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今回はまたまた寄り道。例の「マイロン・アリソンは、はたして転落したか否か」を考える。 すでに僕の髑髏城散策では「転落していない」という結論が出ている。旧訳は髑髏城の胸壁、というより髑髏城の回廊の上部の狭間胸壁から城壁(30フィート)の下まで落下している。一方、新訳は、同じく回廊の上部の狭間胸壁から回廊の下すなわち城壁の上に落下している。しかし、原文をよくよく読み込んでいくと、回廊の上部には胸壁…
(今回も、多少ストーリー後半のネタを割ります。犯人を直接示すようなネタバレではないが、前もって知っておくとストーリーの面白さを損なう可能性があるので、未読の方は読まないで下さい。) ダンスタンの回想(第13章) 今回は予告通り、別荘の客の一人ダンスタン卿が人妻イソベル・ドオネイと密会を企て、髑髏城まで赴いてアリソンの悲劇に遭遇した時のことを回…
今回も篠田真由美著『ミステリな建築 建築なミステリ』出版記念の企画だ。著者が十代の頃から魅了されてきた作品『髑髏城』は、どうやらミステリ愛好家やカー愛好家からもあまり評価されてこなかった事に、著者はずいぶんと悔しい思いを抱いてきたようだ。著書の第二部「ミステリを建築で読む」の第4章「ディクスン・カー『髑髏城』」の冒頭で、本格ミステリを誰よりも愛し、カーへの愛を惜しげも無く開陳してきた江戸川乱歩と…
ミステリな建築にして建築なミステリの『髑髏城』を散策する 前回の終わりで、次は「ダンスタンとイゾベルとの逢い引きの場面」と書いたのだが、状況が変わった。ついに髑髏城中毒を標榜する方の本が出版されたのだ。その名も『ミステリな建築 建築なミステリ』(篠田真由美)。もちろん髑髏城は、この本の中で紹介される建築にしてミステリの一つに過ぎない。ただ、僕自身が『Yの悲劇』あるいは『グリーン…
後追いになるが、目次と内容についてまとめようと思う。 自分でも驚くくらいに長々と書き綴ってきたおかげで、自分でも何がどこに書かれているか確かめるのが難しくなりつつある。もし奇特な人がいて、『髑髏城』を再読する際にこの文章を読んでみようと思っても、いったい何がどうなっているのか分からなくなると思う。まだ、散策は完結していないのだが、書き継ぐ度に目次の方も書き足していく事にする。
(今回以降は、多少ストーリー中盤のネタを割る事になる。犯人を直接示すようなネタバレではないが、前もって知っておくとストーリーの面白さを損なう可能性があるので、未読の方は読まないで下さい。) 前回はついに髑髏城の外観を目の当たりにする事ができた。もちろん僕個人の目に映った髑髏城である事を断っておく。僕にはこう見えた(読めた)に過ぎない。今回は髑髏城の内部を探索す…
ついに(その10)になってしまった。こんなに続ける事になるとは当初は思ってもみなかったけれど、カーの原文を手探りしながら、調べ物しながら、図を書きながらと、いろんな事に手を出していたら、こんな始末になってしまった。特に今は図を書くのに時間がかかっている。いよいよ今回で髑髏城の外観図が完成するからだ。いままで仕事でもパワーポイントはずいぶん使ってきたつもりだけれど、体裁のいいグラフや図を駆使すると…
緊急事態だ。 (その7)で僕らは髑髏城の正面入口である城門から城壁の内部に入った。そのまま通路と階段を経巡り、ついには城壁の屋上とでも言うべき中庭(courtyard)にたどり着いた。そして、そこで見たのは狭間胸壁(battlements)への階段であり、回廊はまだ見あたらない。その階段を登ればやがて回廊は見えてくるのだが、肝心の回廊の屋根にあたる位置に別の狭間胸壁など見あたらないのだ。では、いったい炎に包まれたマ…
(その6)で城の正面の城門を通って幅の広い石敷きの通路(a wide passage of stone)に出た。城門を入ってすぐ右手には低いくぐり戸(a low door)があって、中は番人の詰所になっている(はず)というところまで来た。謎の人物が城壁の上で持っていたたいまつが通路に放り出されていたのをホフマンとフリッツが見つけたのも、この場所だ。ここには城門の上から溶かした鉛を敵の頭上に流す装置があり、鉄製の桶を火にかけるために、…
8章「THE BODY IN THE TOWER」(旧訳「塔上の死体」、新訳「塔の死体」)で、バンコランとフォン・アルンハイムが連れ立って髑髏城に向かう。7章の終わりでバンコランはジェフに「レインコートを用意した方がいいぜ。びしょぬれになるおそれがたぶんにある……」と言い切っているので、外は暴風雨の嵐のようだ。ライン川巡りのサイトや書籍を見ると悠々とした流れの画像ばかりで、とてもじゃないが暴風雨で荒れたライン川を想…
ついに8章で、名探偵バンコランとベルリン警察の主任警部フォン・アルンハイムが呉越同舟よろしく髑髏城の捜索に乗り出す。ここでは、髑髏城に至る道筋や、髑髏城の外観および内部が詳細に語られるはずだ。(その4)まで散策を続けた結果、髑髏城の外観はなんとなく見えてきたが、船着場から髑髏城の内部に至る道筋はよく分からないし、なにより燃える死体が見つかった中庭にある狭間胸壁(battlements)や、城壁の上部に付属す…
第2章のアガサ・アリソンの回想を検討してきたが、次はアガサが執事のホフマンと運転手のフリッツに髑髏城の様子を見に行かせた顛末を語った部分になる。彼ら二人から聞いた伝聞だし、この直後にバンコランは直接ホフマンから話を聞く事になるので、そちらだけ取り上げればいいようだ。よって、アガサの回想はここで打ち切り、執事ホフマンの話を聞く事にしよう。ここから第3章になる。 バンコランはホフマンを探して、生…
アリソン邸にようやく到着したジェフ・マールは、執事のホフマンに案内されて2階にあるアガサ・アリソンの部屋に通される。ジェフより先にアリソン邸に逗留していたバンコランも待ち受けていた。二人を前にしてアガサは、二週間足らず前に起きた兄・マイロンが殺された夜の事を回想する。ポーカーの約束をして自室で女中と待っていたが、その夜、マイロンは中々姿を現さない。 (原文)[P.34-35] "I remember h…
いよいよ髑髏城の外観を細かく見られるところまで、蒸気船が近づいてきた。 (原文)[P.28-29] Then Castle Skull grew in size, though it seemed even farther above our heads. Massive walls, battlemented and fullly a hundred feet high, were built into the hillside. I bent over the rail and craned my neck to look up. In the centre of the walls, built so that the middle of the battlements …
小説としての、ミステリとしての『髑髏城』は、創元推理文庫から出版された旧訳(宇野利泰)と新訳(和爾桃子)とを立て続けに読む事で一段落ついた。感想も書いた。残ったのは原書だ。神保町の羊頭書房で見つけ出した『CASTLE SKULL』は、カーが最初に出版した1931年当時のものでは当然ながらなく、1947年にPOCKET BOOKSから出版されたもの。ほぼ日本の文庫サイズのペーパーバックは劣化していてボロボロだ。読み込もうとしたら崩…
手元には『髑髏城』の旧訳(宇野利泰)と新訳(和爾和子)があり、今回、この順に立て続けに読んでみた。宇野さんの訳は雑誌「探偵倶楽部」1956年1月号〜12月号に掲載されたものが元で、1958年に「世界大ロマン全集22」(東京創元社)に収められ、翌1959年に文庫化された。対して和爾さんの訳は2015年発行で、言ってみればおよそ60年ぶりの新訳という事になる。聞くところによると、ディクスン・カーの長編を、一部絶版状態ではある…
神保町逍遙2023/10/13~羊頭書房、東京堂書店、PASSAGE、そして板橋
3ヶ月おきの通院。5月にやった腹腔鏡手術であけた4箇所のうち1箇所だけがどういうわけか閉じなかったので、なかなか全快とはいかなかった。「閉じなかった」というのはかなり語弊がある言い方になるが、なんというか、もちろん穴はふさがってるのだが、表面の皮膚が開いてしまって血液が浸みだしてしまう状況がなかなか改善しなかったのだ。こういうときこそ傷パワーパッドの出番だと思ったら、蓋をした絆創膏の内部で浸潤…