猪兎亀ばあちゃん。
干し芋がムシロに並べられている。干し柿の粉が陽光に輝いている。生垣の影の用土の上の満ち足りた膨らみに光が筋をつける。かまどで燃えるパチパチの木が、くゆらせたなびかせる層雲。まるまった暖かい相貌を崩して、ばっさまが静かに笑う。木綿の縞が幾重にも重なって深い情愛の風景を纏っている。そんな日和の風景が確かにあった。お袋にも、親父にも、じいさんにもない。ばあさんの日和が。近づくと、手に取ると、するりと零れるような日和。なんでだろうか。ばっさまは笑う。猪兎亀という芽出度い名前そのままで。浮きことも。浮かざることも。過ぎざれば。ただ夢の如くある。猪兎亀ばあちゃん。
2025/05/10 19:00