うちの子紹介のページです。当ブログにお越しいただきありがとうございます。このブログも、先月の6月27日で丸々11年を迎えることができました。本日で11年と16日です。そう、12年目に突入しました~!記念として、うちの子の紹介をさせていただきます。まず、医学部卒業生から。「ボスである福山友明です。ドイツに行って、正式にメスドクとなりました。パースでクリニックを経営していますが、これからはメスドクとしてオペを...
オリジナルBL&MLを毎週月・水・金の夜21時に更新!※アスリートCP/医者CP/リーマンCP/学生CP/短編も有ります。
妄想&空想が好きです(*≧m≦*) 浸るのも大好きです。 プロフのイラストは自動生成AIに描いてもらいました。 オリジナルでBL小説を書いてます。 他のジャンルも多少あります。 性的表現がございますので、苦手な方はご遠慮ください。
うちの子紹介のページです。当ブログにお越しいただきありがとうございます。このブログも、先月の6月27日で丸々11年を迎えることができました。本日で11年と16日です。そう、12年目に突入しました~!記念として、うちの子の紹介をさせていただきます。まず、医学部卒業生から。「ボスである福山友明です。ドイツに行って、正式にメスドクとなりました。パースでクリニックを経営していますが、これからはメスドクとしてオペを...
いつもお越しいただきありがとうございます。11周年に突入しての作品です。『挑戦するのに年齢は関係ない』はいかがでしたでしょうか?本当に5年ぶりに登場しました、博人と友明。あれから、本当に5年の月日が経ちました。やっとパースに帰ってきた友明。そして、その息子のジュン。ジュンが信頼を寄せているジュンヤ。この3人がメインの話になりました。各々が、自分のやりたいことを模索しながら生きていく。この5年間、どのよう...
そのタロットをテーブルの上に置き、心の中で占いたいことを呟く。 10枚なんて置けないから、5枚引きにする。過去、現在、近未来に、結果。その結果として出たのは、カップⅣの逆位置。このカードは、腕を組んだ若者が目を閉じていて、カップを持った雲が若者に近づいている絵だ。しかし、正位置では、若者はそのカップに気が付いていない。なにしろ目を閉じているからだ。でも、今、出たのは逆位置。若者は、そのカップに気が付き...
ニューヨーク行きの飛行機に乗る。隣の席は、先ほどの人が既に座っている。「パードン」「ぷ、プリーズ」「サンキュ」離陸後、お決まりのスナックタイムがくる。「ミスター」私はフランス人だ。ドイツ語でもいいが、フランス語で応じる。 「テナチュール(紅茶をストレートで)」国際線のCAらしく、すぐフランス語で応じてくる。「ウィ、ムッシュ(どうぞ)」いよいよ、私の第5人生の始まりだ。どくろマークに、いや違った。マ...
ジュンヤはジュンの未来を知っている。あのいじめっ子と一緒にいるだろう。何度占っても、ジュンの傍にいるのが現れるからだ。ジュン。逃げ場所は一つだけではないよ。新しく作っていくものだ。10年間、私を逃げ場所に指名してくれてありがとう。君の未来に幸あれ。声がかかる。「前、通ります」「どうぞ」通りやすくシートと足の間を開けてやる。その人はたどたどしい英語だけど意味が通じたのが嬉しかったのか、安心顔をしてシー...
ジュンヤとジュンのパース出発日は同じ日だった。ジュンヤは飛行機でシンガポールへ行き、そこからアメリカへ。ジュンはエドのジェットで、庭から直接ドイツのフォン・パトリッシュ家へ。ジュンはジュンヤがどこに行ったのかは知らない。でも、また会えるだろう。そんな気がする。鞄の中にはジュンヤ先生から貰った2通の手紙が入っている。手紙とはいえ、サークルの皆と同じものだ。「2年後、自分はいなくなるだろう。自分の可能...
ジュンヤは机上勉強ならどんとこいの執念で合格した。実技及び研修先は、あの人が迎えてくれたので安心してアメリカに発てる。そのジュンヤに、一緒に暮らしているAは言いにくそうだ。「A、今までありがとう。待たなくていいからね」「あのさ……」「なに? 思い切って言ってみて」「アンディなんだけど」その名前に気持ちはグラつく。「う、うん……」「バツイチだって知ってた?」「知らない」「一緒になっても怒らない?」「Aはア...
何かを挑戦するのに、きっかけはなんでもいい。ただ、必要なのは、やる気ではなく、行動することだ。その行動力で、3人は自分の道を決めていく。友明は5年間という年月をかけて、再びメスドクに。ジュンは勇気を持つことができ、目出度くトニーから逃れることができた。そして、ジュンヤは自分の気持ちに気が付く。それから、2年後。ジュンはものの見事にドイツの高校の留学テストに受かった。住む所は、待ち人が住んでいる所。...
挑戦するのに年齢は関係ない #131 お互いにファースト・キス
一方、ジュンに体当たりを食らい倒れこんでしまったトニーは呆然としていた。負けたのがショックだからではない。その後のジュンの行動だった。「うるさい、黙れ。黙って言うことを聞いてればいいんだよ」そう言うとキスされた。できるなら、抱きしめたかったのだが、すでにジュンは走り去っていた。柔らかかったジュンの唇。自分の唇に指をあてなぞる。「ジュン……」虐めないでと約束をさせられたが、俺はお前を追いかけるからな。...
挑戦するのに年齢は関係ない #130 性描写あります!!キスデビュー
途端にトニーは黙ってしまった。あれ、ほっぺたってこんなにも柔らかかったっけ。なんかグニュグニュしてるし。恐る恐る目を開けると、トニーの驚いた眼があった。まさか、これはほっぺたでなく、トニーの……、く、ち?思わず走っていた。やっちゃった。やっちゃった、やっちゃったよ。ほっぺたにするつもりが、口にしてしまった。うー……。でも、口って、あんなにも柔らかいんだね。トニーも驚いていたし。僕も驚いて走って逃げてし...
「ハッ!」「なんの」「トウッ!」「へぇ、本当に合気道やってるみたいだな」全然、当たらないし、掠りもしない。しかも、トニーも合気道ができるみたいだ。「くそぉ……」「おら、どうした。かかってこい!」こうなると、アレしかない。「これは喧嘩じゃないからなっ」「分かってらあ」1年前のドイツで、ヒロがダディを負かした。あの時に見たアレをトニーにする。低くかがむと、トニーめがけてタックルしてやる。「ってやー」しか...
ジュンヤ先生に言われ納得したジュンは、意気揚々と夏休みを過ごす。そんなジュンに、今日もトニーは振り向かせようと手を企てている。バッタリと出会い、目がかち合う。「トニー……」「いい所で会ったな」しかし、逃げ腰になってしまうのは条件反射だ。回れ右して走ると、向こうも走って追いかけてくる。あの時、皆はなんて言ってたっけ?ほっぺたにキス。ハグする。えーと、それから、それから……と頭の中が真っ白になる。そんなこ...
全く歯が立たずに、僕は聞いていた。「いじめっ子に勝つにはどうすればいいですか?」「喧嘩ではなく、言い含める言い方にするとか、相手にしないとかかな」誰かの声が聞こえてくる。「キスしたら黙るよ」「いじめっ子は男の子なんだけど」「だから効果てきめんだよ」「そうなの?」「ほっぺたにキスをすると大丈夫」「ほっぺたかあ。なるほどね」「うん、いじめは止まるな」「たしかに、止まりそうかも……」いや、本当に止まるのか...
大学のドイツ語の講師として働くことが決まったと、ジュンヤ先生に話している。フランスとドイツ旅行に行ったことを卒業論文にして提出したら、雇ってくれたらしい。ジュンヤ先生に話しているのを見ていると、羨ましかった。「おめでとう、良かったね」「フランスとドイツに行けたからです。ジュンヤ先生、ありがとう」「君が行きたいと思って行動したからだよ。礼を言うのなら、君自身にだよ」「大学に、ここの語学サークルのこと...
当の本人に聞けばいいのだけれど、どのように聞けばいいのか分からない。あれから1年経っても、まだ残像は残っている。ジュンヤ先生は、あの人とキスをしていた。覗いてはいけなかったかもしれない。でも、真後ろだったから気になって見てしまったんだ。他の大学生と高校生の2人も一緒になって、3人で上から覗いていた。見終わると、その2人はトイレに行ってしまった。僕はどうすることもできなかった。2人はトイレから戻ってくる...
ジュンはダディである友明に同じことを聞いている。途端にトモは怒り出す。「なんで、そういうことを聞くの!」「どんなものなのかなと思って」「ジュンは女の子と結婚するんだろ」「そうだよ。マミィのような可愛い女の子とするんだよ」「それなら、そんなことは知らなくてもいいことだろ」「そうなんだけど……」「なんだよ、モジモジして」そこでハッと気が付いたのか、こんなことを言う。「お前、女の子でなく男の方が好きなのか...
ジュンの言葉。「男同士でキスするのは、気持ちいいの?」あまりにもストレートな言葉にショックで言葉が出なかった。やっと頭が動き、言葉が出てくる。「よくテレビで見るハグして頬にする、あれは挨拶だよ」「ほっぺたでなく、ここだよ。口なの」そう言って、自分の口に指を置く。その仕草に、これはどこかで男同士のを見たなと気が付くと言っていた。「ジュンは男相手に、そこにキスをしたいのか?」「え? い、いや、どんなも...
ヒロは頭を優しくポンポンと叩いてくれると、ハグしてくれる。だから、この言葉を添えてハグをし返す。「ありがとう」ヒロにハグをされたまま聞いていた。「ねえ、ヒロ」「ん?」「あのね、僕、ずっと考えていたのだけど分からなくて。聞いても良いかな?」「何? 言ってごらん」その優しい口調と言葉に勇気を貰い、聞いていた。「男同士でキスするのは、気持ちいいの?」すると、ヒロは黙ってしまった。優しく頭や肩を叩いてくれ...
挑戦するのに年齢は関係ない #121 Happy Birthday
夕食は豪華にケーキ付きだ。しかも、Happy Birthday to Jun!と付けてある。「ダディ……」「遅くなったけど」「ううん、嬉しい」「で、誕生日プレゼントだよ」「ありがと!」開けて見ると、セーターとジャンバーだ。「カッコいい」着てみると手障り良くて暖かい。「あったかいや」「少し大きいな。でも、そのほうが長く着れる」「ダディ、ありがとう」ヒロは、これだ。「トモが編んだ物だ」「いつ?」「博人さん!」「何が良いのか...
挑戦するのに年齢は関係ない #120 肥満になる理由、それは―
ダディはこんなことを言ってくる。「一人分も二人分も変わらんからな」「ダディはどうする?」 「作れ」「は~い」朝の楽しみが増えたと思っていたら、ダディはこんなことも言ってくる。「今日の夕食は私が作るからゆっくりしてろ」「嬉しい。なら、昼寝するね」「それはダメ」「なんで? ダディだって」「食べて、すぐ寝るのは太る元だぞ」「太ってないけど?」「いいか、食べてすぐ横になったり、寝るのはダメだ。食べたものが...
片付けが大の苦手なヒロは朝食を作ってくれた。丸いおにぎり、プチトマト、バイオリンの模様を描いたきゅうり。それに、ジャガイモをすりつぶして玉子と一緒に焼き上げた物。それを見ると笑っていた。「良かった。ヒロのご飯だ。でも、ジャガイモと玉子で、こういうのができるんだね。ケチャップかけると美味しい」「見た目は悪いけど」ダディはヒロの言葉を遮ってくる。「5年間かける365日、こればかりだと飽きる」「ダディは作ら...
目が覚めると2人ともいない。もしかしたら、もう仕事行ったの?僕になにも言わずに?ダディ、ヒロ!急いでリビングに向かうと、途中にあるキッチンから声や音が聞こえてくる。「だから」「別にいいだろ」「よくない! ジュンが起きてくるまでやり直し!」何のことを言ってるのか分からず、キッチンに入り声を掻けていた。「何をやってるの?」「ほら、もう起きてきた」「ヒロ、何を」ダディは僕をキッチンからどこかに連れて行こ...
ヒロはいつもの優しい目になっている。「いつも通りだな」「僕、朝ごはん作るから食べてね」「ああ、よろしく」ヒロは頭をなでてくれる。やっと、いつものヒロになったみたいだ。「お弁当作るから、それを食べてね」「弁当って」「学校は弁当なんだ」ダディは嬉しそうな顔だ。「楽しみの一つだな」「うん」「誰かが冷やかす物でもある」「なに、それ」「双子で、しかも男女で同じクラスだと、姉弟でなく、付き合っていると見られる...
夕食も済み、一緒に寝るべきかどうすべきか迷っていた。帰ってきたヒロの様子が気になって仕方なかったからだ。でも、顔を見るだけでもと思い寝室のドアをたたく。「やっぱりな。来ると思っていたよ。泣き虫君」この声はダディだ。「泣いてないもん」ヒロの声が聞こえてくる。「食べてる時から泣き顔だったからな」「3人揃って食べるのが嬉しかっただけ」「なんで、ドアを開けないんだ?」「おやすみなさいと言いたかっただけ」「...
チンと乾いた音が鳴るのでキッチンに行く。「あとはクリームを入れるだけ」「見事な形だ」ダディにそう言われ、僕は嬉しくなった。「博人さんより形が良い」「ヒロのはボールだよね」「独特だからな。で、メニューはなんだ?」「今は味をしみ込ませているところ」そう言うとタイマーに目を向ける。「あと14分経ったら焼きます」「本格的だな」「えへへ」「で、部屋は掃除したんだろうな?」「しました」その時点で気が付く。リビン...
BLマンガをさわりだけ描いてみました。...
ヒロとの会話は続く。「どうしてドイツ語を勉強しようとまで思ったの?」「だから」「その前に、誰かと約束したのだろ?」その言葉で分かった。「僕ね、ドイツの空港に着いた時、ハッキリと気が付いたんだ。僕は15歳の8月は、ドイツに来るって。だから、それまではダディとヒロにハグして貰おうって。……僕、甘えてるのかな?」「ロシアで馬と友達になったよね」「うん」この話はどこにいくのだろう。「去年、渡したものを見た?」...
ピンポンと鳴らして入る。「ただいま~」バタバタと賑やかな足音が聞こえてくる。「ダディ、ヒロ。おかえりなさい」「ただいま。ジュン、泣いてないか?」「大丈夫だよ。1年だからね」ヒロは匂いを嗅いでいる。「なんかいい匂いがするな」「シュークリームの生地を焼いているんだ」「デザートはシュークリームか。嬉しいな」ジュンに土産袋を渡す。「これ、スペイン土産だよ」「ありがとう。開けて良い?」「いいよ」ヒロから貰っ...
受け止めた物は重さがあるみたいだ。だから言っていた。「これは」「土産だ。それは受け取れよ」「サンキュ」しかし、学生時代の事がふと頭に浮かんでくる。だから付け足してやる。「返せと言っても返さないからな」「スズメへの物だ」「ならよし」ボスが正面から出ていくのを見送って、2階に上がる。部屋に入り、ホクホクと土産を開く。ドイツのチョコレートだ。持つと、結構重さがある。「チョコレートって、たしかに王道な物だ...
ボスはこれだ。「これが、こいつのいい所だからな」「そう言われると……」「まあ、私も言ってなかったが。ジュンは料理作れるんだ。スズメありがとな。で、計算できたか?」「だから、要らないって言ってるだろ」「計算できないってか」「する気もないから」 「食材、無駄になったんだろ」「私を言い含められるとでも思っているのか!」その強気の叫びにボスは優しく応じる。「思っている」即答で返ってくるので瞬間ガックリするが...
「スズメ」「なに?」怒り声で応じたが、誰に声をかけられたのかが分かると、今度は普通の声を出してくる。「あ、いや。何ですか?」「お前、ジュンに料理を作っていたのか?」その言葉に鼻の下を擦りながら応じる。「そりゃ、ジュンのことよろしくって、任すって言ってたから」「そっか、ありがとな」段々と言いづらくなってきたスズメはしどろもどろだ。「あ……、あ、あ、で、でも、毎日じゃないし」「あいつ、食ってた?」「まあ...
急に声が割って入ってくる。「スズメ、テイクアウトの出来てるって?」その声にビクッと肩が震える。「トモヤか……」友は顔を覗き込まれる。「5年ぶり。元気だった?」「ああ。そっちは元気そうだな。ボス業はどうだ?」「5年やって、なんとか慣れたってとこ」「私はいなくても大丈夫そうだな」「いろんな人にフォローされてるけど。でも戻ってきたんだろ」「まあな」スズメはじっと立ち聞いているみたいだ。「スズメ、どうした?...
2階から降りてきたスズメはキョロキョロと店内を見回している。そのキョロキョロが止まる。「もしかして……」どうやら私を通り越して博人さんに目が行ったみたいだ。「ボスは、ボスはどこ? いつ帰ってきたの?」博人さんは指さしてくる。「ここ」「え、ここって……?」覗き込んだのだろう。「げ、分からんかった」「何が?」「ドイツからお帰りなさい」「ただいま」「ドイツに5年もいるとお洒落になるんだな」その言葉で、このコ...
ジュンヤの所から家へと帰る途中にある警備警護会社に寄る。会社のエントランスドアを開け入ると声を掛ける。「マサいる?」すぐに本人の声が応じてくる。「ボス?」「これ土産。で、こっちはここへの土産、皆でどうぞ」「ありがと」「で、良かったら最新情報を教えてくれない?」その会社でも1時間ぐらいいた。次はエドのいるGPだが、その隣にあるスィート店は閉まっていた。まあ、連絡してないから仕方ないか。エドは病院から戻...
ドアを開けると、声が聞こえてくる。「いらっしゃ」その声を遮ってやる。「よっ」「ボス?」「コートが欲しい」「ジャンバー着てるのに?」博人さんが口をはさんでくる。「コートを荷物に入れてなかっただけ」「博人さんっ」ジュンヤはその言葉に笑っていた。「これ、土産」「私に?」「ジュンが世話になってるから」「ダンケ」「店員さん、どのコートがオススメですか?」「本気で買うんだ?」「当り前よ。クルーザーで帰り着いた...
「ん-……、ぐっすり寝たぁ」「やっぱり、ずっと海の上だと体に悪いな」「そうだね。せめて2週間までだね」朝食を食べ終えて宿を出ると露店で昼食用に食料を買い込むと、ジュンに連絡を入れる。ツーコールで出てきた。『ダディ!』「夕食は何だ?」『何が良い?』「フルコース」『じゃあ、買い物に行く』「先に、皆に土産を私に行くから遅くなるけど」途端に声に元気がなくなる。『夕食までには帰ってこれない?』「遅くても17時過...
ここオーストラリアには無数の無人島があるが、宿のある島もいくつかある。そのうちの一つにクルーザーを停め、大地に足をつける。途端、足がぐらつく。「大丈夫か?」「なんかグラついたような、地震か?」「ずっと海の上だったから、今日はここで慣らしておく方がいいかもな」「さむぃー」「食事つきの宿だ。メニューに文句つけるなよ」「そっちこそ、言わないように」その島の住人は寒くても活気がある。露店だが、あるお店を見...
2日後、友明は自分で作った外套を身に付ける。「あったか~」「よく、こんなのを作れたな」「これで颯爽と歩けばモデルになれるかな」「無理」「キッパリ言わなくてもいいでしょ」「モデルというのは長身でバランスのとれた均整をしている体格の持ち主だ」「分かってるよ」なにしろ、トップモデルがいるのだから。「友みたいに寸胴体型だと」「言うな」「絶対にモデルは向いてない」「分かってるって言ってるだろ」友明は毛糸を1...
一方、博人と友明は南太平洋の海上を進んでいる。「寒いぃー」「ここまで寒いとは思わなかったな」「コートまで送ってしまった。羽織る物がなーい」「どこかで買うか?」「そうする。シンガポールに着けて。そこで」だが、博人は遮る。「シンガポールは夏だ。冬物は売ってない。それに、南アメリカ半島を回ったところだ」友明は寒さに呻っている。「まったく、冬になることが分かって冬服をスーツケースに入れたくせに」「そういう...
「戻って、くるって。本当か……」「1週間後にな」「1週間……」ユタカの呟きはスズメの耳には届かない。スズメは叫ぶことしかできないでいる。「ジュン、頼むから食べてくれよ-」本当に、こいつは煩いなと思いながら聞いていた。「ジュンは何を食べているんだ?」「自分で作って食べてる」「作れるならいいのでは?」「ユタカまで、それ言うか」ユタカは、こいつとは話にならないと思い立ち上がろうとした瞬間、スズメの表情が目に飛...
そして、中華店では今日も店長は項垂れる。「あー、やばい、やばいよぉ……」ボスからパース到着予定日のメールが着たのだ。どうしよう。正直に話すか。いや、話したら何か言われそうだ。でも、マサからも話しを聞くだろうな。ジュンヤは別にいいのだけど、と思うと、もう1人いることに気がつく。トモヤだ。絶対に、あいつと会う。そうしたら、あいつはジュンのことを持ち出す。いつも母屋のドア前に置かれている食事トレイに、防犯...
フランス・ドイツ旅行から帰ってきて、1年経った。トニーのちょっかいを躱しながら、スズメの料理は手を付けずに自分の食べたい物を作って食べている。そんなある日、大きな荷物が4つも届いた。送り主はダディとヒロだ。そのうちの一つに”手紙有り”という文字が見えたので、それを開き見る。真っ先に目に入った言葉は、これ。「帰国日が決まった」思わず声が出ていた。「やったー!」手紙を読んでいく。ふんふん、荷物は部屋に置...
「まあ、その為に必死になって勉強してたからな」友明は、博人の呟きは聞こえていないのだろう。「情熱のスペイン! 私がスペイン語を専攻したのは憧れだったからなんだ」「スペインのなにが?」その言葉に友明は目が一瞬光る。「スペインと言えば、海! 海賊になりたいという気持ちがあったから」その言葉に博人は納得する。「友も男だな」「だろ」「マザコンだけではなかったというわけだ」「マザコンじゃないって、言ってるだ...
あれから5年。仮が取れ、正式に医師免許を取得した友明は博人と共に帰国する。日本ではない、オーストラリアのパースだ。ジュンヤにも話したが、机上勉強はドンとこいなので2年スキップして、2年間で卒業した。その後、大学病院で専科決めの研修だ。必死で勉強した友明はルンルンな表情だ。シンガポールでは皮膚科だったが、ここドイツで再出発し再びメスドクになった。そんな友明に博人は感嘆していた。「よく頑張ったなあ」「...
翌日、GPボスにも土産を渡したいので、イヨンに別れを告げ家に帰る。途中、いじめっ子トニーの姿を見かけてしまい、隠れていた。「なんで、こういう所にいるかねぇ・・・・・・」違う道を通って家に帰る。リビングに干していた大量の洗濯物は乾いている。片付けることはしないのだが、全部が半袖なので仕方ない。見るからに寒そうなので片付けることにした。買物もして帰ってきたし、畑作業をしよう。どれぐらい畑にいたのだろう。声が掛...
「うわぁ!」マサは説明してくる。「シャープペンシルとボールペンはよく使うと思う。それに、こっちは万年筆と言って、社会人になったら必要になるよ」「なんだか、大人になった気分」「使ってくれると嬉しい」「ありがとう、マサ。こんなお土産だと釣り合わないね」「ううん、そんなことないよ。ジュンの気持ちが詰まっているから、大事に着させて貰うから。それに、このエッフェル塔はチョコレートを食べても飾り物になるからね...
マサはダディからの土産を開けると驚いている。「何だったの?」「これだよ」そう言って見せてくれたけれど、分からなかった。マサは分かるのか教えてくれた。「これはドイツよりスペインだな」「スペイン?」「イベリコ豚だよ。今日の夕食は、これを食べよう」「いいの?」「美味しいよ」「食べたことあるの?」「ないけど、スペインのイベリコ豚は美味しいと評判だからね」夕食は、そのイベリコ豚をスライスしてくれた。「美味し...
「ジュン、お帰り」「ただいまー」「迎えにいけなくてごめんね」「いいよ、気にしてないから」そう言うと、はいと言って土産を渡す。「ありがとう」「どういたしまして」「2つ、いや、3つあるよ」「フランスとドイツで買ったの。もう一つはダディからのだよ」マサは嬉しそうだ。「ジュンからの土産なんて楽しみだな。なんだろう」「ダディのも楽しみでしょ?」「なんとなく分かるから。でも、楽しみなのかな」マサは僕が買ったの...
パースに着くと、まっさきにマサにメッセージを入れる。返信の中身を見ると、昼過ぎならいいよとのことだ。昼過ぎということは洗濯して昼ご飯食べて行く事になる。とりあえず洗濯をしよう。ダディとヒロにハグされ、とっても楽しかった旅行。あと1年。スズメを、あと1年振り回せと言われたがどうやればいいのだろう。マサに聞いてみよう。ご飯はどうしようと思いながらキッチンに行く。何も買わずに帰ってきたから何もないや。パ...
「今回、フランスに行った時、オフィスに寄って飛び入りで仕事をしたのだけど、ドイツでボスと再会して合気道した。あれで、自分の考えがパーになった。やっぱり、私は自分のやりたいことを全うしたいって思うようになった」「モデルに戻るのか?」「戻らないよ」「催眠術師になるのか?」「癒しの心療だ!」「あそこのクリニックか?」「違う。勉強する場所はアテがある。でも、あの人が迎えてくれるかどうかは話をしてみないと分...
そのAは話しかけてくる。「で、これらを引っ張り出してどうする気だ?」「逃げない事に決めた」「そっか」「ねぇ、アンドリュー」Aは、その名前にビクつき逃げ腰になっている。「逃げないで、アンドリュー」アンドリューという名前に抵抗があるAはジュンヤの腕から逃げようともがいているが、ジュンヤは逃がさない。アンドリューの首根っこを捕まえている。すでに、学生時代の感覚に戻っている。「私は日本には帰らない。それは、...
パースに着き、家に帰ると倉庫に入る。部屋に戻らない私の後をAはついてくる。勉強好きのボスに触発され、しかも語学で博人先生に負けを認めさせた私はドクターバッグを取り出す。「ジュンヤ?」「ごめん。あっちでボスに会って。使わないだろうと思って奥に突っ込んでいたのに」「いいよ。元々は俺だけの夢だったから」ドクターバッグを眺めながら呟く。「でも、オペはしない」「しないではなく、メスで切れない、だろう」Aを見て...
走り出した私の後ろをゴロゴロとスーツケースを転がす音が追いかけてくる。「歩くと言ったのに」「ジュンヤ先生、走らないでー」「坂道で下りなのにー」「あー、荷物が勝手にどっかに行くー」「自分の荷物はしっかり持ってろ」「僕の荷物―」「荷物の方が軽いのか」「そういえば、フェリー乗り場まで下り坂だ」「行きはシャトルバスだったような」「帰りもシャトルバスにすれば良かったかも」皆の声を背に、私は走りAにハグしていた...
無事にシンガポールに着いた。さあ、パースは目の前だ。「みんな、歩くよ。迷子にならないように大学生3人、しっかり見るんだよ」「はい」腕を摑まれる気配がするので身を翻す。なんか、こればかりだな。「アンディ・・・・・・」「ジュンヤ、私はシンガポールで暮らしている」それ以上、声を聞きたくない。アンディの声に、被せる。「アンディ、さよなら。お幸せに」一夜の思い出だけでいい。そう思うと声を出す。「さ、歩くよ-」「は...
途端に悲鳴が上がる。「キャー!!」「ねえ、あそこー」「見てみて-」「闇の帝王と光の帝王がいるー!」「あ、ほんとだー」「嬉しい。写真に撮る」私達の事を知っている人がいるみたいだ。こんな至近距離でキャーキャー言われるのは初めてだ。左から右へと流すことができずに、両耳を押さえていた。同じく両耳を押さえながらアンディはこんな事を言ってくる。「フラッシュライト浴びたい?」それは、私を盾にして自分は撮られない...
どれぐらい寝ていたのだろう。誰かに起こされる。「なに?」「アナウンス流れたぞ。今、食事を配っている」その言葉で目が覚めた。「やば、顔洗ってこよう」洗面所に行き、鏡を覗く。まだ半分寝ているみたいだ、でも、あと少しでパースだ。最終仕事が残っている。そう思い顔を洗うと、頬を叩き渇を入れる。戻ってくると、CAのお姉さんは2つ前のシートに配っている。間に合ったみたいだ。シートに座ると、1つ前に配っている。聞き耳...
挑戦するのに年齢は関係ない #84 R18!性描写あります。抵抗ある方はスルーしてください
「濃いな」そう言うと、ペロリと口の周りを舐め取る。その舌で、もっと舐めて欲しい。「ジュンヤ?」何も言えない。だから腕を伸ばす。「どした?」「・・・・・・いて」アンディは顔を近づけると、囁き声で聞いてくる。「なに?」「抱きしめて」その言葉に驚いた顔を見せたが、すぐに優しい目になった。「まだ時間はある。ゆっくりおやすみ」「アンディ・・・・・・」頭を撫でられ、Tシャツとスラックスも着せてくれる。「ほら、おいで」腕を...
挑戦するのに年齢は関係ない #83 R18性描写あります。抵抗ある方はスルーしてください
キスされる。すると、アンディの手の動きが激しくなる。何も言えない。頭の中は朦朧としてくる。アンディ。あなたは、私を求めてくれるの?でも、それ以上はやめて。Aに抱かれてないことがバレる。息ができないし、頭の中では何も考えたくない。このままアンディを感じていたい。だめだ、勝手に体が動きだす。アンディに、もっと触られたい。気持ちいい。なにか生暖かいものを感じる。そう思い見ると、アンディは私のモノを舐めて...
挑戦するのに年齢は関係ない #82 飛行機の中で・・・性描写あります?
息が苦しい。なに、これ。いったい、何が起きているのだろう。目を開けると、霞がかっているようで分からない。何かを感じるのは下だ。下。いや、口の中だ。意識が、目が完全に起きた。アンディがこっちを見ている。まさか、キスをされているのか。アンディの貪るような舌使い。息ができない。アンディの顔が離れ、同時にTシャツを捲られる。「んっ」「声、我慢してろ」「アン・・・・・・」「お前が欲しいんだ」「ディ・・・・・・」アンディ...
寝ているアンディに囁きかける。「アンディ。皆は、あなたが好きだったんだよ。誰もあなたを嫌っていなかった。辞めたのはもっと違う意味だよ。私が辞めたのは年齢がギリギリだったからね。もう、あの道は歩けない」アンディの手の温もりは温かい。「アンディ。あなたは私の事を知らなすぎる。うわべしか見ない奴はゴメンだ。Aは、会って直ぐに私の奥に触れてきた。Aはボスと同じ人間で、あなたとは違う。本当は、ずっと一緒に居た...
もしかしたらアンディは寂しかったのかもしれない。皆が1人、また1人と辞めていったから。知っているモデルは私だけになり、私も引退したから、なお一層寂しかったのかもしれない。毛布の下でアンディは一層、手の動きを激しくしてくる。久しぶりのアンディ。本当はもっと触れて欲しいが、飛行機の中だ。ふいに思い当たった。「アンディ。あなたは、皆が自分のことを嫌って辞めたと、思っているの?」 「違うのか?」やっぱりと...
「相変わらず意地悪な奴だな」分かっている。ボスと博人先生。あの2人と会って、自分の感覚が学生時代の頃に戻ってきている。だから言える。「アンディ。私は逃げも隠れもしない。この10人を無事に連れて帰るのは、私の役目だ」意味が通じたのだろう。「キスだけでも」ふ、と微笑を見せるとアンディは身をかがませ、キスをしてこようとする。目を瞑ると唇に触れてくる。3秒待ち、拳と膝で急所に食らわすつもりでいた。が、それを...
手を握り返しながら言ってやる。「結婚したんでしょ? モデルから遠ざかって何年経ったの? 遠ざかると、そんな野暮ったい服を着るようになるんだね」 「君は相変わらず冷たいな。噂ではAと一緒に暮らしているとの話だが」「噂になっているのか」「本当なのか?」「引退と同時に、一緒に活動しているから。でも、私は後悔なんてしていないよ」「あいつと寝たのか?」その言葉に、ふふ・・・・・・と笑みが出る。「逃がした獲物は大き...
挑戦するのに年齢は関係ない #77 帰国便の隣シートは元カレ
2人に見守られ、ゲートを通る。ジュンは泣きべそから一転して、笑顔になった。色々とあったけど、無事に飛行機に乗れて良かったよ。7人掛けと3人掛けのシートを陣取り1列に10人が並ぶ。私のシートは1人だけと喜んでいたら、右隣のシートにはアンディが既に座っていた。前の座席はジュンが大学生と高校生の2人に挟まれ座っている。声が聞こえてくる。「ジュン、もう少ししたら軽食がくるから、起きてて」「また食べるの?」「夕...
ここまで言われると、言わざるを得ないではないか。観念して言うことにする。「祖母がスペイン人だったから、8年間滞在していて。その間にポルトガル語、スペイン語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、英語を学んで、日本では中国語と日本語を勉強した。大学での専攻はロシア語」その人は額に手を置きため息をついている。しかも、この言葉。「負けた・・・・・・」それを聞いて、勝った、と口から出ていた。思わずガッツポーズをしてい...
勉強方法と言っても、そんなたいしたことじゃないけど。と、ブツブツ呟いていたら弟2人に教えていた頃を思い出す。「現地に行って、無理にでもドイツ語を話す」「他の勉強方法は?」考え込んでいた。今度は大学生の1人にも聞かれる。「どうしてドイツ語を習おうと思ったのですか?」ここまで言われるとあやふやにはできない。「小さい頃はフランスに8年間いたからね」「フランス?」 「そう、ドイツとフランスの国境近くになる...
今なら言える。だから、ジュンヤ先生との話が終わるのを待っていた。「ダディ」「ジュン、私は」「思いっきりハグして」その言葉にダディはハグしてくれた。「1年分、思いっきりハグして」「背は伸びても、中身はまだ子どもだからな」「そうだよ。来月、やっと中学生になるんだからね」「小学校卒業と中学校入学おめでとう」「ありがとう」ダディの温もりを感じる。「もう、あんな子どもみたいなことは言わないから」「ジュン」「...
19時を過ぎるとゲートを通れた。夕食まで色々と見て回ったらしく土産袋がパンパンに膨らんでいる子もいる。皆で夕食を食べ終わり、最後にボスとヒロト先生を含めた写真を撮って貰う。写真はすべてSDに入れているので、機内で見るのが楽しみだ。ジュンはマサとGPボスに土産を渡したいらしく、土産を買ったみたいだ。ボスと談笑していた。「疲れたけど楽しかったよ」「それは良かった」「ガイド役はもうやらないからな」「あわないと...
「あ、来た。ヒロ先生が来ましたよ~」「なんだよ、その先生って」「3グループあるから、そのグループのお目付役だよ」ジュンヤは即席の引率先生に言っていた。「トモ先生の行動が怪しいので、できれば2グループを一緒に見て頂きたいのです」「あいつ、何かやったのか?」「子ども達と一緒にはしゃいでて」その人は納得したみたいだ。「この4年間、ずっと勉強一筋だったからな。息抜きを見つけたのか」そう言われると何も言えな...
アム・マインから空港までは電車で5分だけど、歩きだったから1時間かかった。あっちこっちと小道に入るから仕方ないけど。しかも、大きなオマケのアンディもが付いてくる。「16時過ぎか。ちょっと待ってて」シンガポール行きのデスクが近くにあったので、ロッカーの場所を聞く。「みんな、こっち来て。大きなロッカーがあるから、そこにスーツケースを入れるよ」はーい、と返事が聞こえてくる。ガラガラとスーツケースを転がしロ...
アム・マインに着くと、早速ボスに任せる。一番手のかかる小学生ジュンを筆頭に、中学生4人の、計5人だ。案の定、中学生4人は自分たちの行きたい所へと足を向けているが、ボスに任せたからどうするのだろうと見ていた。「こらこら、そこの3人。狭い道は入らない」「でも」「でも、ではない」「全ての道はパースに通じるって言うし」「それ言うなら、ローマだ!」「トモ先生、ガイド向いてない」「私だって遊びたいんだ! なの...
「アンディ、久しぶり。結婚したんだってね。おめでとう」 「ジュンヤ、私は」「私は忙しいんだよ。それじゃ」「ジュン」 「黙れ」いつの間にか冷ややかな眼差しと口調になっているのに気がついてない。「ジュンヤ、私は」 「さっきも言ったように、私は忙しいの」アンディにはそれだけにして、ボスに目を向ける。何かよかならぬ事を考えている節があるのを感じたからだ。「トモ先生、アム・マインだからね」「アム・マインから...
終点のマインツで降りると言ってやる。「アム・マインに行くからね」すると、違う声が割って入ってくる。「ジュンヤ」だけど無視だ。「トモ先生、アム・マインですよ」「ジュンヤ、私を無視するな!」後ろからハグされるが、すんでの所で躱して、そいつと対峙する。まさか、この人に会うとは思ってもいなかった。すると、ボスの声が聞こえてくる。「思い出した! ミラノコレクションでジュンヤのパートナーだったバンジーだ!」ガ...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #13 ジュンヤのひとり言
あれはジェットだからこそできた1泊二日だ。それをリアルで行こうとするのは地獄を見るに等しい行為だ。なにしろミュンヘンからザールまで普通に行けば6時間はかかる。ボンなんて直通はない。最低でも2回は乗り継ぐ。ボンからブレーメンなんて4回くらいかな。ブレーメンからベルリンはハンブルグ経由なら2回の乗り換えで済むが、それでも最低でも四日間はかかる。デンマークの上空も通ったから五日間かな。デンマーク上空から見え...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #12 そして日本へ!
ユウマとカズキの協力を得て、やっとマサとワンを起こすと、ジェットの機体が傾く。学長が知らせてくれる。「あと10分ぐらいで着くよ」マサとワンの言葉が重なる。「どこに?」「日本に。二人ともどこにいたの?」「寝てました」「そっか、疲れたんだね」着地したみたいだ、機体が少し揺れ止まる。「着いたー」帰り着いたのは大学の北側にある管制塔の場所だ。行きは学長の屋敷だったのに、大学内にも管制塔があるとは思ってもみな...
ミュンヘンからザールブリュッセン、ボンにブレーメン。国境線から外に出ることのないジェットはデンマーク半島の上空も通るとベルリンに来た。ワンはオーロラを生で見て、私からのオーロラの写真を受け取ると感激に瞳をうるうるとさせている。ジェット内に目を向けると、7人は謎の行動を取っている。近くにいたタカに声を掛ける。「何をやっているんだ?」「動きたがって、とりあえず動こうということで。ジュンヤもやる?」「し...
シャワーから出ると、すっかりと真っ暗になっていた。声が聞こえてくる。「学長、今はどこを飛んでいるのですか?」「ちょうどデンマーク半島に差し掛かったところだよ」その言葉にワンに言う。「ワン、もう少ししたら北極が見えるよ」「ほんと?」皆のいる場所に向かうと、誰かに声を掛けられる。「なんかスッキリ顔になってない?」「シャワー浴びてきたから」「ワンと一緒に?」「マサも浴びてきたら?」「そうする」しばらくす...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #9 軽く性描写あります!抵抗ある方はスルーしてくだし
数時間後、ジェットは燃料を補給し食材を積み込むと、再度、空に舞った。その頃は薄暗くなっていた。食べたのがチャンコ鍋ということもあり消化のスピードは速いので、軽く運動する。すると、皆も食後の運動と称して体を動かす。2時間ほど経つとワンを相手に合気道をする。「本気は出さない」「なんで」「ここは道場ではないからな」その言葉に納得したのだろう、くすっと笑ってくれる。「OK」そうは言ってもやっていると本気の力...
ボン周辺をぐるりと回るとドイツ北部にジェットは移動する。ブレーメンの音楽隊という曲があるが、そのブレーメンがある場所だ。夏では17度、冬の寒い時では0度あるかないかの過ごしやすい地域だ。学長が色々と話してくれる。降りてみたいと皆は言うが、パスポートを持っていない人がいるので降りれない。カズキがチャーハンを作り、それを食べる。学長が声を掛けてくれる。「ワンのリクエストに応えようと思っているんだ。今日は...
目が覚めて窓に寄るとライン川が見える。ベートーヴェンハウスにボン美術館、ボン周辺に来たみたいだ。反対の窓側からこんな声が聞こえてくる。「へぇ、色んな形の島が見える」「本当だ」学長の声が聞こえてくる。「あの一番大きい島がイギリスだよ」その声に反対側の窓に寄ると思わず見入っていた。「さすがにロンドンブリッジは見えないな」ユウマが近くに寄ってきたみたいだ。「ドーバーまで行かないと見えないだろうな」「ドー...
低速飛行のゆっくりと国境線をなぞるようにジェットは進んでいく。ふいにザールブリュッセンの街並みが見えた。こんな高い位置から見たことがないのでなんだか感慨深いものがある。今はドイツ領に組み込まれているが、ザールブリュッセンはフランスとドイツの数度の戦いで何度かドイツ領になったり、フランス領になったところだ。私は、そのザールブリュッセンの近くにあるクレウツヴァルトで生まれ育ったんだ。ジェットはドイツの...
学長が見せてくれた物は、ウイスキーやブランデーだ。「皆は20歳を超えてるから大丈夫だよね」サトルは嬉しそうな表情だ。「たしかに、それを飲んだら寝れるな」真面目に言い返すのはワンだ。「医者は酒を飲みません」その言葉に皆は口々に言う。「私たちはまだ学生だよ」「学長という後ろ盾がいるし」「その学長が出してくれたんだ」「一口だけでいいから」「ワンは真面目だからな」「そういうことを言うと、私たちは不真面目か?...
体内時間では昼過ぎという感覚だが、窓の向こうは暗闇だ。暗闇の中、シーンと静かに時は過ぎていく。学長の声が聞こえてくる。「日本時間だときついから寝た方が良いよ」その言葉に応じたのはボスだ。「それもそうですね。こんな暗闇だと何も見えないや」「時差があるからね」その言葉に、それもそうかと呟きが聞こえるがスズメはこれだ。「布団なんてないよね」その言葉に学長はタオルケットならあるよと言いながら出してくれる。...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #3 世界史の勉強?
スズメは耳を押さえながらタカに聞く。「タカの声が頭の中に響くぅ。カズキがなんだって?」「ドイツとその近郊の地図という本を持ってるよ」スズメはそんなことかと呟くと、こう応じる。「考えることは同じだな。私なんてドイツ歩きの地図を持ってきた」タカは苦笑している。「スズメもかよ」ジェットはある地点まで来ると、そこで止まってしまいホバリングする。動かないジェットに疑問の声を上げるのはマサだ。「止まった?」学...
数日後、私たち10人は機上の人になった。学長の発した「医者として、また医者の仕事をする」という言葉は無理だ。パスポート持参した6人はジェットから降りることはできるが、4人は降りることができないので自分たちも降りないということを約束した。学長にある提案をしたら、それなら大丈夫と言ってくれたので安心した。まずはドイツへの旅として、何が何でも一番先にサメを地上に降ろす。でないと、提案した企画を実行に移せな...
あれは4年生の12月に入った頃。サメがパスポート更新のためドイツに帰ると言うと、学長がジェットを出すよと返事をしたのがきっかけだ。ただ、それが日本を立つ数日前のことで、「ドイツに行きたい!観光ビザを」という声が皆から出たが、学長の「なくても大丈夫」という返事だった。「なくてもいいんですか?」そんな声を誰かが出していた。学長が応じる。「90日以内だったらね。でも、パスポートはいるよ。持ってる?」その言葉...
大学4年生の冬。福山友明率いる東響大学医学部の10人が、今度はゼミの教授であるサメをドイツに送りがてらに起こす欧州旅行。パスポートを取っていないのが半数近くもいる。欧州旅行はできるのだろうか?はたして、みんなは無事に日本に帰り着くことができるのでしょうか?今回は、滅多に出てこない学長が登場です!そして、ジュンヤ視点の回想話になります。この男子学生はAIに描かせました。金髪と銀髪と黒髪8人の10人だ!って指...
即席の引率先生は黙って行動しようとしている。相手は、あの連中と同じ種類の人間ではないので言ってやる。「トモ先生、どこに行くのか言ってね」その言葉で先頭にいる引率先生は振り向く。「ミュンヘンに」「それダメ」「なんで」文句を言いたそうにしてるので遮ってやる。「そもそも遠回りになるでしょ」「分かった。ザールなんとかに」「ザールなんとかってどこだよ」「なら、ボンに」「No」「ブレーメンに」「Non」「ベルリン...
仕方ないと思い言ってやる。「トモ先生、ドイツ観光は終わっているので、帰るだけだから。21時の便で、19時にはゲートを通りたい」「ゲートを通るまで食事する?」 「そうだな、軽く食事して。あとは土産買う」そう言うと、即席の引率先生は立ち上がる。「OK! それでは皆様、裏道を通って空港に行きますよ」「危ない道は通りません」 「大丈夫だって」「言っておくけど、小学生1人、中学生4人、高校生2人、大学生3人の10人...
駅の広場に着くと、一袋ずつ渡す。中身はバケットサンドと飲物。「ボスの作った物って久しぶりだ」「世話になってるからな」ジュンはボスの隣に座り食べている。「ヒロは?」「寝てる」その言葉で分かった。「寝技で負かされたから、その腹いせに寝さして来たんだろ」「そうとも言う」何か裏がありそうな気がする。「ん? チェックアウトしてから寝さしてきたってことか」「そういうこと。自分のベッドでぐっすりと寝てるよ」なん...
最終日の昼前、ロビーにボスがいる。休みだって言っていたから暇つぶしに来たのだろう。チェックアウトしてロビーにいるボスに声をかける。「どうしたの?」「暇だから」「やっぱり」苦笑していると、こう言ってくる。「ランチまだだろ」「駅地下で食べるつもりだけど」「そう言うと思って持ってきた」「なにを?」「ほい、これ」そう言うと、一袋を手渡される。中を覗くと思わず声が出ていた。「これって」「ランチにどうぞ~」「...
翌日はホテルの一室を借りて、ドイツ語の勉強会だ。3日間、どこでなにをしていたのか。また、何を感じていたのか。それをドイツ語で話す。ドイツ語で話せない場合はフランス語で。しかし、英語で話すとチェックを入れる。こういう場合のジュンヤは厳しい。ジュンは父親と会って遊んだことを話している。牛と馬。乳搾りと馬乗り。どうやら自然を相手にしていたらしい。他の9人もなんとかしてドイツ語とフランス語、たまに英語を入...
「ダディが作ると油っこくないもの」 「そういえば、ジュンのも油っこくなかったな」その2人の言葉でトモアキはため息が出ていた。「仕方ない。ジュン、こうなったらあと1年、スズメを欺け。ただ、あいつはバカじゃない」 「欺くって」「食べたくないんだろ」「うん」「だから欺けって言ってるんだ」「どうやって? 僕の作った料理が忘れられない。あの味を自分の手で作ってみせる。そう言って、1年半だけど。作れないんだよ...
その話を聞いて僕は驚いた。「え、まだ試食続いてるの?」「日替わりでマサと私に持ってくる。一度サトルに持って行くと断られたって言ってた。あそこまでいくとアレだね」 「なるほどアレだな」アレってなんのことかさっぱり分からないので聞いていた。「アレってなに?」 ダディが返事をしてくれる。「ムキになっているってこと。じゃ、このフランス旅行の間は誰が食べているんだ?」「一緒に暮らしているパートナーになるだろ...
レストランに着くと、ジュンヤ先生は1人で食べている。ダディは、ジュンヤ先生に近づいていく。「相席いい?」「他でどうぞ」「久々に合気道やって筋肉痛になってないか」「全然。そっちは鈍りだったから、絶対になるよ」「なぁ、一緒に食おう」「親子でどうぞ」「つれない奴・・・・・・」「4年分の溝を埋め込んで安心させてあげて」「それはするが、ジュンヤにも頼みたい」「なに?」「まず、メシが食いたい」ため息をついていた。「...
ジュンヤは振り返るとギャラリーの多さに驚いた。いつの間に、こんな人数に・・・・・・。ため息をつき、子ども達に声を掛ける。「皆、お帰り。部屋に戻って。明日の12時までフリータイムだよ」「は~い」僕はまだ倒れているダディに近寄った。「ダディ、大丈夫?」「動けない」その言葉に笑っていた。「笑うな」僕は素直に感想を口にしていた。「ヒロは強いけど、ダディも強いんだね」だけど、ダディは無視してくれる。「博人さん、今日...
何がどうなったのか分からない。ジュンヤ先生は吹き飛ばされ床に倒れていた。「鈍っているみたいだから、これは勝てる、と思ったのだけどなぁ・・・・・・」「あまいわ。あの、勝てると自信に満ちた目を見た瞬間に見せた隙を誰が見逃すか」僕は思わず言っていた。「隙なんてあったっけ?」その言葉に誰かが応じてくる。「さあ?」「無かったような気がするけど?」すると、ダディはこんなことを言ってくる。「誰か、私とやってみたい人-...
「なかなかしぶといねえ」「そっちこそ」「おりゃ! もう1蹴り!」「あまいっ」ジュンヤ先生はバク転して躱すと見せかけ、実際には体を後ろに仰け反っただけで、ダディの体を両脚で蹴り上げる。ダディはふらついてる。「っと・・・・・・」皆が口々に思いを呟いてる。「凄いな」「俺たち相手にしてる時とは、まるっきり違う」「パワーが違う」「キレも」「スピードも」「拳も」「相手もやり手だな」「なんかやりたくなってきた」「イキ...
ちょっと早いけどドイツに戻るかとヒロは呟いている。ダディは嬉しそうだ。「ジュンヤ相手に1本しようかな」16時にロシアを発ち、ドイツに着いたのは15時過ぎ。「15時?」「時差だよ。ドイツ時間にする。2時間戻す」「そっか、忘れてた」16時過ぎにホテルに着いたらジュンヤ先生はロビーで寛いていた。「泣きべそかいてたの?」「だって」ダディが口を挟んでくる。「ジュンヤ、1本相手しろ」「何の?」「合気道を教えてるんだって...
ダディはピザを作り直していく。生地を上に投げて広げていく。「すごーい!」5,6回ほど上に投げて広げると、今度はその生地に好きな具を置いていく。「今度は焦がさないでね」「任せなさい! 同じミスはしない」3人で9枚を食べきる。「ジュン、お前……」「なに?」「体重は何キロになった?」「急になにを」「この2日、いや3日間の食べっぷりを見ていると、気になって」「標準だよ」「上に伸びるのは良いんだよ。問題は重さ...
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うちの子紹介のページです。当ブログにお越しいただきありがとうございます。このブログも、先月の6月27日で丸々11年を迎えることができました。本日で11年と16日です。そう、12年目に突入しました~!記念として、うちの子の紹介をさせていただきます。まず、医学部卒業生から。「ボスである福山友明です。ドイツに行って、正式にメスドクとなりました。パースでクリニックを経営していますが、これからはメスドクとしてオペを...
いつもお越しいただきありがとうございます。11周年に突入しての作品です。『挑戦するのに年齢は関係ない』はいかがでしたでしょうか?本当に5年ぶりに登場しました、博人と友明。あれから、本当に5年の月日が経ちました。やっとパースに帰ってきた友明。そして、その息子のジュン。ジュンが信頼を寄せているジュンヤ。この3人がメインの話になりました。各々が、自分のやりたいことを模索しながら生きていく。この5年間、どのよう...
そのタロットをテーブルの上に置き、心の中で占いたいことを呟く。 10枚なんて置けないから、5枚引きにする。過去、現在、近未来に、結果。その結果として出たのは、カップⅣの逆位置。このカードは、腕を組んだ若者が目を閉じていて、カップを持った雲が若者に近づいている絵だ。しかし、正位置では、若者はそのカップに気が付いていない。なにしろ目を閉じているからだ。でも、今、出たのは逆位置。若者は、そのカップに気が付き...
ニューヨーク行きの飛行機に乗る。隣の席は、先ほどの人が既に座っている。「パードン」「ぷ、プリーズ」「サンキュ」離陸後、お決まりのスナックタイムがくる。「ミスター」私はフランス人だ。ドイツ語でもいいが、フランス語で応じる。 「テナチュール(紅茶をストレートで)」国際線のCAらしく、すぐフランス語で応じてくる。「ウィ、ムッシュ(どうぞ)」いよいよ、私の第5人生の始まりだ。どくろマークに、いや違った。マ...
ジュンヤはジュンの未来を知っている。あのいじめっ子と一緒にいるだろう。何度占っても、ジュンの傍にいるのが現れるからだ。ジュン。逃げ場所は一つだけではないよ。新しく作っていくものだ。10年間、私を逃げ場所に指名してくれてありがとう。君の未来に幸あれ。声がかかる。「前、通ります」「どうぞ」通りやすくシートと足の間を開けてやる。その人はたどたどしい英語だけど意味が通じたのが嬉しかったのか、安心顔をしてシー...
ジュンヤとジュンのパース出発日は同じ日だった。ジュンヤは飛行機でシンガポールへ行き、そこからアメリカへ。ジュンはエドのジェットで、庭から直接ドイツのフォン・パトリッシュ家へ。ジュンはジュンヤがどこに行ったのかは知らない。でも、また会えるだろう。そんな気がする。鞄の中にはジュンヤ先生から貰った2通の手紙が入っている。手紙とはいえ、サークルの皆と同じものだ。「2年後、自分はいなくなるだろう。自分の可能...
ジュンヤは机上勉強ならどんとこいの執念で合格した。実技及び研修先は、あの人が迎えてくれたので安心してアメリカに発てる。そのジュンヤに、一緒に暮らしているAは言いにくそうだ。「A、今までありがとう。待たなくていいからね」「あのさ……」「なに? 思い切って言ってみて」「アンディなんだけど」その名前に気持ちはグラつく。「う、うん……」「バツイチだって知ってた?」「知らない」「一緒になっても怒らない?」「Aはア...
何かを挑戦するのに、きっかけはなんでもいい。ただ、必要なのは、やる気ではなく、行動することだ。その行動力で、3人は自分の道を決めていく。友明は5年間という年月をかけて、再びメスドクに。ジュンは勇気を持つことができ、目出度くトニーから逃れることができた。そして、ジュンヤは自分の気持ちに気が付く。それから、2年後。ジュンはものの見事にドイツの高校の留学テストに受かった。住む所は、待ち人が住んでいる所。...
一方、ジュンに体当たりを食らい倒れこんでしまったトニーは呆然としていた。負けたのがショックだからではない。その後のジュンの行動だった。「うるさい、黙れ。黙って言うことを聞いてればいいんだよ」そう言うとキスされた。できるなら、抱きしめたかったのだが、すでにジュンは走り去っていた。柔らかかったジュンの唇。自分の唇に指をあてなぞる。「ジュン……」虐めないでと約束をさせられたが、俺はお前を追いかけるからな。...
途端にトニーは黙ってしまった。あれ、ほっぺたってこんなにも柔らかかったっけ。なんかグニュグニュしてるし。恐る恐る目を開けると、トニーの驚いた眼があった。まさか、これはほっぺたでなく、トニーの……、く、ち?思わず走っていた。やっちゃった。やっちゃった、やっちゃったよ。ほっぺたにするつもりが、口にしてしまった。うー……。でも、口って、あんなにも柔らかいんだね。トニーも驚いていたし。僕も驚いて走って逃げてし...
「ハッ!」「なんの」「トウッ!」「へぇ、本当に合気道やってるみたいだな」全然、当たらないし、掠りもしない。しかも、トニーも合気道ができるみたいだ。「くそぉ……」「おら、どうした。かかってこい!」こうなると、アレしかない。「これは喧嘩じゃないからなっ」「分かってらあ」1年前のドイツで、ヒロがダディを負かした。あの時に見たアレをトニーにする。低くかがむと、トニーめがけてタックルしてやる。「ってやー」しか...
ジュンヤ先生に言われ納得したジュンは、意気揚々と夏休みを過ごす。そんなジュンに、今日もトニーは振り向かせようと手を企てている。バッタリと出会い、目がかち合う。「トニー……」「いい所で会ったな」しかし、逃げ腰になってしまうのは条件反射だ。回れ右して走ると、向こうも走って追いかけてくる。あの時、皆はなんて言ってたっけ?ほっぺたにキス。ハグする。えーと、それから、それから……と頭の中が真っ白になる。そんなこ...
全く歯が立たずに、僕は聞いていた。「いじめっ子に勝つにはどうすればいいですか?」「喧嘩ではなく、言い含める言い方にするとか、相手にしないとかかな」誰かの声が聞こえてくる。「キスしたら黙るよ」「いじめっ子は男の子なんだけど」「だから効果てきめんだよ」「そうなの?」「ほっぺたにキスをすると大丈夫」「ほっぺたかあ。なるほどね」「うん、いじめは止まるな」「たしかに、止まりそうかも……」いや、本当に止まるのか...
大学のドイツ語の講師として働くことが決まったと、ジュンヤ先生に話している。フランスとドイツ旅行に行ったことを卒業論文にして提出したら、雇ってくれたらしい。ジュンヤ先生に話しているのを見ていると、羨ましかった。「おめでとう、良かったね」「フランスとドイツに行けたからです。ジュンヤ先生、ありがとう」「君が行きたいと思って行動したからだよ。礼を言うのなら、君自身にだよ」「大学に、ここの語学サークルのこと...
当の本人に聞けばいいのだけれど、どのように聞けばいいのか分からない。あれから1年経っても、まだ残像は残っている。ジュンヤ先生は、あの人とキスをしていた。覗いてはいけなかったかもしれない。でも、真後ろだったから気になって見てしまったんだ。他の大学生と高校生の2人も一緒になって、3人で上から覗いていた。見終わると、その2人はトイレに行ってしまった。僕はどうすることもできなかった。2人はトイレから戻ってくる...
ジュンはダディである友明に同じことを聞いている。途端にトモは怒り出す。「なんで、そういうことを聞くの!」「どんなものなのかなと思って」「ジュンは女の子と結婚するんだろ」「そうだよ。マミィのような可愛い女の子とするんだよ」「それなら、そんなことは知らなくてもいいことだろ」「そうなんだけど……」「なんだよ、モジモジして」そこでハッと気が付いたのか、こんなことを言う。「お前、女の子でなく男の方が好きなのか...
ジュンの言葉。「男同士でキスするのは、気持ちいいの?」あまりにもストレートな言葉にショックで言葉が出なかった。やっと頭が動き、言葉が出てくる。「よくテレビで見るハグして頬にする、あれは挨拶だよ」「ほっぺたでなく、ここだよ。口なの」そう言って、自分の口に指を置く。その仕草に、これはどこかで男同士のを見たなと気が付くと言っていた。「ジュンは男相手に、そこにキスをしたいのか?」「え? い、いや、どんなも...
ヒロは頭を優しくポンポンと叩いてくれると、ハグしてくれる。だから、この言葉を添えてハグをし返す。「ありがとう」ヒロにハグをされたまま聞いていた。「ねえ、ヒロ」「ん?」「あのね、僕、ずっと考えていたのだけど分からなくて。聞いても良いかな?」「何? 言ってごらん」その優しい口調と言葉に勇気を貰い、聞いていた。「男同士でキスするのは、気持ちいいの?」すると、ヒロは黙ってしまった。優しく頭や肩を叩いてくれ...
夕食は豪華にケーキ付きだ。しかも、Happy Birthday to Jun!と付けてある。「ダディ……」「遅くなったけど」「ううん、嬉しい」「で、誕生日プレゼントだよ」「ありがと!」開けて見ると、セーターとジャンバーだ。「カッコいい」着てみると手障り良くて暖かい。「あったかいや」「少し大きいな。でも、そのほうが長く着れる」「ダディ、ありがとう」ヒロは、これだ。「トモが編んだ物だ」「いつ?」「博人さん!」「何が良いのか...
ダディはこんなことを言ってくる。「一人分も二人分も変わらんからな」「ダディはどうする?」 「作れ」「は~い」朝の楽しみが増えたと思っていたら、ダディはこんなことも言ってくる。「今日の夕食は私が作るからゆっくりしてろ」「嬉しい。なら、昼寝するね」「それはダメ」「なんで? ダディだって」「食べて、すぐ寝るのは太る元だぞ」「太ってないけど?」「いいか、食べてすぐ横になったり、寝るのはダメだ。食べたものが...
キッチンも掃除が終わり一息ついた頃、社長が食堂へやってきた。「お疲れ。皆には迷惑かけたね」バイト料を一人ずつ手渡してくれる。ありがとうございましたとお礼を言って、奥の和室に入る。布団は、いつの間にか押し入れに畳み込まれていた。現金でもらい、皆の懐と表情は明るい。荷物を持ち、21人の集団は関内駅へと向かう。駅前には2台のロールスロイスが停まっている。医学部のサトルとユタカは、その2台に近づく。「お迎え...
翌日はアルバイト最終日だ。ワンから買い物リストをもらい、買い物をして帰ってくると人数が増えている。「なんで2人がいるの?」「有志だから」「いつも2人でいるんだね。なんか羨ましいな」「いや、そうい」「新田、こいつはここで彼女をゲットしてるんだぞ。どう思う?」高橋は叫ぶ。「カイド―!」その叫びに対し海堂は両手をグーにしてガッツポーズする。「GO!」新田は驚いている。「彼女って……」「2階の女性スタッフ。片...
こちらは経済5人と松井の嫁。「ほら、これで食べるからな。欲しくない奴は食べなくていい」「新田、そういう言い方はよせ」「私は自分の気持ちをこの3人に話した。あとはお前たちの出方次第だ」そう言うと、餅をまな板に置くと包丁で切っていく。「おお、スパスパと切れる。やっぱり包丁で切る方が早いな」大変な思いをして餅を割った昼間を思い出すと、水でふやけさせた餅を切る方が効率がよいと気づく。「焼くか、煮るか。どっち...
教育学5人はスタンダードに餅を焼く。焼きノリがあるので、それをぐるぐる巻きにして醤油を付けて食べる。「美味いっ」「2つだなんて取りすぎたかなと思ったけど、食べきったな」「あー、満腹」「満足だ」もう一つ声が足りない事に気が付く。「高橋は?」「そういえば、どこ行ったんだろう」ジャジャジャジャーンッと効果音が聞こえてくると高橋が何かを持ってきた。「高橋、どこに」「これ見て」そう言って、持ってきた物を4人に...
サトルはタカに言う。「餅は夕食に食べるって」「何個?」「3個」3個をサトルに手渡す。すると、新田と海堂も言ってくる。「こっちにも2つ」「だって、さっき3個」だが新田は強気だ。「10人で3つだよと言ってるんだから。経済は2つ」同じく海堂も強気に出る。「教育も2つ。夕食まで時間あるから水に浸しておこうかな」その言葉に新田はすかさず応じる。「それ、いい考え。包丁で切りやすくなってるかもね」サトルはボスに聞...
キッチンに入ると、ボスは包丁の柄の部分を握り持っている。「ボス、今の音はなに?」「餅が割れた音」「は?」餅ではなく、どこかの台を壊したのではないかとキッチン台を見ていく。そんなサトルに声をかける。「乾燥しきってないからレンジで30分焼いたらパリパリになって、包丁のこの部分で叩き割っただけ」だけどサトルは目ざとく見つける。「ググっていたのか」「バレたか」サトルと一緒にキッチンに入ってきた新田はこう言う...
新田と海堂とタカとワンの4人は餅を割っていく。が、3分もしないうちにお手上げ状態だ。「らちが明かない」「時短できないかなあ」「パッカーンって割りたいね」タカは、その3人に言ってやる。「レンガみたいに固くなっていれば割れるけど、そこまで固くないから無理」3人は考え込むと、ワンは何かがひらめいたみたいだ。そんなワンの表情に気づいたタカは、ワンに声をかける。「何を思いついた?」「工具でやればどうだろう?...
皆が具材をカットし終えると、タカは新田と海堂を伴って上がってきた。「重かったー」その言葉に、サトルは聞く。「なにをそんなに持ってきたんだ?」「はい、これ」そう言ってタカはビニール袋を差し出すので、サトルは中を見ると言っていた。「お前ね、限度というものを知らないのか?」「雑煮を作るって言ったら、皆が入れるんだよ」そう言うと、新田と海堂の方を指さす。「餅を貰った。あの2人に手伝ってもらったんだ」その餅...
翌日の1月1日は、経済6人は1階、教育5人は2階、医学部5人は2階、残り5人は3階食堂に分かれる。「今日は何人だって?」「100人越え」「最高人数だな」「買い物……。店、開いてるかな」「そういう場合は」皆して拝む。「サトル様」「やめろ。そういうのは、ここ横浜では効かないから」「都内だけか……」皆は色々とメニューを口にするが、それをヒントにタカはあるメニューを口にする。「雑煮は? ここ魚屋だからアラや骨は十分に...
その夜、医学部の10人の夕食はサトル持参のプロテインとジュンヤ持参のゆで卵、残り物の野菜で簡単に作った野菜炒め、味噌汁だ。それらを和室で食べながら、ユタカが勝手に取り付けた盗聴器を聞いていた。ボスは考え込む。「うーん、こうなるとはな」スズメはこれだ。「そっかあ、あの金魚の糞はそう思っていたのか。ってことは、年上か」サトルは簡潔だ。「二浪したのか」マサは素直に気持ちを口にしていた。「経済を一発合格した...
コンシェルジュを2時間もやっていると薄暗くなってくる。客足も途絶え気味になってきたのでジュンヤも店内に入り模様替えを手伝う。「明日もしますか?」「いや。明日は正月用に海鮮と寿司と造りの販売だけ」チーフは声をかけてくる。「専務、その量ですが……」「なんだ、歯切れ悪いな」「実はお造り384と、寿司が248入っています……」「えらく多いな。ジュンヤ様効果か?」「それもありますが、解体ショーの時の注文で、130ずつ。今...
一方、こちらは1階に下りたジュンヤは一人だけ店先に設置されたブースにいた。当然のことながら黄色い声援付きだ。離れている店内にまで、それが聞こえてくる。「うーむ、離しているとはいえジュンヤ様ビームは凄いな」「余波がここまで響いてくる……」「あの時は何が起きたのか分からなかったが、これか……」「彼一人で大丈夫かな」「店内に誘導してとは言ったけど。あ、でも大丈夫そうだ」数人が入ってくる。「いらっしゃいませ」...
洗面スペースに寄り顔を洗うとキッチンに出る。「代わるよ。お疲れ様ー」「お疲れ。話し合い、終わった?」「うん、終わった」松井は聞いていた。「新田、あの3人は」「今はパス! ほら、来るよ」途端に、威勢よくドアが開く。「お疲れ様ですー」「お疲れ様。一人一皿ね」「はーい! お、ハンバーグだ」「こっちのスープ美味しそう」「ご馳走様でした」「このサラダ、ビールが欲しくなりそうだ」「松井、グラス足りないから先に...
たったそれだけの事なのに、桑田は目くじらを立てる。松井は、桑田の怒りを収めようと声をかける。「お前の気持ちも分かるが、我慢しろ。それにやることは」「松井はあんなことを言われて悔しくないのか。腹立たないのか」「なんの事だ? さっきのは単なる社交辞令だろ」「どこがだ」新田は我慢していた。「今は仕事中だ。怒りは夜まで待ってろ」元宗も言ってくる。「新田はいいよな」宮田はこれだ。「そうそう。自分だけ良いよう...
13時前にはドドンッとやってくる。食洗器をフル稼働させながら、3人は焼いたりサラダを盛ったり、食器類を取り出したりしていく。「そろそろ、こっちを出すかな」ユウマは呟くと鍋を持ち表に出る。ガラッとドアが開き、声が聞こえてくる。「お疲れ様です」「お疲、あ、サトル」「大変だった?」「これからが一番大変だと思う」「食べたのか?」「3人とも食べたよ。あと、経済との関係が悪くなってる。アフターよろしく」「仕方ない...
12時になったが誰も来ないので3人は一番乗りで食べる。「たまにはいいな」「ゆっくり気分で食べれるだなんて久しぶりだな」「出来立て美味しい。あのきゅうりがこうなるとは思いもしなかったな」2人の声は重なる。「見事に酒の肴だ」「たく、二人そろって」「いい味出してるよ」 「それはありがとう」12時半を過ぎると5人が入ってくる。「お疲れ様です」「お疲れ様」「ハンバーグだ!」「嬉しい、2個もある」「1つがドンとあ...
3人そろって20分後にはハンバーグのタネだけでなく、サラダのきゅうりとスープの材料もカットし終わる。「味はコンソメでいいかな?」「任せる」ピーと音が鳴る。「何の音?」「米が炊けた音だな。サラダはレタスではなくキャベツか。千切りにでもするか」「赤みがないな」「スープに人参入れるから大丈夫」「カレーの時に買った人参か」「誰かさんが大量に買ったから」「タカだろ」ユウマは手際よく米をジャーに移していく。「う...
2階からはマサとユウマの2人が飛んできた。「ジュンヤが喚き散らしてるって言ってたけど」「まるっきりキレてないし。これの、どこが怒り飛ばしてるって言うんだ?」紐で床を打ち、言ってやる。「包丁を持てないのが3人いる。そんな奴らはハンバーグとサラダと味噌汁だ」「それなら、包丁は1人か2人にさせればいいのでは?」「見てみろ、これはきゅうりみたいだぞ」そう言ってまな板を指すと、2人は唖然としている。「え?」「そ...
ジュンヤは3階で王様になっていた。昨日まではずっと2階だったので、しばらく6人の動きを見ていた。耐えられなくなり、床を叩くと6人がビクッと体を震わす。「この音に反応してどうする」「助っ人に来たんだろう。何してるんだよ」そんな声を無視してやる。「昨日も、ここでやってたんだろう。にしては動きが鈍いな」「昨日は……、教育から3人来たから」「誰?」3人の名前を教えてくれたので、共通点を見つけた。「なるほど、バ...
「助っ人が欲しいです」 その声に専務はこう言う。「金髪君、3階を手伝って」 「私が、ですか?」金髪ジュンヤは驚きの声を出していたが、専務は一言だ。「その方が昼食を取りやすいだろう」確かにと思い、はいと返事をする。カズキは荷造り紐をジュンヤに渡す。 「これ渡しとく」「効果は?」「微妙?」 専務の声は続いている。「残りは2階だ。チーフ、今日はどれぐらいだ?」「お造りは127で、寿司は250です」 「えらく多...