「ん-……、ぐっすり寝たぁ」「やっぱり、ずっと海の上だと体に悪いな」「そうだね。せめて2週間までだね」朝食を食べ終えて宿を出ると露店で昼食用に食料を買い込むと、ジュンに連絡を入れる。ツーコールで出てきた。『ダディ!』「夕食は何だ?」『何が良い?』「フルコース」『じゃあ、買い物に行く』「先に、皆に土産を私に行くから遅くなるけど」途端に声に元気がなくなる。『夕食までには帰ってこれない?』「遅くても17時過...
オリジナルBL&MLを毎週月・水・金の夜21時に更新!※アスリートCP/医者CP/リーマンCP/学生CP/短編も有ります。
妄想&空想が好きです(*≧m≦*) 浸るのも大好きです。 プロフのイラストは自動生成AIに描いてもらいました。 オリジナルでBL小説を書いてます。 他のジャンルも多少あります。 性的表現がございますので、苦手な方はご遠慮ください。
「ん-……、ぐっすり寝たぁ」「やっぱり、ずっと海の上だと体に悪いな」「そうだね。せめて2週間までだね」朝食を食べ終えて宿を出ると露店で昼食用に食料を買い込むと、ジュンに連絡を入れる。ツーコールで出てきた。『ダディ!』「夕食は何だ?」『何が良い?』「フルコース」『じゃあ、買い物に行く』「先に、皆に土産を私に行くから遅くなるけど」途端に声に元気がなくなる。『夕食までには帰ってこれない?』「遅くても17時過...
ここオーストラリアには無数の無人島があるが、宿のある島もいくつかある。そのうちの一つにクルーザーを停め、大地に足をつける。途端、足がぐらつく。「大丈夫か?」「なんかグラついたような、地震か?」「ずっと海の上だったから、今日はここで慣らしておく方がいいかもな」「さむぃー」「食事つきの宿だ。メニューに文句つけるなよ」「そっちこそ、言わないように」その島の住人は寒くても活気がある。露店だが、あるお店を見...
2日後、友明は自分で作った外套を身に付ける。「あったか~」「よく、こんなのを作れたな」「これで颯爽と歩けばモデルになれるかな」「無理」「キッパリ言わなくてもいいでしょ」「モデルというのは長身でバランスのとれた均整をしている体格の持ち主だ」「分かってるよ」なにしろ、トップモデルがいるのだから。「友みたいに寸胴体型だと」「言うな」「絶対にモデルは向いてない」「分かってるって言ってるだろ」友明は毛糸を1...
一方、博人と友明は南太平洋の海上を進んでいる。「寒いぃー」「ここまで寒いとは思わなかったな」「コートまで送ってしまった。羽織る物がなーい」「どこかで買うか?」「そうする。シンガポールに着けて。そこで」だが、博人は遮る。「シンガポールは夏だ。冬物は売ってない。それに、南アメリカ半島を回ったところだ」友明は寒さに呻っている。「まったく、冬になることが分かって冬服をスーツケースに入れたくせに」「そういう...
「戻って、くるって。本当か……」「1週間後にな」「1週間……」ユタカの呟きはスズメの耳には届かない。スズメは叫ぶことしかできないでいる。「ジュン、頼むから食べてくれよ-」本当に、こいつは煩いなと思いながら聞いていた。「ジュンは何を食べているんだ?」「自分で作って食べてる」「作れるならいいのでは?」「ユタカまで、それ言うか」ユタカは、こいつとは話にならないと思い立ち上がろうとした瞬間、スズメの表情が目に飛...
そして、中華店では今日も店長は項垂れる。「あー、やばい、やばいよぉ……」ボスからパース到着予定日のメールが着たのだ。どうしよう。正直に話すか。いや、話したら何か言われそうだ。でも、マサからも話しを聞くだろうな。ジュンヤは別にいいのだけど、と思うと、もう1人いることに気がつく。トモヤだ。絶対に、あいつと会う。そうしたら、あいつはジュンのことを持ち出す。いつも母屋のドア前に置かれている食事トレイに、防犯...
フランス・ドイツ旅行から帰ってきて、1年経った。トニーのちょっかいを躱しながら、スズメの料理は手を付けずに自分の食べたい物を作って食べている。そんなある日、大きな荷物が4つも届いた。送り主はダディとヒロだ。そのうちの一つに”手紙有り”という文字が見えたので、それを開き見る。真っ先に目に入った言葉は、これ。「帰国日が決まった」思わず声が出ていた。「やったー!」手紙を読んでいく。ふんふん、荷物は部屋に置...
「まあ、その為に必死になって勉強してたからな」友明は、博人の呟きは聞こえていないのだろう。「情熱のスペイン! 私がスペイン語を専攻したのは憧れだったからなんだ」「スペインのなにが?」その言葉に友明は目が一瞬光る。「スペインと言えば、海! 海賊になりたいという気持ちがあったから」その言葉に博人は納得する。「友も男だな」「だろ」「マザコンだけではなかったというわけだ」「マザコンじゃないって、言ってるだ...
あれから5年。仮が取れ、正式に医師免許を取得した友明は博人と共に帰国する。日本ではない、オーストラリアのパースだ。ジュンヤにも話したが、机上勉強はドンとこいなので2年スキップして、2年間で卒業した。その後、大学病院で専科決めの研修だ。必死で勉強した友明はルンルンな表情だ。シンガポールでは皮膚科だったが、ここドイツで再出発し再びメスドクになった。そんな友明に博人は感嘆していた。「よく頑張ったなあ」「...
翌日、GPボスにも土産を渡したいので、イヨンに別れを告げ家に帰る。途中、いじめっ子トニーの姿を見かけてしまい、隠れていた。「なんで、こういう所にいるかねぇ・・・・・・」違う道を通って家に帰る。リビングに干していた大量の洗濯物は乾いている。片付けることはしないのだが、全部が半袖なので仕方ない。見るからに寒そうなので片付けることにした。買物もして帰ってきたし、畑作業をしよう。どれぐらい畑にいたのだろう。声が掛...
「うわぁ!」マサは説明してくる。「シャープペンシルとボールペンはよく使うと思う。それに、こっちは万年筆と言って、社会人になったら必要になるよ」「なんだか、大人になった気分」「使ってくれると嬉しい」「ありがとう、マサ。こんなお土産だと釣り合わないね」「ううん、そんなことないよ。ジュンの気持ちが詰まっているから、大事に着させて貰うから。それに、このエッフェル塔はチョコレートを食べても飾り物になるからね...
マサはダディからの土産を開けると驚いている。「何だったの?」「これだよ」そう言って見せてくれたけれど、分からなかった。マサは分かるのか教えてくれた。「これはドイツよりスペインだな」「スペイン?」「イベリコ豚だよ。今日の夕食は、これを食べよう」「いいの?」「美味しいよ」「食べたことあるの?」「ないけど、スペインのイベリコ豚は美味しいと評判だからね」夕食は、そのイベリコ豚をスライスしてくれた。「美味し...
「ジュン、お帰り」「ただいまー」「迎えにいけなくてごめんね」「いいよ、気にしてないから」そう言うと、はいと言って土産を渡す。「ありがとう」「どういたしまして」「2つ、いや、3つあるよ」「フランスとドイツで買ったの。もう一つはダディからのだよ」マサは嬉しそうだ。「ジュンからの土産なんて楽しみだな。なんだろう」「ダディのも楽しみでしょ?」「なんとなく分かるから。でも、楽しみなのかな」マサは僕が買ったの...
パースに着くと、まっさきにマサにメッセージを入れる。返信の中身を見ると、昼過ぎならいいよとのことだ。昼過ぎということは洗濯して昼ご飯食べて行く事になる。とりあえず洗濯をしよう。ダディとヒロにハグされ、とっても楽しかった旅行。あと1年。スズメを、あと1年振り回せと言われたがどうやればいいのだろう。マサに聞いてみよう。ご飯はどうしようと思いながらキッチンに行く。何も買わずに帰ってきたから何もないや。パ...
「今回、フランスに行った時、オフィスに寄って飛び入りで仕事をしたのだけど、ドイツでボスと再会して合気道した。あれで、自分の考えがパーになった。やっぱり、私は自分のやりたいことを全うしたいって思うようになった」「モデルに戻るのか?」「戻らないよ」「催眠術師になるのか?」「癒しの心療だ!」「あそこのクリニックか?」「違う。勉強する場所はアテがある。でも、あの人が迎えてくれるかどうかは話をしてみないと分...
そのAは話しかけてくる。「で、これらを引っ張り出してどうする気だ?」「逃げない事に決めた」「そっか」「ねぇ、アンドリュー」Aは、その名前にビクつき逃げ腰になっている。「逃げないで、アンドリュー」アンドリューという名前に抵抗があるAはジュンヤの腕から逃げようともがいているが、ジュンヤは逃がさない。アンドリューの首根っこを捕まえている。すでに、学生時代の感覚に戻っている。「私は日本には帰らない。それは、...
パースに着き、家に帰ると倉庫に入る。部屋に戻らない私の後をAはついてくる。勉強好きのボスに触発され、しかも語学で博人先生に負けを認めさせた私はドクターバッグを取り出す。「ジュンヤ?」「ごめん。あっちでボスに会って。使わないだろうと思って奥に突っ込んでいたのに」「いいよ。元々は俺だけの夢だったから」ドクターバッグを眺めながら呟く。「でも、オペはしない」「しないではなく、メスで切れない、だろう」Aを見て...
走り出した私の後ろをゴロゴロとスーツケースを転がす音が追いかけてくる。「歩くと言ったのに」「ジュンヤ先生、走らないでー」「坂道で下りなのにー」「あー、荷物が勝手にどっかに行くー」「自分の荷物はしっかり持ってろ」「僕の荷物―」「荷物の方が軽いのか」「そういえば、フェリー乗り場まで下り坂だ」「行きはシャトルバスだったような」「帰りもシャトルバスにすれば良かったかも」皆の声を背に、私は走りAにハグしていた...
無事にシンガポールに着いた。さあ、パースは目の前だ。「みんな、歩くよ。迷子にならないように大学生3人、しっかり見るんだよ」「はい」腕を摑まれる気配がするので身を翻す。なんか、こればかりだな。「アンディ・・・・・・」「ジュンヤ、私はシンガポールで暮らしている」それ以上、声を聞きたくない。アンディの声に、被せる。「アンディ、さよなら。お幸せに」一夜の思い出だけでいい。そう思うと声を出す。「さ、歩くよ-」「は...
途端に悲鳴が上がる。「キャー!!」「ねえ、あそこー」「見てみて-」「闇の帝王と光の帝王がいるー!」「あ、ほんとだー」「嬉しい。写真に撮る」私達の事を知っている人がいるみたいだ。こんな至近距離でキャーキャー言われるのは初めてだ。左から右へと流すことができずに、両耳を押さえていた。同じく両耳を押さえながらアンディはこんな事を言ってくる。「フラッシュライト浴びたい?」それは、私を盾にして自分は撮られない...
どれぐらい寝ていたのだろう。誰かに起こされる。「なに?」「アナウンス流れたぞ。今、食事を配っている」その言葉で目が覚めた。「やば、顔洗ってこよう」洗面所に行き、鏡を覗く。まだ半分寝ているみたいだ、でも、あと少しでパースだ。最終仕事が残っている。そう思い顔を洗うと、頬を叩き渇を入れる。戻ってくると、CAのお姉さんは2つ前のシートに配っている。間に合ったみたいだ。シートに座ると、1つ前に配っている。聞き耳...
挑戦するのに年齢は関係ない #84 R18!性描写あります。抵抗ある方はスルーしてください
「濃いな」そう言うと、ペロリと口の周りを舐め取る。その舌で、もっと舐めて欲しい。「ジュンヤ?」何も言えない。だから腕を伸ばす。「どした?」「・・・・・・いて」アンディは顔を近づけると、囁き声で聞いてくる。「なに?」「抱きしめて」その言葉に驚いた顔を見せたが、すぐに優しい目になった。「まだ時間はある。ゆっくりおやすみ」「アンディ・・・・・・」頭を撫でられ、Tシャツとスラックスも着せてくれる。「ほら、おいで」腕を...
挑戦するのに年齢は関係ない #83 R18性描写あります。抵抗ある方はスルーしてください
キスされる。すると、アンディの手の動きが激しくなる。何も言えない。頭の中は朦朧としてくる。アンディ。あなたは、私を求めてくれるの?でも、それ以上はやめて。Aに抱かれてないことがバレる。息ができないし、頭の中では何も考えたくない。このままアンディを感じていたい。だめだ、勝手に体が動きだす。アンディに、もっと触られたい。気持ちいい。なにか生暖かいものを感じる。そう思い見ると、アンディは私のモノを舐めて...
挑戦するのに年齢は関係ない #82 飛行機の中で・・・性描写あります?
息が苦しい。なに、これ。いったい、何が起きているのだろう。目を開けると、霞がかっているようで分からない。何かを感じるのは下だ。下。いや、口の中だ。意識が、目が完全に起きた。アンディがこっちを見ている。まさか、キスをされているのか。アンディの貪るような舌使い。息ができない。アンディの顔が離れ、同時にTシャツを捲られる。「んっ」「声、我慢してろ」「アン・・・・・・」「お前が欲しいんだ」「ディ・・・・・・」アンディ...
寝ているアンディに囁きかける。「アンディ。皆は、あなたが好きだったんだよ。誰もあなたを嫌っていなかった。辞めたのはもっと違う意味だよ。私が辞めたのは年齢がギリギリだったからね。もう、あの道は歩けない」アンディの手の温もりは温かい。「アンディ。あなたは私の事を知らなすぎる。うわべしか見ない奴はゴメンだ。Aは、会って直ぐに私の奥に触れてきた。Aはボスと同じ人間で、あなたとは違う。本当は、ずっと一緒に居た...
もしかしたらアンディは寂しかったのかもしれない。皆が1人、また1人と辞めていったから。知っているモデルは私だけになり、私も引退したから、なお一層寂しかったのかもしれない。毛布の下でアンディは一層、手の動きを激しくしてくる。久しぶりのアンディ。本当はもっと触れて欲しいが、飛行機の中だ。ふいに思い当たった。「アンディ。あなたは、皆が自分のことを嫌って辞めたと、思っているの?」 「違うのか?」やっぱりと...
「相変わらず意地悪な奴だな」分かっている。ボスと博人先生。あの2人と会って、自分の感覚が学生時代の頃に戻ってきている。だから言える。「アンディ。私は逃げも隠れもしない。この10人を無事に連れて帰るのは、私の役目だ」意味が通じたのだろう。「キスだけでも」ふ、と微笑を見せるとアンディは身をかがませ、キスをしてこようとする。目を瞑ると唇に触れてくる。3秒待ち、拳と膝で急所に食らわすつもりでいた。が、それを...
手を握り返しながら言ってやる。「結婚したんでしょ? モデルから遠ざかって何年経ったの? 遠ざかると、そんな野暮ったい服を着るようになるんだね」 「君は相変わらず冷たいな。噂ではAと一緒に暮らしているとの話だが」「噂になっているのか」「本当なのか?」「引退と同時に、一緒に活動しているから。でも、私は後悔なんてしていないよ」「あいつと寝たのか?」その言葉に、ふふ・・・・・・と笑みが出る。「逃がした獲物は大き...
挑戦するのに年齢は関係ない #77 帰国便の隣シートは元カレ
2人に見守られ、ゲートを通る。ジュンは泣きべそから一転して、笑顔になった。色々とあったけど、無事に飛行機に乗れて良かったよ。7人掛けと3人掛けのシートを陣取り1列に10人が並ぶ。私のシートは1人だけと喜んでいたら、右隣のシートにはアンディが既に座っていた。前の座席はジュンが大学生と高校生の2人に挟まれ座っている。声が聞こえてくる。「ジュン、もう少ししたら軽食がくるから、起きてて」「また食べるの?」「夕...
ここまで言われると、言わざるを得ないではないか。観念して言うことにする。「祖母がスペイン人だったから、8年間滞在していて。その間にポルトガル語、スペイン語、ロシア語、フランス語、ドイツ語、英語を学んで、日本では中国語と日本語を勉強した。大学での専攻はロシア語」その人は額に手を置きため息をついている。しかも、この言葉。「負けた・・・・・・」それを聞いて、勝った、と口から出ていた。思わずガッツポーズをしてい...
勉強方法と言っても、そんなたいしたことじゃないけど。と、ブツブツ呟いていたら弟2人に教えていた頃を思い出す。「現地に行って、無理にでもドイツ語を話す」「他の勉強方法は?」考え込んでいた。今度は大学生の1人にも聞かれる。「どうしてドイツ語を習おうと思ったのですか?」ここまで言われるとあやふやにはできない。「小さい頃はフランスに8年間いたからね」「フランス?」 「そう、ドイツとフランスの国境近くになる...
今なら言える。だから、ジュンヤ先生との話が終わるのを待っていた。「ダディ」「ジュン、私は」「思いっきりハグして」その言葉にダディはハグしてくれた。「1年分、思いっきりハグして」「背は伸びても、中身はまだ子どもだからな」「そうだよ。来月、やっと中学生になるんだからね」「小学校卒業と中学校入学おめでとう」「ありがとう」ダディの温もりを感じる。「もう、あんな子どもみたいなことは言わないから」「ジュン」「...
19時を過ぎるとゲートを通れた。夕食まで色々と見て回ったらしく土産袋がパンパンに膨らんでいる子もいる。皆で夕食を食べ終わり、最後にボスとヒロト先生を含めた写真を撮って貰う。写真はすべてSDに入れているので、機内で見るのが楽しみだ。ジュンはマサとGPボスに土産を渡したいらしく、土産を買ったみたいだ。ボスと談笑していた。「疲れたけど楽しかったよ」「それは良かった」「ガイド役はもうやらないからな」「あわないと...
「あ、来た。ヒロ先生が来ましたよ~」「なんだよ、その先生って」「3グループあるから、そのグループのお目付役だよ」ジュンヤは即席の引率先生に言っていた。「トモ先生の行動が怪しいので、できれば2グループを一緒に見て頂きたいのです」「あいつ、何かやったのか?」「子ども達と一緒にはしゃいでて」その人は納得したみたいだ。「この4年間、ずっと勉強一筋だったからな。息抜きを見つけたのか」そう言われると何も言えな...
アム・マインから空港までは電車で5分だけど、歩きだったから1時間かかった。あっちこっちと小道に入るから仕方ないけど。しかも、大きなオマケのアンディもが付いてくる。「16時過ぎか。ちょっと待ってて」シンガポール行きのデスクが近くにあったので、ロッカーの場所を聞く。「みんな、こっち来て。大きなロッカーがあるから、そこにスーツケースを入れるよ」はーい、と返事が聞こえてくる。ガラガラとスーツケースを転がしロ...
アム・マインに着くと、早速ボスに任せる。一番手のかかる小学生ジュンを筆頭に、中学生4人の、計5人だ。案の定、中学生4人は自分たちの行きたい所へと足を向けているが、ボスに任せたからどうするのだろうと見ていた。「こらこら、そこの3人。狭い道は入らない」「でも」「でも、ではない」「全ての道はパースに通じるって言うし」「それ言うなら、ローマだ!」「トモ先生、ガイド向いてない」「私だって遊びたいんだ! なの...
「アンディ、久しぶり。結婚したんだってね。おめでとう」 「ジュンヤ、私は」「私は忙しいんだよ。それじゃ」「ジュン」 「黙れ」いつの間にか冷ややかな眼差しと口調になっているのに気がついてない。「ジュンヤ、私は」 「さっきも言ったように、私は忙しいの」アンディにはそれだけにして、ボスに目を向ける。何かよかならぬ事を考えている節があるのを感じたからだ。「トモ先生、アム・マインだからね」「アム・マインから...
終点のマインツで降りると言ってやる。「アム・マインに行くからね」すると、違う声が割って入ってくる。「ジュンヤ」だけど無視だ。「トモ先生、アム・マインですよ」「ジュンヤ、私を無視するな!」後ろからハグされるが、すんでの所で躱して、そいつと対峙する。まさか、この人に会うとは思ってもいなかった。すると、ボスの声が聞こえてくる。「思い出した! ミラノコレクションでジュンヤのパートナーだったバンジーだ!」ガ...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #13 ジュンヤのひとり言
あれはジェットだからこそできた1泊二日だ。それをリアルで行こうとするのは地獄を見るに等しい行為だ。なにしろミュンヘンからザールまで普通に行けば6時間はかかる。ボンなんて直通はない。最低でも2回は乗り継ぐ。ボンからブレーメンなんて4回くらいかな。ブレーメンからベルリンはハンブルグ経由なら2回の乗り換えで済むが、それでも最低でも四日間はかかる。デンマークの上空も通ったから五日間かな。デンマーク上空から見え...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #12 そして日本へ!
ユウマとカズキの協力を得て、やっとマサとワンを起こすと、ジェットの機体が傾く。学長が知らせてくれる。「あと10分ぐらいで着くよ」マサとワンの言葉が重なる。「どこに?」「日本に。二人ともどこにいたの?」「寝てました」「そっか、疲れたんだね」着地したみたいだ、機体が少し揺れ止まる。「着いたー」帰り着いたのは大学の北側にある管制塔の場所だ。行きは学長の屋敷だったのに、大学内にも管制塔があるとは思ってもみな...
ミュンヘンからザールブリュッセン、ボンにブレーメン。国境線から外に出ることのないジェットはデンマーク半島の上空も通るとベルリンに来た。ワンはオーロラを生で見て、私からのオーロラの写真を受け取ると感激に瞳をうるうるとさせている。ジェット内に目を向けると、7人は謎の行動を取っている。近くにいたタカに声を掛ける。「何をやっているんだ?」「動きたがって、とりあえず動こうということで。ジュンヤもやる?」「し...
シャワーから出ると、すっかりと真っ暗になっていた。声が聞こえてくる。「学長、今はどこを飛んでいるのですか?」「ちょうどデンマーク半島に差し掛かったところだよ」その言葉にワンに言う。「ワン、もう少ししたら北極が見えるよ」「ほんと?」皆のいる場所に向かうと、誰かに声を掛けられる。「なんかスッキリ顔になってない?」「シャワー浴びてきたから」「ワンと一緒に?」「マサも浴びてきたら?」「そうする」しばらくす...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #9 軽く性描写あります!抵抗ある方はスルーしてくだし
数時間後、ジェットは燃料を補給し食材を積み込むと、再度、空に舞った。その頃は薄暗くなっていた。食べたのがチャンコ鍋ということもあり消化のスピードは速いので、軽く運動する。すると、皆も食後の運動と称して体を動かす。2時間ほど経つとワンを相手に合気道をする。「本気は出さない」「なんで」「ここは道場ではないからな」その言葉に納得したのだろう、くすっと笑ってくれる。「OK」そうは言ってもやっていると本気の力...
ボン周辺をぐるりと回るとドイツ北部にジェットは移動する。ブレーメンの音楽隊という曲があるが、そのブレーメンがある場所だ。夏では17度、冬の寒い時では0度あるかないかの過ごしやすい地域だ。学長が色々と話してくれる。降りてみたいと皆は言うが、パスポートを持っていない人がいるので降りれない。カズキがチャーハンを作り、それを食べる。学長が声を掛けてくれる。「ワンのリクエストに応えようと思っているんだ。今日は...
目が覚めて窓に寄るとライン川が見える。ベートーヴェンハウスにボン美術館、ボン周辺に来たみたいだ。反対の窓側からこんな声が聞こえてくる。「へぇ、色んな形の島が見える」「本当だ」学長の声が聞こえてくる。「あの一番大きい島がイギリスだよ」その声に反対側の窓に寄ると思わず見入っていた。「さすがにロンドンブリッジは見えないな」ユウマが近くに寄ってきたみたいだ。「ドーバーまで行かないと見えないだろうな」「ドー...
低速飛行のゆっくりと国境線をなぞるようにジェットは進んでいく。ふいにザールブリュッセンの街並みが見えた。こんな高い位置から見たことがないのでなんだか感慨深いものがある。今はドイツ領に組み込まれているが、ザールブリュッセンはフランスとドイツの数度の戦いで何度かドイツ領になったり、フランス領になったところだ。私は、そのザールブリュッセンの近くにあるクレウツヴァルトで生まれ育ったんだ。ジェットはドイツの...
学長が見せてくれた物は、ウイスキーやブランデーだ。「皆は20歳を超えてるから大丈夫だよね」サトルは嬉しそうな表情だ。「たしかに、それを飲んだら寝れるな」真面目に言い返すのはワンだ。「医者は酒を飲みません」その言葉に皆は口々に言う。「私たちはまだ学生だよ」「学長という後ろ盾がいるし」「その学長が出してくれたんだ」「一口だけでいいから」「ワンは真面目だからな」「そういうことを言うと、私たちは不真面目か?...
体内時間では昼過ぎという感覚だが、窓の向こうは暗闇だ。暗闇の中、シーンと静かに時は過ぎていく。学長の声が聞こえてくる。「日本時間だときついから寝た方が良いよ」その言葉に応じたのはボスだ。「それもそうですね。こんな暗闇だと何も見えないや」「時差があるからね」その言葉に、それもそうかと呟きが聞こえるがスズメはこれだ。「布団なんてないよね」その言葉に学長はタオルケットならあるよと言いながら出してくれる。...
大学4年生のクリスマスみんなで欧州旅行 #3 世界史の勉強?
スズメは耳を押さえながらタカに聞く。「タカの声が頭の中に響くぅ。カズキがなんだって?」「ドイツとその近郊の地図という本を持ってるよ」スズメはそんなことかと呟くと、こう応じる。「考えることは同じだな。私なんてドイツ歩きの地図を持ってきた」タカは苦笑している。「スズメもかよ」ジェットはある地点まで来ると、そこで止まってしまいホバリングする。動かないジェットに疑問の声を上げるのはマサだ。「止まった?」学...
数日後、私たち10人は機上の人になった。学長の発した「医者として、また医者の仕事をする」という言葉は無理だ。パスポート持参した6人はジェットから降りることはできるが、4人は降りることができないので自分たちも降りないということを約束した。学長にある提案をしたら、それなら大丈夫と言ってくれたので安心した。まずはドイツへの旅として、何が何でも一番先にサメを地上に降ろす。でないと、提案した企画を実行に移せな...
あれは4年生の12月に入った頃。サメがパスポート更新のためドイツに帰ると言うと、学長がジェットを出すよと返事をしたのがきっかけだ。ただ、それが日本を立つ数日前のことで、「ドイツに行きたい!観光ビザを」という声が皆から出たが、学長の「なくても大丈夫」という返事だった。「なくてもいいんですか?」そんな声を誰かが出していた。学長が応じる。「90日以内だったらね。でも、パスポートはいるよ。持ってる?」その言葉...
大学4年生の冬。福山友明率いる東響大学医学部の10人が、今度はゼミの教授であるサメをドイツに送りがてらに起こす欧州旅行。パスポートを取っていないのが半数近くもいる。欧州旅行はできるのだろうか?はたして、みんなは無事に日本に帰り着くことができるのでしょうか?今回は、滅多に出てこない学長が登場です!そして、ジュンヤ視点の回想話になります。この男子学生はAIに描かせました。金髪と銀髪と黒髪8人の10人だ!って指...
即席の引率先生は黙って行動しようとしている。相手は、あの連中と同じ種類の人間ではないので言ってやる。「トモ先生、どこに行くのか言ってね」その言葉で先頭にいる引率先生は振り向く。「ミュンヘンに」「それダメ」「なんで」文句を言いたそうにしてるので遮ってやる。「そもそも遠回りになるでしょ」「分かった。ザールなんとかに」「ザールなんとかってどこだよ」「なら、ボンに」「No」「ブレーメンに」「Non」「ベルリン...
仕方ないと思い言ってやる。「トモ先生、ドイツ観光は終わっているので、帰るだけだから。21時の便で、19時にはゲートを通りたい」「ゲートを通るまで食事する?」 「そうだな、軽く食事して。あとは土産買う」そう言うと、即席の引率先生は立ち上がる。「OK! それでは皆様、裏道を通って空港に行きますよ」「危ない道は通りません」 「大丈夫だって」「言っておくけど、小学生1人、中学生4人、高校生2人、大学生3人の10人...
駅の広場に着くと、一袋ずつ渡す。中身はバケットサンドと飲物。「ボスの作った物って久しぶりだ」「世話になってるからな」ジュンはボスの隣に座り食べている。「ヒロは?」「寝てる」その言葉で分かった。「寝技で負かされたから、その腹いせに寝さして来たんだろ」「そうとも言う」何か裏がありそうな気がする。「ん? チェックアウトしてから寝さしてきたってことか」「そういうこと。自分のベッドでぐっすりと寝てるよ」なん...
最終日の昼前、ロビーにボスがいる。休みだって言っていたから暇つぶしに来たのだろう。チェックアウトしてロビーにいるボスに声をかける。「どうしたの?」「暇だから」「やっぱり」苦笑していると、こう言ってくる。「ランチまだだろ」「駅地下で食べるつもりだけど」「そう言うと思って持ってきた」「なにを?」「ほい、これ」そう言うと、一袋を手渡される。中を覗くと思わず声が出ていた。「これって」「ランチにどうぞ~」「...
翌日はホテルの一室を借りて、ドイツ語の勉強会だ。3日間、どこでなにをしていたのか。また、何を感じていたのか。それをドイツ語で話す。ドイツ語で話せない場合はフランス語で。しかし、英語で話すとチェックを入れる。こういう場合のジュンヤは厳しい。ジュンは父親と会って遊んだことを話している。牛と馬。乳搾りと馬乗り。どうやら自然を相手にしていたらしい。他の9人もなんとかしてドイツ語とフランス語、たまに英語を入...
「ダディが作ると油っこくないもの」 「そういえば、ジュンのも油っこくなかったな」その2人の言葉でトモアキはため息が出ていた。「仕方ない。ジュン、こうなったらあと1年、スズメを欺け。ただ、あいつはバカじゃない」 「欺くって」「食べたくないんだろ」「うん」「だから欺けって言ってるんだ」「どうやって? 僕の作った料理が忘れられない。あの味を自分の手で作ってみせる。そう言って、1年半だけど。作れないんだよ...
その話を聞いて僕は驚いた。「え、まだ試食続いてるの?」「日替わりでマサと私に持ってくる。一度サトルに持って行くと断られたって言ってた。あそこまでいくとアレだね」 「なるほどアレだな」アレってなんのことかさっぱり分からないので聞いていた。「アレってなに?」 ダディが返事をしてくれる。「ムキになっているってこと。じゃ、このフランス旅行の間は誰が食べているんだ?」「一緒に暮らしているパートナーになるだろ...
レストランに着くと、ジュンヤ先生は1人で食べている。ダディは、ジュンヤ先生に近づいていく。「相席いい?」「他でどうぞ」「久々に合気道やって筋肉痛になってないか」「全然。そっちは鈍りだったから、絶対になるよ」「なぁ、一緒に食おう」「親子でどうぞ」「つれない奴・・・・・・」「4年分の溝を埋め込んで安心させてあげて」「それはするが、ジュンヤにも頼みたい」「なに?」「まず、メシが食いたい」ため息をついていた。「...
ジュンヤは振り返るとギャラリーの多さに驚いた。いつの間に、こんな人数に・・・・・・。ため息をつき、子ども達に声を掛ける。「皆、お帰り。部屋に戻って。明日の12時までフリータイムだよ」「は~い」僕はまだ倒れているダディに近寄った。「ダディ、大丈夫?」「動けない」その言葉に笑っていた。「笑うな」僕は素直に感想を口にしていた。「ヒロは強いけど、ダディも強いんだね」だけど、ダディは無視してくれる。「博人さん、今日...
何がどうなったのか分からない。ジュンヤ先生は吹き飛ばされ床に倒れていた。「鈍っているみたいだから、これは勝てる、と思ったのだけどなぁ・・・・・・」「あまいわ。あの、勝てると自信に満ちた目を見た瞬間に見せた隙を誰が見逃すか」僕は思わず言っていた。「隙なんてあったっけ?」その言葉に誰かが応じてくる。「さあ?」「無かったような気がするけど?」すると、ダディはこんなことを言ってくる。「誰か、私とやってみたい人-...
「なかなかしぶといねえ」「そっちこそ」「おりゃ! もう1蹴り!」「あまいっ」ジュンヤ先生はバク転して躱すと見せかけ、実際には体を後ろに仰け反っただけで、ダディの体を両脚で蹴り上げる。ダディはふらついてる。「っと・・・・・・」皆が口々に思いを呟いてる。「凄いな」「俺たち相手にしてる時とは、まるっきり違う」「パワーが違う」「キレも」「スピードも」「拳も」「相手もやり手だな」「なんかやりたくなってきた」「イキ...
ちょっと早いけどドイツに戻るかとヒロは呟いている。ダディは嬉しそうだ。「ジュンヤ相手に1本しようかな」16時にロシアを発ち、ドイツに着いたのは15時過ぎ。「15時?」「時差だよ。ドイツ時間にする。2時間戻す」「そっか、忘れてた」16時過ぎにホテルに着いたらジュンヤ先生はロビーで寛いていた。「泣きべそかいてたの?」「だって」ダディが口を挟んでくる。「ジュンヤ、1本相手しろ」「何の?」「合気道を教えてるんだって...
ダディはピザを作り直していく。生地を上に投げて広げていく。「すごーい!」5,6回ほど上に投げて広げると、今度はその生地に好きな具を置いていく。「今度は焦がさないでね」「任せなさい! 同じミスはしない」3人で9枚を食べきる。「ジュン、お前……」「なに?」「体重は何キロになった?」「急になにを」「この2日、いや3日間の食べっぷりを見ていると、気になって」「標準だよ」「上に伸びるのは良いんだよ。問題は重さ...
ダディの口調が変わった。「誰が、そんなことを言った?」「え?」急に変わったので驚いていた。「誰が、マザコンだって」「ヒロが」ダディはヒロに向かって叫んでいる。「博人さん!」「なんだ」「ジュンに変なことを言わないで」「何のことだ?」「誰がマザコンだって」「それか。本当のことだろ」「違う! 母が好きなだけだ!」「それをマザコンと言う」うん、僕もそう思う。でも、放っておいたらいつまでもギャーギャーと煩い...
ヒロの声が聞こえてくる。「いつまでハグしているんだ!」「聞いてよ、博人さん。ジュンの奴、走ってる馬の背中は怖くてビビっていたら、振り落とされたんだって。それで泣いてるんだよ」「だからって」僕も言っていた。「本当に怖かったんだから! ダディも振り落とされてたじゃないか」「でも泣かなかった」「それは、そうだけど」いつの間にかダディの体は離れていた。僕の頭をポンと叩いてくる。「年季だ」「年季?」「泣き叫...
ロッジまで歩いて帰る。「お、戻ってきた。なんだ、泣いてたのか?」「そうだよ。急に走り出して振り落とされて、そのままにされて・・・・・・」「見つけたから一緒に戻ってきたんだろう」「僕が大声を出したから」「なんて言ったんだ?」「僕を置いていかないでっ、て」「ジュン・・・・・・」吐き出していた。「僕、本当は置いて行かれたくなかったんだ。怖くて。でも、2頭とも僕の顔を舐めていた。走っている背中なんて怖くて・・・・・・。本当...
いくら待っても2人は戻ってこない。嫌だと言えば、置いていかないでと言えば、2人はどうしてただろう。「やだ・・・・・・」困らせていただろう。「お願い、戻ってきて」2人の困っている顔を見たくなかった。「僕を・・・・・・、僕を置いていかないで!」誰かが僕の顔を舐める。見ると、2頭の馬が僕の顔を舐め回してくれている。「戻ってきてくれたの? ありがと」2頭の手綱をしっかりと持ち歩く。やっと僕の頭は正常に動いた。そこで気...
馬と遊び、ダディとヒロの3人で食事をする。当たり前のことだけど、期限付きというのは嫌だ。ジュンヤ先生の言うことも納得がいく。いくのだけど、それでも離れたくない。しかし、3日目の朝は無情にもくる。朝食を食べると馬を見に行く。見ていると心が落ち着く。ヒロが話してくれていた。叔父のマルクが乗り方を教えてくれて、それがきっかけで馬と仲良くなった。それを聞いて、僕も仲良くなった気がしていた。何かに顔を舐めら...
ランチはカレーだ。ライスではなく、ナンだ。「美味しい。この黄色はカボチャだ」ヒロはダディが食べているナンを指さす。「その赤色って人参か?」「甘くて美味い」「緑色、これはなんだろう」そう呟いたヒロは嬉しそうな表情をする。「ほうれん草だ」ダディは赤色のナンばかり食べているので、言っていた。「ダディ、人参ばかり食べないで。僕も人参食べたい」ヒロは声をかける。「赤色のナン、デカいのを2枚追加お願いします」...
人参は馬のおやつにして、他のキュウリやチーズを食べて休憩する。3回目の休憩場所では、朝食を作ってくれたお兄さんが立っていた。「グッドタイミングです。ちょうど焼けた頃なので、どうぞ。馬はこちらで」しかし、馬は動こうとしない。「あれ、動かない?」だね、動かないね。動かないところか、イヤイヤと首を振ってるみたいだ。もしかしてと思ったのか、ヒロが助け船を出してくれる。「ジュンに懐いてるんだ」だから言ってい...
ある地点にくると、馬は勝手に止まる。「ここどこぉ」「中間地点だ」「なにそれ」「休憩場所だよ。ほら、降りるぞ」「は~い」馬から降ろしてもらい、地面に足が着くとへたりこんでしまった。「怖かったけど、でもヒロと一緒だったからよかった」「ここで休憩するから」「はーい」ヒロはダディに声を掛けている。「トモは大丈夫か?」「顔から落っこちたー。急に止まるんだから・・・・・・」リュックに入れてきた水筒と、朝食の残りの野...
馬を歩かせながら、ヒロは色々と話をしてくれる。たまにはヒロを独り占めするのもいいかもしれない。僕はすっかり馬に慣れてきた。「気持ちいいね」「三日月みたいな形だから馬にとってもいい運動になる」「ダディ、まだかな」「そろそろ来てもいい頃なんだけどな」すると、後ろからドドドッと音が聞こえてくる。「何の音?」ヒロはため息をついている。「マザコン野郎が来たってことだ」「ダディ、来たの?」「走らせてる。こっち...
僕はヒロと一緒に乗り、ダディは1人で乗る。「ジュン、見てろ」「なにを?」「トモはもう少しで落馬する」「そうなの?」時間をおかずにダディは馬から落ちた。「なんで・・・・・・。ダディ、大丈夫?」「ってぇ・・・・・・。なんで」ヒロは一言だ。「あんな乗り方だと直ぐ落ちる」「うー・・・・・・」腰をさすっているダディを見てると、なんとなくだけど分かってきた。「ダディは、馬に乗れる年齢、いや、乗れる体つきではないから落ちたの?」...
厩舎の中に入ると馬が2頭いる。ダディは馬を触っている。「毛並みがいいな」「ロッジの管理と、この馬や牛の世話を近くに住んでいる人に頼んでいるんだ」「だから食事作りもしてくれたのか」「そういうこと」するとヒロはこう言ってくる。「乗ってみるか?」僕は思わず言っていた。「乗る!」嬉しくなって言っていた。「ダディ、一緒に」ダディ、僕は一緒に乗りたいのと言いたかったのに、ダディはこんなことを言って遮ってくる。...
ヒロは苦笑している。「ヒロ、ごめんなさい」「いや、ジュンを喜ばせようと思っていたのだけど先を越されたから」「次からは声をかけるようにするね」「それじゃ、今度は3人揃って行くぞ」その言葉に嬉しくなった。手を繋いで3人揃って歩く。ダディは空いてる手で日差しを遮っている。「あれは厩舎だ。もしかして、厩舎に馬だけでなく牛もいるの?」「見ただけで分かるのか?」「臭いがする」ダディは呟いている。「そういえば、...
「ただいまー」なぜだか2人とも機嫌が悪そうだ。「2人ともどうしたの?」ダディは怒り度MAXに近くなっているだろう声になっている。「ジュン、それは何を持っているんだ?」 僕は何も怒られるような事はしてないよと思い、持っているバケツを見せる。「これはね、牛のミルクを絞ったんだよ」ダディは怪訝な表情をしている。「牛?」ヒロはため息をついている。「ジュンは、もう楽しみを見つけたのか」その2人に、声がかかる。...
着いたのは海の近くだ。「ひろーい」「ここはバイカル湖と言って、三日月のような形をしています」「バイカル湖。水が綺麗ですね」「馬や牛は、ここの水を飲んでいたけれど、今は山水を飲んでいます。それでは、先に私が絞るので見ててください」そう言うと、その人は牛の乳を搾り出した。まるで魔法のようだ。やってみてと言われ、牛に近寄る。絞ると、ピューと音を出しながら出てくる。「上手にできるね。もう少し絞って」「はい...
なにか良い匂いがする。ダディがご飯を作ってくれているのかな。それともヒロ?その匂いに目が覚める。「ダディ・・・・・・」横を見ると、ダディとヒロはグッスリと寝ている。あれ、それじゃ誰が作っているのだろう。そう思い部屋から出て行く。キッチンに行くと、誰かが作っている。「おはようございます」その人も返してくれる。「おはようございます。あとのお二人は?」「まだ寝てます」「そうですか。あと30分ほどで朝食できますの...
ヒロが教えてくれる。「あそこの明るい所に泊まるよ。あそこで3日間過ごす」「今って何時なの?」「時計は2時間早めにしろよ」「早めるの?」「そうだよ。ドイツ時間からロシア時間にしないと」ロシアって、どこ?そう思っていたらダディは呟いている。「たしかに、緊急オペが入っても無理な距離だ」「だろ」ロッジに入ると、中は綺麗だ。「掃除を頼んでおいたからアラ探ししないように」「はいはい」テレビが置いてあるので点け...
2人に、この4年間のことを話していた。ヒロは溜息をついていたけれど、ダディは笑っている。「どうしよう・・・・・・」「それなら、あと1年欺き通せ」「でも」「あいつは必死になって味の改良に励むだろうよ」「僕は」「ジュン。お前はそのままでいればいいんだよ」「いいの?」「マサとジュンヤとエドの3人はお喋りじゃないからな。ジュンにとって、誰が一番頼れる?」「ジュンヤ先生。GPボスは怖いけれど、でも、好きだよ」「なら...
誰かの声が聞こえてくる。が、痛みも襲ってきた。「ったーい・・・・・・」ダディの声も聞こえてくる。「優しく起こしてくれる?」すると、イラついた声も聞こえてくる。「2人揃って仲良く寝やがって・・・・・・」ヒロだ。「今、何時?」「19時」その言葉にダディも一緒に跳ね起きる。「夕食」「僕、スープ」「お前はメイン! スープは私が作る」「えー、時間かかるじゃない」本当は起きて待っていたかったんだ。でも、寝るのが好きなダディ...
ダディは僕をハグしてくれながら、よしよしと頭を撫でてくれる。久しぶりのダディ。そこでもう一人いないのに気が付いた。「ヒロは?」「仕事だ」「明日からどうするの?」「博人先生が、緊急オペが入っても簡単には来れない距離の所に行くって決めたから。そこに行く」「ダディも?」「そうだよ」「わぁい! それじゃ、3人一緒に居れるんだね」「ああ。どこかで何か飲むか?」「ダディが作って」「じゃ、買い物して帰るか」「う...
その声に目を開けるとダディが居た。「ダディ!」「デカくなったなあ」「ダディ、ダディ・・・・・・」ダディに届きそうで届かないのはなぜ?後ろを見ると、ジュンヤ先生に捕まえられている。あれ、僕を投げ飛ばしたはずではと思い出す。「ジュンヤ先生、離して」「まだ話は終わってないよ」「ごめんなさい。言うことききます。一日1回メールですよね」「電話だ」「分かりましたー!」ジュンヤ先生はダディに愚痴っている。「もう大変だ...
「一日、1回は連絡すること! これがフリーディのルールだよ」いきなりそう言われ叫んでいた。「なんで?!」ジュンヤ先生はダディみたいな言い方をしてくる。「ジュン。君はまだ小学生だよ」「フランスではそんなこと言わなかったじゃないか」「フランスでは1日も無かったからね」「えー・・・・・・、だって、ドイツは」「だから」話しを聞きたくなくて駅へと走ろうとしていた。だけど、瞬時に捕まってしまう。「こら、待て」「なん...
フランス・ドイツ旅行に参加するのは10人。料金が高いので保護者のサインが貰えなかった人が多かったそうだ。小学生は僕だけなんだけど、語学勉強を兼ねてダディとヒロに会えるのが楽しみだ。行けることが決まった時点で、チャットで話したら2人とも喜んでいた。一番最初はフランス。フランスには4日間いて、ドイツには7日間。フランスのフリーディは1日。行き先は決まってないので、ぶらぶらと街中を散策する。目に付いた店に...
ある日。ジュンヤ先生は夏休みを2週間取って、フランス・ドイツ旅行を予定しているので、行きたい生徒を募るプリントを渡してくれる。料金は高いが、思わず行くと言っていた。「ジュン」「だって、ダディはドイツにいるから」「あ、そうか。保護者のサイン貰えないか」その言葉に項垂れるが、でも諦めない。すると、保護者代理のサインを貰えないと無理といわれ、GPボスに話をしたらサインしてくれた。「ありがとうございます」「...
あれから毎週のように通っているので、ジュンにとっては変わりの無い日々を送っている。家に帰ると誰もいないので、ジンの家で泊まっている。ジンの母親は父親が亡くなってから夜の時間は仕事をして、翌日の昼前に帰ってくる。だから、夜は一緒に寝ていた。でも、いつもではない。家で寝る日もある。家で寝る時は、おばさんが休みで家に居る日だ。ヒロやダディが居た頃は遅くても必ず部屋に来て、お休みのキスをしてくれていた。だ...
挑戦するのに年齢は関係ない #30 副業&軽く性描写あります
わりと暇な火曜、水曜、木曜の夜を語学サークルとして開く。料金設定で躓く。週1にするか、学び放題にするか。得意のタロットで占うと、カードまでもが揺れ動いている。アドバイス的に、もう1枚。その結果、学び放題にする。即座に小中学生が入り、国外に行きたいと願う人達までもが入ってきた。一気に30人を超す語学サークルになった。私の副業ができた。英語、日本語、ドイツ語、フランス語を教え、息抜きに合気道。小学生相手...
これはまさか?「受け取れよ」「ちょっと待ってよ」「お前のお陰で、ジュンは勉強好きになった。そのレッスン料だよ」 「ちょっと待った!」 「ほら、受け取れ!」「待って、待って、待って。今、なんて言った? 私のせいで勉強好きになった?」「そうだよ」 「ボスの遺伝では?」 「違う」「即答かよ」「ほ~ら、ジュンヤセンセ。受け取るんだよ」「仕方ないなあ」 「よろしく」押し問答しても、結局はボスに言いくるめられ...
ジュンは未経験だから教え込むのは大変だろうな。でも、本人に目標があるのだから大丈夫だろう。そう思い、ドイツ語だけでなくフランス語も教え始めたのが、この語学サークルの発端だ。その内、ジュンはボスを連れてやって来た。「ジュンにドイツ語を教えてくれてるって聞いたのだけど」「サメと約束したと言って、ドイツ語ドリルを見せてくれてね。書いて覚えるのと意味を理解して話せるのを一緒にしないと難しいよと言ったら、考...
後手だけど、ボスについてはジュンから聞いている。ジュンが私の所に来たのは、たまたまだった。ここオーストラリアに来てからはつるむことはなかった私だが、あのハロウィーンのファッションショーがきっかけで、ジュンは来るようになった。手先が器用で、縫い物をさせると、どこまでも続ける。ボスがそうだったように、ジュンまでもがとことん突き進めていくタイプのようだ。来るようになって4年。ジュンは私のパタンナーアシス...
翌日の水曜。ジュンはいつもより遅い時間に来た。しかも息があがっている。「ジュン、走ってきたの?」「学校から走ったの」「学校からここまで?」「学校から家まで。で、スィーツ店に寄って、そこからここまで」「別に走らなくても」「ジュンヤ先生、お願いがあるの」そのスィーツの入れ物を見ると分かるが聞いていた。「泊まらせて欲しいってことかな?」「うん。ダメかな?」「どうしようかなぁ」「来るの遅れたから、帰るの遅...
そのいじめっ子の呟きが聞こえてくる。爪を囓りながらこう呟いている。「くそぉ・・・・・・。あいつは、いつも、ジン、ジンと言って・・・・・・。幼稚園に入った頃はもっと可愛くて、俺に対しても可愛かったのに・・・・・・。誰に対しても優しく笑いかけやがって・・・・・・。俺には敵意むき出しのくせに」その子は叫んでいる。「あー! クソッタレ! それが嫌で俺だけを見て欲しいのに、それはできないことなのか。あのヤロー・・・・・・」しばらくすると...
その子とジュンの言い合いが聞こえてくる。「なんだ、それ。俺に刃向かう気か!」「ジンはいいだろ!」けっ、とツバを吐く。「お前は、いつもそいつと一緒だよな」「仲良しだもん」「仲良しでも裏切ることはあるぜ」その言葉にジュンは叫んでいる。「ジンはそういうことしない!」「分からんぞ。それに、お前の親はどこかに逃げたって」「ダディは逃げてない!」苛つきながら、その子は言葉を選んでいるみたいだ。「クリニックのボ...
ジュンは習い事が楽しく、火曜日は料理教室で作り皆と一緒に食べる。水曜と木曜日はジュンヤのブティックで語学の勉強をしているが、そこで寝る時もある。金曜日の夕方から日曜日にかけてはマサの所に行くので、色々と準備が大変だ。なにしろ、土曜日は料理教室、日曜日は水泳教室に行くからだ。ジュンにとって一番、打ち解けるところは意外にもブティックをしているジュンヤのところだ。マサのところではなかった。ジュンはジュン...
それから1年。あの味が忘れられないスズメは少しでも近づけるようにとの思いで料理していく。試食はマサとジュンヤだが、今日はサトルの所に持って行く。「なんだ、頼んだ覚えはないぞ」「食べて感想くれ」「試食か・・・・・・」ため息が出ていたサトルにスズメは半べそかいている。「あいつらはアテにならないし」「なんで、そこまで必死になるんだ?」「味の改良だよ」その言葉で分かったので、サトルは笑いながら言ってやる。「マサ...
入れ替わるように、スズメがキッチンに来た。「はい、これに入れて」「何を入れるの?」「全種類」思わず笑っていた。スズメは僕の頭を撫でながら言ってくる。「ジュン、背伸びしなくていいから」何を言っているのか分からないので、こう言ってやる。「背伸びしなくて、170㎝なんだけど?」スズメは苦笑している。意味が違うのかな?「そういう意味ではなくて。170かあ。中学卒業するまで、もう少し伸びるな」「伸びるかな?」「伸...
ジュンは立ち上がる。「そろそろ片付けるね」スズメはすかさず口を挟む。「持ち帰るからな」「本気なの?」「もちろん」でも、持ち帰り用の容器なんてなかった筈と小声で呟いている。その声が聞こえたのだろう。スズメは立ち上がる。「店に行ってテイクアウト用の入れ物を持ってくる」それに答えたのはマサだ。「3分あれば戻ってこれる距離だしね」「そうそう」「じゃぁ、他の食器を先に片付ける」「ジュン、手伝うよ」「今日は、...
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「ん-……、ぐっすり寝たぁ」「やっぱり、ずっと海の上だと体に悪いな」「そうだね。せめて2週間までだね」朝食を食べ終えて宿を出ると露店で昼食用に食料を買い込むと、ジュンに連絡を入れる。ツーコールで出てきた。『ダディ!』「夕食は何だ?」『何が良い?』「フルコース」『じゃあ、買い物に行く』「先に、皆に土産を私に行くから遅くなるけど」途端に声に元気がなくなる。『夕食までには帰ってこれない?』「遅くても17時過...
ここオーストラリアには無数の無人島があるが、宿のある島もいくつかある。そのうちの一つにクルーザーを停め、大地に足をつける。途端、足がぐらつく。「大丈夫か?」「なんかグラついたような、地震か?」「ずっと海の上だったから、今日はここで慣らしておく方がいいかもな」「さむぃー」「食事つきの宿だ。メニューに文句つけるなよ」「そっちこそ、言わないように」その島の住人は寒くても活気がある。露店だが、あるお店を見...
2日後、友明は自分で作った外套を身に付ける。「あったか~」「よく、こんなのを作れたな」「これで颯爽と歩けばモデルになれるかな」「無理」「キッパリ言わなくてもいいでしょ」「モデルというのは長身でバランスのとれた均整をしている体格の持ち主だ」「分かってるよ」なにしろ、トップモデルがいるのだから。「友みたいに寸胴体型だと」「言うな」「絶対にモデルは向いてない」「分かってるって言ってるだろ」友明は毛糸を1...
一方、博人と友明は南太平洋の海上を進んでいる。「寒いぃー」「ここまで寒いとは思わなかったな」「コートまで送ってしまった。羽織る物がなーい」「どこかで買うか?」「そうする。シンガポールに着けて。そこで」だが、博人は遮る。「シンガポールは夏だ。冬物は売ってない。それに、南アメリカ半島を回ったところだ」友明は寒さに呻っている。「まったく、冬になることが分かって冬服をスーツケースに入れたくせに」「そういう...
「戻って、くるって。本当か……」「1週間後にな」「1週間……」ユタカの呟きはスズメの耳には届かない。スズメは叫ぶことしかできないでいる。「ジュン、頼むから食べてくれよ-」本当に、こいつは煩いなと思いながら聞いていた。「ジュンは何を食べているんだ?」「自分で作って食べてる」「作れるならいいのでは?」「ユタカまで、それ言うか」ユタカは、こいつとは話にならないと思い立ち上がろうとした瞬間、スズメの表情が目に飛...
そして、中華店では今日も店長は項垂れる。「あー、やばい、やばいよぉ……」ボスからパース到着予定日のメールが着たのだ。どうしよう。正直に話すか。いや、話したら何か言われそうだ。でも、マサからも話しを聞くだろうな。ジュンヤは別にいいのだけど、と思うと、もう1人いることに気がつく。トモヤだ。絶対に、あいつと会う。そうしたら、あいつはジュンのことを持ち出す。いつも母屋のドア前に置かれている食事トレイに、防犯...
フランス・ドイツ旅行から帰ってきて、1年経った。トニーのちょっかいを躱しながら、スズメの料理は手を付けずに自分の食べたい物を作って食べている。そんなある日、大きな荷物が4つも届いた。送り主はダディとヒロだ。そのうちの一つに”手紙有り”という文字が見えたので、それを開き見る。真っ先に目に入った言葉は、これ。「帰国日が決まった」思わず声が出ていた。「やったー!」手紙を読んでいく。ふんふん、荷物は部屋に置...
「まあ、その為に必死になって勉強してたからな」友明は、博人の呟きは聞こえていないのだろう。「情熱のスペイン! 私がスペイン語を専攻したのは憧れだったからなんだ」「スペインのなにが?」その言葉に友明は目が一瞬光る。「スペインと言えば、海! 海賊になりたいという気持ちがあったから」その言葉に博人は納得する。「友も男だな」「だろ」「マザコンだけではなかったというわけだ」「マザコンじゃないって、言ってるだ...
あれから5年。仮が取れ、正式に医師免許を取得した友明は博人と共に帰国する。日本ではない、オーストラリアのパースだ。ジュンヤにも話したが、机上勉強はドンとこいなので2年スキップして、2年間で卒業した。その後、大学病院で専科決めの研修だ。必死で勉強した友明はルンルンな表情だ。シンガポールでは皮膚科だったが、ここドイツで再出発し再びメスドクになった。そんな友明に博人は感嘆していた。「よく頑張ったなあ」「...
翌日、GPボスにも土産を渡したいので、イヨンに別れを告げ家に帰る。途中、いじめっ子トニーの姿を見かけてしまい、隠れていた。「なんで、こういう所にいるかねぇ・・・・・・」違う道を通って家に帰る。リビングに干していた大量の洗濯物は乾いている。片付けることはしないのだが、全部が半袖なので仕方ない。見るからに寒そうなので片付けることにした。買物もして帰ってきたし、畑作業をしよう。どれぐらい畑にいたのだろう。声が掛...
「うわぁ!」マサは説明してくる。「シャープペンシルとボールペンはよく使うと思う。それに、こっちは万年筆と言って、社会人になったら必要になるよ」「なんだか、大人になった気分」「使ってくれると嬉しい」「ありがとう、マサ。こんなお土産だと釣り合わないね」「ううん、そんなことないよ。ジュンの気持ちが詰まっているから、大事に着させて貰うから。それに、このエッフェル塔はチョコレートを食べても飾り物になるからね...
マサはダディからの土産を開けると驚いている。「何だったの?」「これだよ」そう言って見せてくれたけれど、分からなかった。マサは分かるのか教えてくれた。「これはドイツよりスペインだな」「スペイン?」「イベリコ豚だよ。今日の夕食は、これを食べよう」「いいの?」「美味しいよ」「食べたことあるの?」「ないけど、スペインのイベリコ豚は美味しいと評判だからね」夕食は、そのイベリコ豚をスライスしてくれた。「美味し...
「ジュン、お帰り」「ただいまー」「迎えにいけなくてごめんね」「いいよ、気にしてないから」そう言うと、はいと言って土産を渡す。「ありがとう」「どういたしまして」「2つ、いや、3つあるよ」「フランスとドイツで買ったの。もう一つはダディからのだよ」マサは嬉しそうだ。「ジュンからの土産なんて楽しみだな。なんだろう」「ダディのも楽しみでしょ?」「なんとなく分かるから。でも、楽しみなのかな」マサは僕が買ったの...
パースに着くと、まっさきにマサにメッセージを入れる。返信の中身を見ると、昼過ぎならいいよとのことだ。昼過ぎということは洗濯して昼ご飯食べて行く事になる。とりあえず洗濯をしよう。ダディとヒロにハグされ、とっても楽しかった旅行。あと1年。スズメを、あと1年振り回せと言われたがどうやればいいのだろう。マサに聞いてみよう。ご飯はどうしようと思いながらキッチンに行く。何も買わずに帰ってきたから何もないや。パ...
「今回、フランスに行った時、オフィスに寄って飛び入りで仕事をしたのだけど、ドイツでボスと再会して合気道した。あれで、自分の考えがパーになった。やっぱり、私は自分のやりたいことを全うしたいって思うようになった」「モデルに戻るのか?」「戻らないよ」「催眠術師になるのか?」「癒しの心療だ!」「あそこのクリニックか?」「違う。勉強する場所はアテがある。でも、あの人が迎えてくれるかどうかは話をしてみないと分...
そのAは話しかけてくる。「で、これらを引っ張り出してどうする気だ?」「逃げない事に決めた」「そっか」「ねぇ、アンドリュー」Aは、その名前にビクつき逃げ腰になっている。「逃げないで、アンドリュー」アンドリューという名前に抵抗があるAはジュンヤの腕から逃げようともがいているが、ジュンヤは逃がさない。アンドリューの首根っこを捕まえている。すでに、学生時代の感覚に戻っている。「私は日本には帰らない。それは、...
パースに着き、家に帰ると倉庫に入る。部屋に戻らない私の後をAはついてくる。勉強好きのボスに触発され、しかも語学で博人先生に負けを認めさせた私はドクターバッグを取り出す。「ジュンヤ?」「ごめん。あっちでボスに会って。使わないだろうと思って奥に突っ込んでいたのに」「いいよ。元々は俺だけの夢だったから」ドクターバッグを眺めながら呟く。「でも、オペはしない」「しないではなく、メスで切れない、だろう」Aを見て...
走り出した私の後ろをゴロゴロとスーツケースを転がす音が追いかけてくる。「歩くと言ったのに」「ジュンヤ先生、走らないでー」「坂道で下りなのにー」「あー、荷物が勝手にどっかに行くー」「自分の荷物はしっかり持ってろ」「僕の荷物―」「荷物の方が軽いのか」「そういえば、フェリー乗り場まで下り坂だ」「行きはシャトルバスだったような」「帰りもシャトルバスにすれば良かったかも」皆の声を背に、私は走りAにハグしていた...
無事にシンガポールに着いた。さあ、パースは目の前だ。「みんな、歩くよ。迷子にならないように大学生3人、しっかり見るんだよ」「はい」腕を摑まれる気配がするので身を翻す。なんか、こればかりだな。「アンディ・・・・・・」「ジュンヤ、私はシンガポールで暮らしている」それ以上、声を聞きたくない。アンディの声に、被せる。「アンディ、さよなら。お幸せに」一夜の思い出だけでいい。そう思うと声を出す。「さ、歩くよ-」「は...
途端に悲鳴が上がる。「キャー!!」「ねえ、あそこー」「見てみて-」「闇の帝王と光の帝王がいるー!」「あ、ほんとだー」「嬉しい。写真に撮る」私達の事を知っている人がいるみたいだ。こんな至近距離でキャーキャー言われるのは初めてだ。左から右へと流すことができずに、両耳を押さえていた。同じく両耳を押さえながらアンディはこんな事を言ってくる。「フラッシュライト浴びたい?」それは、私を盾にして自分は撮られない...
ニールはなんでもないという表情だ。「ネイサンが、あいつらと接触したのは知っているよ。言っておくけど、僕は責めているわけではないから。僕のためにいっぱい苦しんだのだろうと思ってるよ。ネイサンは勉強するために大学に入学したからね」「ニールは何のために入学したんだ?」「僕も勉強するためだよ」「一緒だな」「うん、そうだね。でも、ネイサンほど真面目じゃなかったから」「たしかに、そうだな」「そこは否定してよね...
ニールにベッドに押し倒されると乗っかってきてキスをしてくる。「ふ」頭の中がとろけそうになるほどのキスだ。そのうち、ニールが離れていくのが分かる。「ニー」自分の肌にニールの唇が触れていく。強く吸われる時もあれば、優しく吸われる時もある。「あ・・・・・・」胸の尖りを舐められる。「ん」とても優しく舐めたり噛んでくる。こんなのは初めての経験なので、どうやってこんなテクを身に付けたのか分からなく、その思いを口にし...
1週間後、ニールは聞いてくる。「ネイサン、話がある」おそらく、この間の話だろう。1週間もあれば、こちらの気持ちも整理がついた。「ニール、この間の話か?」「うん。僕と家族になって一緒に暮らして欲しい。ネイサンを愛してる。離したくないんだ」少し間を置いて答える。「基本、私はマイペースな人間だ。自分のやりたいことしかしない。それでも良いのか?」「うん、良いよ」真剣な面持ちなんて初めて見た。だから、一生懸...
ここに住んでから5年後の、ニールの言葉。「ネイサン。一緒に暮らそう」「暮らしてるだろ?」「ネイサンは僕から離れないよね?」「ニール?」「僕は知ってるよ。学生時代からずっと僕だけを見ていたよね。アサミもヨシも僕を見てくれていたけれど、彼等は卒業したら日本に帰国した。もう、ここに来ることはないだろう。でも、ネイサンは違うよね?」その言葉には驚いた。「何を言って・・・・・・」「僕、知ってるよ」「何を・・・・・・」「...
「ネイサン、どうしたの?」その声にハッと気がつく。思わず、言っていた。「再会した頃のニールを思い出していた」ニールは笑い出す。「笑うことないだろ」「寝ているのかと思ったら、そんなことかあ」あの微笑にヤラれた自分が情けない。今では、エンジェルよりも小悪魔のほうが似合っているニールが可愛い。あの時、ヨシに聞かれた言葉で自分は考え込んでしまったが、それでも可愛いと思ったのは確かだ。「ニール」「なに?」「...
大学を卒業して再会するまでの10年間は、故郷であるバージニアへ戻っていた。このバージニアからニールの故郷は遠い。もう、お守りをしなくても良いと思うと気が楽だ。論文の発表会でニューヨークに行った時、ニールがいるだなんて思わなかった。会場で声を掛けられただけでも驚いたのに、それがニールだなんて夢にも思っていなかったからだ。誰にも覚えられていない。そういう思いはあったのに、誰かに覚えられているというのは嬉...
あの連中と再会してからのニールは昔のニールに戻っている。自分では気がついてないのだろう。布団の中で大人しく抱きしめられているニールは目がトロンとなってきている。このまま寝てくれると、こちらとしても有難い。あの頃のニールは、恋愛対象というより保護欲をそそられる対象だった。あの日本人5人にくっつくというより、アサミにくっついていた。あんなガリガリのもやし体型の人間だと頼りなさそうな気がして、いつも目は...
ニールはネイサンに聞いていた。「それはそうと、どうして分かったの?」「なにが?」「ほら、あの5人の特徴を言い当てたでしょ。どうして、そんな風に思ったのかなと思って。ね、どうして?」「そりゃ、ニールを見てたら、あの5人に目が行くだろ」「僕?」「そ、ニールを見てたら、自然と5人の」そこで区切ったネイサンは、思わず自分が何を言っているのか分かったからだ。「あ、その、ニール?」だが、ニールは学生時代の顔に...
いつもお越しいただきありがとうございます。短編ですが、前作の『社員研修は腐の宝庫』の続編になります。登場人物はニールとネイサンの2人です。~あらすじニールはアメリカにあるステイツ大学に通っていた。その時、出会ったのは日本人5人で、そのうち仲の良かったのはアサミとヨシの二人だった。それでも、その5人は色々と教えてくれたり、遊んでくれたりしていた。自分の事を深く知らない、その5人の傍を離れたくなかった...
いつもお越し頂きありがとうございます。今作の「社員研修は腐の宝庫」はいかがでしたでしょうか?主人公はダブルアサミというところで、朝巳と浅海でした。しかも、舞台はニューヨークでした。意外なところに、意外な人がいたものです。朝巳と雄吾の関係はどうなっていくのでしょうか?また、朝巳に対しての気持ちを自覚したストーカー浅海は?そのストーカー浅海に拉致られてしまった朝巳は?今までにはない「腐」が散りばめられ...
自分の部屋に戻ると鍵を閉める。ミニ冷蔵庫から缶ビールを取り出し、一口飲む。「お疲れ! ビバ、社員研修! 今度は2年後だ!!」 さぁ、2年後の社員研修はどこで何をしようかな。こういうのがあると嬉しいよな。雄吾には一人旅での腐探しはやめろと言われたが、一人旅でなければいい。というわけで、来年は水泳スタッフだけでの旅にしようかな。場所は沖縄か、いや、それとも北海道?せっかくだから、ダイビングできる場所だ...
「たっだいまー」奥から声が返ってくる。「朝巳、裏から入れって何度言わせる」「そう怒んないでよ。奥からだとナースにお土産渡せないじゃん」すかさずナース婦長が返事をする。「ありがとうございます」「みんな同じものだけど、ごめんね」「そんなことないです。嬉しいです」1人ずつに手渡し、最後に兄に渡し頬にキスをする。兄は固まってしまった。「アメリカでは、これぐらい普通だよ」ナースの1人からフォローされる。「兄...
そんな光景をストーカー淺海は見ていた。帰りの便が同じ。幸か不幸か、どちらに取れば良いのだろう。あの時――。冷ややかな目で足を撃ってきた。しかも、アキレス腱だ。歩けるようになるまで待てなかった。ピザの滞在日数にかかるからだ。でも、あの体は忘れられない。もう一度、抱きたい。触りたい。この手で、あの体を触り、食事を共にしたい。銃なんて危ない物はない場所で。アナウンスが流れてくる。包帯を巻き、松葉杖もついて...
そんなこんなで夏休みも、あと1日になってしまった。空港まで雄吾と衛は見送りに来てくれた。「それじゃ、2年後に」「雄吾、元気でね」「朝巳も」「ん」衛は社長に迫っている。「私の任期は、いつまで?」「あと10年か」衛は片目をつり上げ、まさにデビルになっている。「そんなにもあるの?」「なんなら、日本で社員研修とかはどうだ?」「いい考えかも」朝巳は、そのデビル衛に封筒を渡す。「朝巳、これは何?」「衛へのプレゼ...
ふと見ると、ネイサンは寝息を立てている。思わず呟いていた。「このベールでベッドにくくりつけてやろうか」そう思ったが、その寝顔にキスを落とすだけにする。しかし、お腹空いたなあ。途中で買った食料を取り出すとレンジに突っ込みスイッチを入れ、大好きなオニオンスープを作り1人で食べる。「むふ♪ 美味しい♪ たまには街に出るのも良いな」そんなにも時間を置かずに声がかかる。「良い匂いがする」「ネイサンも食べる?」...
さよなら、僕の初恋の人。僕は、ネイサンと一緒に生きて、ニューヨークに骨を埋める。アサミのベール姿を観る事が出来て嬉しかったよ。秀才のガリ勉だったネイサンは、君たち5人組を羨ましがっていた。僕がアサミとヨシの背中に隠れていた理由も知っていた。だからこそ、君たちが日本に帰国すると側に居てくれた。僕を色眼鏡で見ない5人は、かけがえのない存在だ。でも、ネイサンは僕のことを知っている。僕と結婚したのを、あっ...
そして、皆の祝福を受けたニールは――。お気に入りの③の部屋に居た。「ふふ。皆に祝って貰えて嬉しかったぁ」「騙されてないか心配だったけどな」「言い出したのはヨシだから大丈夫とは思ったんだよ」「で、ケーキはどこに置く?」「冷蔵庫の中」大好きなケーキもあるし、Happyだ。「冷蔵庫の中は空で良かったな。ケーキが箱ごと入った」「箱ごと? ったく、横着なんだから。そういう場合は小分けにしてよね」「なら自分でしろ」「...
雄吾をデッサンしながら、こう言っていた。「ニールとネイサン、良い雰囲気だったね」「羨ましいか?」「どっちがネコになるのかなあ?」すると雄吾は吹き出した。「きったね」「そりゃ、ニールだろ」「だよねぇ。どう考えてもニールだよね。ネイサンがネコだったら」雄吾は叫んでくる。「考えるな!」「考えられない」「他人のことは考えるな。自分のことだけ考えろ」「だよね、そうする」そこで飲物がない事に気がつく。「あ、そ...
タイマーが鳴る。タイマーとIHのスイッチを切った雄吾は盛り付けてくれている。「出来たぞ。なら、お前が逃げないように見張ってやるよ」「よろしく」「で、他に言いたそうだな」「そう?」「言えよ。聞いてやる」「母の、最期の言葉なんだ。“後悔しない生き方をして”その言葉を思い出したんだ。場所は何処でも良い。でも、できるならニューヨークで。ここは、私の人生において扉を開けてくれた場所だから」「そっか。俺にとって、...
雄吾は英語で言ってくる。『once more』なので、こっちも英語で応じてやる。『2年間で経理を育てる。育たなくても、私が居なければ自然とできるようになるだろう。彼にならできる。そう思っている。だから、私の部屋を作ってて』そう言うと、雄吾は嬉しそうな顔になった。『引っ越すかな』『どこに?』『ここの13階から上は、全室3DKさ』『眺め良いだろうな』これぐらいの日常会話なら、ブランクあっても喋れる。『ユーゴ』『ち...