • 【読書】グリム童話『なぞなぞ』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その18 『なぞなぞ』〈KHM22〉 【あらすじ(要約)】 昔、ある国の王子が世界を見て回りたいと、家来を一人だけ連れ出発しました。 ある日、森へ入り日が暮れ、宿を探していると若くてきれいな娘が小さな家へ歩いていくのが見えます。 王子は「今夜、泊めてもらえるだろうか」と話しかけます。 娘は「泊まれないことはないが、お勧めしない」と言いました。 王子がたずねると、娘は「母親が悪い術を使い、客を大切にしない」と言います。 王子は、魔女の家だとわかりましたが、夜もふけ、先へ行くことができず、怖くなかったので家に入っていきました。 婆さんは、椅子に座って知らない客人…

  • 【読書】『夏物語』川上未映子 著

    文藝春秋(2019) 【あらすじ&ひとりごと】 出版されてもう4年近くたつ、川上未映子さんの『夏物語』。今頃になってしまったけど、ゆっくりとじっくり読むことができました。 人が生きていく中で、男性がいて女性がいる、そして仕事、出産、家族との生活などなど、自分らしく生きられる時代。 そんな現代において、さまざまな生き方をしていく中で考えさせられる、チクリと心に刺さる作品でした。 大阪から小説家を目指し上京した主人公・夏目夏子。相手がいないのに、自分の子どもに会いたいという密かな思いが芽生えはじめ、パートナーなしの出産を考え始める。そこに精子提供で生まれた、実の父親を探す逢沢潤と出会う。 冒頭から…

  • 【読書】『本を守ろうとする猫の話』夏川草介 著

    小学館(2017) 【あらすじ&ひとりごと】 ストーリーの進行のはやさに唐突感を抱きながら読み始めましたが、そのリズムに合わせていくと徐々に物語に吸い込まれていきました。 この序盤からおやおやという感じは何だろうと思いましたが、細かいことは気にせず、ストーリーを追っていくと、主人公のもとに猫が現れ、本が閉じ込められた迷宮へといざない本を解放するという、とても微笑ましく暖かい物語でした。 本を愛する引きこもりの主人公・夏木林太郎(高校生)は、古書店を経営する祖父を亡くし、一人ぼっちとなるが、叔母に引き取られることになり、引っ越しまでの間、人間の言葉を話す猫が現れ、不思議な世界に閉じ込められた本を…

  • 【ひとりごと】私は歩いて、ヤツは飛んでいますね🌲🌲🌲🤧

    歩くのにとてもよい季節になりましたね。 私は毎朝90分ほどウォーキングというか、散歩というほうが適当かもしれませんが、橋から土手沿いを歩き、次の橋を渡って反対側の土手沿いを進んで一周しています。 毎日歩いていると、土手沿いに咲き始めた菜の花が日に日に増えてきているのが実感できます。 そして、おもしろいのは、モグラが地中から土を押し上げたモグラ塚も増えています。 モグラ塚がたくさん まだ土に湿気の含んだモグラ塚を1~2分じっと見ていると土がモコモコするときがあります。モグラが少し顔出さないものかと見ていますが、なかなか出てきません。日中は無理ですね。また観察してみますが。 そんな楽しい散歩中に気…

  • 【読書】グリム童話『灰かぶり』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その17 『灰かぶり』〈KHM21〉 【あらすじ(要約)】 お金持ちの男の妻が病気になり、死ぬときに幼い一人娘に、「いつも神様を大事にして、気立てよくすれば神様は助けてくれて、母さんも天国から見ている」と言い亡くなりました 娘は毎日墓で泣いていましたが、神様を大事にして気立てよくしていました。 それから父親は別の妻を迎え、二人の娘の連れ子がいて、美しくて白いのは顔だけで心は汚く真っ黒でした。 その時から継娘として辛い日々が始まり、綺麗な着物は剥ぎ取られ、古い汚い服を着せられ、木の靴をあてがわれました。 それから日の出前に起き、水を運び、火を焚き、食事の準備、…

  • 【読書】『わたしをみつけて』中脇初枝 著

    ポプラ社(2013) 【あらすじ&ひとりごと】 中脇初枝さんの作品を読むのは3冊目。児童文学作家でもあり、童話や絵本も書かれています。 以前、『世界の果てのこどもたち』『きみはいい子』を読んで、子どもが生きる中で大人がどうあるべきかを描く物語がとても印象的でした。 これらの作品より以前に書かれた『わたしをみつけて』ですが、人が人を見守って・見守られる、そしてまた見守っていく、ということの大切さを感じました。 生後間もなく親に捨てられ、児童養護施設で育った主人公・山本弥生。名前は3月に生まれたから「弥生」ではなく、3月に捨てられたから。 自宅近くの病院に准看護師として勤務するが、仕事が終わると自…

  • 【読書】『十字架のカルテ』知念実希人 著

    小学館(2020) 【あらすじ&ひとりごと】 『祈りのカルテ』がドラマ化されていましたね。てっきり『十字架のカルテ』は、その後を描く「カルテ」シリーズかと思っていました。 今回は、院内のセクション、登場人物も変わり、精神鑑定医が主人公となり、犯罪者の心の闇に迫る医療ミステリーです。 最終話では、ダニエルキイスさんの作品を思い出しました。 過去に友人を殺され、自身に十字架を背負う新人医師・弓削凛は、当時の事件の全貌を知るために、日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願する。 凛は、影山とともに犯罪者の心の闇に対峙していくが、自分が追い求める過去の事件の真相に向き合うときがくる。 本作品は、五話か…

  • 【ひとりごと】おばあさんと地域に愛された食料品店(回顧)

    私が前職で福祉のセクションに配属されていたときのことです。 昔から地域の生活を支えた歴史あるスーパーが昨年閉店となったことで、当時、そのお店に通っていたおばあさんのことを思い出しました。福祉の制度を利用しているおばあさんで、私はそんな方々を120世帯ほど担当していました。 このおばあさんは一人暮らしで、身内は遠方に住む妹だけでした。 私は、三ヶ月に一度、おばあさんを訪問することになっていて、決まって留守のときは自宅から歩いて5分程度のところにあるそのスーパーに買い物に行っていました。私がスーパーに向かうと、ヨロヨロと買い物袋を提げて、帰り道を歩いているので、袋を持ってあげて自宅まで一緒に帰った…

  • 【読書】グリム童話『いさましいちびっこのしたてやさん』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その16 『いさましいちびっこのしたてやさん』〈KHM20〉 【あらすじ(要約)】 夏の朝、ちびの仕立屋さんが一生懸命縫物をしていました。 そこにお百姓さんのおかみさんがジャムを売りに来たので買いました。 仕立屋さんはパンにジャムを塗りますが、食べる前にこのジャケツを仕上げてしまうことにします。 そのうちに、ジャムの甘い匂いにハエが誘われて、パンの上に集まってきたので、仕立屋さんは布きれでハエを叩きました。布きれを見ると、7匹のハエが死んで手足を伸ばしています。自分のいさましさに我ながら感心します。 仕立屋さんは町中に知らせてやろうと、帯を一本縫い上げ、それ…

  • 【読書】『ムーンライト・イン』中島京子 著

    角川書店(2021)【あらすじ&ひとりごと】 中島京子さんの作品は初めてです。直木賞受賞作品の『小さいおうち』のイメージだけで、今まで読んだことはありませんでした。 登場する人物は、それぞれ事情を抱える訳ありですが、味があってとてもユーモア。後味のよい作品でした。 職を失った青年・栗田拓海は、自転車旅行中に雨に降られ、窓の灯りとおいしそうなスープの匂いにひかれ、古びた建物「ムーンライト・イン」を訪ねる。 そこには、かつてペンションであったが今は世代の違う3人の女性がそれぞれ事情を抱えて過ごしていた。 そして一晩限りの雨宿りのつもりが、拓海もしばらく居候することになり、奇妙な共同生活が始まる。 …

  • 【読書】『希望の糸』東野圭吾 著

    講談社(2019) 【あらすじ&ひとりごと】 読み始めて、刑事・加賀恭一郎シリーズだと気付きました。東野さんのこのシリーズは、『眠りの森』を読んだのみ。 映画では、『麒麟の翼』、『祈りの幕が下りる時』を観ましたが、原作は読んでいません。 『祈りの幕〜』では、加賀の生い立ちが明らかにされ、シリーズの完結とのことでしたが、本作は加賀の従弟・松宮刑事が主人公で描かれ、続編ということになるのでしょうか。 加賀恭一郎といえば、もう阿部寛さんのハマり役で、原作を読んでいてもあの顔と滑舌が浮かんでくるぐらい。 震災によって幼い二人の我が子を失った家族と、老舗旅館を営む女将の家族、そして喫茶店を営む女性の話。…

  • 【読書】グリム童話『漁夫とその妻の話』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その15 『漁夫とその妻の話』〈KHM19〉 【あらすじ(要約)】 昔、漁師とおかみさんが、汚い小さな家に住んでいました。 ある日、漁師が釣りに出かけると、一匹のカレイが釣れました。 漁師はそのカレイを売ろうとしますが、カレイに話しかけられ、自分は魔法をかけられた王子と言い、お礼をするから海へ戻してほしいと話します。漁師はビックリしましたが、カレイをカゴから出してやり、海へ放してやりました。 漁師は家に帰り、そのことをおかみさんに話すと、お礼をすると言っているのだから、こんな汚い家ではなく、小さくても新しい家がほしいと今すぐカレイのところに行って、願いごとを…

  • 【読書】『犬がいた季節』伊吹有喜 著

    双葉社(2020) 【あらすじ&ひとりごと】 読み心地がとてもさわやかな小説でした。 私が犬好きもあってか手にした一冊ですが、人と犬との共生を描くありがちな内容ではなく、18歳の高校生たちの決意や友情、恋愛、そして新たな出発を犬が静かに優しく見守っていくという美しい一冊でした。 高校に迷い込んだ「シロ」と呼ばれていた子犬は、生徒の努力で学校で飼うことを許され、ちょっとしたできごとから名前を「コーシロー」と名付けられる。 高校で拾われ、育てられるコーシローをめぐって、昭和から平成、令和の春から春へと季節がめぐり、コーシローが見守り続けた18歳たちの思いを描いた作品です。 本作品は連作短編で、どの…

  • 【読書】『縁(YUKARI)』小野寺史宜 著

    講談社(2019) 【あらすじ&ひとりごと】 小野寺史宜さんらしい作品でした。 やはりテーマは「人と人との繋がり」。 私が言うのも変ですが、心に深く刻まれる文章というわけではない(と感じている)のに、人と人が触れ合っていくことによって起きる、さまざまな些細な問題に傷つきながらも、またちょっとしたことで気持ちを回復していく、そんな日常的な描写をさらりと綴っていく内容に惹かれます。 この作品は、四編から連なる短編で、「霧 KIRI」「塵 CHIRI」「針 HARI」「縁 HERI」とそれぞれ主人公(視点)が変わり、つながっていきます。そして最後に「終 OWARI」で回収されます。 読みながら、普段…

  • 【ひとりごと】2023日の出

    渡良瀬川に架かる橋から見る初日の出(2023) 明けましておめでとうございます🎍 本年もよろしくお願いします。 元旦は、お昼からお酒をいただきました。とても美味しい日本酒で、 栃木の「東力士純米極雫」と北海道の「十勝晴れ」です。 【那須烏山市のやや発泡した日本酒】 【十勝の雑のない純米酒】 とても飲みやすい美味しい日本酒でついつい飲み過ぎてしまいました。 お目にされた方は、ぜひ飲んでみてください。 振り返ると、 昨年3月に公務員を早期退職し、その後自身のリハビリのような意味も含めて、5ヶ月間アルバイトをしたことで、新たな人との出会いもすることができました。 好きな読書はというと、昨年一年を振り…

  • 【読書】グリム童話『わらと炭とそらまめ』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その14 『わらと炭とそらまめ』〈KHM18〉 岩波文庫(1979) 【あらすじ(要約)】 どこかの村に貧乏なお婆さんがいました。 お婆さんはそらまめを煮るつもりで、かまどに火をおこして、わらをひとつかみ、くべました。 そらまめをお鍋にあけるとき、滑り落ちた一つが土間へ落ちると、わらの隣へ転がりました。 それから、炭が一つはねて、その隣に転がって行きました。 わらがどこから来たのかと聞くと、炭が火の中から跳ね出してきた、このままだと灰になるところだったと言います。 そらまめもぐつぐつ煮られてドロドロになる前に逃げ出してきたと言いました。 すると、わらが自分の…

  • 【読書】『自転しながら公転する』山本文緒 著

    新潮社(2020) 【あらすじ&ひとりごと】 とても読みやすい、心に残る作品でした。 以前からずっと読みたいと思いながらも数年が経ち、やっと手にした一冊。 この作品は、茨城県牛久市を舞台にアラサーの女性を主人公として、恋愛や仕事、家族との関係に悩む姿が描かれた物語です。 誰しもがそんな悩みを一つ二つ当たり前のように抱えていることなので、性別や年齢に関係なく、とても共感させられました。 主人公は、親の介護のため東京のアパレル会社を辞め実家に戻り、アウトレットモールの衣料品店で働いている。 32歳となり、友人が結婚していく中、仕事や恋愛、家族との関係など、自分の将来が不明確な状況に悩みながらも進も…

  • 【読書】『デス・ネイル』森山東 著

    角川文庫(2006) 【あらすじ&ひとりごと】 森山東さんの日本ホラー小説大賞短編賞『お見世出し』に続く2作目『デス・ネイル』を読みました。 16年前に刊行された文庫本です。表紙からすでにおぞましい雰囲気ですね。 本作品は、表題を含む四編からなる短編集です。 「デス・ネイル」 ある遺品の力によってカリスマへと上りつめたネイリストが、欲と高慢さによって転落していく。 「幸運を呼ぶ魚」 幸運を呼ぶ魚・アロワナを購入し振り回される父親の悲劇。 「月の川」 同じフロアのマンションに住む美人な人妻の得体の知れない恐怖。 「感光タクシー」 修学旅行に訪れた高校生が、班別行動のためタクシーに乗車するが、そこ…

  • 【読書】グリム童話『白へび』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その13 『白へび』〈KHM17〉 【あらすじ(要約)】 昔あるところに賢い王様が住んでいました。 王様には変わった習慣があり、毎日お昼の食後、だれもいなくなると、信頼の厚い召使いが、もう一皿持ってきます。それには蓋がされ、その召使いも何が入っているのか知りません。王様は一人にならないと食べようとはしないからです。 ある日、召使いは中身が知りたくて皿を自分の部屋に持っていき、蓋をとってみると中には一匹の白ヘビが入っていて、少し切って、口に入れました。 舌に触った途端、外からひそひそ話が聞こえ、召使いはヘビを食べたせいで、動物たちの言葉がわかるようになりました…

  • 【読書】『お探し物は図書室まで』青山美智子 著

    【あらすじ&ひとりごと】 はじめて読む青山美智子さんの作品、『お探し物は図書室まで』。 表紙の写真には本のほか、猫やカニ、飛行機などの羊毛フェルトが生きているようで、今にも動き出しそうです。 そして、帯には、「お探し物は、本ですか?人生ですか?」と書いてあります。 頁を開く前に物語に流れる温かさに引き込まれそうです。 本作品は、五章から連なる短編集です。 「二十一歳婦人服販売員」 「三十五歳家具メーカー経理部」 「四十歳元雑誌編集者」 「三十歳ニート」 「六十五歳定年退職」 それぞれの主人公が図書室を訪れ、自身の生き方に気付いていく物語です。 その人たちをさりげなく導いてくれるのが、図書館司書…

  • 【読書】『傷痕のメッセージ』知念実希人 著

    角川書店(2021) 【あらすじ&ひとりごと】 知念実希人さんの作品は、医療とミステリーの融合。 エンターテイメント性に富んだ作品は、東野圭吾さんのようで、どれもおもしろくて、リズミカルなテンポでサクサク読み進めることができます。 そして、ミステリーのなかにもハートフルな展開があり、読者を飽きさせない魅力があります。 主人公の医師・水城千早は、父・穣が「死んだらすぐに遺体を解剖して欲しい」という遺言から、病理医の友人・紫織とともに遺体を解剖することになる。 父の胃の内壁には、内視鏡によって暗号が刻まれており、紫織と協力しその暗号を読み解こうとする。 そこには、28年前、穣が追っていた連続殺人事…

  • 【読書】『連続殺人鬼カエル男』『連続殺人鬼カエル男ふたたび』中山七里 著

    宝島社(2011 2019) 【あらすじ&ひとりごと】 タイトルの「カエル男」と、その表紙の可愛らしさが目に付き、手にした中山七里さんの『連続殺人鬼カエル男』、『連続殺人鬼カエル男ふたたび』。 ところが、頁を開いて各章のタイトルを見るともう戦慄は始まっていました。 マンションの13階からぶら下げられた女性の全裸死体が発見される。 そこには、「きょう、かえるをつかまえたよ」という幼児が書いたような文字の稚拙な犯行声明文が残され、街を恐怖と混乱へと陥れる殺人鬼「カエル男」による犯行が始まる。 この作品は、残忍極まりない連続殺人事件のなかに、刑法39条の是非を問う社会派小説として整えつつ、二転三転す…

  • 【読書】グリム童話『三まいの蛇の葉』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その12 『三まいの蛇の葉』〈KHM16〉 【あらすじ(要約)】 あるところに、貧しい男がいましたが、貧乏がひどくなり、ひとり息子を養えなくなりました。息子は、これ以上父親の重荷になるのがつらくなり家を出ます。 このとき、国は戦争中で、息子は戦争で手柄をあげ、王様は宝物を授けました。 王様にはひとり娘がいて、とても美しい方でしたが、相当な変わり者でした。 自分が死んだとき一緒に、生きながら埋葬されてもいいと約束できる人でなければ、結婚しないというのです。 逆に相手が先に死んだら、自分も一緒に埋葬されると言います。 男は、お姫様の美貌にまいっていたので、王様に…

  • 【読書】『山亭ミアキス』古内一絵 著

    角川書店(2021) 【あらすじ&ひとりごと】 「日常から逃げ出したいあなたへ」 「美味しいごはんと、不思議な従業員がお待ちしております」 そんな帯に目が留まり、手にした古内一絵さんの『山亭ミアキス』。 「ミアキス」って聞いたことがある言葉だなぁとググってみると、イヌやネコ、アシカなどの祖先である太古の動物。なるほど表紙もしっかりクロネコでした。 古内さんの作品は初読みです。 ファンタジーの中に、幼児虐待やパワハラ、セクハラなどの社会問題が盛り込まれ、ダークでちょっとしたホラーファンタジーの様相でした。 心に迷いや悩みを抱える人たちが、迷い込んだ先にある「山亭」。 そこには、美形のオーナーと不…

  • 【読書】『魔力の胎動』東野圭吾 著

    角川書店(2018) 【あらすじ&ひとりごと】 定期的に東野圭吾さんのエンターテイメント性に富んだ作品を読んで楽しんでいます。 今回は『魔力の胎動』。『ラプラスの魔女』の前日譚です。 本作品は、五編からなる連作短編集で、四編までは鍼灸師・工藤ナユタの視点で描かれ、不思議な力を持つ少女・羽原円華によって、悩める人たちが救われていく物語です。 そして、最後の五編目が『ラプラスの魔女』へと繋がっていきます。 円華が自然現象を予測する能力によって人が救われて、さらにはナユタ自身も問題を抱えていることに気付きはじめ、彼をも救っていく。 社会問題も散りばめられ、東野さんらしさを感じます。 そして、この物語…

  • 【読書】グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その11 『ヘンゼルとグレーテル』〈KHM15〉 【あらすじ(要約)】 どこかの大きな森の入り口に貧しい木こりの夫婦とヘンゼルとグレーテルという名の兄妹が住んでいました。 生活は苦しく、パンすら手に入らなくなり、ある夜、ヘンゼルとグレーテルは、母親が父親に「もう食べるものがない。明日、森へ出かけて、子どもたちを置き去りにしよう」と話すのを聞きます。 泣くグレーテルにヘンゼルは何とかするからと冷静に言い、庭の白い小石をたくさん集めます。 翌日、子どもたちは森に置き去りにされますが、ヘンゼルが家から小石を落として目印をつけていたおかげで、家に戻ることができました…

  • 【読書】『ライフ』小野寺史宜 著

    ポプラ社(2019) 【あらすじ&ひとりごと】 小野寺史宜さんの作品は、『ひと』を読んでとてもよかったので、今回は『ライフ』を読んでみました。 タイトルから想像できるように、主人公のゆったりと流れていく日々の生活が描かれた物語で、とても現実的な空気感を楽しんで読むことができました。 主人公・井川幹太27歳。大手製パン会社を辞め、今はアルバイトを掛け持ちしながらの気楽なアパートひとり暮らし。 物語は、結婚披露宴の代理出席のアルバイト中、そこに出席する高校時代の同級生と再会するところから始まる。 そして、気楽なアパート暮らしのはずが、2階へ越してきた「戸田さん」との出会いと望まない付き合いが始まる…

  • 【読書】『山女日記』湊かなえ 著

    幻冬舎(2014) 【あらすじ&ひとりごと】 湊かなえさんの『山女日記』を読みました。 ドラマにもなっていて、私は観ていないのですが人気だったようです。そして、原作本の続編も昨年出ています。 湊さんといえば「イヤミス」を楽しむ。楽しむといったら少し嫌らしいですが、人の心の奥底にある気持ちが露骨に出され、何となくモヤモヤするこの後味の悪さが癖になって、ときどきは読みたくなります。 でも本作品は、主人公のそんな心の見え隠れはあるけれど、いつもとは違い、心の清涼剤となった物語でした。 本作は七編からなる連作短編です。 タイトルが『山女日記』、各編のタイトルも山の名前になっていて、悩みを抱えるそれぞれ…

  • 【読書】グリム童話『糸くり三人おんな』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その10 『糸くり三人おんな』〈KHM14〉 【あらすじ&ひとりごと】 昔、怠け者の女の子がいて、糸を紡ぐことを嫌がりました。 母親は、女の子が言うことを聞かないので、腹が立って、つい殴りつけました。 すると、娘が泣いているところに王様のお妃が通りかかり、なぜ泣いているのか尋ねます。 母親は、怠け者の娘を恥ずかしく思い、娘が糸くりをいつまでもしていたいと言うが、うちは貧乏で麻がないとお妃に話します。 するとお妃は、娘を今すぐ御殿へ来させ、嫌と言うほど糸くりをさせてあげようと話します。 御殿に着くと、見事な麻がぎっしりつまった部屋へ連れていき、この麻を残らず紡…

  • 【読書】『六月の雪』乃南アサ 著

    文藝春秋(2018) 【あらすじ&ひとりごと】 ずいぶんと長い間、私の部屋の本棚に置かれていた『六月の雪』。 購入はしたものの、500頁を超える長編に手が伸びず後回しになっていましたが、ようやく読み終わりました。 読み始めると、とてもシンプルなストーリーで舞台となっている台湾、そしてそこに生きる台湾人の温かさに触れ、訪れたくなりました。 一方で日本と台湾との関係や、その歴史を理解することができて、戦後の台湾の悲劇には胸が詰まる思いでした。 声優への夢が破れ、祖母とふたりで暮らす主人公・杉山未来は、入院した祖母を元気づけるために、祖母が生まれたという台湾・台南を訪れる。 戦時中の祖母の人生をたど…

  • 【食】数年ぶりに築地を訪れました

    先週の金曜日に築地に行きました。 市場が豊洲に移転して、まもなく4年が経つので、かれこれ6〜7年は行ってなかったでしょうか。 平日とはいえ、相変わらず賑わっていました。 きれいなマグロの刺身が安くて(スーパーよりもずっと高いのに安いと感じてしまう)、つい買いたくなってしまいます。 以前は、家族が近くの病院に入院していたこともあり、ときどき昼食を取りに市場の場外へ行ったものでした。 今回も当時から行っていた寿司清(本館)さんを数年ぶりに訪れ、ランチをいただきました。 寿司屋さんがたくさんある中でも、どうしても寿司清さんのカウンター席が落ち着きます。 数年ぶりに懐かしかったです。 板前さんと話をし…

  • 【読書】『ギリシャ神話』石井桃子 編・訳 富岡妙子 画

    のら書店(2000) 『クマのプーさん』の翻訳などでも知られる児童文学作家・翻訳家として活躍された石井桃子さんが、小学生や中学生を対象にまとめたギリシャ文学本です。 子どもの頃、アキレウスやヘラクレス、パンドラなどの物語を読んだ記憶があり、もう一度「ギリシャ神話」を読んでみたいと思っていました。 神話って、小説とはまた違って、泥臭いというか、とても興味を惹かれます。 日本の神話でも竹田恒泰さんの『現代語古事記』を読みましたが、相通じるものがありますよね。 神話とはいえ、神様も嫉妬したり恨んだりと、人間臭さがあって、その神が人類を創造したのであれば、今も昔も生きている人間が災いを起こすのは、何ら…

  • 【旅】県民割を利用して箱根湯本温泉へ

    今回は「読書」ではなく、脱線して「旅」のブログです。 最近バタバタしていて、一冊の本すら読み終わらないのに、県民割キャンペーン(地域観光事業支援)の延長に魅せられて、箱根湯本温泉に行ってきました。 この県民割キャンペーン、ご案内のとおり1人1泊あたりの宿泊料金が最大5,000円が割引され、さらに2,000円の地域限定クーポン券が付き、とてもお得でした。 箱根はずいぶん前に何度か訪れたことがあり、宿泊するのは今回が二度目です。 宿へ入る前にまずは1か所目の観光。 箱根関所へ行きました。江戸時代の関所が復元され、旅はここから始まるのだなあと感じました。当時の全国にある関所の数にびっくり。 箱根の旅…

  • 【読書】グリム童話『森のなかの三人一寸ぼうし』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その9 『森のなかの三人一寸ぼうし』〈KHM13〉 【あらすじ&ひとりごと】 昔、妻を亡くした男と、夫を亡くした女がいました。 男には一人の娘、女にも一人の娘がいます。 娘たちは知り合いになり、女のところへ行きます。そのとき、女は男の娘に「私がお父さんと結婚したがっていると言ってほしい。そうしたら、あなたを毎朝ミルクで体を洗わせ、ワインを飲ませてあげる。でも、うちの娘には水で体を洗わせ、水を飲ませる。」と言いました。 その娘は家へ帰り、父親に話します。男は、決めることができず、長靴を脱ぎ、「この長靴には底に穴があいているが、それを屋根裏の大きな釘につるし、そ…

  • 【読書】『僕の神さま』芦沢 央 著

    角川書店(2020) 【あらすじ&ひとりごと】 本作品の帯にある『あなたは後悔するかもしれない。第一話で読むのをやめればよかった、と』という一文。 芦沢央さんの作品『火のないところに煙は』を思い出し、またどんなホラーなのかと、躊躇わずに手に取りました。 小学生の主人公・佐土原くんの視点から物語がすすむ4遍からなる連作集です。 小学生の優しさから起きる日常生活での些細なことから、残酷でとても切ない出来事まで、主人公の友人・水谷くんが小学生らしからぬ洞察力、推理力で解決へと導くストーリーです。 読み進める中でなんともモヤっとする複雑な感覚と不穏な気配に、主人公たちが小学生だということを忘れそうにな…

  • 【読書】『夜行』森見登美彦 著

    小学館(2016) 【あらすじ&ひとりごと】 森見登美彦さんの『夜行』を読みました。 森見さんの作品は『聖なる怠け者の冒険』を読んで以来の二冊目です。 きっとまたあの独特の森見節なる言い回しで、読者の口元を綻ばせるような作品なのだろうと思っていましたが、今作品はがらりと変わり、恒川光太郎さんのホラー系ファンタジーを思い出しました。 京都で学生時代を過ごした仲間が再会し、「鞍馬の火祭」を見物に出掛けることになる。 それは、10年前にも訪れた際、仲間の一人が突然姿を消したことで、もう一度会えるかもしれないという思いを皆抱き、10年ぶりに鞍馬に集まることになった。 夜が更けるなか、それぞれが旅先で出…

  • 【読書】グリム童話『野ぢしゃ(ラプンツェル)』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その8 『野ぢしゃ(ラプンツェル)』〈KHM12〉 【あらすじ&ひとりごと】 昔、あるところに夫婦がいました。 二人は長い間子供を欲しがっていましたが、やっと望みが叶いました。 夫婦の家の裏側には、美しい花や野菜がなる立派な畑がありましたが、そこは魔法使いの女のもので、近づくものはいません。 ある日、妻は畑の野ぢしゃ(ラプンツェル)を見て、どうしても食べたくなります。その気持ちが大きくなり、妻はすっかりやせてしまったので、亭主は妻のために野ぢしゃを取ってきてやろうと考えます。 亭主は魔法使いの畑から野ぢしゃを取って来て、妻に食べさせました。妻はおいしくて次の…

  • 【読書】『戦場のコックたち』深緑野分 著

    創元推理文庫(2019) 【あらすじ&ひとりごと】 深緑野分さんの作品を読むのは、『この本を盗む者は』に続いて二冊目です。 以前、『ベルリンは晴れているか』が気になっていたのですが、大戦終結後の戦争小説ということもあり、手にはしませんでした。 でも、そこにこの『戦場のコックたち』。 戦争小説とはいっても、コック兵としての視点から描かれるものと期待して読みました。 でも当然ながら、戦争の残酷さは描かれ、胸が苦しくなって序盤はなかなか読み進められませんでしたが、戦線の中に次々と起こるミステリ、青年兵たちの友情と葛藤が描かれ、とても読み応えのある作品でした。 舞台は第二次世界大戦ヨーロッパ戦線。 1…

  • 【読書】『さようなら、オレンジ』岩城けい 著

    筑摩書房(2013) 【あらすじ&ひとりごと】 岩城けいさんの作品は初読みです。 大学卒業後、単身渡豪された作家さんです。 本書は少し前に書かれたものですが、太宰治文学賞などを受賞され、芥川賞候補にもなったとのこと。 在豪中のご自身のご経験から書かれた作品ではないかと思われます。 アフリカ難民の女性が異国の地で夫に逃げられ、精肉作業場で働きながら2人の子を育て、異郷で強く逞しく新しい生活を切り拓いていく物語です。 オーストラリアに移民し生活する主人公・サリマの生活が描かれ、また「S」という女性が綴る手紙でのふたつの視点から物語は進みます。 サリマは、母語の読み書きすらままならず、職業訓練学校で…

  • 【読書】グリム童話集『ならずもの』『兄と妹』

    岩波文庫(1979) 『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その7 『ならずもの』〈KHM10〉 【あらすじ&ひとりごと】 雄鶏と雌鶏のつがいは、山へ出かけ、クルミをたらふく食べた後、歩いて帰るのが嫌になったため、クルミの殻で小さな引き車を作りました。しかし、どちらが車を引いていくかで口喧嘩になります。 しばらくすると、遠くから一羽のカモがやってきて、鶏が自分の山のクルミを無断で食べてしまったことに怒り、襲いかかりましたが、負けてしまい罰として車を引かされます。 走っていくと途中で留め針と縫い針に出くわし、車に乗せて欲しいと頼まれ、乗せます。 夜になり、宿屋にたどり着きますが、宿の主人は、うさん…

  • 【読書】『さよならの向う側』清水晴木 著

    マイクロマガジン社(2021) 【あらすじ&ひとりごと】 書店で本書を見かけたとき、昔、山口百恵さんの歌にこんなタイトルがあったなぁと思いながら手にしました。 きっと恋愛小説なのだろうと思い読み始めると、そうではありませんでした。 人が亡くなったとき、最後に一日だけ現世に戻ってくることができ、会いたい人に会う時間が与えられる。 辻村深月さんの『ツナグ』のようですが、本書では「会える人」の条件が違います。 自分の死をすでに知っている人には会えないという。 さよならの向う側と呼ばれる場所にいる案内人が、さまざまな人をエスコートし最後の再会を果たす物語です。 5篇(5人が織りなす再会)からなる連作短…

  • 【読書】『きみはいい子』中脇初枝 著

    ポプラ社(2012) 【あらすじ&ひとりごと】 中脇初枝さんの作品は以前、戦時中の満州で出会った3人の少女の人生を描いた『世界の果てのこどもたち』を読んで、とても感動したことを覚えています。 それよりも前に書かれた『きみはいい子』。 本書は虐待がテーマになっていて、虐待を受ける子どもや高齢者とその家族が描かれ、その家庭に関わる教師や大人たちが悩みながらも思いやりの手を差し伸べ、一筋の光を与えてくれる短編集。 一話一話のストーリーは独立したものですが、ひとつのまちが舞台となっていて、人と人が繋がっていきます。 どの短編も心が苦しくなるけど、最後は希望へと変わっていくことに救われ、目頭が熱くなる作…

  • 【読書】グリム童話集『奇妙な楽人』『十二人兄弟』

    岩波文庫(1979) 『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その6 『奇妙な楽人』〈KHM8〉 【あらすじ&ひとりごと】 昔あるところに奇妙な音楽家がいました。 一人で森の中を通り抜けながら考え事をしていましたが、考える種もなくなりバイオリンを弾き始めると、狼がやってきます。 狼は「バイオリンを習いたい」と言い、音楽家は「わたしの言いつけは何でもやりなさい」と言う。 狼は音楽家についていきますが、しばらく歩くと、柏の老木があり、その空洞の裂け目に両前足を突っ込むよう音楽家は命じます。 そのとおりにした狼の足を音楽家は石で押さえつけてしまい、帰ってくるまで待っているよう言い残し行ってしまいます。 …

  • 【読書】『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦 著

    朝日文庫(2016) 【あらすじ&ひとりごと】 森見登美彦さんの作品は初読みです。 ファンタジー作家さんであることだけは知っていました。読後に本書について調べてみたら、各作品に繋がりあって、本作品を読む前に『有頂天家族』『夜は短し歩けよ乙女』を読んでいたほうがさらに楽しめたようです。 でも、とても独特なワールドでした。なかなか馴染むのに時間がかかりましたが、少しずつ免疫がつき始めると楽しくなってきました。 主人公・社会人2年目の小和田君は、仕事が終われば独身寮での夜更かしを楽しみ、休日は「グウタラ」に過ごす怠け者。 ある日、狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」との出会いから、京都祇園祭の宵山を舞…

  • 【読書】『ピエタ』大島真寿美 著

    ポプラ社(2011) 【あらすじ&ひとりごと】 大島真寿美さんの『ピエタ』。 18世紀絢爛の水の都ヴェネツィアを舞台にした、とても美しい作品でした。 『ピエタ』というタイトルからは、ミケランジェロの彫刻像を私は最初に思い出す。 イタリア語で「哀れみ、慈悲」。 ページを開くと、それが孤児を養育する「ピエタ慈善院」であることに気付きます。 物語は、ピエタ慈善院で育ったエミーリアという女性の視点で描かれる。 ピエタで音楽の才能に秀でた女性だけで構成する「合奏・合唱の娘たち」を指導していた『四季』の作曲家であるヴィヴァルディの訃報がエミーリアに届くところから始まっていく。 そして、教え子であるエミーリ…

  • 【読書】グリム童話『夜うぐいすとめくらとかげの話』『うまい商売』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その5 『夜うぐいすとめくらとかげの話』〈KHM6〉 【あらすじ&ひとりごと】 昔、目玉を一つずつしか持たない「夜うぐいす」と「めくらとかげ」が仲良く暮らしていました。 ある時、うぐいすは婚礼に呼ばれますが、自分の目が一つしかないことが気になり、とかげに明日返すから一日だけ目を貸してほしいと頼みます。 とかげは承諾し、自分の目をうぐいすに貸しますが、うぐいすは両側を一度に見られることがうれしくなり、翌日になってもとかげに目を返しません。 そのため、2匹は仲違いし、とかげはうぐいすに、子どもたち、そしてその子どもたち、そのまた子どもたちに仕返しをするから覚えて…

  • 【読書】『ひと』小野寺史宜 著

    【あらすじ&ひとりごと】 小野寺史宜さんの本を初めて読みましたが、とても素敵な作品でした。 先行き不安で悲しい現実を突きつけられているのに、なぜかニンマリと微笑ましくストーリーが進んでいく。 鳥取から上京し私大に進学した主人公・柏木聖輔20歳。 しかし、両親を亡くし一人となった聖輔は大学を中退する。 仕事を探そうと思いつつも動き出せない日々が続くが、ある日、空腹から揚げ物の匂いに吸い寄せられ、砂町銀座商店街へと歩くと「おかずの田野倉」にたどり着く。 最後に残った50円のコロッケを買おうとするが、見知らぬお婆さんに譲る。 そこから新たな出会いと自身の未来への再生が始まる。 聖輔の誠実さと優しさが…

  • 【読書】『火のないところに煙は』 芦沢央 著

    【あらすじ&ひとりごと】 芦沢央さんの本は初めてです。作風も知らず、予備知識もなく手にした本、『火のないところに煙は』。 本書はホラー作品なのか、怪談の実話なのか。 ストーリーは、小説新潮から作家(私)に「神楽坂を舞台にした怪談」の執筆依頼がくることから始まる。 「私」は迷いつつも過去の悲劇について執筆を始める。 6話の短編を語るように綴られていて、ホラーとかミステリ小説というよりか、体験談を淡々と話しているような、なんかドキュメンタリーっぽさを感じる。 そんな疑問を持ちながら、読み進めました。 これは芦沢さんが体験(聴いた)したことなのか、あとがきも何もない。 すべて文章が「私」となっている…

  • 【読書】グリム童話『狼と七匹の子やぎ』『忠臣ヨハネス』

    『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その4 『狼と七ひきの子やぎ』<KHM5> 【あらすじ&ひとりごと】 お母さんやぎと7ひきの子やぎがいました。 ある日、お母さんやぎが森へ食べ物をとりにいくため、7ひきの子やぎを呼び寄せ言い聞かせました。 「お母さんは森へ行くから狼に気を付けるんだよ。うちに入ってきたらみんな食べられてしまう。狼は形を変えてくるけど、声はしゃがれ、足は真っ黒。すぐに見分けがつきますよ」と。 子やぎたちも「気を付けるから心配しないで」というので、お母さんやぎは安心して出かけました。 するといくらもたたないうちに、戸を叩くものが来て、「母さんですよ。お土産をもってきたよ、開けてお…

  • 【読書】『晴天の迷いクジラ』 窪美澄 著

    【あらすじ&ひとりごと】 窪美澄さんの10年程前の作品です。 先日、ある中古本の書店からの送信メールを見ていたら、書店ランキングされた過去の作品の記事があって、気になった作品10冊を購入しました。 そのうちの1冊がこの『晴天の迷いクジラ』。 窪さんと言えば『ふがいない僕は空を見た』という程度のことしか私は知らなくて、今回初めて読みました。 この作品は、心に深い傷を持ち、生きる希望を失った主人公3人が、ある出会いによって生きることへの希望に気づき、歩み始める物語です。 由人はデザイン会社に勤務するが失恋と激務で鬱になる。 そしてその社長・野乃花は過去を捨て、がむしゃらに働いてきたが倒産する会社と…

  • 【読書】『素敵な日本人』 東野圭吾 著

    光文社(2017) 【あらすじ&ひとりごと】 東野圭吾さんの九編からなる短編集です。一編がどれも30頁程度で、隙間の時間を利用して気軽に読むことができました。 東野さんのミステリーは、読み落としがないよう心して読まねばという意識を強く持ちます。 でも、一編目「正月の決意」からゆっくりと読み進めると、ミステリー仕立てでミステリーではない、思わずニヤリとしてしまうほのぼのとした作品から始まっていて、少しいつもの東野さんではないような不思議な感覚がありました。 一編一編の順番もリラックスして読めるようになっていて、キリリとしたミステリー、またほのぼのとしたストーリーと、肩の力を抜いてくれる順序もうれ…

  • 【読書】グリム童話『こわがることをおぼえるために旅にでかけた男の話』<KHM4>

    『完訳グリム童話集(一) 金田鬼一 訳』その3 『こわがることをおぼえるために旅にでかけた男の話』<KHM4> 【あらすじ&ひとりごと】 父親と息子二人の家族がいました。兄は賢くて気が利き何でもできましたが、弟は何もできません。 人々は弟を見ると、父親の厄介者だと言いました。何かすることがあればいつも兄がやることになります。 父親が夜更けになって上の息子にお使いを頼むと、行く道に墓地があり気味が悪くてぞっとするからごめんだと言います。 それを聞いた下の息子は何のことなのかわからないため、ぞっとすることはどういうことかを覚えたいと言い出しました。 下の息子は、お寺で幽霊のふりをしたお坊さんにもぞ…

  • 【読書】『魔女たちは眠りを守る』 村山早紀 著

    KADOKAWA(2020) 【あらすじ&ひとりごと】 村山早紀さんらしい優しいタッチで、絵本のようで童話のようで、子どもの頃に読み聞かせをしてもらったことがあるような、温かい気分にさせてくれる作品でした。 本作品は、人の地にひっそりと暮らす魔女が、人々にそっと寄り添い見守り、傷ついた人に優しくおまじないをかけ、一つの望みを叶えてくれる物語です。 この作品に登場する魔女は、もちろん鷲鼻で黒いローブを着る老婆ではなく、見た目は高校生くらいの可愛らしい赤毛の少女と、銀髪が素敵な美しい高齢の女性。 それぞれが過去から現在まで出会った人たちの心に灯りをともしていく連作短編集です。 どの話も悲しみがあっ…

  • 【読書】グリム童話『猫とねずみとお友だち』<KHM2> 『マリアの子ども』<KHM3>

    『完訳グリム童話集(一) 金田鬼一 訳』その2 完訳グリム童話集 金田鬼一訳 『猫とねずみとお友だち』<KHM2> 【あらすじ&ひとりごと】 猫がハツカネズミと知り合いになって一緒に暮らすことになります。 猫とネズミは冬に備え、小さい壺に入ったフェット(牛脂)を買い、教会に隠すが必要なときまでは手をつけずにすることにします。 ところが、猫は我慢ができなくなり、「叔母からいとこの名付け親になってほしいと頼まれた」と嘘の理由で外出し、ネズミに内緒でフェットを舐めに教会へ行くようになります。 ネズミは、油の多い上皮の部分を舐めてケロリと帰ってきた猫に、いとこの名はどんな名前を付けたのか聞くと、「カワ…

  • 【読書】『くじら島のナミ』 浜口倫太郎 著

    【あらすじ&ひとりごと】 子どもの頃にあまり読書をしなかったせいか、私は児童書を読むことが好きです。書店では必ず児童書コーナーに行きます。 優しい世界観が心の清涼剤になるのかもしれません。 浜口倫太郎さんの『くじら島のナミ』は、文字や頁の体裁がまるで教科書を手にとっているようでした。 その中には夢があり希望があり、生きる力があふれていて、現実的にはあり得ないけど、今の子どもたちに必要なことがたくさん詰まっていました。 物語は、嵐によって客船が沈没するシーンから始まる。 救命ボートに主人公ナミ(赤ちゃん)と両親が乗り込むが、荒波と冷たい海水で両親は助からないことを悟り、自身の命を諦め、ナミだけは…

  • 【読書】グリム童話『蛙の王様 鉄のハインリヒ』<KHM1>

    『完訳 グリム童話集1 金田鬼一 訳』その1 以前から『グリム童話』をもう一度読み直してみたいと思っていました。 子どもの頃、代表的な物語は読んだことがありますが、いったいどのくらいの物語があるのか。 実際、岩波書店さんの『完訳グリム童話集』を購入してみると全5冊、初版本から省かれた物語や遺稿、断編を合わせると計248編もの作品があり、その中で私が知っていたのはごく一部でした。 『グリム童話』は、皆さんご存知のとおり、グリム兄弟がつむぐドイツの古いお伽噺(メルヒェン)。 正式名称は、『子供と家庭の童話集』(ドイツ語でKinder-und Husmarchen)というそうで、一話一話のタイトルに…

  • 【読書】『食堂かたつむり』 小川糸 著

    【あらすじ&ひとりごと】 小川糸さんの作品は『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ライオンのおやつ』を読みましたが、『食堂かたつむり』はそれ以前(2008年)に刊行されたもので、イタリアの文学賞バンカレッラ賞料理部門賞を受賞した作品です。 今回も温かい人間愛が描かれています。 本作品は、映画化されています。 同棲する恋人に家財道具一式を持ち逃げされたショックから失語症となった主人公・倫子は、嫌いな母親のいる田舎に帰り、「食堂かたつむり」を開く。 客は一日一組。ここでの料理を食べた客には奇跡が起き、願いが叶う食堂と噂が広がる。 かたつむりの殻の中で自分の世界と料理の世界に引きこもるが、ある日、倫子…

  • 【読書】『真夜中のたずねびと』 恒川光太郎 著

    【あらすじ&ひとりごと】 恒川光太郎さんの『真夜中のたずねびと』を読みました。 本作品は、「ずっと昔、あなたと二人で」「母の肖像」「やがて夕暮れが夜に」「さまよえる絵描きが、森へ」「真夜中の秘密」の5篇からなる短編ホラーです。 本の帯には「忍び寄る足音に、背筋が寒くなる連作集」とありますが、登場人物がリンクする部分や、恒川さん作品によくある同じ時間軸の上で各編が展開されているだけで、それぞれのストーリーは独立しています。 各編に共通していることは、主人公を理不尽な不幸が襲うが、結末は闇へと消えていく曖昧な世界。 人が生きているから話しているのか、死んでいるのに話しているのか、そして本当にあった…

  • 【読書】『少年と犬』 馳星周 著

    【あらすじ&ひとりごと】 馳星周さんの作品『少年と犬』を読みました。直木賞受賞作です。 馳さんの作品を読むのは久しぶりで、かれこれ20数年ぶりになるかと思います。 馳さんの作品といえば、いくつか読んだ中でもやはり「不夜城」 新宿歌舞伎町を根城とした中国人たちの勢力争いを描くストーリーが未だに強く残っていてダークな印象が強い。 そんな馳さんの印象からイメージがわかず、本作品に手を伸ばせずにいたのですが、遅くなりながらも読んでよかったです。 人間と犬との共生がこんなにも優しく切なく描かれ、感動しました。 本作品は、一匹の犬(名は多聞)が生きることに傷つき悩み苦しむ人間に温もりを与え、生きることへの…

  • 【日帰り旅】五千頭の龍が昇る聖天宮

    このゴールデンウィークに埼玉県坂戸市にある台湾の神社「五千頭の龍が昇る聖天宮」に行ってきました。 その名のとおり龍が建物や壁、絨毯などに描かれ、その数は五千頭。 この坂戸市にある台湾の神社のほかに、横浜などにもあるそうですが、ここが一番古いそうです。 この聖天宮は、中国台湾三大宗教(道教、儒教、仏教)のひとつ「道教」のお宮です。 開祖は台湾出身の康國典大法師で、お告げによって生国の台湾ではなく、日本国の何もないこの雑木林の地に台湾の一流宮大工を呼び寄せ、15年掛けて建てられました。 入口から見る天門 この天門の左右に一対の獅子がいます。右が雄、左が雌。 一石から彫られた獅子一対で、雄は「陽」、…

  • 【読書】『罪人の選択』 貴志祐介 著

    【あらすじ&ひとりごと】 貴志祐介さんの『罪人の選択』を読みました。 本作品は短編集です。 「夜の記憶」「呪文」「罪人の選択」「赤い雨」の4編が収録され、連作ではありません。 表題作である「罪人の選択」以外の3編は、遠い未来で異星人に侵略された地球人が、肉体は滅びながらも過去の記憶をチップに埋め込まれ、地球での過去を思い出すストリー(夜の記憶)や、神を呪うことで災厄を回避しようとする不思議な惑星の調査をするが、神による落雷でその惑星の民が亡くなるストーリー(呪文)など、近未来を描いているというより、SFの作品でとても難解でした。 表題作の「罪人の選択」は、自分の選択によって「生」か「死」に直面…

  • 【読書】『マーダーハウス』 五十嵐貴久 著

    【あらすじ&ひとりごと】 コロナワクチン副反応の呪縛からやっと解放されました。 その間、休み休み、五十嵐貴久さんのサイコミステリー『マーダーハウス』を読みました。『リカ』シリーズ以来です。 そのタイトルのとおり、「殺人の家」 発熱で発汗と朦朧とする中、震撼のサイコミステリーは逆によかったのかもしれません。 藤崎理佐は、鎌倉にある希望の大学に合格し、引っ越し先を探していた。偶然にもネットで「サニーハウス鎌倉」というシェアハウスを見つける。 そこは、街なかから外れた別荘のような豪邸で、設備も充実しているのに家賃は45,000円という破格の金額で好条件ばかり。しかもシェアする人たちは、20~30代の…

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