何と、「博物館」から一歩外へ。館長の緋色冴子、関係者からの聞き取りがうまくできるのか?大山誠一郎さんの「記憶の中の誘拐 赤い博物館」を読む。
記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫) 作者:大山 誠一郎 文藝春秋 Amazon 「赤い博物館」シリーズの二作目。 未解決事件の捜査資料を読んだだけで、 真相を解明してしまう緋色冴子。 二作目の今回、少々、違うのは、 完全なる安楽椅子探偵で、 「博物館」から一歩も外へ出ずにいた緋色が、 寺田の聞き取り調査に同行するところ。 コミュニケーションに難ありの緋色が、 関係者と、一言二言でも、言葉を交わそうとするシチュエーションだ。 トリック解明に終始するのは、前作と同じ。 これに、動機だの、人間関係だのが加わってしまうと、 ひょっとしたら、緋色本来の魅力が削がれる、のかもしれない。
念願の捜査一課、仙波班へ。だが、孤立した捜査は相変わらず。氷膳の心の雪解けは、いつ?久住四季さんの「異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 嗜虐の拷問官」を読む。
異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 嗜虐の拷問官 (メディアワークス文庫) 作者:久住 四季 KADOKAWA Amazon ついに捜査一課へ。 念願の仙波班に配属になった氷膳莉花。 相変わらず、人間関係を構築するのが苦手そう。 ま、自ら、心の壁を築き、どうしても人と距離をとってしまうのだろうが。 幼児の頃の傷が足かせになり、その事件が解明されるまでは、 変わらないのだろう。 都内で、異常な殺され方をした死体が発見される。 手足を何度も轢かれたものだが、 被害者が半グレだったことから、 仲間によるリンチが疑われる。 だが、例によって、死刑囚、阿良谷の見解は違った。 阿良谷の意見に導かれ、氷膳は捜査本…
昆虫の知識が半端ない、村のお巡りさんが大活躍。大自然の中でうごめく人の欲望の行きつく先は…。平野肇さんの「昆虫巡査 蜉蝣渓谷殺人事件」を読む。
虫の生態から事件の謎に迫る物語は、 真っ先に、川瀬七緒さんの「法医昆虫学捜査官」シリーズを思い浮かべる。 こちらは、九州の大分にある村の、 虫に詳しい駐在さん、向坊巡査が活躍するお話。 ある事件をきっかけに、向坊巡査と知り合う、 ライター、矢張がワトソン役を務める。 矢張が見つけた白骨遺体から、 事件は複雑さを増していく。 この主人公にはモデルがいるということで、 余計にワクワクしてくる。 それを知って、向坊のキャラの魅力が倍増した。 向坊に魅入られる矢張もいい。 土に埋もれた遺体は、虫が「掃除」をし、 自然に帰っていく。 人も、自然の仲間であっていいんだな、なんて、 関係ないことを考えてしま…
なりすまし刑事、蓮見と、元マル暴刑事、架川。コンビの関係も徐々に本物に…。蓮見の事件の真相解明は、まだ遠い?加藤実秋さんの「警視庁アウトサイダー2」を読む。
警視庁アウトサイダー2 (角川文庫) 作者:加藤 実秋 KADOKAWA Amazon 「警視庁アウトサイダー」の続編。 なりすまし刑事と元マル暴刑事のコンビだが、 ギクシャクしていた二人の関係も、徐々にだが、変化してきたような。 だが、父親の事件を探ろうとする蓮見が、 架川を完全に信用し、頼ろうとするには、まだまだ時間がかかりそうだ。 その二人の行き違いに、たまにイライラさせられるのだが。 ただ今回、架川が、蓮見の父親に面会に行くなど、 一歩踏み込んだ行動を起こしていることで、また、 その関係に進展が見られるのだろう。 蓮見の事件も、ぼんやりしていた悪い奴らの顔が、少しずつ見えてきているが、…
葉崎に、一人の「悪意」がじわじわと広がり…。いつものように、苦味をともなった極上のミステリー。若竹七海さんの「パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎シリーズ」を読む。
パラダイス・ガーデンの喪失 葉崎市シリーズ 作者:若竹 七海 光文社 Amazon 近頃、年のせいか、登場人物が次々と現れて、 くるくる場面転換していくストーリーが苦手になってきている。 それぞれがそれぞれの事情を抱え、人物が増えるごとに、 その事情も増えていく。 頭の中で、物語がとっちらかっていく。 人物の名前もすぐ忘れるし。 この人、誰だっけ。 始まりは、パラダイス・ガーデンという庭園で、 一人の女性の遺体が発見されたこと。 結末近くまで読んで、幸せな結末、とまではいかないまでも、 収まる所に収まったのかな、と思ったら…。 そうは、問屋が卸さなかった、やっぱり。 この作家さんの、「殺人鬼が…
家族が囲む食卓に、「私」は居るけど居ない。家族であっても、伝わらない。この世界に「私」は独りぼっちだ…。丸山正樹さんの「わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス」を読む。
わたしのいないテーブルで: デフ・ヴォイス 作者:丸山 正樹 東京創元社 Amazon コロナ禍で、社会は大きく変わってしまった。 世界全体が影響を受けたため、その一つひとつ、 一人ひとりに、どんな変化があったのか、知りようもない。 障害者の生活も、大きな波をかぶったのだと、 この作品で知らされる。 ひょっとしたら、ワタシたち以上の苦を強いられることが あったのかもしれない。 手話通訳士の荒井は、コロナの影響で仕事も減り、 子どもたちの学校が閉鎖されて、二人の面倒をみることに。 そうした中、女性ろう者が母親を包丁で刺したという事件の 弁護チームへの参加が依頼される。 何も「語ろうと」しない女性…
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