月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった69 BL小説 「今度は、少しずつ間を詰めて、絶対ポカしないつもりだったんだ。でも、あの金髪野郎が現れて、俺、頭に血が昇っちまって、つい、告るの早まったのかも」 井原はやはり響しか見えていないらしい。 「お前さ、外野のことも少しは考えた方がいいんじゃね?」 「外
創作BL小説です。オヤジ工藤と部下良太のすったもんだラブ、京助と千雪のどちらも譲らないぞラブなど、ひねくれ度高いですが基本ハピエン。業界、学園、バンド、社会人、海外あり。R18。
創作BL小説です。オヤジ工藤と部下良太のすったもんだラブ、京助と千雪のどちらも譲らないぞラブなど、ひねくれ度高いですが基本ハピエン。業界、学園、バンド、社会人、海外あり。R18。傲岸不遜男×強気、野球選手×美形、業界、バンド、学園、学生、リーマン、イケオジ多。BL、ML。字書き、あきつ、絵描き、alyosha、松本悠莉で活動しております。
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月夜の猫-BL小説です 霞に月の41 BL小説 「ハハ、かなりギリでした。俺、野球ばっかやってたし」 そういえば戸塚教授、めちゃくちゃ厳しかったけど、みんなが言う程嫌いじゃなかったな。 そんなことを考えていた良太に、奥の方で直子がひらひらと手を振った。 「あ、知り合いが呼んでるみたいで、ちょっと失礼します」
back next top Novels その頃はもう、何をやらかすかわからないこのガキにとらわれてい
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯32 BL小説 「バカ、ひとりでホテルなんか泊められるか。俺もホテルを取るから、紀ちゃんの部屋も俺が取るよ。こないだのお詫びに」 慌てて元気は提案した。 「え、そんなあ……元気ってば、太っ腹! じゃ、豪もホテル泊まればいいよね」 紀子の発言にまたしても東が一人で反応する。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)40までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)40、真夏の危険地帯(豪×元気)31、鬼の夏休み(工藤×良太)創作BL小説連載中です
月夜の猫-BL小説です 霞に月の40 BL小説 お仕着せを着たギャルソン風の青年がトレーに飲み物を掲げて二人の前にやってきた。 二人ともシャンパンをもらい、奥には軽食やつまみが用意されているとギャルソン風に説明を受けて、腹が減っていたのを思い出した良太と森村はそちらの方に向かう。 が、すぐに理香に声をかけられて
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み48 BL小説 ちょうど不景気が日本中をどんより覆っているような年だったからか、面接に四人の学生がやってきて、三人はそれなりに体力も知力もありそうなメンツだったが、一人、痩せてリクルートスーツが浮いているような場違いなのが混じっていた。 しかし案の定、工藤が中山会組長の甥云々と
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯31 BL小説 何が非常勤任務だ! いつも見かけは冷静なはずの元気だが、つい洗い物に水を一気に出し過ぎて慌てて緩める。 みっちゃんの話によると、ギターのタダシが何と盲腸で入院してしまい、急遽助っ人は頼んだのだが、一平のノリが非常に悪いから、週末の土曜、千葉のライブ一日だけ、
月夜の猫-BL小説です 霞に月の39 BL小説 土曜日は四時頃までドキュメンタリー番組の編集に顔を出していた良太は、慌てて会社に戻ってくると自分の部屋に上がり、シャワーを浴びて髪をざっと整え、夕べ選んでおいたスーツを着た。 無礼講だと言われたし、ドレスコードも必要なさそうだったが、工藤が紹介してくれたテーラーで
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み47 BL小説 しかも警察内部に暴力団同士で相打ちにさせて潰そうと画策している者がいるらしく、工藤自身にも害が及ぶ危険性があるとも。 かつて汚職で失脚した桜木元外相の息のかかった輩が工藤を貶めるべく虎視眈々と狙っているというのだ。 「桜木元外相は失脚して表舞台からは退いたものの
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯30 BL小説 客も少ないのをいいことに、テーブルに陣取って、これはどこで撮った、ここの海は恐ろしくきれいだった、と豪は紀子相手にカメラの画像を見せ始めた。 「うわ、可愛い! これ、さわりたい、コアラ!」 紀子は一つ一つの画像に声を上げている。 「しかし、蒸し暑いな…台風く
月夜の猫-BL小説です 霞に月の38 BL小説 「あ、俺は、他に予定ないので大丈夫です」 良太はさり気なく答えた。 「しかし何だ? 異業種交流会とか」 「はあ、でもほんとにいろんな業種の人が集まるみたいで、ほら、来週から『コリドー通りで』放映じゃないですか。秋には『大いなる旅人』も封切りだし、何かしら仕事にプラ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み46 BL小説 「わ、フレンチトーストだ!」 ダイニングテーブルに並んだオニオンスープやトマトやキュウリ、アボカドなどのサラダ、ベーコンとスクランブルエッグ、野菜ジュースという文句なしの朝食を見た途端、良太は腹が減った気がした。 ふわふわのフレンチトーストにバターとベリーのジャ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯29 BL小説 「なんだ」 つい声が不機嫌になる。 「……あんま、時差ないから、まだ起きてるかと思って」 「お前、GENKIの事務所に寄ったんだってな」 「……みっちゃんに聞いたんだな」 「わざわざこっちまで出向いてな」 しばしの沈黙があった。 「わかってる! あの人、み
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)37までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)37、真夏の危険地帯(豪×元気)28、鬼の夏休み(工藤×良太)45までアップしました。 今年は異常な暑さが続いております。 皆様どうぞご自愛くださいませ。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の37 BL小説 「浜村さんって、会長の関係者?」 「ああ、息子さん」 やっぱり、名前同じだと思った。 工藤、浜村会長と会って、どうだったんだろう。 そういうことあんまし言わないからな。 「なんか、セレブ多いですよね」 「まあ、無礼講やし、ええんやない?」 「はあ」 モリーには悪い
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み45 BL小説 ここの空気が助長させるのか、夏の名残にけしかけられたのか、財界の大物連中相手に負けじと背伸びをしていた良太が可愛いかったのと、女たちに絡まれていたのがイラついたのとが心の中でせめぎ合い、情動へと駆り立てた。 何よりあれだ。 ちょろちょろうろつく良太に、俺の傍にいろ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯28 BL小説 「まあな、俺としては、豪がお前がGENKIに関わるのを邪魔するとかしなければって、黙認してたんだが。なるほど、豪に執念深くここまでお前を追ってこられて住み着かれて、押し切られたと。元気は結構乙女だったわけだ。誰よりも好きくらいじゃいや、オンリーユーじゃないと
月夜の猫-BL小説です 霞に月の36 BL小説 そんなことを考えていた良太だが、翌日下柳から入った連絡で、俳優が二人になるのを知った。 「良太ちゃん、こないだ直子ちゃんと話してただろ、ほれ、異業種何とかって集まり? ひとみがくって言って来たんで、俺とひとみ、人数に入れといてくれ」 「え、何でひとみさんが………」
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み44 BL小説 曾祖父は頑健な男だったが、滅多なことでは怒ったりしなかった。 かといって工藤のことを放りっぱなしでもなく、学校の話などよく聞いてきた。 曾祖母は品のいい優しい人だったが、極端に工藤をかまうということもなかった。 だが、当時は嫌われていると思っていたのだが、今思う
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯27 BL小説 「一度会ったきりなのに? 確かに、あんな状況だったのに、怒られるどころか朝ゴハンすすめられて、大学のことくらい話したか、二人が出かけるまで和やかだったな。まあ、男だし、ただの友達と思ってくれたのか、一家弁護士とかエリート家族だから、許容量が大きいとか? でも
back next top Novels 「それは大丈夫でしょ。デザイナーさんだっけ?」 「そう。たまに
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み43 BL小説 どうせ極道などとまともに取引なんかできるか、とでも考えていたのだろうとは容易に推察できる。 いつもそっちで勝手に決めればいい、というスタンスでいるのだが、これが藤田や美聖堂の斎藤には何故か気にいられて、これまで長い付き合いになったりしているのだから不思議だ。 紫
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯26 BL小説 そしたら、もしかしたら、父親はまだ生きていてあの店を続けていたのだろうか。 時間が戻せるとしたら、自分はどういう選択をしたのだろう。 元気はフン、と自嘲する。 もしとかたらとか、考えても詮無いことだ。 時は戻ることはないのだ。 にしても、今日は昔のことばか
月夜の猫-BL小説です 霞に月の34 BL小説 良太は猫たちにご飯をやり、着替えると、軽くサンドイッチで夕食にして、車で高輪へと向かった。 工藤に言われてから、空いた時間に高輪のジムへ週一、二回通っている。 お陰で身体の調子が前よりいい感じだ。 「でも、あれか。もし、そのイベントで、工藤に誰かが見つかったら、ジ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み42 BL小説 浜村と渡良瀬が立ち去ると、紫紀が言った。 「お疲れ様です。工藤さんも良太ちゃんも、肩凝ったでしょう? ちょっと奥で一服されてはどうですか?」 工藤はすぐにも帰りたそうな気配だったが、「ありがとうございます」と先に良太が答えたので、眉を顰めながら工藤も良太の後に続
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯25 bl小説 しかしな、とみっちゃんは続けた。 「たまに一平が元気にありつけるとなれば、一平のパワーは倍増するんだけどさ、ほら、ネコを遊ばせるときみたいに、たまにキャッチさせてやらないと興味をなくすだろ? つまり全然、報われないってことになると、一平は仕事だろうが放りだし
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)33までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)33、真夏の危険地帯(豪×元気)24、鬼の夏休み(工藤×良太昨年夏)41までアップしました
月夜の猫-BL小説です 霞に月の33 BL小説 「それはまあ、わからんでもないけど。せや、最近法医学研究室にアメリカから来はった准教授が、工藤さんにちょうどええかもて」 「おや、そうなの?」 「それと、桐島の友人のバイオリニストが美人で陽気なんですわ」 「へえ、なるほど、異業種交流会だ」 「工藤さんと良太にそれ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み41 BL小説 京浜ホールディングスのブレインはこの人か。 良太は心の中で頷いた。 広報にも詳しいらしい。 「そうですか。彼の仕事は素晴らしいですね。実は一ファンなのですよ。お会いしたことはありませんが、これまでの業績は聞き及んでいます」 「ええ、とても、常人にはない発想と技量
back next top Novels 「それとアユの塩焼き二つ、トマトとモッツアレラチーズのカプレー
月夜の猫-BL小説です 霞に月の32 BL小説 「うーん、それって、表向きはってことだよね?」 すると千雪は少し眉を寄せる。 「まあ、二人とも頑なやし、特に工藤さん。出自があれやからってのはわからないでもないけど、いくら何でもって思うし、この辺で何か起爆剤になるようなことがあれば、や、この際、二人とも別の誰かと
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み40 BL小説 「キャストは有名どころが出演されるんでしょうか?」 渡良瀬は聞いた。 「まだ正式には決まっていないようですが、先生が推しておられる俳優さんはどなたでもご存じの方になるのではと思いますが」 「なるほど」 にっこりと渡良瀬は笑った。 「あら、良太ちゃん、探したのよ~
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯23 BL小説 悪いのはちゃんとはっきりさせなかった自分だ、元気を勝手に好きになったのは自分だからと豪は言うが、自分に非がないわけがないと元気はわかっている。 起きるべくして起きてしまった結末に、そしていろんな感情のせめぎ合いから、あの時、元気はこの街に逃げ帰ったのだ。
back next top Novels 「ああ、彼、日系三世だっけ? 合コンって、日本特有なものがある
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み39 BL小説 良太を見つけた工藤は険しい顔をしたが、すぐに表情を戻して、話に戻った。 「ああ、いいところにきたね。浜村さん、青山プロダクションの広瀬くんです」 紫紀が良太を認めるとすぐに二人の男に紹介した。 浜村と呼ばれた男は五十代くらいだろうか、穏やかな顔つきのスマートな男
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯22 BL小説 詩も歌詞も元気の中では同じ引き出しに属し、今も市内の同人誌にこっそり参加しているのだが、昔から書き綴ったノートはかなりの冊数になる。 「この詩なんか、宮沢賢治とか三好達治とか元気の好きな作家のニオイでいっぱい」 「そう…すか?」 言い当てられたことがきっかけ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み38 BL小説 「いや、俺はお客ってほどでも。ひょっとして警察行ったんですか? 知り合いが捕まえたって?」 良太は聞いた。 「ああ、ダチとその仲間、まあ、ちょっとバイクのテクがある連中四、五人で車追って、のっとった男二人、引き摺りだして、捕まえたて」 「バイクだけじゃなくて腕っぷ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯21 BL小説 「今日は秋に出す『久遠』の編集会議です」 少し頬を赤らめながら少女は答えた。 「へえ、だって君ら三年だろ? 夏期講習とか忙しいんじゃないの?」 「でも『久遠』は今年で百号の記念号だから気合入ってて、私らも顔出してきたんです。すごいですよね、ほぼ年一回か二回発
月夜の猫-BL小説です 霞に月の30 BL小説 「異業種交流会、ですか?」 翌日、出社してきた森村に、良太は昨夜千雪に提案された話をすると、森村は怪訝な顔で聞き返した。 「まあ、合コンとはちょっと違うけど、もっと広い意味でというか」 良太としても今一つピンとこないのだが、千雪の言うには、年齢や職業、性別問わず
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み37 BL小説 「お金に決まってるじゃない! いい服着ていいもの食べて、いい暮らししてるあんたたちなんかにわかんないわよ!」 ちょっと見可愛いと思われるだろう顔がゆがんだ。 良太までをも小谷は睨み付ける。 「いや、俺の服はただこのパーティのために社長に買わせられただけなんだけど
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯20 BL小説 豪はオーストラリアに発ったはずだ。 朝、車の音で元気が目を覚ました時には既にいなかった。 「どっかいい店連れてけよ」 客が入ってきたのと入れ替わるように、じゃ、あとで、とみっちゃんは店を出て行った。 何だよ、重要な問題って。 またしても頭を悩ませそうな何かに
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)29までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)29、真夏の危険地帯(豪×元気)19、鬼の夏休み(工藤×良太)36 までアップしました。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の29 BL小説 それでも、ワインをゴクゴク飲んだ良太はそのうち酔いがまわってくると、泣いていたのが「モリーのやつがね、しきりと彼女が欲しいって俺に訴えてきて」とへらっと笑うようになり、「だけど、さすがに俺にも、はい、彼女、とかってプレゼントするわけにもいかないじゃないですか」など
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み36 BL小説 目を眇めるようにして良太と小谷を睨み付けていた工藤は、自然と怖い顔になっていた。 「工藤さん、どうかなさったの?」 そんな工藤を見て、理香が尋ねた。 「あ、いや、知った顔があった気がしたが違ったようだ」 あの野郎、いったいどこに行くつもりだ。 イラつきながら工藤
back next top Novels 絶対何かなければ、わざわざこんな田舎にみっちゃんが出向くわけ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み35 BL小説 「手分けして探してどこか、談話室、空いとるよな? あそこに連れてこよか」 聞いてきた京助に千雪が提案した。 「談話室か」 緊張しながら良太は呟いた。 「誠が窃盗犯二人、自分の車で連れてくる、言うてた。諏訪の森公園あたりで追いついたらしい。車はダチに丁重に運転させ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯18 BL小説 雛子との関係は昔から変わらず仲は良い方だろう。 多分、恋人が男だと告げたとしても、雛子はさほど驚かないに違いない。 のんびりとしているようで、実は元気などよりよほどどんと構えた性格なのだ。 ともあれ、さっき雛子が二日酔いかと聞いたのには、何も言わないで朝帰り
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み34 BL小説 「ほんで、学生を使ってこそこそ窃盗やパパ活なんかやらせているのが、さっきのもう一人のオッサンや」 「……何か、段々、その通りだって気がしてきました。ってことは、駐車場、気を付けてた方がいいってこと?」 「せやな。帰りは各々好きな時に帰ってもらうことになっとるし
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯17 BL小説 すっかり実業家然とした涼子が、Gコーポレーションの自社ビルの前でたくさんのマイクに囲まれている。 「ですが、飛び入り参加してくれたギタリストはあくまでも純粋に音楽が好きなだけなんです。これ以上詮索されると、二度と彼がステージに立つことはないと思われます」 き
back next top Novels 「ほな、あれや、沢村とアスカさんみたく、誰ぞを恋人役に仕立てた
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み33 BL小説 良太は少しばかり気が気ではない。 戻ると、工藤は年配の男と話していた。 「あら、藤田さん」 理香が声をかけると、フジタ自動車社長、藤田が振り返った。 「おや、理香さんじゃないか。広瀬くんも、久しぶり」 「お久しぶりです」 良太は皿を傍らのテーブルの上に置いて、
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯16 BL小説 「先日横浜ベイアリーナで行われた人気ロックグループ、GENKIのライブは大盛況だったことはもちろんなのですが、今、巷でネットで盛り上がっているのは、そのアンコールに登場した謎の超美形ギタリストのことなんです!」 ことさら大げさな身振りの女性リポーターの言葉に
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み32 BL小説 「会社ってどこだっけ?」 「え、青山プロダクションです。一応プロデューサーです」 理香に聞かれて良太は、プロデューサー、を強調する。 「っていうと、ひょっとして工藤さんのとこ?」 俄然、理香の目が輝いた。 「そうですけど、昨夜も今夜も一緒に来てますよ」 胡乱気に
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯15 BL小説 元気は名刺を見ようともせずに、黙々と手を動かす。 「天木って言います。ファッション関係の雑誌なんですが、GENKIはちょくちょく取材させてもらっているんですよ。確かにコーヒーは美味いけど、やっぱ元気さんの天職じゃないよな」 無言で元気に拒否されているとわかっ
月夜の猫-BL小説です 霞に月の27 BL小説 「せやなあ」 千雪は肯定するように頷いた。 「それ、ほんまに近しいもんやないとわかれへんよなあ。工藤さんのご学友の小田先生や荒木検事とかも、工藤さんがこの世に未練がないみたいに生きてるんが歯がゆいて思うとるんやないか?」 やはり千雪も工藤のそういう面を感じ取ってい
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み31 BL小説 門が開いたので、良太は車をゆっくりと進めた。 昨夜と同様車寄せでは藤原とスタッフが出迎えてくれて、良太はスタッフにキーを預けた。 その時、何かしら引っ掛かりがあるような気がして、一度振り返ったが小首を傾げつつ、藤原に案内されて工藤とともに中に入っていった。 ホー
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯14 BL小説 たまたまカップを下げてきた紀子にも聞こえたらしく、元気と豪の顔を交互に見た。 「コーヒーゼリーとアイスコーヒー追加ね」 紀子は豪の台詞には関知せず、ことのほか明るい声で元気にオーダーを告げた。 今度は元気が静かに怒ったのがすぐにわかったからだ。 普段は優しく
月夜の猫-BL小説です 霞に月の26 BL小説 「寒うはないけど、なんか、ええなあ、炬燵て」 千雪は炬燵に脚を突っ込んで和んでいた。 「はあ、結構この部屋にくると、みんな炬燵に根がはえるみたいで」 良太は苦笑した。 二月半ばには、この狭い部屋に何人もが押し掛けて酒盛り状態だった。 「へえ、妹さん、彼氏連れて来た
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み30 BL小説 「あ、ありがとうございます」 良太はさすがに大きなチョコレートプレートを食べた後は胸やけがしそうになって、紅茶をゴクゴク飲んだ。 「明日は何時頃こちらを発つ予定です?」 杉田は紅茶を良太のカップに注ぎながら尋ねた。 「十時くらいには出ます」 「あら、じゃあ、朝食召
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯13 BL小説 やれやれ、とそんな事情からご機嫌斜めな紀子には細心の注意を払わねばならない元気は嘆息し、それでも自意識過剰かもしれないがこの店が辺鄙な田舎町でよかったと思うのは、日がな一日こういう「客」に店を占領されなくて済むことだった。 確かに、東京にいた頃は元気の携帯には
月夜の猫-BL小説です 霞に月の25 BL小説 「あ、まさか、締め切りが迫ってて、バックレようとか思ってます?」 「フン、残念ながらギリで間に合うたわ」 「そっすか? だって時々、携帯切って編集さんやり過ごそうとかやってるじゃないですか」 前科があるから千雪の言葉を鵜呑みにすると危ないこともある。 「シルビーの
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み29 BL小説 こういう時、昔ならつい煙草に手が行くのが常だったが、最近は自分だけでなく周りにも害があるなどと言われて、禁煙までは行かないが、ポケットに煙草を入れるのはやめている。 「さあさ、座って下さいな、ほら、ぼっちゃんも」 良太は吹き出しそうになるのを何とか堪える。 ダイ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯12 BL小説 そんな毎日にすっかり同化していた元気だが、謎のギタリストなる、まるで見知らぬ自分が勝手に世の中に出て暴走しているのを見ているような気がする。 どっちにしても、ちょっとみっちゃんと話さなきゃな。 川べりの道を歩く元気の頭の中を、ネットの記事や動画がぐるぐると駆
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯11 BL小説 四年前、別れを告げてこの町に戻ってきた元気を忘れられず、豪はストーカーのように元気を思い続けて、最近注目のカメラマンのくせに、ついに元気の住む近くの町に引っ越してきてしまうほど元気一筋な男で、いつも元気の顔を見ると喜んで尻尾を振って駆けてくるリュウと次元が一
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み28 BL小説 「ただ今帰りました~」 別荘に着き、声をかけながら中に入ると、キッチンから音が聞こえた。 杉田はキッチンにいるらしい。 「杉田さん?」 「あら、良太ちゃん。お帰りなさい」 「ただ今戻りました。これ、どうぞ。クロワッサンがすごくうまくて」 良太がベーカリーの袋を
月夜の猫-BL小説です 霞に月の24 BL小説 「このシリーズの主人公である六条渉は、幼い頃に家族を強殺されるという凄惨な経験を持っているので、罪を犯した人間に対して極端な憎悪を抱いています。ともすると非情に被告人に対して厳罰を与えかねない自分と常に闘っているというような深い闇があります。また六条に限らず、刑事の
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯10 BL小説 「元気、昨日はどこ行ってたの?」 さくっと紀子は切り込んだ。 「昨日? だから将清たちと会うって言っただろ?」 優作が見せてくれた携帯の動画を思い出して、どうやら紀子が既に元気が何をしていたか知っているような気はしていた。 昔の元気を知っている連中なら、や
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み27 BL小説 「そうか。工藤さんそういう義理難いとこあるしな。けどまあ、昨日から夏休み珍しゅうとらはったんやろ?」 千雪は頷いた。 「はあ、何かドラマの若いタレントが風邪でスケジュールに穴をあけたとかで、怒ってましたけど、ちょうど休みになったからよかったっていうか、急に軽井沢行
月夜の猫-BL小説です 霞に月の23 BL小説 「クッソ、まんまと良太の姦計にはまってしもたわ」 食事を済ませてNTVへ向かう車の中で、後部座席の千雪はボソリと言った。 「何ですか、その言い方、人聞きの悪い」 「美味いもんでつられる俺も俺やけど。ちゃっかり着替えまで用意してきとるし」 千雪は大学での上下ジャージ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み26 BL小説 「俺、何か、中山組の先代が工藤さんのそのお嬢さんに一目ぼれして無理やりみたいなこと考えてましたけど」 「今、八十歳くらいか? 先代は十年くらい前に亡くなったけど、お嬢さんの方は今もバリバリの姐御や、いう話」 良太はしかし、少し眉を寄せた。 「でも、そんなみてきた
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯9 BL小説 「四年前は、それに豪の元彼の優花ちゃんまで絡んでたから、お前、身を引くつもりで、田舎にひきこもったんだろ? けど、今は一応、お前と豪がくっついて、優花ちゃんも容認して事務所で仕事してるわけで、ああ、今は確か優花ちゃん、マサとつき合ってるんだし、お前、もうバンド
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み25 BL小説 「旧軽のカフェでしたっけ?」 ハンドルを切りながら良太は千雪に聞いた。 「前に、通りかかっていっぺん入ってみよ思うとったんや」 ナビに案内されて辿り着いた店は、ちょっとした林に囲まれた古い木造の建物だった。 ランチメニューはパスタやカレーと自家製パンが最近ちょっ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯8 BL小説 黒ずくめだがタンクトップに上着を着ているだけ、一平にしてはマシというところか。 「一平? 本人? びっくりした」 優作が言った。 「誰だ?」 元気の左隣に腰を降ろした一平が元気に尋ねた。 「同期の毛利と江川だろうが。それにお前、去年も会ってるだろ、ライブも来て
back next top Novels 「俺、何でも聞きますよ? 頼りなく思われるかもしれないけど、結
back next top Novels とにかくフィッティングルームに入ろうとした時、「良太」と呼ば
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯7 BL小説 「くっそ、こういうのってみっちゃん、わざとライブ撮影容認しているっぽいぞ」 「ああ、うまく利用しているな」 将清が頷いた。 「それよか、これどうすんだよ、こっそりじゃなくなってんじゃん」 全くこれでは、内緒でライブに出たつもりだったのに元気のことを知っている人
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)21までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)21、鬼の夏休み(工藤×良太)23、真夏の危険地帯(豪×元気)6までアップしました。 大変お暑うございます。 時節柄、皆様どうぞご自愛くださいませ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯6 BL小説 「何で一平が俺のホテル知ってんの? 一平には教えるなって浅野にも言ってあったはずだけど」 今回の上京は実のところプライベートでも極秘機密で目的も上京する事すら誰にも教えていない。 しかも一平って、冗談だろ、またぞろおかしな誤解を招くだろうが。 ただでさえ、豪の
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み23 BL小説 「京助さんと千雪さん、あれって、双方横暴でもどっちかっていうと、京助さんの方が弱いよな、惚れてる分」 一見して京助の傲慢さに千雪が振り回されているようで、その実、どちらかというと千雪の方が振り回しているようだ。 「まあ、しょうがないよな、惚れてるんだから」 良太
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯5 BL小説 無論最初から何もかもうまくいくわけではなかったが、みっちゃんが虎視眈々と準備を重ね、その広い人脈やネットをフルに使う頭脳戦略は徐々に功を奏し、メンバーは皆同格、ギャラはしっかり頭割りとなって、それぞれ意欲的に活動しつつ、現在に至っている。 元気の肩書である嘱託社
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み22 BL小説 別荘に戻ると、ダイニングテーブルに、ワインクーラーに冷やした冷酒と杉田のメモが置いてあった。 「お酒を召し上がるのなら、いくつかおつまみが冷蔵庫にあります」 良太が冷蔵庫を開けると、ナスの煮びたし、里芋の含め煮、キュウリの梅肉和えなど、工藤の好きそうな小鉢がいく
月夜の猫-BL小説です 霞に月の21 BL小説 「四月は杉田さん、ほら、軽井沢でお世話になった年配の女性だけど」 「大丈夫です。ちゃんとわかります。いろいろ杉田さんとはお話もしたので」 「四月がバースデイなんだけど、大々的じゃなくてこじんまりとでいいので、平さんみたいにお祝いしたいんだ。それで、何かいい案がない
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯4 BL小説 しかしいい加減、そんな事務所の思惑や干渉をさすがに一平もうざったく感じ始め、決定打は事務所側が売れる音楽路線云々と口にしたことだった。 「おい、みっちゃん、事務所辞めるぞ」 事務所側に対して不快そうな目を向けただけで、一平が昔のように怒鳴りつけたりしなかったの
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み21 BL小説 良太は何もかもが済んでから父親から連絡をもらって、それこそ青天の霹靂だった。 ただし、債権者しかもたちの悪い連中にいつの間にか債権が譲渡され、ガラの悪い連中が良太のアパートに押し掛けたのは、中野弁護士の誤算だったようだ。 中野から直接良太にも連絡がきたが、何か手立
back next top Novels 森村は湯のみをテーブルに置いて、しばし逡巡しているように見え
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯3 BL小説 「GENKI」のオリジナルメンバーで今はペンネーム「G」で曲を提供してくれている我が社の嘱託社員かつ株主、ただし社外秘、涼子は葛城に元気のことをそう簡潔に紹介した。 学生の頃からメンバーは涼子に頭が上がらなかった。 「GENKI」の発足は高校時代からバンドをや
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み20 BL小説 「あ、そうだ、さっきプリンとかお渡ししたんで食べてくださいね」 別れ際、良太は千雪に伝えると、駐車場から車を回してくれた公一からキーを受け取って運転席に乗り込んだ。 工藤が助手席に座ると、良太はそろそろとアクセルを踏む。 藤原と公一が頭を下げて見送るのをバック
月夜の猫-BL小説です 霞に月の19 BL小説 佳乃さんとは、そういう関係ではないって言ってたけど、未だにちゆきさんを忘れられずにってのは、工藤、哀しいぞ、それ。 小説家の千雪さんに未だに横恋慕してるっていうんでもないのなら何だよ? 考えたら、四十超えて、俺なんか相手にしてっから、工藤、結婚とかもできないんじゃ
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯2 BL小説 黒のベンツは人知れず横浜ベイアリーナを出ると、横羽線を走り山下町へと向かった。 「ふう、死ぬかと思った……涼子のやつ、いくら何でもカツラとかないだろ! このクソ暑いのに!」 ブロンドのかつらやベネチアンマスクを控室で外し、後部座席に乗り込んだギタリストは大き
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み19 BL小説 「大も最近、紫紀さんてより、京助のクローンみたいになってきたやろ?」 大学生になったという大はこころなしかスキー合宿の時より背が伸びたようで、ほぼ京助と変わらないくらいだ。 「性格は似ても似つかない感じの真面目さですけどね」 千雪は苦笑する。 「そのとおりやから
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯1 BL小説 横浜ベイアリーナで行われている真夏のライブは、人気ロックグループ「GENKI」のライブ史上でも最高の盛り上がりを見せていた。 「なんか、すごくない?」 ステージの袖で腕組みをしてステージとオーディエンスを眺めやりながらブラウススーツの浅野涼子は呟いた。 今まで
月夜の猫-BL小説です 真夏の危険地帯 BL小説 人気ロックグループGENKIの所属する会社社長、浅野涼子にそそのかされて、GENKIのライブにサプライズ出演することになってしまった元気は、身元を明かさないという条件を出したところ、真夏のライブにカツラやマスクをつけて演奏したものの、地獄の熱さを耐え忍んだにもか
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み18 BL小説 「やだ、仲間割れ? そういえば、スキーに来てた麗しの茶道の若先生は?」 理香が思い出したように聞いた。 「仕事です。茶道の若先生はサブで、本業はクリエイターですから」 きっぱりと良太は答えた。 「ああら、残念。またお会いしたかったのに」 理香が大仰に肩を竦める。
月夜の猫-BL小説です 夏を抱きしめて(ラスト)24 BL小説 もう一泊くらいできないのかとおずおずと尋ねてみた豪に、「店があるからな」と思った以上にすげない元気の答えが返る。 ゴミになったのと同じフォーマルスーツをデパートで豪に買わせ、将清に電話をしたら引き出物は会社に持って行ってるというので、会社に寄って受け取った。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の18 BL小説 辛うじて十時前にオフィスに駆け込んだ良太は、鈴木さんと森村の声がするキッチンを覗いた。 「おはようございます、すみません、手伝います」 鈴木さんが食器を洗い、森村がキッチンペーパーで拭いてワゴンの上のトレーに置いている。 「あ、いいですって、良太さん、自分の仕事や
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み17 BL小説 「まあな。しかし、今夜はまちごうたな。ジャージに黒縁メガネで来なあかんかった」 「は?」 良太は千雪の顔を見て、小首を傾げる。 「こんだけわけありなセレブや俄かセレブが集っとるんや、何が起こるかわかれへんやろ? 名探偵がおらんと話にならん」 「ああ、はいはい、で
月夜の猫-BL小説です 夏を抱きしめて23 BL小説 「ここに元気のサインをくれ」 みっちゃんは取り出した用紙を指でトントンと示す。 「え?」 渡された紙をまじまじと見た元気は、「何だよこれ、契約書って…」と喚く。 「今回の件のような迷惑を被ることがないよう、お前にはそこにサインをして、晴れてうちの社員になる義
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み16 bl小説 「せやな。あとはほら芸能人や業界関連もいてる」 良太はそれらしい一団に目をやった。 「ああ、浜田しおりとか岸紘一郎とか、大御所俳優ですね。あれってスズキエンターテイメントの鈴木社長でしょ」 スズキエンターテイメントは古くからの大手芸能プロダクションで、良太もそ
月夜の猫-BL小説です 夏を抱きしめて22 bl小説 「ぐちゃぐちゃ言い訳しながら、あの女とよろしくやってたのはお前だろーが」 すると今にも泣きそうだった豪の表情が変わり、豪はクスリと笑う。 「……何がおかしいんだ」 「たまには元気も妬いたりするんだ」 今度は元気の頭が沸騰する番だった。 「誰がだよっ! 俺は
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)17までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)17、夏を抱きしめて(豪×元気)21、鬼の夏休み(工藤×良太midsummer)15までアップしました かぜをいたみ(京助×千雪)46は、不定期更新になっております
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月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった69 BL小説 「今度は、少しずつ間を詰めて、絶対ポカしないつもりだったんだ。でも、あの金髪野郎が現れて、俺、頭に血が昇っちまって、つい、告るの早まったのかも」 井原はやはり響しか見えていないらしい。 「お前さ、外野のことも少しは考えた方がいいんじゃね?」 「外
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった68 BL小説 完全に酔っぱらって口にしている言葉が理解できていないのが元気にもわかった。 「こんな田舎で、男同士で、教員同士で、リスクが高いって、まあ、そりゃそうだなって」 響はハハハと笑う。 笑うのだが涙がぽろぽろ零れるのを拭いもせずまた酒をマグカップに
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった67 BL小説 ふと手にしていた携帯に気づいた響は、誰かの言葉が聞きたくなった。 酔っているのでためらいもなく、一つの番号を押した。 五回目のコールで、声が聞こえた。 「響さん? どうしたんですか? こんな時間に」 「なんかさ……深淵の底から俺が呼ばれて
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった66 BL小説 女性の方が結構年上でというだけで結婚なんてあり得ないとするようなこの街で、高校教師が、しかも男同士がつきあうとか、考えも及ばないに違いない。 先生なんて呼ばれるような人間じゃないと思っていた響だが、いつの間にかそう呼ばれることに慣れてしまった。
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった65 BL小説 放課後は理科系の会議があるらしいし、今日は井原の顔を見ないで終わりそうだ。 もっとも響こそ、井原とどんな顔をして会えばいいかわらからなかったから、少し胸を撫でおろしていた。 ぼんやりしていたので、ドア口に人がいるのに気づかなかった。 「和田
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった64 BL小説 「へいへい。なんかこうこの部屋息が詰まりそうだから、ちょっと緊張をほぐそうとしただけじゃん」 お茶らかした寛斗のセリフを聞くと、響もこれは一息ついた方がいいかと立ち上がった。 「ようし、ちょっと休憩しよう。肩に力入り過ぎてる気もするから、寛斗、お
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった63 BL小説 何も聞かずに俺の手を握っていた井原の手はすごく温かくて。 ポトリとひとしずく、下を向いていた響の目から床に落ちた。 ほんとはすごく好きだった。 だから俺なんかといちゃいけないやつなんだって。 またひとしずく、落ちた。 もう何年も胸の奥に
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった62 BL小説 だが所詮モラトリアムの中での思いの延長だ、お前の好きは自分と同じ好きではないかも知れない、響が口にしなかったのは、井原のためだと……。 いずれは井原も誰か愛する人に巡り合って、秀喜のように結婚するのだろうと。 十年越しの初恋なんかもう忘却の彼
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった61 BL小説 こいつらしくもなく何をそんな苦しそうな顔をしているんだ? 「響さん、告られたって、ほんとですか?」 「へ?」 響の方に顔を向けて、まじまじと見据える井原に、響はポケッとした顔になった。 「俺が? ああ、ひょっとして、寛斗のヤツのことか?」
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった60 BL小説 三号に描かれたのはひまわりで、この店では初めて風景画以外の絵となるが、他の風景画と空気感が同じである。 「いいなあ、これベネチアの匂いがする」 「さすが、響さん、感覚的! これどの絵と取り替えたらいいと思います? これ以上飾ると窮屈そうだし」
月夜の猫-BL小説です #post_titleBL小説 「ああ、どうだった? 撮影は」 「はい、順調に終わりました。小木さんて、作家さんなのに声がよくて、気さくな人で、よくわかるように説明してくれて、俺も伊万里焼きのレクチャーなら任せとけって感じです」 良太は案外穏やかな工藤の声にほっとしたらしく、幾分声を弾ませた。
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった59 BL小説 「あたしも聴きたい! 本物のピアノ!」 紀子が言った。 「アップライトなら、入らないか?」 「え、ここにか?」 井原の発言に元気は考え込んだ。 「お前無茶なこと言うなよ」 響は呆れたが、元気はうーんと唸ってから、「何とかなるかも」と言う。 「
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった58 BL小説 かぐわしい香りのコーヒーが鼻孔をくすぐると響は全身がほっとするような気がした。 「一日の仕事上がりに元気のコーヒーって、ほっとするよなあ」 隣で井原が響が考えたようなことを口にした。 「そういえば元気、相談って何?」 一口温かいコーヒーを飲ん
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった57 BL小説 エチュードの一番から三番を弾いたあと、響はスケルツォの三番を弾き始める。 細かな音が目に見えぬドレープを作り広がってゆく。 古いピアノは時折響の耳にかすかな歪みを感じさせるが、それもまた音の羅列に表情を与えていく。 最後の音を弾いてからふ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった56 BL小説 確かに青山は技巧的には巧い。 だが、曲の理解度でいえば、この曲に関わっている時間が長いだけ寛斗の方が高いだろう。 それに。 瀬戸川は寛斗と一緒にコンクールに出たいに違いないのだ。 「技巧を取るか、曲の理解度を取るかでいえば、多少下手でも
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった55 BL小説 そして忘れていたシーンの中に井原がいた。 喜怒哀楽がはっきりしていると生徒が言っていたが、すぐに思い浮かぶのは笑っている井原で、怒ったり泣いたりと言ったシーンも思い出されて、そういえば忙しいやつだったと響は苦笑する。 そんな昔の思い出に浸
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった54 BL小説 遅かれ早かれ、そうなることはわかっていたさ。 黒板消しを置くと、響は手をぱんぱんと払い、準備室に入った。 考えごとをしていたので、あっという間にガツガツと弁当を平らげた響は弁当のからをビニール袋に突っ込みゴミ箱に放ると、音楽室を出た。 そ
月夜の猫-BL小説です 夢見月32 BL小説 せっかく珍しくこのあとの予定がないのにな。 工藤がそんなことを考えていると、電話が鳴った。 結局、鈴木さんが帰っていくまで、何件かの電話で時間が潰された。 秋山とアスカは、その間に工藤と夕食を一緒にする約束をして、次の打ち合わせにテレビ局へと向かった。
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった53 BL小説 「キョー先生は井原先生よりなんか年齢超えてるって感じ」 「ええ?」 瀬戸川の言葉に響は首を傾げる。 「だって、制服着てそこにいてもおかしくないっていうか」 「何、俺ってオッサンになってもガキっぽいってこと?」 くすくす笑いながら瀬戸川は、「顔
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった52 BL小説 いつもの井原だ。 土曜日、急にクラウスが現れて、しかも井原といる時に、響は内心焦り、イラついた。 井原は響の説明を額面通り受け取ったわけではないような気がした。 何か言いたげな顔をしていたが、今日のあのようすではさほど気にもしていないのだ
月夜の猫-BL小説です ぶなの森11 BL小説 「お疲れ様でした~」 スタジオを出たところで、良太に声をかけてきたのは花束を抱えた菜摘だった。 スタジオでの撮影も無事クランクアップし、良太もやっと肩の荷が下りたはずだが、どうも気分の方は上昇する気配がない。 「菜摘さん、お疲れ様でした。またドラマの打ち上げ
back next top Novels まあ、器にカリカリを入れるくらいだから、工藤にもできないこと
back next top Novels 「よかったに決まってるだろ。さっきの見たろうが。ここについたの
月夜の猫-BL小説です 夏が来る43(ラスト) BL小説 「だから、何で去年より人数が増えてるんだ!」 元気が溜め込んでいた鬱憤を晴らすかのように声を上げたのは、中央道をしばらく走ったところの諏訪湖サービスエリアでのことだった。 「まあまあ、俺ら車別なんだからいいじゃん」 井原が頭が沸騰しそうな元気を宥め
月夜の猫-BL小説です ぶなの森9 BL小説 良太の心にわだかまりを残したまま、工藤は東京に戻ってしまった。 だが良太は最後のパーティが終わるまでここにいなくてはならなかった。 海棠役の流とヒロインを慕う青年佐原が森でヒロインを探すシーン、ヒロインが池に浮かんでいるのを見つけるシーンの撮影が終わり、ロケ
月夜の猫-BL小説です 月澄む空に149 BL小説 そしてどうも工藤としても鈴木さんには頭が上がらないらしいことも良太は知っている。 「でもさ、あのオフィスで、平然としていられる鈴木さんこそ、人格者だと思わない?」 「それ、俺も昔思たわ。鈴木さん、何があっても動じないって感じで、美味しいお茶とか出してくれ
月夜の猫-BL小説です ぶなの森8 BL小説 現れたのは工藤だった。 監督と話をしながら、良太と菜摘がこちらに歩いてくるのを工藤は見ていたのである。 そこへ、男が現れた。 「へえ、あんたが噂の工藤か。なるほど、社長が社長だからな、その大事な部下に女優のコマシ方でも教え込んでいるわけだ」 「あいにく忙し
back next top Novels 「京助ってば、ちょっとマジ過ぎない?」 香坂が肩をすくめる。
月夜の猫-BL小説です ぶなの森7 BL小説 どうせ良太がイタリアにいくことは当分ないのだから、余計なことを考えなくて済むだろう、と。 だが、よもや案外早く良太にそれが知れることになろうとは、工藤も思っていなかった。 「嫌だ…いやだってば! バカやろ…」 「何が、嫌だって?」 そんな工藤の言葉が合図のように
back next top Novels 「研修は四月からやろ? スキーは行けるな」 千雪が良太に聞い
月夜の猫-BL小説です 月澄む空に(工藤×良太)146まで更新しました BL小説 月澄む空に(工藤×良太)146、夏が来る42 まで更新しました 2024Summer、 夏にちなんだエピソードを順次アップしています ぶなの森(工藤×良太22)6 夏のエピソードです。 かぜをいたみ87(ラスト) 最後までお
月夜の猫-BL小説です ぶなの森6 BL小説 「あいつ……、よほど、お前がキモイといっていた小林千雪だって言いたかったですよ」 戻ってきた千雪に思わず良太はぶちまける。 「あの子、工藤さんにベッタリなんやて? 良太、それで面白くないわけや」 「誰に聞いたんですか~そんなこと。わかった、アスカさんだな」
月夜の猫-BL小説です 月澄む空に146 BL小説 「そうだ、良太さん、ニューヨーク行く前、壮行会やりましょうよ」 天野が語気を強めて言った。 「そんな大げさな。たかだか三か月なのに」 「壮行会という名を借りた飲み会」 真面目にそんなことを言う天野に、良太はまた笑った。 「わかりました」 「約束ですよ」 「そ
月夜の猫-BL小説です ぶなの森5 BL小説 「あの女とは何でもない」 工藤は言うのだが、どうやら今はそうだとしても昔はよろしくやっていたらしい。 まだほかにもあちこちに工藤の女がいるに決まっている、と言ったのは、青山プロダクション所属のイケメン俳優、小笠原だ。 そんなことをいわれると、良太としては工藤がイタ
月夜の猫-BL小説です ぶなの森4 BL小説 「良太ちゃん、お弁当食べよ」 菜摘が弁当を手に良太に声をかけた。 「あ、はい。ちょっと待ってください」 良太が手配したロケ弁をスタッフが配ってくれて、みんな各々アウトドア用のストーブの周りに陣取っている。 夏とはいえ、東京の暑さとはうって変わってここは別世界のよう
月夜の猫-BL小説です 月澄む空に145 BL小説 「え、でもオフとかに帰ってくるんでしょ?」 浩輔が思い切り端折って佐々木に聞いた。 「俺にはオフとか、ないで?」 すかさず佐々木がシャープに返答する。 「あ、いや、そのう、盆暮れ正月?」 暗に沢村のオフの時には一緒に帰るのだろうという質問を、浩輔は言い直した
月夜の猫-BL小説です ぶなの森3 BL小説 小林千雪といえば、時折警察にも知恵を貸して解決した事件も多々あるミステリー作家として巷では知られているが、助教としてT大法学部に在籍している。 その彼を一躍有名にしたのが、分厚い黒渕メガネとぼさぼさの髪、超ダサダサのファッションセンスで、学内の女子学生の間では、ダサ
月夜の猫-BL小説です 月澄む空に144 BL小説 良太の周りで、何か大きな波がやってきて全てを流してしまうような、そんな思いが徐々に大きくなっていくような気がしていた。 そして良太自身もまたその波にのまれようとしている。 その波は工藤やこの青山プロダクションにとっても何かしら変化をもたらすのだろうと思われ
月夜の猫-BL小説です ぶなの森2 BL小説 良太も業界内では彼女の不倫の噂は耳にしていたが、今のところ噂どまりなのは、相手の父親である代議士からの圧力と局側による彼女の所属する大手事務所Aプロへの忖度もあり、マスコミやスポンサー側へはもらさぬよう関係者に厳重に緘口令がしかれている所以だった。 昨今、不倫には
月夜の猫-BL小説です ぶなの森1 BL小説 青森県と秋田県にまたがって数千年前から存在しているぶなの原生林は、世界最大級といわれている。 世界遺産に登録されたこの白神山地には、貴重な動植物が生息しており、手つかずの自然が広がっており、真夏というのにひんやりとした空気は動きを止めていた。 数日前からこの地で