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2018/08/24

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  • 爆弾は、東京中に仕掛けられた…?「スズキ」に翻弄される捜査官。彼の正体を掴み、爆発を食い止められるのか。

    爆弾 作者:呉勝浩 講談社 Amazon 凄い物語だった。 「スズキタゴサク」とは、一体、何者なのか。 最後まで、その正体は明らかにされなかったのだが。 彼は、人間の「悪」を具現するものなのか。 それとも、「正」をひた隠しにしているだけなのか。 そもそも、「正」や「悪」は、どこにあるのか、 いや、どこにもないのか。 一人ひとりの中にある、「正」や「悪」は同じではないのか。 簡単に答えが出ない、問いの堂々巡り。 見た目、とぼけた印象の中年男が、些細な傷害事件で 野方署に連行された。 彼は「スズキタゴサク」と名乗り、 取調室で、秋葉原で爆発があるという「予言」をする。 直後、実際に秋葉原の廃ビルで…

  • 「ごぶさたぁ~、元気だったぁ?」。変わらぬ町、変わらぬ家族の風景がまた、戻って来た。小路幸也さんの「ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴン」を読む。

    ハロー・グッドバイ 東京バンドワゴン 作者:小路 幸也 集英社 Amazon 「東京バンドワゴン」シリーズの十七作目。 これくらい続くと、大きな変化が無くても、 取り立てて事件が起こらなくても、 読めてしまう。 息の長いシリーズの強みか。 このシリーズに触れると、 昭和の香り、いや、それよりもずっと前の香りさえ感じる。 家や町のたたずまいばかりでなく、 この家族の、筋を通す生き方、暮らし方が、 昭和生まれには、原風景を見せてもらっているような気になる。 懐かしく、そして切ない。 季節ごとの行事がきちんと描かれていくのも、 楽しいし、嬉しい。 師走、正月、節分…、 父母や祖父母の居た風景が蘇る。…

  • 「のっぽのバンビ」が、犯人の巧緻な計画を崩す。女刑事、花房京子の犯人の追い詰め方は。香納諒一さんの「逆転のアリバイ 刑事花房京子」を読む。

    「花房京子」シリーズの二作目。 このシリーズは、初めから犯人がわかっている 倒叙形式が採られている。 この形式は、古くは「刑事コロンボ」、そして、 国内ミステリーでは「福家警部補」など、 数多くの作品で見られる。 犯人の視点で物語は進むことが多いので、 思い入れは犯人側に傾くこともある。 通常は、真犯人は、アイツかコイツか、 動機は、殺害方法は、、、など、 刑事たちの捜査と共に、読者も、ヒリヒリする。 それとは異なり、 刑事たちが、犯人を追い詰めていく その緊張感が重要だ。 主人公の花房京子は、警視庁捜査一課の女性刑事。 だが、なぜだか、いつも一人で行動する。 作品では、所轄の刑事たちが補佐役…

  • 江戸庶民の暮らしを支える火消。「一人も死なせるな」、ぼろを纏った男たちの物語が熱い。今村翔吾さんの「羽州ぼろ鳶組」シリーズを読む。

    火喰鳥――羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 作者:今村翔吾 祥伝社 Amazon 夜哭烏――羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 作者:今村翔吾 祥伝社 Amazon 今、はまりつつある物語がある。 これまで楽しんだ時代小説も、捕物一辺倒だったが、 江戸の火消し、このシリーズは面白い。 これまでは、捕物帳の中に登場する町火消くらいしか知らなかったが、 武家火消というものが新鮮で、これほどワクワクする世界に これまで触れてこなかったのが、惜しいくらい。 人の生き方、男の生きざま。 武骨だが、真っ正直で、真正面からぶつかっていく、 その熱い心が直で伝わってくる。 男くさい、男ばかりの物語の中に、 加賀鳶の娘や…

  • シリーズ第3弾の剣持は、眠らない。町弁の業務を引き継ぎ、夜の都会を走り回る。新川帆立さんの「剣持麗子のワンナイト推理」を読む。

    「剣持麗子」シリーズの第三弾。 やっぱり、「いい人」じゃん、と思う。 そして、故村山弁護士の業務を引き継いだり、 クライアントの犬の面倒をみたり、 また、別の件で、クライアントの家の床下に もぐりこまされたり、と、 一体、何やってんの、結構、お人好しなんだ、とも思う。 ま、大山淳子さんが描くところの、猫弁ほどのお人好しではないが。 だが、そういう受け取り方は、間違っているというか、 剣持に失礼なのか。 作品の中で剣持も言う。 「他人に何が分かるというのだ」と。 人間は、そもそも多面なのだ。 善いことをしながら、悪いことをする。 その反対も、またしかり。 剣持も、幾つもの顔を持っている。 だから…

  • お金至上の凄腕弁護士、剣持が、成功報酬・百数十億につられ、元彼の遺産相続をめぐる謎に挑む。新川帆立さんの「元彼の遺言状」を読む。

    元彼の遺言状 作者:新川帆立 宝島社 Amazon TVドラマ化されると聞いて、 慌てて読んでみた。 濃厚なキャラの主人公、剣持麗子。 鼻っ柱の強さ、お金に対するスタンス、 相手が誰であろうと、行くときは行く押しの強さ、 こういう強めのキャラを持つ女性、 最近読んだ作品も登場したな~と思いながら。 キャラの強い女性が世の中に受け入れられてきたんだなと、シミジミ。 自分の性格の強さが分かっていそうな言動を見せながらも、 「いい人」ぶらない、潔さは、反対に気持ちがいいほど。 キャラの強さ、濃さが目立つけど、 死亡した、剣持の元彼の遺言が、 「自分を殺した犯人に全財産を譲る」という、 なかなかの面白…

  • ゾンビ、予言者、と来て、新たな敵は、巨人!剣崎比留子の推理は通用する?葉村は、ワトソンの使命を果たせるのか。今村昌弘さんの「兇人邸の殺人」を読む。

    兇人邸の殺人 屍人荘の殺人シリーズ 作者:今村 昌弘 東京創元社 Amazon 「剣崎比留子」シリーズの三作目。 クローズドサークルを扱ったミステリーだが。 少々、異質だと思うのは、 シリーズの軸が、超人研究を行う班目機関の解明を 目的としているためか、 ゾンビだの、予知だの、超人だのといった異世界が登場すること、 そして、剣崎と葉村の関係性に、何か落ち着かない空気感があること。 二人の、相手に対する想いが、 関係をいっそう、複雑にしている。 お互いの「ホームズ」であることと、 「ワトソン」であること。 それに、こだわり過ぎる感があって、まるで、共依存だ。 この二人の「想い」が、謎の解明に、 …

  • 元マル暴の刑事と、「なりすまし」刑事の凸凹コンビ。蓮見の事件、一応の決着を迎えたかと思いきや。加藤実秋さんの「警視庁アウトサイダー3」を読む。

    警視庁アウトサイダー3 (角川文庫) 作者:加藤 実秋 KADOKAWA Amazon 「アウトサイダー」シリーズの三作目。 日本酒密造などの事件を片付けながら、 いよいよ、蓮見の父親の事件が決着を見る。 でも…、 陰謀を仕掛けた黒幕は別にいて…、ということで、 まだまだ、シリーズは続くようだ。 警察内部の陰謀、闇を取り上げる作品は多いが、 だましだまされで、どうしても重さが増し、 長々と続くと、疲れてくる。 主人公、蓮見のキャラは、今一つ、気が許せない部分があり、 惚れ込むほどの魅力を感じないのだが、 相棒となる架川は、マルボウ丸出しのいでたちや、 言動が、なんか、可愛らしい…。

  • 紙の専門家、紙鑑定士・渡部が挑む謎は、紙、フィギュア、コスプレ…? 今回の相棒は、フィギュア作家。歌田年さんの「紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪」を読む。

    紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪 作者:歌田年 宝島社 Amazon 「紙鑑定士」シリーズの第二弾。 ミステリーでは、刑事や私立探偵は別として、 様々な職業の人物が、名探偵役を振られている。 そのたびに、その職業にまつわる情報、蘊蓄が、 ミステリー小説だから、それほどの量ではなくても 紹介される。 作品の面白さとは別に、その蘊蓄、情報は、 興味深いものもある。 これまでにも、薬剤、特許、昆虫。。。と、 専門知識が披露されるので、 興味を惹かれたら、掘り下げてみるのもいいのだろうに、 根っからの怠け者で、なかなか、知識は増えない。 このシリーズの主人公、渡部の職業は、紙鑑定。 紙鑑定士とい…

  • 多くの人に愛でられる桜ではなく、ひっそりと咲く桜。桜星としての矜持を最後まで貫いた男、亀尾。そして、植木礼三郎が登場。神家正成さんの「深山の桜」を読む。

    深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:神家 正成 宝島社 Amazon この作家さんの初読みが、「桜と日章」だった。 これが、植木シリーズの三作目だったので、 そこから、前へ前へと。 植木という、オネエ言葉を操る男は、 硬いイメージの自衛隊とは対照的で、 イロモノ扱いなのかと、思ったのだが。 後の作品では、名探偵役の植木礼三郎は、 ここでは最後まで、主人公、亀尾のサポート役だった。 三作目から読んだワタシとしては、 始めから緊張、そして重い空気の中、物語が進むところ、 植木の登場で一挙に空気が変わった感じで、待ってました! 自衛隊員が直面する現実に、 そして、圧倒的な描写に…

  • 決着は目前か。うら交番のジンクスは、ケッペーや平野の運命はどうなる。内藤了さんの「TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平」を読む。

    TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫) 作者:内藤 了 KADOKAWA Amazon 「東京駅おもてうら交番」シリーズの七作目。 いよいよ、結末に近づいてきている。 今作の犯人の結末は、少々、消化不良で、 また、昔から続いているらしい「組織」の話も、 まだ、実体がつかめない感じで、 どんな結末が用意されているのか、期待が大きくなる。 このシリーズは、過去と現在が繋がる謎を解き明かすという目的で、 一つひとつの事件は、真相に繋がる伏線のようなものか。 得体のしれない過去の「怪物」が、 「地下道」を通り、現代に姿を現す。 それは、何とも恐ろしいことなのだが、 「悪意」とい…

  • 心が温まる、ばかりではない。犬と暮らすには、それなりの覚悟が必要…。近藤史恵さんの「シャルロットのアルバイト」を読む。

    シャルロットのアルバイト 作者:近藤 史恵 光文社 Amazon 元警察犬、「シャルロット」シリーズの二冊目。 ペットを巡る、日常の、軽い、軽い謎解きで、 相変わらず、読みやすい。 でも、内容は、軽いばかりではない。 ペットも、生き物であるという大前提は、 誰だってわかっているはずなのだが。 「いのちを預かる」責任は、あまりにも重い。 夫を亡くした寂しさで、亡くしたばかりの頃は、 犬を飼いたい、なんて、思った時もあったが、 寂しさを埋めるだけのために飼うことは、 やはり、無責任と、今は自粛している。 そんなこんなも伝えてくれる作品で、 寂しかったら、こんなに温かい動物たちが登場する物語を読んで…

  • 「人間」検事の、それぞれの活躍。「正」も「悪」も一筋縄ではいかないが、事実に真摯に向き合う姿は爽やかだ。直島翔さんの「恋する検事はわきまえない」を読む。

    恋する検事はわきまえない 作者:直島翔 小学館 Amazon 「転がる検事に…」の続編。 前作の主人公だった、久我周平、そして、 新米検事の倉沢、「特捜部初の女性検事」だった常盤などが、 今作ではそれぞれ、短編の主人公を務め、 それぞれの正義を追い求めていく。 倉沢の異動先での活躍もさることながら、 前作でも魅力的だった常盤の人物像が、さらに深く描かれ、 魅力はどんどん、増していく。 その代わりと言ってはなんだが、 久我自身の出番が少なく、少々物足りなかったが、 最後の編で、彼の周辺が騒がしくなりそうな雰囲気が見られ、 続編に期待、か。

  • 国際マラソンレースのランナーにテロ組織からの脅迫状が。特別編成チーム、MITのリーダー、下水流が挑むのは…。長浦京さんの「アキレウスの背中」を読む。

    アキレウスの背中 (文春e-book) 作者:長浦 京 文藝春秋 Amazon 国際マラソンレースが東京で開かれる。 このレースは、賭けることができるもので、 日本版ブックメーカーの試金石の意味合いがあった。 レースの妨害を企む国際テロ集団から、優勝を期待される日本のランナーに、 脅迫状が届く。 警察庁が設立した特別チーム、MITに、 警察の各部署から精鋭が集められ、 そのリーダーに、女性刑事、下水流(おりずる)が任命される。 テロとは無縁の部署で勤務してきた下水流は、 どうして自分が選ばれたのか、上の意図が見えない中、 それでも必死に、テロ対策、そして捜査を続ける。 国家の威信、スポーツビジ…

  • 「困っている人には何かしてあげないと」、小五の咲陽は、「父親が家に帰ってこない」と言う同級生の小夜子を家にかくまうのだが…。天祢涼さんの「陽だまりに至る病」を読む。

    陽だまりに至る病 (文春e-book) 作者:天祢 涼 文藝春秋 Amazon 前二作ほどの切なさは、感じなかった。 それは、この作品に登場する、小五の二人の女の子、 咲陽と小夜子が、なかなかのたくましさを備えているからだろうと思うのだ。 彼女らは、大人ではないが、子どもでもない。 小夜子のたくましさは、生い立ちのせいもあるだろうが、 咲陽は、真実に傷を負いながらも、 打ちのめされて終わり、というわけではない。 小夜子の心を思いやる、それこそ、大人顔負けの 洞察力を持っている。 咲陽が事件に関わっていく導入部分には、 とまどいというか、違和感を覚えてはいた。 ま、大人顔負けの思考と、行動力を持…

  • マンホールに押し込まれた死体、街灯に吊り下げられた死体…、被害者は、すべて警察関係者だった。六本木の街に、何が起こっているのか。銀ジロウさんの「Darkness」を読む。

    Darkness 作者:銀ジロウ 幻冬舎 Amazon 六本木警察署管内で発生した殺人事件の被害者は、 刑事だった。 遺体の口には、コカインが入ったビニール袋が 押し込まれていた。 その後、次々に警察関係者の死体が見つかり、 その口からは、必ず何かを暗示するものが見つかる。 警官が狙われるわけは…、 怨みか、報復か。 六本木警察署の、園山を始めとする刑事たちが、 一斉に、捜査を開始する。 シーンは、目まぐるしく変わり、 管内で発生する事件が次々に描かれていくこともそうだが、 芝居がかった情景描写で、 このまま、TVの刑事ドラマに使えそうだ。 ただ、そうした事件が、警察官が狙われる事件の伏線かと…

  • 新しいヒーローは、科学捜査鑑定人、氏家。古巣の科捜研を相手に、真実を追求する。中山七里さんの「鑑定人 氏家京太郎」を読む。

    鑑定人 氏家京太郎 作者:中山七里 双葉社 Amazon シリーズものが多い作家さんの作品を読んだとき、 別作品の登場人物が、顔を見せてくれた時は、 嬉しくてたまらない気持ちになる。 この作品の場合、「ヒポクラテス」シリーズの光崎や、 千葉県警の高頭警部が、同じ舞台に上がってくれた。 元科捜研の氏家が、民間の鑑定センターを設立し、 刑事事件に関する鑑定に関わっていくという物語で、 これも、シリーズ化、ありか? 近頃、警察や、その関連機関内部の対立、人の悪意といったものが、 よく取り上げられるが、 真相に関わる場合仕方ないが、 ドロドロ感情で、主人公などが疲弊するのを見るのは、 スッキリしない。…

  • 冷静な薬剤師、毒島さんと、ホテルマン、爽太との仲は…。今回は、漢方医学の話が盛りだくさん。塔山郁さんの「病は気から、死は薬から・薬剤師毒島花織の名推理」を読む。

    病は気から、死は薬から 薬剤師・毒島花織の名推理 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:塔山 郁 宝島社 Amazon 毒島さんシリーズも四作目。 この前、TVドラマの中で、クリプトコッカス症が登場した。 これ、このシリーズで、知識として仕入れていたから、 鳩のいる公園が出てきたシーンで、すぐ思いついた。 自慢にも何にもならないが。 相変わらず冷静な毒島さんと、 なかなか、その仲が進展しない爽太。 今回は、ライバル出現かと、思わせられたけど。 今回は、医薬品ネタより、サプリメントや生薬に関する情報が 多かったが、それなりに面白かった。 ただ、漢方医学の話が多かったためか、 毒島さんの…

  • 人が隠す、心の奥底をどうしても、暴かざるを得ない。これは、癖なのか、性なのか。とんでもない探偵、みどりの、あくまでも苦い五つの物語。逸木裕さんの「五つの季節に探偵は」を読む。

    五つの季節に探偵は (角川書店単行本) 作者:逸木 裕 KADOKAWA Amazon 装丁のホンワカとした雰囲気にだまされた。 悪い意味での裏切りでは、ない。 高校生から社会人へ。探偵の素質を持ったみどりが、 本当に探偵になって、仕事をこなしていく過程、 これは、決して甘いミステリーでも、成長物語でもない。 大人の、苦味満載のストーリーである。 みどりは、とんでもない探偵だった。 真実の知りたがり、人が隠し持っているものを覗きたいという欲求、 こんな癖、あるいは性。 人に疎まれても、人の内面を見たいという欲求、いや、欲望は、 みどりの業を見せられているようで、 いささかだが、途中から、ゾクゾ…

  • 型破りだが凄腕、大胆かつ緻密、特許侵害問題に立ち向かう女性弁理士、ニュー・ヒロイン登場。南原詠さんの「特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来」を読む。

    特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来 作者:南原詠 宝島社 Amazon 弁理士という職業も、そして、特許というものに関しても、 全くと言っていいほど、知識がない。 それに、Vチューバ―に関しても。 仕掛けた罠にしたって、 知識があれば、もっと、楽しめたのかもしれない。 主人公は、女性弁理士の’大鳳未来。 型破りで、際立ったキャラの持ち主。 ぐいぐい押していくタイプだから、 何があっても、きっと、 収まる所へ、収めてくれるものと。 そんな安心感がありつつ、ヒリヒリ感も 持たせてもらえる。 クライアントが抱えるVチューバ―に、 振り回されながらも、引き寄せてしまうのも、 大鳳の魅力の一つか。 「あ…

  • 刑事たちの地道な捜査が始まる。女子大生の殺人事件が冤罪事件へ、そして少女たちの闇が…。穂高和季さんの「警視庁殺人犯捜査第五係 少女たちの戒律」を読む。

    警視庁殺人犯捜査第五係 少女たちの戒律 (小学館文庫 ほ 14-1) 作者:穂高 和季 小学館 Amazon 正統派の刑事の物語といった感じ。 警視庁殺人犯捜査第五係の辻岡警部補を中心として、 ストーリーは展開する。 「筋読みの天才」でもなく、強運の持ち主でもなさそうで、 コツコツ取り組み、取り組んだ分だけ、素直に、 物語は進んでいったような。 大ドンデン返し、というほどではなかったが、 そう来たか、と、いい意味での、裏切りで、 心がざわついた。 仲間とのやり取りは円滑で、 他県の県警とのもめごとはあるが、 仲間内での変な軋轢が無いだけ、いらいらしない。 女子大生殺人事件が、六年前の岐阜県の …

  • 絶望していく子どもの物語、読み進めるにつれ、辛さが増す。だが、現実は、もっと残酷。天祢涼さんの「希望が死んだ夜に」「あの子の殺人計画」を読む。

    希望が死んだ夜に (文春文庫) 作者:天祢 涼 文藝春秋 Amazon あの子の殺人計画 (文春e-book) 作者:天祢 涼 文藝春秋 Amazon 子どもたちが絶望し、死を選ぼうとする社会は、絶対変だと、 誰しも思ってはいるが。 現実の社会で、連日のように、小さい子の虐待死が報道され、 無くなることはない。 そういう実際の事件があまりにも惨すぎて、 子どもが不幸になる物語は、もう、いいよ、と、 目を背けたくもなる。 フィクションは、どこかで救いを持たせられるかもしれないが、 現実は、貧困も、虐待も、もっと残酷なんだろう。 自分も、裕福ではなかったが、 破綻しないで、何とか、子育てを終えられ…

  • いよいよ、完結。人を殺す悪夢とは、そして、フロイトが追い続けてきた謎は…?内藤了さんの「夢探偵フロイト ナイトメアの殺人実験」を読む。

    夢探偵フロイト ナイトメアの殺人実験 (小学館文庫 C な 2-5 キャラブン!) 作者:内藤 了 小学館 Amazon シリーズ、完結。 「よろず建物因縁帳」シリーズ、そして、この「フロイト」シリーズと、 立て続けに完結した。 フロイトが追いかけ続けてきた、人を殺す悪夢の正体も、 明らかになる。 夢を扱う設定だからか、頭の中で繰り広げられるものだけに、 作品全体も、そして、登場人物も、 なんとなく、ふわふわしているような感じだった。 心をわしづかみにされるような強烈さが、 他のシリーズに比べ、薄かった、と思う。 この作家さんが描く、主人公の女性は、 どのシリーズもキャラが力強く、飽きさせなか…

  • 映画とは違う、結末を楽しめる。伝染するのは…。長崎尚志さんの「キャラクター」を読む。

    キャラクター (小学館文庫) 作者:長崎尚志 小学館 Amazon 映像が先か、小説が先か。 ワタシは、映画を先に見た後で、 小説も書かれていると知った。 好きな作家さんで、おまけに、 「ほぼ映画と設定は同じだが、ストーリーは 大きく異なっている」という、作家さん自身の言葉を読んだから。 映画を見てしまっていても、 ヒリヒリ、ドキドキ、の、サスペンス感、スリル感、 サイコホラーな感じは十分味わえる。 映画とは異なる結末も、まあ、納得できる。 キャラクターの交換、悪意の伝染…。 恐ろしい。

  • 警視庁の底で、怪異の「処理」を行う異能の面々。新シリーズの始まりだ。内藤了さんの「桜底 警視庁異能処理班ミカヅチ」を読む。

    桜底 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ) 作者:内藤了 講談社 Amazon この作家さんの新シリーズ(?)で、 期待大のところであったが。 初回から、登場人物のキャラが濃いのもそうだが、 幽霊、怪異、妖怪、因縁。。。盛りだくさんで、 とっちらかってしまった感がある。 警視庁の底の底にいて、 事件を解決も、人を救いもしない、 「異能処理」という任務も、まだ、すっと入っては来ないし…。 シリーズが進むにつれ、落ち着いてきたら、 それぞれに共感できるようになるかも。 ただ、異能を持つゆえに、奇異な目で見続けられてきた 主人公の安田怜が、居場所を見つけられたようで、 それは、良かった…。 で…

  • 何と、「博物館」から一歩外へ。館長の緋色冴子、関係者からの聞き取りがうまくできるのか?大山誠一郎さんの「記憶の中の誘拐 赤い博物館」を読む。

    記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫) 作者:大山 誠一郎 文藝春秋 Amazon 「赤い博物館」シリーズの二作目。 未解決事件の捜査資料を読んだだけで、 真相を解明してしまう緋色冴子。 二作目の今回、少々、違うのは、 完全なる安楽椅子探偵で、 「博物館」から一歩も外へ出ずにいた緋色が、 寺田の聞き取り調査に同行するところ。 コミュニケーションに難ありの緋色が、 関係者と、一言二言でも、言葉を交わそうとするシチュエーションだ。 トリック解明に終始するのは、前作と同じ。 これに、動機だの、人間関係だのが加わってしまうと、 ひょっとしたら、緋色本来の魅力が削がれる、のかもしれない。

  • 念願の捜査一課、仙波班へ。だが、孤立した捜査は相変わらず。氷膳の心の雪解けは、いつ?久住四季さんの「異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 嗜虐の拷問官」を読む。

    異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 嗜虐の拷問官 (メディアワークス文庫) 作者:久住 四季 KADOKAWA Amazon ついに捜査一課へ。 念願の仙波班に配属になった氷膳莉花。 相変わらず、人間関係を構築するのが苦手そう。 ま、自ら、心の壁を築き、どうしても人と距離をとってしまうのだろうが。 幼児の頃の傷が足かせになり、その事件が解明されるまでは、 変わらないのだろう。 都内で、異常な殺され方をした死体が発見される。 手足を何度も轢かれたものだが、 被害者が半グレだったことから、 仲間によるリンチが疑われる。 だが、例によって、死刑囚、阿良谷の見解は違った。 阿良谷の意見に導かれ、氷膳は捜査本…

  • 昆虫の知識が半端ない、村のお巡りさんが大活躍。大自然の中でうごめく人の欲望の行きつく先は…。平野肇さんの「昆虫巡査 蜉蝣渓谷殺人事件」を読む。

    虫の生態から事件の謎に迫る物語は、 真っ先に、川瀬七緒さんの「法医昆虫学捜査官」シリーズを思い浮かべる。 こちらは、九州の大分にある村の、 虫に詳しい駐在さん、向坊巡査が活躍するお話。 ある事件をきっかけに、向坊巡査と知り合う、 ライター、矢張がワトソン役を務める。 矢張が見つけた白骨遺体から、 事件は複雑さを増していく。 この主人公にはモデルがいるということで、 余計にワクワクしてくる。 それを知って、向坊のキャラの魅力が倍増した。 向坊に魅入られる矢張もいい。 土に埋もれた遺体は、虫が「掃除」をし、 自然に帰っていく。 人も、自然の仲間であっていいんだな、なんて、 関係ないことを考えてしま…

  • なりすまし刑事、蓮見と、元マル暴刑事、架川。コンビの関係も徐々に本物に…。蓮見の事件の真相解明は、まだ遠い?加藤実秋さんの「警視庁アウトサイダー2」を読む。

    警視庁アウトサイダー2 (角川文庫) 作者:加藤 実秋 KADOKAWA Amazon 「警視庁アウトサイダー」の続編。 なりすまし刑事と元マル暴刑事のコンビだが、 ギクシャクしていた二人の関係も、徐々にだが、変化してきたような。 だが、父親の事件を探ろうとする蓮見が、 架川を完全に信用し、頼ろうとするには、まだまだ時間がかかりそうだ。 その二人の行き違いに、たまにイライラさせられるのだが。 ただ今回、架川が、蓮見の父親に面会に行くなど、 一歩踏み込んだ行動を起こしていることで、また、 その関係に進展が見られるのだろう。 蓮見の事件も、ぼんやりしていた悪い奴らの顔が、少しずつ見えてきているが、…

  • 葉崎に、一人の「悪意」がじわじわと広がり…。いつものように、苦味をともなった極上のミステリー。若竹七海さんの「パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎シリーズ」を読む。

    パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎市シリーズ 作者:若竹 七海 光文社 Amazon 近頃、年のせいか、登場人物が次々と現れて、 くるくる場面転換していくストーリーが苦手になってきている。 それぞれがそれぞれの事情を抱え、人物が増えるごとに、 その事情も増えていく。 頭の中で、物語がとっちらかっていく。 人物の名前もすぐ忘れるし。 この人、誰だっけ。 始まりは、パラダイス・ガーデンという庭園で、 一人の女性の遺体が発見されたこと。 結末近くまで読んで、幸せな結末、とまではいかないまでも、 収まる所に収まったのかな、と思ったら…。 そうは、問屋が卸さなかった、やっぱり。 この作家さんの、「殺人鬼が…

  • 家族が囲む食卓に、「私」は居るけど居ない。家族であっても、伝わらない。この世界に「私」は独りぼっちだ…。丸山正樹さんの「わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス」を読む。

    わたしのいないテーブルで: デフ・ヴォイス 作者:丸山 正樹 東京創元社 Amazon コロナ禍で、社会は大きく変わってしまった。 世界全体が影響を受けたため、その一つひとつ、 一人ひとりに、どんな変化があったのか、知りようもない。 障害者の生活も、大きな波をかぶったのだと、 この作品で知らされる。 ひょっとしたら、ワタシたち以上の苦を強いられることが あったのかもしれない。 手話通訳士の荒井は、コロナの影響で仕事も減り、 子どもたちの学校が閉鎖されて、二人の面倒をみることに。 そうした中、女性ろう者が母親を包丁で刺したという事件の 弁護チームへの参加が依頼される。 何も「語ろうと」しない女性…

  • あぁ、終わった…。春菜は、仙龍の命を救えるのか。隠温羅流の運命は?内藤了さんの「隠温羅 よろず建物因縁帳」を読む。

    隠温羅 よろず建物因縁帳 【電子特典付き】 (講談社タイガ) 作者:内藤了 講談社 Amazon とうとう、完結してしまった…。 「隠温羅流の導師は、四十二歳で死ぬ」という因縁を断ち切るための 隠温羅流の謎を解き明かす旅は、いよいよ終盤を迎えた。 この旅が始まってから、終わらせるのが惜しくて、惜しくて、 それでも、先を見たくて見たくて、結末まで一気に読んでしまった。 今や、サニワとしての春菜の働きは素晴らしく、 一人の女性として、仙龍へ向ける愛に、心を打たれる。 ともかく、隠温羅流の男たちが、粋で、実にカッコよい。 日本の古来からの言い伝えや、物語、流儀、 神と共に生きている人々の心構え、 そ…

  • 「彼女」は、果てしなく暗く、重い生の最後に何を見たのか…。変人刑事、三ツ矢と若手、田所のコンビ再び。まさきとしかさんの「彼女が最後に見たものは」を読む。

    彼女が最後に見たものは (小学館文庫) 作者:まさきとしか 小学館 Amazon 前作に続き、変人刑事、三ツ矢と若手、田所のコンビ。 事件に取り組む三ツ矢は言う。 「知りたいと思いませんか?」と。 「知らなくてもいい真実」というセリフがある。 事件に関わった、巻き込まれた人にとって、 「ワケが分からない」ことで、その後を過ごせるのか。 あるいは、知ったからと言って、心の穴は埋まるのか。 どちらにしろ、失ったものは二度と元には戻らない。 別々の事件の関係者目線で物語が進むことによって、 その別々だったものの関連性が、徐々に浮かび上がってくる。 そして、その間に立つのが、いつも、三ツ矢。 現実社会…

  • 「狩りモード」発動。ピンク映画館から出勤する刑事、壬生が筋読みを始めると、真相が浮かび上がる。柏木伸介さんの「夏至のウルフ」を読む。

    夏至のウルフ (小学館文庫) 作者:柏木伸介 小学館 Amazon 本の帯に、「ピンク映画館から出勤する破滅刑事。」とあったが。 「ピンク映画館から出勤」に興味は引かれたが、 「破滅刑事」という、暗いイメージはなかった。 どちらかというと、有能でまともな刑事で、 別に、それはそれで、がっかりするものでもない。 近頃、「ピンク映画館」なるものを殆ど見かけない。 そういえば、昔、ワタシの実家がある都市の駅前に、 一つあったなぁ。 映画館の前に貼られたポスターを、ちらちら横目で見ながら、 その前をそそくさと通り過ぎた、若いころの思い出。 「筋読み」に入る前、「狩りモード」なるものを発動し、 事件や謎…

  • 最愛の息子の死に、壊れてゆく母親。そして、真相は、十五年後の殺人事件へと繋がって…。まさきとしかさんの「あの日、君は何をした」を読む。

    あの日、君は何をした (小学館文庫) 作者:まさきとしか 小学館 Amazon 男子中学生の、深夜の事故死。 幸せな生活を送っていたと思っていた母親は、 その息子の死から、壊れていく。 そこまでが第一章で、十五年後に起きた殺人事件へと、 舞台が転換する。 この作品では、息子を亡くす二人の母親が登場する。 母親の慟哭、壊れていく心、たがが外れた心のありよう、 そういったものが息苦しく、何度が脱落しかけた。 だが、愛する我が子を突然失った時、 母親は多かれ少なかれ、こうした心の道筋をたどるのかもしれない。 特に、なぜ、死ななければならなかったのか、 その理由が明かされない限り、いや、明かされたとし…

  • 「袖すり合うも他生の縁」。新宿のバスターミナルから出ていく人、帰ってくる人。人との出会いって、ホント、不思議。

    バスクル新宿 作者:大崎 梢 講談社 Amazon 舞台は、新宿の大規模バスターミナル。 (あそこ、だよね、南口の) 新宿から出ていく人、新宿に向かう人、 バスに乗り合わせた乗客や、ターミナルに居合わせた人々が関わる、 ちょっとした出来事や、事件。 駅や、バスターミナルが舞台になれば、 いろいろなドラマが生まれる。 帰ってくる人、出ていく人、 その人生が交叉し、接近し、そして離れていく。 これまで、ワタシも、数多くの空港、駅、バス停留所を 利用してきたけれど、 残念ながら(?)、一度として、利用客の人生と、 関わったことはない。 ましてや、それが自分の人生に影響するほどの事柄に 出会ったことな…

  • 男の首なし死体が、カルト教団の闇を浮かび上がらせる。ヒーローは誰だ…。誉田哲也さんの「フェイクフィクション」を読む。

    男の首なし死体が見つかる。 のっけから、捜査員の一人、鵜飼が事件に関わっており、 捜査を誘導するような言動を見せ、剣呑な雰囲気が漂う。 首切り、カルト教団、性的奴隷…、 物語はダークな様相を呈する。 ヒーローはいるのか、いるとしたら誰だ。 人物のキャラは、それぞれ、持っていかれるほどの吸引力はないが、 相変わらずの安定感で、テンポも良く、やっぱり、読ませられた。 復讐劇というのは、あちこちに散らばっているストーリーで、 大きな陰謀でもないが、「ザッツ・ザ・エンターテインメント」という感じ。

  • 人が死ぬ怪談を探す怪談師、呪いで死にたがる少女、そして怪談師の元恋人。三人は、本物の怪談を見つけることができるのか。新名智さんの「虚魚」を読む。

    虚魚 (角川書店単行本) 作者:新名 智 KADOKAWA Amazon 人が死ぬ怪談を探している怪談師、三咲と、 呪われ、祟られて死にたがっているカナちゃん、そして、 三咲の元恋人、昇との、奇妙な関係。 そもそも、人が死ぬ怪談ばかりを探すことも、 呪われて死にたがることも、奇妙ではあるが。 その奇妙さが、独特の雰囲気を醸し出す。 三咲の真の狙いは、人が死ぬ怪談で復讐すること。 物語は、怪談さがしと、そして、この三人の過去にまつわる謎のようなものが、 解きほぐされていく、ミステリーに似た要素と、 囚われていた心を取り戻す、旅に似た要素と。 「怪談」とは、一体何なのだろう。 悲しみ、うらみ、悔や…

  • 時代小説を読むたびに、蕎麦が食べたくなってくる…。

    鬼平犯科帳(一): 1 作者:池波 正太郎 文藝春秋 Amazon 御宿かわせみ (文春文庫) 作者:平岩 弓枝 文藝春秋 Amazon 時代小説を読んでいると、無性に蕎麦が食べたくなる。 よく出てくるんだわ。登場人物が蕎麦屋で蕎麦を食べるシーンが。 また、蕎麦屋を商売にしている岡っ引きや、密偵も多い。 何といっても、池波正太郎さんの「鬼平」、 料理屋や居酒屋の話もよく出てくるが、やはりメインは蕎麦だろう。 張り込みは蕎麦屋の二階で、「淡雪蕎麦」とか、 「あられ蕎麦」なんていうのを、うまそうに食べている。 蕎麦ではないが、「一本饂飩」なんてのも、あったな。 ま、池波さんの小説には、蕎麦以外に、…

  • なりすまし刑事と元マル暴刑事がコンビを組んで、それぞれの過去と対決。二人の行く末が、とっても気になる…。加藤実秋さんの「警視庁アウトサイダー」を読む。

    警視庁アウトサイダー (角川文庫) 作者:加藤 実秋 KADOKAWA Amazon なりすまし刑事と、飛ばされてきた元マル暴担当刑事がコンビを組んで、 それぞれが抱えた過去の因縁に立ち向かう、そんなストーリー。 軽いノリの刑事モノと思いきや、過去の事件も重そうで、 決着にはいたらず、続編へと…。 なかなか面白い設定で、引きずりそうだ。 コンビものだから、そのうち、二人の間に絆でもできそうだが、 まだ、お互いを信頼するまでには、いたらない。 そのプロセスも、これから期待できそう。 監察も絡んで、この先、一波乱も二波乱もありそうで、 ま、続編、読むっきゃない。

  • 安心、安定のシリーズもの。「白バイガール」の四作目。木乃実のチームに加入した新人クンは…。佐藤青南さんの「白バイガール 最高速アタックの罠」を読む。

    重いストーリーに、どうしても手が伸びないときは、 馴染みあるシリーズものを選んでしまう。 見慣れた登場人物や、ストーリー展開ほど、 安心できるものはない。 裏切られる心配もない。 というわけで、「白バイガール」シリーズの第四作目。 木乃実と川崎潤の、お互いの相手に対する信頼感は ますます、強く、そのゆるぎなさに、 ホッとする。 今回、新しく加わったメンバーの鈴木クン。 嫌味で、生意気で…、コイツに引っ掻き回されたあげく…。 木乃実も、相変わらず、人に対しては弱腰で…。 それでも、木乃実も、少しずつ成長してきてるんだから、 この鈴木クンも、この先、成長するんだろう、すると思いたい。

  • 人の心の奥には、自分でも飼いならせない魔物が潜んでいるのかも、しれない。高学歴、有名企業に働く女たちが辿り着いた処は…。前川裕さんの「魔物を抱く女 生活安全課刑事・法然隆三」を読む。

    魔物を抱く女 生活安全課刑事・法然隆三 (新潮文庫) 作者:前川 裕 新潮社 Amazon 人の業の物語、なのか、 それとも、闇を内に抱く特定の人の話なのか。 連続殺人、デリヘル嬢、特異な性癖…、 これだけの材料が揃っているから、さぞや、おどろおどろしく 展開するのだろうかと思ったが、想像ほどではなかったような。 高学歴で、高役職、高収入の女性が、風俗の世界につかり、 さらには、路上で春を売るまでになる、 その心のあり様が、もう一つ、しっくりこなかった。 そうした性癖、気質、そして、特異な男に関わってしまったからだと言ってしまえば、そうなのだろうが。 もう少し、彼女を中心に据えてもよかったよう…

  • 筋読みに長けた刑事、「ヨミヅナ」。今回の事件は、DNA鑑定に隠されたワナ。難解な事件を、どう読み解く?田村和大さんの「操る男 警視庁捜査一課・ヨミヅナ」を読む。

    操る男 警視庁捜査一課・ヨミヅナ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:田村 和大 宝島社 Amazon 「ヨミヅナ」シリーズの二作目。 筋読みの天才、飯綱警部補が、事件の真相に迫る。 天才的なひらめき、というよりは、どちらかというと、 事実を基に、一つずつ積み上げていくタイプなのか。 キャラの一人として、対立する刑事がいるものの、 捜査本部内の刑事たちの連携などスムーズで、 読みやすい。 DNAって、究極の個人情報とか言われるが、 それを扱うのは人間で、それによって、 危険なものに成り得るというのが、恐ろしい。 DNAは自分の中にあり、あくまでも自分のものだけど、 知識が無い限り、…

  • 手が語る言葉、ろう者一人ひとりに、それぞれの事情がある。一つひとつに真摯に向き合おうとする、荒井が関わる四つの物語。丸山正樹さんの「慟哭は聴こえない(デフ・ヴォイス)」を読む。

    慟哭は聴こえない (デフ・ヴォイス) 作者:丸山 正樹 東京創元社 Amazon 「デフ・ヴォイス」シリーズの三冊目。 四編が収録されている。 相変わらず、心に染み入る作品だった。 特に、刑事、何森が登場し、中心となって動く 第三話の「静かな男」が、心に刺さった。 すでに使われなくなった元簡易宿泊所で、「静かに死んでいた男」。 事件性は無かったが、ホームレス同然の生活をしていたその男性の身元は、 依然として分からない。 ただ、聴覚障害者ではないかと推測され、 身元を突き止めるために、荒井の協力を得て、何森は動く。 荒井も、何森も、どちらかというと、静かなる男たち。 その彼らが、「静かに死んでい…

  • 少女おりんの「お化けさん」たちとの温かい交流、「悪意」に立ち向かう勇気に、心がほろほろ…と。宮部みゆきさんの「あかんべえ」を読む。

    あかんべえ(上) (新潮文庫) 作者:みゆき, 宮部 新潮社 Amazon あかんべえ(下) (新潮文庫) 作者:みゆき, 宮部 新潮社 Amazon 何か、とてつもなく悲しいことが起こったとき、 そこからの逃げ場となるのが、ワタシの場合、小説。 例えば、池波正太郎さん、藤沢周平さん、そして、 宮部みゆきさんの時代小説は特に、駆け込み寺となっている。 名もなき、貧しき、市井の人々が、 何らかの力に踏みにじられながらも、 それでも、自然に、まっとうに、一日一日を送ることが、 何よりも大切であるということ、 作り物でありながら、まだまだ人は、 捨てたもんじゃないと思わせてくれるもの。 心の、痛く固…

  • 組織からはみ出した刑事、何森が、弱者が関わる事件を、一人黙々と追いかける。丸山正樹さんの「刑事何森 孤高の相貌」を読む。

    刑事何森 孤高の相貌 作者:丸山 正樹 東京創元社 Amazon 先日まで読んでいた「感染捜査」が動であるとしたら、 こちらは、静。 良くも悪くも、クセの強い刑事が、 何かに引っ張られるように、捜査を進める。 「デフ・ヴォイス」シリーズの脇役だった刑事、何森が、 主役となって登場した。 「孤高」と言っても、私立探偵じゃないんだから、 組織の中で、どう、動いていくんだろうかと…。 疎んじられ、そっぽを向かれ、 見事なまでに、署の中に味方はいない。 こんな状況は、切ない。 そんな中で、一人動いて (そう言ったって、刑事が一人で動けはしないだろう)、 事件を解決するとしたら、それは、ないだろう、と思…

  • お台場のレストランで、東京湾の豪華客船で、人をゾンビ化し、人を喰らう怪物にする新種ウイルスが…。女刑事と海上保安官は、人類を守れるのか。吉川英梨さんの「感染捜査」を読む。

    感染捜査 作者:吉川 英梨 光文社 Amazon パニック映画、ホラー映画、スプラッター映画、ゾンビ映画を、 丸ごと見ているよう。 スリル、サスペンス、ヒリヒリ感、満載。 主人公である、女刑事、天城由羽のキャラは、 好き嫌いが、はっきり分かれるかもしれない。 極端に走りすぎた? でも、ストーリー自体のクセが凄いから、 これくらい強めのキャラ設定でもいいのか。 そして、もう一人の主要な人物、来栖。 冷酷で強いキャラに、一本、まっとうな芯が通っていて、 結構、魅力的だというのは、結構、ある話。 この場合、少々、かすんでしまったような…。 ウイルス感染の決着はついたようだが、 二人のその後については…

  • 開署セレモニーを目の前にした新設の警察署に、一体、何が起こる?元白バイ隊員が、再び白バイにまたがり…。松嶋智左さんの「開署準備室 巡査長・野路明良」を読む。

    開署準備室 巡査長・野路明良(祥伝社文庫) 作者:松嶋智左 祥伝社 Amazon 開署を目前にした姫野警察署。 その準備のため集められた準備室のメンバーの活躍が描かれる。 開署の準備に余念がない準備室だが、 しばらくは、事件が起こるわけでもない。 ただ、所々で、怪しい行動を示す係長や、 間違えて搬入された什器、誰も居ないはずの部屋のカメラに 映る人物の影など、何かが起きようとしている、 不穏な空気が、徐々に迫ってくる。 始めは、どこへ向かわされているのか分からない感じで、 ページの先へ先へと気持ちが焦る。 やぁ、もう、読まされちゃってると、思いながらも、 最後まで一気に行かねばすまないような気…

  • 天気予報が嫌いなお天気お姉さんと探偵の、不可思議なコンビ。キャスターなのに、仏頂面…。伊与原新さんの「蝶が舞ったら、謎のち晴れ 気象予報士・蝶子の推理」を読む。

    蝶が舞ったら、謎のち晴れ―気象予報士・蝶子の推理―(新潮文庫nex) 作者:伊与原 新 新潮社 Amazon 探偵とお天気キャスターのコンビ。 珍しい設定、かもしれない。 探偵登場と言っても、ガチのハードボイルドでは、ない。 (淡く、可愛らしい装丁を見ただけで、気づくか) 名探偵役は、探偵ではなく、お天気お姉さん。 探偵、夏生と、気象予報士の蝶子は幼馴染。 だが、小学校の頃の落雷事件で、 上下関係は、はっきりついた。 そう、マウントをとったのは、蝶子だ。 このコンビが、雷、台風、桜開花といった、 お天気の絡む謎や事件を紐解いていく。 もう一つ面白かったのは、彼女のキャラ。 仏頂面で、言いたいこ…

  • 「博士崩れ」の女刑事、沢村依里子が、警察官という職に迷いながら、事件に真っ向から取り組む。伏尾美紀さんの「北緯43度のコールドケース」を読む。

    北緯43度のコールドケース 作者:伏尾美紀 講談社 Amazon 誘拐された女児が数年たってから、 遺体となって発見されるという事件。 誘拐犯は死亡、死体遺棄も、犯人が分からないまま、 暗礁に乗り上げる。 一人の、少々変わった経歴を持つ女刑事、沢村依里子が主人公で、 誘拐、死体遺棄、そして、捜査資料漏洩、少女売春事件と、 さまざまな事件に関わる中で、 警察官という仕事に悩み、傷つき、そして、 成長していく物語だ。 女児の誘拐、死体遺棄まで、一気に読ませはしたが、 資料漏洩事件へと移り、前のめりになっていた体を、 後ろから引き戻されたような感覚で、アレッと。 もちろん、資料漏洩が、過去の誘拐、死…

  • 路に落ちている「たすけて」と書かれたメモ、行方不明の女子中学生…、相変わらず、お草さんの周りは騒がしい…。吉永南央さんの「月夜の羊 紅雲町珈琲屋こよみ」を読む。

    月夜の羊 紅雲町珈琲屋こよみ 作者:吉永 南央 文藝春秋 Amazon お草さんを知らない人々は、彼女を「お節介婆さん」だと思うのだろう。 だが、彼女のちょっとした「お節介」が、人を救い、 人と人との絆を強めもする。 そんなお草さんの物語、「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズも、 もう、九作目。 九年間、実家に引きこもり、 母親が倒れても、周囲に知らせもせず、 ただ、メモ帳に「助けて」と書き、外へ放った男、 家出か、誘拐かと、周囲を騒がせた女子中学生の聖、 時代錯誤の校則を掲げる校長、久美と母親との確執、 そして一ノ瀬との間に生じ始めるひずみ…。 相変わらず、お草さんの周りで、突然に発生、あるいはじ…

  • 安定感と安心感。今回は、光崎に宛てた奇妙な脅迫文に、県警も法医学教室も振り回されることに。中山七里さんの「ヒポクラテスの悔恨」を読む。

    ヒポクラテスの悔恨 法医学ミステリー「ヒポクラテス」 作者:中山七里 祥伝社 Amazon 重く切ない物語を読んだ後は、やっぱり、 こういう、シリーズものが、想像通りの、というか、 期待通りの筋立てとキャラたちの動きで、安心して読めていい。 「ヒポクラテス」シリーズの四作目。 いつもの通り、古手川の暴走に真琴が付き合い、 一見、自然死や事故死のような案件を、解剖まで持っていく。 ただ、今回は、光崎の過去の件が関わってくるのだが、 光崎は光崎、という、結末もいつも通りで安心だ。 やっと、渡瀬が登場した。 光崎と渡瀬、この二人をもっと絡ませてみたい。 テレビ局のホームページに、光崎に宛てた奇妙な脅…

  • アサヒとユウヒが犯した罪は、そして、その罰は…。「軽薄な」お巡りさん、狩野の活躍がまた、見られる?降田天さんの「朝と夕の犯罪」を読む。

    朝と夕の犯罪 作者:降田 天 KADOKAWA Amazon はるか昔から、連綿と続く人の悪意。 親子だからか、親子であることが、その悪意を呼ぶのか。 それなら、動物のように、そして悪意が生まれる前に、 その絆を断ち切るべきなのではないか。 虐待の連鎖。虐待で塗りつぶされている。 心に重くのしかかり、そして、切ない物語だ。 子は、力を持たない幼子は親にすがり、親に振り回され、壊れる。 この登場人物で、罰を受けなければならないとしたら、 最初から最後まで、傍観者であり続けた「松葉修」じゃないだろうか。 結末での、彼の立ち位置は解せない。 神倉駅前交番のお巡りさん、狩野雷太が主人公の続編だと思った…

  • 正式に警官として、東京駅おもて交番に配属された恵平だが、交番前で通り魔殺人の犯人と格闘する羽目に…。内藤了さんの「EVIL 東京駅おもてうら交番」を読む。

    EVIL 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫) 作者:内藤 了 KADOKAWA Amazon 「東京駅おもてうら交番」シリーズの五作目。 うら交番の世界で、永田が泥沼にはまっていく様子、 そして、おもて交番の世界で発生する通り魔殺人と、憑き物殺人。 いよいよ、クライマックスが近づいてきそうで、 まだ、遠そうで…。 恵平は、警察学校での課程を修了し、 いよいよ、警察官としておもて交番に配属された。 警官として希望に燃える恵平だが、 交番前で通り魔殺人が発生、犯人と対峙する羽目になり、 そのうえ、田舎から出てきた老婆の落し物から、 心臓が出てきたり…。 人の悪意や異常な出来事をもろ…

  • 不朽の名作。秋山父子の活躍、剣客の生きざま、すべてが体に馴染む。池波正太郎さんの「剣客商売」を読み返す。

    近頃、「剣客商売」を読み直している。 まだ、本満載の船便、第二弾が届かないものだから、 本棚にしまってあるシリーズを引っ張り出して来た。 ワタシなぞが、書くまでもない、 超有名な名作シリーズだ。 今から、半世紀前に書かれたものだが、 いつ読んでも、面白い、唸らされる。 今、次から次へと出版されている大衆小説の中で、 これから半世紀後の読者をこれだけ楽しませるものが、 果たしてどれほどあるのだろうか。 シンプルで、自然で、分かりやすい文体。 こちらの読む流れを止めることは、全くない。 秋山小兵衛の人柄や、考え方、生き様、 すべてが、体にしっくり馴染んでくる。 江戸の匂いが、そのまま、こちらへ流れ…

  • 事件の繋がりは明らかになるが、さらに深い泥沼にはまったような…。黒幕の正体が浮かび上がり、決着へ…。伊兼源太郎さんの「残響 警視庁監察ファイル」を読む。

    残響 警視庁監察ファイル 作者:伊兼 源太郎 実業之日本社 Amazon あ~、三作目にして、やっと、片が付いた、のだよね。 二作目から、いろいろな人物や部署が関わり、 置いてかれないように、何とか、ついていったつもりだが、 ここに来て、より複雑さを増し、 かろうじて、本筋だけは見失わないですんだみたいだ。 黒幕一人の思惑に、すべての人物が駒として動かされた構図は、 すべてが、むなしい。 正義もへったくれもなく、そして、人の命も…。 決着をみたのだとしても、後味の悪さが残った、かもしれない。 結局、監察の話だから、組織の膿だの、権力争いだの、 生臭い物語になるのは仕方ないが、 佐良や皆口の活躍…

  • おちかと勘一の行く末は、どうなるのだろう。どうしても気になる…。宮部みゆきさんの「三鬼」と「あやかし草紙 三島屋変調百物語」を読み返す。

    三鬼 三島屋変調百物語四之続 (角川文庫) 作者:宮部 みゆき KADOKAWA Amazon あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 (角川文庫) 作者:宮部 みゆき KADOKAWA Amazon 「三島屋変調百物語」シリーズの第四作、「三鬼」を 何度繰り返して読んだことだろう。 このシリーズ、現在は聞き手が富次郎に移ってしまったが、 やはり、百物語は、三島屋おちかの物語だと思うので、 何か、物足りなさを感じる。 それで、どうしても、過去の作品を読み返してみたくなるのだ。 特に、「三鬼」の最終話は、淡い恋心を抱いていた利一郎との別れ、 そして、お勝が「縁がある」と言った瓢箪古堂の勘一との出会…

  • 「ぼんくら」シリーズを上回るか、期待度ハンパない。宮部みゆきさんの「きたきた捕物帖」を読む。

    きたきた捕物帖 作者:宮部みゆき PHP研究所 Amazon この作家さんは、人物描写がホントにうまい。 登場人物一人ひとりが、出てくると同時に、こちらの心をわしづかみにする。 だが、この作品の主人公、北一のキャラは、まだ、ぼうっとしている。 心を持っていかれるほどではない。 ま、最初からシリーズものだと決まっているらしいから、 これからなのだろう。 それよりも、目の不自由な松葉や、 「桜ほうさら」にも登場した差配の富勘といった、 脇を固めている人々、そして、北一とコンビニなるという、 喜多次のほうが、初回から、気になって仕方ない。 「桜ほうさら」の富勘のように、別の作品のキャラが、 シリーズ…

  • 「ジンイチ」チームが次に挑むのは、警察資料の流出。斉藤を殉職させたのは。誰が黒幕なのか…。結末は遠い。伊兼源太郎さんの「ブラックリスト 警視庁監察ファイル」を読む。

    ブラックリスト 警視庁監察ファイル (実業之日本社文庫) 作者:伊兼 源太郎 実業之日本社 Amazon 読んでから視るか、視てから読むか、 よく、提起されること。 ワタシの場合、後者だった。 TVドラマ「密告はうたう」を視て、読んでみようと。 その時点で、もう、シリーズ三作目が出ていたので、 二作目から読み始める。 この作家さんの他の作品を読んだことはあった。 でも、そもそも、警察官同士がわちゃわちゃする、 監察の物語はそれほど好きではなかったから、 避けて通っていただんだけど。 でも、このシリーズは、TVの連続ドラマのように、続くんだわ。 一作目の事件も解決しないうちに、別の事件が起こり(…

  • 小学生、中学生、高校生の女の子たちが、過去の殺人事件に関わっていく…。ほんわかミステリーと思いきや。甘いお菓子の中に隠されているのは、苦い…?大崎梢さんの「さよなら願いごと」を読む。

    さよなら願いごと 作者:大崎 梢 光文社 Amazon 悪意のあの字もなさそうな装丁。 この作家さんの持つ、ふんわり、柔らかで、温かみのある これまでの作品の雰囲気にぴったり、と、思いはするのだが、 人生の苦味だって、そして、悪意さえも存在する。 第一話は小学生、二話は中学生、そして三話が高校生、 どれも女の子の視点で、物語は紡がれていくのだけれど、 各話の橋渡しをしていくのは、殺人という、 禍々しいもの。 それも、小さな女の子が殺された事件。 若い彼女たちが、悲しい想いに囚われて欲しくないなぁ、 そう思って読み進めてきたが、 ホッと胸をなでおろすような結末は、 この作家さんならでは。 甘さと…

  • 刑事指導官時代の風間。新米刑事を震え上がらせる雰囲気は相変わらず。そして、物語は、警察学校へと…。長岡弘樹さんの「教場X 刑事指導官・風間公親」を読む。

    教場X 刑事指導官・風間公親 作者:長岡 弘樹 小学館 Amazon お馴染み、「風間公親」シリーズの刑事指導官時代の物語。 全六話の短編が収録されている。 新米刑事が送り込まれるのは、風間がみっちりと刑事の イロハを教え込む「風間道場」。 前作、「教場0」の続編のようなものか。 この作品も、犯人が初めから判明している倒叙法で描かれている。 新米刑事が洞察を働かせ、どう、真犯人に迫るのか。 そして、それを風間がどう、導くのか。 「交番勤務か、警察学校に逆戻りするか」、 風間道場門下生は、風間の無言の圧に、常にさらされる。 六話目は、少々、変化球。 現場に呼ばれるのは、新米刑事ではなく、かつての…

  • 何のために検事になったのか。浅草を吹く風に乗って、生身の検事の声が聞こえてくる。直島翔さんの「転がる検事に苔むさず」を読む。

    転がる検事に苔むさず 作者:直島翔 小学館 Amazon 調子は軽いんだが、キッチリと芯が通っている作品で、 非常に安定感があった。 東京の中心でキビキビと仕事をする、 冷静かつシャープな検事の物語、 ではなく。 いやに人間味あふれた、隣にでもいそうな検事だった。 不勉強で、東京区検察庁というものがあることを初めて知った。 舞台は浅草で、だからこそ、柔らかな雰囲気が とっつきやすかったのかもしれない。 主人公は、浅草分室に勤める検事、久我周平。 検察庁の勢力図の争いに巻き込まれたり、 嫌味な同僚に絡まれたり、思春期の娘を抱えた父親だったり、 それが、それほど深刻で、肩に重い感じではないところが…

  • 今度は、新米刑事時代に逆戻り。凪子の熱く、初々しい活躍、これもまたいい。松嶋智左さんの「貌のない貌 梓凪子の捜査報告書」を読む。

    貌のない貌 梓凪子の捜査報告書 作者:松嶋智左 講談社 Amazon 一度、気に入った作家さんの作品を読みつくす。 というわけで、続けざまに。 「虚の聖域」の続編。 当然、探偵、梓凪子のその後の物語なのかと思ったが、 なんと、新人刑事時代のエピソード。 これは、やらかしたという件の話かと思いきや、 全く別の事件の話。 前作は「調査報告書」で、こっちは「捜査報告書」。 と、振り回された感じだが、そう思うのは、こちらの勝手な思い込みか。 周囲から期待などされず、失敗を繰り返し、それでもナニクソと、 前へ進む。 新米で、足が速いだけが取り柄のペーペーの一捜査員で、 だからか、探偵になった後の凪子より…

  • 「やらかし」て警官を辞め、探偵になった凪子。不仲の姉から、息子の転落死の真相を探ってくれと依頼されるのだが…。松嶋智左さんの「虚の聖域 梓凪子の調査報告書」を読む。

    虚の聖域 梓凪子の調査報告書 作者:松嶋 智左 講談社 Amazon 「調べつくすのが、私の流儀」と言い切る。 流儀をうんぬんするのは、もはや、ハードボイルドだ。 この作品は、主人公の梓凪子が探偵であるということばかりでなく、 皮肉たっぷりの言い回しや、乾いた文体、 前の作品、二作の警官小説とは趣を異にした、 完全なるハードボイルである。 女探偵のハードボイルドとなると、頭に浮かぶのが、 若竹七海さんが描くところの、「葉村晶」が頭に浮かぶ。 物事や人を、斜めから、裏から見、 冷えたところ、歪みがありそうな葉村が大人だとすると、 凪子は、多少、子どもじみたところがなくもない。 乾いた文体が小気味…

  • 警察官になった森口泉、機動分析斑を希望するも、試験に失敗してしまうのだが…。柚月裕子さんの「月下のサクラ」を読む。

    月下のサクラ 作者:柚月裕子 徳間書店 Amazon 「朽ちないサクラ」の続編。 笑って、泣いて、怒って…、という人間味が、 今回の森口泉には、感じられなかった。口調も硬いし…。 「朽ちないサクラ」では、泉自身、生き生きとしていたと、 思ったのだが。 配属になった機動分析係のメンバーも、黒瀬や春日以外は、 皆、紳士然としているのか。 泉を呼ぶのも、「さん」付けだし…。 仲間の絆、というものも、出来てきたようなのだが、 何か、最後まで、よそよそしさを感じてしまう。 ま、機動分析斑の物語は、ここから始まっていくのだろう。

  • 次の異動先は、小さな町の警察署。女副署長は、十八年ぶりの殺人事件に挑む。松嶋智左さんの「女副署長 緊急配備」を読む。

    女副署長 緊急配備 (新潮文庫) 作者:松嶋 智左 新潮社 Amazon ある作品が気に入って、その続編が出ているなら、 やはり、読むのが当然。 そして、その作家さんを読みつくすのも…。 ま、期待値が高くなって、 肩透かしをくらう場合もあるが。 そして、この「緊急配備」。 杏美は、小さな所轄、左紋署に左遷となったため、 杏美を取り巻く警官の顔ぶれも変わり、読むほうの気持ちも新たになる。 だが、登場人物一人ひとりが主人公ともいえ、 それぞれにスポットライトが当たるのは、この作品も同じ。 うん、ブレないところが嬉しい。 シングルマザー、父親の介護、息子の素行、 登場する課員それぞれが、それぞれの問…

  • 台風接近、警戒態勢の警察署内で、警官の刺殺体が発見される。犯人は署内の人間か?女副署長、田添が意地をかけた捜査に…。松嶋智左さんの「女副署長」を読む。

    女副署長(新潮文庫) 作者:松嶋智左 新潮社 Amazon 面白かった。 前に読んだ、この作家さんの作品、「匣の人」とは がらりと、趣が異なっていたのにはおどろいた。 だが、「匣の人」の浦も、こちらの主人公となる、 女副署長、田添杏美も、芯が一本、スッと通っている。 この芯がブレず、それは、作品がブレないことと同じで、 安心して読める。 警官一人ひとりが生き生きと描かれ、殆どの警官が 職を全うしようと、命がけで動いている姿に、 胸が熱くなった。 日見坂署に赴任してきたばかりの初の女副署長、 田添杏美が主人公でありながら、 誰もが主人公になっていく。 視点がくるくる変わり、不穏な空気をはらんで、…

  • いつもと変わらぬ風が吹き、いつもと変わらぬ安心感がここにはある。小路幸也さんの「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 東京バンドワゴン」を読む。

    グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 東京バンドワゴン 作者:小路 幸也 集英社 Amazon 「東京バンドワゴン」シリーズの番外、長編。 今回は、サチさん、我南人、研人と、渡辺クン、甘利クンが イギリスの藍子夫妻のもとで、事件に巻き込まれる物語。 番外編なので、東京の堀田家面々の活躍があまり見られないのは 仕方ない。 このシリーズは、日本に帰ったとき、必ず、単行本を買う。 同じ本を、電子書籍で読んでいても。 というのは、装丁デザインが気に入っているから。 全作通して、変わらない雰囲気というのは、貴重だ。

  • 交番という「匣」の中に描かれる人間模様。地味な物語だが、後から心にしみてくる。松嶋智佐さんの「匣の人」を読む。

    匣の人 作者:松嶋 智左 光文社 Amazon 交番巡査の生活が、淡々と綴られている。 この作家さんの初読み。 ヒリヒリ感は少ないかもしれないが、 読みやすかった。 主人公は、刑事課から地域課の交番勤務に異動した浦貴以子。 彼女が指導役となる新米警官、澤田里志とのコンビで、 物語は進む。 で、この浦巡査部長も、少々、訳ありの過去を持つ。 やらかしてしまった経験を持つ女警官の物語を、 立て続けに読んでいる気がする。 澤田も、何やら、クセのある人物。 生い立ちのせいか、人との接し方に難が見られる。 って、それで、何で、警官に? というところも、物語の要素。 交番のお巡りさんだって、人間。 何か、ク…

  • おネエ言葉の自衛官、植木シリーズの三作目。今回は、警察に出向となった植木と女性警察官のコンビが、県警幹部の誘拐事件に挑む。神家正成さんの「桜と日章」を読む。

    桜と日章 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:神家 正成 宝島社 Amazon この作品は、作家さんの「深山の桜」「七四」に続く シリーズものとみていいのだろう。 三作に登場するのが、自衛隊にあって何とも異色な植木礼三郎。 今回も、この作品が初読みで、この植木という人物に魅了され、 「七四」と、さかのぼって読むことになったが、まだ、 「深山の桜」を読むまでにはいたっていない。 自衛官なんだから、四角四面のイメージが強いが、 それを見事に裏切ってくれて、植木は、まず、おネエ言葉を使う。 おネエ言葉を使って、許される自衛官など居るのだろうか。 まず、いないだろうなぁ。 この植木、だから…

  • 首から上の皮膚が剥がされた惨殺死体、その意味は…。捜査に行き詰った氷膳莉花が頼るのは。久住四季さんの「異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 剝皮の獣」を読む。。

    異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 剥皮の獣 (メディアワークス文庫) 作者:久住 四季 KADOKAWA Amazon 「異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花」の続編。 異常犯罪モノが巷に溢れるが、それぞれがそれなりにヒットしているよう。 だが、手当たり次第に読んでいると、どれもゴチャゴチャになっていて。 さらに…、 氷膳莉花は、幼少時に両親を殺害されるという過酷な過去を持つ。 そのためか、感情を表さない、外面的には何事にも動じない、 そんなキャラから「雪女」と呼ばれている。 このシリーズも、「訳あり」女警官の物語で、 警察官として「まっとうに」育った人間の物語は、 もはや、面白みがないのか。 さらに、氷…

  • 過去の「ワケ」がてんこ盛り、刑事部資料課の女警官が活躍する…。山邑圭さんの「コールド・ファイル 警視庁刑事部資料課・比留間玲子」を読む。

    コールド・ファイル 警視庁刑事部資料課・比留間怜子 (角川文庫) 作者:山邑 圭 KADOKAWA Amazon 「刑事に向かない女」で知った作家さんの作品。 少々訳ありの女警官モノで、興味を持って手に取る。 警視庁の資料課に勤務する比留間玲子。 モデルの経験があり、芸能界に足を踏み入れたものの、 母親との確執で、拒食症や過食症を患う。 アラスカに留学し、帰国して警視庁の刑事になり、 初めての捜査で失敗し、責任を取らされ、資料課に異動…、 と、少々どころではない、「訳てんこもり」だ。 過ぎたるは及ばざるがごとしで、 前半はなんか、ゴチャゴチャしていたが、 それでも、スピード感を増し、付いていけ…

  • 富次郎が聞き手を継いだ百物語、結末に不穏な空気が漂って…。宮部みゆきさんの「魂手形 三島屋変調百物語七乃続」を読む。

    魂手形 三島屋変調百物語七之続 作者:宮部 みゆき KADOKAWA Amazon 「語り捨て、聞き捨て」の百物語シリーズも七作目。 聞き手が富次郎に移った新シリーズにも慣れてきた。 おちかの頃より、調子は軽いか。 今作は、中編のような三編で、 いつもより、サクサクサクっと読んでしまった。 おちかのおめでたの話は明るいが、 ただ、三編目の「魂手形」に、前にも登場した、不穏な男、 「あの世の商人」が再び、意味深な登場をして、 いや~な空気が残る。 次作を待ち遠しくさせる、ただの趣向なら、いいのだが…。

  • 頭脳明晰なのに、天性の人の良さ、猫弁と亜子の未来はどうなる…。大山淳子さんの「猫弁と鉄の女」を読む。

    猫弁と鉄の女 作者:大山淳子 講談社 Amazon 「猫弁」新シリーズの二作目。 頭脳明晰、だが、人の良さも天才的なため、 常に損ばかり(いや、損と言うのは、世間の金銭的な考えを 先にしているから、彼にとってはどうでもいいのだろう)。 だからこそ、何とも心の洗われるシリーズなのだ。 百瀬も、そして大福亜子も、人として、逸材だ。 何でもできてしまう人間なんて、ひょっとしたら 数多く存在するのかもしれないが、 「人として逸材」という人間には、残念ながら、 まだ出会ったことがない。 そして、人として、まっとうであることの 何と、難しいことよ。 作品中、大福亜子も感じていることだが、 「まっとうな人が…

  • 今回のいきもの係は、日本を飛び出して、ラオスへ…!大倉崇裕さんの「ゾウに魅かれた容疑者 警視庁いきもの係」を読む。

    ゾウに魅かれた容疑者 警視庁いきもの係 作者:大倉 崇裕 講談社 Amazon 最強で最凶の薄圭子が見られた。 警視庁いきもの係シリーズの六作目で、長編としては二作目。 これまでのものと比べ、スケールがでっかい。 何しろ、二人で海外へと飛び出しちゃうんだから。 ま、都会の中で、小さな生物を相手にしているより、 広大なジャングルの中で、ゾウというでっかい生物を相手にしている方が、 薄にはあっているのかもしれない。 事件の発端は、いきもの係の「お母さん」、田丸弘子が 何者かに拉致された。 その行方を必死で探す須藤と薄は、ラオスに飛ぶはめに…。 さまざまな武器を用意し凶悪な敵に対する薄のブラックな一…

  • 「つながりません」、彼女の一言で、動き出すのは事件、なのか。長岡弘樹さんの「つながりません スクリプター事件File」を読む。

    つながりません スクリプター事件File 作者:長岡弘樹 角川春樹事務所 Amazon 短編の名手の作家さん。 読んでいくうちに、主人公への思い入れが強くなる 連作モノが好きなのだが、この作家さんの作品には連作モノが少ない。 シリーズ色が濃くなるとカセになると、嫌う人もいるからかなぁ。 この作品で一応、探偵役となるのはスクリプター、真野韻。 映画の撮影現場で、シーンや状況の繋がりを管理する仕事だ。 つかみどころのないキャラクターで、それは、 裏方である仕事とうまく溶け合っている。 「つながりません」という彼女の言葉で、 事件(?)は動き出す。 感情を見せない彼女のキャラのせいか、 物語に飛び込…

  • 白人女性の白骨遺体とともに、頭蓋骨が指し示す物語とは…。長崎尚志さんの「風はずっと吹いている」を読む。

    風はずっと吹いている 作者:長崎尚志 小学館 Amazon なかなか、ヘビーな内容の作品だったが、 そのヘビーさに負けない、ぐいぐいと引っ張っていく力強さがあった。 原爆の恐ろしさ、悲惨さにまつわるストーリーで、 この時期に作品と出会うのは、縁のようなものか。 原爆というものへの憤りがテーマでもあるが、もちろん、 殺人事件の謎を追う、そのドキドキもおろそかにはなっていない。 広島の郊外で、白人女性の白骨遺体と、そしてその傍に 頭蓋骨が一つ見つかった。 白骨遺体は死後半年以上、頭蓋骨は1950年以前に生きていた 日本人のものだとわかる。 白人女性の身元は、日本で何をしていたのか、 そして、頭蓋骨…

  • 文芸って、やっぱり、深い…。でも、日常の謎解きも面白い。父娘二人の掛け合いも。北村薫さんの「中野のお父さん」を読む。

    中野のお父さん (文春文庫) 作者:薫, 北村 文藝春秋 Amazon 中野のお父さんは謎を解くか 作者:薫, 北村 文藝春秋 Amazon 図書館の本棚に、 「中野のお父さん」と「中野のお父さんは謎を解くか」の二冊が並んでいた。 この作家さんの作品は、本当に久しぶり。 最後に読んだのは、二十年以上前か。 二作とも、実に面白かった。 知識と本に対する熱がなければ、ついていけないんじゃないかと思ったが、 それは杞憂に終わった。 編集者の娘と、高校の国語教師の父。 どちらも、言葉や本のプロのようなものだ。 蘊蓄のようなものがズラズラと並べられていると、 途中で投げ出してしまうことのほうが多いが、 …

  • 物語は、いよいよ最終段階へ…、棟梁の身に何か?内藤了さんの「蠱峯神(やねがみ) よろず建物因縁帳」を読む。

    蠱峯神 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ) 作者:内藤了 講談社 Amazon 「よろず建物因縁帳」シリーズも九冊目。 穏温羅流の因縁が浮かび上がり、いよいよ佳境に入る。 このシリーズを読み始めた当初は、主人公である春菜に全く共感できず、 リタイアしそうだったのが、仙龍を「死なせはしない」という 覚悟に胸が熱くなる。 いい女になったものだ…。 後半部分の思わせぶりは…、 棟梁の身に何かが起こるのだろうか。 レギュラー陣は誰もが、魅力いっぱいで、もう、 他人のような気がしないものだから、 最後まで、誰一人、いなくならないように願うばかりである。

  • 新シリーズ始動!読み応え十分。宮部みゆきさんの「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」を読む。

    黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 作者:宮部 みゆき 毎日新聞出版 Amazon 三島屋のおちかが聞き手となる百物語シリーズが完結して 寂しいなぁと思っていたら、新シリーズが始まって、 あら、嬉しや。 ただ、聞き手が富次郎に変わってしまって、 違和感を覚えるかなと、初めは、読むのをためらったが、 そんな心配は…。 宮部作品、特に時代小説では、 三島屋おちかもそうだが、霊験お初シリーズのように、 両脚踏ん張って、悪意に対峙する少女たちが大好きだから、 富次郎にはそんなに関心がなかった…。 どれも読み応えのある作品。 特に、表題にもなっている「黒武御神火御殿」は、 何とも手に汗握った。 ワタ…

  • 祝福されない命を宿した女たちが、今日も、竹林にあるおゑんの家を訪れる…。あさのあつこさんの「闇医者おゑん秘録帖 花冷えて」を読む。

    闇医者おゑん秘録帖-花冷えて (中公文庫) 作者:あさの あつこ 中央公論新社 Amazon 子堕しを請け負う「闇医者」シリーズの二作目。 主人公のおゑんが、魅力的過ぎる。 数奇な運命を背負ったおゑんが、さまざまな事情を抱えた女たちの 人生に関わっていく。 子堕しとは言いながら、女たちが宿した命を、 力の限り、救っていこうとする彼女の姿勢が潔い。 「竹が鳴く」と「花冷えて」を収録。 特に、「竹が鳴く」で、はらんだ子を堕してほしいと、 女中のお竹を連れて来た女将、お江代が、危ない魅力をはらんで、 心をひっぱる。

  • 津久井が一夜をともにした相手は…。佐々木譲さんの「憂いなき街」を読む。

    憂いなき街 (ハルキ文庫) 作者:佐々木 譲 角川春樹事務所 Amazon 道警シリーズの七作目。 佐伯、津久井、小島、新宮…、お馴染みの面々が、 それぞれ事件と対決し、一つに集結していくプロセスがいつも面白い。 今回は、どちらかというと、津久井の恋が中心で、 チームとして事件を追う面白さは薄かった。 そして、津久井ばかりではなく、 佐伯と小島の関係も…。 いつもの重厚な警察小説、というより、 刑事たちの私生活が描かれたといった感じ、 好き嫌いが分かれるかも。

  • 暗い生い立ちを持つ犯人と片倉の対決が…。柴田哲孝さんの「野守虫」を読む。

    野守虫(のもりむし) 作者:柴田 哲孝 光文社 Amazon 「刑事・片倉」シリーズの四冊目。 このシリーズではお馴染み。 旅情と、そして、警察小説の醍醐味、両方を味わえる。 今回は、飯田線を行く旅で、 旅と事件の終着駅は天竜峡である。 ある事件で拘留中に脱走した容疑者、竹迫が、 殺人を重ねながら行き着く先は…。 昔の事件で、竹迫の取り調べをした片倉との因縁が、 新しい事件を呼ぶ。 竹迫の暗い生い立ちが、ストーリーに切なさを添える。 タイトルの「野守虫」とは…。

  • どこにでもあるような日常的、でも、引き込まれる、お仕事ミステリー。坂木司さんの「アンの青春」を読む。

    アンと青春 和菓子のアン (光文社文庫) 作者:坂木 司 光文社 Amazon 読みやすい、実に、読みやすいシリーズだ。 登場人物も、強烈なクセがあったり、性格ではないが、 じわじわと、しみ込んでいくような味わいがある。 もちろん、主人公の杏子が、女子の等身大で描かれていることが、 余計、親しみを持たせる。 作品ごとのナゾも、肩がこらない、日常的なもの。 スッと、読み流したって(失礼)、罪悪感を押し付けられない。 ともかく、きっと、読み続けていけるシリーズなんだろうなぁ。

  • 隔離生活もあと、わずか…。

    今夜は眠れない (角川文庫) 作者:宮部 みゆき KADOKAWA Amazon あきない世傳金と銀 文庫(ハルキ文庫)1-5巻セット 作者:高田 郁 角川春樹事務所 Amazon もうすぐ、シャバに出られる。 入国者健康確認センターから、連絡あり。 隔離期間の前半は、一日おきくらいのペースだったけど、 後半に入って、毎日かかってくるわ。 ま、一日一回だけど。 今夜は眠れない あきない世傳 金と銀 (一)(二) 読破。

  • 隔離、あと4日…、

    警官の紋章 北海道警察 (ハルキ文庫) 作者:佐々木譲 角川春樹事務所 Amazon ガンバレ、ワシ。 警官の紋章 読破 でも、手持ちの本が少なくなってきた…。

  • 隔離は続くよ…。

    密売人 (ハルキ文庫 さ 9-6) 作者:佐々木 譲 角川春樹事務所 Amazon 所轄刑事・麻生龍太郎 (新潮文庫) 作者:よしき, 柴田 新潮社 Amazon いろあわせ―摺師安次郎人情暦 (ハルキ文庫 か 12-1 時代小説文庫) 作者:梶 よう子 角川春樹事務所 Amazon 湯布院の奇妙な下宿屋 (光文社文庫) 作者:司 凍季 光文社 Amazon あやかし処の晩ノ飯 最後の晩餐、おもてなし (宝島社文庫) 作者:三崎 いちの 宝島社 Amazon さくらだもん! 警視庁窓際捜査班 (実業之日本社文庫) 作者:加藤 実秋 実業之日本社 Amazon 密売人 所轄刑事・麻生龍太郎 いろ…

  • 絶賛、隔離生活中!

    和菓子のアン (光文社文庫) 作者:坂木 司 光文社 Amazon スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫) 作者:友井羊 宝島社 Amazon 京の縁結び 縁見屋の娘 (宝島社文庫) 作者:三好昌子 宝島社 Amazon 一時帰国により、隔離生活中。 和菓子のアン スープ屋しずくの謎解きごはん 京の縁結び 縁見屋の娘 3冊読破。

  • キネシクス対キネシクス。最強の相手を前に、エンマさまが苦戦する…。佐藤青南さんの「行動心理捜査官・楯岡絵麻vsミステリー作家 佐藤青南」を読む。

    行動心理捜査官・楯岡絵麻 vs ミステリー作家・佐藤青南 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:佐藤 青南 発売日: 2021/05/11 メディア: 文庫 「エンマさま」シリーズも、九作目。 今回は、心理学を操るミステリー作家、しかも、 「佐藤青南」氏を相手にするという大胆な設定で、 なかなか、スリリングな展開となった。 エンマさまが得意とするキネシクスが通じない相手ということで、 彼女が苦戦する場面も。 そして今や、エンマさまと西野のコンビ、というより、 筒井と綿貫の活躍の場も増え、チームの一体感が、 作品をより面白いものにしている。 最後の不穏な場面、次回への期待がさらに高まる…

  • ”積んどく”本がなくなったので、宮部みゆきさんの「震える岩」と「天狗風」を再読。

    震える岩―霊験お初捕物控 作者:宮部 みゆき メディア: 単行本 天狗風―霊験お初捕物控 2 作者:宮部 みゆき メディア: 単行本 時間がたつと、何度でも読み返したくなる作品の一つ。 この作家さんの時代小説、特に、少女が主人公となるものは、 少女の魅力がキラキラと輝いて、読んでいる間中、ワクワクしてしまうものが多い。 この「霊験お初捕り物控え」シリーズもそうであるし、 「三島屋」シリーズのおちかもそう。 そして、少女だけでなく、登場人物や「あやかし」たちも、 実に魅力的だ。 この魅力的なキャラたちが、ページの上で踊る踊りに導かれながら、 奥へ奥へと進んでいくのが心地よい。 これこそ、ミヤベワ…

  • ジビエ料理のシェフと、不器用なハンターとの友情と、そして、命の物語。近藤史恵さんの「みかんとひよどり」を読む。

    みかんとひよどり (角川書店単行本) 作者:近藤 史恵 発売日: 2019/02/27 メディア: Kindle版 いつものように読みやすく、それでも、 さまざまなものを心に残してくれる作品。 ミステリーというよりは、食を通して、 暮らし方や、生き方、人との付き合い方を考えさせられる 小説といったほうがいいかも。 フレンチレストランの雇われシェフ、潮田はジビエ食材調達のために入った山で、 遭難しかかる。 助けてくれたのは、ハンターの大高だった。 それをきっかけとして、ビジネス上の付き合いが始まる。 だが、徐々に付き合いが深まるにつれて、潮田は、 不器用な大高が言う「人生を複雑なものにしたくない…

  • ワーゲンバスでさすらう探偵、今度はどの街で事件に遭遇する?香納諒一さんの「さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ」を読む。

    さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ (双葉文庫) 作者:香納諒一 発売日: 2019/09/26 メディア: Kindle版 でしゃばる風でもなく、淡々と事件に向き合う。 このシリーズの辰巳翔一が好きである。 「さすらいのキャンパー探偵」シリーズ。 ワーゲンバスであちこち流離い、カメラマンとしての仕事が終わったら、 ビールやバーボンを飲み、酒が入れば、車の中で眠り、 見つけた温泉にのんびりつかる。 仕事が無い日は、音楽を聴いたり、本を読んだり…。 なんて、優雅でお気楽な生活が描かれているんだろう。 これじゃ、ハードボイルドの真逆じゃないかと、思いきや、 立ち寄った街で、結局は、事件に巻き…

  • 町おこしのきっかけは「コルセット」。頑固だが、魅力たっぷりの老人たち、若者が革命を起こす。川瀬七緒さんの「革命テーラー」を読む。

    革命テーラー (角川文庫) 作者:川瀬 七緒 発売日: 2020/10/23 メディア: 文庫 登場人物の全員のキャラの濃いこと。 だからと言って、濃すぎて、ゲップということではない。 不満だらけの日々をやり過ごしている、主人公の僕、アクア。 つぶれかけた商店街の仕立て屋で、革命を狙う老人テーラーの伊三郎。 スチームパンクに凝り固まった、アクアの学校仲間、明日香。 商店街のおばあちゃん店主たち、などなど。 この作家さんが作り出すキャラの面白さは折り紙付きだが、 まあ、次から次へと登場させたなぁ、と。 閉塞した小さな町社会で、何とか息継ぎしようとしている若者、老人。 誰もが覚える息苦しさから、伊…

  • いよいよ、完結。メゾン・ド・ポリスのおじ様たちに、また、どこかで会えますように。加藤実秋さんの「メゾン・ド・ポリス6 退職刑事と引退大泥棒」を読む。

    メゾン・ド・ポリス6 退職刑事と引退大泥棒 (角川文庫) 作者:加藤 実秋 発売日: 2021/03/24 メディア: Kindle版 いつもの調子で読んでいたら、完結巻だった。 シリーズ、六作くらいがちょうどいいのか。 ただ、すべてに決着がついているわけではなさそうな、 ぼわぁんとした終わり方だった気がする。 ひよりが捜査一課に引き抜かれ、新たなステージに入ったかと、 思わされ、でも、結局、やることは、所轄の時代と変わりなく。 ひよりがどこへ移ろうとも、おじ様たちは、 メゾン・ド・ポリスにいて、迎えてくれる。 ひよりにとって、そこは、一番居心地のいいところのはず。 夏目との関係性が気になるっ…

  • この本屋にもいた、名探偵が。軽いばかりじゃない、ちょっぴり、苦いミステリー。似鳥鶏さんの「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」を読む。

    レジまでの推理~本屋さんの名探偵~ (光文社文庫) 作者:似鳥 鶏 発売日: 2018/05/25 メディア: Kindle版 本屋とか、図書館とか、本が集まる場所を舞台にしたミステリーと聞いたら、 やっぱり、手に取ってしまう。 特に、本屋モノ、一般書店ばかりでなく、古本屋もそうだが、 いろいろな作家さんのいろいろな作品がある。 本がそばにあると、それだけで安心する。 無いと、手持無沙汰だし、なんか落ち着かない。 一般書店が舞台のミステリーは、本自体の話ばかりでなく、 お仕事ミステリーとしても、裏方の話が覗けて面白い。 この作品も、通常の業務や、 危機に瀕する本屋の話から、万引き、ストーカー、…

  • ボートチェイスが圧巻!スピード感が半端ない。吉川英梨さんの「波動 新東京水上署」を読む。

    波動 新東京水上警察 (講談社文庫) 作者:吉川 英梨 発売日: 2016/09/15 メディア: 文庫 「新東京水上警察署」シリーズの一冊目。 東京五輪開催に向けて、廃止されていた水上警察署が、 期間を限って、五港臨時警察署として復活。 その署に係長として配属されてきた碇、日下部、 そして、海技職員の有馬、この三人の活躍が見ものである。 また、碇が抱えたトラウマや、恋愛が絡む三人の関係など、 見どころは多い。 そして、後半のボートチェイスも圧巻。 三人のキャラクターも、それぞれ、クセはあるのだが、 ストーリーの展開を邪魔せず、鼻につくこともなく、 すんなり、受け入れられる。 海上の警察モノを…

  • 「巣」を狩る殺人鬼、「パパ」の正体とは…、雨宮縁は殺人鬼を狩る「ハンター」なのか。内藤了さんの「ネスト・ハンター 憑依作家 雨宮縁」を読む。

    ネスト・ハンター 憑依作家 雨宮縁 (祥伝社文庫) 作者:内藤了 発売日: 2021/03/26 メディア: Kindle版 「藤堂比奈子」シリーズの終了後、ロスに陥っていたら、 「建物因縁帳」「恵平」「夢探偵」、そして、 この「雨宮縁」シリーズと、さまざまなキャラが登場した。 多くの引き出しを持っている作家さんだ。 一作目、「スマイル・ハンター」で誕生した 憑依作家というキャラクター。 謎めきすぎて、つかみどころがなく、 感情が入り込むまでには至らなかった。 だが、二作目の今回は、 謎めいているところは変わりがないが、 薄ぼんやりしていた実体の、輪郭が少しずつ、 浮かび上がってきたような感じ…

  • 警察学校に戻った恵平。でも、大事な「仲間」のホームレスが消えたとなったら、いつも通りに捜査に加わって…。内藤了さんの「DOUBT 東京駅おもてうら交番」を読む。

    DOUBT 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫) 作者:内藤 了 発売日: 2021/03/24 メディア: Kindle版 シリーズ五作目。 今作の恵平は、最後の研修となる警察学校に戻っている。 と言っても、平野や桃田との絡みがないわけじゃない。 警察学校から、えっちらおっちらと、東京駅に捜査に出かけてくる。 うら交番の謎も、少しずつだが、形が見え始めたようだ。 作品の中でも、コロナ禍の状況が描かれており、 いつもは、恵平にとってオアシスのような、 ダミさんの焼き鳥屋も休業状態で、登場なしだったのが、寂しい。 その代わりと言っちゃなんだが、 メリーさんの、いつも以上の活躍が嬉し…

  • バツイチ新米女刑事と、元義父の刑事とのコンビ誕生。と、思いきや、謎の精神科医も加わって…。梶永正史さんの「アナザー・マインド X1捜査官・青山愛梨」を読む。

    アナザー・マインド ×1捜査官・青山愛梨 (ハルキ文庫) 作者:梶永正史 発売日: 2018/12/13 メディア: 文庫 捜査一課のバツイチ新米女刑事、青山愛梨が、 コンビを組まされた相手は、元義父の吉澤だった。 こういうコンビ設定は、面白いかもって思っていたら、 途中から、謎の精神科医、渋谷がコンビニ介入してきて、 結局、コンビって、どっちと組むの?みたいな流れに。 ま、それはそれで、面白いのだろうが…。 愛梨のキャラだが、 自分の中に芽生えた違和感に従って、 事件を追おうとする様には共感するが、 元旦那や渋谷に対し、 ハリネズミのように針を逆立てて、噛みついていく感じが、 途中からうっと…

  • 昆虫好きの「おとぼけ」探偵、魞沢が再登場。ゆかりの人物たちが、謎を引き連れてくる。櫻田智也さんの「蝉かえる」を読む。

    蝉かえる サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア) 作者:櫻田 智也 発売日: 2020/07/13 メディア: Kindle版 とぼけた名探偵、「魞沢泉」シリーズの二作目。 一作目を読んだ時から、ずっと、思っていた。 魞沢泉という人物は、何者なのか。 その答えの一部、ほんの一部だが、今回、触った気がする。 「ホタル計画」での、魞沢の少年時代など、 魞沢の周囲から、少しずつ、少しずつ、彼の実体が浮かび上がってくる。 丸江ちゃん、斉藤編集長、江口医師の目を通して。 それでも、断片であるから、やはり、分からない。 魞沢とは、何者なのか。 ま、何者なのかということなど、大した問題じゃないのだ…

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