いつも読みに来ていただきありがとうございます!このブログも11年と18日目です。今作は、あの利根川が主役です!簡単なあらすじを紹介します。会社を退職した利根川はフリーターとして真っ先にしたことは部屋探し。そこから高瀬探しをするのかと思いきや、なんとニューヨークへ観光しに行くこと!無事にニューヨークへ着くのでしょうか。しかし、飛行機は利根川の思いとはうらはらに赤道直下にある島に漂着してしまった。利根川は...
オリジナルBL&MLを毎週月・水・金の夜21時に更新!※アスリートCP/医者CP/リーマンCP/学生CP/短編も有ります。
妄想&空想が好きです(*≧m≦*) 浸るのも大好きです。 プロフのイラストは自動生成AIに描いてもらいました。 オリジナルでBL小説を書いてます。 他のジャンルも多少あります。 性的表現がございますので、苦手な方はご遠慮ください。
皆で食べていると社長が食堂に入ってきた。手招きしている食堂のお姉さんに気が付き、キッチンへと入っていく。「なに?」「これ、飲んでみて」「どうして?」「私でなく、あそこの男子学生が作ったの。私、味なんて分からないし」そう言われ、一口飲む。飲み切ると、社長はお椀に注ぎ飲み切る。「美味いわ。なんか生き返った気分だ」そう言うと、食堂へ足を向ける。「誰が、このお味噌汁作ったの?」「あ、はい、私です」「今どき...
時は過ぎ、12月24日の夜。新田率いる経済学部5人プラス松井嫁の6人と、医学部7人、教育学部3人は大荷物を持ってやってくる。先に新田が挨拶をする。「こんばんは、明日からよろしくお願いいたします」「よく来たね。食堂に行ってて」「はい、分かりました」食堂に行くと声をかける。「お疲れ様です」「新田君、お疲れ様。これね」「これって、なにが?」そう聞くと、食堂のお姉さんはこれと言って指をさす。「え?」それを見た...
帰りは各自で帰る。横浜に来ることってないから皆が興味津々だ。関内駅周辺だったり、少し歩けば山下公園がある。松井は夫婦でどこかに行くみたいだ。サッサと歩き出す松井に声をかけていた。「松井、どこに」「聞くだけ野暮だって」「なんで」「デートに決まってるだろ」「え?」松井の声が近くでする。「なんで聞きたがるかね。それとも、私たちの後を付けてボロボロにやられたいか?」「いえ、結構です」「デートに決まってるだ...
1時間強しか経ってないが、社長は決めたみたいだ。皆は食堂で本日のお試しバイトのバイト料として軽食を食べている。社長は、その皆に言う。「決めた、決めたよ。みんな、ここでバイトしてもらう。採用決定だ」新田がすかさず返す。「ありがとうございます」「新田君もありがとう。適材適所に苦しむけど住み込みだからなんとかなるだろう。年末年始はよろしく」皆の声は重なっていた。「ありがとうございます。よろしくお願いいた...
2階へと移った教育学部5人は容器が足りないということで、8種類の容器にシールを貼っていく作業をしている。手本を一つ作ってもらい、それに倣って容器にシールを貼っていく。もくもく作業なら、お任せの5人だ。20分あれば終わるが、先に終わった3人は残りの3種類のシール貼りをしている。手が空いた2人は片づけをしているスタッフに声をかけ手伝う。高橋も声をかけていた。「持っていきます」「重いよ」「大丈夫です」持ち上...
ニコニコ顔のジュンヤだったが、内心は焦っていた。こんな近くで女性と、まさかリップサービスを余儀なくする羽目になるとは思いもしなかったのだ。しかも、無事に1人終わったと思っていたら、次から次へと5人の女性を相手に一人でさばくだなんて。これがメスで切り開いても良いのなら構わないのだが。そう思うと言っていた。「なんで、他の人たちはしないのですか? しかも、あの9人はどこに消えた?」先ほどのスタッフが教えて...
「ジュンヤ様は魚もお食べになられるのですね」「魚はよく食べるよ」そこでジュンヤは気が付いた。「魚、食べてる?」「あまり食べないかも」「食べたほうが良いよ。特に女性には魚のタンパク質は体にいいんだ。どんな魚が好きなのか教えて。良かったら選んであげる」「タコも魚ですか?」その言葉に、自分の立っている場所がタココーナーであることに気が付いた。「そうだよ。食べたことない?」「どうやって食べるの?」「ゆでる...
1階に下りた10人は白衣からエプロンと長靴になる。ボスとスズメはもちろんのこと、喫茶店でバイトしているカズキと本屋でバイトしているタカの4人は生き生きとしている。気合も入っているので声を出すのは苦痛ではない。4人の声が重なる。「いらっしゃいませ」途端、その声が叫び声にかき消される。「キャー!!!」ドドドッと店内に女性数人が入ってくる。「ジュンヤ様―!!!」一番奥に居たジュンヤにも、その叫び声は聞こえて...
そして、教育学部の5人は3階の食堂で昼食の準備を手伝っている。普段は一人で切り盛りしているという、その女性は5人の大学生をどうすればいいのかわからず社長を呼んでいた。「ありがとうございます。助かりました」「今どきの大学生は自炊もできるから、させればいいんだよ」「なにしろ男子だから」「男子も女子も関係ないよ。あ、それと21人分の軽食を作って」「21人ですか?」「そう、21人。新田君率いる20人だから、21人」「...
一方、こちらは医学部10人。白衣を着て材料を量り器に入れる作業だ。エプロンでなく白衣なので、違和感なんてものは全くない。しかも前髪が垂れないように帽子を被り、手袋してマスクも付ける。これで持ち物がメスみたいな物であれば、魚肉を切り開いたであろう。しかし、持ち物はなく手袋をした手であり、もしくはスプーンだ。二人一組で5種類の魚肉を量り器に入れると、蓋を閉めてコンテナに入れていく。手際が良く、20分もする...
「へぇ、魚屋ってサラダも売ってるのか」「ここは売ってるよ。お前らも声出して売れよ」タイミングよく声がかかる。「新田君、ウナギ出してくれる?」「1台でいいですか?」「ん-……、2台?」「2台ですね。分かりました」そう言って足を踏み出すが、何を思ったか立ち止まる。「そうだ。4人ともこっちに来て」「どこに行くんだ?」「冷凍庫だよ。男衆4人動け」はいはいと言って、男4人は新田の後を歩く。10歩ほど歩いたら着い...
一気に20人が増えると、いくら広いと言っても目が届かない。だから、5人一組になり30分で交代する。なにしろ、やることはたくさんあるからだ。先に経済学部と松井夫婦の6人は1階に下りる。新田は言っていた。「5人とも動くんだよ」「どんなふうに?」「見てて、あとでしてもらうから」そう言ったものの内心は項垂れていた。気を取り直してエプロンと長靴を付ける。「いらっしゃい、いらっしゃい。イキのいい魚がいますよ」その声が...
中に入ると、父親より若そうに見える男性がいた。「新田君、1年ぶり。大人数だなあ」「1年ぶりです。今年もよろしくお願いいたします。20人です。よろしくお願いいたします」その人は20人に声をかける。「私は、社長の川本だ。人手不足で今年はどうしようと困っていたのだけど、新田君がこんなにも声をかけてくれて嬉しいな。明日は新井君が13人連れてきてくれるし、無事に年末年始を迎えられそうだ。履歴書を見せてくれる? 新田...
店に着くと、新田がこっちだよと教えてくれる。その新田は先頭に立つとブザーを押し鳴らす。「はい」「東響大学の新田です」「20人の面接だね。そのまま3階の食堂に上がって」「はい、分かりました」後ろに立っていた宮田がつぶやく。「20人?」「そうだよ」「21人の間違いでは?」「あのね。みんなは私の紹介なんだよ」「新田は面接なしか」「そういうこと。高校の時から来てるからね」3階まで階段を上っていく。2階の踊り場で誰...
12月に入った第1週目の日曜日。待ち合わせに最寄り駅を指名して、そこまで勢ぞろいして駅へと向かう。途中、ちらちらと見られる。「慣れてるとはいえ、やっぱり目立つんだな」「なにが?」「お前らだよ! お前ら、10人。いや、金銀の2人だ!」「ちょっと、人を将棋のコマみたいに言わないでくれる?」「ハモッてるし……」タイミングよく松井もやってきた。「お待たせ」「まーつーいー」「なに?」「なにじゃない! なんで女連れな...
学部棟に戻ると声をかけられる。「新田、本当か?「宮田? 本当って、なに?」「年末年始で14万バイトの話だよ」「え……」「本当に、そういうバイトあるのか?」一体、誰から聞いたのだろう。「新田、どうした?」「あ、ごめん。どうして知ってるのかなと思って」「ほかの3人も知ってるよ」その言葉に驚いた。経済学部の松井、宮田、元宗、桑田の4人は年末年始バイトに向け嬉しそうだ。しかし、その前にXmasというものが立ち塞が...
誰かの声が聞こえてくる。「なあ、1週間バイトしない?」「何のバイト?」「魚屋で年末年始の1週間」そこで大きな声が遮る。「パス!」しかし、それぐらいではめげない。もう一声付け足す。「なんと、1週間で10万円!」「だから、パスって」しかし、すぐに言い直す。「え、なになに。1週間で10万?」「しかも、三食付き」「おぉ!」「朝6時から始まるのだけど」「早いなぁ……」「しかも、経済の新田から貰ったという」「新田かあ...
いつもお越しいただきありがとうございます。この6月27日で、11年目に突入します!11年目を迎えることができたのも、皆さまからのメールや「イイね」ボタン等のお陰です。とても感謝しております。そんな記念となる小説の前に、うちの子たちによる小説を楽しんでいただけたらと思い、登場させました。実は、これから始まる数作品はコラボになります。その為の、うちの子たち紹介作品です。~あらすじ~東響大学医学部では、年がら...
いつもお越しいただきありがとうございます!予定より長めになりましたが、本日より毎日の更新となります。予約登録をフル活用して更新していきますので、付いてきてくださいね!医学部10人登場ボス 「やれやれ、やっとか」スズメ 「ボス、違う!」ボス 「なにが?」サトル 「今回は経済学部の5人がメインなの!」ボス 「はぁ? うち(医学部)ではなく?」他9人 「そうだよ!」経済学部5人登場新田 「悪いね、10人とも」松井 ...
いつもお越し頂きありがとうございます。今作の『愛したのは王子でなく君だ』は、いかがでしたでしょうか?前作の『社員研修は腐の宝庫』の続編みたいな感じですが、ニールとネイサンの2人だけの短編小説でした。実は、前作の『社員研修は~』を書いているときに、ふっと降ってきたのです。ニールとネイサンの話が書きたい!短編でもいいので、この凸凹コンビが良い味を出してくれると思って。そして、いよいよ11年目に突入いたし...
いきなり嬉しそうな声が聞こえてきた。「ほんと? 嬉しいな、ありがとネイサン!」「え、なにが?」「今、はっきり言ってたよね? 僕を愛してるって」「そうだっけ?」いつから聞いていたのだろう。もしかして、さっきのは寝言ではなかったのだろうか。ニールは、こんなことを言ってくる。「ネイサン、神父の前で誓ったよね。病めるときも健やかなときも、って」「そうだな」「僕、嬉しかったんだよ」「皆が祝ってくれたしな」「...
ニールは秘密が多いけれど、それを暴かれるのは好きではない。それは、あの5人を見ていたからよく分かっている。「ニール、起きてる?」顔を覗き込むと、スースーと寝息が聞こえてくる。「離さないから。お休み、マイハニー」そう言うと、おでこにキスをする。ムニャムニャと寝言を言ってるみたいだ。耳を澄ますと、聞こえてきたのはこの言葉だ。「ヨシ、アサミ、好きだよ」好きなのはよく分かっている。あの5人の中でも、ニール...
愛しているのは王子でなく君だ #11 性描写あります。抵抗ある方はスルーしてください
そのニールは我慢できなくなった。「もぅ、ネイサンの下手くそ!」「なにが」そのニールは、こんなことを言ってくる。「人が素直に抱かれてあげようと思っていたのに。いつまでたっても下手なんだから。やはり、ここは僕がリード取って上げるから、大人しくされるがままになっててよ」「お前、なんてことを」「シャラップ!」結局、いつものパターンになってしまった。ニールはキスをしてくる。「ふ」普段より長く熱いキスだ。頭の...
「ネイサンったら黙り込んじゃって」「お前の、プロポーズの言葉を思い出していた」「はずかし」思わず言っていた。「分かった。ニールは」「何が分かったんだよ」言葉を重ねてくるがお構いなしに言ってやる。「アサミとユーゴに会えて嬉しかったんだな」「アサミとヨシに会えたのが、だよ」「他は?」「懐かしいな、会えて嬉しいなとは思ったけど、アサミやヨシほどではない」その言葉に、嫉妬を覚える。「そういえば、急に管理人...
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いつも読みに来ていただきありがとうございます!このブログも11年と18日目です。今作は、あの利根川が主役です!簡単なあらすじを紹介します。会社を退職した利根川はフリーターとして真っ先にしたことは部屋探し。そこから高瀬探しをするのかと思いきや、なんとニューヨークへ観光しに行くこと!無事にニューヨークへ着くのでしょうか。しかし、飛行機は利根川の思いとはうらはらに赤道直下にある島に漂着してしまった。利根川は...
「それでは、経済学部の松井です。ニューヨークで双子を育てています」「新田敏夫です。世界を飛び回っています」「元宗です。子どもはカナダに行っていて夫婦2人でレストランしています」「宮田です。今はフリーとして仕事をしています」「桑田耕平です。会社を興して30年ですが、軌道に乗っています」それでは、そのほかの方たちよろしく。「田宮俊平です。そのほかの方たちで紹介されて良かった。忘れられてるかと思ったよ。し...
うちの子紹介のページです。当ブログにお越しいただきありがとうございます。このブログも、先月の6月27日で丸々11年を迎えることができました。本日で11年と16日です。そう、12年目に突入しました~!記念として、うちの子の紹介をさせていただきます。まず、医学部卒業生から。「ボスである福山友明です。ドイツに行って、正式にメスドクとなりました。パースでクリニックを経営していますが、これからはメスドクとしてオペを...
いつもお越しいただきありがとうございます。11周年に突入しての作品です。『挑戦するのに年齢は関係ない』はいかがでしたでしょうか?本当に5年ぶりに登場しました、博人と友明。あれから、本当に5年の月日が経ちました。やっとパースに帰ってきた友明。そして、その息子のジュン。ジュンが信頼を寄せているジュンヤ。この3人がメインの話になりました。各々が、自分のやりたいことを模索しながら生きていく。この5年間、どのよう...
そのタロットをテーブルの上に置き、心の中で占いたいことを呟く。 10枚なんて置けないから、5枚引きにする。過去、現在、近未来に、結果。その結果として出たのは、カップⅣの逆位置。このカードは、腕を組んだ若者が目を閉じていて、カップを持った雲が若者に近づいている絵だ。しかし、正位置では、若者はそのカップに気が付いていない。なにしろ目を閉じているからだ。でも、今、出たのは逆位置。若者は、そのカップに気が付き...
ニューヨーク行きの飛行機に乗る。隣の席は、先ほどの人が既に座っている。「パードン」「ぷ、プリーズ」「サンキュ」離陸後、お決まりのスナックタイムがくる。「ミスター」私はフランス人だ。ドイツ語でもいいが、フランス語で応じる。 「テナチュール(紅茶をストレートで)」国際線のCAらしく、すぐフランス語で応じてくる。「ウィ、ムッシュ(どうぞ)」いよいよ、私の第5人生の始まりだ。どくろマークに、いや違った。マ...
ジュンヤはジュンの未来を知っている。あのいじめっ子と一緒にいるだろう。何度占っても、ジュンの傍にいるのが現れるからだ。ジュン。逃げ場所は一つだけではないよ。新しく作っていくものだ。10年間、私を逃げ場所に指名してくれてありがとう。君の未来に幸あれ。声がかかる。「前、通ります」「どうぞ」通りやすくシートと足の間を開けてやる。その人はたどたどしい英語だけど意味が通じたのが嬉しかったのか、安心顔をしてシー...
ジュンヤとジュンのパース出発日は同じ日だった。ジュンヤは飛行機でシンガポールへ行き、そこからアメリカへ。ジュンはエドのジェットで、庭から直接ドイツのフォン・パトリッシュ家へ。ジュンはジュンヤがどこに行ったのかは知らない。でも、また会えるだろう。そんな気がする。鞄の中にはジュンヤ先生から貰った2通の手紙が入っている。手紙とはいえ、サークルの皆と同じものだ。「2年後、自分はいなくなるだろう。自分の可能...
ジュンヤは机上勉強ならどんとこいの執念で合格した。実技及び研修先は、あの人が迎えてくれたので安心してアメリカに発てる。そのジュンヤに、一緒に暮らしているAは言いにくそうだ。「A、今までありがとう。待たなくていいからね」「あのさ……」「なに? 思い切って言ってみて」「アンディなんだけど」その名前に気持ちはグラつく。「う、うん……」「バツイチだって知ってた?」「知らない」「一緒になっても怒らない?」「Aはア...
何かを挑戦するのに、きっかけはなんでもいい。ただ、必要なのは、やる気ではなく、行動することだ。その行動力で、3人は自分の道を決めていく。友明は5年間という年月をかけて、再びメスドクに。ジュンは勇気を持つことができ、目出度くトニーから逃れることができた。そして、ジュンヤは自分の気持ちに気が付く。それから、2年後。ジュンはものの見事にドイツの高校の留学テストに受かった。住む所は、待ち人が住んでいる所。...
一方、ジュンに体当たりを食らい倒れこんでしまったトニーは呆然としていた。負けたのがショックだからではない。その後のジュンの行動だった。「うるさい、黙れ。黙って言うことを聞いてればいいんだよ」そう言うとキスされた。できるなら、抱きしめたかったのだが、すでにジュンは走り去っていた。柔らかかったジュンの唇。自分の唇に指をあてなぞる。「ジュン……」虐めないでと約束をさせられたが、俺はお前を追いかけるからな。...
途端にトニーは黙ってしまった。あれ、ほっぺたってこんなにも柔らかかったっけ。なんかグニュグニュしてるし。恐る恐る目を開けると、トニーの驚いた眼があった。まさか、これはほっぺたでなく、トニーの……、く、ち?思わず走っていた。やっちゃった。やっちゃった、やっちゃったよ。ほっぺたにするつもりが、口にしてしまった。うー……。でも、口って、あんなにも柔らかいんだね。トニーも驚いていたし。僕も驚いて走って逃げてし...
「ハッ!」「なんの」「トウッ!」「へぇ、本当に合気道やってるみたいだな」全然、当たらないし、掠りもしない。しかも、トニーも合気道ができるみたいだ。「くそぉ……」「おら、どうした。かかってこい!」こうなると、アレしかない。「これは喧嘩じゃないからなっ」「分かってらあ」1年前のドイツで、ヒロがダディを負かした。あの時に見たアレをトニーにする。低くかがむと、トニーめがけてタックルしてやる。「ってやー」しか...
ジュンヤ先生に言われ納得したジュンは、意気揚々と夏休みを過ごす。そんなジュンに、今日もトニーは振り向かせようと手を企てている。バッタリと出会い、目がかち合う。「トニー……」「いい所で会ったな」しかし、逃げ腰になってしまうのは条件反射だ。回れ右して走ると、向こうも走って追いかけてくる。あの時、皆はなんて言ってたっけ?ほっぺたにキス。ハグする。えーと、それから、それから……と頭の中が真っ白になる。そんなこ...
全く歯が立たずに、僕は聞いていた。「いじめっ子に勝つにはどうすればいいですか?」「喧嘩ではなく、言い含める言い方にするとか、相手にしないとかかな」誰かの声が聞こえてくる。「キスしたら黙るよ」「いじめっ子は男の子なんだけど」「だから効果てきめんだよ」「そうなの?」「ほっぺたにキスをすると大丈夫」「ほっぺたかあ。なるほどね」「うん、いじめは止まるな」「たしかに、止まりそうかも……」いや、本当に止まるのか...
大学のドイツ語の講師として働くことが決まったと、ジュンヤ先生に話している。フランスとドイツ旅行に行ったことを卒業論文にして提出したら、雇ってくれたらしい。ジュンヤ先生に話しているのを見ていると、羨ましかった。「おめでとう、良かったね」「フランスとドイツに行けたからです。ジュンヤ先生、ありがとう」「君が行きたいと思って行動したからだよ。礼を言うのなら、君自身にだよ」「大学に、ここの語学サークルのこと...
当の本人に聞けばいいのだけれど、どのように聞けばいいのか分からない。あれから1年経っても、まだ残像は残っている。ジュンヤ先生は、あの人とキスをしていた。覗いてはいけなかったかもしれない。でも、真後ろだったから気になって見てしまったんだ。他の大学生と高校生の2人も一緒になって、3人で上から覗いていた。見終わると、その2人はトイレに行ってしまった。僕はどうすることもできなかった。2人はトイレから戻ってくる...
ジュンはダディである友明に同じことを聞いている。途端にトモは怒り出す。「なんで、そういうことを聞くの!」「どんなものなのかなと思って」「ジュンは女の子と結婚するんだろ」「そうだよ。マミィのような可愛い女の子とするんだよ」「それなら、そんなことは知らなくてもいいことだろ」「そうなんだけど……」「なんだよ、モジモジして」そこでハッと気が付いたのか、こんなことを言う。「お前、女の子でなく男の方が好きなのか...
ジュンの言葉。「男同士でキスするのは、気持ちいいの?」あまりにもストレートな言葉にショックで言葉が出なかった。やっと頭が動き、言葉が出てくる。「よくテレビで見るハグして頬にする、あれは挨拶だよ」「ほっぺたでなく、ここだよ。口なの」そう言って、自分の口に指を置く。その仕草に、これはどこかで男同士のを見たなと気が付くと言っていた。「ジュンは男相手に、そこにキスをしたいのか?」「え? い、いや、どんなも...
ヒロは頭を優しくポンポンと叩いてくれると、ハグしてくれる。だから、この言葉を添えてハグをし返す。「ありがとう」ヒロにハグをされたまま聞いていた。「ねえ、ヒロ」「ん?」「あのね、僕、ずっと考えていたのだけど分からなくて。聞いても良いかな?」「何? 言ってごらん」その優しい口調と言葉に勇気を貰い、聞いていた。「男同士でキスするのは、気持ちいいの?」すると、ヒロは黙ってしまった。優しく頭や肩を叩いてくれ...
教育学部の5人は関内駅の構内へと向かう。「高橋。あれ、あいつどこ行った?」「後ろ」「後ろか」そう言うと、くるっと後ろを向く。「たか、あ!」「んじゃ、16日までバイなら」「裏切り者ぉー」彼女となった武田と連れ立って、高橋は一緒に歩いていく。その高橋に向かって吠えている海堂を置いて、他の3人もサッサと構内を歩いていく。それを見ていた経済学4人は呟いていた。「バイト先で彼女を見つけるとは」「さすが高橋」「し...
「結婚するって言った?」その声で、皆は一斉にざわつく。「ボスが?」「誰と?」「嘘だろ」「そんな気配なんて」そんな言葉にボスは戸惑う。「ん? 私が? いや、違う。私でなく……、違うから!」「違うって、なにが?」「いつ結婚するんだ?」「もしかして、遠距離恋愛してたとか?」その遠距離で思い出す。「あ、主語がなかったか」その言葉に皆は頷くと、素直に主語を口にする。「ナツだよ」「なつ?」「夏って何? 誰かのあ...
キッチンも掃除が終わり一息ついた頃、社長が食堂へやってきた。「お疲れ。皆には迷惑かけたね」バイト料を一人ずつ手渡してくれる。ありがとうございましたとお礼を言って、奥の和室に入る。布団は、いつの間にか押し入れに畳み込まれていた。現金でもらい、皆の懐と表情は明るい。荷物を持ち、21人の集団は関内駅へと向かう。駅前には2台のロールスロイスが停まっている。医学部のサトルとユタカは、その2台に近づく。「お迎え...
翌日はアルバイト最終日だ。ワンから買い物リストをもらい、買い物をして帰ってくると人数が増えている。「なんで2人がいるの?」「有志だから」「いつも2人でいるんだね。なんか羨ましいな」「いや、そうい」「新田、こいつはここで彼女をゲットしてるんだぞ。どう思う?」高橋は叫ぶ。「カイド―!」その叫びに対し海堂は両手をグーにしてガッツポーズする。「GO!」新田は驚いている。「彼女って……」「2階の女性スタッフ。片...
こちらは経済5人と松井の嫁。「ほら、これで食べるからな。欲しくない奴は食べなくていい」「新田、そういう言い方はよせ」「私は自分の気持ちをこの3人に話した。あとはお前たちの出方次第だ」そう言うと、餅をまな板に置くと包丁で切っていく。「おお、スパスパと切れる。やっぱり包丁で切る方が早いな」大変な思いをして餅を割った昼間を思い出すと、水でふやけさせた餅を切る方が効率がよいと気づく。「焼くか、煮るか。どっち...
教育学5人はスタンダードに餅を焼く。焼きノリがあるので、それをぐるぐる巻きにして醤油を付けて食べる。「美味いっ」「2つだなんて取りすぎたかなと思ったけど、食べきったな」「あー、満腹」「満足だ」もう一つ声が足りない事に気が付く。「高橋は?」「そういえば、どこ行ったんだろう」ジャジャジャジャーンッと効果音が聞こえてくると高橋が何かを持ってきた。「高橋、どこに」「これ見て」そう言って、持ってきた物を4人に...
サトルはタカに言う。「餅は夕食に食べるって」「何個?」「3個」3個をサトルに手渡す。すると、新田と海堂も言ってくる。「こっちにも2つ」「だって、さっき3個」だが新田は強気だ。「10人で3つだよと言ってるんだから。経済は2つ」同じく海堂も強気に出る。「教育も2つ。夕食まで時間あるから水に浸しておこうかな」その言葉に新田はすかさず応じる。「それ、いい考え。包丁で切りやすくなってるかもね」サトルはボスに聞...
キッチンに入ると、ボスは包丁の柄の部分を握り持っている。「ボス、今の音はなに?」「餅が割れた音」「は?」餅ではなく、どこかの台を壊したのではないかとキッチン台を見ていく。そんなサトルに声をかける。「乾燥しきってないからレンジで30分焼いたらパリパリになって、包丁のこの部分で叩き割っただけ」だけどサトルは目ざとく見つける。「ググっていたのか」「バレたか」サトルと一緒にキッチンに入ってきた新田はこう言う...
新田と海堂とタカとワンの4人は餅を割っていく。が、3分もしないうちにお手上げ状態だ。「らちが明かない」「時短できないかなあ」「パッカーンって割りたいね」タカは、その3人に言ってやる。「レンガみたいに固くなっていれば割れるけど、そこまで固くないから無理」3人は考え込むと、ワンは何かがひらめいたみたいだ。そんなワンの表情に気づいたタカは、ワンに声をかける。「何を思いついた?」「工具でやればどうだろう?...
皆が具材をカットし終えると、タカは新田と海堂を伴って上がってきた。「重かったー」その言葉に、サトルは聞く。「なにをそんなに持ってきたんだ?」「はい、これ」そう言ってタカはビニール袋を差し出すので、サトルは中を見ると言っていた。「お前ね、限度というものを知らないのか?」「雑煮を作るって言ったら、皆が入れるんだよ」そう言うと、新田と海堂の方を指さす。「餅を貰った。あの2人に手伝ってもらったんだ」その餅...
翌日の1月1日は、経済6人は1階、教育5人は2階、医学部5人は2階、残り5人は3階食堂に分かれる。「今日は何人だって?」「100人越え」「最高人数だな」「買い物……。店、開いてるかな」「そういう場合は」皆して拝む。「サトル様」「やめろ。そういうのは、ここ横浜では効かないから」「都内だけか……」皆は色々とメニューを口にするが、それをヒントにタカはあるメニューを口にする。「雑煮は? ここ魚屋だからアラや骨は十分に...
その夜、医学部の10人の夕食はサトル持参のプロテインとジュンヤ持参のゆで卵、残り物の野菜で簡単に作った野菜炒め、味噌汁だ。それらを和室で食べながら、ユタカが勝手に取り付けた盗聴器を聞いていた。ボスは考え込む。「うーん、こうなるとはな」スズメはこれだ。「そっかあ、あの金魚の糞はそう思っていたのか。ってことは、年上か」サトルは簡潔だ。「二浪したのか」マサは素直に気持ちを口にしていた。「経済を一発合格した...
コンシェルジュを2時間もやっていると薄暗くなってくる。客足も途絶え気味になってきたのでジュンヤも店内に入り模様替えを手伝う。「明日もしますか?」「いや。明日は正月用に海鮮と寿司と造りの販売だけ」チーフは声をかけてくる。「専務、その量ですが……」「なんだ、歯切れ悪いな」「実はお造り384と、寿司が248入っています……」「えらく多いな。ジュンヤ様効果か?」「それもありますが、解体ショーの時の注文で、130ずつ。今...
一方、こちらは1階に下りたジュンヤは一人だけ店先に設置されたブースにいた。当然のことながら黄色い声援付きだ。離れている店内にまで、それが聞こえてくる。「うーむ、離しているとはいえジュンヤ様ビームは凄いな」「余波がここまで響いてくる……」「あの時は何が起きたのか分からなかったが、これか……」「彼一人で大丈夫かな」「店内に誘導してとは言ったけど。あ、でも大丈夫そうだ」数人が入ってくる。「いらっしゃいませ」...
洗面スペースに寄り顔を洗うとキッチンに出る。「代わるよ。お疲れ様ー」「お疲れ。話し合い、終わった?」「うん、終わった」松井は聞いていた。「新田、あの3人は」「今はパス! ほら、来るよ」途端に、威勢よくドアが開く。「お疲れ様ですー」「お疲れ様。一人一皿ね」「はーい! お、ハンバーグだ」「こっちのスープ美味しそう」「ご馳走様でした」「このサラダ、ビールが欲しくなりそうだ」「松井、グラス足りないから先に...
たったそれだけの事なのに、桑田は目くじらを立てる。松井は、桑田の怒りを収めようと声をかける。「お前の気持ちも分かるが、我慢しろ。それにやることは」「松井はあんなことを言われて悔しくないのか。腹立たないのか」「なんの事だ? さっきのは単なる社交辞令だろ」「どこがだ」新田は我慢していた。「今は仕事中だ。怒りは夜まで待ってろ」元宗も言ってくる。「新田はいいよな」宮田はこれだ。「そうそう。自分だけ良いよう...
13時前にはドドンッとやってくる。食洗器をフル稼働させながら、3人は焼いたりサラダを盛ったり、食器類を取り出したりしていく。「そろそろ、こっちを出すかな」ユウマは呟くと鍋を持ち表に出る。ガラッとドアが開き、声が聞こえてくる。「お疲れ様です」「お疲、あ、サトル」「大変だった?」「これからが一番大変だと思う」「食べたのか?」「3人とも食べたよ。あと、経済との関係が悪くなってる。アフターよろしく」「仕方ない...
12時になったが誰も来ないので3人は一番乗りで食べる。「たまにはいいな」「ゆっくり気分で食べれるだなんて久しぶりだな」「出来立て美味しい。あのきゅうりがこうなるとは思いもしなかったな」2人の声は重なる。「見事に酒の肴だ」「たく、二人そろって」「いい味出してるよ」 「それはありがとう」12時半を過ぎると5人が入ってくる。「お疲れ様です」「お疲れ様」「ハンバーグだ!」「嬉しい、2個もある」「1つがドンとあ...
3人そろって20分後にはハンバーグのタネだけでなく、サラダのきゅうりとスープの材料もカットし終わる。「味はコンソメでいいかな?」「任せる」ピーと音が鳴る。「何の音?」「米が炊けた音だな。サラダはレタスではなくキャベツか。千切りにでもするか」「赤みがないな」「スープに人参入れるから大丈夫」「カレーの時に買った人参か」「誰かさんが大量に買ったから」「タカだろ」ユウマは手際よく米をジャーに移していく。「う...
2階からはマサとユウマの2人が飛んできた。「ジュンヤが喚き散らしてるって言ってたけど」「まるっきりキレてないし。これの、どこが怒り飛ばしてるって言うんだ?」紐で床を打ち、言ってやる。「包丁を持てないのが3人いる。そんな奴らはハンバーグとサラダと味噌汁だ」「それなら、包丁は1人か2人にさせればいいのでは?」「見てみろ、これはきゅうりみたいだぞ」そう言ってまな板を指すと、2人は唖然としている。「え?」「そ...