”がちゃっ”という音と共に目が覚める。私のアラーム音の代わりである。ベッドから起き上がり、よろよろと部屋を出る。 ダイニングから玄関に続くドアが開いた音だ。部屋を出ると、夫は背を向けて靴を履いている。”行ってらっしゃい”と声を掛けて、今日が始まる。 すっかりこのパターンが定着してしまった。 一日の終わりには、気付いた者が風呂の湯を溜める。大体は私である。自身が入るタイミングで準備をする。 その間、自室に籠っていると、ガラガラガラと風呂の蓋を開けた音が聞こえる。さてそろそろ入ろうかという時に、”お先に”という無言の知らせの代わりである。狭い家なので、風呂まですぐそこではあるが、自室から三つもドア…