静謐なダークホース 3-6
「だったら、なおさら引渡しは拒否します」 「……店長、私限界です」小川が沈むようにうずくまった。 「国見さん、音を下げて!」手招きする仕草、店主はレジの国見に伝えた。圧迫感が取り払われ、体の身軽さを体感する。「小川さん、大丈夫?」 「三半規管が弱くて、大きすぎる音を聞くと、車酔いみたいになって。はあ、でも、もう平気です、心配に及びません」 「こちらの提案は受け入れられないか、これは今後、意見の変更を望めますか?」比済の声は大きくも小さくもない通常の音量である。危険や脅威が大音量で取り払われた、と判断しているのだろうか。店主はわかりかねる。 「意見とは常に一定ではない、と私は思います。必ずという…
2023/04/18 03:43