エビフライを食べる上手に揚げられたエビフライの衣はサクサク噛むとエビ独特の濃厚な風味が口の中いっぱいに広がりその余韻が容易には消えないよく火のとおったエビフライはしっぽまでうまいエビフライのしっぽを残す人は多いが私はしっぽまで食べるレストランで食事をするときでもエビフライはしっぽまで食べるがしっぽまで食べる少数派で臆病な私は少し人目が気になる「あら、あの人、しっぽまで食べてる」と、笑い者にされてな...
エビフライを食べる上手に揚げられたエビフライの衣はサクサク噛むとエビ独特の濃厚な風味が口の中いっぱいに広がりその余韻が容易には消えないよく火のとおったエビフライはしっぽまでうまいエビフライのしっぽを残す人は多いが私はしっぽまで食べるレストランで食事をするときでもエビフライはしっぽまで食べるがしっぽまで食べる少数派で臆病な私は少し人目が気になる「あら、あの人、しっぽまで食べてる」と、笑い者にされてな...
オオデマリ 花言葉:「優雅なたしなみ」午前7時半目を開けるとカーテンを開け放った寝室の窓から竹林の上に広がる明るい青空が見えた腰痛はもはや慢性化の様相を呈して家の用事もままならず気晴らしのスマホゲームは負け続きで挙句の果ては心乱れた末路の泥沼の睡眠不足自己嫌悪と不安の悪循環の中それでも夕べ足の底にできた大きな魚の目を電動ヤスリで削ったらびっこを引くほどの辛い痛みがウソのように消...
桜の花びらが、ひらひらと散る、散る、散るただひたすらに散る何の未練もなく次々に散ってゆくあんなに強い風に吹かれてもどしゃぶりの雨にたたかれてもしぶとく枝にしがみつき決して手をはなさなかったのに散ってゆくわけを得心したかのように今、時を得たかのように桜の花が散ってゆくうららかなこの春の日に思い残すことは何もないのか心を痛めることは何もないのか桜の花のように君は決めたんだねもう、行くんだね【あとがき】...
とある大学病院の整形外科診察室痛みが一向になくならない左足首を診てもらうためにかかりつけ医の紹介状を持って私はやってきたしかし、そんな診察の仕方ってあるのかいと思うような出来事が待っていた私の裸足の左足は診察台の上にあった中年の、眼鏡をかけた男性医師の診察が始まる医師は私の左足に顔を近づけそれから、もっとよく見ようとして私の左足を持ち上げたその持ち上げ方!医師は、私の左足のつま先を右手の人差し指と...
うららかな春の日差しを浴びて私は椿の木の傍らに立っていた白い椿の美しいことと言ったらその、透きとおるような白い色は心の高潔さの証(あかし)どんな汚(けが)れに遭おうとも決して汚れに染まることがない赤い椿の美しいことと言ったらその、人を沈黙させる深い赤は心に秘めた情熱の証ひとたび思いに火がつけば命果てても燃え続ける白地に赤を流し込んだ椿の花の美しいことと言ったらその、刺激的な文様は人を導く叡智の証繰...
アンズ 花言葉:「乙女のはにかみ」杏の花よ君にこんなにも魅かれるのには何か訳があるに違いないとは思っていたが君に与えられた花言葉を知ってやっとわかったよ雨上がりの早朝朝日に照らされて咲く君は輝くように美しいが少しはにかんでいるようにも見えるその様子があの人とそっくりだ【あとがき】 庭の杏の花が満開になりました。そのとなりの花桃の花も、一歩遅れて咲き始めました。最近...
ふくらんできた椿の蕾ふくらんだよ庭の椿の蕾がふくらんできたよ内側から力がみなぎってきてその力が花びらを内側から押し広げようとしてるように見えるよその力は、命の力だね椿の木と同じように僕たちの中にも命の力があって外に出たがってるように思う命の力は外に出て赤い椿の花のように自分を表現しようとする僕たちは走る、跳ぶ波を切って進む歌う、踊る、闘う絵を描く、楽器を奏でる詩を...
こんがらがった思いを整理しようと南に面した和室の畳の上に仰向けになる窓の向こう物干し場の隙間から青い空と、空にたなびく薄い雲が見える仰向けのまま大きく伸びをしたら何もかもどうでもよくなっちゃった「なにやってんだろう、俺は・・・」疲れがどっと出てきた自分が時間をかけてやっていることはなにもかもその場しのぎの悪あがきのような気がした自分を偽る自分が見えてくるもう一度思いっきり伸びをしてそれから力を抜い...
かつて詩人は燃えるように希求する自分の望みをメモに残してこの世を去った「・・・・・ あらゆることを 自分を勘定に入れずに よく見聞きし分かり そして忘れず ・・・・・」自分を勘定に入れずに人は生きていけるだろうか理想と現実の折り合いをつけながら私たちは生きている折り合いのつけられない理想は果たして理想といえるか現実と切り離されているからこそ理想は理想なのか詩人は理想に殉教したと思えてならない昨日も...
ユキヤナギ 花言葉:「気まま」よたよた歩きの散歩の途中うぐいすの初音を聞いたよ楽譜どおりに歌えなかったり途中で声がとぎれたり歌のレッスンは始まったばかりよちよち歩きのうぐいすの初音よちよち歩きとよたよた歩き始まりも終わりも優しく包み込んで春の日が照っていたよ何かうれしいことに出逢えそうな春の日だったよ【あとがき】 寝不足の日の散歩。次項でご紹介する西行法師の歌に導...
朝から雨はしとしとと降り続いていて今日は一日雨になった木立ちを濡らす雨は葉の上で仲間を集めひときわ大きな雫となって地面に落ち静かに土に吸い込まれていって恵みの雨となって大地をうるおす紆余曲折を経て人と人との信頼関係が深まっていくように愛が深まるのにも時間がかかるはずだあなたと私の愛もきっとそうなのだ紆余曲折を経て深まっていくのだ静かに土に吸い込まれて大地をうるおす恵みとなる雨のように私たちの愛が、...
ツバキの蕾 花言葉:「控えめな優しさ」「誇り」つばきの蕾はまだかたいよつばきの蕾はねむっているよつばきの蕾は夢を見てるよ恋しい人に出逢うためきれいな花を咲かせよう恋しい人と結ばれてやがて大きな実になろうかたいかたいつばきの蕾は熱い熱い夢を見てるよつばきの蕾よもう春だよ夢はきっとかなうよ【あとがき】 庭のつばきの木には堅い蕾がいっぱいついていて、花を咲かせるチャンスが訪れるのを...
はなやかなスイセンの花も下を向いて咲いているとどこか寂しげだうつむく君もきれいなのにどこか切ないもうこだわりを捨てて自分を縛り付けている縄を解いて根拠のない希望を抱いてもいいんじゃない?外に出て光がいっぱいの青空を見上げたら根拠のない希望がやすやすと手に入る気がするよ根拠のない希望だっていいじゃないか少しでも希望がもてたら何かが変わりそうな気がするよ【あとがき】 あちらでもこちらでも、スイセンの花...
夢を見た広い小学校の校庭で私はもう達者に歩けるようになった幼い息子を遊ばせていた空では風が狂ったように吹いていてカラスが二、三羽右に左に飛ばされながら不規則な風をとらえて舞っていた息子はカラスを指さして「カア、カア」と言いながら駆け出していった後ろを振り返ることもせずわき目もふらずカラスを追って駆け出していったその後ろ姿は見る見る遠ざかり息子はどこまでもどこまでも駆けてゆきやがてその姿は見えなくな...
ああ、空は晴れて一片の雲も見えない今日はよい天気だ庭の水仙の蕾がほころびぽつぽつと花が咲き始めた道端に咲く菜の花の黄色が目に、心に沁み入る散歩の途中ですれ違った見ず知らずの強面(こわもて)のおじさん思い切って「こんにちは」と声をかけると、意外や意外にわかに相好を崩して「こんちは」と優しい声で応えてくれたっけ体の不自由さは相変わらずいやむしろつのってきていて生きづらさはなくならないがこの春の陽気の為...
川べりの道を歩きながら考えてみたよ「希望」とはどんな色だろうか、って鮮やかな赤?妖艶で、情熱的で心がとろけそう透きとおったブルー?冷静で、理知的でちょっと冷たい汚れのない白?清楚で、博愛的ですべてを包み込んでくれそうだそれとも黒い色?・・・・そのとき枯草でおおわれた土手に咲く一叢(ひとむら)の菜の花が僕の視界に飛び込んできたんだパッと心が明るくなった菜の花の色は希望の色だ希望には菜の花の黄色がよく...
橋の上から見下ろすせせらぎは日の光をうけてキラキラと輝き川面は晴れわたった空を映してずうっと遠くまで青く染まっている土手にはまだあか抜けない菜の花がそれでも精一杯の笑顔を見せて私を待っていてくれた吹き渡る風は白く氷のような冷たい手で私の頬を撫でて去ったがあちらでもこちらでも春を喜ぶ声が飛び交い春をさがす必要などこれっぽっちもなかったあとは普段よりもちょっぴり物静かなあなたに聞いてみるだけになった「...
季節はめぐり 春が来た 春のうららかな陽射しに 水は温み風は光り山は笑いヒキガエルは穴から出て鳥は雲に入るあなたは青空を見上げて希望の在り処(ありか)を見定めようとする春が来た心ときめく出来事が向こうからやってくるような予感がする春が来たあなたにも私にも同じように公平に春が来たどうにか春と仲良くなってその力を分けてもらおうみすみす、このまま、目の前を素通りさせる手はないぞ【あとがき】 寒気がゆるみ...
私のかかりつけ医の先生は油断のならない人だ診察の時は手元のカルテやパソコン画面を見ているひととおり問診を終え血圧を測ってくださると私の方に向き直って穏やかな表情で「動きにキレがありますが、 その後、パーキンソン病の具合はどうですか」などとおっしゃる私をじろじろ見ていたわけではないので私はその一言にびっくりする観察している気配を少しも見せずに実はしっかりと観察しているのだ油断も隙も、ありゃしないパー...
庭のプラムの木もすっかり雪化粧です。「梅は咲いたか、桜はまだかいな・・・」 梅の花が満開になったのを見て一人で浮かれていたら春の雪・・・・夕闇が辺りを包む頃から降り出した雨が夜半から雪に変わり、そして朝、目が覚めて外を見たら一面の美しい雪景色雪が音を連れ去ったので外はやたらと静かだその雪も春の陽気の中であっという間に消えてなくなった春の雪のように儚く...
青い空にぽっかりと白い雲が浮かんだら勉強(べんきょ)も仕事もひと休み縁側に大の字に寝ころんで春の空を眺めよう自分を責めないように念のため自分に言い聞かせて疲れはやがて癒されると信じてあの人はがんばってるんだと思うけれど私は、少し休もう空ではお日様が生あくびをかみころしている私も、少し休もうこんな日には二度と再びめぐり合えそうもない、そんなのどかな早春の昼下がりなんだもの【あとがき】 株式会社・明治...
風の便りに聞きましたとぎれとぎれのあなたの消息待ってましたあなたの笑顔待ってましたあなたの冗談待ってましたあなたが自分をとりもどすときを春を待ち望むような気持でこれからも待ってますあなたがあなた自身のことをもっともっと心から好きになることをそしてあなたが私のことをちょっぴり好きになってくれるのを【あとがき】 3月3日、私の住んでいる地方は晴天が広がり、光がいっぱいです。人の幸せを願いたくなるような...
ネコヤナギ 花言葉:「自由」「努力が報われる」ネコヤナギネコヤナギたしかに春は来ますよねわたしにもそして今たった独りでふるえているあの人にも【あとがき】 知人から株分けしていただいたネコヤナギがすっかり根付き、今年も猫の尾のような花穂をいっぱいつけて、大空向けて背伸びをしています。吹く風はまだ冷たいですが、本格的な春ももうすぐです。 いつも応援ありがとうございます。今日も最...
フクジュソウ(ほころびだしたつぼみ) 花言葉:「幸せを招く」「永久の幸福」あちこちの花壇で、道端で福寿草が咲き出した開ききった花は美しいしきらいなわけではないが冬の厳しい寒さを克服しほころびだしたつぼみの方がもっと好きだ何か得体の知れない可能性を秘めていて楽しみはこれからだ開ききった花よりも何だか個性的な魅力さえありそうな気がする...
フサザキスイセン 花言葉:片思い 尊敬スイセンの花が咲いた早春の風の強い日移ろいやすい日の光を浴びて花を咲かせたスイセンは物思いにふけるように静かに立っていたその花は、片思いをする娘の表情をしていたあるいは、人が、尊敬する誰かを見つめているときの横顔のようにも見えたゆらめくような日の光を浴びて風の中に花を咲かせたスイ...
こんな言葉に出逢った 「さみしく感じる時間は、 戦っている時間なのだ。」そうなんださみしいときは自分に優しくするときだと思っていたさみしいときは自分をいたわってやるべきときだと思っていたさみしがっている自分に寄り添って そんな自分と一緒になってさみしくなるときだと思っていたさみしいときとはかたい殻の中に閉じこもって背中丸めて目をつむって嵐の通り過ぎるのをひたすら祈るときだと思っていたそれはそれであ...
今日は何もできなかった何もやる気が起こらない心も体も動かなかった一日居間のカーペットの上でごろごろしていたやらねばならぬことは人並みにいろいろあるのだけれど心も体も何としても動かなかった居間のカーペットの上でごろごろしてるうちにいつの間にか眠ってしまった昼寝の夢の中に不安のかたまりが入り込んできて息苦しくなって目が覚めた窓の外を見ると庭の木々たちが空に向かって両手を伸ばして叫んでいた「たすけてくれ...
大学生のときは電車通学だった電車の窓からはいろんな広告が見えた印象的な広告があった仏具店の大きな広告で仏像の写真を背景に仏教の教えが記されていた「心は形を求め、 形は心を進める」「型」の重要性様式美の本質生き方のヒントいくつかの言葉が連想されたがよくはわからなかったただ、毎日のように広告を目にするたびに仏具店の広告だからというわけでもないが耳ざわりのよいリズムの言葉を心の中でブツブツと呟いて...
完成した組み立てキット(ワルサーPPK/s)これも病気療養中のハビリの一環と生まれて初めてモデルガンの組み立てキットを買ってはみたがオートマチックピストルの組み立ての難しさに体調不良による休止と病気の障害も加わって普通の人なら1日でできあがるところ春の終わりに組み立てはじめ完成を見たのは5か月後の夏の終わりのことだった子どもの頃から図画工作は大好きだったが作業をきれ...
心は動く青い青い空を見上げた朝は心は動く流れる雲を、真っ白な雲を目で追ううちに心は動く忘れられないあなたの面影そうして目覚める薄汚い私の下心・・・【あとがき】 2月になって、私の住む地方も雪が降りましたが、ここ数日は晴れのよい天気です。春が待ち遠しい今の季節、天気がいいと、ほっとします。何かいいことが起こりそうです。被災されたみなさまにいいことが少しでも多く降り注ぎますように。これを読んでくださっ...
2月6日に降った雪ですときどき突然なんの前触れもなくたまらなく寂しくなることがあるそんなときは面白そうな映画を観に行く好きな歌を歌うおいしい握り寿司を腹いっぱい食らうなんとか気を紛らして寂しさに押しつぶされないようにするそこにはいつも一人ぼっちで何かに振り回されている自分がいる先日寝ようと思ってベッドに横たわり布団をかぶったとたん寂しさに襲われて...
冬の空にうろこ雲が現れた季節が逆戻りしたようで空を見上げて人々は最初はとまどっているようにも見えたがその興味深い文様を見ているうちに自然に口元は緩み、うれしそうにするのだった冬のうろこ雲もいいものですね冬の空よあなたの空なんだからあなたの美意識に基づいてやりたいようにやればいい空よあなたの人生なんだからあなたの価値基準にしたがって進んでいけばいいあなたはあなたを大切にしていけばいいんだ泣いても笑っ...
遠くを見やればいただきに雪を冠した山脈が見える人のこころも己のこころもうつろいやすいのはみんなうすうすわかっているだからこそ「あなたのことを いつまでも 想いつづけます」なんて言えたらこの上なく幸せだろうなだからこそ「あなたのことを いつまでも 想いつづけます」なんて言われたら天にも昇るほどうれしいだろうなあの遠い山脈に心魅かれるようにいつも何かにあこがれて生きていたいなあの遠い山脈に心魅かれるよ...
小学4年生の私はお腹が痛くて学校を休んだお腹の痛みは朝だけでお昼を過ぎたらもうすっかり元気になっていた友だちが様子を見に訪ねて来てくれた二人で神社の近くにあった駄菓子屋へ行った先客がいた同じクラスの口さがない悪童たち「あれ、今日学校休んだんじゃない?」「やーい、やーい、ずる休み!」口々にはやし立てながら悪童たちは逃げるように店を出て走り去っていった私は誰に訴えるというわけでもなく「具合、よくなった...
1月26日の朝日午前7時私の住む山里の南東の山際に冬の朝日が顔を出す空の反対側では沈んでゆく月が黙ってそれを見ている気温はマイナス6度皮の手袋を貫いて寒気が沁みとおる太陽と地球の距離は1億4960万km今、8分19秒かかってほのかにあたたかい太陽の光が私に届いた光は静かに静かに満ちて万物を励ましすべての存在に力を与えるあなたにもこの光...
病気が進行してすくみ足がひどくなってきた主治医の先生やリハビリの先生方のおかげで薬が効いているときは以前と比べて動きにそれほど遜色はないがそうでないときはけっこうしんどいときがあるたとえば、朝目が覚めてベッドの上で時間をかけて上体を起こしそろそろと床に両足を下ろすそれから、手の届く寝室の引き戸を開け入口の木枠に指をかけてよっこらしょと立ち上がるそこまででも十分にまどろっこしいのだが問題はそれからだ...
美しい夕日の中を向こうの世界に行ってしまってもう会えないと思っていた人が帰ってくる一日の仕事を終えてその日の務めを果たして心も軽く足どりも軽やかにその人は夕日の中を帰ってくる美しい夕日を見ていたらそんなことが起こりそうな気がしてきた美しい夕日の中をまだ会ったこともない人がやってくる記念すべき初対面のその期待に胸ときめかせながら恥ずかしそうに俯き加減になってその人は夕日の中をやってくる次々と湧き起こ...
「アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまたい・・・・」かつて西田佐知子さんが歌って大ヒットしたこの曲を藤 圭子さんがカバーしたCDを聞いた恋に生きる女性の一途な思いが表現されていて藤 圭子さんの歌声は感傷を超えて胸を打つ恋にやぶれたときは恋にやぶれて死にたくなったときはこの歌を唄えばいいのだと思った繰り返し繰り返し気がすむまで唄うのだそうすれば悲しみは癒えないかもしれないが死なずにすむと思うのだ...
1月3日朝 消え残る月優しくなくても君から「優しいのね」と言われると優しくなりたいと思ってしまう強くなくても君から「強いんだから」と言われると強くなりたいと思ってしまう君の誤解を僕は誤解していた君の誤解はあれは誤解ではないんだねあれは愛だったんだね【あとがき】 能登半島地震。被害状況が明らかになるにつれて、伝えらえる犠牲者の数が、日を追うごとに増...
昇り龍のような雲「ご多幸をお祈り申し上げます」いただいた年賀状の文面をたどりながらふと、書家の相田みつをさんの言葉を思い出した「しあわせはいつも 自分のこころがきめる」そうだ何が幸せなのかは自分で決めることなんだ人に迷惑をかけてはいけないけれどそうでなければ自分で決めていいんだ臆病にならずに堂々とその幸せを楽しめばいいんだそうだ人に決めてもらうこ...
私の心は曇り空そのせいかもしれません雲間にのぞく空の青が心の奥まで沁みてきます私の心は曇り空そのせいかもしれません雲間から漏れて射す陽の光が涙が出るほどあたたかいちらりと見えたそんな空の切れっぱしが細い細いお日様の光がそんなに心に沁みるのかい本当にあたたかいのかいと聞く人がいたら私は反論する代わりに決していばるわけではなくてめんどうくさいからこう言おうと思いますええ、そうなんですそのとおり悲しい恋...
年の暮れは先がないからみんな後ろを振り返る今年も私にもいろいろあっていろいろ思い実にいろいろ考えた好きになったツユクサの花落ち込む私を優しく包んだ雨の音少しがんばってみようと見上げたまぶしく青い空あの景色 あの場面 そしてあの言葉私の心に刻まれた記憶は今でもいかにも鮮明だけれどもでも実体はもう時の流れのはるかかなただ嬉しかったり辛かったりどうしようもなく悲しかったり抱く思いはさまざまだったがみんな...
縁側に続く和室の畳の上にちぎれた小さな紙切れが落ちていた拾ってゴミ箱に捨てようと腕を伸ばすとこれが・・・動いた!よく見るとチョウだったクリーム色をしたチョウが羽を畳んで横倒しになっていたどこかから家の中に迷い込み外に出られなくて体が弱ってしまったのだろうときどき羽ばたこうとするが片羽が動くだけで、もう起き上がれない拾い上げさてどうしたものかと考えるまだ命あるものをゴミ箱に捨てるのは忍びない介護する...
海外旅行から帰ってきた私の家族が10日間留守番をしていた私にお土産を買ってきてくれた「ボディーソープではすすいだ後の 肌の感触が物足りない。せっけん だと肌にこびりついた脂分まです っかり落ちて爽快だ」こう主張する私に対して「あら、ボディーソープはお肌に 優しいからいいのよ」と反論していた家人だったがみつくろってくれたお土産は石鹸だった 妻と娘それぞれ別々に一個ずつ買ってきてくれた外国の石鹸はでか...
幸せな少女はいつでも安心しきっていて私の呼びかけにも恐れることなく素直にふり向いて応えてくれるその瞳は快活さと好奇心に満ち輝きながらまっすぐに私を見つめその口元はもはやすっかり緊張を解き今にも笑い出しそうだしまたすぐにでも不機嫌にゆがみそうでもありつまりはどのような変化にも対応できる変幻自在の柔軟さをただよわせている私が悪意をもって動けばその目は機敏にその動きを察知しその身軽でしなやかな体は軽やか...
病院の清潔でこぎれいな病棟のその端っこの病室で四方を白い壁に囲まれて自分は死んでいくんだろうな信頼できる主治医の先生や優しい看護師さんたちにめんどうを見てもらいながら自分は死んでいくんだろうなでも、最近よく考えるんだけど自分は、本当は刀折れ、矢尽きて、野戦で負けた一軍の将が青空の下で切腹して果てるときのように(そのとき武将は青空をちらっと見るのだ)青空の下で死んでいきたいお日様の光がいっぱいのさわ...
車から降りて 振り返ると 燃え上がる夕陽 西の空は裂けて 光が溢れ出したように まぶしい茜色に染まり たなびく雲は 強烈な落日に焼かれて 金色に縁取られている 何かが起きる前兆のような なんという 心ゆさぶられる 景色であることか 写真を撮ろうとして スマホがないのに 気が付いて 急いで家の鍵を開け スマホ片手に戻ってみれば 遅かりし由良之助 すでに雲は動き 一幅の名画の構図は崩れて あの劇的...
長年、便秘に苦しめられてきた 最近、そんな私を見かねた妻が 食物繊維が豊富な食材を使った食事を徹底し 私に食事に関する意識改革を強硬に迫るようになった 今まで私の自主性に任せていた方針を方向転換したのだ しびれを切らして、いわば「強行手段」に打って出たのだった (「『強行手段』に打って出てくださった」というべきか) 食物繊維の波状攻撃 おかげさまでここ数日は お通じの状況がすこぶる良い ...
フォトスタンドに入った あなたの写真 僕が写した あなたの写真 あなたがあんまりきれいだから 僕が撮影をおねだりすると あなたは明るく微笑んで 僕にポーズをとってくれた 僕だけのために 微笑んでくれたあなた あなたが僕を嫌いでないと あなたが微笑みで請け合ってくれた あなたがくれた証明写真 もしも失くしてしまったら あなたはきっとこう言うだろう 「写真のあたしばかり見つめてないで...
青白い月の光に照らされて たった一人でとぼとぼと 雪の小道を歩いていると 向こうからやってくるのは すらりとした妙齢の一人の女 白い着物に長い黒髪 たたずまいは雪のように きよらかで、またはかなげで うつむき加減の面差しの そのなんという美しさ それにしても解せぬのは この極寒の真夜中に 灯りも持たずに娘が一人 寂しい山道通う怪しさ こりゃもののけのたぐいかと 急に鳥肌総身に立ち 逃げようと思...
家人が用事で室内用スリッパをぬいで出かけていったぬがれたスリッパのつま先は出口のドアに向けられて置いてある「これじゃあ、帰ってきて履くときに不便だっぺ」私は二足のスリッパを取り上げ180度回転させて、玄関の上り框近くに並べた自己満足なんだろうけれども今日はちょっぴり心を遣えてよかった【あとがき】 みなさまのブログへの訪問、応援に励まされております。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 ...
パンジー 花言葉:「物思い」「思い出」 雨はしとしと降っている 遅い秋の、夕暮れ迫る 中学校の木造校舎 その2階の、3年生の教室 白色蛍光灯の明るい光が 窓の外の夕闇の色をいっそう深めながら がらんとした教室を照らし出している 首にグレーの毛糸のマフラーを巻いた セーラー服の彼女は前の黒板のそばに立ち 詰襟の学生服を着た僕は 後ろの予定黒板の横に立っている 教室...
見たいな 美しいものを 見たいな この世の中の 美しいものを もっと見たいな 夏の、まぶしい、真っ白な入道雲のような なつかしくてものさびしい、秋の夕日のような 夢の世界に誘う、青白い月の光のような 私の心をときめかせる 美しいものを この世界に存在する 美しいものを 一つ残らず見てみたい でもまずは あなたの うれし涙を 見たいな 微笑んでいる 優しいあなたに 会いたいな【あとがき】 いよ...
寄り添うということが 私にはできなかった あなたに寄り添って あなたを助けたいと思った あなたに寄り添って あなたを幸せにしたいと思った あなたに寄り添って 何もできないのなら せめて言葉で 励まし 勇気づけたいと思った ところがあなたは ただ黙って側にいてくれることを ただ黙って話を聞いてくれることを つまり寄り添っていてくれることだけを それだけを私に望んでいたことを あなたと別れた後で ...
あなたとの別れは 淋しいだろうな、だって こんなにも二人は共感できるんだから あなたと別れたら 私はきっと、あなたを求めて とぼとぼとさ迷い歩くだろうな あなたとの別れは 辛いだろうな、だって いつもあなたのぬくもりを感じていたんだから あなたと別れたら 一人ぼっちの夜は さぞかし寒いだろうな あなたとの別れは 想像もしたくない、だって 私には立ち直れる自信なんてないんだ あなたと別れた...
パンジー 花言葉:「物思い」「思い出」 パンジーの花を眺めていたら 鼻の下に長い髭を生やして 目をぎゅっと閉じている おじいさんの顔に見えてきた 怒っている顔にも見えるし 必死に笑いをこらえている そんな表情にも見える もしかしたらこの顔は 人の想像を絶するような 大きな悲しみを背負った人の 取り繕った表情なのかもしれない 人の心のうちなんて 結局のところは分からないん...
ホトトギス 花言葉:「永遠にあなたのもの」「秘めた意志」 リビングの壁の片隅に、マザー・テレサの 小さな「日めくり名言集」が掛けられてある 01番から31番までナンバリングされた マザー・テレサの片言隻句が30枚束ねられ 日めくりで繰り返し読めるようになっている ひと月で一巡する勘定だ もう何年も前に私が本屋で買ってきたものだが 家族...
ススキの穂が激しく揺れている 空はあんなにも青く高い そうだ、風よ吹け 小さな綿毛の種子を巻き上げろ 高く高く、もっと高く そして遠くへ、もっと遠くへ お日様はめいっぱい光を放っている そうだ、風よ吹け 瞬くよりも、光よりも速く そして私の胸の奥でくすぶっている この迷いを吹き飛ばしておくれ 天上で雲は白く輝き、空気は澄み切っている そうだ、風よ吹け、もっと吹け 私の胸の中で熱くなっ...
秋の日の昼下がり 日当たりのよい 南に向いた居間のガラス戸をとおして 光がいっぱいの 明るい庭を眺める 今日は秋晴れの、よい天気だ こんな秋の日には 小鳥のさえずりや虫の声 道路を走る自動車のエンジン音 人のささやき声までも あらゆる物音が一斉に鳴りを潜め 身近な世界が一瞬の静寂に包まれる そんなときがよくあるものだ 今日はそんな静寂が続く 私の大好きな秋の午後になった 穏やかな日和の中 ...
晩夏 私は夏を思い出の額縁に入れる 胸の奥に沁み入る明るい青空も 目を射るまぶしい純白の入道雲も 万人を黙らせる傍若無人の夕立も 挑戦的なヒマワリも 控えめなアサガオも 昼寝の夢も 忍び込むそよ風も 美しく照り映える灼けた肌も 募る思いも 別離の悲しみも 私はみんなみんな 思い出の額縁に入れてしまう 夏の記憶をみんな額縁にぶち込んで 私はこの夏と きっぱりと訣別する 未練がましく過...
11月の陽射しは、暖かいけれども、鋭い 特に西日は、肌に突き刺さるようだ 西日をまともに受けた雲は 薄黄色く変色し 輪郭をぎらぎらと震わせ 怒りを露わにする 11月の陽射しは暖かく鋭いが 雲に遮られて日が翳ると 突然冷たい風が吹き始め 様相は一変、氷の世界に豹変する あの日、鋭い陽射しと冷たい風が 交互に降りかかる中 胸騒ぎを覚えながら 私は車をとばして 息子の住む町に向かった あの時から ...
葛餅を食べる 一人で食べる 黙って食べる 振りかけたきな粉でむせないように 静かに食べる 湯呑みから立ちのぼる湯気を見ながら ゆっくり食べる 窓からは朝の光 今朝は霜が降りて いちだんと寒い【あとがき】 みなさまからの応援に、心より感謝申し上げます。 今日も最後まで目を通していただき、ありがとうございました。...
「温かい生姜湯を飲んだら それまでこわばっていた体が 柔らかくなったような気がする」 体が徐々に動かなくなる 難病を患っている知人の女性が ネット上でこうつぶやいた 確かにそうだ 温かい生姜湯 温かいご飯 温かい味噌汁 お日様の陽射し 寒空の下に咲いた菊の花 あなたの笑顔 あなたの言葉 重ねた手のぬくもり 温かいものは 心も体もほぐしてくれる たとえその場になくても それを思うだけで 人を幸せな...
寒空に冴え冴えとした青白い光を放ち私の心を虜にする魅惑的な月の写真を撮ろうとスマホを構えモニター画面を見るとそこには黄色く濁った光を放つ輪郭がぼやけた、汚れた月が映っていた「今宵 月は病んでいる」自然にそんな言葉が思い浮かんだところが撮影の構えを解き直接月を見なおすと彼女は孤高の姿で夜空にその輪郭をくっきりと刻み冴え冴えとした青白い光を放っている問題を抱えているのは彼女ではなく私の方なのだ本当のと...
病気の進行とともに 異常気象による暑さのダメージが重なって 5月ごろから体の具合が思わしくなく 外出もままならなくなった ともかく、何をするにしても すぐに疲れてしまう すくみ足が強まり、足を一歩前に踏み出すのに えらい苦労をする 横になると、なかなか起き上がれない 反射的にできた動作が 意識しないとできない 4月には左右とも60kg前後あった握力も 30kg台に落ちた 本格的な夏を迎えると...
来る日も来る日も 空の写真を撮っている 男がいた 「なぜ空の写真ばっかり撮ってるんですか?」 そう問われると 男はいつも こう答えた 「なんか、こう、撮りたくなるんですよね。」 そうしてこんな体験話を付け加えたものだ 「いつもうつ向いて足元を見てると、 なんだか生きるのがつらくなってしまって。 でも、仰向いて大空を見てると、 なんだか希望が生まれてくるようで。」 そういって男は、恥ず...
雨、雨、雨。 雨がふる、雨がふっている。 今日は朝から雨がふりつづいている。 「雨降って、地固まる」という。 悪いことが起こったと思っても、 かえって良い結果になることのたとえだ。 あなたは運命に翻弄され、 雨がふりつづくように、 悲しい涙を流してきた。 悲しい涙は、どうなのだろう? 悲しい涙は、あなたに何をもたらしたのか? 悲しい涙は、あなたをどう変えたのか? おそらく、 あなたが悲しい涙を流...
空はあくまでも高く青く澄みわたり 陽射しが優しく降り注いでいる 今日は心やすらぐ 美しい秋の日になった 陽だまりのぬくもりにつつまれて トンボが一匹 羽を休めている それにしても なんて穏やかで静かで 美しい秋の日なのだろうか こんな日に思い出すのは やはりあなたのことだ あなたは愛を 惜しみなく与えるだけで 見返りを求めない そのまなざしは 優しさにあふれているが ときおり寂しさの影も...
アサガオ 花言葉:「愛情」「結束」「あなたに絡みつく」 オレが死んだときには 「浮気なやつだったな」 と世間はいうだろう オレが死んだときには 「あきれた嘘つきだった」 と評判が立つだろう オレが死んだときには 「自分勝手な男のなれの果てさ」 と人はささやき合うだろう 夢を言えば オレが死んだときには 「それでもなんだか 目はさびしげで きれいだ...
ツユクサ 花言葉:「なつかしい関係」「密かな恋」 無精ひげを生やす 自らの意志で生やしてるわけじゃないから 正確には「無精ひげが生えてくるのを 剃らずにほうっておく」だが・・・・ 無精ひげを生やす 決まり切った日常に 変化を持ち込む 無精ひげを生やす 周囲の人たちの 反応を楽しむ 無精ひげを生やす 精悍な印象が加わり 我ながら、なかなかいいな、と思う 無精ひげを生やす...
コスモス 花言葉:乙女の純真 涙のわけは 言わないわ 話したって わかってくれない 誤解されて ねじまげられて また苦しむのが 関の山よ 涙のわけを 言うときは 愛する人が 現れたとき 愛する人には 話してみたい 私の涙の ほんとのわけを きっとその人は わかってくれるわ 私の涙の ほんとのわけを 願いが叶えば いいのだけれど でもそんなこと いつになるのか ほ...
けんちん汁 年をとってから けんちん汁が好きになった 具には、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、長ネギなど 食物繊維が多い野菜が使われ、お腹にいい 便秘で苦しんできた私にとっては ありがたい御馳走である 特にコンニャクは食物繊維が多く しかも低カロリー カルシウム、カリウムも豊富で 動脈硬化の予防や便秘の改善に 大いに貢献するという...
浴槽清掃終了!築26年の我が茅屋は、その主人と同様近年とみに衰えが目立つ水道の蛇口交換から始まりトイレの温水シャワーの修理に外壁塗装の塗り直しエコキュートや3台のエアコンの修理交換など部分的に手当てを必要とする箇所が次々と明らかになり相当の出費を余儀なくされているただでさえ苦しい年金暮らしの家計のやりくりが最近は冗談抜きで厳しくなっているそんな中、持病をもつ私を支...
ジョロウグモ 9月最後の美しい朝 大きなジョロウグモが 新しい巣作りに励んでいた 巣全体をつるす「橋糸」を力強く張り渡し そこに巣の外枠となる糸と放射状の足場糸を 思いっきり広々と確保した上で 最後の仕上...
庭木の葉の先にとまっていた 黄色い小さな蝶がきれいだから 抜き足、差し足、忍び足で近づいていったら 逃げられた・・・ 取って食おうとしたわけじゃない、私は ただ近くでよく見ようとしただけなのに しかし蝶にしてみたら 自分より何百倍も大きい私という怪物が のっしのっしと近づいてきたら やっぱり身の危険を感じて 危機を回避しようと飛び立つのは 至極当然のことだ あるいはもしかしたら私から逃げたのでは...
曼殊沙華 花言葉:「情熱」「想うはあなたひとり」曼殊沙華は赤い花おしべも、めしべも、花弁も、茎もみんなみんな、まっかっかに燃えてるよ赤は情熱の色すべてを焼き尽くしても後悔のかけらも見えないよ燃え上がる恋は赤い色互いに惜しみなく与え合って見返りを求めないよ君は...
朝 目覚めると 雨 雨が降っている 雨は あきらめるための 言い訳 隠れた希望をおおう 嘘 再生のための 休息 あるいは あなたの頬を伝う ひとすじの涙 朝 目覚めると 雨が降っている 雨の朝 あなたを想う【あとがき】 9月23日、お彼岸の朝は雨でした。「ひと雨ごとに秋になると人はいう」 確か、中原中也の詩の中にこんな一節があったように記憶しています。涼しくなればいいな。 いつも応援、ありが...
アサガオの花とハチ 花は動けない でも そこに咲いているだけで ハチを呼び寄せることができる そこに咲いているだけで 見る人の足をとめてしまう そこに咲いているだけで 私の心を奪ってしまう 花は動けない でも 一生懸命咲くことで 命あるものと かかわりをもつ 一生懸命咲くことで 恋さえ立派に 成就させてみせる ツユクサのようなあなた アサガオのような君...
飼っているヒョウモントカゲモドキが いよいよ危なくなった 餌を食べなくなって10日 透明な飼育ケースの中の砂の上で 今朝も腹ばいになって動かない 給餌用の竹製のピンセットでつつくと かろうじて反応はするが 目も閉じたままで むやみやたらに頭を振り回したり 痙攣するように体を小刻みにふるわす 2~3日前からは口を開けたまま 砂の上にすっかり力尽きた様子で 昼も夜も横たわっている 自らも8匹の個体...
誰かを幸せにしたいという 大それた考えをもったとき 心しておかねばならないことがある 完璧にうまくやっていこうと思うのは 当たり前の心構えだが 人生そううまくいくものではない うまくいかないからといって 自信をなくしてはいけないのだ 難しい課題に直面し 悶え苦しみ、のたうちまわって 服がボロボロになっても 最後にはうまくいくと思うことが大切だ そして希望の灯をもち続けることだ 君が志(こころざ...
猛暑の日々が続き 冷房の効いた部屋に閉じ込められ 心も体も疲れ切っていた 日が翳り始めた夕暮れどき 部屋の空気を入れ替えようと 東に向いた窓を開けると 勢いよく風が吹き込んできた (風が出てきたんだ) 庭に出て、芝生の上にたたずみ しばらく風に吹かれていた 日が沈んだ後の おぼつかない残光の中を 光を揺らめかしながら 風が私の全身をなぶる たそがれの 頼りなげな風景の中で 私...
聖書にこう書いてあった 「与えよ。そうすれば、 自分にも与えられるであろう。」 きのう、ヨガの先生がおっしゃっていた 「手は、ものをもらうためにあるのではなくて、 与えるためにあるのです。」 あなたは、愛にあふれた人だ 好きになった人に、身も心も すべてを与えてしまう あっぱれ! お見事です! でも 危なっかしいったら ありゃしない【あとがき】〇「あたえよ。・・・」 新約聖書の「ルカによる...
「先生、この薬を飲むと どんな副作用があるんですか」 こんな私の質問に、主治医はまずこう答えた 「プラセボ効果というんですが、 薬効成分が入っていないうどん粉でも、 いい薬だと信じて飲むと、 病気の症状が改善する場合があるんです。 また、反対に、副作用があると聞くと、 人によっては知り得た副作用の一つ二つでなく すべての副作用が出現するという人もいるんですよ」 この先生にお世話に...
静かな雨音で 目が覚めた 午前5時。窓を開けて それからまたベッドに寝ころがる 窓から涼しい風が入ってくる ああ、頭がせいせいする 雨は庭の木々をぬらし 草花をぬらし 私の心をうるおす 雨の音を聞きながら 思ったんだ 君と別れるときの いつもの挨拶 「おやすみ」だけじゃ 寂しすぎるって 「おやすみ」の後には せめて「またあした」を 付け加えよう そうすればきっと 君と、そして未来と ずっと...
何年か前の年末、平日の、空席が目立つ映画館で 映画「ボヘミアン・ラプソディー」を観た その時の感動が、折に触れて鮮やかによみがえり 今も私の心を癒してくれる 映画のラストシーン 突如、「悲しみ」が 私の前に立ち現れ 私の心を鷲掴みにした 不意をつかれた無防備な私は呆然とし それから涙がどっと溢れ出し まもなく客席で嗚咽を必死にこらえる私がいた フレディ・マーキュリーが自ら弾くピアノの 美しく切...
セミの抜け殻を見つけた 8月下旬の早朝 庭に面した物干し台の ウッドデッキの側面に ぽつんと一つ、へばりついていた きのう、辺りに夕闇が迫るころ セミは7年間過ごした 闇に閉ざされた地中から 残照に照らされた地上に這い出し 板の凹凸に爪をかけ 羽化を始めたのだ 自身をおおう殻から抜け出し 大きく伸びをしてから 羽を広げ、体を乾かして ついにセミは飛び立ったのだろう セミの命が尽きる...
ヤマトシジミ なぜこんなにも 苦しい思いをするのだろうと 何度思ったことだろう 好きな人からの 手紙の返事を待っているときの あの落ち着かない気持ち なぜこんなにも 辛いのだろうと 幾度嘆いたことだろう 恋しい人からの レスが来ないときの あの焦燥感 恋をしているはずなのに 心は乱れに乱れ 恋しい人を恨むのは 間違いなのだとの 至極もっともな思いが 苦しみにさ...
ミニトマト 花言葉:感謝 涼風吹き渡る夏の朝です 今日も間違いなく日は昇り 朝露にぬれてツユクサは 青と黄色のコントラストも鮮やかな 小さくて可憐な花を咲かせています 万物がおのおの それぞれの大切な務めを果たしている 光り輝く朝です 私は庭に出て深呼吸をします 自然の息吹が 私をほっとさせてくれます 昨日、広島に住む友だちが 自分で作った茗荷のぬか漬けと 旅...
夏の青空がまぶしく広がっていると思っていたら たちまち雷鳴がとどろき、強風が巻き起こり にぎやかな蝉たちの声もかき消される 大音量の雨音 大粒の雨が凄まじい勢いで 叩きつけるように降ってきて そしてすぐに止んだ 夏空が衝動に駆られて 大声で叫んだんだ 「こんな退屈な毎日なんて、真っ平御免だ!」 生きづらさに息が詰まりそうな日々 悪夢のようにまとわりつく過去の辛い記憶 常に何かに耐えながら生きる...
ヘクソカズラ 花言葉:人嫌い 誤解を解きたい 意外性のある 病気のせいで 体が思うように動かなくなってから でもじっとしているのも嫌で 朝の日課にしているのが 家の周囲をとぼとぼと歩くこと 毎日顔を合わせるアサガオは もうすっかり顔馴染みの間柄で しかも日を追うにつれて 知り合いはどんどん増えていく 今まで気にもとめなかった 邪魔者とし...
カタバミ 花言葉:喜び 輝く心夏の朝のそぼ降る雨に濡れながら小さい小さいカタバミの花がぽつんぽつんと咲いていたその黄色い花は小さい小さい花なのに喜びではちきれそうに咲いていた小さい小さい花なのに思う存分花びらを広げ生きる喜びを振りまいていた昼近くなって見に行くとカタバミの花は炎暑に耐えようと花びらを固く閉じてじっとしていたカタバミは地面に根を張って動けないが生きるために一...
アサガオ 花言葉:明日もさわやかに かつて アイルランドの詩人が こんな言葉を残した 「二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は泥を見た。一人は星を見た」 狭い牢屋に閉じ込められていても 泥を見たり、星を見たりして 想像の翼を自由に はばたかせることはできる うつ向いて泥を見るか 夜空を仰いで星を見るか 何を見るかも選ぶことができる ...
...
自分の心の中を一人で のぞいてばかりいたら そりゃあ、不安になって 当然だよ 男心と秋の風、また 女心と秋の風、というくらい 心ほど揺れ動くものはないから あしたのことが心配だと いくら思い悩んでも 心配は消えることはない あしたはまだどこにもないだろ だから、あしたが来てみないと 結局のところはわからないんだ 大好きな君に 嫌われるんじゃないかと 急に落ち着かなくなることもある 実は、心...
ポピーは、「恋の予感」 紫のライラックは、「恋の芽生え」 ハナミズキは、「私の想いを受けとめてください」 ミモザは、「秘密の恋」 アンスリウムは、「恋に悶える心」 恋しい人に贈りたい恋の花は それこそいろいろあるけれども 物言いが率直なのに 思いやりがあって、いつも 優しく僕を受け入れてくれる そうして安らぎと平穏で 僕をそっとつつんでくれる 君と巡り合った不思議と僥倖を思うと...
千日紅 花言葉:永遠の恋 色あせぬ恋 本当に愛し合っていれば 「愛してる」なんていう必要はないさ だって、愛してることはわかるんだから でも、離れ離れになって初めてわかった 「愛してる」って言葉を君に伝えることが 君を愛することになるんだって それから僕はくせになって 面と向かって言うようにもなった 君と知り合うまでは、わからなかた 「愛してる」って言...
その鮮やかな個性は 朝露に濡れ、光り輝くように 今日も青い花弁を開いて ひっそりと ツユクサが咲いた ツユクサは朝、花開き 昼にはしぼんでしまう はかない花 あの人と出逢った時 美しい人だと思った 私はなぜか あの可憐なツユクサを 思い浮かべた あの人を知れば知るほど ツユクサのような かわいらしさもわかってきた 聡明で ユーモアのある人だった ツユクサは 小さな花だが 誇りをもって 一生懸命 ...
このところの猛烈な暑さで 体に蓄積される疲れは いっこうに減らぬどころか ますます膨れ上がり おまけに歯茎まで腫れてきて うっとうしく痛み出した 持病の、思わしくない進行に加えて この暑さによるダメージもあり 体がいうことを聞いてくれぬ いよいよ加齢による老化と 向き合っていかねばならない そんな時期にさしかかったのだ 若いころ夢中になっていたスポーツも もはや思い出の額縁に収まってしまい 人生...
私が愛するあなたのために 今、ここで、私ができることはといえば 遠くからあなたに きれぎれの言葉を贈ることぐらい その言葉はしっかりとした力と知恵をもち あなたを支え得るものでなければならないはずだが (なぜかといえば、今の私にとって あなたに言葉を贈ることは あなたを愛するということだから) 私の言葉といったら感情的で独断的で そのうえ自己満足と自己陶酔に満ちており それを受け取ったあなた...
ある剣の達人に 聞く人がいた 「なぜ毎日毎日 そんなに厳しい修行を 積んでいるのですか」 達人は答えた 「人生の一大事に備えるためだ」 一大事なんて そうざらにはない 剣の達人にとっての一大事とは 主君のために、あるいは 自分の名誉のために 命をかけて戦うことだろうか 武士ではない 私たちにとっての 一大事とはなんだろう たとえば十四日目を終えた 大相撲名古屋場所 優勝争いのトップに並...
「ブログリーダー」を活用して、あさひなせいしろうさんをフォローしませんか?
エビフライを食べる上手に揚げられたエビフライの衣はサクサク噛むとエビ独特の濃厚な風味が口の中いっぱいに広がりその余韻が容易には消えないよく火のとおったエビフライはしっぽまでうまいエビフライのしっぽを残す人は多いが私はしっぽまで食べるレストランで食事をするときでもエビフライはしっぽまで食べるがしっぽまで食べる少数派で臆病な私は少し人目が気になる「あら、あの人、しっぽまで食べてる」と、笑い者にされてな...
オオデマリ 花言葉:「優雅なたしなみ」午前7時半目を開けるとカーテンを開け放った寝室の窓から竹林の上に広がる明るい青空が見えた腰痛はもはや慢性化の様相を呈して家の用事もままならず気晴らしのスマホゲームは負け続きで挙句の果ては心乱れた末路の泥沼の睡眠不足自己嫌悪と不安の悪循環の中それでも夕べ足の底にできた大きな魚の目を電動ヤスリで削ったらびっこを引くほどの辛い痛みがウソのように消...
桜の花びらが、ひらひらと散る、散る、散るただひたすらに散る何の未練もなく次々に散ってゆくあんなに強い風に吹かれてもどしゃぶりの雨にたたかれてもしぶとく枝にしがみつき決して手をはなさなかったのに散ってゆくわけを得心したかのように今、時を得たかのように桜の花が散ってゆくうららかなこの春の日に思い残すことは何もないのか心を痛めることは何もないのか桜の花のように君は決めたんだねもう、行くんだね【あとがき】...
とある大学病院の整形外科診察室痛みが一向になくならない左足首を診てもらうためにかかりつけ医の紹介状を持って私はやってきたしかし、そんな診察の仕方ってあるのかいと思うような出来事が待っていた私の裸足の左足は診察台の上にあった中年の、眼鏡をかけた男性医師の診察が始まる医師は私の左足に顔を近づけそれから、もっとよく見ようとして私の左足を持ち上げたその持ち上げ方!医師は、私の左足のつま先を右手の人差し指と...
うららかな春の日差しを浴びて私は椿の木の傍らに立っていた白い椿の美しいことと言ったらその、透きとおるような白い色は心の高潔さの証(あかし)どんな汚(けが)れに遭おうとも決して汚れに染まることがない赤い椿の美しいことと言ったらその、人を沈黙させる深い赤は心に秘めた情熱の証ひとたび思いに火がつけば命果てても燃え続ける白地に赤を流し込んだ椿の花の美しいことと言ったらその、刺激的な文様は人を導く叡智の証繰...
アンズ 花言葉:「乙女のはにかみ」杏の花よ君にこんなにも魅かれるのには何か訳があるに違いないとは思っていたが君に与えられた花言葉を知ってやっとわかったよ雨上がりの早朝朝日に照らされて咲く君は輝くように美しいが少しはにかんでいるようにも見えるその様子があの人とそっくりだ【あとがき】 庭の杏の花が満開になりました。そのとなりの花桃の花も、一歩遅れて咲き始めました。最近...
ふくらんできた椿の蕾ふくらんだよ庭の椿の蕾がふくらんできたよ内側から力がみなぎってきてその力が花びらを内側から押し広げようとしてるように見えるよその力は、命の力だね椿の木と同じように僕たちの中にも命の力があって外に出たがってるように思う命の力は外に出て赤い椿の花のように自分を表現しようとする僕たちは走る、跳ぶ波を切って進む歌う、踊る、闘う絵を描く、楽器を奏でる詩を...
こんがらがった思いを整理しようと南に面した和室の畳の上に仰向けになる窓の向こう物干し場の隙間から青い空と、空にたなびく薄い雲が見える仰向けのまま大きく伸びをしたら何もかもどうでもよくなっちゃった「なにやってんだろう、俺は・・・」疲れがどっと出てきた自分が時間をかけてやっていることはなにもかもその場しのぎの悪あがきのような気がした自分を偽る自分が見えてくるもう一度思いっきり伸びをしてそれから力を抜い...
かつて詩人は燃えるように希求する自分の望みをメモに残してこの世を去った「・・・・・ あらゆることを 自分を勘定に入れずに よく見聞きし分かり そして忘れず ・・・・・」自分を勘定に入れずに人は生きていけるだろうか理想と現実の折り合いをつけながら私たちは生きている折り合いのつけられない理想は果たして理想といえるか現実と切り離されているからこそ理想は理想なのか詩人は理想に殉教したと思えてならない昨日も...
ユキヤナギ 花言葉:「気まま」よたよた歩きの散歩の途中うぐいすの初音を聞いたよ楽譜どおりに歌えなかったり途中で声がとぎれたり歌のレッスンは始まったばかりよちよち歩きのうぐいすの初音よちよち歩きとよたよた歩き始まりも終わりも優しく包み込んで春の日が照っていたよ何かうれしいことに出逢えそうな春の日だったよ【あとがき】 寝不足の日の散歩。次項でご紹介する西行法師の歌に導...
朝から雨はしとしとと降り続いていて今日は一日雨になった木立ちを濡らす雨は葉の上で仲間を集めひときわ大きな雫となって地面に落ち静かに土に吸い込まれていって恵みの雨となって大地をうるおす紆余曲折を経て人と人との信頼関係が深まっていくように愛が深まるのにも時間がかかるはずだあなたと私の愛もきっとそうなのだ紆余曲折を経て深まっていくのだ静かに土に吸い込まれて大地をうるおす恵みとなる雨のように私たちの愛が、...
ツバキの蕾 花言葉:「控えめな優しさ」「誇り」つばきの蕾はまだかたいよつばきの蕾はねむっているよつばきの蕾は夢を見てるよ恋しい人に出逢うためきれいな花を咲かせよう恋しい人と結ばれてやがて大きな実になろうかたいかたいつばきの蕾は熱い熱い夢を見てるよつばきの蕾よもう春だよ夢はきっとかなうよ【あとがき】 庭のつばきの木には堅い蕾がいっぱいついていて、花を咲かせるチャンスが訪れるのを...
はなやかなスイセンの花も下を向いて咲いているとどこか寂しげだうつむく君もきれいなのにどこか切ないもうこだわりを捨てて自分を縛り付けている縄を解いて根拠のない希望を抱いてもいいんじゃない?外に出て光がいっぱいの青空を見上げたら根拠のない希望がやすやすと手に入る気がするよ根拠のない希望だっていいじゃないか少しでも希望がもてたら何かが変わりそうな気がするよ【あとがき】 あちらでもこちらでも、スイセンの花...
夢を見た広い小学校の校庭で私はもう達者に歩けるようになった幼い息子を遊ばせていた空では風が狂ったように吹いていてカラスが二、三羽右に左に飛ばされながら不規則な風をとらえて舞っていた息子はカラスを指さして「カア、カア」と言いながら駆け出していった後ろを振り返ることもせずわき目もふらずカラスを追って駆け出していったその後ろ姿は見る見る遠ざかり息子はどこまでもどこまでも駆けてゆきやがてその姿は見えなくな...
ああ、空は晴れて一片の雲も見えない今日はよい天気だ庭の水仙の蕾がほころびぽつぽつと花が咲き始めた道端に咲く菜の花の黄色が目に、心に沁み入る散歩の途中ですれ違った見ず知らずの強面(こわもて)のおじさん思い切って「こんにちは」と声をかけると、意外や意外にわかに相好を崩して「こんちは」と優しい声で応えてくれたっけ体の不自由さは相変わらずいやむしろつのってきていて生きづらさはなくならないがこの春の陽気の為...
川べりの道を歩きながら考えてみたよ「希望」とはどんな色だろうか、って鮮やかな赤?妖艶で、情熱的で心がとろけそう透きとおったブルー?冷静で、理知的でちょっと冷たい汚れのない白?清楚で、博愛的ですべてを包み込んでくれそうだそれとも黒い色?・・・・そのとき枯草でおおわれた土手に咲く一叢(ひとむら)の菜の花が僕の視界に飛び込んできたんだパッと心が明るくなった菜の花の色は希望の色だ希望には菜の花の黄色がよく...
橋の上から見下ろすせせらぎは日の光をうけてキラキラと輝き川面は晴れわたった空を映してずうっと遠くまで青く染まっている土手にはまだあか抜けない菜の花がそれでも精一杯の笑顔を見せて私を待っていてくれた吹き渡る風は白く氷のような冷たい手で私の頬を撫でて去ったがあちらでもこちらでも春を喜ぶ声が飛び交い春をさがす必要などこれっぽっちもなかったあとは普段よりもちょっぴり物静かなあなたに聞いてみるだけになった「...
季節はめぐり 春が来た 春のうららかな陽射しに 水は温み風は光り山は笑いヒキガエルは穴から出て鳥は雲に入るあなたは青空を見上げて希望の在り処(ありか)を見定めようとする春が来た心ときめく出来事が向こうからやってくるような予感がする春が来たあなたにも私にも同じように公平に春が来たどうにか春と仲良くなってその力を分けてもらおうみすみす、このまま、目の前を素通りさせる手はないぞ【あとがき】 寒気がゆるみ...
私のかかりつけ医の先生は油断のならない人だ診察の時は手元のカルテやパソコン画面を見ているひととおり問診を終え血圧を測ってくださると私の方に向き直って穏やかな表情で「動きにキレがありますが、 その後、パーキンソン病の具合はどうですか」などとおっしゃる私をじろじろ見ていたわけではないので私はその一言にびっくりする観察している気配を少しも見せずに実はしっかりと観察しているのだ油断も隙も、ありゃしないパー...
庭のプラムの木もすっかり雪化粧です。「梅は咲いたか、桜はまだかいな・・・」 梅の花が満開になったのを見て一人で浮かれていたら春の雪・・・・夕闇が辺りを包む頃から降り出した雨が夜半から雪に変わり、そして朝、目が覚めて外を見たら一面の美しい雪景色雪が音を連れ去ったので外はやたらと静かだその雪も春の陽気の中であっという間に消えてなくなった春の雪のように儚く...
近火見舞いの心 親戚の家の近くで火事があり 住宅二棟が全焼した 焼けた家から100mほど離れた親戚の家は かろうじて被害はまぬがれたが 火の粉や炭化した木のかけらが降ってきて 延焼の危機の中でその恐怖に怯えていたという 妻がその家の当主といとこの関係にあったことから 妻に近火見舞いに行ってもらった お見舞いの口上を述べるとともに 何がしかのお見舞い金をお渡しした このような金銭や贈り物のやり...
明るい方へ 排便のあと出血があり それが一か月たっても止まらない 便器の水が鮮やかな紅色に染まる さすがに心配になって 今通院している大学病院の 主治医の先生に相談した 先生はその日のうちに 同院内の外科での診察を手配してくださった 診察に先立って、問診票の記入と 看護師による簡単な聞き取りがあった 私を担当してくれたのは 黒縁のメガネをかけた 愛嬌のあるふくよかな若い女性 聞き取りの間もに...
もう会えない 恥ずかしいんだ仕方がない もともとメガネはかけている 大きなマスクで口元おおい それに加えて野球帽 これなら口の動きも表情も 車の外からわからない このかっこうでハンドル握って 思いを込めて歌を唄う 歌を聞いて涙をこらえる ある日もらった手作りCD 車の中でたった一人で カーステレオでのお披露目会 マスクもはずして帽子もとって 気楽に楽しむ一人の時間 ところがどっこい思いもかけず...
悲しみ 子どもたちが家を出てそれぞれ独立し 父と母は二人暮らしになった 父が亡くなる前、父は私に言った 「お母ちゃんに優しくしてやれよ」 一人暮らしになった母に 認知症の症状が見られるようになった 定期的に隣町の病院に連れて行った 私の車で送迎した 午後の診察になることが多かったので 車の中で母に昼食のおにぎりを食べてもらった 母はときどきおにぎりを胸に詰まらせた お茶を飲んでもなかなか解消...
にぎわい 裏山の頂上から打ち上げられた花火を合図に 運動会のはじまりだ ときおり薄日が射してきて 遠くの駐車場にとめた 車のフロントガラスがまぶしく光る 人もだんだんに繰り出してきて 校庭のトラックの周囲もにぎわってきた そのうち露店からソース焼きそばのにおいも流れてくるだろう 空いっぱいの万国旗 校舎に響く行進曲 ああ、陽はのんびりと照っている 歓声は空に上がる 砂を巻き上げて、人が走る ...