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安井友泉
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2022/03/23

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  • 患者図鑑55 クレーマー クレーマー2

    外出から帰ってきた羽田さんが「成果」「戦利品」を得意げに披露するのを 聞く一方であったが、ある時羽田さんが「天誅を下す」のを目の当たりにした。 病院の患者が愛用する、近くにあるRスーパーに utuutuyasuyasu.hatenablog.com ちょっとした物を調達に行った時の事である。 品物を探して商品棚を見ていると、聞きなれた野太いしゃがれ声が聞こえてきた。 羽田さんだ!羽田さんは元々声量がある方だけれど、その時は一段と声を張り上げ 迫力満点だった。 私の居た場所と、羽田さんが「世直し」「指導」を行っているレジとはかなり離れて いたのだが、一言一句はっきり聞こえてくる。その様子は、店に…

  • 患者図鑑54 クレーマー クレーマー1

    1970年代に「クレーマー クレーマー」という米映画があったようだ。これは ミスタークレーマーとミセスクレーマーの離婚裁判の話らしい。 私はてっきりいわゆる文句をつける人、クレーマーの話だと思っていた(笑) もし、「クレームをつける人」の意で「クレーマー クレーマー」という映画を作るとしたら、私は羽田さんを適役として推薦しただろう。 羽田さんは声も体も(態度も)大きい人だった。なので目立ってはいたが、食事の席や部屋が離れていた事もあり、余り話す機会がなかった。 ある時、たまたまお茶を飲みに食堂に行ったら(食堂には給湯・給茶器がある) 羽田さんとニ、三人だけが座っていた。その中の一人に「安井さん…

  • 患者図鑑53 禁断の外出2

    複数で、人目のある所で会うのは全く構わなかったが、人目のない空間で野津さんと 二人きりになるのは不安だった。 そもそも、外出届で行き先に「野津さん宅」と書けば確実に却下されるだろう。 私が外出届について指摘すると、野津さんは「適当に、買い物とか書けばいいじゃない」と言う。そんな嘘までついて野津さんの家に行く必要があるのだろうか。 野津さんが私に来て欲しい理由は以下だった。 「大分家に帰っていない。家の中がぐちゃぐちゃになっていると思うから、片づけたい。でも、一人だとちゃんと出来る気がしない。手伝わなくてもいいから、安井さんが 来てくれて、そばに居てくれたら整理が出来ると思う」というのだ。 私は…

  • 患者図鑑52 禁断の外出1

    外出の可・不可は主治医の判断による。不可であれば勿論病院内にいるしかないし、 可であっても出かけない人もいる。 私は初めは様子見で院内にいるように言われたが、そのうち半日外出→一日外出→外泊とステップを踏んでいった。外泊(自宅泊)も、一泊から初めて段々増やしていく。 外出の場合、出勤・登校など事情のある場合を除き、朝食を終えてから夕食の時間までが基準だった。届ければ、夕飯は外ですませて来ることもできる。消灯時間までに帰るのは絶対だった。 外出届は前日までに看護師を通じて提出する。外出の開始時間と終了時間、行き先、連絡先(自分の携帯番号)を書く。病院を出る時と帰る時、ナースステーションで看護師に…

  • 患者図鑑51 机上の空論4

    精神科医にも「人間ってそんな教科書通り行かないよ」と思わされた。 三井医師には、良く「安井さんくよくよ悩むものねぇ」と言われた。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com 全く持って事実なのだけれど、じゃあ三井医師はくよくよ悩むことはないのか? 私は病的に悩んでしまった訳だけれど、三井医師だって彼にとって酷く困った事、 苦しい事が起これば(程度の差はあれ)くよくよ悩むはずだ。 常に泰然自若、達観した聖人であれという事(意訳)を言われると生身の人間でそれは無理です。先生も無理でしょ?と言い返したくなった。 ちょっと「机上の空論」からは逸れるのだが、この記事を書いていてあるエピソ…

  • 患者図鑑50 机上の空論3

    以上が根来さんの家庭事情だが、私もうつに苦しみ始めてから各所で 「机上の空論」を感じ、それに苦しめられて来た。 第二子出産後、うつで二谷医師(産婦人科)を受診し utuutuyasuyasu.hatenablog.com 「最近のお母さんは大人になりきらないで子供産んじゃうからねえ!困ったもんだ」と 暴言(?)を吐かれた話は書いた。 今思えば「じゃ、先生や先生の奥様はどれほどご立派なのでしょう?万端に準備された完全無欠なご両親なのですね」と毒づきたくもなる。 「保育園に入れるのは子供が可哀想でしょう?」と言った一ノ瀬医師。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com では寝たき…

  • 患者図鑑49 机上の空論2

    弟の良介は長男だった事に加え、体も弱かったので殊に大切にされた。 一家5人分の家事をするのは母と久美さん。祖母は足腰が悪いと監視役に徹した。良一氏は勿論、良介も指一つ動かさない。久美さんは家事も頑張ったが、手際が悪い、遅いと始終絶えず祖母から、また母から罵倒され続けた。 祖母・父双方からプレッシャーを受け続ける母の刃の向かう先は久美さんしかいない。 良介は「聖域」なので、何人たりとも注意も指導も出来ない。 勿論祖母からも父からも、暴言や暴力はあったが、母親のそれが一番頻繁だったという。小言は日常茶飯事、手も足も出る。久美さんに何の落ち度がなくても、虫の居所が悪いといきなり小突いてきたりつき飛ば…

  • 患者図鑑48 机上の空論1

    「毒親」に悩まされてきたのは検見川さん utuutuyasuyasu.hatenablog.com だけではない。根来さんの場合は、絶望的な喜悲劇だった。 根来さんは父方の祖母、両親、弟との5人家族で育った。父(良一氏)は学者で 母は専業主婦。弟は3歳下だった。 祖母は生まれた時代もあるのだろうが、強烈な長男教で、良一氏と孫の良介氏を溺愛し、 優遇。反面女である根来さんの母と根来さん(久美さん)をないがしろにした。 祖母に大切にされて育った良一氏は結婚してからも専制君主のように暴君で、自分に従い仕える事を求めた。唯一、後継ぎ・長男である良介を除いて。 良一氏は学者で、専門は「教育」、しかも「家…

  • 患者図鑑47 病院選び

    私はB病院の外来に通っていて、そのまま病棟に入院の流れであったが、入院患者すべてがその過程を通って来た訳ではなかった。 寺池さんは、あるクリニックに通っていたが、そこは入院設備がない。病状から入院の必要が生じて、医師同士が知り合いであって紹介されてB病院に来たパターン。退院すれば、元々通院していたクリニックに戻ることになる。 戸張さんはXという総合病院に通院していた。そこは精神科の入院設備があるのだが、 通院はともかく入院となるとかなり費用がかかるのだという。主治医に相談したところ、「お手軽価格な」(笑)B病院を紹介されたそうだ。 並河さんは、主治医はY病院で、そこにY病院に入院していたが、最…

  • 患者図鑑46 VIP患者

    食堂で雑談していた時、「情報通」の島崎さんが「ねえ、W社って知ってるよね?」 と話を振ってきた。勿論、W社は誰もが知る大企業だ。 「男性棟の個室にW社の寺池社長が入院しているんだって」と言う。 私は思わず「えっ」と声を出してしまった。あの有名なW社の社長が、同じ屋根の下、精神を病んで入院しているとは。 「本当なんですか?」「男性病棟の人に聞いたの。一番高い個室に居るらしいよ」 島崎さんは「古参」だけあって、男性病棟の古参とも仲が良く色々情報を仕入れてくるようだった。 寺池社長は、院長が主治医。時々自宅にも帰っているけれど、病院から出勤する事も ある。奥さんが良く見舞いに来ている。仕事の都合か、…

  • 患者図鑑45 withマスク

    コロナ禍の続く中、マスク姿は当たり前になった。しかし、私が入院している頃はそうではなく、病棟内でマスクをしている人は皆無だった。前に書いたように、風邪などに罹患すれば個室に隔離され、咳が出ないように、マスクが必要ない状態になってから解放される。 患者は皆、マスク無しで談笑し、病棟を歩き回り、作業療法に参加していた。 ただ一人の例外が築山さんで、初めは花粉症?軽く咳でも出るのか?と思っていたが 一か月経っても二か月経っても「全く」マスクをはずさない。 今でこそずっとマスクをしているのは不思議ではないが、当時はとても目立ち 異様ですらあった。 食事の時は、皆長テーブルに座って食べるのだが彼女だけは…

  • 今週のお題「冷やし◯◯」

    今週のお題「冷やし◯◯」 食べ物じゃないんだけど、「頭を冷やせ!!自分!」です。 私は結構カッとする面があって、相手の言動に納得が行かなかったり不満があり、スイッチが入っちゃうと、もうマシンガンの様に相手を撃ちまくります。勿論口でです。 手は出しません(笑)それで自分はすっきり… のつもりなんですが 相手は穴だらけ、大ダメージ負っちゃうんですよね。それが後まで響いて 関係がぎくしゃくしたり、最悪恨まれたり決裂したり。 後から思い返すと、あそこまで言わなくても良かった、言い方をもっと考えれば 良かったと後悔することしきり。 また、頭に血が上った私は真正面からストレートパンチを繰り出すだけなので …

  • 患者図鑑44 未亡人

    入院中に仲良くなった立川さんと千倉さんの共通点は、お二人とも夫を亡くされていた 事だった。それから重度のうつになり、なかなか回復できないのだと言う。 詳細は少し異なっていた。立川さんの場合は急死で、本当に突然の出来事だったのだとか。末娘の結婚が決まり、祝い酒を痛飲したあと入浴し、浴室で亡くなってしまったのだそうだ。「心配していたあつ子(末娘)の結婚が決まって、嬉しいまま死んだんだものね。幸せだと思わなきゃね」と立川さんは自分を慰めるようにつぶやいた。 けれども、あまりに突然で心の準備が出来ていなかった事、あつ子さんと旦那さんと 3人暮らしだったのが突然一人暮らしになった事もあり、心に大きな穴が…

  • 患者図鑑43 院内エクササイズー淋しい回遊魚ー

    病院にいると運動不足になりがちだ。作業療法でも体操のプログラムがあったが 週に一度数時間程度。たまに外部からヨガの先生が来る事もあった。 あとは、広いスペースは屋上だけなので、そこででバレーボールもどきをやっている人がいたり、屋上の塀にそってランニングをする人も見かけた。NHKのラジオ体操を日課にしていた人たちもいた。 そこそこ外出をしている人ならばそれ自体である程度体を動かすことになるが、 院内にとどまっている人はそうそうエネルギーを消費する機会がない。 今でも印象に残っているのが、薗田さん。年は60代半ばといったところだろうか。薗田さんは、奨励されている昼と夜の着替えをせずに年中パジャマ姿…

  • 患者図鑑42 病院の怪談5

    もう一つ怪談があった。B病院は外来と病棟が完全に分かれている。普段は厚い壁で仕切られ、お互い交流する事はない。 しかし、夜に限っては外来のロビーに非公式に行く事が多めに見られていた。外来のロビーは広く、また待ち時間用に雑誌が何種類かおいてあったし飲み物の自動販売機もあったのでそれらを利用しに行くのであった。 私は滅多にロビーに足を延ばすことはなかったが、ロビー常連が言うには夜間なので 誰もいないはずなのに、人影が見えるという。「おかしいな」と思って近づくと人影は消えてしまう。「私もあったよ」「人影まで行かないけど、気配を感じた事はある」 とおかしな体験をした人は何人かいた。 当直のある看護師や…

  • 患者図鑑41 病院の怪談その4

    北野氏の話は古株の二人も知らなかった。かなり前の事でもあるし、病死であれ自死であれ、出来るだけ他患者へは知らせないようにするものだろう。 ところで、自殺現場の「角のトイレ」では怪異体験は私もなかったし、他患者もなかったが、「あそこはおかしい」と複数の患者が口をそろえる場所が二か所あった。 一つは非常階段に向かう口で、滅多に階段として使う人はおらず、人がいないはずなのだが そこの場所で「子供が通り過ぎるのを見た」「しゃがみこんでいる影を見た」人が続出だった。見かけられるのは女の子の姿だったが、そもそもここは子供は入院しない。だから病棟には、面会に来る以外は子供はいないはずなのだが。 私も何人もの…

  • 患者図鑑40 病院の怪談その3

    小谷さんは、ご両親などのサポートもあり、精神的に大分持ち直して退院していった。 明るい顔で「離婚、成立しそうです!」と報告に来てくれた。 怪談の本題に戻ろう。自殺の話を出したのは、患者同士で雑談している時に、 何度もB病院に入退院を繰り返している「古株」(そういう人たちから見たら、私は「新米」「新参者」であった)の一人の島崎さんが「そう言えば、あの角のトイレで前首吊りあったよねぇ」と言い出した。その「角のトイレ」は、私もいつも使っているトイレだ。同じく雑談に参加していたキャリアウーマンの蓮尾さん utuutuyasuyasu.hatenablog.com も、「あったあった。角倉さんだっけ?」…

  • 患者図鑑39 病院の怪談その2

    前回、北野氏の死因としてまず自殺を疑ったと書いたが、精神科在院患者の死因第一位は自殺というデータがある。 www.jstage.jst.go.jp 入院仲間でも自殺を試みた人は何人もいたし、入院中も一度自殺未遂があった。小谷さんという30代の女性だが、夫との不仲(DV、ギャンブル癖など)に悩み、しかし離婚に応じて貰えないと酷く悩んでいた。 部屋は違っていたが愛想が良く、人懐こい彼女と良く世間話をしたものだ。 ある時、夕飯が終わり、皆が食堂でテレビをみたりお茶を飲んだりくつろいでいる中、突然「看護師さん!早く来てください、小谷さんが!」という叫び声が響いた。 みんなびっくりして声のする方に駆け寄…

  • 患者図鑑38 病院の怪談その1

    気がついたら、記事数200超えてました\(^o^)/ 読んで下さる、来訪して下さる皆様のお蔭です。本当に有難うございます。 今回、暑いので怪談… という訳でもないのですが… 入院中、何気なく「B病院」で検索をしていたら「北野孝 B病院にて死去」 という記事がヒットした。びっくりして色々検索してみるが「1970年代に70代の北野氏がB病院で『心不全』で死去した」以上の事は分からなかった。 北野氏の名は私は聞いたことがなかったが、Wikipediaを見るとそこそこ業績のある有名な人のようであった。 B病院は精神科単科病院なので、ちょっとした持病がある人はいるものの、基本的には精神疾患を患っている人…

  • 患者図鑑37 病院ライブラリー

    B病院には図書コーナーがあった。と書くと、ミニ図書館のようだがそんなに大層なものではない。ようは入院患者が不要になった本を残して行ったものが、まとめて置いてあるだけだ。なので、ベストセラーになったような本ならば複数冊あったり、漫画が全巻でなく飛び飛びに置いてあったり。全く一貫性のないラインアップだった。中に何故かエロ本も混じっていた。 本は自由に持ち込み可なので、その乏しい品ぞろえの図書コーナーに頼らず家から持ってきたり(もしくは持ってきて貰ったり)、自分で買ってくる人が多かった。 同室に検見川さんと言う人が入院して来た。違う病院から転院してきたのだ。 部屋の中で、また食堂で何度も検見川さんと…

  • 患者図鑑36 談話室の新聞

    男子棟女子棟分かれているが、その間に談話室があり、そこは男女とも利用する事が出来た。面会者も病室のあるエリアまでは入れないので、ここで患者と面会する。 談話室にはソファ、テレビ、新聞が置かれていた。新聞は全国紙で毎日朝に当日の 物に変えられていた。 これも既に記事に書いてきた事だが、週一回の診療の他は食事・入浴・作業療法(任意)以外は特に決まった予定が無いので時間に余裕がある。 私は空いた時間、談話室の新聞を読むことを日課にしていた。しかしそれにあたって強力なライバルがいた。男子病棟の患者、小野寺さんである。70代くらいに見える小野寺さんはほとんどの時間を談話室で過ごしている人だった。テレビは…

  • 患者図鑑35 栄光の架橋

    患者が時間をつぶすのは「食堂」「談話室」「屋上」の三か所なのだが、 沢口さんという男性患者は、特別?な場所を許されていた。 病棟の裏のちょっとしたスペースがそこで、沢口さんがそこにいることは 彼の朗々とした歌声から知る事ができた。 沢口さんは痩せていて小柄なのだが、その体格からは想像も出来ないような ものすごい声量で高らかに歌い上げていた。 声楽でも習っていたのだろうかと思わせるくらいに表現豊かで上手だった。 彼の歌う曲は一曲にきまっていた。ゆずの「栄光の架橋」だ。「誰にも見せない泪があった」から始まり、最後まで歌いきる。そしてまた「誰にも…」の最初に戻る。 それをリピート再生のように何度も何…

  • 患者図鑑34 倉石さんと巨大なリュック

    榎さんの貴重品を手離さない話で思い出した。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com 持ち歩きで言えば、もっと有名人がいた。倉石さんという男性患者だ。 男女で棟が分かれているので、倉石さんを見かける事はあまりになかった。 作業療法室でごくたまに、また屋上でベンチに座ってぼーっとしている姿を を見かけたくらいだ。倉石さんは初老の男性だが、容貌は良く思い出せない。 登山に使うような巨大なリュックをいつも担いでいたので、荷物ばかりに目が 行ってしまったのだ。小柄な倉石さんは、リュックに隠れてしまいそうだった。 まるでリュックが主で、倉石さんが従。 作業療法で一緒になったのは確か塗り…

  • 今週のお題「人生最大のピンチ」その2 生命の危機!?

    今週のお題「人生最大のピンチ」その2 前回はあわや就活全滅??無職の危機だったが、今回の話の方が命にかかわる のでピンチ度は高いかもしれない。 社会人になってから休みを取って友人と海外旅行をした。行き先は某アジアの発展途上国。事前にガイドブック等で下調べし、衛生面に細心の注意を払わなくてはいけない事を知った。生水、生ものは厳禁。水道水は汚染されているので、歯磨きにもミネラルウォーターを使う事。赤痢・チフスも珍しくはないという。 念のため胃腸薬も用意し、注意事項を頭の中に入れて(入れたつもり)旅に出た。 発展途上国への旅行は初めてで、見聞きする物すべてが新鮮で刺激的だった。 衛生も友人と注意し合…

  • 今週のお題「人生最大のピンチ」その1

    患者図鑑はちょっとお休みして、今週のお題「人生最大のピンチ」 私の大学生の時の就活の話である。 大学四年生になり(当時は四年から就活というゆっくりペースだった) 就職活動を始めた。昭和は、女子は現役・自宅からでないとかなり不利という時代。 私は幸いにもその両方の条件がかなっていたので、かなり楽観視していた。 情報集めなどのスタートも早めだったつもり。私の在学していた学校は 就職に特に強い訳ではないけれど、かと言って不利でもない。 まぁ、現役・自宅カードを持っていれば何とかなるだろう。学校の成績もまぁまぁだし。とたかをくくっていたのがまずかった。 高望みもしていて、数打ちゃ当たるとばかりに名の通…

  • 患者図鑑33 洗濯事情その2

    屋上は男女ともに出入り出来、そこで談笑したり、ぼーっとしたり、いつも男女共に人がいる。 私は一応気を使い、下着類は見えない様、バスタオルの裏に干すとか、小物干しでぐるっとタオルを周りを囲んで干していた。 しかし中には堂々とショーツやブラジャーを見える場所に干している人もいて感心 するやら、見ているこちらが恥ずかしくなるやら。 「安井さーん、裏に干していると乾かないよ!」とまでアドバイスされた。 私は洗濯機で洗濯できるような素材の物しか来ていなかったが、前の記事に書いたように病院から出勤する人もいる。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com また田村さんのように、クリーニング…

  • 患者図鑑32 洗濯事情その1

    各フロアに一台ずつ(男子棟に一台、女子棟に一台)洗濯機があり、各自洗濯が出来るようになっていた。 中には家族に洗濯物を持ち帰って貰っている患者もいたが、自ら行っている人の方が多かった。 洗濯機を回せるのは、起床時間から消灯時間の間。洗濯機のところにホワイトボードがあり、使いたい人は名前を書いていく。一番に名前を書いた人から洗濯を始め、だいたい40分くらいでコースが終わるので、頃合いを見て次の人が行く形になっていた。 これについても小さな先着争いがあった。乾燥機はないので、皆屋上に干すのだが 遅い時間に洗濯してはその日のうちには乾かない。みな朝早い時間に洗濯するよう しのぎを削って(とはちょっと…

  • 患者図鑑31 持ち歩きセーフティボックス

    病室の床頭台には小さいセーフティーボックスがついていた。前の記事でも書いてきたがB病院は解放病棟で、主治医の許可さえあれば自由に外出・外泊出来たので、お金も必要なので手元においておく必要がある。各自セーフティーボックスで自己管理する事になっていた。 ただ、殆ど病院から出ない患者はお金を使う機会もないので、そもそも財布自体を所持していない人もいた。 榎さんも外出をする姿を見た事がないので、お金の必要はないと思うのだが、貴重品一切をビニール袋に入れて紐をつけ、首から下げていた。財布、キャッシュカード、保険証、印鑑、クレジットカード。榎さんの全財産と思しきものが詰め込まれていた。そしてそれをいつも首…

  • 患者図鑑30 お風呂事情その3

    池野さんに「安井さん、湯船入ってる?」と聞かれた。「うん、毎回じゃないけど入ってるよ」と答えた。 「お勧めできないな。私は入ってないよ。それと足ふきマット気を付けて」と池野さんは言った。タオル等は各自用意する事になっていたが、唯一浴室から更衣室に移る場所に病院の足ふきマットが用意されていた。 「梅村さん、知ってるよね?」梅村さんは長く入院している比較的高齢の女性だ。 「私ね、この間梅村さんの後に入浴したのよ。それで体洗い終わって足ふきマット踏んだらね…」なんと、マットの下に大がべっとりついた下着が置かれていたという。下着は梅村さんの物だった。 それから、梅村さんに限らずだけれど、浴室の中で誰が…

  • 患者図鑑29 お風呂事情その2

    渡辺さんは双極性障害1型で入退院を繰り返している人だ。躁状態の時には 毎日のお風呂をとても楽しみにし、「A浴室が一杯で、Bになっちゃったー」 (A浴室の方がB浴室より若干広いので人気があった)「朝一の枠が取れたわ!」 など、良くはしゃいで話していた。 しかし鬱に入ると一転して「全く」入浴しない、出来なくなるのだ。渡辺さんと同室の秋葉さんによると、食事の時間にふらふらと食堂に足を運ぶほかは、同室の人と言葉を交わす事すらせずひたすら寝ているのだと言う。「酷い時は一か月は入らないよ」と、秋葉さんは言っていた。「だからね、本当言うとちょっと臭いんだ」とも口にしていた。 看護師も衛生面から入浴やせめてタ…

  • 患者図鑑28 お風呂事情その1

    今回はお風呂事情について。精神科は、内科や外科的疾患(手術や怪我、高血圧等)と違うので基本入浴に関する制限はなかった。 私が居た階の女子病棟のベッド数は約40。風呂は二か所にあった。ナースステーションに風呂申し込みの表がおいてあって、前日に自分の希望の浴室(片方の浴室の方が若干広かった)と時間を書き込む。時間は食事時間とその直前直後を除き、30分刻みで設定されていた。夕食が18:00~なので、最後の入浴は17:00~17:30であった。 ベッドが常に満床とは限らないが、毎日全員が入浴するには少し枠が足りなかった。 であるので、奇数部屋の人が優先的に書き込める日、偶数部屋の人が優先される日が 交…

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