東京都同情塔 - 九段理江 (文藝春秋2024年3月号)
2024年下期の芥川賞受賞作。好みの作品(昭和文学)ばかりではなく、時代の先端の作品も読まねばならぬとの思いから、芥川賞受賞作は毎回読むようにしているのですが、本作「東京都同情塔」はここ数年の中で出色の作品だと思います。もちろん、私の好みで言えばですが。バベルの塔の再現。この書き出しから一気に物語の中に没入できました。言葉が言葉の役割を持たなくなる危険性を、バベルの塔をメタファにして現代における問題を批評していく書き出しは、読むのを止められなくなり、一気に読み切ってしまいました(前半部は、高輪ゲートウェイの駅名をつけた人に読ませたい)。生成AI風の文章を交えているのも、現代の問題を巧みにとらえていて、それがわざとらしくなく物語に溶け込んでいるには、新人作家らしからぬ老獪さを感じました。ザハ・ハディドのスタ...東京都同情塔-九段理江(文藝春秋2024年3月号)
2024/02/21 06:52