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2022/06/30

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  • Princess

    彼女の、と言う表現は失礼かもしれないが、百円ショップに行くという話には驚いた。 庶民的な話から、名前にまつわるエピソードまで、ラジオから聞こえる彼女の話題は、とても楽しく、面白い。 叔母が”読み終わったからあげる”と、本をくれた。遠慮なく持ち帰ったのは、先月の帰省の時のことである。帰りの新幹線では疲れ果てて読むことはできなかったが、ちょうど最近読み終えたところである。 とてもタイミングが良い。つい先日、本の著者がラジオのパーソナリティを務めるという話題が目に留まった。珍しくラジオに耳を傾けてみた。 日本の伝統文化にも触れていたが、彼女の言うように、外国人ほど日本人は母国のことを語れる人が多くな…

  • 探し物

    「ピーラーのこと?」と夫が聞き返す。「そうそう」 ”皮むき器”という言葉を実際に口に出す機会はこんな時しかない。脳内ではピーラーではなく、皮むき器と呼んでいる。その皮むき器の在処が分からず、家族全員に聞いてみる。 台所に立つ機会がほとんどない家族だが、水切りカゴから意図せぬところに調理器具が片付けられているということがたまにある。しかし、皆、知らないという回答だった。 遥子ちゃんとのウォーキングで早速、この話題に触れた。 「ごみと一緒に捨てたんだよ」 「正解!」 マンションのごみ置き場に出したごみ袋の中から見つかった。 しかし、シンクの排水溝のごみ受けは浅く、ここに落ちても気付くはずだと遥子ち…

  • 健康に繋がる一歩

    夏に通い始めて、半年以上が経った。その間に環境を整えて、ようやくスタートラインに立つ。 ここからが、もっと長い。 すぐに見慣れてくれるだろうが、事前に友人たちには伝えておこうと、通い始めた直後に宣言した。あれから月日が経ち、そういえばそんなこと言ってたなと、今頃思っていることだろう。 痛々しい口内炎に薬が処方された。異物が内ぽっぺにあたるものだから、口内炎ができるのも当然である。 一時間ほどの診療を計三回受けて、すべての”異物”の装着を終えた。薬の他に、異物を保護するワックスも提供される。 違和感に慣れるのにも時間がかかりそうだ。 事前に知らせた友人のうち、遥子ちゃんと樹希ちゃんにはよく会う。…

  • 気合を入れる

    やると決めたことになかなか着手できない。ようやく始めても集中力が途切れる。設定した期限の先延ばしをまた先延ばす。 あらゆる場面で幾度となく経験していることだ。 片付けはもちろんのこと、他にも”やる”と決めたことがいくつかある。”何か”新しいことを始めるとき、すでに”やる”と決めたことが完了しておらず、常に気になる。 また沸々と”何か”を始めたくなっている。どれも中途半端だ。 「手と足を動かす、考える」よそ見せずにとにかくやる。繰り返しやる。終わるまでやる。 当たり前だが、動かないことには進まないのだ。 目標と期限は、自由自在で自分次第である。ざっくりしている。だからである。冒頭に述べたことが起…

  • 一つ屋根の下

    ここではない。かといって、どこなのだ? ”家のこと”についてはほとんどが苦手である。全てを書き出せば、”家のこと”は実に多い。また、これで良しという”程度”も様々である。 片付けのように積極的に挑んでいるものもあれば、手つかずのこともある。また、全くそこに考えが及ばなかったということを指摘されたりもする。 家族の形は千差万別に違いないのに、多数派の形に合わせようとする。しかし、できずに悩む。”できない”の代わりに別の”できる”がないとバランスが取れない。またその考えも、多数派の影響である。 冷静に考えれば役割分担であるから多数派の形は自然とも言えるし、客観視しても役目でしょうと言いそうである。…

  • 答え探し

    先週末、土手では撮影会さながら、桜を背景にカメラに収まる親子の姿を何組も見た。 同様に今日すれ違う親子も皆、正装している。小さな背中に大きなランドセルが背負われている姿も一緒だ。土手に居た親子もいるかもしれない。 今日は入学式だ。ピンクの花びらが風で舞っていた。まだ桜が咲いていて良かったねと心の中で呟いた。 我が子もこんな時期があったなと懐かしんだ。 先日、息子が自分の年齢を客観視したのか、アラサーだと改めて気付いて驚いていた。息子も娘も、もうとっくに成人している。 ”子育て”は卒業し、これからを模索している時期である。 常に前向きで”これから”を考えていると、楽しい。その一方で、不満げな私も…

  • 家族の娯楽に

    今夜十時から、ライブ配信があるという。冗談っぽく一緒に観ようと誘いを受けた。 そうは言うものの、彼は自室に籠って観るだろう。彼にとってはとても重要な案件だが、彼以外は情報としか捉えておらず、熱い気持ちを持ち合わせてはいない。 時間が近付いてきたので、ダイニングにあるテレビをつける。彼が部屋から出てきて、食卓の席に着いた。本当にここで一緒に観るつもりだったのかと、少し驚いた。一緒にテレビ画面を観るのは珍しい光景だ。 食卓には、食卓とセットになった椅子が二脚と、模様替えで移動してきたソファーが所狭しと配置されている。家族が揃うとそれらに座って食卓を囲う。 本当に申し訳ない。ソファーで寝っ転がって視…

  • 四月一日

    連日の寒さに、先週まで天気に恵まれたことに心底感謝した。旅行中は晴天だった。その後の帰省中も暖かい日が続いた。 とにかく寒い。 大して服は持っていない。整理ダンス一つとハンガーラック一つで、夏物と冬物をしまうのに事足りている。衣替えという作業はない。 引き出しを開ければ、その日の気温に合わせてすぐに服を取り出せるはずだが、あれやこれや寒さ対策を考えた挙句、それらが出しっぱなしになる。上着を選び直したら、ハンガーラックに戻さない。コインランドリーから戻った洗濯物も、ひっくり返して必要なものを取り出したらそのままである。 瞬く間にスペースのない自室の床は、衣類で埋もれてしまう。 配送品の段ボールも…

  • ミッション完了

    ふと窓に視線を向けると、海が広がっていた。そうだ、この路線は海沿いを走る。それにしてもこんなにも海が近かったんだと、しばらくの間眺めていた。仕事帰りの通勤客に紛れて、西へと向かっていた。 テキストでの返信に期待は皆無だ。唯一ショートメールは既読のみするという。電話が確実だが、億劫なのが正直なところだ。近くのホテルに着いたこと、明日は予定どおり訪問することを、父にメッセージで知らせた。 ここへ来るまで、叔母のところで世話になっていた。叔母と母にも、ホテルに到着したことと礼をラインに載せた。こちらは、どちらもすぐにスタンプ付きで返信が来た。 叔母の家に滞在中は、叔母と母と三人で過ごした。姉妹は顔が…

  • 非日常の続き

    取り込んだ洗濯物を畳むと、途端にくしゃみが出た。テレビで流れる天気予報のあとの花粉情報は、今では毎年恒例の見慣れた画面だ。最近、桜の開花予報のアナウンスも加わった。また自宅近くの土手は賑やかになるのだなと予想した。 上着が邪魔になってきた。グーグルマップでは一本道だと確認している。方向音痴の私でも迷わない。坂を上るとは聞いていたが、どこまでも続く坂道に目的地が姿を見せない。途中、夫が通っていた小学校の名が刻まれた看板を見つけた。慣れない自転車に立ち漕ぎができず、小さなタイヤを回転させながら進んでいく。最寄りの郵便局へ行くのに一苦労だ。 旅行後も、まだ非日常が続いている。のんびりとした時間が流れ…

  • 春の花

    あっ!と思い、慌てて一番近くにある時間を確認できるもの、携帯電話を見つけ画面をタッチした。23:59の文字を確認した途端、0:00になった。歯磨きの途中で、誕生日を迎えた。朝が早いというのに、家族も皆起きていてワサワサしていた。 「ミモザの開花が、一か月遅れています」 一面を黄色い花で覆い尽くす丘の所々には、木が植わっていた。その木をよく見ると、小さな小さな蕾が付いている。本来なら、菜の花と共にミモザの花も加わって、より一層黄色い丘になるようだ。 そう説明を受けたあと、”ほら、この前、樹希ちゃんからもらった黄色い花だよ”と、子供たちに説明する。もうすぐ誕生日だからと、彼女からもらったミモザは、…

  • こちらもまた

    ようやく”入口”を突破した。一刻も早く脱出したいという思いが強くなった。 その理由が、まとわりついた片付けからの解放だけではないと気付いた。 入口から、つまりは玄関から片を付けていく。順に陣地を広げていくようなイメージが湧く。玄関の片付けを終え、達成感を得た。 そんな気持ちと裏腹に、別のところでひねくれた気持ちが表に現れようとする。水滴が一滴でも落ちてきたなら、バランスを崩してしまいそうだ。 帰省を控え、改めて母に電話をした。到着時間の知らせと、帰りは父のところへ寄ってから自宅に戻る、と伝えた。母はなんで?と疑問を投げかけた。わざわざ行かなくてもというが、私の勝手である。 両親が離婚した日がい…

  • 親と子

    「仕事を引退しようと思ってる」 タイミングが良いというか、悪いというか。喉元まで出かかった言葉を一旦飲み込んだ。 固定電話に掛かってくる電話には基本出ない。留守番電話に吹き込まれるメッセージを確認してから、必要に応じて受話器を取る。 夕食時に掛かってきた電話に耳を傾けていると、相手はフルネームを口にした。向こうがメッセージを言い終わる前に、慌てて電話に出た。 こちらも滅多に電話はしないが、あちらからはもっと稀である。彼はいつも携帯電話から固定電話へ掛けてくる。 ただの報告だ。私に伝えておこう、それだけのことだ。仕事を引退することに驚きはしない。父は八十一歳である。 常に”商売になること”を考え…

  • まだ入り口

    玄関の本棚もまた、今まで何度も片付けている。しかし少し整える程度では済まず、まだ時間が掛かっている。 この本棚には、本が六分の一を占めていて、他は本以外である。概ね仲間同士が収まっているが、後からやってきたモノが、仲間のところへ行かず隣の番地へ紛れ込む。もしくは、そもそも仲間ではないモノがとりあえず置かれている。当時整理した書類を見直すと、時間が経過し、もう保管する必要がないモノがあったりする。それらを処分し量は減らせてはいるが、ぎゅうぎゅうに詰まった本棚がちょうどになったぐらいで、収納に余裕が出たわけではない。 そう乱していないと思われた本棚さえ、知らぬうちにこのような状態になり、片付けが必…

  • ごみの出し方

    確か今年だったはずだ。しかし、記載している日付が随分先だった。 カラーの冊子がポストに投函されていた。ごみの分別が一部変更になり、その知らせとすべてのごみの出し方をまとめてある。保存版と記載されているので、保存する。 もちろん、スマホで調べても同じ内容は記載されている。ならば紙の冊子はいらない。 「紙の時代」ではないとかいう。必要ならデータ化しておけばよい。どこかの場所ではそれが最適であるし、片付けにおいても紙の書類は捨てましょうという。もちろん理解している。 それに、この冊子を見る機会も実はあまりないかもしれない。イレギュラーな時には調べるが、普段のごみ出しの分別は把握しているからだ。 しか…

  • 模様替え

    想定していなかったが、結果快適になった。一番良かったのは”机”が広くなったことだ。 玄関を入って目の前のガラスの扉を開けると、ダイニングがある。冷蔵庫の側面に置かれた掃除機とごみ箱が出迎える。定位置はここだが、この場所を空けたいので移動させる。 ごみ箱は、すぐそばの台所の前に置く。収納扉を一枚塞ぐが致し方ない。掃除機は、自室へ運ぶ。歓迎はしないがこちらも他に行き場がない。 掃除機を自室に迎え入れただけで、模様替えを余儀なくされた。 掃除機の置き場所は一択、つまりは出し入れのしやすさを考え、扉を開けてすぐのところと決めた。まずはその空間を作るために、モノを動かさなければならない。ここを動かすとあ…

  • 東京ゼロエミポイント

    玄関のたたきを拭き掃除するのに邪魔をしていたモノが運び出された。これでようやく完了である。皆、その後は知らんぷりなのだ。 再撮影を依頼した写真が、家族ラインに送られてきた。二度目の写真の提示で、”これなら大丈夫です”と返答され、事前に告げられていた”時間がかかる”手続きに入った。 部屋の灯りを明るくしたいという娘の要望で、夫と家電量販店に出向いた。 部屋が暗く感じるのは、やはり蛍光灯のせいだろう。ついでに同じく蛍光灯を使用している息子の部屋の照明器具もLEDに取り換えることにした。 店内には新生活に向けたキャンペーンを謳った広告がある。他にもキャンペーンの文字が目に入る。客も多く、店員は対応に…

  • 誰かが決めた

    互いに求めていることが異なる。それを分かった上で、どうすればいいかを考えている。 価値観の違いはどこにでも生じる。ただ違うだけである。しかし何かを求めたり、同じ方向に向かおうとすると、理解が難しいことがある。 家事はどこからどこまでを言うのだろう。”いえのこと”と言い換えれば、想定よりずっと範囲は広くなる。 家事ができないことに、随分苦しめられた。できないことは、片付けだけではない。 何が不満なのかも、分かっている。だからこそ、家事ができないという後ろめたさはまだ拭われていなかった。 私は今、適材適所を求めている。そこに向かうために準備をする。そう、だからどうすればいいかを考えている。

  • 入口から

    玄関にある小さい本棚には、本とCDが収めてある。五日目の今日、ここの拭き掃除をした。 玄関の拭き掃除をしているという樹希ちゃんの話を聞き、玄関のたたきを雑巾で拭く。これをきっかけに、玄関から順に掃除をすることにした。二日目は玄関ドアを、三日目は小窓を、四日目は下駄箱の中を掃除した。下駄箱の中は一度片付けているので、整えるだけで済む。 本とCDを全て出して、埃を取る。ここも要る要らないの分別は今のところしなくて良い。しかし音楽CDに混じって、教材についてくるCD、ダビングしたCD、空のCDに空のケースが収納されていた。ここにあったのかと気付く。 自室の引き出しに入っているCDは、音楽CD以外の分…

  • 少しでも家の外へ

    自転車のグリップを掴む手が冷える。着込んだ上着に陽射しが照りつけ背は汗ばむ。 下り坂を軽快に走る自転車から、川の様子がよく見える。太陽の光できらきらと反射した水面は、風でゆらゆら揺れていた。 自転車のスピードに乗って、一刻も早く家に帰りたい。それは目に入った砂埃の不快感を解消したいのと、花粉にまみれたくないからだった。 花粉症の症状はまだひどくない。毎日のヨーグルトが効いているのかもしれない。しかし昨日は頭痛がした。原因は分からないが、花粉症の症状の中でも、最も困るのは時々現れる頭痛だ。 久しぶりにリサイクルショップに品を持ち込んだ。洋服が三点、鞄が一点。探せばまだ不用なモノをかき集めることも…

  • セルフレジ

    サービスカウンターで品を受け取る際に、”念のためレシートを見せて下さい”と言われた。これは想定内で、家を出る前に該当のレシートだけ、すぐに出せるようにしておいた。”ここで買ったものではないんですけど”と返答しながら、鞄のファスナーに手を掛けると、”それでしたら大丈夫です”と、先程別の店で購入した品を受け取った。 向かい風に耐えながら漕ぐ自転車は、進みが遅い。歯医者に行くついでに買い物を済ませたら、もう今日は家を出るまいと決めていた。 家に帰って、荷物を下ろしたところで気が付いた。一番邪魔な品を手に持っていない。スーパーのレジの脇に立てかけて、忘れてきたことを完全に思い出した。 レジ袋が有料化し…

  • 睡眠をとる

    日曜日と祝日の間の、平日の朝、寝坊した。誰かを起こすことも、弁当を持たせることもないので、誰も困ったりはしない。一時間ほどいつもより遅く起きると、身支度している息子が居た。今日は休日ではなかった。 朝起きて、夜に寝る。 時々何も構わず、ずっと起きていたり、ずっと寝ていたり、の生活をしたくなる。誰にも、何にも、邪魔をされずに。 だが、明日のことを考えたり、家族の生活リズムを考えると、そう勝手はできない。 今日は間違いなく休日だったが、起きた時間は平日と一緒だった。昨日の洗濯物を畳み、今日の洗濯物を干す。平日と変わらない朝だ。 特に目的もなく、ショッピングモールに出掛けた。こちらはよくある休日の光…

  • 動く

    先日書き出した、自室の片付け箇所を眺めてみた。CD、DVDが収められた収納ケースには、”それ以外”に分類されるモノもいろいろ入っていた。そこから、”それ以外”の五個だけモノを取って片付けた。 ピピピという音と共に、手を止めた。今度は片付け箇所を決めずに、十五分だけ片付けをした。 数や時間を決めて片付ける方法はよくやる手法だが、今回はどちらも少なめに設定してみた。片付けがそんなに難しいことではない気になる。 行動力は気候に左右されることがある。暑い、寒いは、やる気が削がれる。特に寒い時期、片付けが億劫になるはずだが、”今”少し動けそうなのである。 ”どうしたいのか?どうありたいのか?” 答えはま…

  • 新たな気持ちで

    無言で最後の一口を頬張るとき、駆け込みで”健康でいられますように”と願った。今年は欲張って様々な願いごとをした。 夕食時に家族が揃わないと知って、昼のうちに人数分の寿司を巻いた。海苔の長さのまま皿に並べる。席に着いた者から手に取り、西南西を向く。 達成したいことを、思い付く限り願った。 譲れないこだわりは、行動できない言い訳になってはいないかと、この頃考える。”こうありたい”に辿り着くまでの道のりに近道はない。ではどうやって、辿り着くのか。具体的に考え、行動すると決めた。 夜もまた寿司を巻く。今度は食べやすく切って皿に出す。昨日のうちに揃えておいた材料でおでんを作る。今日はぐっと冷える。 窓を…

  • お告げ

    小さな矢印が、左の端から右へゆっくり移動する。途中でその速度を落とし、上下に揺れながら「片付け」と表示されている場所で留まる。しばらく眺めていると、またゆっくり右へ移動する。 天からのお告げである。 何も触れてはいない。ノートパソコンの画面上にあるカーソルが勝手に動いているのだ。 キーボートの下部にはカーソルを動かすタッチパッドがあるが、使い慣れずに無線マウスでもなく有線マウスを使っている。どちらにも触れていないのに、不思議な現象を目の当たりにする。 私に何か告げていると、つい関連づけてしまう。 保存しているサイトの数が多い。それらのほとんどはカテゴリー分けもされていない。ほんのいくつかカテゴ…

  • 今日の出来事

    いつもと違うところはあるかと聞かれれば、マイバッグではなくスーパーの袋を下げていたと、答えていたに違いない。 前を歩く彼はカバンも持たず、小さいサイズの白いスーパーの袋だけを下げていた。この近くにあるコンビニの帰りだろう。彼がダウンベストを着用していなければ、思わず声を掛けそうなほど、その後ろ姿と歩き方は息子にそっくりだった。髪型も散髪したての息子そのものだ。 仕事をしている時間帯に歩いているはずもないが、思わずクスっとしてしまった。 彼に出会う少し前、線路沿いには電車を眺める親子がいた。お父さんに抱きかかえられた子供は、電車に向かって手を振っている。警笛がなると、それは子供に向けられた注意で…

  • 片付け箇所

    寒くて目が覚めた。掛け布団がかかっておらず、毛布だけが体を包んでいた。 エアコンのスイッチを押した。もう寿命なのか、最近、稼働するまで時間がかかる。わざわざ起きてモフモフ素材のパジャマに着替え、もう一度布団に入った。 薄暗い部屋の中で見える景色は、一層狭さを感じた。 本棚の一段は、書類が占有している。先日、書類を収めたファイルにラベルを貼って、少しは見栄えがよくなったが、それに反してその下の段は、随分とごちゃついていた。ここにはいらなくなった本を、縦や横にとぎっしり詰め込んでいた。 何冊かはすでにフリマアプリに出品中だったが、残りは長い間放置していた。それらをすべて地道に写真を撮って出品する。…

  • 雨のち晴れ

    鼻がムズッとした。翌週のテレビのニュースで納得した。東京はもう花粉が飛んでいる。 それっきり症状は治まっていたが、玄関に置いてあるマスクを忘れずに持って出た。しかし、表に出てすぐに玄関に戻った。今度は傘を手にして出発した。今年初の遥子ちゃんとのウォーキングは、雨で始まった。 今日はカフェに寄るコースにして良かった。積もる話は尽きない。 遥子ちゃんの友達は、終活をしているという。終活の一つである片付けに関しては、私も意識している。 数日前から始めた書類整理はまだ終わっていない。ファイルの背表紙にラベルを貼るという作業を終え、今までの書類整理よりは一歩前進した。これは終活を意識してのことだが、私以…

  • 再び、溜まる紙

    さすがに段ボールの収集は辞めた。注文した商品が配送される度、残して置いた段ボールはもう十分すぎるほど自室に溢れていた。フリマアプリで使用する予定なのだが、まだ段ボールを使うほどの大きさのモノを出品できていない。 ちょうど良い。段ボールのいくつかを仕分け用に並べた。 天井で突っ張っている、幅60cmの本棚の一段は書類など紙類で埋まっている。それらの紙を、種類ごとに分ける。分かりやすい分類は概ね同じファイルに収めてあったが、分類が分かりづらいモノは、それらが一緒に混ざっていた。 以前に大量の書類を処分したので、そう古い書類はない。あの時、随分頑張ったじゃないかと我ながら思う。 しかし書類を眺めてい…

  • 私も信じた道をいく

    学生時代に成瀬と同じクラスになっても、遠くから”変わった子”として眺めているだけだったに違いない。 今ならぜひ近くで、成瀬の発言に耳を傾けたいし、成瀬の動向を観察したい。もし成瀬の幼馴染だったとしても、さすがにM-1の誘いは断るだろうか。いや、なかなかない経験である。思い出の一つとして出場してもいいかもしれない。 成瀬はマイペースである。自由奔放である。周りを気にしない。 夫が度々図書館で本を借りる。面白そうだなと思う本は、私も拝借する。 続編を先に借りることにはなったが、内容的には特に問題ない。続編を読んで初めて、成長した成瀬の方を先に読んだのだと気付いたぐらいだが、成瀬のエピソードは変わら…

  • 活用する

    ほぼ一日かかった。 レシートや領収書は一箇所に保管しておいたはずだが、やはり常にファイルに収めるという習慣はついていなかったようだ。探すとあちらこちらから出てきた。相変わらずレシートを溜めてしまう癖が直らない。一度確認したレシートの山を念のためもう一度確認すると、申し訳なさそうに必要なレシートが一枚出てきた。 すでに書類は仕上がっていたが、レシートの数字を追加する。数字は何度も確認したはずだが、最後の最後、他の箇所で間違いを見つける。 例年にない早さなのではないか?確定申告が終わった。 玄関脇の自室を出入りする度、玄関の灯りがぱっと明るくなる。義実家で義母の困りごとが解決したこのシステムは、な…

  • スタート

    正月休みの終わりを告げるように、公民館の前に敷かれたブルーシートの上には、松の木が横たわっていた。 スーパーには、節分の巻き寿司の広告が貼られていた。月を追うごとに、変わりゆく季節の風物詩を目にして、また一年が過ぎていくのだなと感傷に浸ってみた。 ”こんにちは”受付の女性が明るい笑顔で挨拶する。ようやく重い腰をあげて、気分の乗らないまま歯医者へ向かった私の表情も明るくなった。去年に引き続き、歯医者へ通う。日常が舞い戻ってきた。 占いを見る。普段あまり積極的にみることはない。たまたま手にした冊子に載っていれば、チェックをする程度だ。やはり、おみくじ同様、内容はすぐに忘れてしまう。しかし、年の初め…

  • 適材適所

    幸先の良い一年になりそうだ。”大吉”という文字を目にして、気分が上がった。 おみくじはその場で内容を確認したあと、境内に結ばずいつも持ち帰る。内容はすぐ忘れてしまうので、時々見返すつもりでいるのだが、結局はそうしない。その代わり、おみくじの内容に振り回されたりもしない。 いつもはさらりと触れるおみくじも、今回は何度も読み返した。その内容が心に沁みこんでいく。 ”適材適所” 私の好きな言葉が書かれていた。人には活かされる場所があるのだという信念がある。その場所は一つに留まらず、経験を積んで、向き不向きを判断したり、好きなことを探したりと、適材も適所の範囲を増やしていければいい。 適材でも適所でも…

  • “私”

    "大丈夫"みぃが言う。 "私"を表現するのに、言語化が難しい。潜在意識に潜む何かは、恐らくはっきりしている。俯瞰的に捉えようとすると、感情が邪魔をする。 ”私“の思考の癖や”私“を形成しているものはなんだろうか?誰か教えて欲しい。 来年掲げている目標とは別に、もう一つ課題を課す。 すでに決めていることは、パソコン関連の勉強を続け技術を高めること。そしてお金に関する知識を得ること。 もう一つは、、。 立ち止まって考えること。事実と感情を客観的に見るために。 口を閉ざして、曇った表情をする私に、みぃは大丈夫と声を掛ける。 “私”の思考を探っていくための方法はなんだろうかと考え込んでしまった。 片付…

  • 今年も終わる

    ”行ってらっしゃいませ”と声を掛けられたが、私はこれから自宅に帰るところだった。 店はキャリーバッグを持つ人で混雑していた。東京の土産を買うのに、長蛇の列に並ぶ。会計を済ませると店員さんは見送りの言葉を掛けてくれた。新幹線が止まる駅まで出向いたが、新幹線に乗るのは今日ではない。 帰りにショッピングモールに寄って、裏起毛のスウェットパンツなど購入し、帰省に備えた。 ベランダに出て、冷たい空気を吸う。三回深呼吸をして心を落ち着かせた。今日は一日フル稼働になりそうだ。まずは洗濯を干す。さっきまで曇り空だったが、空が明るくなって安心した。 とうとう自宅で過ごす今年最後の日となってしまった。明日帰省する…

  • 結局忙しない

    シーンとした夜に耳を澄ませば、鈴の音が聞こえてきそうだった。いつしか眠りについて、気付けば朝になっていた。ドキドキしながら枕元をみると、大きな箱がある。期待を膨らませて箱を開けると、そこには欲しかった編み機があった。 サンタさんはどうして欲しいものが分かるのか、とても不思議だった。 クリスマスには気持ちばかり、それっぽいメニューにする。だが、あまり買い込まないようにする。先週、生協から届いた品物を最後に、冷蔵庫の食材の”調整”をしているおかげで、冷蔵庫はほぼ空っぽだ。 帰省日まであと数日しかなかった。家を空ける前は、いつも何かとやっておきたいことがある。今回は年末だから余計にそう考える。気負い…

  • 片付けの極意

    どうしても右の山が大きくなってしまう。要るモノは右へ、要らないモノは左へ。 なかなか勇気がいる。一年間使っていないモノを手放すというのは。片付けに関する本やネットの情報には、”一年使っていないモノは今後も使わないから捨てましょう”と書いてある。 長年片付けをしていて、随分手放せるようにはなっている。空っぽの部屋にモノを持ち込むなら、厳選して取捨選択できるという自信があるのだが、それも揺らぐほどの迷いっぷりだ。 バッグやポーチなどを随分前に半分ほど処分して、それらを収納していた引き出しは、スカスカになっていた。しかし、その空間に別の場所から”とりあえず”のモノが流れ込み、パンパンになってしまって…

  • 自分に問う

    日本の女性の平均寿命は八十七歳。あくまで平均であって、自身の人生の長さは知る由もない。ただのデータではあるが、それを基に言うなら、人生の折り返し地点はとうに過ぎている。しかし、残りの人生は案外まだある。 ようやく”南天”という言葉が出てきた。諦めずに思い出すことが大事だと聞いたことがあるが、その言葉が出てきたのは、もう一度玄関の前に立った翌日のことだった。ドアに飾ったリースは、赤い実をたくさんつけて鮮やかだ。実が落ちることもない、ビニール素材のリースを、今年も飾った。初代のリースも毎年飾って長年使っていた。それを処分したとき、次は生花を選んでみようと思ったのだが、具体的に決めていなかった。外出…

  • 来年もまた

    一段と寒くなった。普段は携帯しないハンドクリームを忍ばせて、電車に乗った。 遥子ちゃんとのランチは久しぶりだ。今回も二人で日程を決めてから、いつものメンバーを誘った。誘う二人は、どちらかが仕事なので揃うことはないが、珍しく四人で会えることになった。 ”リフォーム”や”健康寿命”という単語を交えた会話は、”住まい”や”人生”の長さを物語っている。私達も二十年ほどの付き合いである。 ”お肌の調子”の話題に触れたとき、一人が”最近クリームを塗る習慣が付いた”と言ったが、まさに私もそうだった。多くの人がしているであろうケアを私はしていない。今年の夏のある日、鏡に映る素足に愕然としたのをきっかけに、毎日…

  • これからを考える

    急なことでびっくりした。聞けば夏頃から準備していたようだ。”動けるうちに将来のことを考えていた方がいいよ”とアドバイスされた。 マンションの住人である彼女は、年金で一人暮らしをしている。”引越するとは思わなかった”と彼女自身が言うように、ここは終の棲家のつもりだったようだ。事情はいろいろとあるだろうが、”年金で暮らせないわ”と言う彼女の言葉には重みがあった。 つい先日も高齢者の引越の話を耳にしたばかりだ。どちらも、必要なものだけ引越先に運び、あとは置いていくと言う。処分は業者に任せるとのことだ。 物理的にすべてのモノを引越先に持っていけない状況ではあるが、これを機に一つ仕事が終わるとも考えられ…

  • 冬の空

    土手を上がると、つい伸びをした。気持ちのいい朝だ。青く澄んだ空が、とてもきれいだ。 青い空に大きな弧を描きながら、飛んでいく黒い鳥の大群に遭遇した。その群れは、あとにも、第二陣、第三陣と続き、川の上流へ向かっていった。 空気は乾燥していた。こういう時こそ”大物”を洗っておいた方がいいのだろうなと気に掛かりながら、今朝、早々に終わらせた洗濯の続きをする気にはなれなかった。まだ片付け・掃除モードに入っていない。 遥子ちゃんの話に耳を傾けながら、そのエピソードに、月日が流れる速さを改めて実感させられた。なんだかんだ、ウォーキングだけは続けようという話に繋がる。今月入ったばかりだったが、二人の予定を擦…

  • 今年最後の月

    電波時計の前に現れた息子に向かって、"時計の前に立たないで”と慌てて声を掛ける。まもなく十時である。 息子が急にカウントダウンを始めて、調子を狂わされたが、戦いはすぐに決着がついた。これで、往復四人分の新幹線の切符をすべて手に入れた。 年末の帰省に何を着ようか迷う。寒さ対策も必要だが、極力荷物にならないようにしたい。着る服があるのかないのか、結局、いまだ服の整理もできていない。もう少し日があるので、後で考えることにする。 ふるさと納税も概ね済ませた。夫が書く年賀状もすでに購入済で、送り先の住所もチェックした。お年玉用の新札も両替してある。年内が期日の”やること”もあともう少しだ。途中、ブラック…

  • 挑む

    戦いに勝った。開始時刻から一分と経たずに決着がついて安堵する。息を整えたあと、再度同じ操作をしたが、アクセスが集中しているようでサイトに繋がらなかった。見知らぬ誰かはまだ戦っているようだ。 冬の帰省は、いつぶりだろうか。この頃は、特にいつと決めずに帰省している。家族全員が揃わずとも、予定の合う者だけが同行する。 昨年末、一人で実家に帰省した夫は今年も帰省するという。今年予定の合う者は、私、息子、娘。珍しく四人揃って帰省することになった。 夫からの転送メールで、新幹線の切符が一年前から予約購入できることを知り、驚く。いつからそんなサービスを提供しているのだろうか。限られた席数ではあるが、早くに予…

  • 本人なのだが

    詰んだ。 ”メモに残す”は鉄則だと頭では分かっている。そう、だからメモのとおりの文字を入力した。なんなら記憶していた文字と同じである。 ログインできない。 まさか一年以上メールを受信していなかったとは驚愕である。サブスクの解約完了メールが届かず、発覚した。 携帯電話には複数のメールアドレスを受信できる設定にしている。そのうちの一つだけ時が止まっていた。メインのアドレスではなかったため、普段重要なメールは受信しない。そのうえ、複数のアドレスを”すべて”同じフォルダで閲覧していた。つまり毎日どこかしらからのメールは届いている。全く気付かなかった原因は、それである。 途中でパスワードを変更したようだ…

  • ブレイクタイム

    家を出る時間が五分ほど遅れた。小雨が降る中、歯医者の予約時間を気にしながら足早に歩いた。 途中、用水路がある。ここには鯉がいる。この用水路は後方にもずっと続いていて、そちらの方へ行けば亀もいる。そしてごく稀に、鯉でも亀でもなく、優雅に浮かぶ彼らに遭遇することがある。 散歩道には最適な通りだが、今日は鯉を見る余裕もない。しかし、目の前の光景に思わず足を止めた。首から下げた携帯電話のカメラを慌てて起動させる。収めた写真を誰かに見せたくて、すぐさま娘にラインを送る。送る私も、受け取る娘も、”笑笑”と文字を打って心が和む。 彼らに出会うことは滅多にない。いつもどこにいるのだろうと疑問だ。二~三羽、用水…

  • できることから

    布団の中で、お天気アプリを開く。明日の天気の心配ではない。快晴だということは知っている。 ゴォーゴォーと音が鳴り響き、窓の向こう側の木が激しく揺れているのが想像できる。まるでこれから不穏なことが起こる前触れのようだ。いつもは気にならない電車が通る音も、今日は妙に耳に入ってくる。それらの音が入り混じり、音は激しく、不安を募らせる。アプリには、強風注意報が表示されていた。 日が昇るまで何度か目が覚める。明るくなった外は、予報通り晴れていた。しかし、まだ風の音がした。気温は低く、随分と寒い。今季一番の寒さだとテレビから聞こえる。 ”やること”リストを記したメモが、パソコン周りに散乱している。この頃、…

  • シェア

    予めホームぺージの写真で、中の様子は予習済みだ。首から下げる札を渡されたあと、フロアをぐるりと回る。やはり、来る前から決めていた窓際の席に、腰を下ろした。 遠くには高いビルがそびえたち、さすが都会を思わせる。真下には校庭が見える。青い芝生の上で、体育の授業を受けている子どもたちがいる。 窓際には三人ほどが間隔を空けて座っていた。私も一つ席を空ける。タオルに包んだノートパソコンを机に出し、準備を整えたところでドリンクコーナーへ向かう。最初の一杯はコーヒーを選んだ。 朝の家事をひととおり終えても、家に居ると、日中も気になることについ時間を取られてしまう。ベッドを椅子にして、衣装ケースの上に置いたパ…

  • 流れる時間

    一週間前に、まだ早いだろうと思ったばかりだった。しかし、数日後に出したガスストーブは、もうすでに三回使用している。肌がかさつき始めたのも、この寒さのせいだと納得する。 夫と二人、各々パソコンを開いて調べものに没頭する。ふいに”ストーブを出そう”と言う夫の提案に、二つ返事で承諾する。体は寒いと感じていたようだ。 息子の部屋をノックして、押入からストーブをサッと取り出す。モノを掻き分けてストーブを取り出すことはなくなった。押入の一角は片付けが終わっていて、ストーブを置くには十分な空間が確保されていた。 モノの中でも、紙類を除いた、目に見えるモノはまだどうにか片付けられそうである。しかし、紙の書類と…

  • 現状

    明らかに、体が反応した。読書感想文が苦痛だった思い出が蘇った。 しばらくの間、休館すると聞いて、普段は行かない図書館へ二回も足を運んだ。料理の本を二冊、パソコン関連の本を三冊、そして一冊だけ小説を借りた。 高校の部活動を描いているせいか、登場人物の名前が覚えられないせいか、読み始めてから随分日が経つが、まだ読んでいる。途中、”ヘッセの「車輪の下」”という文字が目に入った。この本を知っている。本を読む習慣がなかったのに、この文字を見てハッとした。知っているということは、読書感想文のために選んだのだろう。しかし、内容は覚えていない。 今なら、もう少しまともな感想文を書けるはずだ。句読点や段落を増や…

  • 回顧

    昨日買ったばかりの、もふもふを羽織る。暖房を入れるにはまだ早いが、じっとしていると寒い。 街に出ると、いつのまにか秋服に加え、ダウンやマフラーなど冬服のアイテムが並んでいた。 冷たい空気の匂いは、実家を思い出す。冬の間、何日か雪が数㎝積もる程度での気候ではあるが、とても寒かったという印象が強い。 小学生の頃、母が妹と揃いのスウェットパンツを買ってきた。裏起毛が肌に触れ、”なんてあったかいんだろう”って感動したのをよく覚えている。 子供部屋には備え付けの洋服ダンスがあった。引き出しには、スウェットパンツはもちろん、洋服が畳んでしまわれていた。大きくなると、自身で畳んでしまうをやっていたはずだ。 …

  • 霜月

    旧暦の十二の月の名のうち、口にするのは”師走”ぐらいなものだ。その時期がやって来た。カレンダーを一枚切り離し、台所の壁に貼る。残りは一枚になった。 百均で買う定番のカレンダーは、もうとっくに店頭に並んでいた。年の瀬の気配を感じたくないのに、気が急いてしまう。年末調整やふるさと納税という言葉も耳に入ってきて、”この時期”を実感せざるを得ない。 ”やることが多い””今年中に”という言葉にいつもがんじがらめにされている。締切日があるものはともかく、それ以外のことをキャパ以上にやろうとしてしまう。結果、中途半端になるから、自分にげんなりする。毎年そんなことの繰り返しで、年の瀬は嫌いである。 私が行動し…

  • 雨の日の散歩

    腕に下げた小さなトートバックから、いい香りがする。 まだもう少し持つかなと思った雨が、出掛けようとした矢先、しとしとと降り始めた。今日は朝からどんより曇っていた。雲で覆われた空はくすんだ白い色をしていて、よくみると、グレーががった雲が所々に浮いていた。 隣の駅まで歩いた。初めて訪れた店で、先日夫が買ったものと同じものを注文した。 ここにコーヒー豆屋があることは、なんとなく知っていた。最近、再オープンしたと聞いたのは、ここを利用している樹希ちゃんからだった。改めて、コーヒー豆屋のことを認識する。 涼しくなる前、夫が食器棚の奥に眠っていたコーヒーメーカーを出してきた。夫も私もコーヒーを飲む。長らく…

  • 売ったり買ったりで快適に

    そろそろ天井に届きそうだ。 注文品が届くたび、空の段ボールは整理ダンスの上に積まれ、上手くバランスをとっていた。いつもなら、すぐにマンションのごみ置き場へ持っていくのだが、今はストックしている。その理由は、年末の大掃除で嵩の高い不用なモノが出てくれば、フリマアプリで出品するからだ。 段ボールの数だけ、モノが増えていることに気付く。消耗する日用品や食品は良いとして、最近配達された、大きな箱は何だっただろうと考える。大げさに梱包されているので、注文の品と段ボールの大きさが見合わないのだと気付いた。 フライパンだ。焦げ付かない仕様だが、この頃怪しくなっていた。寿命があるので、その時期を迎えていたよう…

  • 秋を感じる

    いつだったか、最寄り駅に行くまでの道のりで、かすかにいい香りがした。その数日後、庭にある木々がオレンジ色に色づいていることを知って、娘が言っていた”金木犀みたいな香りがする”は当たっていたのだと気付いた。 庭の金木犀は、満開に花を咲かせているとは言い難く、花は少なめだ。そのせいか、気付くのも遅い。マンションや戸建てに囲まれた庭は、日当たりがよくないのだろう。日の当たり方も隣の庭と異なり、並びの部屋の中でも、我が家は最初に影になる。その証拠に、隣家の庭の金木犀の方が、多く花を咲かせている。 時々訪ねる近くの神社は、小さいながらもいつも誰かしら参拝客がいる。少し長めに手を合わせていると、次の参拝客…

  • ウォーキング日和

    朝は、昼間より時計の針が早く進んでいる。そうでも言わないと、さっきまで”余裕”だったのに、出る間際にこんなに慌てることはない。 今日は一段と遅く家を出てしまった。だからと言って決して走ったりはしない。しばらく歩くと、遠くに見える人物が気になる。そのシルエットは、明らかに知らない人だが、もしかしたら待ち合わせの人物なのではと、しばらく目が離せない。近くまで寄るとやはり違う。 昨晩、スーパームーンだと知ってこの土手に月を見に来たが、同じ目的で来ていた人は、二組ほどの家族連れだけだった。他には、自転車で通り過ぎる人が居るぐらいで、こういう日は少し賑わう土手だが、そうでもなかった。 今朝の土手は、人も…

  • 東京のシンボル

    見下ろす街並みは、とても小さく見えた。「トミカみたい」と走る車を見て、娘が言う。 ここを訪ねるのは三回目である。毎回、同行者は異なる。いずれも、関西からやって来た身内が一緒だということは変わりない。 今回は母が来た。母と私で、急遽一泊旅行をすることになった。互いの家の方向へ向かって、どこかで落ち合おうかと迷っていたが、こちらで一度見ておきたいところがあるという。私は新幹線に乗ることなく、東京行きが決まった母を待つことになった。 世界で一番高いと言われている白い電波塔の入口で、外観は赤いタワーの方が良かったなどと言いながら、さすがに展望台まで上がると、見渡せる景色の違いに圧倒されていた。三度目の…

  • クイック・レスポンス...

    列の最後尾に並んだ。看板には"40分待ち”と書かれていた。 飲食店で並ぶお客に、予め店員が注文を取りに来るように、ここでも案内係が、列に並ぶお客に事前に用件を聞いている。 家族連れも多い。私の前には背の高い男女が並んでいる。皆、案内係の英語の質問に、英語で答える。次は私の番だ。この列の中で英語ができないのは、私ぐらいだろう。 案内係は私と目を合わせ、ほんの数秒、間をおいた。私の方から「大丈夫です」と日本語で答えた。案内係は笑顔で頷き、「後ろの方はお連れ様ですか?」と日本語で聞いてきた。「いえ、違います」と再び日本語で答えると、後ろの人に英語で話しかけていた。列の折り返し地点で、後ろの人を視界に…

  • またやってきた

    秋の行事が訪れた。年に一度、憂鬱な気分で出かけて行く。自ら予約をして向かっているのだが、行く前から帰りたい。今年はもう少し時期をずらしても良かった。去年は秋ではなく、年を跨いで冬にずれ込んでしまったのは、私の都合だった。年に一度という目安でいうなら、まだ一年も経っていなかった。 この時期にしたのは、早々に済ませたいと思いが強かったのだろう。私の口から出た、希望の予約日が今日だったのである。 台所に貼ってあるカレンダーは、十二枚綴りのうちの一枚だけで、毎月その月の分を切り離して貼りかえている。翌月の予定が入ったときには、端の方にメモをしておいて、貼りかえたタイミングで書き写す。 九月に入ってから…

  • 季節ごと

    昨晩、雨がひどく降った。”窓、閉めてる?”と夫が確認するほど、雨音は激しく部屋の中まで聞こえていた。 朝には上がっていた雨だが、今日は何度も通り雨が訪れる。夕刻、誰もいない家へ帰ると、湿度計の数字は70を超えていた。取り込んだ洗濯物も少し湿気ていた。 四季折々の風情を楽しむには、暑さも寒さも感じるのが自然ではある。しかし、年中快適な気温であって欲しいとも望む。 スーパーのハロウィンコーナーに置いてあるお菓子が、もう品薄になっていた。マンションの住民の玄関ドアに、ハロウィングッズが飾られたのはつい先日のことで、ハロウィンを意識したばかりだ。これからハロウィンを迎えようとしているのに、”IKEAは…

  • さも大事な手紙だと錯覚させているのだ。チラシを封筒に入れて、個人宛に送るという手法はどうも好きではない。 ここの住所を知り得た経緯は想像できるが、わざわざ個人情報を調べて送ってくるとは。送り主は、離れた実家がある県に所在する不動産会社だ。実家は空き家でもないのに、失礼な話である。 とある契約を解除した。契約者はそのつもりだったようだ。しかし、勘違いから契約は続いていた。途中から本人に代わって私が対応した。三度目の電話でようやく解約ができたのである。 契約を引き延ばそうと、キャンペーンを謳ったり、別のことへ誘導したりと、あちらも必死である。さすがに最後の”お得情報”は断った。 この一件で思い出し…

  • すぐ、やろうか

    窓を開けた。湿気た空気と冷たい風が入ってくる。外はしとしと雨が降っていた。 押入の中の除湿剤に水がたんまり溜まっていたことに気付いたのは、先週のことだ。定期的に見ないので、いつからこの状態だったか知らない。二間ある押入のうち、こちらの押入は湿気がひどい。除湿剤をそのままにしていたことをふと思い出して、今日ごみに出した。 反対側の扉も開ける。しかし、すぐに閉めた。ここから取り出したいモノがあるのだが、いつも断念する。もう何度目だろうか。理由は奥の収納ケースを出すのが、困難だからだ。 自室には、出品待ちの本がまだある。本の出品はバーコードを読み取れば、情報が反映されるので比較的簡単ではある。しかし…

  • 期日延長

    袖から出た腕がジリジリと焼けるほど、太陽が照りつけていたのはつい先日のことだ。今日は腕にあたる風が冷たい。 『涼しなったなぁ。ところで最近、どうなん?』 言い訳にしていた”暑さ”は、もう終わったよと言わんばかりだ。夕飯時には体が冷えて、開けっ放しの窓を閉めるほどに気温が下がる。 「片付けはお休み中。」 ここのところ、片付けをがむしゃらにやっていない。 『だいぶ、片付いたよな。』 何が言いたいのか分かる。片付いたことを褒めつつ、まだ終わりは迎えていないよねと。”夏の終わり”に”片付けの終わり”を迎えると宣言したのは私だ。思い描く”終わり”では、確かにない。その上、暑さで進まず涼しくなってからと、…

  • 涼しくなってから

    荒れた肌に、洗剤が沁みた。中指の第一関節の皺に紛れ込んだ傷口は、目立ちはしないが、繰り返しここばかり荒れていた。治りかけのところに、痒みを帯びて、無意識に掻いてしまう。 痛みを我慢しながら、水切りカゴに食器を運んでいると、壁に貼られたカレンダーが目に入る。十五夜も過ぎ、九月もあと十日ほどだった。そういえば、お月見らしいことはしなかった。 「最近、歩いてる?見掛けないから」マンションの入口ですれ違った住民に声を掛けられる。「暑いから、歩いてなくて」と私は答えながら、自転車に跨った。 遥子ちゃんとのウォーキングは、暑くなり始めてから休んでいる。ウォーキング中、隣人である彼とはいつも土手ですれ違って…

  • 実家の光景

    洒落た照明器具の下には、座面と背もたれが花柄の布で覆われた椅子と、ガラスのテーブルが置いてあった。この部屋を応接間と呼んでいて、来客用の部屋だと幼いながらに認識していた。 ただ来客を招くことはほとんどなかったはずだ。実家は商売をしていて父も母も朝から晩まで働いていた。 実家に住んでいる間、部屋割りがどう変化していったか、記憶はおぼろげだ。応接間として使っていた頃、この部屋は特に散らかっていなかったように思う。六畳ほどの部屋は、応接間の機能はなくなり、一時期私が布団を敷いて使っていたこともあった。その後は母の部屋になり、私が実家を出た頃にはタロウ専用の部屋になっていた。 一階にはもう一部屋あった…

  • みなもが語ること

    ゆらゆらとゆれる様を、ずっと眺めていた。なんて表現してよいのか、”癒し”という言葉では物足らない気がした。 藤の花で覆われているのではなく、御座のようなものが掛けられた、格子状になった棚の下で、木漏れ日を浴びていた。仰向けになって眺めていると、そこには、ゆらゆらと揺れる水面がうつっていた。 改札口を出て、右に出た。確かこちら側だったはずだ。角を曲がると、急な上り坂が現れ、こちらで間違いないと確信した。 見覚えのある建物の前に到着したのは、営業時間の五分前だ。誰もが一番乗りだと思っていた瞬間、すぅっと一人の男性が私達を横切って入口に向かった。二番目だね、なんて言いながら男性のあとに続くと、中には…

  • 秋が待ち遠しい

    Tシャツから出た腕が、ジリジリと焼けている。涼しかったのは束の間で、また暑さはぶり返していた。今日も暑い。 坂を上る途中で、自転車を降りた。せめてその先の信号までは漕いでいたかったが、諦めた。まだ坂の半分も上っていない。暑さのせいではない。体力の低下をひしひしと感じる。歩いた分、日に当たっている時間が長くなる。 家の中では短パンを履いて、足をさらけ出している。ベッドの上で、ふと膝を抱えて座っていると、足と腕の、肌の色の違いが目に入る。気にしていた矢先に、十分な日焼け対策もせず、外に出てしまう。 この暑さは、外に出るのも”意を決して”である。それでも、気になる用事を済ませるべく、外に出た。よくや…

  • 幼き頃

    デパートのおもちゃ売り場で、泣き喚いて駄々をこねて困らせる子がいた。しかしそんな我がままも、小学校に上がる頃には、ぴたっとなくなった。その理由は明確で、”お姉ちゃん”になったからだった。 小学校に上がるまで一人っ子だった私は、母にそう聞かされた。そんな一面もあったのだなと、少々驚いたりもする。 大人になってから、時々、本を読むことがある。その時々の頻度でさえ、本に触れている機会が多いと言えた。私は、必要に迫られる以外、本に触れる機会がほどんどなく過ごしてきた。 図書館に行く習慣もなく、本屋で本を買うこともほぼなく、小中高校生時代を過ごしたが、幼稚園児の頃、図書館に出入りしていたことを覚えている…

  • 暑さ和らぐ

    風が心地よい。窓を開けていると、虫の音が聞こえてきた。 暑さが続いたあとの、涼しい夜が、より心が落ち着かせてくれているのだろうか。自分に酔いしれたりして、この時間が楽しかったりする。 つい数週間前は、イライラする日も多かった。確かに暑くて、体は参っていた。原因は暑さというより、なかなか”やること”に取っかかれず、一日が終わるという日が多くあったからだ。自分に嫌気が差していた。 八月の後半は人と会う機会が続いた。その日を心待ちにしているうちに、イライラはどこかに消えていた。 残り三分の一となった、今年の過ごし方を考えた。 この頃、改めて思うことがある。変化は、少しずつということだ。急いで結果に辿…

  • 仕切り直し

    一昨日から、ベランダの植木を部屋に持ち込んでいるが、まだ戻せないでいる。雨は降ったり止んだりで、家を出ようとしたら、雨音が強くなる。天気予報はあてにならない。テレビをつければ、どのチャンネルも、台風情報だ。 明日は外出を控えようと買い出しに行くのに、天気予報に振り回されて、結局、毎日スーパーに出向いている。 雨のせいなのか、まだ暑さが残るせいなのか、なんか気持ちが乗らない。気になることが多くて、頭の中の整理ができていないのも、原因の一つかもしれない。 ”まっ、いいか” ベッドに腰掛けていると、リビングから自室に移動してきた本棚に、ぐちゃっと置かれた本が目に入る。まだ旅の目途が立っていない本達だ…

  • 猫とのご縁

    小さな引き出しには、預かった鍵が二つ入っていた。 8月のカレンダーには、猫の名が三匹、家主が留守にしている日付のところに記されていた。そのうち二匹は同じ屋根の下で暮らす。留守の家主に代わって、ご飯の用意をするのは私の役目だ。 友人宅の猫の世話の話をすると、彼は”うちも頼もうかな”と冗談半分で言う。”いいですよ”と答えた私に、彼はスマホに収められている猫の写真を見せてくれた。この猫の写真は、つい最近も見せてもらった気がする。 預かった鍵で玄関を開けると、彼の匂いがした。家主は留守だが、”お邪魔します”と声を掛けた。いつもなら続けて彼の名を呼ぶが、今日はしない。私を待ち構えて出迎えてくれる彼は、も…

  • ブーム去る

    我ながらいいアイディアだと満足する。無論景色は良くないが、この部屋は機能的に使うことを目的にしたので、そう気にならない。スペースの有効活用とはこのことだ。 部屋の使い方が変化するたび、余りものが出てくる。その一つが突っ張り棒だ。長さや太さが異なるいくつかの棒の中に、全く同じ棒を二本見つけた。 マンションがゆえに、どの部屋も天井の梁が邪魔をしているが、四畳半の自室は、一番狭いにもかかわらず、梁の出っ張り具合は一番大きい。梁は部屋を区切るように、真ん中を通っている。 その梁を利用して、先程の突っ張り棒を設置する。ちょうど壁に頭を付けたベッドから眺めるように、頭とは反対側の天井部分に、ベッドの幅と同…

  • 記憶の記録

    父と母は仕事で忙しく、まだ赤子だった私は、母の実家に預けられていた。そう聞いたのは、随分大人になってからだ。 平日は母の実家で過ごし、週末に父と母が迎えに来るという生活を送っていた。母の実家には、母の両親、母の妹が同居していた。私のことを、母の妹である叔母がよく面倒をみてくれていたそうだ。叔母に抱っこされた私は、叔母の子だと近所では思われていた。 赤子の時に預けられていた時代を経て、その後も母の実家には顔を出していたと思うが、なんとなく玄関あたりの光景を覚えているぐらいだった。母がよく口にしていた、実家のある町の名前だけは、今でもよく覚えている。 祖父母は、その後引越をして、そこで余生を過ごし…

  • 夏の風物詩

    ”まだかな?”という声が時々聞こえる。私も隣に座る息子に同じことを言う。 風はあるが、影響に値するほどでもない。明日には台風が接近するが、今日の天気は良好で安堵していたぐらいだ。中止になる要素もないが、まだ催しは始まらない。 開始時刻に到着した私達は、すでに人で埋まった河川敷の後ろの方で、横並びになって腰を下ろしていた。なんのアナウンスもないまま、三十分が経過した。突如、カウントダウンが始まり胸が高鳴る。 「どーん、どーん」 開始時刻が遅れていた分、ひと際歓声が響いた。自然と拍手が沸き起こる。心臓まで響く音と共に上がる花火は、迫力満点だった。下から噴き出るように、上から流れるように、高く上がっ…

  • どこからなのか、探っていく

    靴の底が水面にピタッとくっつくように、そっと足を置いてみた。 小さなかばんの中には、濡れた靴下が入っていた。代わりに履いている白い靴下は、お借りしたもので、後日、母が洗濯して返したのだろう。 幼稚園の庭にある、池の上に立とうなんて、魔法のようなことを思ったわけではない。ただ片足を上げて、慎重に、そっと水面に置こうとしただけだ。靴底が濡れる程度で済むはずが、足がすっぽり浸かってしまった。靴下まで濡らすなんて、小さな私は思いもよらなかった。 遠い過去で記憶が残っているのは、幼稚園の頃だ。決しておてんばな子ではない。好奇心旺盛でもない。大人しい子だった。 靴下を濡らしたときも、誰かに促されたわけでも…

  • まだ遠回りの途中

    「今までで一番上手に切れたんだけど」 食卓に出した皿の上には、旬の果物が載っている。梨をいつも通り八等分し、続いて桃も、同じく八等分した。 大きな種がある桃を、周りをそぎ落とすように切る。それから皮をむき、皿に載せる。真ん中に種がある、残った実の部分は私がかぶりつく。皿に出す桃は、形も大きさもバラバラである。これがいつものやり方だった。 最初に桃の皮を全部むき、おもむろにいつもと違う方向に包丁を入れた。側面から縦方向に種に向かって包丁を入れる。種まで到達したら、一度包丁を抜いて、八等分の幅だけずらして、もう一度真ん中の種に向かって刃を入れる。最初の一切れは、少し強引に種から引きはがすが、二切れ…

  • ゴールに向かって

    気付いたら、ソファーで寝ていた。自転車で往復二十分ほどだったが、確かに暑くて、帰ったら疲れていた。 自転車に載せられる分だけ、リサイクルショップへ持ち込んだ。明日は雨がぱらつきそうな天気予報が、背中を押す。重い腰を上げて出発した。 二カ月ほど前に模様替えが始まって、そこから”モノが家から出る”スピードが加速している。”モノが家に入ってくる”という状況も減っている。 真剣に、深刻に、悩んでいた。片付けられないということに。 片付けができない私が、どんどんモノが入って来る状況で、片付けが追い付くというのは難しい。使うところに、使うモノが入る収納が十分あれば良いのだが、やはり工夫が必要で、置き場所が…

  • 今日から

    7月のままのカレンダーが、昨日から気になっていた。12枚綴りのカレンダーを一枚ずつ切り取って、毎月一枚、カレンダーを貼りかえる。あんまり納得していないが、今のところ、台所の壁が一番見やすいので、そこに貼る。翌月以降の予定は、カレンダーの端っこにメモっておいて、貼りかえるときには、漏れなく書き写す。 8月のカレンダーに貼りかえる。今月は所々予定が入っている。 今月、一週間、今日の予定を立ててみる。結局のところ、ひととおりの家事が終わってから、始まる。 一式揃えた書類は、あとは送るだけのつもりが、そうそう、返信用の切手を貼っておく必要があった。返却希望の書類を、調理用のはかりを出してきて、何グラム…

  • 夏休みの過ごし方

    Tシャツもジーパンも、みるみるうちに、不規則な水玉模様になった。向こうの空が少し明るいのを期待するも、先へ先へ進むほど、水玉模様が増えていく。着いた店では、傘を買う人がいた。 部屋が暗くなったことに気付いて、洗濯物を取り込んだ。お天気アプリの雨雲レーダーは、このあたりを薄い色で覆っていたが、しばらくの時間帯は折り畳み傘のイラストが続いていて、”行ける”と確信した。 荷物を載せて、自転車で出発した。途中、”行ける”は“行けない”ぐらいの雨粒が、私を濡らした。それでも、来て良かった。もう傘を差す人もいなくなった帰り道、もわっとした空気に包まれても、心は晴れ晴れした。玄関に置いていた不用品を入れた紙…

  • プチプチ祭り

    「あっ、行き過ぎた」 遮断機の下りた踏切を待たずに、線路沿いを進んで次の踏切を渡った。いつもと違うことをするから、目的地を通り過ぎてしまった。少し戻ろうと、体の向きを変えた。 「いや、違う」 行き過ぎてはおらず、目的地はまだ先だった。いつもの踏切を渡らなかっただけで、方向音痴が発動した。 用を済ませ家に戻るも、荷物を持ってすぐに次の目的地へ向かう。先ほどとは逆の方向だ。我が家の不用品は、誰かの家でお役に立てるらしい。配送業者の設定を誤ったせいで、右へ左へ荷物を送る手配をする。 プチプチプチと膝で踏んだ資材が音を立てる。ベッドの足元に溢れる資材は、使う度に広げるものだから、ベッドの上を占領する。…

  • 今日も暑くて

    あと十分で家を出るという時に、ラインの通知音が鳴った。 「自転車でもいい?」 遥子ちゃんからの要望をすぐに承諾して、時間通りに家を出た。 暑さを心配しつつも、ウォーキングへ行こうと約束をしていた。普段は土手の往復だが、年に何回かはウォーキングの途中にカフェを挟み、ゆっくりおしゃべりをする。通称コメダコースで、今日もそのつもりだったが、やはり暑いと判断した遥子ちゃんから、先程のラインが来た。そう、決して無理をしてはいけない。ウォーキングを中止し、自転車でコメダへ向かう。 六月に入り、段々と暑さを感じるようになった頃、ウォーキングの時間帯を朝から夕方に変更した。”夕方はいいね”と会話を交わしたのも…

  • 誰のモノでもないモノはどこへ

    梅雨が明けた。隣駅のコインランドリーまで行く必要は、しばらくなさそうだ。 我が家には四つの部屋とダイニングキッチンがある。四部屋のうち、一部屋は約四畳半、三部屋は各々六畳ある。ここに住み始めてから、もうすぐ二十年が経つが、その間、部屋の使い方はいろいろ変化した。 息子に六畳の部屋を、娘に四畳半の部屋を与え、和室は夫と私の寝室、もう一部屋はテレビとソファーを置いていた。娘が実家を出たあとは、娘の部屋を私が譲り受け、残された三人は皆、個室を持つことになった。 さてこの度、実家に戻ってくるにあたり、娘から元の部屋に戻りたくないという申し出があった。狭いし、暗いし、冬は寒い。一人暮らしの部屋が、随分と…

  • お帰りなさい

    「疲れた」ここ数日、口にするのはこればかりだ。これほどまでに疲れが取れないとは、年齢と共に体力が低下し、回復力がなくなっていることは認めざるを得ない。 彼はとても若く、体力には自信がありそうな体格をしていた。聞けば二十代で、力仕事が好きなこともあって、転職したと言う。当日一人でやって来る彼から、事前に手伝いをお願いしたいと言われていた。確かに一人暮らしにしては、大きな洗濯機がある。エレベータがないことも、申し訳ない。 引越当日は洗濯機のみならず、前日に梱包したものの中から、一人で運べるものを選んでは、娘と私でせっせと階段を上り下りして、荷物を運び出した。 引越の方法はいろいろ考えたが、カレンダ…

  • 日常へ

    足がパンパンだった。階段の上り下りに力仕事と、もう今日は随分と疲れていた。 私が数日留守にしていても、誰も困ることはない。しかし自宅に戻ると、困っている人物がいた。”明日の服がない”と娘が言う。今にも崩れそうな、まだ洗濯されていない衣類の山をみて納得した。とりあえず急ぐものだけ洗濯をするも、脱水が終わる頃には近くのコインランドリーの閉店時間が過ぎていた。24時間営業している、隣駅のコインランドリーまで、疲れた足で自転車を漕いでいく。 昨日、夜な夜な一回分の洗濯をしたが、皆がお風呂に入ると、洗濯物の山は元の高さに戻っていた。天気は雨で、今日もコインランドリーへ行くことにした。こんな日は混むので、…

  • 夏を乗り切る

    窓から入る風が心地よい。クーラーをつけずに過ごせる時間が少しでもあると、ホッとする。 暑いのは、やはり好きではない。クーラーで冷やせば良いというわけでもない。これから暑い日は続くというのに、早くも秋が待ち遠しい。 暑い夏を乗り切ると同時に、区切りをつけたい。気になることがたくさんあるので、すべてとはいかないが、その中のいくつかは、夏の終わりを目標に、こつこつと進めたい。 やろうと思ってもなかなか手を付けない、悪い癖がある。ようやくやり始めて、思いの外、簡単だったり、または時間がかかるのだと気付いたり、どちらにせよ、早く取り掛かれば良いのに、といつも思う。 今週、イベントごとが立て続けにあるが、…

  • この町で

    猛暑が続く。まだ夏休みを迎えていない、ランドセルを背負った小学生とすれ違う。もうこの時間からすでに暑い。 ごみ袋を片手に向かった場所には、先客がいて驚いた。こんな日でも利用する人がいるのだなと思った。年配の彼女は、日常のモノを普通サイズの洗濯機に入れたら去って行った。昨日下見に来て確認しておいた、一番手前にある大型の洗濯機に、ごみ袋から取り出した敷物を入れると、私もコインランドリーをあとにした。 時間の頃合いをみて、また出向く。今度は年配の男性がいた。ここよりも家から近いところに一軒、この通りにも一軒、コインランドリーはある。もう少し先にもあるようで、利用する人が多い町なのかもしれない。 時間…

  • 体験入学

    午後三時、ようやく出発することができた。 先日の帰省の時より、リュックが重い。プチプチに包まれたノートパソコンのせいでもあったが、忘れ物をしてもそう困る行き先ではないのに、なんだかんだ荷物が多くなってしまった。 朝から洗濯機を何回も回して、昼にはまだ乾ききっていない洗濯物を取り込んだ。一部は部屋の片隅にあるハンガーラックに掛け、残りをコインランドリーへ持っていく。まだホカホカで、ふわふわのバスタオルを、週末までの分まで事足りるように、風呂の前に三人分、出しておいた。お風呂から出て”バスタオルがない”以外に、そう慌てて困ることはないだろう。ひととおり部屋を見渡して、私基準で片付いている状態にして…

  • 京の都へ

    隣に座ってる人が席を立つと、床は、傘から滴る雨で濡れていた。 通勤をする人々と一緒に電車に揺られる。周りを見渡すと皆、長傘で、今日の雨具合の様子が分かる。私達家族四人は、目的地も結構な雨の予報だと知りながら、折り畳み傘を鞄に忍ばせていた。 雨で観光客もそういないだろうと考えるのは浅はかで、私達だって前々から決まっていた予定を決行していた。外国人の観光客も多くいて、修学旅行生にも遭遇した。 案の定、綿密な計画も立てずに、昨晩も遅くまで準備に追われ、睡眠もそこそこに朝早く家を出た。新幹線に乗っている間に、半分は観光マップとにらめっこし、半分は睡眠不足を補うべく目を閉じた。 用事があっての義実家への…

  • 暑さに負けず

    ここ最近で、一番散らかっている。それでもって、ここ最近で一番片付けに注力している。 玄関や押入を片付けている途中なので、まだ置き場の決まらないモノや、分別できていないモノが、一旦自室へ流れ込む。粗大ごみの収集日を待つモノも、同じくここへ置く。当分、自室はスッキリしなさそうだ。 少し動くと、汗が滝のように流れる。暑い、とにかく暑い。夏本番の暑さとは違って、蒸し暑い。湿度計は度々70%を超えている。 梅雨と夏日を経て、夏の終わりには、思い出のアルバムの整理を除いて、片付けも終わりにしようと決める。今までの実績を問われたら、全くもって信用ならないだろうが、終わりが近いと確信する。 先月は計八袋も可燃…

  • 夏至

    雨足が強くなってきた。普段から外の光が十分に入らない部屋は、いつにもまして暗かった。 今朝、窓を開け損ねた。いつもなら洗濯を干すついでに、ベランダに通じる窓から、順番に家の窓を開けているのだが、今日は洗濯をしていない。激しい雨音は止まないので、もうしばらく窓は閉めたままにする。 ようやく梅雨入りをした。 「コトン」玄関で物音がした。 狭い玄関に本棚を持ってきてから、不便になったことと言えば、電気のスイッチが一つふさがったことぐらいだ。もう一つ同じ役目をするスイッチが、玄関扉の近くにあるので、今ではその存在すら忘れるくらい、困ってはいなかった。他に居場所がない、雑多なモノを置く場所として、本棚は…

  • 一日中雨

    目を覚まして、最初に気付いたのは、激しい雨音だった。 今日に限って、外出の予定がある。ズボンの裾が濡れるのは承知で、せめてものナイロン素材のものを選んで着る。 地上から地下へと電車が潜ると、いくつか目の駅が目的地だ。もうここには、何度も訪ねていて、一つ前の駅になると、次だということも認識している。 駅を降りると階段が多いので、滑らないよう気を張る。あやうく転びそうな人を見掛ける。 用事を済ませても、まだ雨は降り続いていた。今日は一日雨予報だ。後から夕飯の買い物に出るのも億劫なので、外出先でスーパーに寄る。夕飯のメニューは代わり映えしないが、いつも頭を悩ませる。慣れないところで、売場を探すのにも…

  • どんどん使う

    ”もち”も気になる。 昨日は気付かなかった。薄揚げに餅を入れた、餅巾着を鍋に入れたら良かったのだ。メモの端に”もち”と書いていたのに、すっかり忘れていた。それでも、しなびた白菜と、誤って生協で二袋も買った、にんじんを減らすことができた。 季節外れの鍋をした。パウチに入った鍋用スープが、長い間、放置されていた。棚に収まった調味料の一番奥にあったのだが、ここを整理してからというもの、全体がよく見渡せるものだから、毎回スープが目に入る。賞味期限はずっと先だったが、冬まで保管しておくことさえ気になって、野菜と共に、胃に入れた。”もち”も、我が家では冬に食することが多い。これもまた、冬まで消費しないのも…

  • 時代の流れ

    思わずツッコミを入れたくなる。「いや、そんなおらんやろ?」 大きな掲示板が小さな公園の入口にそびえたつ。 まだ選挙権のない四人組は、掲示板の向こうでしゃがみこんでいる。この頃、ここを通るたびに、同じ光景をみる。四人が横並びになると、小さな画面は見づらい。二人は前に、あとの二人は後ろに並ぶ。前の二人の頭の間から、画面を覗き込む。四人は各々コントローラーを持って、戦っている。 大きな掲示板のマス目には、1から30まで数字が振ってあった。さすがに多いんじゃないかと思ったのだ。数字の数だけ埋まるだろうか。 ちなみにどんな感じなのかと、サイトを覗いてみた。いや、思ったより候補者がいた。関連記事をみている…

  • いつか終わる

    赤いペンで、青い文字に横線を引く。済んだら消すを繰り返し、この頃、片付けは進んでいる。 片付けに関する、やることリストは、思い付いたらすぐ書くが、あまり多くはかかないようにしている。見るだけで疲弊しないよう、ほどよく書いて、ほどよく消えるように、簡単に済む作業を箇条書きする。 進んでいくにつれ、どうしても難関がやってくるのは分かっていた。時間を要する、面倒くさい、片付けである。 最近、押入を開ける頻度が多くなって、何度も視界の片隅に入ってくる、アレ。ビデオデッキならぬ、なんというんだっけか、レコーダー、ハードディスクと呼んでいたのか、それすら忘れている。その中に、残しておきたいものが録画されて…

  • 何かの予感?

    夢を見た。 子ども向けのワークショップの手伝いをしていた。しかし、時間がなくて焦っている。あと十分では、さすがに間に合わないと判断して、飛行機の便を遅らせることにした。その手続きのために、サイトにアクセスするも、ログインさえできない。変更可能だったチケットが、出発時刻が過ぎて使えなくなってしまった。乗り継ぐ先の飛行機もどうしたら良いのか。私はどこか遠い異国へ行こうとしていた。知らない外国人の女性と二人で。 なんだかよく分からない夢だ。先日新幹線の予約をしたので、その影響も少なからずありそうだ。新幹線の予約や変更の操作は慣れている。しかも乗る寸前まで変更可能だ。その感覚で、飛行機の予約の変更をし…

  • ラスト一周

    走っても走っても、最後の周回を合図する鐘が鳴らない。同じトラックを、何周走ったらいいかも分からないまま走っている、そんな気分だ。一向に景色が変わらない。ここで体力を消耗してどうするのだ。 片付けたところが、また散らかって、何回も何回も片付ける。ゴールがいつ来るのだろう? なぜ、片付けができないのだ?どうしてこんなにも私にまとわりつくのだ? 『カランカラン』こんな音なのかは不明。 鐘が鳴った。 『ゆめ子さん、ラストスパートやで』 「そうだね、みぃ」 鐘を鳴らしたみぃと会話する。 ラストスパートと表現するほどのスピード感はないが、現在、ラストの一周に取り掛かっている気はしている。みぃが手伝ってくれ…

  • 雨の日も

    差したばかりの傘を、畳んだ。途中、軒下で雨宿りをしていた自転車の男性も、動き出したことだろう。スーパーの往復ぐらいは持つだろうと思われた雨は、数分刻みで、降ったり止んだりを繰り返している。 少し先で信号待ちをしている下校中の子供たちは、話に夢中なのか、雨が上がったことに気付かず、傘を差しっぱなしだ。 雨に当たる、青く色づいたアジサイを見つけた。もうすぐ梅雨入りする、そんな季節だ。 湿気が溜まりやすい、洋室の押入を開けると、除湿剤の水が一杯になっていた。ここの押入は、使いづらい。追いやられたモノが、ここに行き着いていた。つい先日、もう一方の和室の押入から、幾分かモノを処分した。こちらの洋室の押入…

  • 稀と言わずに

    頭痛がした。日に当たって、疲れたようだ。ウォーキングとは違う運動量で、体力も使った。 前回は、他のグループが途中で帰宅するほど、風が強い日だった。テニスには不向きな天候で、私達も度々中断して、休憩ばかりしていた。今回は、前回と打って変わって風もなく、テニス日和だ。”ボールがコントロールできないのは、今日は風のせいではなく、技量の問題だから”と笑いながら、遥子ちゃんとストレッチをする。 ラリーもわりと続いた。ただ、上手く打てる時は稀だ。打ち方が定まらず、下手さを実感する。”そんなことはないよ”と、褒め上手の遥子ちゃんの言葉には、素直に”ありがとう”と答える。 夫の夕食が、予め必要ないのを知ってい…

  • いらないモノ

    最後は”アルバムの整理”と決めている。 今月に入って、ごみを何袋出したか数えている。連休明けに、物置の不用品と書類の一部を捨てたのをきっかけに、現在のところ、計七袋を捨てている。ごみ袋の容量分、家の中からモノが減ったという証だ。ごみ袋を一杯にするのは、案外大変なのだが、達成感がある。嵩張るモノ、かつ処分の判断に時間が掛からないモノが次々と出てきているおかげで、このペースで捨てることができている。 外には、物置以外に収納ボックスが二つあった。そこに、靴を入れた記憶はあった。しかし、処分した記憶もある。まだ一足か二足は残していたかもしれない。蓋を開けると、そこには六足も靴があった。すべて処分した。…

  • まだまだ お付き合い

    君がやって来るとは、微塵も思っていなかった。最後に来た日から今まで、なんの音沙汰もなく時間だけが経過していた。もう一生来ないだろうと、そのつもりでいた。だから、驚いた。それにいつもは知らせがあるのに、急にやって来たことも、予期せぬことだった。君が来る知らせは、お腹が痛くなるのだ。 後になって、前日、爆食したことが、予兆だったと気付いた。生クリームたっぷりのデザートを食べたうえに、冷蔵庫を何度も開けて、保存してある個包装のチョコをいくつも食べた。間食を控えても、ウォーキングをしても、体重がむしろ増えているのではないのかと、諦めゆえに暴走し始めた行動だと認識していた。違ったのか。 ”月のもの”が来…

  • 猫とのひととき

    彼女はいつも窓辺にいる。じっとこちらを見る彼女は、いつも微動だにせず、まるで置物のようだ。”窓辺にいる猫”とそのままのタイトルをつけたくなる。当たり前のその姿が、目に焼き付いている。 しかし、今日は姿が見えない。キッチンにある、私宛のメモには、いつもと違う一文があった。「見当たらなくても、心配しないでね」死角になっている場所に隠れているらしい。 何度も彼女の名前を呼んでいるのに、ちっとも姿を見せてくれない。「もう帰るよ」といって、部屋をあとにした。 2階は彼女のテリトリーだが、1階をテリトリーとしているのは彼だ。再び1階へ戻ると、彼はお待ちかねである。いつも無防備に腹を見せてくる。 翌日も、彼…

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片付けられない「私」と向き合う
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