多くの人に愛でられる桜ではなく、ひっそりと咲く桜。桜星としての矜持を最後まで貫いた男、亀尾。そして、植木礼三郎が登場。神家正成さんの「深山の桜」を読む。
深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:神家 正成 宝島社 Amazon この作家さんの初読みが、「桜と日章」だった。 これが、植木シリーズの三作目だったので、 そこから、前へ前へと。 植木という、オネエ言葉を操る男は、 硬いイメージの自衛隊とは対照的で、 イロモノ扱いなのかと、思ったのだが。 後の作品では、名探偵役の植木礼三郎は、 ここでは最後まで、主人公、亀尾のサポート役だった。 三作目から読んだワタシとしては、 始めから緊張、そして重い空気の中、物語が進むところ、 植木の登場で一挙に空気が変わった感じで、待ってました! 自衛隊員が直面する現実に、 そして、圧倒的な描写に…
決着は目前か。うら交番のジンクスは、ケッペーや平野の運命はどうなる。内藤了さんの「TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平」を読む。
TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫) 作者:内藤 了 KADOKAWA Amazon 「東京駅おもてうら交番」シリーズの七作目。 いよいよ、結末に近づいてきている。 今作の犯人の結末は、少々、消化不良で、 また、昔から続いているらしい「組織」の話も、 まだ、実体がつかめない感じで、 どんな結末が用意されているのか、期待が大きくなる。 このシリーズは、過去と現在が繋がる謎を解き明かすという目的で、 一つひとつの事件は、真相に繋がる伏線のようなものか。 得体のしれない過去の「怪物」が、 「地下道」を通り、現代に姿を現す。 それは、何とも恐ろしいことなのだが、 「悪意」とい…
心が温まる、ばかりではない。犬と暮らすには、それなりの覚悟が必要…。近藤史恵さんの「シャルロットのアルバイト」を読む。
シャルロットのアルバイト 作者:近藤 史恵 光文社 Amazon 元警察犬、「シャルロット」シリーズの二冊目。 ペットを巡る、日常の、軽い、軽い謎解きで、 相変わらず、読みやすい。 でも、内容は、軽いばかりではない。 ペットも、生き物であるという大前提は、 誰だってわかっているはずなのだが。 「いのちを預かる」責任は、あまりにも重い。 夫を亡くした寂しさで、亡くしたばかりの頃は、 犬を飼いたい、なんて、思った時もあったが、 寂しさを埋めるだけのために飼うことは、 やはり、無責任と、今は自粛している。 そんなこんなも伝えてくれる作品で、 寂しかったら、こんなに温かい動物たちが登場する物語を読んで…
「人間」検事の、それぞれの活躍。「正」も「悪」も一筋縄ではいかないが、事実に真摯に向き合う姿は爽やかだ。直島翔さんの「恋する検事はわきまえない」を読む。
恋する検事はわきまえない 作者:直島翔 小学館 Amazon 「転がる検事に…」の続編。 前作の主人公だった、久我周平、そして、 新米検事の倉沢、「特捜部初の女性検事」だった常盤などが、 今作ではそれぞれ、短編の主人公を務め、 それぞれの正義を追い求めていく。 倉沢の異動先での活躍もさることながら、 前作でも魅力的だった常盤の人物像が、さらに深く描かれ、 魅力はどんどん、増していく。 その代わりと言ってはなんだが、 久我自身の出番が少なく、少々物足りなかったが、 最後の編で、彼の周辺が騒がしくなりそうな雰囲気が見られ、 続編に期待、か。
国際マラソンレースのランナーにテロ組織からの脅迫状が。特別編成チーム、MITのリーダー、下水流が挑むのは…。長浦京さんの「アキレウスの背中」を読む。
アキレウスの背中 (文春e-book) 作者:長浦 京 文藝春秋 Amazon 国際マラソンレースが東京で開かれる。 このレースは、賭けることができるもので、 日本版ブックメーカーの試金石の意味合いがあった。 レースの妨害を企む国際テロ集団から、優勝を期待される日本のランナーに、 脅迫状が届く。 警察庁が設立した特別チーム、MITに、 警察の各部署から精鋭が集められ、 そのリーダーに、女性刑事、下水流(おりずる)が任命される。 テロとは無縁の部署で勤務してきた下水流は、 どうして自分が選ばれたのか、上の意図が見えない中、 それでも必死に、テロ対策、そして捜査を続ける。 国家の威信、スポーツビジ…
「困っている人には何かしてあげないと」、小五の咲陽は、「父親が家に帰ってこない」と言う同級生の小夜子を家にかくまうのだが…。天祢涼さんの「陽だまりに至る病」を読む。
陽だまりに至る病 (文春e-book) 作者:天祢 涼 文藝春秋 Amazon 前二作ほどの切なさは、感じなかった。 それは、この作品に登場する、小五の二人の女の子、 咲陽と小夜子が、なかなかのたくましさを備えているからだろうと思うのだ。 彼女らは、大人ではないが、子どもでもない。 小夜子のたくましさは、生い立ちのせいもあるだろうが、 咲陽は、真実に傷を負いながらも、 打ちのめされて終わり、というわけではない。 小夜子の心を思いやる、それこそ、大人顔負けの 洞察力を持っている。 咲陽が事件に関わっていく導入部分には、 とまどいというか、違和感を覚えてはいた。 ま、大人顔負けの思考と、行動力を持…
マンホールに押し込まれた死体、街灯に吊り下げられた死体…、被害者は、すべて警察関係者だった。六本木の街に、何が起こっているのか。銀ジロウさんの「Darkness」を読む。
Darkness 作者:銀ジロウ 幻冬舎 Amazon 六本木警察署管内で発生した殺人事件の被害者は、 刑事だった。 遺体の口には、コカインが入ったビニール袋が 押し込まれていた。 その後、次々に警察関係者の死体が見つかり、 その口からは、必ず何かを暗示するものが見つかる。 警官が狙われるわけは…、 怨みか、報復か。 六本木警察署の、園山を始めとする刑事たちが、 一斉に、捜査を開始する。 シーンは、目まぐるしく変わり、 管内で発生する事件が次々に描かれていくこともそうだが、 芝居がかった情景描写で、 このまま、TVの刑事ドラマに使えそうだ。 ただ、そうした事件が、警察官が狙われる事件の伏線かと…
新しいヒーローは、科学捜査鑑定人、氏家。古巣の科捜研を相手に、真実を追求する。中山七里さんの「鑑定人 氏家京太郎」を読む。
鑑定人 氏家京太郎 作者:中山七里 双葉社 Amazon シリーズものが多い作家さんの作品を読んだとき、 別作品の登場人物が、顔を見せてくれた時は、 嬉しくてたまらない気持ちになる。 この作品の場合、「ヒポクラテス」シリーズの光崎や、 千葉県警の高頭警部が、同じ舞台に上がってくれた。 元科捜研の氏家が、民間の鑑定センターを設立し、 刑事事件に関する鑑定に関わっていくという物語で、 これも、シリーズ化、ありか? 近頃、警察や、その関連機関内部の対立、人の悪意といったものが、 よく取り上げられるが、 真相に関わる場合仕方ないが、 ドロドロ感情で、主人公などが疲弊するのを見るのは、 スッキリしない。…
冷静な薬剤師、毒島さんと、ホテルマン、爽太との仲は…。今回は、漢方医学の話が盛りだくさん。塔山郁さんの「病は気から、死は薬から・薬剤師毒島花織の名推理」を読む。
病は気から、死は薬から 薬剤師・毒島花織の名推理 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 作者:塔山 郁 宝島社 Amazon 毒島さんシリーズも四作目。 この前、TVドラマの中で、クリプトコッカス症が登場した。 これ、このシリーズで、知識として仕入れていたから、 鳩のいる公園が出てきたシーンで、すぐ思いついた。 自慢にも何にもならないが。 相変わらず冷静な毒島さんと、 なかなか、その仲が進展しない爽太。 今回は、ライバル出現かと、思わせられたけど。 今回は、医薬品ネタより、サプリメントや生薬に関する情報が 多かったが、それなりに面白かった。 ただ、漢方医学の話が多かったためか、 毒島さんの…
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