今回は、戦後に着物の色柄が洋服ファッションの流行に合わせて一気に地味になったことと、洋服でモノトーンと黒の洗礼を受けた世代を中心に、呉服の世界で「地味なもの=上品」「シックなものこそ正統派の高級呉服らしい色柄だ」という思想を流布している可能性があるというお話です。 戦後生まれの呉服関係者さんを見ていると、「洋服感覚の着物を~」「洋服の中で浮かない色柄を~」「都会のコンクリートジャングルになじむシ...
当ブログは、近年着物に興味を持つようになった着物初心者さんや若い世代向けに書いているブログです。 着物の知識・情報のメモ&お買い物&着物ファッションをアルバム風にまとめてみました。
92歳のお婆さんの話 庶民は戦前の高級呉服の色柄は知らない、戦時中の苦労話
今回は、92歳のご近所のお婆さんのお話です。 色々調べる中で、戦後生まれの呉服関係者さんの中には、戦前の着物の色柄をよく知らずに、戦後の着物の色柄だけが正当派の高級呉服の色柄だと思い込んでいる人が多いようだということがわかってきました。 また、戦前生まれであっても、今の80代~90代前半の世代は、戦争の贅沢禁止令と混乱の中で地味な色彩の中で育ったため、戦前の着物が最も華やかだった時代の色柄を知らない人...
前回に続き、今回は、長襦袢を濃い色に染めて、夏着物の透け感を減らし、単衣の時期にも薄物を着るという話です。 このアイデアは有名着物ブロガーさんの記事で知り、私も試してみました。↑自分でグレーに染めた、麻の長襦袢。 夏物の長襦袢を濃い色にすると、薄物を着ても透け感が抑えられるので、薄物を単衣の時期に着ていても違和感がないというのが魅力のようです。(※薄物=絽・紗・上布・夏紬など、7月・8月に着る盛夏...
【男子禁制】夏着物の暑さ対策と汗対策の話 肌襦袢に汗取り&補正&透け対策の布を縫い付けて、オールインワンで済ます
前回に続いて、今回は、夏着物の汗対策と補正のお話です。 着物の汚れでよくテーマになるのが、帯部分や脇や袖口に付く汗ジミで、悉皆屋さんのブログでは、「その年は大丈夫そうに見えても、お手入れをきちんとしないと、数年後にシミが浮いてきてしまう」という意見が多いです。 夏着物を大事に着るなら、その日のうちに汗抜きをしたり、その年のうちにお手入れに出すほうが良いようですね。<参考記事>汗をかかれたらまずは...
【男子禁制】夏着物の透け対策と肌着の話 肌襦袢のお尻部分を二枚重ねにする方法
今回は、肌襦袢のお尻部分を二枚重ねにすることによって夏着物の透け対策をするというお話です。 夏着物は絽や紗や夏紬や麻など色々な素材がありますが、中でも紗の着物は透け感が強く、お尻部分が透けやすいので注意が必要です。 着物は前身頃は二枚重なるので透けないのですが、お尻部分はモロに透けやすく、長襦袢や下着までしっかり見えてしまいます😱(でも、夏着物は、その透け感やモワレが涼しげに見えるのが魅力なので...
田舎好みと20に80着物 田舎の呉服屋の嫁入り支度の話、地方では貸衣装屋も時代感覚が遅れがち? …etc.
今回は、20に80着物の嫁入り道具の話と、田舎では今でも昭和後期の色と年齢の基準をうるさく言っているようだというお話です。 母が通っている趣味の洋裁教室の先生に協力していただいて、20に80着物と思われる嫁入り道具をお持ちの方や、貸衣装屋で色と年齢をうるさく言われたという方を探してみました。 まず、愛知の山間部ご出身の方のお話です。 Aさん:「私は今60代前半(2018年現在)なんだけど、80代後半の母は愛...
田舎好みと20に80着物/ Mさんのお母様のエピソードと田舎好みについての意見
前回からの続きで、今回はMさんのお母様のエピソードと、Mさんが考える田舎好みについてです。私:「私は、地域によって色と年齢の基準を勝手に変えたり、独自の基準を作っているというのに驚きました。 店の勝手な基準を着物の決まりごとだと言って消費者に販売しているとしたら、ちょっと問題があると思うのですが…。」Mさん:「私は、呉服屋ならそれくらい平気でやるだろうと思うよ。 当時も呉服屋ってちょっと悪徳商法のイ...
前回の続きで田舎好みと20に80着物の話を書きたいところですが、先に京好みのMさんの嫁入り道具をご紹介したいと思います。 染物屋を経営していたMさんの叔母様の見立てた嫁入り道具は、京好みでとても華やかなものでした😍。 Мさん:「私の嫁入り道具は、私が大学に通っている頃から、母と叔母が二人であーだこーだ相談しながら少しずつ誂えていて、結婚する数年以上前から毎年1、2枚ずつ作ってくれてたみたい。 叔母の店は...
今回は、久しぶりに「田舎好みと20に80着物」シリーズです。 当ブログに登場してくださるMさん(60代、2018年現在)は、愛知生まれの愛知育ちで、叔母様が染物屋を経営していたという方で、昭和後期の着物の様子について有益な情報をくださるお一人です。 過去記事では、田舎の色彩感覚は都会と比べてかなり地味で、農村・漁村文化が色濃く残る地域では『田舎好み』という趣味があり、多くの呉服屋さんが「20に80着物」の色と...
トラベルグッズの話③ 紙せっけん、水に流せるティッシュ、アイマスク、爪切り・耳かき4点セット、シリコンコップ、携帯用レインポンチョ
前回に続き、今回は、衛生用品や身の回り品のトラベルグッズのお話です。 まず、紙せっけんです。 ↑紙せっけん、容器付き、20枚入り、4つの香りで展開、100均。 前々記事で元CAさんが無印良品のトラベルグッズで紹介していた紙せっけんですが、コロナ以降はダイソーでも売られるようになってビックリ😲 海外旅行では、トイレに手洗い洗剤がないことが多いので助かります。 さらに、最近はかさばらないチャック袋入りのも...
トラベルグッズの話② ラゲッジスケール、キャリーオンバッグ、シークレットポーチ、圧縮バッグ、S字フック…etc. 100均&雑誌付録で買えるもの
今回もトラベルグッズのお話です。 まず、ラゲッジスケール(荷物計量計)。 今や100均で(200円で)買える時代になったんですね~。 デジタルのラゲッジスケールはたいてい2000円前後はしますから、ダイソーで見かけてびっくり!😲↑32㎏まで測れて、金属タイプのメジャーが付いています。 メジャーは、荷物を送る時やスーツケースの総寸法を測るのに使えます。 近年は航空会社の預け入れ荷物の重量・サイズ制限が厳しいので...
トラベルグッズの話① 吊るせるポーチ、パスポートケース、100均&雑誌付録
最近は全国的に旅行ムードが高まっているので、今回は、旅行好きの私オススメのトラベルグッズの話を書きたいと思います🚅👜(着物とは直接関係ないですが、着物で旅行する時にも使えるアイテムです。その他、着物で旅行する時の便利アイテムは過去記事に書きました→着物で旅行する時のパッキング、コーディネート、トラベルグッズの話① ~100均のトラベルグッズ~) まず、吊るして使えるポーチ。私は旅行系YouTuberさんやCAさ...
昔は紬で美術館・歌舞伎・コンサートに行くのは良くないと言われていた?今はうるさいことは言わなくなっている?②
(前回からの続き) 次に、紬の概念についても、戦後の呉服の世界では高級紬に対する認識が戦前のことを知らない人が必要以上に紬を貶めている部分があり、今一度見直す必要があるようです。 紬をとても格の低いものであるかのようにこき下ろす人がおられますが、それは戦後になって言葉だけが独り歩きした昭和後期のおかしな言説であり、戦前までは紬地や木綿の紋付・絵羽の礼装が作られており、着物の格は紋の有無と色柄で判断...
昔は紬で美術館・歌舞伎・コンサートに行くのは良くないと言われていた?今はうるさいことは言わなくなっている?①
今回は、紬で美術館・歌舞伎・コンサートにお出かけする話について書きたいと思います。 旧ブログでは、和裁士さんから聞いた話として、「紬で美術館・歌舞伎・コンサートに行くのは良くない」というお話を載せましたが、近年のネットや実際の着こなしの潮流を見る限り、今はそういうことは言わなくなってきているようです。 私も、着物の議論は着物人口を増やすことを目的にするべきだと思いますし、そういうことは売り手や...
今回は、単衣のお買いもので訪問着・附下編です。 ↑単衣の附下、無線友禅、未使用品、仕付け糸付き、1980円。 未使用品で手描き友禅で、この価格はすごいです😍 バチ衿ですが、夏は衿元が薄くすっきりと着れるので、むしろバチ衿のほうが私が好きです。 単衣は数が少ないですが、礼装は茶道をする方の需要も高いので競争率は高めな気がします。 出会えたら迷わず買ったほうがいいです。 透明感のあるキレイなピンクで...
今回は、単衣の紬系のお買いものの話です。 ↑単衣の紬、中古品、324円。 こちらは大阪土産にしました🎁 絣の感じからすると十日町系の越後紬だと思います。 総柄の紬は今は少なくなっているので、単衣も昔のものなら総柄があります。 単衣や薄物の紬は、大島紬や御召のようなものは別ですが、それ以外の一般的な紬は水に濡れても縮まないものが多いので、自分で洗えるのも魅力です。 この着物をプレゼントした方は...
単衣は裏側まで染まっているものを選んだほうがいい ~和裁士さんのお話~
今回は、単衣のお買いものの話と関係して、単衣の着物は裏側にまで気を配ると良いというお話です。 和裁士さんによると、単衣の着物を誂える時は、歩く時に裾がめくれて裏が見えるので、裏が真っ白なものはできれば避けた方がいいのだそう。(紬は織物なので、裏表同じ柄になるため気にする必要ありません) 垂れ物の単衣は、袷の着物を単衣に仕立て直して着る人もいますが、そのまま単衣にできるものとそうでないものがあり...
今回は、単衣の着物のお買い物の話です。 久しぶりにお買いもの@大阪シリーズです(;´∀`) お買い物ネタはまだまだあるので、ぼちぼち更新していきます。 ↑単衣の小紋、未使用品、仕付け糸付き、1620円。 辻が花調の模様の小紋です。店員さんによると、印刷と手染めの併用だそう。 和裁士さんは、こちらはもしシルクスクリーン捺染などの機械を併用したものだとしても、安物のプリント印刷ではなく、絵柄も生地も良い...
92歳のお婆さんの話 戦前の庶民は色の名前は7色ぐらいしか知らなかった?
今回も、92歳のお婆さんのお話です。 前回の話を受けて、戦前の庶民は色の名前をどのくらい知っていたのか聞いてみました。私:「江戸時代の家の中を再現したVTRや戦前の衣服の色彩を見ていると、生活の中で色のあるものがほとんどないのですね。 戦後のバブル時代は、『着物を着るからには和の色名を使いこなすべきだ』『日本の伝統色なんだから、着物を着る時は色の名前は和の色名で呼ぶべきだ』というような風潮があ...
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今回は、戦後に着物の色柄が洋服ファッションの流行に合わせて一気に地味になったことと、洋服でモノトーンと黒の洗礼を受けた世代を中心に、呉服の世界で「地味なもの=上品」「シックなものこそ正統派の高級呉服らしい色柄だ」という思想を流布している可能性があるというお話です。 戦後生まれの呉服関係者さんを見ていると、「洋服感覚の着物を~」「洋服の中で浮かない色柄を~」「都会のコンクリートジャングルになじむシ...
(前回からの続き)私:「和裁士さんによると、昭和後期の着物の世界では、黄八丈は町娘が着る若向きのイメージがあるから年配は着れないとか、格子は若づくりだという説が流布されていたらしいです。 Fさんは(本場)黄八丈にどんなイメージがありますか?」 Fさん:「黄八丈は年配世代が着るものというイメージだし、黄色が若い人しか着れないという話も聞いたことない。 誰がそんなこと言ってるのかしらね?? ...
今回は、Fさんのお話シリーズの第一回です。 (過去に一度公開した記事ですが、差し障りがある箇所があったため非公開にしており、今回再掲させていただきました。) ご実家が明治初期からの呉服屋だったというFさんに、大島紬の話や戦前の宮崎県の庶民の衣生活の話を聞かせていただきました。 Fさん(2018年現在で78歳)のご実家は、お父方が江戸時代に大名の馬廻り役だった武家のご家系で、明治以降は商家に鞍替えし、...
今回は、帯締めの話に続き、帯揚げについて調べてみました。 帯揚げは、お太鼓結びが生まれた後に、帯回りの付属品・装飾品として生まれたものの、帯締めのように組紐の文化や伝統技術などの背景があるわけではないためか、帯揚げを専門的に調べた本はほとんどないようです。 時代考証家の山田順子さんによると、「文化年間(1804~1818)にお太鼓結びが考案されると、帯がずり落ちないように、帯締めだけでなく、背中の折山に...
(前記事で、「組紐の帯締めの普及は、月印という帯締めの問屋が仕掛けた」という説を載せ忘れたので追記しました。よろしければご覧ください。) 今回は、夏用の帯締め・帯揚げのお話です。 戦後の呉服の世界では、季節柄や衣更えをうるさく言っていたので、「夏には夏用の帯揚げ・帯締めにしないといけない」と思う方がおられるかもしれませんが、夏用の帯締めは衣更えのしきたりでも何でもなく、戦後の昭和後期に商業的に作ら...
🎍新年のご挨拶申し上げます🎍 今年は元旦から地震・事故・事件など様々なことがありました。 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 当ブログの新年の抱負は、昨年は更新が少し滞っていたので、今年は着物の理論のほうに力を入れ、もっと多くの記事を投稿できる一年にしたいと思います📒🖋~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 今年の初記事は、特にお正月らしくもないのですが、帯締めと...
今回は、麻の着物の話に続き、芭蕉布の着物の格についてです。(画像参照元:芭蕉布 - Wikipedia) 戦後の呉服の世界では、芭蕉布は帯も着物もカジュアル着着として知られ、とても高価で希少性の高い商品となっていますが、琉球王国時代は古くから王家の夏の礼装として用いられ、戦前でもフォーマル着として着られていたようです。 『図説琉球の染めと織り』によると、琉球王朝では古くから芭蕉布が存在し、王族から庶民に至る...
今回は、戦前までは麻の紋付礼装があったというお話です。 結論から先に述べると、麻についても、昔は紋付の礼装があり、夏場はフォーマルで着られていましたし、同じ麻でも上質なものは上流階級の礼装や日常着として着られ、質の劣るものは庶民が日常着・労働着として着ていたということがわかりました。 戦後の着付け教室の教本や着物雑誌を読むと、「麻は素材からして格が低い」「麻は農家が自家用に作る自然布が起源で格が...
今回も前回に続き、紬や木綿は格が低いという言説についてです。 結論から先に述べると、「紬はとにかく格が低い」というような言説は、戦後の昭和後期に高級紬ブームになった時に、高級紬のライバルであった友禅の産地が紬を下げるような言説を流布したのが原因という説があったり、歴史的には高級紬は別格に扱われていて、地域によっては正式な礼装として着られていたという事実があるようです。 紬については色々な種類があ...
今回は、前回の木綿友禅の話に続き、「紬は紬というだけで格が低い」という言説は誤解であり、戦前までは紬の礼装があり、着物の格は素材よりも紋の有無と色柄で判断していたというお話です。 戦後の呉服の世界では、「紬はどこまでいっても格の低い着物(カジュアル着)だ。」「紬の訪問着は戦後に作られるようになった邪道の商品だ。紬の訪問着をフォーマルな席で着るのはおかしい。」「紬はいくら高級品でも格の低い着物だか...
今回は、「木綿は木綿というだけで格が低い」というのは誤解であり、大正時代までは木綿の礼装が作られていたし、着物の格は紋の有無と柄ゆき(裾模様・絵羽)で判断していたというお話です。 戦後の呉服の世界では、「木綿着物は着物の中でも最も格が低い」「木綿の着物はカジュアルな格だから部屋着として着たり、働く時に着るものだ」「隣人や極親しい人と会う時、近場の買い物で着る」「木綿の着物は格が低いからマフラーや...
続いて羽織のお買い物の話です。 ↑小紋の羽織、中古品、324円。 こちらは、和裁士さんが小物作り(つるし飾り)用に買ったもの。 茶色でこういう小さな柄は、雀などの小鳥の素材に使えるのだそう。↑バティック調の型染めで、羽裏もアジアンテイストです。 羽裏の下の表生地の折り返しが多いので、羽織にしては生地がたくさん取れたそう。 ↑小紋の羽織、中古品、324円。 こちらも和裁士さんがリメイク用に購入。 羽織紐が...
前回に続き、羽織のお買い物の話です。↑寿光織の絵羽織、未使用品、仕付け糸付き、108円。 こちらは知人のNさんが買ったもの。寿光織でこの価格はびっくりです😧 上品な糸菊が描かれていて、絵羽なので、関西の感覚だと、紬の着物ではなく、格のまあまあ高い垂れ物に合わせるべきものなのかも? 金糸・銀糸と白糸で立体的な糸菊が抽象的に表現されています。 「大小あられ」のような地紋があり、光の加減で浮き立ってオシャレ...
今回は、羽織のお買い物の話です。 今は長羽織が流行なので、昭和の短い羽織は流行遅れになりがちですが、とはいえ昔のものは良いものが多いので、そこまで短くなければ今着ても恥ずかしいわけではないと思いますし、生地や加工が良いのでリメイクにもオススメです。(過去記事→今の流行と昭和の着物のイメージあれこれ② ~着物を着るうちにわかってきたこと~)↑刺繍入りの絵羽織、未使用品、仕付け糸付き、108円。 手刺繍と...
今回は、地方の呉服屋さんでは、京都のネームバリューを都合のいい時だけ利用していたり、本当は田舎の趣味なのに、自店が京都のセンスであるかのように販売しているというお話です。 今まで呉服の世界を見ていて、着物で嫌な思いをしたり、着物離れが起きる大きな要因は、消費者と直接関わる販売現場が原因ではないか?とわかってきたため、今回は地方の呉服屋シリーズ第一弾として、愛知の田舎好みの呉服屋さんの話を例に挙げ...
今回は、はんなりという言葉は京都人でもあまり使わないという話と、地方の呉服関係者さんの中には、はんなりの意味を誤解していたり、江戸好みの着付けや趣味なのにそれが京好みだと勘違いしている人がいるのではないか?というお話です。 和裁士さんと話していて気が付いたのですが、和裁士さんが習った着付け教室では、「うちの教室でははんなりした着付けを目標にしている」と言っていたり、和裁士さんのお店の社長が、...
(前回からの続き) 呉服の世界では、伝統工芸の藍染めの浴衣だけをホンモノとし、他の安価な浴衣をニセモノとする風潮があるようですが、アパレルの世界では、藍染めの浴衣は、品揃えやカテゴリーとしては単に「紺色の浴衣」として分類されるということをもっと理解する必要があると思います。 紺色の浴衣は、伝統工芸の高級品だろうが、プリント印刷の安価なものだろうが、色柄のカテゴリーとしては単に「紺色の浴衣」に分...
今回は、前回の話の続きで、藍染めの浴衣に関するお話です。 昭和後期の呉服の世界では、「浴衣は藍染めが正統派で正しい浴衣で、日本人なら藍染めの浴衣を良いものだと思うべきだ」「藍染めの浴衣こそ伝統的な本物の浴衣だ」「昔ながらの紺地や白地の藍染めの浴衣こそ日本人らしい趣味だ」というような価値観が流布されていたようです。 現在でも、呉服関係者さんの発言やテレビ番組の日本の浴衣文化の紹介を見ていると、さり...
今回は、昭和後期のおかしな言説シリーズで、浴衣の格と絵羽柄についてのお話です。 浴衣についてよく耳にする話として、昭和後期の着物世界では、「絵羽の浴衣は近年作られるようになったもので、いくら絵羽でも格は低い。(=絵羽の浴衣は邪道だ)」」「浴衣を長襦袢と足袋で夏着物として着るのはいかがなものか。」「浴衣は湯上りに着るバスローブだから、昼間から着るのはおかしい。」「浴衣はオシャレ着や外出着には...
今回は、男性の和装は今でも慶事と弔事が同じ格好になるというお話です。 男性の和装の喪服について、「慶事では羽織紐と草履の鼻緒は白、弔事では黒にする。(中には半衿も足袋も黒にするという説もあり)」という言説が昭和後期に流布されていたようですが、これについても昭和後期のおかしな言説の一つのようです。 結論から先に述べると、和装では戦前までは慶事も弔事も同じ格好で、男性は白喪服の場合と黒紋付羽織袴が混...
今回は、戦後に着物の色柄が洋服ファッションの流行に合わせて一気に地味になったことと、洋服でモノトーンと黒の洗礼を受けた世代を中心に、呉服の世界で「地味なもの=上品」「シックなものこそ正統派の高級呉服らしい色柄だ」という思想を流布している可能性があるというお話です。 戦後生まれの呉服関係者さんを見ていると、「洋服感覚の着物を~」「洋服の中で浮かない色柄を~」「都会のコンクリートジャングルになじむシ...
(前回からの続き)私:「和裁士さんによると、昭和後期の着物の世界では、黄八丈は町娘が着る若向きのイメージがあるから年配は着れないとか、格子は若づくりだという説が流布されていたらしいです。 Fさんは(本場)黄八丈にどんなイメージがありますか?」 Fさん:「黄八丈は年配世代が着るものというイメージだし、黄色が若い人しか着れないという話も聞いたことない。 誰がそんなこと言ってるのかしらね?? ...
今回は、Fさんのお話シリーズの第一回です。 (過去に一度公開した記事ですが、差し障りがある箇所があったため非公開にしており、今回再掲させていただきました。) ご実家が明治初期からの呉服屋だったというFさんに、大島紬の話や戦前の宮崎県の庶民の衣生活の話を聞かせていただきました。 Fさん(2018年現在で78歳)のご実家は、お父方が江戸時代に大名の馬廻り役だった武家のご家系で、明治以降は商家に鞍替えし、...
今回は、帯締めの話に続き、帯揚げについて調べてみました。 帯揚げは、お太鼓結びが生まれた後に、帯回りの付属品・装飾品として生まれたものの、帯締めのように組紐の文化や伝統技術などの背景があるわけではないためか、帯揚げを専門的に調べた本はほとんどないようです。 時代考証家の山田順子さんによると、「文化年間(1804~1818)にお太鼓結びが考案されると、帯がずり落ちないように、帯締めだけでなく、背中の折山に...
(前記事で、「組紐の帯締めの普及は、月印という帯締めの問屋が仕掛けた」という説を載せ忘れたので追記しました。よろしければご覧ください。) 今回は、夏用の帯締め・帯揚げのお話です。 戦後の呉服の世界では、季節柄や衣更えをうるさく言っていたので、「夏には夏用の帯揚げ・帯締めにしないといけない」と思う方がおられるかもしれませんが、夏用の帯締めは衣更えのしきたりでも何でもなく、戦後の昭和後期に商業的に作ら...
🎍新年のご挨拶申し上げます🎍 今年は元旦から地震・事故・事件など様々なことがありました。 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 当ブログの新年の抱負は、昨年は更新が少し滞っていたので、今年は着物の理論のほうに力を入れ、もっと多くの記事を投稿できる一年にしたいと思います📒🖋~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 今年の初記事は、特にお正月らしくもないのですが、帯締めと...