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オリジBL。親の借金のカタにヤクザの所有物になったイツキの、ハランバン☆ジョー物語。一応、純愛。

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2009/03/19

1件〜100件

  • 餃子とレバニラ

    仕事の中休みに軽く一杯…の筈だったが すでにビールは数本目。 一ノ宮は残りの仕事を諦め、パソコンを閉じると、近くの中華屋に食事の出前を頼む。 「………浮気?………なんの話しだ?」 「イツキくんがいない間に、女と寝たんでしょ?」 「女?………ああ、あれか………いや、あれは……」 確かに、心当たりはある。 イツキとの電話で、つい、その事を…

  • 助け舟

    「……何だ、話してないのか……ふぅん」 勿体をつけるように……もちろんわざとだが……松田はそれきし黙りグラスに口を付ける。 黒川は面白くないといった風に、ふんと鼻で息をつく。 イツキの出張の最終日。何か様子が変だったのは解っている。 そもそも松田と一緒に居たことがオカシイ。 朝から風呂屋で泥酔し、その後は妙に甘え、こちらに帰って来てからは 何事…

  • 傍耳

    事務所の応接セットのソファに松田、その隣に一ノ宮。 その向かいに黒川が座る。 時間は20時を回ったあたり。 当たり障りのない世間話から、真面目な仕事の話しも少し。 一休みで軽く一杯の筈だったが、すでにビールは3本目。そろそろ スタートといった所。 「そう言えば…、あの日はちゃんと帰れたの?黒川さん?」 来る話題だとは思っていたが、突然、来ら…

  • 一休み

    ノックの後に事務所に入って来た男を見て、黒川は顔を顰める。 一ノ宮は、おや、という風に短く声を上げ、急ぎ、お茶の用意などをする。 「…一ノ宮、茶なんぞ、いらん。………何の用だよ、松田」 「ええ、それはあんまりじゃない?……また東京の仕事でね、ちょっと寄っただけですよ」 「………ふん」 松田は笑い、地元の土産なのか紙袋を一ノ宮に渡す。 一ノ宮…

  • ミカの提案

    「…もう、大変。本当は乗り換えなしのとこにしたかったけど、家賃、高いし 徒歩15分で築30年で、どうにか頑張れるかなって感じでしょ。 ウチ、補助は結構出る方だけど…それでもねぇ。 都内の独り暮らしはキツいわよねぇ……」 仕事終わり。イツキとミカは店内の片付けをしながら軽く雑談。 「……イツキくん、おウチ、探すの?」 「あ、いえ、そういう訳で…

  • 思い出した話

    『……ああ、そう言えばさ……』 その日、一ノ宮は事務所で一人、雑務を片付けていた。 どこぞの店の従業員用の宿泊施設が足りなかったと 管理している不動産の書類をガサガサとやり、2、3件、電話などをして ふと、先日、車の中でレノンが話していた事を思い出した。 『……さっき、あいつ、見かけた。……イツキ。 向こうの通りに不動産屋あるじゃん…

  • 普段通り

    イツキはと言えば 変わった様子も無いように思えた。 野菜を炒めただけの簡単な料理と、グリルで焼いただけの肉をテーブルに並べ テレビを眺め、ビールを飲み、お互い仕事の愚痴など口にする。 そろそろ眠る時間だとソファから腰を上げるイツキの、手を、黒川は引き そのまま寝室へと連れて行く。 「明日も仕事なんだけど…」 と、イツキは少し困った風に言うが…

  • お土産

    「……いいよな。俺も、自分の部屋、欲しい」 「…ははは」 レノンの言葉に一ノ宮は軽く笑う。 会話を交わしているようで、その実、一ノ宮の反応はありきたりなものばかり。 レノンは一ノ宮と、事務所で二人で話したような、もっと、深い話しがしてみたいのに そこは一ノ宮も、あまり話し過ぎないようにと、警戒しているようだった。 「…イツキと黒川って…

  • 気の毒は今更

    レノンは一ノ宮に恋愛感情を抱いている訳では無かったが この特殊な世界の中で、自分だけの味方、自分を大事に扱ってくれる人間を 確保して置きたいというのは、もっともな気持ちだろう。 それは一ノ宮も解っていたし、大事な商売道具なのだし ……そこら辺が、レノンの「大事」と違う感覚なのだけど…… まあ出来る範囲でならサポートしてやっても良いと、思ってい…

  • 夕暮れ時

    事務所の扉をノックして入って来るのは 少し前ならイツキだったが…今は、レノンの事が多かった。 「仕事」終わり。相変わらずムスッとした表情。 それでも最近は、客を怒らせるようなことは少なくなったようだ。 真面目にデスクワークに励んでいた黒川は顔を上げ、つまらなそうに、鼻息をたてる。 「……お前か。何の用だ」 「……コレ、今日のおっさんから預か…

  • 大酔っ払い

    「………馬鹿か!」 その夜のイツキは、何か作戦があったのか単に飲み過ぎてしまったのか 店を出る時には酩酊し千鳥足。 歩いて数分の自宅までタクシーを呼び、マンション前から部屋までは黒川が抱えて歩き ようやく辿り着き、寝室のベッドに放り出す。 「……ごめんなさぁい……」 イツキは一応、謝り、あとは何を喋っているのかは解らない。 黒川は呆…

  • 真っ当な悩み事

    実のところイツキは悩んでいた。 悩んでいると自覚が出来ているもの、出来ていないもの、イロイロあるのだけど。 だいたい、黒川との関係からしてオカシイのだ。 おかしい上に不安定な材料を積み上げて行って、落ち着くはずもない。 中学生の頃から身体を売って来た自分に、普通の生活が送れるとは 思ってもいなかったのに、この現状。 ハーバルの仕事は楽しいが、それ…

  • 焼き鳥屋

    待ち合わせをした店は事務所の近くの、よく利用する焼き鳥屋。 細長い店内の片側にカウンターと、テーブル席が3つ。 先に着いたのは黒川の方で、一番奥のテーブル席に座り、ビールを注文する。 それが席に運ばれた頃、イツキが息せき切って到着し、椅子に座るなりそのビールをぐっと煽る。 「………お前なぁ……」 「ごめんなさい、遅れちゃいそうと思って…走って来て…

  • 17時、事務所にて

    デスクワークをしていた黒川はスマホの着信に気付き、仕事の手を止める。 一ノ宮は、聞くとはなしに傍耳を立てる。相手がイツキだという事は、黒川の顔を見れば解る。 どう取り繕っていても、一瞬、空気が和んでしまう。 この人はいつからこんな顔を見せるようになったのだろうかと、一ノ宮は少し複雑な胸中。 「…………はいはいはいはい、解ったよ。じゃあ、19時半な…

  • 木曜日の昼下がり・終

    さて。 黒川の運転する車の中で目を覚ましたイツキは、しばらくポカンとし、どういう状況なのかを考える。 黒川からの連絡を気にしながら、不安を押し流すように酒を飲んだのは覚えている。 潰れ、引き摺るように抱きかかえられながら車に乗ったのはなんとなく覚えているが それが黒川に似ていた気がしたのは、ただの自分の夢なのかと思っていた。 「………まったく…

  • 木曜日の昼下がり・8

    黒川は松田の向かい、テーブルに突っ伏したイツキの隣に座る。 タクシーや誰かの運転ではなく、自らが車を飛ばして来たと聞き松田は驚く。 『……そんなに慌てて迎えに来なくても…、俺、何もしないよ?』 『潰れるまで酒を飲ませて、良く言う』 『イツキくんが自分から飲んでたんだよ。イロイロ、疲れちゃったみたいだよ?』 松田はそう言って笑う。黒川は隣のイツ…

  • 木曜日の昼下がり・7

    酔い潰れて寝てしまい、気付いたら車で移動中、は 流石にイツキでも肝を冷やす。 薄く目を開け、辺りを伺い、今、自分がどういう状況なのかを探る。 今度こそ本当に、どこかに連れて行かれたとしても、おかしくはない。 「………えっと…、ごめんなさい…、俺、………飲みすぎ…た…?」 イツキは身体を起こして、座席にきちんと座り直す。 助手席の後側…

  • 木曜日の昼下がり・6

    イツキは 明らかに動揺しているようだった。 メンチカツを一気に掻き込み、それをビールで流し込む。 新しい通知は無いかとスマホを覗き、ふんと鼻で息を吐き、タブレットに次の注文を入れる。 松田はその様子を可笑そうに見ていた。 何だかんだ言っても、イツキと黒川は、お互い好き合っているのだ。 立場や年齢や性別や、諸々……自分の気持ちに素直になれな…

  • 木曜日の昼下がり・5

    最後にスマホをチェックしたのは朝、ハーバルの本社を出た時。 松田の車に乗り、黒川に連絡を入れようかどうしようか…悩み、結局そのままポケットに入れてしまった。 それから風呂に入り、2時間…3時間が経っただろうか。 何度かの着信とメッセージの通知。内容を確認するのも空恐ろしい。 「どうしたの? イツキくん?」 注文の料理を取りに席を立っていた松田…

  • 木曜日の昼下がり・4

    「松田さん…」 「なんだい?」 「松田さん、ビール飲んでちゃ、駄目じゃないですか?」 風呂上がりに美味しい料理が並び、うっかりしていたのだけど… 松田は車でここに来ているのだ。酒を飲んでいてはまずい。 もっとも松田は確信犯のようで、「んー?」ととぼけた様子で手に持っていたジョッキを口もとに寄せた。 「はは、夜には醒めるよ。代行だって、タ…

  • 木曜日の昼下がり・3

    「………ヤバい。これ、ヤバくないですか?………やだ」 風呂から上がり、お休み処。待望の仙台直送牛タン祭り。 少々、湯あたり気味のイツキはとりあえず冷えたビールを喉に流し 運ばれて来る料理に感嘆の声を上げる。 運ばれて来る、と言ってもここはセルフ方式の食堂だ。 手元のブザーが鳴るたびに、松田がカウンターまで料理を取りに行く。 松田は背中に派手な…

  • 木曜日の昼下がり・2

    「……本当は嫌なんです。こんな事でグダグダ悩んでるの。気持ち悪い。 ほら、マサヤって……悪い男じゃないですか、そんなの誰よりも俺が知ってて それでいて、それでも今、一緒にいるって……それだけでも十分、おかしくて」 風呂の湯が少し熱くなって来たのか、イツキは湯船の中の段差になっているところに腰掛け 上半身を出した格好で、つらつらと話を続ける。 ほ…

  • 木曜日の昼下がり

    「いいじゃん。もう仕事も無いんだろう? 少しぐらいのんびりしなよ。東京には、夜には、帰れるんだしさ」 「………でも、松田さん。……普通の時間にお風呂には…入れないんじゃないですか、その…」 「あー、刺青?それがさ、奥に、時間貸しの小さな風呂が出来てさ、訳ありでも融通きくんだよね。 それに……」 何だかんだと言葉を並べ、松田は風呂屋の駐車…

  • 木曜日の朝・4

    「……ここからもうちょっと山間に行くと…古い温泉街があって いわゆる昔の、売春宿みたいなトコがあるんだよね。 そこに、攫って来たイツキくん、閉じ込めてさ、仕事させたら面白いなって…」 車を走らせながら、笑いながら、松田はそんな事を言う。 もちろん、本気だとは思わないが……、かと言って、そうされないと言う確証も無い。 膝の上できゅっと握った手…

  • 木曜日の朝・3

    「イツキくんはさ、本当に面白いよね。ああ、もちろん褒め言葉。 フツーに仕事、頑張ってるかと思えば、妙な色気垂れ流しておっさん誘惑してるし。 でもって、それ、失敗して、大慌てしてるし。 俺の事も、どうなのかなって思えば…エッチは滅茶苦茶エロいし、気持ちいいし。 見てて、飽きないわ。もう、俺のモノにしたい位」 車を運転しながら、松田は軽く、そんな事…

  • 木曜日の朝・2

    「おはよう、イツキくん。昨日はお疲れ様。よく眠れた? いやー、一度出社してから帰るんじゃ大変だと思ってね。 車、借りられたからさ。送ってあげるよ、東京まで」 つい数時間前に別れたはずの松田は、そんな事を言う。 イツキは何がどうなっているのか良く解らなかったが…、自分は一度、宿泊先まで往復しているのだ 時間的には、おかしくは無いのだろう。 「…

  • 木曜日の朝

    朝。 松田を残して、イツキはするりと帰ってしまった。 ホテルからタクシーを呼んだようだった。 無防備で抜けているようで、きっちり出来る事は出来て、それでも、緩い。 そのバランスの悪さが癖になるのだな…と、ようやく松田が気がついた時には、すでに手遅れだった。 イツキは大急ぎで、自分の宿泊先のホテルに戻り、荷物をまとめる。 もう一度、シャワー…

  • 引き算

    まずイツキから黒川を引く。 それから、仕事だの一般的な生活だのを引く。 知性も理性も、およそ普通の感情を全部引くと 残るのは純粋な、濃厚で濃密な性欲だけになる。 「……ここからもうちょっと山間に行くと…古い温泉街があって いわゆる昔の、売春宿みたいなトコがあるんだよね。 そこに、攫って来たイツキくん、閉じ込めてさ、仕事させたら面白いなって…

  • 水曜日の真夜中・5

    松田は暫くイツキを見つめるのだけど、その真意は一向に解らない。 その場しのぎの遊び相手なのは、一体、どちらの方だったろうかと…迷う。 そんな中でイツキは小さく腰を揺すり、もう我慢出来ないと言った風に顔を顰める。 身体を反らせ、覆いかぶさる松田に無理矢理にでも摺り寄せる。 そして硬いものが当たると、はしたなく悦び、そのすぐ後に、恥じらう顔を見せる。 …

  • 水曜日の真夜中・4

    松田は全体重を掛けるようにイツキに覆いかぶさり、少々乱暴なキスをする。 イツキの髪の毛をくしゃりと掴み、痛いくらいに引く。 機嫌の悪さはアピールなのか本心なのか、松田にも微妙な所。 そのくせイツキはと言えば気にする様子もなく、松田の背中に手を回したりする。 「…俺は、…黒川さんの替わり?」 「……違いますよ?」 「じゃあ、黒川さんのこと、考…

  • 水曜日の真夜中・3

    「……松田さんは、……女の人と、する?」 「……え?……ああ、そりゃあ、ね…」 「…………そうだよね」 適当な愛撫を繰り返して、今度はイツキが、松田のものを口に収めていた。 松田は枕を背に、少し体を起こし、自分の股ぐらに顔を突っ込むイツキの髪の毛を撫ぜる。 イツキの問いには流れで答えてしまったが、それは、質問のための質問だったと後から気付く。 …

  • 水曜日の真夜中・2

    ベッドの縁に腰掛けたイツキはビールを一本飲み干すと 空き缶をサイドテーブルに置き、はすっぱに、手の甲で口元を拭う。 それから、自分のズボンのファスナーを下ろし、くしゅくしゅっと脱ぎ足先で放り投げる。 シャツのボタンを外し、肩のあたりまで肌を晒すと、後はご自由にと身を横たえる。 投げやりな様子と微かに匂う色気が、ちぐはぐ過ぎて ……こんな状況に慣れ…

  • 水曜日の真夜中・1

    「………ちょっと、…意外。……本当にいいの?イツキくん」 「…………」 田舎町の外れた道路沿いに建つ、少し悪趣味な装飾のラブホテル。 フロントの年配の女性従業員は、男二人の利用客を物珍しそうに眺める。 部屋はいかにもと言った感じ。中央の大きなベッドにはフリルのサテンのカバーが掛り 天井には、ミラーボールに似た照明が吊るされていた。 「………

  • 水曜日の夜・11

    「………松田さんは……、優しいですよね」 「まあね」 タクシーの後部座席に並んで座り、イツキはぽつりと言葉を溢す。 謙遜するでもなく即答するのが、まあ、松田の良いところなのかもしれない。 「……何だかんだで、俺のこと、助けてくれるじゃないですか…。前の、…笠原さんの時も…」 「ああ、あれは凄かったね。イツキくんを助けるナイトのようだったよ、…

  • 水曜日の夜・10

    「……なんかイツキくんってさ、いつも危ない事に首突っ込んでるよね、趣味なの?」 「………………違います…」 松田の登場でイツキの危機は一応、回避されたらしい。 酔っ払った勢いで若い男の子相手に股間を晒すという、まあまあ恥ずかしい状況を仕事の関係者に見られ、 小山は大慌てでその場を立ち去り、宴席には戻って来なかった。 「………あの人、嫌味言…

  • 水曜日の夜・8

    「……お楽しみ中だったかな?」 小山が自分のズボンを下ろし、膨らんだ股間をイツキの太ももに擦り付け ……うっかりイツキがその気になる、その一歩手前で邪魔が……、いや、助けが入る。 扉がガラリと開き、光が入る。……小山なぞはその驚きで射精しそうな勢いだったが… どうにか堪え、何事かと、顔を上げる。 扉を開けたのは、松田だった。 …

  • 水曜日の夜・8

    「………っや、止めて下さい、おれ、そんなんじゃ…ない……」 予定では、その気になった小山を突っぱね、大きな声を出し人を呼び 被害者ぶったイツキはさめざめと泣き、股間を膨らませた小山に恥をかかせる。筈だったのだが。 予定より、イツキも小山も、酒を飲み過ぎたのかも知れない。 イツキの声は思ったほど張らず、隣りの座敷の賑わいに消え 小山は気が大…

  • 水曜日の夜・7

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  • 水曜日の夜・6

      どこまでを意識して、どこを目的としているのか。それとも、何も考えていないのか。 小山の隣りのイツキは足を崩すでもなく、服をはだけるでもなく、シナを作るでも無かったが 指先の動きも目線の遣り方も、いちいちが……小山の気に障った。 ……初対面から、男にしては綺麗な顔立ちだ思っていたが、…ただの経験も実力もない若者だ。 適当にあしらい、鼻で笑い…

  • 水曜日の夜・5

    グラスの日本酒を一気に飲み干し、イツキは得意の、得意の笑みを浮かべる。 目立たぬ所でハーバルの社長にはササッと手をやり、この場は俺にと目配せする。 「……え、何? お前、飲めるんだったの?」 「だって。……小林さま、注いで下さらなかったから」 上目遣いで少し見つめて、視線を外し、恥じらうように笑み、そのくせ次をとグラスを差し出す。 小林は意外な…

  • 水曜日の夜・4

    『……へー、……そう。……ふぅん。…………じゃあね』 イツキの電話はそんな言葉を残して切れた。 黒川は、もしかして自分は余計な事を言ったのではないかと、少し、思った。 通話を終えたイツキはスマホをポケットに仕舞い、溜息…というよりは強い鼻息を立てる。 黒川が仕事絡みで女性を相手にすることがあるのは……解ってはいるが、あえてそれを聞きた…

  • 水曜日の夜・3

    合間に、イツキは電話に出る。 飲みの席で、とも思ったが、少しでも隣の男から離れる理由が欲しかった。 席を立ち、廊下に出て、黒川の声を聞く。 『……騒がしいな』 「夜は飲み会だって言ったじゃん。…お疲れ様会、みたいな…」 『松田は来てるのか?』 「来てないよ」 ……黒川は松田の存在を気にしているようだが、それはイツキも同じだった。 確か、こ…

  • 水曜日の夜・2

    この宴席はハーバルが主催では無かったが ハーバルの新規事業のお披露目なども兼ねて、関係業者が開いてくれたものだった。 地元の寿司屋の二階の座敷。呼ばれたのは20名ほどだろうか。 社長はあちこちに挨拶に周り、イツキもそれにくっついて、ヨロシクオネガイシマスと 頭を下げる。 穏やかな、和気藹々とした席だったが……あの男の傍だけは違った。 「……まった…

  • 水曜日の夜・1

    出張の最終日。水曜日の夜はナカナカ大変だった。 二日、傍を離れただけでどうにも変な具合になってしまう黒川との関係を思いながら 午後は、林田の話を聞き流していたのだけど 『俺、近いうち、転勤なんだ。海外でも良いって希望、出してる』 などという話に、ドキリとしてしまった。 地元産業の架け橋的な商社に勤めているが、もっと視野を広げたいと思っているこ…

  • 水曜日の昼

    一仕事を終えた黒川は、昼近くにマンションの自室に戻る。 あまり好きな仕事では無いのだが…付き合いもある。無下に断るのもオカシイだろう。 接待での流れや、商品の品定めなど、実はこういった機会は月に数度はあって それはイツキに話す事柄でも無いし、ましてや謝罪も許しも、必要なものでは無い。 黒川はもう一度シャワーを浴び、夕方まで少し仮眠を取るかと寝室…

  • 水曜日の朝

    朝、ホテルの部屋で一人、起きたイツキは身支度を整え 昨日の内に買っていたコンビニのサンドイッチをつまみ もう片方の手ではスマホを握りしめ、少し、しかめっ面を見せる。 昨夜の黒川はおそらく、どこか外の、賑やかな楽しげな場所にいた。 そういう場所に行くのも仕事の内だろうし、仮に仕事では無いにしても、いちいち詮索する事ではない。 何か連絡を入れようかと…

  • 火曜日の夜

    イツキのその日の午後の仕事は、あまり、良いものでは無かった。 社長と一緒に挨拶に立ち寄った会社の男は、明らかにイツキ達を軽く見ていた。 その男は…小山というのだが…小山は元々都内の大企業に勤めていたらしく 未だにそれを鼻にかけ、自慢し、地元の小さな会社を小馬鹿にする癖があった。 『…ハーバルさんねぇ。そんなに張り切って、手、広げなくても良い…

  • 火曜日の午後

    一ノ宮が事務所に行くとそこにはすでに黒川がいた。 ソファに深く腰掛け、テーブルに足を投げ出し、ただ宙を睨んでいた。 「………お疲れさまです。………何か、問題でもありましたか?」 「いや、無い」 「…夜の会合は20時から…ですよね?」 「ああ。……そうだな、早く来すぎたな…」 何もせずにぼんやりと過ごすほど暇な男では無いはずだが、どうにも身が入ら…

  • 火曜日の昼

    午前中は小山田商店で打合せ。 新しい商品のパッケージなどを決める。 ハーバルにいた小森という女性は数ヶ月前に退職したそうで、 それ以来、何をするにも人手が足りないと社長がぼやいていた。 「もう、都内のデパート向けなんて、訳がわかんないよ。 小森さんは東京でお勤めだったからさ、そういうのも相談出来たんだけどさ。 ウチの石鹸なんて、受けるのかねぇ…」 …

  • 火曜日の午前中

    松田はハーバルの社長とも話をしていた。 オブザーバーと言えば聞こえは良いが、平たく言えばケツ持ちというやつだ。 地元優良ヤクザの松田はあちこちの事業所に顔を出し、仕事に関係のあること無い事 適当に回し、適当に流し、まあ、そんな具合で。 イツキがこちらに来る話は、ハーバルの社長が漏らした訳ではないが 新規事業の打合せで東京のスタッフを呼んでいると聞…

  • 火曜日の朝

    『……おはよ。マサヤ。昨日は連絡入れなくてごめんなさい。 ちゃんと着いてるよ。問題も無し。ホテル、良いところだよ。駅前のビジネスなんだけど温泉が付いてるの。 今日は本社に行って、何かの打ち合わせをするみたい。 じゃあ、行ってきます』 朝。そんなメッセージがイツキから届いていた。 何度か着信音が鳴っていたような気もするが…残念ながら黒川は、早…

  • 月曜日の夜

    この日は何事もなく無事に終わった。 ハーバルの社長の車で取引先をいくつか回った。 取引先と言ってもそう大きな場所ではなく、地元のショップやちょっとした趣味の店や。 土地柄なのかみな気の良いおじさんやおばさんといった感じ。出されたお茶で腹がたぷんたぷんになった。 以前、こちらにいた時に話をしたこともある人もいて 『…なんか、しばらく見ないウチに立…

  • 月曜日の昼

    ハーバル本社へは電車でも約3時間ほど。 慣れてしまえばそう遠くはない気もする。 一番最初にこちらに来た時は在来線を乗り継ぎ乗り継ぎ…で、いやに遠くに来てしまったと思ったものだが… 新幹線を使えばあっという間だ。遠足気分で浮かれて買った弁当は、半分も食べられなかった。 もうじき到着と言う案内に驚き、イツキは広げた荷物を片付ける。 「……おお、イ…

  • 月曜日の朝

    イツキが出掛けてしまう日の、前の晩の黒川は、仕事という名の飲み会で 部屋に帰ったのは明け方近く。しかもまあまあの酔っ払いだった。 朝、巣箱から出たイツキは、寝室の酒臭さに驚く。 「…マサヤ、昨日は飲み過ぎ?……俺、そろそろ出ちゃうからね?」 「……どこに?」 「今日から出張だってば。…帰るの、明々後日の木曜だよ…」 「………ああ」 イ…

  • 変わったこと

    ここ暫くで変わった事はいくつかあるが、まあ総じて 黒川が優しく、柔らかくなった事だろうか。 そんな事を本人に言えば、ふざけるなよと、まあ怒られそうだが 確かに、イツキに対する態度が、変わった。 イツキを気にかけ心配し、イツキが我儘な口をきいたとしても構わず受け入れる。 それは以前からもそうだったかも知れないが、表立って態度に出すことが多くなった…

  • イツキの話・終

    「…俺、別に、悪いこと、しないよ?」 「解っている。…そんな事を言っているんじゃない」 「…酔っ払って、色気振り撒いたりもしない。…した事、ないけど」 事務所から二人の部屋に戻り、リビングで話しの続きをする。 一応、了承は得たものの、未だ黒川は渋い顔をしていた。 帰りがけに買った焼き鳥のパックを温めて、ビールのアテにする。 「…松田さ…

  • イツキの話・3

    「…週明けの月曜日から3日間。新幹線の駅のトコにホテル取ってくれるって。 朝、ハーバルの本社に行って、そこから社長さんとあちこち回るだけ。水曜日には帰ってくるよ。 晩御飯の予定とかも…連絡した方がいい?」 「………しなくていい。俺はそこまで過干渉じゃないぞ」 「……そ?」 渋々ながら黒川の許可も得て、イツキはふふふと小さく笑う。 自分が外に出…

  • イツキの話・2

    『…………しゅっちょう!!!』 『まあ、そんなトコ。本社だけどね。新しい商品の仕入れなんだって』 『……でも、俺?……そんな大切な事なら、ミカさんの方が良いのでは…?』 『なんかね、東京で働く男の子目線が欲しいんだって』 即答で黒川に断られた話を、イツキは順を追って説明する。 新規商品の開拓目的で、ハーバルの本社から呼びが掛かったのだ。 すでに…

  • イツキの話・1

    ある日の夕方。 ハーバルの仕事を終えたイツキが黒川の事務所に立ち寄ると、丁度入れ違いに、レノンが部屋を出る所だった。 レノンも『仕事』の後なのだろうか。それにしては明るい軽やかな様子。 「……じゃあね、一ノ宮さん。今度、フルコースね。約束だよ」 部屋にいた一ノ宮にそう声を掛け、すれ違うイツキにペコリと頭を下げ、階段を降りて行った。 …

  • 雨の夕方・終

    事務所の扉が開き、黒川が入って来た。 黒川は中に一ノ宮が居るとは思わず、少し意外な顔をしていた。 「……なんだ、一ノ宮。………こんな真っ暗な部屋で何をしている?」 「……え?……ああ、いえ。少し考え事をしていました。ああ…こんな時間ですか」 雨の夕方。感傷に耽る間にすっかり外も室内も、暗くなっていた。 一ノ宮は部屋の照明を付け、冷めたコーヒ…

  • 雨の夕方・8

    はっきりとした診断は出なかったのだが、後遺症と言うものだろうか。 確かに、その怪我以降、一ノ宮は変わった。 何か憑き物が落ちたかのように、静かに、穏やかになった。 生意気だった若造が痛い目を見て、少し大人しくなったのだと周囲は笑った。 やがて所属していた組が諸々事情で解散となり、黒川は独立する。 他の組織からの声も掛かっていたが、一ノ宮は黒川の元に…

  • 雨の夕方・7

    ベッドの脇には椅子に座る黒川がいた。 顔の擦り傷にはテープが貼られ、腕に巻かれた包帯には血が滲んでいた。 一ノ宮が目を覚ました事に気づくと、少し、柔らかな表情になる。 それでも、ふんと鼻で息をし『………馬鹿が…』と悪態をつく。 『…………ざまあねぇな………みっともねぇ……』 一ノ宮が絞り出す声はあり得ないほど弱々しい。実際、生きているのが不思…

  • 雨の夕方・6

    血の気が多い、と言うよりは功を焦っていたのかも知れない。 黒川より遅れてこの世界に入った分を、早く取り返したかった。 ある時、敵対する組の情報が耳に入る。 どちらの勢力下でもない一般のクラブで、小物のチンピラ共が幅を効かせていると。 細かな悪事を重ね金を稼ぎ、それが資金源となっている。 そうやって力を付けた頃、一気にこちらに攻め入って来るというのだ…

  • 雨の夕方・5

    その頃の黒川は噂通り、反社会勢力と言われる組織に属していた。 昔から馴染みの、遠縁に当たるそうで、黒川にしてみればこの道しかないというくらい 真っ当なルート。 『……お前は、違っただろうに。…なんで戻って来たんだよ』 久々に再会した夜の街で酒を飲み、その日の内に、一ノ宮は黒川と同じ組に入ることを決めた。 再び道を外れた一ノ宮は以前…

  • 雨の夕方・4

    高校を卒業し、一年間、勉強をやり直し 次の年には一応、医学部のある大学に入学する。 元々、秀才肌で頭の回転が良かったとはいえ、札付きのワルからここまで更生するのは 本人の並々ならぬ努力があってのことだった。 この当時は、黒川とは、連絡を取っていなかった。 噂では皆、当たり前のように、ヤクザの事務所に入ったのだと口にしていた。 「…………ん?…

  • 雨の夕方・3

    高校時代にグレていたからと言って、全てが全て、ヤクザや犯罪者になる訳ではない。 一ノ宮も喫煙や飲酒、喧嘩などの悪さはしていたが、自分がそういった者になるとは思ってはいなかった。 状況が変わったのは卒業を間近に控えた頃。 一ノ宮の兄が、交通事故で死んでしまったのだ。 優秀な後継を亡くし、両親の悲嘆は測りしれなかった。 そして、後を頼めるのは…

  • 雨の夕方・2

    家は、世間一般で言えば、良い家だった。 病院を経営する父親。教育熱心な母親。跡目を期待される優秀な兄。 一ノ宮も聡明な子供だったが……兄と比較され続け、その割には望まれず。 まして父親は、金と権力にしか興味のない男。母親はその言い成り。 まあ、兄がいるのだからお前はいらないと、雑に扱われた結果、解りやすく拗ねて行った。 もともと運動神経も…

  • 雨の夕方・1

    レノンと佐野が慌ただしく事務所を出て行き、 一ノ宮はやれやれと肩で息をつき、コーヒーカップを手に、ソファから腰を上げる。 窓側に立ち、外の様子を眺める。 雨は強さを増したようだ。ガラスに雨粒が当たり筋を作って流れて行く。 「…まだまだ、怖いもの知らず、と言うところでしょうか…」 つい先刻のレノンの言動を思い出したのか、一ノ宮そう呟いて笑…

  • 僅かな時間

    事務所の扉を閉めて足早に階段を降り すぐ目の前に停めていた車にレノンを押し込み、自分も乗り 佐野は、それまで息をしていなかったのではないかと言う位 大きな大きなため息を付いて、隣りに座るレノンを見遣る。 「お、お前、一ノ宮さんに何言ってるんだよっ」 「…何って?…別に俺、変な事言ってないだろ?」 「言っただろうが、好きだのなんの。お前、事務…

  • 雨の日・最終話

    「…いや、マジ、すんません。反省してます。一ノ宮さんが拾ってくれて助かりました」 そう言って佐野は雨に濡れた頭を手で掻きながら、ペコリと頭を下げた。 ちょっとした口喧嘩でレノンを放って帰ったものの、さすがにマズイと途中で思い直し 慌てて引き返し、あちこちを探していたのだ。 タクシーで帰ってくれていれば御の字だが、また何か、別のトラブルに巻き…

  • 雨の日・6

    「ちょっとした喧嘩って何?ヤクザの抗争ってやつ? どんな怪我?……死にかけたの?」 「……まあ、そんな所です。…さ、もうお喋りはお終いです…」 さすがに一ノ宮も辟易とし、もう止めにしましょうと手の平を前に出す。 どうにも、屈託のない様子でぐいぐいと押されると…拒むタイミングを見失う。 レノンはまだ聞きたいことがあるようで、目を丸くさせ、一ノ宮…

  • 雨の日・5

    「…作戦…と言うか、まあ成り行き上…。 私も以前は社長と同じように、無理な案件を強引に押し通すタイプでしたが… …色々ありまして…、もう、今は…違うので…」 「色々って?」 「……えーと…」 レノンの質問は続く。 思わせぶりに言葉を濁し『色々あって…』と憂いてみせれば、大体の人間は事情を察し、それ以上聞いてくることはしないのだが…レノン…

  • 雨の日・4

    「レノンくんは…社長が…苦手ですか?……まあ、そう、得意な方もいないのでしょうが…」 「苦手………って言うか…、嫌い。ムカつく。あいつ……」 「…………はは…」 自分で聞いておいて予想通りの答えに、一ノ宮は思わず笑う。 レノンが今の状況になるまでに、おそらく、黒川からはかなりの圧が掛かったのだろう。 ……借金で雁字搦めにし、身体を売ればと安易に…

  • 雨の日・3

    そんなに降っているように見えなかった雨は、ホテルを出て数メートル歩いただけで 間違いだったのだと気付く。 引き返すのは癪だし、雨が凌げるところまで走って行く…ほどの体力は残っていなかったようだ。 「……佐野くんには後でキツく叱っておきましょう。でも、レノンくんも一人で動いては駄目ですよ?」 「……俺、……一人でもへーき…」 「私共が駄目なん…

  • 雨の日・2

    取り敢えず一ノ宮はレノンを事務所へと連れていく。 家に送り届けるにしろ、まず、濡れた服をどうにかしてやらないといけない。 「……あいつ、……いるの?」 「………社長ですか?…今はご不在ですよ」 「……あっそ」 駐車場に車を停めて、事務所の階段を上がる。 そう尋ねるレノンは、あまり黒川には会いたくないらしい。 先日、イツキを交え4名で食事をして、…

  • 雨の日・1

    昼過ぎから降り出した雨はいつの間にか本降りになり道路を濡らす。 一ノ宮は車のワイパーを少し早くし、スモールライトを灯す。 助手席に投げた書類をちらりと見遣り、今日の仕事が終わった事を確認する。 この近辺には黒川が管理している土地や建物がいくつかあり、定期的にそれを見て回っているのだ。 道路沿いにあるラブホテルもその一つだ。勝手が利くこともあり、ヤバ…

  • 思惑・最終話

    終わってみれば二人とも強く抱き合ったまま、少し、うとうとと眠り 目を覚ませば視線を絡め、唇を重ねる。 思惑は所詮、思惑で。 互いの思いや今の立場や、色々と確認したいこともあるのだろうが 目の前の肉の欲にかかれば、それは些細なものだった。 それでも。 「……マサヤ…」 「…何だ?」 「俺、…マサヤとのエッチ、……すき」 …

  • 思惑・6

    何度か突き上げ、奥を抉る。 イツキは艷声を上げ、身体をくねらせ、黒川を受け入れる。 一際高い声が出そうになると、手を当て、それを噛み殺す。 いつもマンションの部屋で抱かれている時の癖なのだろうが ……今日はその声が聞きたくてホテルに来ているのだと、 黒川はイツキの手を払い避け、手首をベッドに押し付ける。 もう片方の手を枕元のパネルにやって、小さな灯…

  • 思惑・5

    いつもより強めに抱いている筈なのに、イツキは一向に構う様子もなく。 …そうは言っても、少し乱暴に手を引いたり脚を広げたり、不意に敏感な部分に爪を立てたりする程度だが… 痛がり、困ったようなぐずる声を漏らしてはいるが、その程度。 口で奉仕しろよと髪の毛を掴むと、イツキは自分からするりと滑り込むように、黒川の股ぐらに顔を突っ込んだ。 「…張…

  • 思惑・4

    「……なんだ。…やる気満々かよ。…相変わらずだな…」 何も身に纏わずに正面から抱き締めてくるイツキに、黒川は少し驚き それを気取られないように、いつものように茶化してみる。 手を、イツキの背に回すと、イツキは小さく跳ね腰を引く素振りをする。 微かに当たるイツキの中心は、すでに熱を帯びているようだ。 「…何も始めていないのにコレかよ。……

  • 思惑・3

    黒川は、レストルームでイツキが立てる水音を忌々しく聞く。 直接まで食事をしていたのだから気になるのも仕方がないが、それは自分も同じで。 コトに及ぶ直前に、あれやこれやと水を差す。 興醒めするのも甚だしい。自分を、舐めているのか、とすら思う。  イツキの我儘には、多少の目は瞑って来た。 生意気を言うのは可愛いものだし、それを聞くのは大した苦でも…

  • 思惑・2

    訪れたホテルはそう新しくも無いが清潔感があり、何度か利用している。 こんな場所柄なのか、多少の問題は目を瞑ってくれる。 鍵を受け取り、部屋に向かう。狭いエレベーターの籠の中はいつでも 少し、独特な雰囲気があり、二人は黙って階数表示のパネルだけを眺める。 部屋に入ると黒川はイツキの腕を掴み、強めに引きながら歩く。 別に、逃げる相手を手込めにする訳で…

  • 思惑

    最近のイツキは生意気だと黒川は思っていた。 勿論、もう、どう扱っても良い商売道具などとは思っていないし 自分にとっておそらく、重要な存在なのだろうと……まあ認めてはいる。 だからこそイツキが望めば、お遊びのような石鹸屋の仕事も許してやるし 嫌がることも泣かせることも、極力遠ざけるように努力はしていた。 その状況にイツキは、調子に乗り、我が儘で…

  • スプリングセール

    ハーバルの店舗が入る百貨店で、春のセールが始まった。 全館上げての大売り出し。普段、そう忙しくはならないハーバルでも 良い商品が安くなり、人の流れも多くなり、それなりに忙しくなる。 仕事を始めた頃のイツキは右も左も分からず、ただ慌て、ミカに迷惑を掛けることも多かったが 今では手慣れたもので、ちょっと面倒な客でも上手くあしらう事が出来る。 商品の管…

  • 居酒屋会合・終

    食事も終わり、イツキも黒川も丁度良い酔っぱらいになる。 一ノ宮も飲んでいた筈だが、そう雰囲気は変わらない。 イツキは、少し位は、レノンと打ち解けたのではないかと思う。 仲良しコヨシになって、だからどうだという話でもあるが 常に喧嘩腰で、トラブルが起きても何も相談も出来ない、よりはマシだろう。 「……では社長。明日は16時から。車は向こうが手配…

  • 居酒屋会合・6

    「………なんだよ。俺も悪いのかよ」 一ノ宮に嗜められ、黒川はつまらなそうに呟き、酒を煽る。 まあ本当に責められている訳でも、機嫌を損ねている訳でもない。 その様子を見て、レノンは少し驚いた様子だった。 「……なんか。……違う。……もっとヤな奴だったのに……」 「………ん?………マサヤの事?………うん、ヤな奴だよね…」 思わず小…

  • 居酒屋会合・5

    普段は威勢が良く、やや乱暴な言葉遣いをするレノンだが 今日は大人しく、神妙。慣れない敬語なぞ使ったりする。 それだけ、一応、先日の一件を気にしているのだろう。 レノンだけが悪い、と言う話でもないのだけど。 「……俺と間違えて…仕返しされたって聞いて。…なんか… あの日は…俺のこと心配して来てくれてたのに…悪かったなって……」 「あ。いや…

  • 居酒屋会合・4

    テーブルに注文した料理が並び、皆、静かに食べ始める。 黒川は別にどうでも良いといった感じで、隣の一ノ宮と仕事の話しを始める。 「…レノンくん、はい。唐揚げ。…レモン掛けちゃったけど」 イツキはレノンの取り皿に料理を取ってやる。 視線を逸らせ、自分とも黒川とも視線を合わせようとしない。 まだ緊張しているのだろうかと思う。 自分に話がある、と…

  • 居酒屋会合・3

    レノンは「仕事」の相談や金の精算やらで度々事務所に顔を出していた。 先日、イツキが、自分と人違いで連れ去られた話は、佐野から聞いて知っていた 『どうせボンヤリ突っ立ってたんだろ。そんなの、俺のせいじゃない』 と言ってはみたものの…やはり、 あの時は自分の身体を気遣い、ホテルに来てくれていたのだ。 多少は……悪かったなと、気になっていた。 …

  • 居酒屋会合・2

    「申し訳ありません。お食事の席にお邪魔してしまって…」 やって来た一ノ宮はそう言って頭を下げる。 黒川は当然、連れがいることを知っていたので、ふんと鼻を鳴らすだけ。 イツキは少し驚き、「…あっ」と声をあげる。 一ノ宮の連れは、レノンだった。 相変わらず太々しい顔付きをしていたが、一応、ペコリを頭を下げた。 「レノン君が、イツキ君と話…

  • 居酒屋会合

    その日、黒川は仕事を早めに切り上げて イツキを連れて事務所の裏手にある居酒屋に来ていた。 鶏の唐揚げとメンチカツとイカリングを注文するイツキに 「見るだけで胸ヤケがする」と、黒川は鼻で笑う。 「……揚げものって、俺、ウチで出来るかな?」 「止めておけ。火事でも起こす気か」 「もうちょっと、ご飯、作れるようになりたいんだよね」 「主婦かよ。料…

  • コンビニ

    駅からマンションへの道すがら丁度良い所にコンビニがあって いつもイツキは帰り道に寄って、あれこれ買い物をするのが日課になっていた。 食料品や日用品。本当は少し離れた場所にある大型スーパーにでも行けば 種類も、価格も、満足するものが売っているのだけど…なかなか行けるものでもない。 「……マサヤが車、出してくれればいいのにね……」 イツキは小さ…

  • ヤバイイツキ・2

      ある日。 西崎が黒川の事務所に立ち寄ると、扉の鍵は開いたまま。 ノックをしても返事も無し。 「……無用心だなぁ」と、西崎が中に入ると 応接セットのソファに、イツキが寝転び、眠っていた。 西崎は少し離れてパイプ椅子に座り、ヤクザの事務所で呑気に眠る子供を眺める。 子供と言っても、確か先日、ハタチになったのだと聞いた。 自分が知り合っ…

  • ヤバイイツキ

    「こんにちは」 「おう、イツキ。久しぶりだな。なんだ?ヤられに来たのか?」 イツキが西崎の事務所に入った途端に、西崎の声が掛かる。 商品を値踏みするように上から下まで睨め付け、ニヤニヤと笑う。 「…違います。マサヤのお遣いです。西崎さん。 昨日の書類にハンコが無かったって。契約書の2ページ目。 あと、ここに押してあるの、ミトメじゃなくて実印だ…

  • 昔話・最終話

    鏡越しに映るイツキと黒川はぴたりと身体を寄せ合い まるで世界に2人きりしか居ないようで。 甘い言葉も囁く声も、息も、空気さえ……もはや必要がない。 昔、見た景色と、今、見える景色が重なる。 佐野はハンドルを握る手に、奇妙な汗をかく。 この2人は、結局。昔も今も、そう変わらないのかも知れない。 どう自分が画策しようと、間に入る余地など、ありは…

  • 昔話・6

    黒川とイツキを後部座席に乗せて、佐野は車を出す。 先ほどの愚痴は聞かれていなかったかと、鏡越しに、後の様子を伺う。 イツキは程よく酔っ払っているようだ。黒川の肩にもたれかかり 黒川はご機嫌のようだ。視線が合いそうになる。 佐野は慌てて前に向き直り、まあ大丈夫だろうと、運転に集中する。 この光景も、何度か見たと、佐野は思う。 イツキの『…

  • 昔話・5

    こんな生業だ。酷いのは百も承知。まして、イツキは商品だ。 ヤルだけヤって、使い捨てでもおかしくはない。 いちいち可哀想だの何の、言う方が間違えている。 でも、これだけ一緒にいて、情が沸くのは仕方ない。 「……やっぱ、俺が、一番、イツキの傍にいたよな? あいつだって俺を頼ってたよな。 あの頃、俺ら、本当に相思相愛だったんじゃね? あの…

  • 昔話・4

    佐野とイツキの仲は、黒川公認だった。 黒川にしてみれば、汚れたイツキの後始末、中を、洗う、ついで。 その手間賃、ぐらいの感覚なのだろうと思う。 普通に過ごしていれば、中学3年生の歳。 当然、家にも居場所がないイツキは、佐野のアパートに身を寄せることも多かった。 狭くてボロい木像アパートで、一つしか残って無かったインスタントラーメンを 分け合って食…

  • 昔話・3

    『……やだ、…やだ、……や、や……もう、や…… ぁ…』 『……イツキ。もう終いだよ。……帰るぞ』 『……や……』 安っぽいサテンのカバーが掛かった毛布を頭の上まで引き上げて 泣く、イツキを、宥める。 見知らぬ男にただヤられるだけでも嫌だろうし、それ以上に嫌な事もされるのだろう。 毛布ごと抱き締めて、大丈夫大丈夫と、耳元で声を掛ける。 気が昂ぶ…

  • 昔話・2

    最初にイツキの『仕事』の送迎を頼まれたのは、西崎経由だった気がする。 黒川が気に入っていた子供だったが、負債が嵩んだか何かで、 外に、ウリに出されたようだった。 この頃はあまり、黒川とイツキが一緒にいることは無かった。 まあ、ただの「商品」なんだろうと気にも留めなかったが。 確かまだ、中学生だ。 ホテルの入り口まで車で送り、事が終われば、誰に…

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