「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.9 Queen Elizabeth introduced several reforms that were helpful to the nation, and guided her people step by step to prosperity and power. (訳) エリザベス女王は、国民のためになるいくつかの改革を導入し、国民を一歩一歩繁栄と強国へと導いた。 …
本は電車で読もう!立川在住・一児の父が読書と子育てに明け暮れる日々を綴ります。
自宅(立川)と会社(川崎)の二つの図書館を駆使して読書に耽る中毒者(読書ジャンキー)のアスランです。 結婚前は暇に飽かして映画館に入り浸る映画中毒者でした。いまや夫婦で育児に追われる親バカ中毒者でもあります。 このblogでは、本を紹介し、立川で育児に悪戦苦闘する日々を報告し、そして愛しき映画の記憶を語ります。
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.9 Queen Elizabeth introduced several reforms that were helpful to the nation, and guided her people step by step to prosperity and power. (訳) エリザベス女王は、国民のためになるいくつかの改革を導入し、国民を一歩一歩繁栄と強国へと導いた。 …
(今回も、多少ストーリー後半のネタを割ります。犯人を直接示すようなネタバレではないが、前もって知っておくとストーリーの面白さを損なう可能性があるので、未読の方は読まないで下さい。) ダンスタンの回想(第13章) 今回は予告通り、別荘の客の一人ダンスタン卿が人妻イソベル・ドオネイと密会を企て、髑髏城まで赴いてアリソンの悲劇に遭遇した時のことを回…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.8 Formerly girls were usually taught at home by governesses and received only a very narrow kind of education, in which science played no part at all. (訳) 昔は、女の子はふつう家で家庭教師につき、受ける教育の範囲は非常に狭く、その中に科学はまったく…
今回も篠田真由美著『ミステリな建築 建築なミステリ』出版記念の企画だ。著者が十代の頃から魅了されてきた作品『髑髏城』は、どうやらミステリ愛好家やカー愛好家からもあまり評価されてこなかった事に、著者はずいぶんと悔しい思いを抱いてきたようだ。著書の第二部「ミステリを建築で読む」の第4章「ディクスン・カー『髑髏城』」の冒頭で、本格ミステリを誰よりも愛し、カーへの愛を惜しげも無く開陳してきた江戸川乱歩と…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.7 People used to think, and some still do, that Latin should be a universal model for language. (訳)ラテン語が言語の普遍的範型であるべきだと昔の人々は考えていたし、今でもそう考えている人もいる。 この文はいろいろと考える事がある。何よりも「ラテン語が」で始まっている事に違…
ミステリな建築にして建築なミステリの『髑髏城』を散策する 前回の終わりで、次は「ダンスタンとイゾベルとの逢い引きの場面」と書いたのだが、状況が変わった。ついに髑髏城中毒を標榜する方の本が出版されたのだ。その名も『ミステリな建築 建築なミステリ』(篠田真由美)。もちろん髑髏城は、この本の中で紹介される建築にしてミステリの一つに過ぎない。ただ、僕自身が『Yの悲劇』あるいは『グリーン…
後追いになるが、目次と内容についてまとめようと思う。 自分でも驚くくらいに長々と書き綴ってきたおかげで、自分でも何がどこに書かれているか確かめるのが難しくなりつつある。もし奇特な人がいて、『髑髏城』を再読する際にこの文章を読んでみようと思っても、いったい何がどうなっているのか分からなくなると思う。まだ、散策は完結していないのだが、書き継ぐ度に目次の方も書き足していく事にする。
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.6 Every aged person reminds us of our own death, that our body won't always remain smooth and responsive. (訳)老人は誰でも我々に、自分もいつかは死ぬこと、自分の体もいつまでも柔軟で敏感なままではいないことを思い出させる。 この文には納得できない。訳文がというより、この英文…
(今回以降は、多少ストーリー中盤のネタを割る事になる。犯人を直接示すようなネタバレではないが、前もって知っておくとストーリーの面白さを損なう可能性があるので、未読の方は読まないで下さい。) 前回はついに髑髏城の外観を目の当たりにする事ができた。もちろん僕個人の目に映った髑髏城である事を断っておく。僕にはこう見えた(読めた)に過ぎない。今回は髑髏城の内部を探索す…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.5 She has a good memory for bits of fresh gossip, or little stories of some celebrity that she had read or heard somewhere, and a knack of telling them entertainingly. (訳)彼女はいくつかの新しいうわさ話や、どこかで読んだり聞いたりした、有名人に関する小話をよく覚えていたし、また、それをおもしろ…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.4 It is hard enough to know whether one is happy or unhappy, and still harder to compare the relative happiness or unhappiness of different times of one's life. (訳)自分がいま幸福なのか不幸なのか知るだけでも容易なことではないのに、一生の中の異なった時代の相…
ついに(その10)になってしまった。こんなに続ける事になるとは当初は思ってもみなかったけれど、カーの原文を手探りしながら、調べ物しながら、図を書きながらと、いろんな事に手を出していたら、こんな始末になってしまった。特に今は図を書くのに時間がかかっている。いよいよ今回で髑髏城の外観図が完成するからだ。いままで仕事でもパワーポイントはずいぶん使ってきたつもりだけれど、体裁のいいグラフや図を駆使すると…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.3 The New World has a large and rapidly increasing population of its own and, after more than a century of abuse, not a little of its soil has lost or is in process of losing its fertility. (訳)新世界ではそれ自体の膨大な人…
前回の(その8)で仕切り直しをした。そこで確認したのは「マイロン・アリソンはどこにも落ちていない」という事だった。そこで、再び城壁内部の通路と階段をぐるりと巡った終着地courtyard(中庭)にたどり着く事になる。そこから散策を再開しよう。 ところで、今、非常に後悔しているのは、(その7)の終わりに髑髏城の城壁上部を俯瞰した図を出してしまった事だ。もちろん、あの図を出す事で、城門からどのように内部の通…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.2 It is, and has been for a long time, the most prized national possessions, the sense of humor. (訳)ユーモアの感覚は、わが国民が持っているものの中で、現在もこれまでの長い時間にも最も尊重されているものである。 共通関係をどう日本語で表現す…
緊急事態だ。 (その7)で僕らは髑髏城の正面入口である城門から城壁の内部に入った。そのまま通路と階段を経巡り、ついには城壁の屋上とでも言うべき中庭(courtyard)にたどり着いた。そして、そこで見たのは狭間胸壁(battlements)への階段であり、回廊はまだ見あたらない。その階段を登ればやがて回廊は見えてくるのだが、肝心の回廊の屋根にあたる位置に別の狭間胸壁など見あたらないのだ。では、いったい炎に包まれたマ…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より、まとめの例題を書き直す。 14.1 例題(2) In the late summer of that year we lived in a house in a village that looked across the river and the plain to the mountains. In the bed of the river there were pebbles and boulders, dry and white in the sun, and the water was clear and swiftly moving and blue in the channels. Troops went …
(その6)で城の正面の城門を通って幅の広い石敷きの通路(a wide passage of stone)に出た。城門を入ってすぐ右手には低いくぐり戸(a low door)があって、中は番人の詰所になっている(はず)というところまで来た。謎の人物が城壁の上で持っていたたいまつが通路に放り出されていたのをホフマンとフリッツが見つけたのも、この場所だ。ここには城門の上から溶かした鉛を敵の頭上に流す装置があり、鉄製の桶を火にかけるために、…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14章の冒頭に戻る。共通関係とは「and,but,orなどの等位接続詞で結ばれる2つの語句の関係」を指す。従来の参考書では「例外的な形を雑然と収集し、雑然と提示するだけ」にとどまっていると指摘し、この本では「文の基本構造と修飾構造の2面から順を追って考え」るとしている。もちろん、全15章からなる「英文解釈教室」をここまで読んできた人にとっては当たり前…
8章「THE BODY IN THE TOWER」(旧訳「塔上の死体」、新訳「塔の死体」)で、バンコランとフォン・アルンハイムが連れ立って髑髏城に向かう。7章の終わりでバンコランはジェフに「レインコートを用意した方がいいぜ。びしょぬれになるおそれがたぶんにある……」と言い切っているので、外は暴風雨の嵐のようだ。ライン川巡りのサイトや書籍を見ると悠々とした流れの画像ばかりで、とてもじゃないが暴風雨で荒れたライン川を想…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より、まとめの例題を書き直す。 14.1 例題(1) When I was young we all knew, or thought we know, that a man consists of a soul and a body; that the body is in time and space, but the soul is in time only. Weather the soul survives death was a matter as to which opinions might differ, but that there is a soul was thought to be certain. …
ついに8章で、名探偵バンコランとベルリン警察の主任警部フォン・アルンハイムが呉越同舟よろしく髑髏城の捜索に乗り出す。ここでは、髑髏城に至る道筋や、髑髏城の外観および内部が詳細に語られるはずだ。(その4)まで散策を続けた結果、髑髏城の外観はなんとなく見えてきたが、船着場から髑髏城の内部に至る道筋はよく分からないし、なにより燃える死体が見つかった中庭にある狭間胸壁(battlements)や、城壁の上部に付属す…
唐突に始めてしまうが、伊藤和夫先生の「英文解釈教室(改訂版)」を毎日のように読み直しているというところから話を進めよう。つたない英語力しかなかった僕がまがいなりにも英語が好きになり、同時に日本語を偏愛するようになったのは、この参考書と伊藤先生の薫陶とに寄るところが大きい。入試の際に、この本を十分に理解できていたかは心許ないが、その後の人生においても繰り返し繰り返し読むことで、英文に当たって砕ける…
第2章のアガサ・アリソンの回想を検討してきたが、次はアガサが執事のホフマンと運転手のフリッツに髑髏城の様子を見に行かせた顛末を語った部分になる。彼ら二人から聞いた伝聞だし、この直後にバンコランは直接ホフマンから話を聞く事になるので、そちらだけ取り上げればいいようだ。よって、アガサの回想はここで打ち切り、執事ホフマンの話を聞く事にしよう。ここから第3章になる。 バンコランはホフマンを探して、生…
アリソン邸にようやく到着したジェフ・マールは、執事のホフマンに案内されて2階にあるアガサ・アリソンの部屋に通される。ジェフより先にアリソン邸に逗留していたバンコランも待ち受けていた。二人を前にしてアガサは、二週間足らず前に起きた兄・マイロンが殺された夜の事を回想する。ポーカーの約束をして自室で女中と待っていたが、その夜、マイロンは中々姿を現さない。 (原文)[P.34-35] "I remember h…
いよいよ髑髏城の外観を細かく見られるところまで、蒸気船が近づいてきた。 (原文)[P.28-29] Then Castle Skull grew in size, though it seemed even farther above our heads. Massive walls, battlemented and fullly a hundred feet high, were built into the hillside. I bent over the rail and craned my neck to look up. In the centre of the walls, built so that the middle of the battlements …
小説としての、ミステリとしての『髑髏城』は、創元推理文庫から出版された旧訳(宇野利泰)と新訳(和爾桃子)とを立て続けに読む事で一段落ついた。感想も書いた。残ったのは原書だ。神保町の羊頭書房で見つけ出した『CASTLE SKULL』は、カーが最初に出版した1931年当時のものでは当然ながらなく、1947年にPOCKET BOOKSから出版されたもの。ほぼ日本の文庫サイズのペーパーバックは劣化していてボロボロだ。読み込もうとしたら崩…
アントニイ・バークリーという作家はかなり前から知っていた。なぜかと言えば江戸川乱歩編纂の『世界推理短編傑作集』の中に『偶然の審判』が含まれていたからだ。この作品は、本格ミステリー黄金期の作品の愛好者であれば必読とも言える名作で、毒の入ったチョコレートを食べた人が死ぬという事件を、暇とお金をもてあましたような有閑階級の男女が持論を持ち寄っては解決を図るという内容だ。クリスティの『ミス・マープルと…
手元には『髑髏城』の旧訳(宇野利泰)と新訳(和爾和子)があり、今回、この順に立て続けに読んでみた。宇野さんの訳は雑誌「探偵倶楽部」1956年1月号〜12月号に掲載されたものが元で、1958年に「世界大ロマン全集22」(東京創元社)に収められ、翌1959年に文庫化された。対して和爾さんの訳は2015年発行で、言ってみればおよそ60年ぶりの新訳という事になる。聞くところによると、ディクスン・カーの長編を、一部絶版状態ではある…
オカルト雑誌に掲載するため、ライターの私と編集者の小沢くんは、近畿地方の「ある場所」に関連した文章を収集。私たちは「ある場所」に潜む怪異の存在に気づき…。綴じ込みの「取材資料」付き。『カクヨム』掲載に加筆修正。 『カクヨム』とは何だろう。角川の小説投稿サイトか。ラノベの投稿サイトはゆえあって見渡す事があるが、それ以外の投稿サイトはのぞいた事がない。調べると今でもこの小…
頻繁にジェフリー・ディーヴァー作品を読んでいるような気がしていたので、このコルター・ショウシリーズの前作『ファイナル・ツイスト』を読んだのも最近の事のように思っていたが、なんとあれから1年も経っていたのか。その間にというか立て続けに、リンカーン・ライムシリーズの最新作『真夜中の密室』も読んでいるし、短編集の2分冊「トラブル・イン・マインド」1&2も読んだりしてるから、まあ一年中読んでいるような…
「方舟」と書いて「はこぶね」と読む。「箱船」の方が表記としては一般的だが、どちらで書いても意味は変わらない。国語辞典を引くと「四角な形をした乗り物。方形の船」(精選版日本国語大辞典)という語釈が筆頭に来るが、二番目に「旧約聖書の『ノアの箱船』をいう」(日国)と書かれている。広辞苑では「ノアの方舟」と書かれていて、明鏡や新明解に至っては「ノアの——」と書かれていて見出しの表記は「箱船・方舟」のいずれ…
Practical English Usage, 3rd edition (by Michael Swan)
『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』の書評は一段落したが、パンクチュエーションについての考察は、引き続きできる限りやっていこうと思う。『Easy Learning Grammar and Punctuation』の次は本書だ。『Easy Learning …』はアメリカの出版社が出している英文法とパンクチュエーションのガイドブックだったが、本書はイギリスのオックスフォード大学出版が刊行しているガイドブックだ。なので説明文や例…
セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点 セシリア・ワトソン(左右社) (その3)
「セミコロン」についての本の書評、終盤戦だ。(その2)では5章までの内容を取り上げて、セミコロンの誕生の経緯からセミコロンが流行の最前線に飛び出して、やがて法律の条文に紛れ込んで騒動を引き起こすまでを解説した。この(その3)では6章以降の内容を取り上げる。 [本書の目次] はじめに 言葉のルールをめぐる愛憎 …7 1章 音楽を奏でるように:セミコロンの誕生 …
『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』(セシリア・ワトソン)の書評(その3)を書く前に、再びパンクチュエーション(句読法)のお勉強をしておく。前回は『英語ライティングルールブック 第2版』でカンマ、コロン、セミコロンの使い方についておさらいをしたが、やや不完全燃焼だったのは否めない。これまでちゃんと勉強してこなかったせいとも言えるが、やはり日本人向けに手ごころを加えた解説になっている…
セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点 セシリア・ワトソン(左右社) (その2)
「セミコロン」についての本の書評、後半戦だ。「はじめに」の訳文でケチがついて、1章からは共著者のものと思われる訳文で持ち直した結果、実は最後まで面白く読めた。後半からの訳文にちょっと不安を覚えたのだけれど、それはある理由から問題が回避されている事もわかった。それについては後述する。それよりも書評(その1)では「はじめに」の文章を過剰に論ったおかげで、実はその後の文章の見通しがよくなった。この序章…
英語ライティングルールブック 第2版 デイヴィッド・セイン(DHC)
『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』を読んでいる途中で、次第にセミコロンやコロンやカンマの使い分けについて「ちゃんと」は分かっていないことを痛感したので、前から・積ん読状態だった本書で勉強する事にした。もちろん全部読むのではなく、あくまでカンマ、セミコロン、コロンについてだけだ。なので、タイトルは『英語ライティングルールブック 第2版』となっているけれど、この本全体の書評じ…
神保町逍遙2023/10/13~羊頭書房、東京堂書店、PASSAGE、そして板橋
3ヶ月おきの通院。5月にやった腹腔鏡手術であけた4箇所のうち1箇所だけがどういうわけか閉じなかったので、なかなか全快とはいかなかった。「閉じなかった」というのはかなり語弊がある言い方になるが、なんというか、もちろん穴はふさがってるのだが、表面の皮膚が開いてしまって血液が浸みだしてしまう状況がなかなか改善しなかったのだ。こういうときこそ傷パワーパッドの出番だと思ったら、蓋をした絆創膏の内部で浸潤…
セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点 セシリア・ワトソン(左右社) (その1)
今回はとりあえず「はじめに」限定で、まず言いたい事を書こうと思う。以前に『カンマの女王』を期待して読み出した時とまったく同じ事が、再度起きた。デジャブと言っていい。「カンマ」の次が「セミコロン」だなんて、シャレにもならない。悪夢だ。 とにかく一読では頭に入ってこない。期末で仕事に追われてたので、疲れて頭が回らないのかと最初のうちは思った。そのうち、どうやら文章が気持ち悪くて、いろいろと引っ…
(今さらですが、今回は後半に犯行現場についての文章を細かく見ていきます。ネタバレもありますので、未読の方はエラリイ・クイーン「犯罪カレンダー」の「皇帝のダイス」を読んだ後にお読み下さい。) 前回同様、比較の際の色づけと下線の意味を説明しておく。 緑=翻訳の出来が素晴らしい 赤=誤…
途中から読む人はいないと思うが、とりあえず事情説明。 エラリイ・クイーンの短編集「犯罪カレンダー」の12編のうち4月の短編「皇帝のダイス」の原作と宇野利泰訳(ハヤカワ・ミステリ文庫版)とを比較している。目的は「なぜ宇野さんの訳は何故長くなるのか」を明らかにする事だったが、すでに判明しているように宇野訳のスゴさを明らかにする事に変質してきている。まあ、結論はもうちょっと先に延ばすとして、これまでのあ…
さっそく続き。なにしろエラリイ・クイーンの短編集「犯罪カレンダー」の「皇帝のダイス」の原文と宇野訳とを最後まで調べ尽くしてあるので、すべての労力を回収するまでは終われない。改めて、比較の際の色づけと下線の意味を説明しておく。 緑=翻訳の出来が素晴らしい 赤=誤訳あるいは訳に疑問がある
以前に、角川文庫版「Yの悲劇」(越前敏弥・訳)の書評を書いた際に、それまで愛読してきたハヤカワ・ミステリ文庫版(宇野利泰・訳)との比較をちょっとだけ試みた。というのも、ハヤカワ・ミステリ文庫の「Yの悲劇」は分厚い一冊というイメージだったのに、角川文庫のそれはかなりスリムな一冊に仕上がっていたからだ。一頁あたりの文字数…
谷山浩子「眠れない夜のために」、数少ないコンパを断る、バルサンを焚く(日記1985年6月17~21日)
1985.6.17(Mon) 曇り 12:00まで寝た。前進ギシギシいっている。だるい。大学に行き、F田先生の授業。 生協でCD(谷山浩子)を買う。帰りの都営三田線で寝過ごして、最寄り駅の「板橋区役所前」駅を乗り越し「蓮根」駅で下車。折り返す。 帰宅は21:00すぎ。三田駅でもトイレで吐いた。家に戻って吐いた。最悪。
著者の連作短編は、読み進めていくうちに幸せな気分になる。人と人とのつながりから生み出される善意の存在を信じたくなるし、時として耐えられなくなるような人生のよい面だけを見ようという気にさせられる。それはもちろん、裏側に落ち込んだ人たちが同じくらい、いやひょっとしてそれ以上に存在する事の証かもしれない。そういった人生の悲劇と悲しみとを受け止めたうえで、ではどうしたらいいのかという姿勢を、青山さんの…
城塚翡翠シリーズの第三作。第一作「medium−霊媒探偵城塚翡翠−」がなかなかの出来だったので、最終話まで読んだ時の衝撃は大きかった。これは著者のもくろみ通りの驚きではなく、こんな事をしたいがための伏線だったのかという衝撃、一言でいえば幻滅だった。最終話で伏線が回収された後には「荒れ野」しか残されていなかった。魅力に乏しく、ただただ自らの能力を過大評価している名探偵もどきのヒロインと、それを過剰に持…
ちょうど一年前にシリーズ最新作『探花 隠蔽捜査9』を読んでいる。先日亡くなられた目黒考二さんのオススメで読み出した『隠蔽捜査』の第一作が2005年出版だったから、あれから18年も経っているのか。よくぞ続いたと思う反面、多作家で知られる著者が18年かけて本編9冊に、スピンオフ短編集3冊というのは少ないようにも思えてしまう。書こうと思えばもっと書けてしまうのではと考えるのは、単なるファンの大いなる勘違いには…
もう図書館に返却しなくてはならない。最後にもうちょっと何か知りたいなぁと思ったら、「本」を思いついた。見出し語「本」の使い方を味わい尽くそう。 ほん【本】 ▲が 痛む。売れる。そろう。出る。並ぶ。発禁…
神保町逍遙2023/07/14~PASSAGE,、羊頭書房、東京堂書店、富士鷹屋~
前回からちょうど三か月。まあ、通院が三か月おきなので、それに合わせて神保町にブラッとたどり着くというわけだ。今回は診察も会計も待ち時間が少なかったので午前中には病院を後にして、神保町に向かった。大井町からだと京浜東北線で田町駅で下車。都営三田線で神保町駅へと向かう。前回もそういう順路だったのに忘れていた。 神保町に到着すると、ちょうどお昼どきでサラリーマンでどこもごった返している。これはや…
(この文章は、横溝正史『犬神家の一族』の犯人やトリックを明かしています。未読の方は読まないで下さい。) まずは、何にしても「犬神家の一族」の遺言状のシーンから始めねばなるまい。 「ひとつ…犬神家の全財産、ならびに全事業の相続権を意味する、犬神家の三種の家宝、斧(よき)、琴、菊はつぎの条件のもとに野々宮珠世に譲られるものとす」 正面の白…
ウィリアム・ギブスン エイリアン3 パット・カディガン(竹書房)
映画好きではあるが、マニアックにいろいろと詮索するのが好きというわけではない。だから何故「エイリアン3」に本作の元となる脚本が採用されなかったのか、何にいったい「エイリアン」ファンは満足できなかったのかはわからない。どうやら「エイリアン3」を今に至るまで見ていないからだ。読み出した当初は見たと思い込んでいたのだが、それは「エイリアン4」の方だった。「4」を観た時、「3」を飛び越したからなのか、…
近年、エラリー・クイーンの悲劇四部作や国名シリーズなどの初期の作品が、角川文庫と創元推理文庫から相次いで出版され、さらにはハヤカワ・ミステリ文庫からは、中期・後期を代表する「災厄の町」を初めとした作品が出版された。いずれも新訳で読みやすくなったので、新しい読者を開拓する事に繋がったのは、長年クイーン好きを公言してきた自分としては喜ばしい限りだ。 エラリー・クイーンの代表作と言えば「Yの悲劇…
以前から気になっていた辞書だ。たぶんTwitterで紹介されていたのを知って、どのような内容でどう使うのかと興味がわいた。書店でも見かけて手に取ってみたのだが、なかなかそれだけでは買うというところまではいかなかった。辞書は長い目でみれば決して高価なものではないが、これを手元に置いて自分が使う場面を想像できなかった。だけど興味はある。どうしよう、と思っていたら、図書館の書架でたまたま見つけた。なんだ、…
最近Twitterで知り合った方が、「かかずらう」に校正から「かかずらわ?う」という赤が入った事に憤ったというツイートを目にした。「かかずらう」はワ行五段動詞で、例えば以下のように活用する。 かかずらわない かかずらい、 かかずらった(促音便) かかずらう かかずらえば かかずらおう 「かかずら」が語幹で、活用語尾がワ行で展開するのでワ行五段動詞と呼ぶ。「っ」が出てくるのは音…
数字が明かす小説の秘密 -スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで- ベン・ブラット(DU BOOKS)
本書は非常に魅力的なエピソードから始まる。アレクサンダー・ハミルトン、ジェイムズ・マディソン、ジョン・ジェイという、「アメリカ合衆国建国の父」の中の三人は、合衆国憲法の批准を推進する目的で「ザ・フェデラリスト」という連作論文集を出した。85編の論文はいずれも匿名で、のちに誰がそれぞれの著者なのかが歴史家の注目するところとなった。後年、ハミルトン、マディソンがそれぞれ自らの著作リストを公表したが、…
青焼きコピー、研究室旅行、テニス、ギターと歌本、助手Mの過激な運転(日記1985年6月13~16日)
1985.6.13(Thu) 雨(どしゃぶりに近い) ディジタル制御の演習問題の青焼き作りのため、少し早めに家を出た。久しぶりに胃の調子が悪い。昼食後もむかつき、3:00PM頃に吐いた。 生協に行き、CD2枚購入。めずらしく105号室でM尾さんがギターを弾いていた。昨日、M子、N田、M尾さん、Cさんとで飲んで明け方の4時まで起きていた…
この前からH・M卿の秘書の名前を調べていくうちに、H・M卿ことヘンリー・メルヴェール卿が活躍する長編22作のうち、本書だけが手元にない事に気づいた。さては東京創元社の〈ディクスン・カー作品集5〉(1958年)に収められた「一角獣の怪」は絶版状態で入手困難だし、図書館の蔵書にもなっていなかったから読むことも叶わなかったのだろう。それが1995年になって国書刊行会から出版される運びとなった。これが新訳かと言えば…
ジョン・ディクスン・カーの作品をこよなく愛するミステリー好きが、日本国内にどの程度いるのか分からないけれど、確実に存在する。かくいう僕がその一人だ。昔から長編・短編をあわせて著作リストを当時のワープロに入力して印刷し、一つ一つに購入マークを付けたり、読了マークを付けていった。印が増えるのが楽しみだった。というのもカーの著作は長編だけでもかなりの数にのぼり、リストを作成した数十年前には絶版となっ…
マネキン人形殺害事件 S.A.ステーマン(角川文庫) ~番外編~(その2)
番外編その2は、主に著者ステーマンの文章について気になったところを挙げていく。 本作は、夜に「横なぐりの大粒の雨」が降る中を人気のない田舎町の駅に到着した列車から、一人の男が降り立つ場面から始まる。男の名前はマレイズ。この時点では正体不明だ。 マレイズは、かぶっている帽子を、怒ったようにポンと一つたたくと、スーツケースを手にもち、昇降口から鉄道線路の砂利の上に飛びおりた。 …
マネキン人形殺害事件 S.A.ステーマン(角川文庫) ~番外編~(その1)
すでに本書についての書評は書いたけれど、文章について書きそびれた事をまとめておこうと思う。前回の書評で既に書いたとおり、僕は本作を高校生の時に読んでいる。読んだキッカケは文庫の帯に書かれた鮎川哲也氏「ベルギーのエラリー・クイーン」という言葉が目にとまったからだ。そして、「(本作は)本格ミステリー臭が強い初期の作品…
神保町逍遙2023/04/14 ~PASSGE、羊頭書房、東京堂書店、そして富士鷹屋~(その2)
PASSAGEを出たのが2時ちょい前。さすがに疲れてお腹もすいたので、キッチン南海に向かう。行列は多少短めで一安心。ちょっと驚いたのは、ほぼ90%以上が男性のはずの列に、めずらしく女性が何人か混ざっている。小津の映画に出てくるような幅狭なカウンターに丸椅子。両脇もぎちぎちに詰まった席なので、お世辞にもゆったりと食事できるわけではないが、食事の内容本位で常連となってくれる人が増えるのはファンとして嬉しい。…
神保町逍遙2023/04/14 ~PASSGE、羊頭書房、東京堂書店、そして富士鷹屋~(その1)
三ヶ月おきの通院。今回は期初の4月で仕事に余裕があるので年休を取得。主治医の順番待ちが割とスムーズに終わり、なにより会計の待ち時間が大幅に短縮したので午前中で用が済んだ。大井町から京浜東北線で田町駅下車、三田線に乗り換えて神保町へと向かった。着いたら、まず昼食と思っていたが、すずらん通りをPASSAGEの前まで来て、通り過ぎる事ができなくなった。 1月に来た時にはJR御茶ノ水駅から坂を下りてきたの…
中学生の頃、国語の課題として、読んだ本のタイトルと一行感想を付けた読書ノートを作らされた。教師に提出する事を踏まえて選んだわけではないが、やはりどこかお行儀のよい読書になりがちで、今で言えば「夏の文庫フェア」に入るような作品をよく読んでいた。高校になってからも本のタイトルを読書ノートに控える習慣は続けていたようだが、中学のお行儀の良さの反動で、太宰治や島崎藤村、芥川龍之介といった一部の小説家の…
前作では最後の頁を読み終えても、仕掛けの意味がわからずにくやしい思いをした。いや、「くやしい思いをするくらいやられることを期待していた」わけだから、著者のねらいにまんまとハマった事になる。そして、それがキッカケになって、また性懲りも無く、こうして続編を読むことになった。続編といっても前作と話のつながりは全くない。 今回は最初から注意して読み進めようと決めていた。余談になるけれど、僕自身エラ…
密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック 鴨崎暖炉(宝島社文庫)
前作「密室黄金時代の殺人 −雪の館と六つのトリック−」は、タイトルに魅せられて読んだ。「密室黄金期」と言えば、当然ながらディクスン・カーが密室物の名作の数々を世に送り出した時期だと想像したからだ。しかもサブタイトルの「雪の館」とくればカーター・ディクスン名義の「白い僧院の殺人」へのオマージュとなる作品に違いないと、本格ミステリーファンなら誰でも想像するではないか。ところがまったくの見当違いだっ…
グッゲンハイムの謎 シヴォーン・ダウド/原案 ロビン・スティーヴンス/著(東京創元社)
「グッゲンハイム美術館の謎」だとばっかり思ったら違った。前作が「ロンドン・アイの謎」だから「グッゲンハイムの謎」でバランスは取れているようだが、ロンドン・アイはイギリスにある観覧車の名前で、今回の舞台はグッゲンハイム美術館なのでなんとなく釣り合いが取れていないように感じる。でも原題が「The London Eye mystery」と「The Guggenheim mystery」だから致し方ないんだろうな。The Guggenheimと言えば、アメリ…
絶賛、伊藤和夫先生の「英文解釈教室 改訂版」を購読中だ。もちろん、予備校時代にお世話になった学習書を再読するのは、当時よりは多少はまともになった英語力できちんと読めるかどうかを確認するという意味合いもあるが、もう一つはきちんとした日本語に訳せるかという翻訳力を高める意味合いもある。というのも、この学習書では、公式どおりの訳出では日本語として不適切な事例に対して「訳出の工夫」という形で説明してく…
本の雑誌 2022年12月号( 特集「黒と誠」との謎と真実!)
目黒考二さんが亡くなった。今は無き書評番組「週刊ブックレビュー」で、初めてその存在を知った。ご本人の穏やかながら熱量のこもった言葉で、今でも僕が大切にしている作家や本をあれこれと教えてもらった。今野敏と「隠蔽捜査」や小野不由美と「十二国記」も、そんな作家であり本だった。 目黒さんを知って本の雑誌を愛読するようになり、椎名誠さんの「哀愁の町に霧が降るのだ」を読んで、ますます「本の雑誌」に、目…
「すべて、伏線」というのが前作「medium−霊媒探偵城塚翡翠−」を原作にしたTVドラマのキャッチコピーだった。最近は「伏線回収」という言葉と、それを売り物にしたミステリーが流行っているようだ。ミステリーの昔からのファンにしてみれば変な言葉だ。伏線を回収しないミステリーなどあるはずがない。もしあるとすれば、ずいぶん粗忽で無計画な作家もいたものだと笑うところだ。だから、そういう意味の「伏線」ではない事に…
昨年、二作目を原作とした「城塚翡翠倒叙集」がドラマ化されるにあたって、過去に放送した本作のドラマが再放送されたのを録画した。と思っていたが、完全に勘違いだと今さっきWikipediaを調べてわかった。なるほど、曲つなぎならぬドラマつなぎだったのか。どういう事かというと、昨年10月から「霊媒探偵 城塚翡翠」のタイトルで放送を開始し、途中で「invert 城塚翡翠 倒叙集」というタイトルに一新して装いも新たに放送した…
ミッドサマー (2022年11月17日,2023年2月12日 アマゾン・プライム)
80〜90年代にかけて、もっとも映画館に通いつめた。結婚し、子供が出来、親を介護し、様々な実生活の難問を抱え込むようになって、至福の時は過ぎた。それからは、たまに妻と映画館に見に行くか、あるいは録画した映画を時間を惜しむように自宅で観る事が多くなった。ホラーは苦手なジャンルだったので、通い詰めた時期でも後回しにしてお気に入りの映画を優先してきた。 今、Twitterとアマプラという2つのツールを活用…
「クリスマス・プレゼント」に続くディーヴァーの第2短編集だ。タイトルは日本の読者の好みを考えて代表的な短編のタイトルに付け替えているが、元々は第1短編集が”TWISTED"、本書が"MORE TWISTED"と、きっばりとしたものだ。「捻りをきかせた短編」から成るという特徴を示しているとともに、著者の自信の表れを感じさせるタイトルだ。ただし「クリスマス・プレゼント」の感想にも書いたが、出版社や読者に忖度した「善は善…
ルポ 電王戦 人間vs.コンピュータの真実 松本博文 (NHK出版新書)
プロ棋士がコンピュータと対局する「電王戦」が毎年のように行われてから、かれこれ10年ほどが経過してしまった。あの当時は、将棋界のトップであるプロ棋士が自らの存在意義を賭けて、相当な覚悟をもってコンピュータとの対局に臨む姿に感動していた。と同時に、すでに対戦前から「負け戦」なのではないかという一種の悲壮感のようなものを一ファンとして感じていた事も否定できない。 すでに情報処理の分野ではAI(人工…
昔々、母親がどこかで教わってきたのか、食パンを使ったレシピで朝食を作ってくれた。とりあえず料理の名前も知らずに食べていたのだが、そのうち自分でも作るようになり、一家を構えて息子と自分の二人分の朝食を用意する時の定番メニューとなっている。それをいつからか「クロックムッシュ」だと信じて呼ぶようになったのだけれど、どうやら違ったみたいだ。 ちなみに母親から譲り受けたレシピは、食パン二枚の片面にバ…
ドルリー・レーンが「悲劇四部作」を解決に導いたのは一体いつのことか?
ファイロ・ヴァンスに引き続き、今度はドルリー・レーンだ。言わずとしれたミステリー作家エラリー・クイーンが生み出した二人の名探偵のうちの一人だ。作家と同名の探偵は長きにわたって活躍する事になるが、ドルリー・レーンが解決した事件は「悲劇四部作」に限られる。エラリー・クイーンの研究家で知られる飯城勇三氏によると、バーナビー・ロス名義でクイーン名義とは違う出版社から出したけれど、クイーン名義ほど売れな…
続・ファイロ・ヴァンスの活躍した4年間とは一体いつのことか?
さて、またしてもヴァン・ダインが生んだ名探偵ファイロ・ヴァンスに関する話題である。しかも最初にとりあげた「ヴァンスの活躍した4年間はいつのことか」を蒸す返す事になる。前回の結論を以下にまとめてみた。 ・ファイロ・ヴァンスが活躍したのは、友人の地方検事マーカムの在任期間(4年間)に限られる。 ・長編全12作に事件発生の日付と曜日は書かれているが、西暦は書かれていない(少なくとも最初の4作に…
ベンスンが撃たれたのは額か、こめかみか?(「ベンスン殺人事件」)
ゆえあって、再びファイロ・ヴァンスの物語に関する話題の続きとなる。(犯人名は明かさないが、犯人を特定するための情報を引用しているので、未読の方は読まないでください。) 前回は「ファイロ・ヴァンスの活躍する4年間は西暦何年か」というトピックだったが、次なるトピックは「ベンスン殺人事件」での被害者ベンスンは「拳銃で額を撃ち抜かれたのか、こめかみを撃たれたのか」…
ファイロ・ヴァンスとは、ミステリー作家S.S.ヴァン・ダインが生み出した探偵である。かつてはエラリー・クイーンや同時期のアメリカのミステリー作家たちに多大な影響を与えた作家であり、その探偵であったが、今では諸々の理由から顧みられる事が少なくなってきた。諸々の理由とは、近年の伝記により数十年前までは信じられてきた神話の大半がデタラメだったと暴露された事と、読もうにも全12作の長編のほとんどが書店では…
第11回アガサ・クリスティ賞大賞受賞作だそうだ。ずっと以前に同大賞受賞作の帯がついた文庫を書店で見かけた事があったが、なんとそれは第1回(2011年)の「黒猫の遊歩あるいは美学講義」(森昌麿)だったようだ。この作品はいまだに店頭で見かけるような気がするが、読んではいない。以降の受賞作のタイトル一覧を一瞥しても、どれもこれも未読の作品ばかりだ。クリスティの名を冠した賞だから応募作の内容や作風に限定があるの…
「仮面ライダー BLACK SUN」に続いてアマゾン・プライムの恩恵を早々に実感できる映画がついにやってきた。今年の5月から夏に向けて、映画館に足を運びたくて、でも結局時間がとれずに観に行けなくてヤキモキさせられた一本だった。ウルトラマン一期生の僕にとって、「ウルトラマン」はひときわ思い入れが強い作品だった。それを「ゴジラ」のリブート映画を撮った庵野監督と、平成ガメラ三部作を撮った樋口監督との二人が、ど…
なんだか最近の読書は、ジェフリー・ディーヴァー作品に踊らされているかのような事態に陥っている。この一年間に「魔の山」「クリスマス・プレゼント」「フル・スロットル」「ポーカー・レッスン」「死亡告示」そして本作「ファイナル・ツイスト」の6冊を読んでいる。そのうち4冊は短編集ばかりで、しかも「クリスマス・プレゼント」も「ポーカー・レッスン」もずいぶん前に購入して積ん読状態にしていたものだ。今年になっ…
最近ようやくTwitterを使い出した。経緯については「風が吹けば桶屋が儲かる」式の話があり、それを枕にしようと思ったら書けども書けども終わらない。ようやく枕が終わって、さて本題の「仮面ライダーBLACK SUN」について書こうと思ったら、ハタと手が止まってしまった。いろいろと言いたい事、突っ込みたい事があって、事前に手帳に書き殴ったメモは結構な分量になったのだから、いくらでも書けるはずだ。でも、筆ならぬキー…
まるでミステリ黄金期に書かれたかのように本格ミステリーの王道をいくタイトル。書店の平積みで見かけた時は、あまりにベタなタイトルに加えて、表紙のイラストがちょっと子供向けっぽいなぁと感じて、ノーマークでスルーしてしまった。その後しばらくして最寄りの図書館のYAコーナーで同じ表紙に遭遇して「ムムッ、アレがあるぞ」と気になってきた。最近始めたツイッターで、翻訳が越前敏弥さんだと御本人のツイートでよう…
「月曜日の抹茶カフェ」で青山ワールドに魅せられて以来、こちらがスピンオフ作品と知って、元となった「木曜日にはココアを」を是が非でも読もうと立川図書館の予約を待ち続けている。しかし、何しろ想像を絶する人気ぶりなのでなかなか行列の先頭にたどり着かない。そうこうするうちに、さらにマーブル・カフェのスピンオフ作品集「いつもの木曜日」が9月に刊行されたので、こちらも蔵書になったとたんに予約。スピンオフば…
僕のパソコンには昔からジャストシステムのATOKを搭載している。ATOKとは仮名漢字変換で日本語を入力するためのソフトウェアだ。当初は同社の日本語ワープロソフト「一太郎」のための入力ソフトとして開発されたが、パソコン上で日本語を入力するあらゆるソフトウェアの入力を受け持つIME(Input Method Editor)としての役割を果たすようになった。Windowsが動作するPCでは、開発元のMicrosoftが用意したIMEが最初から搭載され…
著者はNHKラジオ「実践ビジネス英語」の講師を32年以上勤めてきた。その経歴だけでも十分すぎるほどの箔がついているのだけれど、なんだか序盤から盛んに自らの実力自慢が続く。例えば「テキストは累計3000万部を超え、NHKの100年近い放送史において『最長寿の語学番組』」となったとか、「私も一度TOEICを受けたことがありますが、最後のところで慌てたので1問だけ間違えました。でも、次回受ければ満点を取る自信はあります…
休講の事、代償行動の事、慣れないアンプ作りの事、友人とのたわいもない陰口の事(1985年6月11日)
1985.6.11(Tue) 曇り時々雨(梅雨冷えつづく) 午後から大学へ行く。自動制御設計論は休講。生協でCDを注文。トラ技から「OPアンプのノイズ対策」についてコピーをとる。そろそろ、AMP直しの重い腰をあげねば。K研に行って、しばしS水と談話。「M子は何か夢をもとめて、それがかなえられず、常に失望している」のだと言う。 …
毎年行われて結果が発表されるたびに、新聞やテレビ、ネットなどで話題になるのが「国語に関する世論調査」だ。こういう企画って国立国語研究所(通称、国研)が担うものだと思ったら、文化庁国語課というところが担当している。さらには一般社団法人中央調査社という会社に委託(丸投げ?)している。どういう根拠や考え方で、アンケートの事例を選んでいるのだろうか。 調査目的:現在の社会状況の変化に伴う日本人…
夏場は体調が悪い事、雑誌「現代思想」1985年6月号の事、吉本隆明と別役実の事(1985年6月10日)
1985.6.10(Mon) 雨(蕭々と降る雨) 明け方の4:00まで眠れず。計測基礎論をサボる。11時頃起きて大学へ行く。OS-9ゼミと線形システム理論�Tを受講して、生協へ行って本(現代思想6月号)とテープを購入。 7時頃、M子(同じ研究室の同期)と一緒に大学に出る。地下鉄(都営三田線)の中で急に眠気がして、乗り過ごした(志村坂上駅で…
ジェフリー・ディーヴァーはすっかり短編創作の虜になってしまったようだ。本国アメリカで短編集「クリスマス・プレゼント」(2003年)を出版して以来、「ポーカー・レッスン」(2006年)と続き、さらに「Trouble in Mind」(2014年)を出した。デビューは1988年。リンカーン・ライムシリーズ第一作「ボーン・コレクター」(1997年)が注目を浴び、一躍人気作家になった。他にもキャサリン・ダンスシリーズが人気を博し、さらに最近あ…
まずは、二枚のカラーグラビアを見て欲しい。
「高田みずえ さよならコンサート」を見た事、ワープロソフト「ユーカラ」の事(1985年6月9日)
1985.6.9(Sun) 時々雨(気温が下がって涼しい) 1:00PM頃に起きた。「高田みずえ さよならコンサート」を見た。録画しておいて良かったなと思った。 部屋の掃除をするように母に言われてたが、そっちのけでビデオのLibrary作りに励んだ。ワープロを使って、1本々々ビデオの内容および一言コメントを付けた。
いったい、いつ頃からこんな言い方するようになったんだろうか?「いちゃこらする」の意味をご丁寧に説明してくれて、「シニア層の人が使うことがある」とまで書いているサイトまであった。しかし、こんな言葉は以前には無かったし、「シニア層」ってどの時期のどの年代を指しているんだろう。「こら」が「こりゃこりゃ」というかけ声から来ているみたいな説も根拠があるようには思えない。 そもそも、この言葉に最初に遭…
ちょっと面倒な話から始めようと思う。大学生の頃だったか、スペインの映画作家ルイス・ブニュエルの特集が今は無き三百人劇場で組まれて、良い機会だからと何回か通いつめて初期の作品やら代表作を観た想い出がある。後にも先にもブニュエルをしっかりと観たのはそのときだけで、なかなかテレビでも放送されずに今に至るので、内容がうろ覚えのものが多い。今にして思えばブニュエルの遺作だった「欲望のあいまいな対象」が最…
ちょっと前に「えんみ」という言い方が流行っているという記事を書いた際に、他の言葉も取り上げようと思っていたら、肝心の言葉を忘れてしまって書けなくなってしまった。一昨日の夜のバラエティ番組で、激安スーパーの食材を使った料理をゲストが食べた際に、その言葉が出てきてようやく思い出した。「にくにくしい」だ。 …
オムライスの事、「愛と喝采の日々」の事、ふたたび「n個の性」あるいは安眠マスクという事件の事(1985年6月8日)
1985.6.8(Sat) 朝から雨(梅雨入り) 雨が降っているので、大学へ行くのはやめた。ゆっくりと起きて、オムライスを作って食べた。安眠マスクのおかげで眠りが深かった。 「愛と喝采の日々」を録画で観た。「愛と追憶の日々」と間違えていた。映画としては、ちょっとダメだ。 夕方、アルバイトへ行った。取り立てて言うべき…
Hi-Fiビデオの事、「n個の性」の事、安眠マスクの事、友人の悩みの事(1985年6月7日)
1985.6.7(Fri) 晴れのち曇り 視覚情報処理のあと、O本さん(ブラジルからの留学生)の自室(A台にある寮)へ行った。Hi-Fi ビデオがすごい。色がキレイだ。それから個室にクーラー(cooler)。とんでもない!2:45から精密システムの授業。その後、図書館に本を返却に行った。 M宮(同期の友人)は、性を究極にすれば、釈迦のよ…
あの「紙鑑定士」がシリーズになって戻ってきた。前作を読み終わったとき、一作だけで終わらせるには惜しい設定だなと思った。紙鑑定士という架空の職業を持つ人物を主人公に配し、ディオラマなどを作る造形家とタッグを組んで謎を解き明かすという趣向にうならされた。主人公である紙鑑定士・渡部の過去に含みを持たせていたので、いずれ続編が書かれる事になるとは思っていたが、2年ぶりに短編集という形で実現した。 …
高橋真梨子コンサートの事、通院の事、「さよならジュピター」の事(1985年6月6日)
1985.6.6(Thu) 晴れ(今日も暑い) 午前中、ディジタル制御ゼミ。午後から医者へ行く。N田(兄弟研究室の同期)から高橋真梨子のコンサートの誘いがあった。M尾さん(研究室の助手)の購入したチケットが余っているらしい。が、視覚情報処理のレポート提出が迫っているので断った。風邪もなおったばかりだし。医者は、予約してなかっ…
睡眠不足、アイマスクが必要な事、東京標準テストの事(1985年6月5日)
1985.6.5(Wed) 晴れ(暑い、2階は27〜30℃) 又々、大学を休む。どうも朝方に眠りが浅くなって、睡眠不足だ。午後1時頃に起きて食事。やっと昨晩から人並みの食事を摂れるようになった。3時半ごろに自宅を出て、神保町で本を物色。大学の生協で買うためにメモを取る。 アルバイトに行く。S吉、I沢(いずれもアルバイト先…
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「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.9 Queen Elizabeth introduced several reforms that were helpful to the nation, and guided her people step by step to prosperity and power. (訳) エリザベス女王は、国民のためになるいくつかの改革を導入し、国民を一歩一歩繁栄と強国へと導いた。 …
(今回も、多少ストーリー後半のネタを割ります。犯人を直接示すようなネタバレではないが、前もって知っておくとストーリーの面白さを損なう可能性があるので、未読の方は読まないで下さい。) ダンスタンの回想(第13章) 今回は予告通り、別荘の客の一人ダンスタン卿が人妻イソベル・ドオネイと密会を企て、髑髏城まで赴いてアリソンの悲劇に遭遇した時のことを回…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.8 Formerly girls were usually taught at home by governesses and received only a very narrow kind of education, in which science played no part at all. (訳) 昔は、女の子はふつう家で家庭教師につき、受ける教育の範囲は非常に狭く、その中に科学はまったく…
今回も篠田真由美著『ミステリな建築 建築なミステリ』出版記念の企画だ。著者が十代の頃から魅了されてきた作品『髑髏城』は、どうやらミステリ愛好家やカー愛好家からもあまり評価されてこなかった事に、著者はずいぶんと悔しい思いを抱いてきたようだ。著書の第二部「ミステリを建築で読む」の第4章「ディクスン・カー『髑髏城』」の冒頭で、本格ミステリを誰よりも愛し、カーへの愛を惜しげも無く開陳してきた江戸川乱歩と…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.7 People used to think, and some still do, that Latin should be a universal model for language. (訳)ラテン語が言語の普遍的範型であるべきだと昔の人々は考えていたし、今でもそう考えている人もいる。 この文はいろいろと考える事がある。何よりも「ラテン語が」で始まっている事に違…
ミステリな建築にして建築なミステリの『髑髏城』を散策する 前回の終わりで、次は「ダンスタンとイゾベルとの逢い引きの場面」と書いたのだが、状況が変わった。ついに髑髏城中毒を標榜する方の本が出版されたのだ。その名も『ミステリな建築 建築なミステリ』(篠田真由美)。もちろん髑髏城は、この本の中で紹介される建築にしてミステリの一つに過ぎない。ただ、僕自身が『Yの悲劇』あるいは『グリーン…
後追いになるが、目次と内容についてまとめようと思う。 自分でも驚くくらいに長々と書き綴ってきたおかげで、自分でも何がどこに書かれているか確かめるのが難しくなりつつある。もし奇特な人がいて、『髑髏城』を再読する際にこの文章を読んでみようと思っても、いったい何がどうなっているのか分からなくなると思う。まだ、散策は完結していないのだが、書き継ぐ度に目次の方も書き足していく事にする。
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.6 Every aged person reminds us of our own death, that our body won't always remain smooth and responsive. (訳)老人は誰でも我々に、自分もいつかは死ぬこと、自分の体もいつまでも柔軟で敏感なままではいないことを思い出させる。 この文には納得できない。訳文がというより、この英文…
(今回以降は、多少ストーリー中盤のネタを割る事になる。犯人を直接示すようなネタバレではないが、前もって知っておくとストーリーの面白さを損なう可能性があるので、未読の方は読まないで下さい。) 前回はついに髑髏城の外観を目の当たりにする事ができた。もちろん僕個人の目に映った髑髏城である事を断っておく。僕にはこう見えた(読めた)に過ぎない。今回は髑髏城の内部を探索す…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.5 She has a good memory for bits of fresh gossip, or little stories of some celebrity that she had read or heard somewhere, and a knack of telling them entertainingly. (訳)彼女はいくつかの新しいうわさ話や、どこかで読んだり聞いたりした、有名人に関する小話をよく覚えていたし、また、それをおもしろ…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.4 It is hard enough to know whether one is happy or unhappy, and still harder to compare the relative happiness or unhappiness of different times of one's life. (訳)自分がいま幸福なのか不幸なのか知るだけでも容易なことではないのに、一生の中の異なった時代の相…
ついに(その10)になってしまった。こんなに続ける事になるとは当初は思ってもみなかったけれど、カーの原文を手探りしながら、調べ物しながら、図を書きながらと、いろんな事に手を出していたら、こんな始末になってしまった。特に今は図を書くのに時間がかかっている。いよいよ今回で髑髏城の外観図が完成するからだ。いままで仕事でもパワーポイントはずいぶん使ってきたつもりだけれど、体裁のいいグラフや図を駆使すると…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.3 The New World has a large and rapidly increasing population of its own and, after more than a century of abuse, not a little of its soil has lost or is in process of losing its fertility. (訳)新世界ではそれ自体の膨大な人…
前回の(その8)で仕切り直しをした。そこで確認したのは「マイロン・アリソンはどこにも落ちていない」という事だった。そこで、再び城壁内部の通路と階段をぐるりと巡った終着地courtyard(中庭)にたどり着く事になる。そこから散策を再開しよう。 ところで、今、非常に後悔しているのは、(その7)の終わりに髑髏城の城壁上部を俯瞰した図を出してしまった事だ。もちろん、あの図を出す事で、城門からどのように内部の通…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14.1.2 It is, and has been for a long time, the most prized national possessions, the sense of humor. (訳)ユーモアの感覚は、わが国民が持っているものの中で、現在もこれまでの長い時間にも最も尊重されているものである。 共通関係をどう日本語で表現す…
緊急事態だ。 (その7)で僕らは髑髏城の正面入口である城門から城壁の内部に入った。そのまま通路と階段を経巡り、ついには城壁の屋上とでも言うべき中庭(courtyard)にたどり着いた。そして、そこで見たのは狭間胸壁(battlements)への階段であり、回廊はまだ見あたらない。その階段を登ればやがて回廊は見えてくるのだが、肝心の回廊の屋根にあたる位置に別の狭間胸壁など見あたらないのだ。では、いったい炎に包まれたマ…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より、まとめの例題を書き直す。 14.1 例題(2) In the late summer of that year we lived in a house in a village that looked across the river and the plain to the mountains. In the bed of the river there were pebbles and boulders, dry and white in the sun, and the water was clear and swiftly moving and blue in the channels. Troops went …
(その6)で城の正面の城門を通って幅の広い石敷きの通路(a wide passage of stone)に出た。城門を入ってすぐ右手には低いくぐり戸(a low door)があって、中は番人の詰所になっている(はず)というところまで来た。謎の人物が城壁の上で持っていたたいまつが通路に放り出されていたのをホフマンとフリッツが見つけたのも、この場所だ。ここには城門の上から溶かした鉛を敵の頭上に流す装置があり、鉄製の桶を火にかけるために、…
「Chapter14. 共通関係 �@文の主要素の共通関係」より。 14章の冒頭に戻る。共通関係とは「and,but,orなどの等位接続詞で結ばれる2つの語句の関係」を指す。従来の参考書では「例外的な形を雑然と収集し、雑然と提示するだけ」にとどまっていると指摘し、この本では「文の基本構造と修飾構造の2面から順を追って考え」るとしている。もちろん、全15章からなる「英文解釈教室」をここまで読んできた人にとっては当たり前…
8章「THE BODY IN THE TOWER」(旧訳「塔上の死体」、新訳「塔の死体」)で、バンコランとフォン・アルンハイムが連れ立って髑髏城に向かう。7章の終わりでバンコランはジェフに「レインコートを用意した方がいいぜ。びしょぬれになるおそれがたぶんにある……」と言い切っているので、外は暴風雨の嵐のようだ。ライン川巡りのサイトや書籍を見ると悠々とした流れの画像ばかりで、とてもじゃないが暴風雨で荒れたライン川を想…
PASSAGEを出たのが2時ちょい前。さすがに疲れてお腹もすいたので、キッチン南海に向かう。行列は多少短めで一安心。ちょっと驚いたのは、ほぼ90%以上が男性のはずの列に、めずらしく女性が何人か混ざっている。小津の映画に出てくるような幅狭なカウンターに丸椅子。両脇もぎちぎちに詰まった席なので、お世辞にもゆったりと食事できるわけではないが、食事の内容本位で常連となってくれる人が増えるのはファンとして嬉しい。…
三ヶ月おきの通院。今回は期初の4月で仕事に余裕があるので年休を取得。主治医の順番待ちが割とスムーズに終わり、なにより会計の待ち時間が大幅に短縮したので午前中で用が済んだ。大井町から京浜東北線で田町駅下車、三田線に乗り換えて神保町へと向かった。着いたら、まず昼食と思っていたが、すずらん通りをPASSAGEの前まで来て、通り過ぎる事ができなくなった。 1月に来た時にはJR御茶ノ水駅から坂を下りてきたの…
中学生の頃、国語の課題として、読んだ本のタイトルと一行感想を付けた読書ノートを作らされた。教師に提出する事を踏まえて選んだわけではないが、やはりどこかお行儀のよい読書になりがちで、今で言えば「夏の文庫フェア」に入るような作品をよく読んでいた。高校になってからも本のタイトルを読書ノートに控える習慣は続けていたようだが、中学のお行儀の良さの反動で、太宰治や島崎藤村、芥川龍之介といった一部の小説家の…
前作では最後の頁を読み終えても、仕掛けの意味がわからずにくやしい思いをした。いや、「くやしい思いをするくらいやられることを期待していた」わけだから、著者のねらいにまんまとハマった事になる。そして、それがキッカケになって、また性懲りも無く、こうして続編を読むことになった。続編といっても前作と話のつながりは全くない。 今回は最初から注意して読み進めようと決めていた。余談になるけれど、僕自身エラ…
前作「密室黄金時代の殺人 −雪の館と六つのトリック−」は、タイトルに魅せられて読んだ。「密室黄金期」と言えば、当然ながらディクスン・カーが密室物の名作の数々を世に送り出した時期だと想像したからだ。しかもサブタイトルの「雪の館」とくればカーター・ディクスン名義の「白い僧院の殺人」へのオマージュとなる作品に違いないと、本格ミステリーファンなら誰でも想像するではないか。ところがまったくの見当違いだっ…
「グッゲンハイム美術館の謎」だとばっかり思ったら違った。前作が「ロンドン・アイの謎」だから「グッゲンハイムの謎」でバランスは取れているようだが、ロンドン・アイはイギリスにある観覧車の名前で、今回の舞台はグッゲンハイム美術館なのでなんとなく釣り合いが取れていないように感じる。でも原題が「The London Eye mystery」と「The Guggenheim mystery」だから致し方ないんだろうな。The Guggenheimと言えば、アメリ…
絶賛、伊藤和夫先生の「英文解釈教室 改訂版」を購読中だ。もちろん、予備校時代にお世話になった学習書を再読するのは、当時よりは多少はまともになった英語力できちんと読めるかどうかを確認するという意味合いもあるが、もう一つはきちんとした日本語に訳せるかという翻訳力を高める意味合いもある。というのも、この学習書では、公式どおりの訳出では日本語として不適切な事例に対して「訳出の工夫」という形で説明してく…
目黒考二さんが亡くなった。今は無き書評番組「週刊ブックレビュー」で、初めてその存在を知った。ご本人の穏やかながら熱量のこもった言葉で、今でも僕が大切にしている作家や本をあれこれと教えてもらった。今野敏と「隠蔽捜査」や小野不由美と「十二国記」も、そんな作家であり本だった。 目黒さんを知って本の雑誌を愛読するようになり、椎名誠さんの「哀愁の町に霧が降るのだ」を読んで、ますます「本の雑誌」に、目…
「すべて、伏線」というのが前作「medium−霊媒探偵城塚翡翠−」を原作にしたTVドラマのキャッチコピーだった。最近は「伏線回収」という言葉と、それを売り物にしたミステリーが流行っているようだ。ミステリーの昔からのファンにしてみれば変な言葉だ。伏線を回収しないミステリーなどあるはずがない。もしあるとすれば、ずいぶん粗忽で無計画な作家もいたものだと笑うところだ。だから、そういう意味の「伏線」ではない事に…
昨年、二作目を原作とした「城塚翡翠倒叙集」がドラマ化されるにあたって、過去に放送した本作のドラマが再放送されたのを録画した。と思っていたが、完全に勘違いだと今さっきWikipediaを調べてわかった。なるほど、曲つなぎならぬドラマつなぎだったのか。どういう事かというと、昨年10月から「霊媒探偵 城塚翡翠」のタイトルで放送を開始し、途中で「invert 城塚翡翠 倒叙集」というタイトルに一新して装いも新たに放送した…
80〜90年代にかけて、もっとも映画館に通いつめた。結婚し、子供が出来、親を介護し、様々な実生活の難問を抱え込むようになって、至福の時は過ぎた。それからは、たまに妻と映画館に見に行くか、あるいは録画した映画を時間を惜しむように自宅で観る事が多くなった。ホラーは苦手なジャンルだったので、通い詰めた時期でも後回しにしてお気に入りの映画を優先してきた。 今、Twitterとアマプラという2つのツールを活用…
「クリスマス・プレゼント」に続くディーヴァーの第2短編集だ。タイトルは日本の読者の好みを考えて代表的な短編のタイトルに付け替えているが、元々は第1短編集が”TWISTED"、本書が"MORE TWISTED"と、きっばりとしたものだ。「捻りをきかせた短編」から成るという特徴を示しているとともに、著者の自信の表れを感じさせるタイトルだ。ただし「クリスマス・プレゼント」の感想にも書いたが、出版社や読者に忖度した「善は善…
プロ棋士がコンピュータと対局する「電王戦」が毎年のように行われてから、かれこれ10年ほどが経過してしまった。あの当時は、将棋界のトップであるプロ棋士が自らの存在意義を賭けて、相当な覚悟をもってコンピュータとの対局に臨む姿に感動していた。と同時に、すでに対戦前から「負け戦」なのではないかという一種の悲壮感のようなものを一ファンとして感じていた事も否定できない。 すでに情報処理の分野ではAI(人工…
昔々、母親がどこかで教わってきたのか、食パンを使ったレシピで朝食を作ってくれた。とりあえず料理の名前も知らずに食べていたのだが、そのうち自分でも作るようになり、一家を構えて息子と自分の二人分の朝食を用意する時の定番メニューとなっている。それをいつからか「クロックムッシュ」だと信じて呼ぶようになったのだけれど、どうやら違ったみたいだ。 ちなみに母親から譲り受けたレシピは、食パン二枚の片面にバ…
ファイロ・ヴァンスに引き続き、今度はドルリー・レーンだ。言わずとしれたミステリー作家エラリー・クイーンが生み出した二人の名探偵のうちの一人だ。作家と同名の探偵は長きにわたって活躍する事になるが、ドルリー・レーンが解決した事件は「悲劇四部作」に限られる。エラリー・クイーンの研究家で知られる飯城勇三氏によると、バーナビー・ロス名義でクイーン名義とは違う出版社から出したけれど、クイーン名義ほど売れな…
さて、またしてもヴァン・ダインが生んだ名探偵ファイロ・ヴァンスに関する話題である。しかも最初にとりあげた「ヴァンスの活躍した4年間はいつのことか」を蒸す返す事になる。前回の結論を以下にまとめてみた。 ・ファイロ・ヴァンスが活躍したのは、友人の地方検事マーカムの在任期間(4年間)に限られる。 ・長編全12作に事件発生の日付と曜日は書かれているが、西暦は書かれていない(少なくとも最初の4作に…
ゆえあって、再びファイロ・ヴァンスの物語に関する話題の続きとなる。(犯人名は明かさないが、犯人を特定するための情報を引用しているので、未読の方は読まないでください。) 前回は「ファイロ・ヴァンスの活躍する4年間は西暦何年か」というトピックだったが、次なるトピックは「ベンスン殺人事件」での被害者ベンスンは「拳銃で額を撃ち抜かれたのか、こめかみを撃たれたのか」…
ファイロ・ヴァンスとは、ミステリー作家S.S.ヴァン・ダインが生み出した探偵である。かつてはエラリー・クイーンや同時期のアメリカのミステリー作家たちに多大な影響を与えた作家であり、その探偵であったが、今では諸々の理由から顧みられる事が少なくなってきた。諸々の理由とは、近年の伝記により数十年前までは信じられてきた神話の大半がデタラメだったと暴露された事と、読もうにも全12作の長編のほとんどが書店では…
第11回アガサ・クリスティ賞大賞受賞作だそうだ。ずっと以前に同大賞受賞作の帯がついた文庫を書店で見かけた事があったが、なんとそれは第1回(2011年)の「黒猫の遊歩あるいは美学講義」(森昌麿)だったようだ。この作品はいまだに店頭で見かけるような気がするが、読んではいない。以降の受賞作のタイトル一覧を一瞥しても、どれもこれも未読の作品ばかりだ。クリスティの名を冠した賞だから応募作の内容や作風に限定があるの…
「仮面ライダー BLACK SUN」に続いてアマゾン・プライムの恩恵を早々に実感できる映画がついにやってきた。今年の5月から夏に向けて、映画館に足を運びたくて、でも結局時間がとれずに観に行けなくてヤキモキさせられた一本だった。ウルトラマン一期生の僕にとって、「ウルトラマン」はひときわ思い入れが強い作品だった。それを「ゴジラ」のリブート映画を撮った庵野監督と、平成ガメラ三部作を撮った樋口監督との二人が、ど…