その塚は、杉林の中でひっそりたたずんでいた。 石積みの壇の上に石仏や石塔が立ち並び、隣に五輪塔の礎石が1つ。周囲には、かつて五輪塔の一部だったと思しき石材が散らばっている。 そして、傍らに立つ石碑には「七人塚跡」の文字。 ああ、間違いない。これが八つ墓明神のルーツなんだ。僕は感無量の思いでカメラのシャッターを切った――――。 岡山県立図書館での文献調査を終えた僕が新見へ向かったのは、まだ梅雨の明けきらない7月初めのことだった。 JR岡山駅を出発した伯備線の2両編成列車は、水田の緑が映える吉備路をひた走り、高梁川の流れに沿って中国山地の奥へ分け入ってゆく。 列車が新見市に