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安井友泉
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2022/03/23

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  • 患者図鑑100 病院の中心で、愛をさけぶ2

    前回からの続き。ゆうじさんと横内さんは幾度となくメッセージをやり取りし、 親密になっていった。 何となくいい感じのやり取りも出て来て、ゆうじさんとの関係を壊したくなくて 横内さんは自分の病名を言えなかった。 「何の病気なの?心配だな」「うん…ちょっと言えない」「難しい病気?」「うん…」 と言った会話を経て、いつの間にかゆうじさんの中では、横内さんーやり取りの中では『みゆきちゃん』(ちなみに横内さんの本名は違う)は、命に関わる難病で余命僅か。 自分に心配をかけまいと病名を教えてくれないし、お見舞いにも行かせてくれない という事になったらしいのだ。 死を目前にした病気の彼女、それを支える彼氏。会う…

  • 患者図鑑99 病院の中心で、愛をさけぶ1

    こうやってブログを書いていると、色々な患者の事がふっと思い出される。今回はたまたま思い出した横内さんという女性患者について書く。 入院患者、上杉さんがフェイク設定で男性から人気を集め色々やり取りをしていた話は以前書いた。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com それと似たバージョンの話である。 横内さんは40代の独身女性で、双極性障害で入退院を繰り返している人だった。 彼女も良くスマホをいじっていた。食堂や談話室で女性患者が良くお茶を飲みながらおしゃべりをする話には何度か触れたが、食堂の隅でスマホをのぞき込んでいる横内さんに「一緒にお茶飲まない?」と声をかけても「ちょっと待…

  • 患者図鑑98 (言わなくてもよい)行動宣言

    初老男性の弓月さんとは時々談話室で顔を合わせた。 談話室へ行って、弓月さんの姿を見かけると少し憂鬱な気分になる。 弓月さんは、いちいち自分がこれからしようとする事、感じる事を大声で 口にするのだ。例えば 「大便がしたくなった!大便に行ってくる」 そしてトイレから帰って来たら 「大便してきたよ」 また 「キン○マのあたりがかゆいな」(←実際ズボンに手を入れてぼりぼり搔き始める) 「ズボンのゴムがゆるいよ。これじゃずり落ちてキン○マ見えちゃうな」 爪で歯を引っ搔いて「歯くそがあるなぁ」 かーっ、ぺっ と痰を出し「痰が沢山出たなぁ」 「爪の間に垢がたまって黒くなった」 どれも言わなくてもいい事で、し…

  • 患者図鑑97 病院グルメ3 オリジナル料理

    病院グルメパート3。刑務所の食事は、おかずの交換が禁止だそうだがB病院ではそういう決まりはなく、食べきれないものや嫌いなものを他の人とのやりとりは自由だった。時々出てくるジョアのブルーベリー味は免田さんがこよなく愛していた。それを知ってジョアが出てくると何人もが免田さんに献上。目の前にずらりと並んだジョアに免田さんはご満悦。共用冷蔵庫にいれて毎日のように飲んでいた。 私の斜め前の席に座っている守谷さんは、出されて食事に自分流のアレンジを加えていた。 ・和風の煮魚の上に、デザートのフルーツを潰してかけ、フルーツソース風 ・ご飯(お米)に牛乳をかけてライスプディング ・デザートのゼリーをスプーンで…

  • 患者図鑑96 病院グルメ2 病院食を美味しく食べる

    少し間が空いてしまったが、病院食グルメの続き。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com 上記記事では食パンの焼き方にこだわる壷井さんの話だったが、入院生活の数少ない楽しみ、食事時間を少しでも充実させようと工夫する人は少なくない。 グルメ1にも書いたが、食事制限のある患者はほぼいないのでアルコール以外の飲食物は持ち込み可だ。 色々な種類のご飯のお供山のように抱えて来る真山さん。手で持ちきれないので、小さなお盆に並べたものを食事の際に携えて来て、ご飯と一緒に食べていた。 佃煮、塩辛、漬物、粕漬、梅干し… お盆がいっぱいになるくらいであった。 食堂には給茶機があって、水と麦茶、煎…

  • 患者図鑑95 親の死に目

    星さんの自己紹介によると、四国出身。大学進学時に上京し、就職したが 段々と心のバランスが崩れて来て精神科を受診。病状ははかばかしくなく 入退院を繰り返して今に至るとの事だった。 星さんは故郷のX県には長年帰っていないという。両親を始め、兄弟や親類も いるのだが、ずっと会っていない、会えていないと言っていた。 所用などで先方が上京してくれば会うことも出来るのだが、星さんの方が故郷に行くのが無理なのだ。 一つは、長い間乗り物(車、電車、飛行機など全般)に乗っていられない事。パニック障害のような症状を起こしてしまうのだと言う。 また、非常に疲れやすく、体力がない。B病院入院患者御用達のRスーパー u…

  • 患者図鑑94 抜毛症ー福本さんの帽子ー

    今日電車に乗っていたら、向かいの席にとてもおしゃれな帽子を被った女性が座っていた。凝った帽子を見ていたら、ふとB病院で一緒だった福本さんを思い出した。 患者は病棟内で過ごすことが多いので、ルームウェアにスリッパが一般的だった。その中で一人、福本さんはいつも帽子を被っていた。建物の中にいるのに、と違和感があった。しかも食事の際も、作業療法参加時もいついかなる時も帽子を被っているのだ。 その帽子もおしゃれな感じでなく、ちょっとくたびれたフェルト製でコサージュのような飾りがついているのだが、それも下を向いて花びらが取れかけていた。 いっそ被らないほうがいいのに、と内心感じていた。 とは言え、帽子以外…

  • 患者図鑑93 岸壁の母

    「岸壁の母」とは、Wikipediaによれば第二次世界大戦、ソ連(当時)による抑留から解放され、引揚船で帰ってくる息子の帰りを待つ母親をマスコミ等が取り上げた呼称。その一人である端野いせをモデルとして流行歌(1954年など)、映画作品のタイトルともなった。 ja.wikipedia.org 歌など相当ヒットしたらしいのだが、私はそれを知らない。 私が「岸壁の母」を知ったのは、戦争とも舞鶴とも関係のない、B病院入院中の事である。B病院は既に記事に書いたように、解放病棟だ。主治医の許可さえあれば、外出も外泊も出来る。 手続きとしては、外出(外泊)用紙に行き先と病院を出る時間、帰る時間と行き先を書い…

  • 専門家たちの意見2

    前回の記事で、 utuutuyasuyasu.hatenablog.com 脳のメカニズムはまだ良く分かっていない事、よって精神疾患の仕組みも多くは仮説の下である事を書いた。 脳の仕組みについて面白い(と言っては不謹慎かもしれない)話を聞いたので紹介したい。 袴田さんは50代の主婦。寡黙で大人しく、集まりでも部屋の片隅でずっとうつむいているタイプの人だった。 ところがある日脳出血になり入院。手術などの手当をして、無事退院したのだが、その後性格が一変してしまったのだという。 明るく、多弁で冗談を飛ばす。部屋の片隅どころか真ん中に陣取り、話題を振りまく人に豹変した。 漫画の「美味しんぼ」だったろう…

  • 専門家たちの意見

    専門家たちの精神疾患に対する捉え方、意見にちょっと思う所があったのでご紹介。 この記事を書こうと思ったきっかけは、温川さんという生物学の研究者から、 (温川さんは私が精神疾患を患っている事を知らない)、「脳の仕組みはまだ解明途中。分かっていない事が沢山ある。精神疾患も、多くは仮説に基づいていて治療もその仮説の上に成り立っている」という話を聞いたことだ。 では、精神科で処方される薬は?と聞くと、仮説に基づいて、ある成分の薬を処方してみたら症状が改善された。だから治療に使われているのだと。 私が以前かかっていた三井医師(クリニック)の言っていた事。 utuutuyasuyasu.hatenablo…

  • デンタルケアと鬱

    先日歯医者に行ったら、前からぐらついていた奥歯がもう寿命なので抜かなくてはいけない。両脇の葉が幸い無事なので、ブリッジをかけると言われた。ちょっとショックである。歯茎ポケットも相当深くなっている箇所があり、要注意と指摘された。 思い当たる節は十分ある。ここ3~4か月、ちょっと調子が悪く歯磨きが十分に出来なかった。 私の場合精神の健康と歯の健康は大きい関りがある。うつが酷くなると、寝たきりになりトイレに行くのが精一杯。入浴も着替えもしない。顔も洗わないし、歯も磨かない。体や顔を洗わない事も非衛生で、肌の為にはいいはずが無いししわや衰えに繋がっているかもしれない。でも目に見える影響ではなし、どこか…

  • 患者図鑑92 待合室のお茶会

    私がB病院のA病院にかかっていた頃の話である。 有名な総合病院であるA病院では精神科は隅に追いやられた日陰の存在で有る事は 前に記事に書いた。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com しかし、その精神科において一人話題の人気医師がいた(私の主治医ではない(笑))。 新口医師は本を出したりテレビに出たり、講演もしているようだった。そのせいか診察を希望する患者は多く、「門前列をなす」状態だった。他の精神科の医師の外来患者が皆はけてしまっているのに、新口医師の患者だけが外が暗くなってきているのに大勢順番を待っている姿を何度か見た。 午後の診察開始は一時半からで、他の医師の場合は五…

  • 患者図鑑91 人間計量器

    豊平さん、推定40代の女性は摂食障害のようだった。他の疾患も持っているのかもしれないが、それは分からない。 豊平さんが摂食障害と思われたのは、三度の食事の時に全く出された物に箸をつけない事もあれば(看護師に少しでも食べるよう促されていた)、怒涛のようにかき込み、かつおやつをばりばり食べている時もあったからだ。常に両極端だった。 彼女の安定しない食欲に応じて、体重も増減を繰り返していた。少しぽっちゃりしてきたな、と思ったらぐんぐん痩せて行く。と思ったらまた増えて行く。 病棟には体重計があり、自由に測れるようになっていた。また、週に一回測定日があり、看護師の前で体重計に乗り看護師が記録するようにな…

  • おかあさんと(おとうさんと)いっしょ

    と言う訳で、メンヘラ歴1/4世紀以上の私であるが、困った事に、嬉しくない事に 目下長男敏記もメンタルを病んでいるのである。 もともと繊細で、細かい事を気にしてくよくよする性質だったのだが、このところ 仕事によるストレスと体調不良で三大欲求ー食欲 睡眠欲 性欲ー が全く無くなってしまったのだという。医者選びが大事なのは、私は身をもって知っていたので主治医、五藤医師に精神科医の紹介を依頼した。五藤医師は、自分の患者の家族は診ない方針だ。それを知っているので、五藤医師以外の、誰か信頼できる医師を、とお願いした。五藤医師の後輩の飛騨医師を推薦してくれた。 飛騨医師は、話をちゃんと聞いてくれるいい先生だ…

  • 今週のお題「カバンの中身」ー朱印帳ー

    今週のお題「カバンの中身」 スマホ、財布、鍵、ハンカチと言った物の他に入っている大事なアイテム、それは 「朱印帳」である。綺麗な朱印帳をある八幡宮で販売しているのを見かけて購入してから、朱印集めを始めた。行く先々で寺社仏閣の朱印を集めたら膨大になるだろうが、私の場合は八幡宮がきっかけだった事もあり、八幡宮のみの朱印にする、というマイルールを作っている。 どんな有名寺社、例えば東大寺や浅草寺、太宰府天満宮に行ってもご朱印は頂かない(ちゃんとお参りはする)。 今かばんに入っている朱印帳はもう何代目だろうか。初代朱印帳については悲しい思い出がある。ちょっと旅先で、辺鄙な場所のマニアックな八幡神社のご…

  • 患者図鑑90 病院食グルメ1 食パンのおいしい食べ方

    他の病院食の例にもれず、B病院でも食事はおいしくはない。そして、一種類のみで選択の用地は無い。 これも何度か書いてきたが、消化器などの疾患ではないので、皆食欲旺盛だった。そしておいしくはなくとも、食事は入院生活の中で楽しみなイベントの一つだった。 朝食は大抵が食パン。食パン二枚におかずがついてくる。パンなのにきんぴらのような和風のおかずがついてくることがあるのが可笑しい。 食パンはそのまま食べられる状態なのだが、焼きたい人のためにトースターが用意されいた。オーブントースターでなく、焼きあがるとパンが跳ね上がってくる縦型のものである。壷井さんはパンの焼き具合にうるさい人だった。壷井さんいわく、冷…

  • 患者図鑑89 スター誕生

    私はあまり男性患者との交流はなかったけれど、数少ないよく話した相手が月島さんだった。月島さんは35歳だと言っていた。 何かのきっかけで月島さんが東海地方の某都市の出身と知り、そこは私の母の出身地で私も祖父母や親戚を訪れる為良く行った土地なのでお互い話すようになった。 月島さんは穏かな礼儀正しい人で、なかなかにユニークな患者が揃っているB病院にあって、どこが悪いのだろうと思わせた。 何回か話していくうちに、月島さんはぽつりぽつりと自分の事を話し始めた。 東海地方で生まれ、大学進学で東京に来た。大学在学中に演劇に目覚めて俳優を目指そうと思った。就職はせずにバイトをしながら俳優養成学校に通った。事務…

  • 患者図鑑88 病気への愛

    高石さんは、うつ病で入退院を繰り返している人だった。20歳の頃から30年以上病気を患っていると言う。(1/4世紀の私より先輩だ!) 独身で、兄弟はいない上に父親を高校生の頃に亡くし、肉親は母親のみ。しかし詳しい事情は分からないが、母親とも疎遠になっていると言う。 中学生時から不登校気味で、高校はほんの少し行って辞めてしまった。その後は引きこもりになり、職についた事は一度もない。 そんな高石さんなので、友人は一人もいないそうだ。母親からも遠ざかっているので、文字通り天涯孤独の身なのだと言う。退院するとアパートに戻るのだが、待っている人も訪ねてくれる人もいない。一日中テレビを見て、誰とも話さない日…

  • 患者図鑑87 添田さんの愛読書

    添田さんは白髪頭で大分髪が薄くなっていたので、多分そこそこ年は行っていたのだろう。男性患者なので、食堂や洗面所で一緒になる事はなかったが、男女ともに使用する談話室で良く見かけた。 ちょうど談話室常連の小野寺さん utuutuyasuyasu.hatenablog.com が退院して、入れ替わりのタイミングで談話室に現れるようになった。 上記の記事に書いたように、小野寺さんは新聞に執着(?)していたが、添田さんのそれは「エロ本」だった。 談話室には、長椅子の他に低いテーブルがあるのだが、そこに決まってエロ本を開いて読んでいた。エロ本も色々グレードがあるのだろうけれど(笑)、添田さんの愛読書は(ま…

  • 患者図鑑86 守秘

    これは、入院仲間の砂山さんから聞いた話。 砂山さんが以前通院していた病院(その後入院もしている)の待合室で、千頭さんという女性と知り合った。 千頭さんには高校生の子供がいて、不登校ぎみであり、登校しても教師や同級生とたびたびトラブルを起こす。千頭さんは頭を痛め、息子を精神科に通院させていた。 たびたび子供につきそっており、受診を待っているうちに砂山さんと顔見知りになったそうだ。砂山さんは本人が病気、千頭さんは息子さんが病気という違いはあるが、お互い年齢も近く、たまたま砂山さんもお嬢さんではあるが同じ年頃の子供がいる事もあり、色々相談されたり悩みを打ち明けられたそうだ。 ある時、待合室で砂山さん…

  • 患者図鑑85 駆逐!カルジャダン

    渋川さんにとって不倶戴天の敵は「カルジャダン」だ。渋川さんはいつも いつもいまいましげにカルジャダンへの憎しみと嫌悪を語る。 「カルジャダンがもう頭に来るの。いい加減にして欲しい。もうどこかに行って!」 「いいかげん何とかして欲しいわよね。もう大っ嫌いなの」 さんざん悪口を口にするのだが、肝心の対象ーカルジャダンーが何なのか、渋川さん以外に誰も知らない。いったい人間なのか。日本人なのか外人なのか。それとも虫やイデオロギーみたいなものなのか。 勿論、「カルジャダンって何ですか」と渋川さんに聞いた人は複数いる。しかし明確な答えが返って来た試しはなく、「カルジャダン、本当に駄目なのよ!」と言った返答…

  • 患者図鑑84 玉串奉奠

    B病院では、カレーなどの場合を除いて食事の際にプラスチック製の箸がついてくる。 財津さんは食事の前に決まった儀式がある。箸を捧げ持って。時計回りに4回回してから食べ始める。食べ終わったら、また箸を取り4回回して終了。 何かに似ているなぁ、と思ったら神社での玉串奉奠だ。榊をくるりと回して神前に捧げる、一連の作法。玉串奉奠は一回しか回さないけれど。 財津さんに直接聞いた事はないけれど、強迫性障害の儀式行為や数字へのこだわりから 来るものではなかったのかと思っている。 もしかしたら、「食は命を頂く事だから感謝の意を捧げている」「お米には七人の神様が宿ると言うので祈っている」のかもしれないけれど(多分…

  • 患者図鑑83 神様のおわす病院

    「えー-っ、芥子川さんより凄いって何ですか?」と私は聞いた。 「皇族のご落胤とか?」 「それより凄いよ。自分は神様の化身だっていうの」 私は絶句した。 その人は小暮さんという初老の女性なのだけれど、自分は木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)の化身なのだという。木花開耶姫は美しさでも知られた女神である。 ja.wikipedia.org 「毎朝ね、朝食で食堂に来ると両手を広げて『私は木花開耶姫よ』とひとしきりアピールしてから食卓につくの。服も何て言うか、白くてゆったりとした神様を思わせる身なりなのね。まぁ別にだからどうって事もないんだけれどね。自分に従いなさいとかお告げをする訳でもない。ただ毎朝毎朝…

  • 患者図鑑82 義経の子孫

    芥子川さんの自慢は「私の先祖は義経と静御前なの!」であった。日本史の中でも人気を誇る義経と静御前。その末裔が自分だというのである。 確かに義経と静御前は恋愛関係にあったし、男児も生まれた。しかし当時もう義経は罪人であったので、子供は生まれてすぐに殺されてしまったのだが… 芥子川はさんは一方的にまくしたてるタイプの人だったので、いえ、史実では子供は、と説明しても聞く耳を持たないだろう。その男児が実は生き延びたとか、いや他にも子供がいたとか主張するのだろうが、そんな事を聞いても仕方がない。 また、百歩譲って義経の子孫だとしても、芥子川さんはここでは入院患者の一人にすぎず、別に遠ーい時代の著名人物が…

  • 患者図鑑81 素顔のままで

    熊谷さんの素顔を知る者は誰もいなかった。入院患者は、ノーメイクの人も多く、メイクしていてもせいぜい眉を書いたり口紅を塗る程度。しかし熊谷さんは常にばっちりと フルメイクをしていた。つけまつげまでしているくらいだ。 薄いメイクをしている人も、夕飯が終わった辺りでメイクを落とし洗顔しすっぴんに 戻るのだが、熊谷さんは徹頭徹尾すっぴんを見せない。 朝のメイクはカーテンの中でする様で、皆の前に姿を見せる時はすでにメイク済み。 さすがに夜は共用の洗面所でメイクを落とすのだが、誰もいない時を見計らって洗顔をし、脱兎のごとく病室に戻る。 熊谷さんは一年くらい入院しているとの事だが、彼女の前から入院している人…

  • 今週のお題「マイルーティン」2 ー風水的最小限掃除ー

    今週のお題「マイルーティン」 もう一つ、舌苔取りの他にマイルーティンがあったのを思い出した。 utuutuyasuyasu.hatenablog.com うちははっきり言って散らかっている。私が元々片付けが苦手、嫌いな事に加え、鬱で時々具合が悪くなり寝たきり状態になるのでどうしても掃除や整理整頓が滞ってしまう。 とは言え、何とかしたい、綺麗な部屋で生活したいという願望は常にあって(未だに実現できていないけれど)ある時「片付けと風水」というテーマの講座に行った。 前回のアーユルヴェーダもそうだが、私は単発の講演会、講座に行くのが結構趣味である。飽くまで調子が良い時に限られるが。 講師は若い女性で…

  • 今週のお題「マイルーティン」1 ーアーユルヴェーダー

    今週のお題「マイルーティン」 心身の不調に悩まされていた私は、「女性の健康の為にーアーユルヴェーダ」 (正確なタイトルはうろ覚え)講座に参加した。 自治体の主催する講座なので、セールスや会員勧誘などないだろう。 ja.wikipedia.org まず、女性講師が「アーユルヴェーダ」とは何か、その成り立ちや概要を初心者 (ほとんどの参加者がそうであった)にわかりやすく説明していった。 インドが起源の伝統医療で、5000年の歴史を持つ。「ヴァータ」(風・空)「ピッタ」(火・水)「カパ」(土・水)の三つの要素がバランスが取れている事が肝心。 その他色々療法や養生を教えてくれたが、その中で 「これだけ…

  • 患者図鑑80 皮膚むしり症

    粕谷さんはセミロングのボブで、前髪をかなり厚く作っていた。なので額は全く見えない。が、粕谷さんと話していると、しきりに額に手をやっている。 かゆいのかしら、何かできものでもあるのかしらと思っていたが、あまりに頻繁でかつ 毎日である。 ある日、少人数で話していた時粕谷さんは「額ばっかり触ってるから気になるでしょ。 実はね」と前髪を上げた。 額一面ににきびがあり、また潰した跡がある。にきび痕もある。粕谷さんが手を額に伸ばしていたのは、常ににきびをいじり潰していたのだ。額の状態を隠すためかかなり厚くファンデーションが塗られていたがファンデーションの上からにきびをいじるので、ムラになってしまっていた。…

  • 患者図鑑79 退院します2

    翌朝、「昨夜随分看護師さんバタバタしてたよね」と話題に上がった。 梁井さんが寝不足顔で「うちの部屋なの」と話し始めた。 夜中に喜多さんが起き上がり、荷物をまとめはじめた。そしてナースコールを 押し、看護師を呼んで「もう退院の時間ですよね?支度できましたし、私帰りますから」と病室を出て行こうとしたという。 看護師は、「喜多さん、退院はまだ先ですよ。今夜中ですし」と言っても喜多さんは なかなか聞き入れない。何度か押し問答の上、朝また話しましょうと寝床に送り出すも 数時間後にまた全く同じ事を繰り返したのだという。 「だから私も寝れなくて」と梁井さんはぼやいていた。 朝食に喜多さんは姿を見せたが、また…

  • 患者図鑑78 退院します1

    手を洗い続ける大坪さんも、縫いぐるみに話しかける江橋さんも見慣れてしまえば 気にならない。ここは精神科の病院なので、ちょっと変わった事をする人がいるのは 当たり前で、それがその人の「いつものやり方」だと分かればこちらも平常心で受け止める。 新しく喜多さんという患者さんが入院して来た。年の頃は40くらいだろうか。 「喜多です。明日には退院しますので」と挨拶された。明日?? 例えば目の手術、耳の手術などは一泊二日入院も良く聞くが、精神科でそんな短期は ない。私の知る限りでは、短くて一週間。また病気がはかばかしくなく、別の病院に 4日後くらいに転院して行った人はいた。 精神科の薬を処方されている方は…

  • 患者図鑑77 強迫性障害2

    手洗いの他にも色々こだわりがあるようだった。 例えば、食堂に向かう時、きっかり○歩で席につければ良いが、何かの都合で一歩二歩 、歩数が足りなかったり多かったりすれば病室に戻ってもう一度やり直す。 また、歩き出す時は「必ず右足から」というこだわりもあるそうだ。 どちらの足から踏み出したか忘れた場合はやはり最初からやり直しだ。 食事はお盆の上に乗せられ、配膳車に乗っているのを自分の名札がついたものを各自取って来て、食事が終わったら配膳車に戻すことになっている。 戻したあとで、大坪さんは良く食堂に戻って来て「私、全部食器返したかしら?何か返し忘れないかしら?」と心配していた。戻し忘れしていた事は一度…

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