” 私はふと足下をみた。 黒く焦げた敷石に、野菊の類だろか、小さな花びらと細い茎の影がくっきりと残ってゐた。この小さな生命さへ、熱線に焼かれる刹那、ここに自らの影を残したのだ。" ー 祈りの破片 より ー 藍を継ぐ海/伊予原新・著/新潮社 〖 祈りの破片 〗 過疎の高齢者ばかりの集落。ずうっと空家で電気も通っていない古い民家が、夜中になると青白く光るから調べてほしいといわれ、町役場の小寺が見に行くというミステリ仕立てで語られる話です。 その家は何のために使われてきたのか、そうしてなぜ夜中に光を放っているかなど、やがてその正体が科学的に徐々に解明されていくと、過去の「原爆」という重い現実につきあ…