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2022/06/30

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  • 来世で会う

    いつものアナウンスを、今日は聞き逃していた。誰かに押された私の体は、踏ん張っていられず、私も誰かを押していた。 今朝のことなど、すっかり忘れていた。夫が帰宅後の、最初の会話のやり取りを思い返していた。いろいろ考えていると、ふと車内の光景が蘇った。 申し訳ない気持ちで隣にいた女性に頭を下げた。しかし女性は、とても嫌そうな顔をしていた。 「電車が揺れますので、お気を付け下さい」と、いつも流れる車内アナウンスが、どのあたりを通るときに聞こえてくるのか覚えていない。 途中の駅から、立つだけで精一杯になり、四方八方、私の体は誰かに触れていた。駅に着くたび、その状態のまま、体はどんどんと奥へ流れていく。電…

  • クラスメイト

    テーブルには、マグカップが一つ、グラスが三つ置かれていた。 ちょうどおやつに相応しい時刻だった。いつもなら、デザートも注文するところだ。しかし今日は控えておく。昼食も、少なめに調整しておいた。 コートを着る季節になった。マグカップに注がれたホットコーヒーを手に、先に席に着いた。あとから続く三人は、氷の入ったグラスを手にしていた。 もう一人、相変わらず忙しい彼女は、まだこちらに来られないようだ。今日の日を迎えるにあたって、私が約束を取り付けてくれないのではと、彼女は半信半疑だった。 コーヒーを飲み終えたあと、ラインの通知音が鳴った。しばらくして、私は表に出た。こちらに向かって来る彼女、娘をすぐに…

  • 予兆

    誰かに呼ばれているような気がした。 訓練校の終了日以降の予定は、まだ決まっていない。 前回までのハローワーク来所日と違った点は、履歴書と職務経歴書の提出を求められたことだった。たいして書く内容もない、薄っぺらい書類を持参した。 そろそろ具体的に動くよう、指導があった。ハローワークでの求人をいくつかピックアップするも、実はピンと来ていない。 ハローワークや訓練校が期待する働き口は決まっていないが、いくつかやることは決めていた。 誰かの声が聞こえたわけではない。「未来の私」が何か言わんとしている様子で、私を呼んでいるような気がした。 右に行くか、左に行くか、右を選ぶか、左を選ぶか、もしくは、今する…

  • 三日月

    やっつけ仕事のつもりはないが、結果そうだと言われても仕方がない。完成品に雑さが目立つ。締切厳守のなか、それがその時の精一杯だ。 何か課題が出るたび、完成後には反省をする。次は、全てではないものの、反省点の一部は活かしつつ、習ったばかりの新しい技を取り込む。そしてまた、自分の悪い癖が浮き彫りになり、反省する。 自分を知る良い材料だ。 先日、2週間かけて課題を終わらせたばかりだったが、息つく暇もなく、次の課題が出た。その後も、立て続けに課題が出ることが決まっている。 訓練校もあと2ヶ月で終了となる。 空に三日月が浮かんでいた。 少しずつ形を変えているはずだったが、知らないうちに、三日月になるまで満…

  • 木枯らし

    買ったばかりのセーターを着た。季節外れの暑さから一変、冷たい風が体を包み込んだ。 押入の中を覗くと、げんなりした。何度片付けても、リバウンドする。奥に追いやられていた、ガスストーブを取り出した。その手前には、押入に収納してからまだ日の浅い、扇風機が横たわっていた。乱暴に突っ込まれているこたつ布団が目に入った。今週末、こたつを出そうと決めた。 実際のところ、どのくらい寝ているのだろう。ベッドに入ってから朝起きるまでの、睡眠時間は十分とはいえない。夕方の帰宅直後や、夕食後のパソコン作業の途中に、睡魔に襲われる時間を足せば、まぁそれなりと言ったところだろうか。しかし、睡眠の質はよくないだろう。 体の…

  • つもりで

    引越に伴って、大量のごみが出た。引越後も、まだ後片付けをするために、引越前の住居に足しげく通う。連日の作業で、とても疲れている。 と語っていたのは、同じマンションの住人だった。彼女が引っ越したことで、また古株住人として、一つ昇格した。 彼女の家の、増え続けた「もの」は相当な量だったようだ。「もの」を処分するのに、引越はよい機会だと言っていた。 我が家の「もの」も、とにかく多い。もし、引越をするとして、今、家にある「もの」を新居に運びたいかと問われれば、「いいえ」と速攻答える。引越をするつもりで、新居に運びたくない「もの」は、処分したらどうだろう。 ワンルームの部屋は、時々ブラックホールになる。…

  • 少しずつ

    ビルの谷間から、オレンジ色の光が放たれている。上空の雲が色づいて、そこだけ異空間のようだ。土手に上がると、川の向こうのビルの群れが良く見える。 下流に向かってしばらく歩くと、向こうから遥子ちゃんが現れる。わりと早くから私は気付いていたが、手を振るのは、距離が縮まってからにした。遠くにいる私を、遥子ちゃんは、私だと確信が持てないようだ。 太陽はビルの谷間に静かに沈んでいく。河川敷の野球場はライトアップされ、その光を白いユニフォームが反射させている。同じ道を戻ってくると、先ほどのビルの群れは、また様子の違う景色を見せてくる。 「綺麗だね」 遥子ちゃんは、先週も川の向こうを見ながら、同じ事を言ってい…

  • 四半世紀前

    家に着く頃には、もう日付が変わっていた。別れを惜しんで帰ってきたが、また近々会えそうな予感だ。 「お互い見つけられるか楽しみだね」「ほんと、それ」 数日前に、私から待ち合わせ場所の連絡をした。夜には賑やかになる、若者の街を指定したのは、都合が良いという理由からだった。彼女が滞在しているホテルからも、私が通う訓練校からも近かった。街中に出るつもりは、はなからなく、駅直結のビルで会おうと決めていた。飲食店の選択肢も多いし、ビルの名を頼りに来れば、彼女も辿り着くだろう。 私の方が先に着いた、と思われた。周りにいる人を一人一人確認する。私と同年代の女性を探すも、該当する人がいない。つまり、彼女はまだこ…

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うお座のゆめ子さん
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片付けられない「私」と向き合う
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