chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
創作小説屋 https://blog.goo.ne.jp/shou0530

創作小説置き場。真面目なBL物語。高校同級生カップルの29年愛等。完結・読切・色々。

尚(創作小説屋)
フォロー
住所
神奈川県
出身
神奈川県
ブログ村参加

2015/06/15

arrow_drop_down
  • BL小説・風のゆくえには〜親切な人(前編)

    【慶視点】ここ数週間、浩介の様子がおかしい。外に出たがらない。近所の買い物は避け、遠くに行こうとする。しかも夜に出かけようとする。前に理由を聞いた時には「なんとなく…」と返され、その時は深く考えもせず、それ以上のツッコミはしなかったけれど、今日は、普段は歩きで行っているスポーツジムに「車で行く」と言いだしたので、さすがに見逃せなくなった。「お前、本当は何かあるだろ?」「…………うーん」聞いてみると、浩介は困ったように、こめかみのあたりに手をやった。「ちょっと……頭痛いというか……」「は?」頭痛い?「それならジム行ってる場合じゃないだろ」「あー……、て、わ、慶っ」力ずくでソファーに座らせ、おでこに手を当ててやる。「……熱はないな」「…………うん」コクリとうなずいた浩介。顔色も悪くはない。「どんな風に痛い?」...BL小説・風のゆくえには〜親切な人(前編)

  • お礼

    こんばんは。今日がいい夫婦の日だということを今朝同僚に言われて気がついた私……。帰宅後、書きたい!って思って、今、gooブログにログインしたところ、どなたかが今、「片恋」を読んでくださっていることに気が付きました。わーん😢更新止まっている中、過去のお話を読んでくださってありがとうございます!私は先日、嘘の嘘の嘘と閉じた翼を数日かけ一気読みしました。自分で書いたものでハラハラしている私、めっちゃ安上がり。地産地消。ええと、数日前から、慶と浩介の書きかけているお話がありまして。亀の速度なので何日かかるかわかりませんがそのうちあがります。いつもの日常話ですが💦どうぞよろしくお願いいたします。(あまりにも更新なさすぎて、「この人ブログやめちゃったのかな?」と思われてるかも!?と思い...お礼

  • BL小説・風のゆくえには〜満月の誕生日

    【慶視点】2022年9月10日土曜日。今年の浩介の誕生日は、浩介のお母さんが手料理をごちそうしてくれることになった。コロナ禍の影響で、会えても荷物の受け渡し程度だったので、一緒に食事をするということ自体、久しぶりだ。しかも誕生日当日を一緒に過ごすことも、ものすごく久しぶりだ。「せっかく今年は土曜日なのに。私もお父さんも、あと何回、あなたの誕生日をお祝いできるか分からないのに……」と、お母さんに泣きつかれたそうで、浩介も渋々行くことを了承したらしい。「二人とも長寿家系なんだからまだまだ大丈夫でしょって思うんだけどね……」そんなことを言いながらも、昔ほどの拒否反応が出ていないことにホッとする。せっかく築き上げてきたご両親との良好な関係、保っていきたい。「おれもなるべく早く行くから」おれは職場から電車で直接、浩...BL小説・風のゆくえには〜満月の誕生日

  • 生存確認

    こんばんは。皆様お元気でいらっしゃいますか?私は元気です。本当に月日が経つの早いですよねえ。最近、「あいじょうのかたち」を読み返していたのですが……あれ、2015年の話なんですよねえ。慶たち、41歳の年だったけど、今年もう48歳ですわ。あの時もうすぐ中学3年生だった南の妹の西子ちゃん。今や大学4年生です。「現実的な話をします」も読み返してたんですけど……あれが2016年の話で。あの時小学4年生だった陽太君、もう高校一年生ですわ。野球部の強い公立高校に進学しましたよ。なんて、読むだけで何も書いていない日々。いい加減書きたい。お休みの原因となった家族の怪我はほとんど良くなってきました。が、まだ在宅勤務が続いています。イコール、私がパソコン使えない。イコール、続きが書けない……来週は浩介の誕生日もあるので、なん...生存確認

  • おやすみのおしらせ

    (この投稿は後日取り下げます)週に一度、更新をするはずだったのですが……家人が怪我をし、入院→手術→退院で、サポート生活がはじまったため、しばらく更新をおやすみすることにします。落ち着いたら更新します。待っててくださる…という奇跡的な方がいらした場合に備えて、一応ご報告でした。私は元気です!この入院手術関係で見聞きしたことはいつか小説に還元しようと思ってます( ̄ー ̄)ニヤリにほんブログ村BLランキングランキングに参加しています。よろしければ上二つのバナーのクリックお願いいたします。してくださった方、ありがとうございました!「風のゆくえには」シリーズ目次1(1989年~2014年)→こちら「風のゆくえには」シリーズ目次2(2015年~)→こちらおやすみのおしらせ

  • BL小説・風のゆくえには〜80歳になっても3

    【滝視点】ノートを借りたことをきっかけに、話しをするようになった『桜井忠雄』という男は、学校内での評判は芳しくなかった。「こわい」「感じが悪い」と、いうのが総評だ。「話してみると、そんなことないよ」と言って、みんなを桜井の元に連れていき、話の輪の中に入れてみたのだけれども、桜井の無表情さや、少し強めの話し方にみんな引いてしまい、結局誰も近寄らなくなってしまった。(損してるよなあ……)話は理路整然としていて分かりやすいし、楽しいし、背も高くて、スッと通った鼻梁で、容姿も申し分ないのだから、もう少し愛想よくしたらみんなと仲良く……(あ、でも、それは、本人次第か)隣の席でその綺麗な横顔を見ながら、はたと思いつく。(桜井が人づきあいしたいと思っていないのならば、別に損はしてないんだよな。むしろ、したくないと思って...BL小説・風のゆくえには〜80歳になっても3

  • BL小説・風のゆくえには〜80歳になっても2

    【桜井視点】東京の高校、東京の大学に進学したのは、親の見栄のためであり、自分の希望ではなかった。だが、実家を出るためなら理由は何でもよかった。勉強をすることは苦ではない。知識を頭に詰め込んでいる間は、余計なことを考えなくてすむ。人と接する必要もない。母の弟夫婦が営んでいる下宿屋の住人は、比較的おとなしい人間が多く、干渉してくる奴もいなかったので、居心地は良かった。学校でも、はじめこそ絡んでくる奴はいたが、適当にあしらっていたら、そのうち誰も近寄ってこなくなった。このまま静かに学生生活を送れるものだと思っていたのだが……「桜井ー桜井!」「…………」最近、振り返るといつもいる気がする「たきあきら」という男。大きめの目は、何が楽しいのか、いつも笑を浮かべている。「課題、やった?」「ああ」「見せて見せてー」「……...BL小説・風のゆくえには〜80歳になっても2

  • BL小説・風のゆくえには〜80歳になっても1

    【滝視点】奴と初めて話したのは、大学に入学して一ヶ月ほど経った日のことだ。講義で聞き逃した箇所を友人達に聞いて回ったところ、誰も分からず、「『銅像』に聞いてみよう」と、提案され、僕が代表して奴に聞きにいったのが、きっかけだった。『銅像』というのは、奴の密かなあだ名だ。無表情で誰とも話さず、講義中もジッと固まっている『銅像』。奴はいつも最前列で講義を聞いているので、きっと分かるに違いない。「ちょっと教えてほしいんだけど」「…………」一人で教室のイスに座っていた『銅像』は、僕の声に反応し、目線をふいっとこちらに向けた。その瞳にドキッとする。前々から、綺麗な横顔だな、と思って『銅像』のことは見ていたけれど、正面から見るのは初めてで……(わ……、なんか、黒い……)黒々とした瞳。深い深い漆黒。思わず言葉を失って黙っ...BL小説・風のゆくえには〜80歳になっても1

  • BL小説・風のゆくえには〜浩介・スパダリへの道

    【浩介視点】4月28日は慶の誕生日だ。翌日が祝日なので、夜ゆっくりできるのが有り難い。今年は久しぶりに外食を……と提案してみたけれど、「何時に帰れるか分からない」というので、外食は翌日に回すことにして。当日夜は、慶のリクエストに応えて、ハヤシライスのオムライスにした。卵を大量に使った贅沢オムライスだ。「おー!これこれ!」これが食べたかったんだよ〜と嬉しそうに言う慶の言葉に、幸せと懐かしさで体中が満たされてくる。『すげー!これが家で食えるなんて!』今から四半世紀前。初めてこのオムライスを食卓に並べた時も、慶はそう言って喜んでくれた。一人暮らしを始めた当初、おれは料理の手際も悪く、本当に簡単なことしかできなかった。就職したてで忙しく、改善策を考える余裕もなかったのだ。対して慶は、子どもの頃から、仕事をしているお母さ...BL小説・風のゆくえには〜浩介・スパダリへの道

  • BL小説・風のゆくえには〜バレンタインの夜の話

    【浩介視点】慶にご飯を食べながら仕事をすることを勧めたのは2週間ほど前のことだ。すごい早食いで食事を終わらせて、あわてて持ち帰った仕事をはじめる、ということが何度かあったため、それを止めさせたかったからだ。健康面を心配して、ということももちろんあるけれど、正直、せっかく作ったものを、ろくに噛まないで、味わいもしないで食べられてしまうことが虚しい、ということも大きい。けれども……(何食べてるか分かってるのかな……)iPadを使って英語で書かれた何かの資料を読みながら、味噌汁を啜っている慶……。今日の味噌の配合は我ながら完璧だと思うんだけど……味してる?(以前は……)以前は、食事中に今日あった出来事を報告しあっていた。でも今は「黙食」が絶対なので、なんの話もできない。それもあっての「仕事しながら食事してもいいんじゃ...BL小説・風のゆくえには〜バレンタインの夜の話

  • BL小説・風のゆくえには〜30周年付き合いはじめ記念日

    【南視点】12月23日は、姉と兄にとって特別な日だ。姉は「結婚記念日」。兄は「付き合いはじめ記念日」。しかも今年は、兄と浩介さんのところは、記念すべき30周年だったりする。紆余曲折ありながらも、ずっと揺るぎなく思い合っている二人。(今日はどんなお祝いしてるのかな……)ホテルでお食事とか?最近、変異株とやらの動向が気になるものの、制限も緩和されて外食もしやすくなってるし……自慢話を聞いてやろうと思って、夜の8時に浩介さんにLINEを入れてみた。が、『今日はおうちご飯だよ。もう準備万端。仕上げを残すのみ』『でも、慶はまだ帰ってきてない』って。ありゃま。「記念日にも残業って、感じ悪いねー」速攻でビデオ通話をかけて言うと、浩介さんは、あいかわらずのフニャフニャ笑顔になった。『しょうがないよ。忙しいお仕事なんだからさー』...BL小説・風のゆくえには〜30周年付き合いはじめ記念日

  • BL小説・風のゆくえには〜素顔の日々

    【溝部視点】12月1日夕方。『よつ葉ちゃん、3歳のお誕生日おめでとう』と、高校時代からの友人、桜井浩介からご丁寧にメッセージが入った。人のうちの娘の誕生日まで覚えてるなんて、マメな奴だよな……せっかくだから、顔見て話すかーという流れになり、その日の夜10時過ぎ、Zoomで繋がった。数ヶ月に一度、仲の良いメンバーと「オンライン飲み会」をしているため、桜井の顔を見るのも8月末以来だが……『久しぶりー』「…………あれ?」にこやかにこちらに手を振った桜井に何か違和感を覚える。何でだろう?『なに?』「あー……いや」なんだろう?この違和感……「ええと……もしかして痩せた?」『え、そうかな。体重測ってないから分かんない……」いいながら、桜井は後ろを振り返った。『慶、おれ、痩せた?』『いや……どうだろう。毎日見てるから分かんね...BL小説・風のゆくえには〜素顔の日々

  • BL小説・風のゆくえには〜握手大作戦

    慶と浩介、高校3年生の5月のお話です。【慶視点】5月の連休明け、浩介から「今度の日曜日、アスレチックに行こう」と誘われた。浩介はバスケ部員ではあるものの、運動全般あまり好きではないので、バスケ以外の運動系の遊びに誘ってくるなんて珍しい。理由を聞いたら、同じバスケ部の篠原から、アスレチックに行った話をされて、行きたくなったとのことで……「でも、おれ、たぶん色々できないから。慶、助けてね?」「おー任せとけ!」なんて約束をして、日曜日が来るのを楽しみにしていた。……けれども、あいにく前日からの雨は、日曜日もまったく止む気配はなく……。さすがに諦めて、おれの部屋で遊ぶことにした。「ま、テスト終わったら行こうぜ?」「うん……でも……」今日行きたかったのに……と、ブツブツ言い続けている浩介。これも珍しい。「珍しいよな?」思...BL小説・風のゆくえには〜握手大作戦

  • BL小説・風のゆくえには〜贅沢な休日

    【慶視点】2021年8月10日(火)せっかく浩介も夏休み中で、おれも休務日だというのに、持ち帰った仕事とその他諸々に一日潰されることになってしまった。「おれも読みたい本あるから気にしないで?」浩介はいつものようにそんな優しいことを言ってくれる。「そもそも緊急事態宣言中だし、熱中症警戒アラートも発令されてるから、どこにもいけないしね?」「…………」その優しさに甘えてばかりではいけない、と分かってはいるけれど、この異常事態の中では、もう甘えるしかない。「…………。夕方までには終わらせるから、涼しくなったら散歩行こうな?」「お散歩!いいね!」パンッと手を叩いて目をキラキラさせてくれた浩介の期待を裏切るわけにはいかない。集中するために、パソコンのある部屋とリビングとの仕切りも閉めて、画面に向かった。膨大な資料に目を通し...BL小説・風のゆくえには〜贅沢な休日

  • 15周年

    2006年8月10日21時35分に、このブログ始まってます。ってことは、本日、15周年です。でも、15年ずっと書いていたわけではないので、15周年というのは語弊がある気はする……けど、まあ、一応、節目ということで。お付き合いくださっている方、本当にありがとうございます!ホントは、慶と浩介で短いの上げるつもりだったのですが、一文字も書けんかった……「今日」の話を書こうと思ってたんです……いつものどうでもいい日常話なんですけどね……忘れないうちに、そのうち書こうと思います(そういって忘れたネタがいくつかあるから気をつけないとです😓)それにしても……私、この数年で3回くらい?休止宣言してますね……すみません……は、恥ずかしい……💦💦いやあ…………性格的に、1か100かっ...15周年

  • BL小説・風のゆくえには〜理想の髪型

    【浩介視点】髪を切ってほしい、と慶に頼まれた。最近の慶は、忙し過ぎて美容院に行く時間も取れないのだ。でも……うちの慶さん、芸能人バリの美青年なので、長めの髪型もよくお似合いなのです……。少々くせっ毛なので、目にかかるくらいの前髪は、ふわりと横に流れている。後ろは首が隠れる長さまで伸びているけれど、少しも違和感はない。(この髪型もかっこよくていいんだけどなあ……)若い頃ならまだしも、この年齢でこの髪型が似合うって、やっぱり慶はただ者じゃない。なんてことを言うと、見た目に関して何か言われることが嫌いな慶の機嫌が悪くなるのは確実なので、切らない方向にいくように、聞いてみる。「職場で長いとか言われたの?」「言われてない」「じゃあ、無理して切ることないんじゃない?」「いや、さすがにここらへん鬱陶しくて」襟足を掴んだ慶。汗...BL小説・風のゆくえには〜理想の髪型

  • BL小説・風のゆくえには~続々・二つの円の位置関係追加3

    今回、全面下ネタです。苦手な方ご注意ください。お読みくださるという有り難い方、背後にお気をつけて……【享吾視点】挿入する前には、きちんとほぐした方が良い。と、ネットに書かれていた。でも、初めから突然入れても全然大丈夫だった、という書き込みも見つけてしまった。個人差があるということだろうか……そうなるとやはり、初めての時は用心してきちんとほぐすべきだろう。以前、桜井も「初めての時は痛かった」と言っていたし……それから、中を綺麗にしてからしたほうが良い。という話もネットに書かれていた。衛生面の問題に加え、シーツにその汚れがついてしまうことがある、ということも理由らしい。でも、桜井はそれでシーツを汚したことは一度もなく(射精の汚れはあるそうだが)、「そっちを気にしたこと一度もない」そうだ。こちらも個人差、ということだ...BL小説・風のゆくえには~続々・二つの円の位置関係追加3

  • BL小説・風のゆくえには~続々・二つの円の位置関係追加2

    【哲成視点】『セックスって、愛を確かめ合うためにするものじゃない?おれ達はしても子供が出来るわけでもないから、余計に、純粋に、そのためだけにするわけでしょ?』『だから、お互いの愛が伝わることが一番重要で』『だから、この形じゃないとダメってことは絶対なくて』『愛の形はそれぞれだから』2ヶ月前、挿入行為にまで行き着いていないオレたちに対して、桜井は、とても幸せそうにそう言ったのだ。だからオレたちは、二人で決めた。「ゆっくりでいいよな?」これからは毎日一緒にいられる。だから、何も急ぐことはない。オレ達のペースでオレ達らしく、繋がっていければいい、と……(でも、正直、「そろそろ……」って思わないでもなかったんだよなあ……)最近、夜の「イチャイチャ」のたびに、(今日こそは……?)という緊張感が走っていたというかなんという...BL小説・風のゆくえには~続々・二つの円の位置関係追加2

  • BL小説・風のゆくえには~続々・二つの円の位置関係追加(慶視点)

    登場人物村上哲成(むらかみてつなり)色白、眼鏡、身長159cm、某電機メーカー子会社勤務。中学からの同級生・村上享吾と長い長い回り道した末、ようやく一緒に住むことになった。は、いいけれど……村上享吾(むらかみきょうご)容姿端麗。人目を引くイケメン。身長178cm。会計事務所を開業したばかり。ずーっと思いを寄せていた哲成とついに……ということで、積もりに積もったものがあるのですが……渋谷慶(しぶやけい)小児科医。中性的で美しい容姿に反して性格は男らしい。身長164cm。哲成とは小・中・高と同じ学校。『風のゆくえには』本編主人公1。桜井浩介(さくらいこうすけ)フリースクール教師。慶の親友兼恋人。現在慶と同棲中。身長177cm。『風のゆくえには』本編主人公2。2019年10月中旬のお話。【慶視点】小学校中学校高校、と...BL小説・風のゆくえには~続々・二つの円の位置関係追加(慶視点)

  • BL小説・風のゆくえには〜初バレンタイン(慶視点)

    登場人物渋谷慶:高校1年生。天使のような容姿だが性格は男らしい。親友浩介に密かに健気に片想い中。桜井浩介:高校1年生。表はニコニコ裏はものすごい後ろ向き。人生初の友人である慶と、ずっと親友でいられることを願っている。浩介と慶、まだ高校1年生の初めてのバレンタインのお話。時系列的には「遭逢」と「片恋」の間。「初バレンタイン(浩介視点)」を先にお読みいただけると嬉しいです。----【慶視点】2月に入ってすぐの日曜日、昨年結婚して家を出た姉がうちに遊びにきた。毎年恒例のバレンタインの手作りケーキを持って。「慶は、お目当ての子から本命チョコもらえそうなの?」姉にニコニコと聞かれ、「あー……」と詰まってしまう。姉はおれが片想いしていることは知っているけれど、まさかその相手が親友である男子高校生だとは思っていない……「それ...BL小説・風のゆくえには〜初バレンタイン(慶視点)

  • BL小説・風のゆくえには〜初バレンタイン(浩介視点)

    登場人物桜井浩介:高校1年生。表はニコニコ裏はものすごい後ろ向き。人生初の友人である慶と、ずっと親友でいられることを願っている。渋谷慶:高校1年生。天使のような容姿だが性格は男らしい。親友浩介に密かに健気に片想い中。浩介と慶、まだ高校1年生の初めてのバレンタインのお話。時系列的には「遭逢」と「片恋」の間。まだ浩介が慶のことを心の中では「渋谷」と呼んでいた時代です。----【浩介視点】「桜井君っ」いきなり呼ばれ、振り返ると、真っ赤な顔をした他校の女の子がいた。(なんでおれの名前知ってるんだろう……)不思議に思いながら、「なあに?」と聞いてみると、女の子はさらに真っ赤になっていった。「渋谷君、今日もくる?」「??」渋谷の友達だろうか?今日はバスケ部の交流試合のため、隣の花島高校に来ている。渋谷はいつも試合を見に来て...BL小説・風のゆくえには〜初バレンタイン(浩介視点)

  • BL小説・風のゆくえには〜ごくらくごくらく

    【慶視点】浩介の実家から電気毛布をもらった。現在、お母さんは「終活中」だそうで、あちこち片付けていて、処分する前に浩介に必要かどうか聞いてくる。2回ほど、高級な鍋とお皿を何も言わずに送り付けてきたため、浩介が「いるかどうか聞いてから送ってほしい」と言ったら、毎週のように品物が写った写真がメールで送られてくるようになったのだ。「断り続けてるけど、さすがに一つぐらいはもらわないとだよね……」と、浩介が頭を抱えているので、一緒に写真を見ていたところ、発見したのがこの電気毛布だった。「あ~~極楽極楽」風呂上がり。ソファに座って本を読んでいる浩介の膝枕。温かい毛布。これを極楽といわずして何を極楽といおう。「ごくらくごくらく……って何だっけ?」浩介がおれの言葉を拾って、首をかしげた。「ごくらくごくらく……」「って、極楽は極...BL小説・風のゆくえには〜ごくらくごくらく

  • BL小説・風のゆくえには〜頬に触れる

    【浩介視点】早いもので2020年ももうすぐ終わりだ。昨年の今頃は、まさかこんな日々が訪れるなんて、誰も思いもしなかっただろう。「慶、寝ちゃう前にお風呂入ってくれば?洗い物たいしてないから大丈夫だよ?」「あー……サンキュー……」「パジャマ用意しておくから、すぐ入って?」「おー……」「今日、冬至だから柚子浮かべてるよ」「おー……そりゃいいなー……」ご飯を食べながら今にも寝そうな慶に、食べ終わったのを見計らって声をかけると、慶が素直にお風呂に向かった。(大丈夫かな……)その後ろ姿に不安を感じる。世の中に蔓延している新型感染症の患者数は、増加の一途をたどっている。医療現場で働く慶の緊張感は大変なものだ。あの万年キラキラオーラ全開の渋谷慶が、今は帰宅する頃にはオーラも半減して、疲れた顔を……(って、顔、半分しか見てないけ...BL小説・風のゆくえには〜頬に触れる

  • BL小説・風のゆくえには〜同窓会・スパダリランキング

    【溝部視点】高校2年時のクラスはとても仲が良く、マメなクラス委員長・長谷川のおかげもあって、5年に一度の同窓会はいまだに続いている。今年はその開催年に当たるけれど、このコロナ禍で、さすがに中止か……と思いきや、「今年はZoomでやるから手伝ってくれ」と、委員長から依頼された。「どうせ溝部はオンライン飲み会やりまくってるだろ?」と、決めつけられての依頼だったけれど、あいにく飲み会はやりまくってはいない。が、仕事でホスト(ってあのホストではない。Zoom主催者のことだ)をすることは多いので、同じく仕事でZoomを使うことが多いという山崎と一緒に引き受けることにした。委員長がクラスメートに聞き取り調査をしたところ、Zoom未経験の奴も結構いたので、手分けして事前に説明したり、リハーサルをしたり……と色々と手間はかかっ...BL小説・風のゆくえには〜同窓会・スパダリランキング

  • BL小説・風のゆくえには〜愛してる記念日2020(慶視点)

    ★先週更新した【浩介視点】の裏話&続きです。【慶視点】11月3日は『愛してる記念日』。おれが浩介に「愛してる」と初めて言った日を、浩介が記念日認定したのだ。こんな恥ずかしいセリフ、シラフで言えるわけがないのに、この日だけはシラフで言う、と約束してしまったのは一年前のこと……。11月2日の夜、明日言わなくちゃいけないんだと思ったら、寝付けなくなってしまった。なんであんな約束しちまったんだ……。寝付けないまま、水でも飲もうかと、ベッドを抜け出した。襖を開けた先、布団の上で寝ている浩介の横顔が見える。(一緒に寝てえなあ……)ため息がでてしまう。感染症対策のために寝室を別にしてからもう半年以上たつ。いつになったらまた一緒のベッドで眠れるんだろう。いつになったら思う存分触れ合えるようになるのだろう。いつになったら……(…...BL小説・風のゆくえには〜愛してる記念日2020(慶視点)

  • BL小説・風のゆくえには〜

    【浩介視点】11月3日は『愛してる記念日』。慶が「愛してる」と初めていってくれた記念日だ。今でも時々は言ってくれるけど、そのほぼすべて、酔っているときか、「している最中」ということに大いなる不満を抱いていた。が、一年前、11月3日だけは、シラフで言ってくれる、と約束してくれた。(覚えてるかなあ……)忘れてそうだな……でも、こっちから催促するのも面白くないから、黙っていよう。と、思っていた、11月2日の深夜。慶が寝ているベッドのある部屋と、おれが寝ているリビングの間にある襖が、静かに開いた音がして、ふと目が覚めた。(トイレかな……?)珍しい…と思う。慶は朝まで爆睡するタイプなので、夜中に起きてくることは非常に珍しい。こうして寝室を別にするようになってから、もう半年以上たつ。世に蔓延する感染症の対策の一環で、家の中...BL小説・風のゆくえには〜愛してる記念日2020(浩介視点)

  • BL小説・風のゆくえには〜雨の記憶(後編)

    【慶視点】久しぶりに浩介と喧嘩した。きっかけは、浩介の車の迎えを断った当日に、タイミング悪く、知り合いの車で送ってもらってしまったことだった。迎えに来てもらえることは、正直、体力的に有り難かったし、少しの時間だけどドライブしてるみたいで気分転換にもなって楽しかったので、ついついずっと甘えてしまっていた。でも、そのために浩介が早起きをして晩御飯の用意をしている姿を見た瞬間に、背筋が凍った。(おれはまた、甘えてる)忙しいことを理由に、浩介に甘えてばかりだった昔の自分を思い出して、ゾッとした。こうして無理をさせて、おれは……おれは。「もう迎えに来なくていい。運動不足になるから歩きたいし」咄嗟に、そういった。運動不足のことはとってつけた理由だったけれど、実際ちょっと気にはなっていたので、嘘ではない。でも、結局、この日、...BL小説・風のゆくえには〜雨の記憶(後編)

  • BL小説・風のゆくえには〜雨の記憶(中編)

    【浩介視点】翌朝………すごい幸せな気持ちがしながら目が覚めた。それもそのはず。「…………慶」腕の中に慶がいる。慶を抱きしめた状態で目覚めるなんて、何ヶ月ぶりだろう……「慶」心の中がぎゅうっとなりながら、抱きしめる腕に力をこめると、慶が「ん…」と身じろぎをした。そして、「浩介」「!」きゅっと抱きしめ返されて、幸せ過ぎて気を失いそうになる。ああ、なんて幸せ……と、思っていたら、「……浩介」ボソッと慶が言った。「…………ごめん」「………………………………え」ごめん?……あ、そうだ。喧嘩してたんだった!忘れてた、なんて言えるわけもなく、慌てて言葉を継ぐ。「ううん。おれの方こそごめんね。誘われたら断われないよね」「まあ……うん。それもなんだけど……」慶は言いにくそうに、おれの肩口にグリグリとおでこをつけると、「元々……お...BL小説・風のゆくえには〜雨の記憶(中編)

  • BL小説・風のゆくえには〜雨の記憶(前編)

    【浩介視点】慶と喧嘩をした。原因は、慶が帰宅途中、偶然駅近くで会ったスポーツジムのトレーナーの浜中さんの車に乗って帰ってきたことだ。いや、おれだってさすがに、ただ乗ってきただけなら文句は言わない。おれが車で迎えにいくことを「歩きたいから」といって断ったくせに、浜中さんの車には乗ったということが面白くないから、文句を言ったんだ。それなのに慶は、「うるせえなあ」と、呆れたように言って、「そんなことより、メシ」って!!!!!は!?メシ!?そんなことより!?メシ!?そりゃ、おれの長所は「料理が上手いこと」だけど、おれはメシを作るために存在しているわけじゃない!「勝手に食べれば?!」言い捨てて、リビングのソファに座りこんで、用もないのにスマホを見ていたら、慶は本当に、勝手についで、勝手に食べ始めた!信じられない!!本当は...BL小説・風のゆくえには〜雨の記憶(前編)

  • BL小説・風のゆくえには〜30年記念誕生日

    2020年9月10日夜のお話です。慶と浩介の高校の同級生、溝部君視点でどうぞ。【溝部視点】この半年、家族と会社の人間にしか会っていない。が、画面を通しては会えるのだから、文明の発達とは凄いもんだ。そんなわけで。今日は、高校の同級生・桜井浩介の誕生日なので、久しぶりに電話をしてみた。どうせ恋人の渋谷慶とイチャイチャして過ごしてるんだろう……と思いきや、「……お前、何してんだ?」画面の向こうの桜井が、一人、モヤシを持っているから、「おめでとう」より先に疑問の言葉を投げてしまった。マスク姿の桜井は、真面目な目で「モヤシのヒゲ取り」と答えると、「ごめん、慶が帰って来るまでに終わらせたいから、続けさせてね」と、手元に目を落とした。「え、お前らこれからメシ?」もうすぐ9時だ。ずいぶん遅い……っていうか。「誕生日なのに、自分...BL小説・風のゆくえには〜30年記念誕生日

  • BL小説・風のゆくえには〜変わらない日々

    ※ほんのり(?)性表現があるので、お気をつけください。【慶視点】ここ数ヶ月で、変わったことがいくつかある。一つは、浩介と寝室を別々にしたこと。おれがベッドを使い、浩介がリビングに布団をひいて寝ている。それから、家でもマスクを着用するようになった。食事をリビングで横並びでするようになった。それから……「……キスしたい」「…………」「けど……ダメだよね」浴室中、シャワーを浴びた直後に抱き寄せられて言われたセリフに小さく肯くと、深い深いため息が頭上から聞こえてきた。(最後にキスしたのいつだろうな……)思い返しても分からないくらい、キスをしていない。だぶん聞いたら日にちまで正確に答えてくれそうだけれども、その期間の長さを思って余計凹みそうなのでやめた。浩介が引き続きため息をつきながらつぶやいた。「唾液の交換はさすがにマ...BL小説・風のゆくえには〜変わらない日々

  • BL小説・風のゆくえには〜膝と膝(ブログ開設14年記念)

    【浩介視点】「飯食うとき、テレビつけようか」と、慶が提案してくれたのは、一ヶ月くらい前のことだ。今までは、一人で食べる時や、どうしても見たい番組がある時はつけていたけれど、日常的にはなかった。食事をしながら、他愛のないお喋りをするのが至福のひとときだった。でも、感染症予防の一環で、食事は横並び、極力話さないで食べる……となって、その時間は無くなった。その上、食べるスピードも速くなってしまって、良くないなあ、とは思っていた。だから、「賛成。じゃ、あっちで食べよっか?」と、おれからも提案した。ダイニングテーブルからは、距離的にも角度的にもテレビが見えにくいけれど、テレビ前のローテーブルだったら若干近すぎるものの、見えやすいのだ。慶との距離も、ダイニングテーブルの時よりも近くなった。ローテーブルの下、あぐらをかいた膝...BL小説・風のゆくえには〜膝と膝(ブログ開設14年記念)

  • BL小説・風のゆくえには〜初めての誕生日

    登場人物桜井浩介:高校2年生。表はニコニコ裏はものすごい後ろ向き。人生初の友人である慶と、ずっと親友でいられることを願っている。渋谷慶:高校2年生。天使のような容姿だが性格は男らしい。親友浩介に密かに健気に片想い中。浩介と慶、まだ高校2年生の時のお話から始まります。時系列的には、片恋2-2と3の間。この数日後に、浩介が美幸さんに片想いをはじめるわけです。あー慶、可哀想に……。そんな可哀想な慶君になる寸前のお話。まだ浩介が慶のことを心の中では「渋谷」と呼んでいた時代です。----【浩介視点】「渋谷ー!お前、明後日、誕生日なんだってな?」金曜日の放課後、クラスのムードメーカーである溝部という男子生徒に、渋谷が声をかけられた。(誕生日?)そのセリフに、ハッとした。そういえば、渋谷は4月生まれだと以前聞いたことがある。...BL小説・風のゆくえには〜初めての誕生日

  • BL小説・風のゆくえには~80歳になっても・後編

    【慶視点】昔、先輩医師に言われたことがある。幼少期の辛い思い出を、消すことはできない。でも……『白い記憶でいっぱいにすれば、黒い記憶は薄くなっていく』『君が白でいっぱいにしてあげればいいんじゃない?』だからおれは、白く白く白く……浩介の記憶を、光で埋め尽くしたい。***1月の第2日曜日、浩介と二人で、浩介の父親の友人『滝さん』を車で迎えにいった。滝さんは、86歳とは思えない、生命力に溢れたオーラの持ち主だった。浩介は滝さんと会うのは大学生の時以来だけれども「その時と全然変わってない」らしい。今まで滝さんと会うときは、必ず両親や滝さんのご家族と一緒だったため、こうして一対一で向き合うのは初めてで、緊張するから慶と一緒で助かった、と言っている。今回の滝さん来訪に際して、おれも浩介の実家に行っていいのか迷った。でも、...BL小説・風のゆくえには~80歳になっても・後編

  • BL小説・風のゆくえには~80歳になっても・前編

    2020年お正月のお話です。---【浩介視点】父と和解(慶との関係を認める発言をしてくれたのを『和解』と思うことにしている)したのは、2015年11月3日。今から4年ほど前のことだ。それ以来、数ヶ月に一度は実家に顔を出すようにしている。でも、いまだにやっぱり、父に対する苦手意識は抜けない。根付いてしまった恐怖心の完全なる払拭はやはり無理なのだろう。父も父で、おれと話すときは何となくムッとしているし、無言になってしまうことが多い。でも、慶と一緒の時の父は、全然違う。父ってこんなに喋る人なんだ、と驚くほど饒舌になる。慶が年上の人への対応が上手なせいもあるんだろうけど……(慶みたいな息子だったら良かったのにね?)楽しそうな父を見ていると、そんな卑屈なことを思わないでもない。けれども、父の機嫌がいいのはひたすらに有り難...BL小説・風のゆくえには~80歳になっても・前編

  • BL小説・風のゆくえには〜おうちで誕生日

    【浩介視点】勤め先の学校でも、交代で在宅勤務をすることになって3週間になる。今日は6回目の在宅勤務日。慶の誕生日である今日になったのは、日程調整会議の時にそうなるようにさり気なく誘導したからだ。……ということはバレてないはずだ。在宅勤務時の仕事の一つに、生徒の健康確認がある。『おはよーございまーす』「おはよう。元気?」『元気元気ー』朝、6時半。幼稚園の休園の影響で出勤できなくなった主婦パートさんの代わりに、毎日一日中アルバイトをしている、という生徒が、「ビデオ通話できるのは朝だけ」というので、朝っぱらからかけている。「宿題、進んでる?」『うん!もちろん!』「そう。良かった」明るい声にうなずきかけると、画面の向こうの女子高生が、プッと吹き出した。『嘘に決まってるじゃーん』「え、嘘なの?」もちろん、嘘だろうとは思っ...BL小説・風のゆくえには〜おうちで誕生日

  • BL小説・風のゆくえには〜何千日の日常(ブログ開設5000日記念)

    2006年8月10日↑このブログを開設した日にちです。あっという間に明日で5000日です。お付き合いくださいました皆々様、本当に本当にありがとうございます。せっかくなので、5000日前の主役二人の話を書こうと思い、確認しましたら……この日ちょうど、浩介が「発作を起こして嘔吐した」頃なのでした…せっかくのブログ開設記念日だというのに、間が悪い浩介らしいというかなんというか!!でも、せっかくなので、書きます。「風のゆくえには〜翼を広げて」のネタバレになります。2006年8月場所はミャンマーのとある町作中、翼を広げて・後日談4.1あたりになります。【浩介視点】気がつくと、医務室のベッドで寝ていた。ここまでどうやって来たのかまったく記憶がない。誰かに運ばれたのだろうか……(あの時……)校門の前での子供達の見送りが終わっ...BL小説・風のゆくえには〜何千日の日常(ブログ開設5000日記念)

  • BL小説・風のゆくえには~須藤友と友達の話(後編)

    【須藤友視点】年齢イコール恋人いない歴なんて奴は自分の周りに何人もいる。親に言わせると、23歳でそれは「自分たちの頃ではありえない」らしいけど、今は別にそんなの普通。恋人なんかいなくても、人生楽しく送れてる。「ゲームの中の女の子が可愛すぎて」と、言うのは、大学卒業間近に、引っ越しの短期バイトで知り合って友達になったタツミだ。タツミは僕と同じ歳で、見た目はクールな雰囲気で背も高くてかなりカッコいいのに、年齢イコール彼女無しで、二次元にしか興味がない。厳しい親の元で色々制限を受けながら育ってきたため、大学に入って一人暮らしをはじめた途端、たかが外れてしまった、と本人は言っている。でも、三次元に興味ないからといって、性的欲求がないわけではない。「これエロ過ぎー。もうずっと勃ちっぱなし」と、ゲームをしながらヘラヘラと言...BL小説・風のゆくえには~須藤友と友達の話(後編)

  • BL小説・風のゆくえには~須藤君と友達(前編)

    不安な状況が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。次に書くのは「2つの円」のその後の話、もしくは、浩介父とその友人の話、と思っていたのですが、現在の話で今のこの状況に触れられていないのは不自然だし、かといって、安直には書けないし……と、悩んだ結果、過去話をしようかな、と思いまして。で、ふいに思い出したのが、慶の勤務先の病院の事務の男の子。長編『〜あいじょうのかたち』23で、慶が勤務先の病院でカミングアウトしたことに対し、「大半は表向きは好意的に受け取ってくれたけれど、皆が皆そうだったわけではなく………。あからさまに避けてくる人、嫌みを言ってくる人、逆に「実は自分も……」とこっそり打ち明けてくる人、様々だそうだ。」と、浩介が説明しておりまして。その「実は自分も……」と打ち明けてきた人です。一応、端役でも...BL小説・風のゆくえには~須藤君と友達(前編)

  • BL小説・風のゆくえには~うちの旦那様、お医者様なもので

    【浩介視点】朝起きたら、何となく、ちょっと、頭が重かった。でも、今日はせっかくのバレンタイン前の休日。せっかく朝から慶と一緒にチョコレートフェアに行く約束をしているのに、具合なんか悪くなっている場合じゃない。(気のせい気のせい気のせい……)頭痛は「気のせい」ということにして、先にベットから抜け出し、朝のコーヒーを落としはじめる。……と、コーヒーの匂いにつられたように、慶も起き出してきた。「はよーーー」慶は挨拶と一緒に伸びをしたかと思うと、その勢いで腕をブンブン振り回しはじめた。時々するその仕草を見る度に、なんだか子供みたいでカワイイなあ、と思っていることは内緒だ。「おはよう。昨日のスープの残り食べる?」「食べるーー」「分かった」肯いて、台所に戻ろうとした……のだけれども。「浩介」「え」いきなり腕を掴まれた。慶の...BL小説・風のゆくえには~うちの旦那様、お医者様なもので

  • BL小説・風のゆくえには~令和初・付き合いはじめ記念日・後編

    【浩介視点】おれはおそらく、普通の人よりも記憶力が良い。思い出すと、当時の感覚まで蘇ってくる。それは、母に見張られた勉強部屋での絶望感とか、不登校になったおれに対する父の冷たい視線の恐怖とか、教室の掃除ロッカーに閉じ込められた時の嘔吐したくなるような匂いとか、嫌な思い出に対するフラッシュバックほど鮮明だ。そんな記憶に囚われてしまった時、おれは急いで記憶の引き出しから、キラキラした光を引っ張りだす。「慶……」中三の時、初めて見た眩しい光。高一の時、親友だって言ってくれた時の包み込むみたいな光。そして……「高校二年。12月23日。恋人になった日」おれの一世一代の告白に、慶はポロポロと涙をこぼしてくれた。あんなに光り輝いたものを、おれは見たことがない。どんな宝石よりも美しい光。慶の光がおれを暗闇から救い出してくれる。...BL小説・風のゆくえには~令和初・付き合いはじめ記念日・後編

  • BL小説・風のゆくえには~令和初・付き合いはじめ記念日・前編

    【慶視点】12月23日は、おれと浩介の「親友」という関係に「恋人」をくっつけることになった記念日だ。浩介はやたらと記念日を大切にするので、やれ初キス記念日だの出会った記念日だの、その他諸々覚えている。反しておれはとんと無頓着。でも、さすがに、誕生日と、この「12月23日」だけは覚えている。昨年までは祝日だったから思い出しやすかった、ということも理由として挙げられる。でも、令和になった今年からは平日なわけで……「ケーキ買っておくね」朝、駅で別れる時にニコニコで浩介にいわれたけれど、インフルエンザが蔓延している月曜日は残業は必至だ……予想通り、職場の病院を出られたのは夜の8時半過ぎになってしまった。これから帰るという連絡だけして、帰り道を急ぐ。昨日と違って、今日は雨じゃなくて良かった。(……雨は、嫌いだ)浩介がおれ...BL小説・風のゆくえには~令和初・付き合いはじめ記念日・前編

  • 風のゆくえには~元祖「愛してる」記念日

    【浩介視点】11月3日。高校2年生の時、初めてキスをした記念日。それと、4年前、結婚式みたいな写真を撮って、そこで、慶が初めて「愛してる」って言ってくれた記念日。本当はデートしたかったけれど、あいにく慶は仕事。大きな学会があるそうだ。普段、慶は記念日にとんと無頓着だ(って、おれがこだわり過ぎって話もあるけど……)。でも、この11月3日はようやく「なんとなく」覚えたらしく、学会に行くことが決まってすぐに、「5時には終わるから、夜は外食しよう」と、言って、最近人気のフランス料理店の予約までしてくれた!すごい!バイト時代の先輩が働いているお店だそうで、「前から一度食べに来いって誘われてたから」なんて照れたように言っていたけれど、そういう知り合いの店におれを連れて行ってくれる、しかも記念日に!ということが更に嬉しい。嬉...風のゆくえには~元祖「愛してる」記念日

  • 風のゆくえには~「愛してる」記念日・後編

    【溝部視点】「慶が初めて『愛してる』って言ってくれた日だから、『愛してる』記念日』」なんてアホらしい話を聞いた翌日金曜日。渋谷達のマンションから出勤し、普通に仕事をして、通常通りの時間に家に帰ったのだけれども……「…………おかえりなさい」「?ただいま」何となく、鈴木の様子がおかしい。元気がないというか……でも、聞いても、そんなことはない、の一点張りで埒が明かない。と、いうことで、息子・陽太の部屋に乱入して聞いてみた。ら、「お母さん、今日は朝からずっとあんな感じだったよ」「え、なんで?」「知らね」「えー……」なんで知らねーんだよー…とガッカリしているオレに陽太がアッサリと言った。「本人に聞けばいいじゃん」「聞いても教えてくれないから陽太先生にお聞きしているんですがっ」「残念。オレも知らね」「えー見捨てるなよー考え...風のゆくえには~「愛してる」記念日・後編

  • BL小説・風のゆくえには~「愛してる」記念日・前編

    【登場人物】溝部祐太郎(みぞべゆうたろう)某大手メーカー勤務。身長169㎝。ちょっと太め。お調子者。元野球部。長年の拗らせ片思いを叶えて、2年半前に同級生の有希と結婚。現在、有希の連れ子・中学一年生の陽太と、もうすぐ1歳になる娘・よつ葉との4人家族。溝部有希(みぞべゆき)雑誌記者。身長168㎝。元バレーボール部。旧姓鈴木。渋谷慶(しぶやけい)小児科医師。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。桜井浩介(さくらいこうすけ)フリースクール教師。身長177センチ。慶の親友兼恋人。【溝部視点】3連休の予定を聞いたところ、「日曜日だけあるんだ〜❤」と、桜井にハート付きで返された。どこか行くのか?と聞いたら、またまたニッコニコで、「記念日だから、二人で食事にいくんだ〜❤」だ、そうだ……。そういえば、桜井は...BL小説・風のゆくえには~「愛してる」記念日・前編

  • BL小説・風のゆくえには~幸せな日々

    【浩介視点】慶のお父さんが大腸癌の手術をした……らしい。らしい、というのは、おれの知らない間に検査で発覚していて、手術も無事に終わっていて、もう退院してきた、ということを、おれの誕生日祝をしてくれた席で聞いて知ったからだ。お父さんが癌になったということも、とてもショックだけれども、(やっぱり本当の息子じゃないから教えてもらえなかったんだ。慶もおれに黙ってたんだ……)と、図々しいながらも、そんなことも思って、ショックを受けた。けれども。慶も知らなかった、というから、驚いた。「何で教えてくれなかったのかな」マンションに帰ってきて、二人並んでソファに座ったところで、慶に言ってみると、慶は軽く肩をすくめて、「面倒くさいからじゃね?」「面倒って……」なんだそれ。「でも慶なんてお医者さんなんだから、色々話を……」「専門じゃ...BL小説・風のゆくえには~幸せな日々

  • BL小説・風のゆくえにはシリーズ 目次

    主人公1:渋谷慶誰もが振り返るほどの美形。性格は一刀両断。男らしい。背が低いことがコンプレックス。主人公2:桜井浩介平平凡凡な容姿。性格、表は明るくニコニコ、裏は病んでいる。そんな二人の、高校一年生の出会いからはじまる29年の物語<『風のゆくえには』年表(2019年9月現在)>年度(4月~3月)区切り。慶の年齢は4月の誕生日迎えてからの歳。並び順は出来事順★長編…3回以上のもの・読切…一回読切・R18…具体的性描写あり。ご注意ください・旧…私が高校大学時代にノートに書いたもの【1989年4月~慶15歳(中3)】★長編『~2つの円の位置関係』:スピンオフ。享吾と哲成の物語。【1990年4月~慶16歳(高1)】★長編『~遭逢』:慶と浩介。出会いから親友になるまで読切『~遭逢裏話』:慶と出会う寸前の浩介の話。享吾と哲...BL小説・風のゆくえにはシリーズ目次

  • BL小説・風のゆくえにはシリーズ 長編目次一覧

    目次に長編の一覧をのせていたのですが、30000字を越えてエラーになったしまったため、別立てにしました。長編目次一覧↓風のゆくえには~遭逢(完結)…高校1年生(2015.11~2016.1投稿)風のゆくえには~片恋(完結)…高校2年生春~夏(2016.1~2016.2投稿)風のゆくえには~月光(完結)…高校2年生夏(2016.2投稿)風のゆくえには~巡合(完結)…高校2年生秋~冬(2016.2~2016.3投稿)風のゆくえには~将来(完結)…高校2年生冬~春(2016.3~2016.4投稿)風のゆくえには~旅立ち(完結)…高校3年生(2017.11~2018.2投稿)風のゆくえには~自由への道(完結)…大学生時代(20~22歳)(2014.12~2015.1投稿)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘(完結)…社会人時代...BL小説・風のゆくえにはシリーズ長編目次一覧

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係・追加のおまけ

    予定変更で、次回金曜日の読み切りをもってお休みに入ります💦今回は、先週まで連載していた「続々・2つの円の位置関係」の、最終回から3週間ほど後のお話をお送りします。-------------『~続々・2つの円の位置関係・追加のおまけ』【慶視点】高校の同級生の、溝部と山崎と斉藤がうちに遊びに来た。高校2年生の時は、浩介とおれとこの3人でつるんでいたので、余計に高校時代に戻ったような感覚になる。「なー、卒アルすぐ出る?」一番最後にうちに着くなり、溝部がこめかみに人差し指をグリグリしながら言ってきた。「さっき、電車の中で、こいつ絶対知ってるーって奴がいて……同じ高校な気がすんだけど」「えー、誰だろう」「オレが降り際、向こうもオレに気がついて、微妙な感じに頭下げてきて……」話している間に、浩介が卒業アルバ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係・追加のおまけ

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係28・完

    【享吾視点】翌日の夜、渋谷と桜井の住むマンションを二人で訪れた。噂通り、桜井がいそいそと料理を作っていて、なんやかやと渋谷の世話をしている。まさに、奥さん、という感じだ。新居の話や仕事の話、高校の思い出話にまで花を咲かせながら(主に話していたのは哲成と渋谷だけど)夕食を取り、ソファのあるローテーブルの席に移って飲み始めたら、速攻で渋谷が酔い潰れてしまって……「飲むとすぐ寝ちゃうんだよー」桜井が手慣れた風にタオルケットを渋谷にかけてやっている。奥さんというより、母親と子どもって感じもしてきた……。幸せそうに寝てる渋谷。ああ、聞きたい話、何もしていないのに……「な、桜井」同じことを思ったらしい哲成が、桜井にチョイチョイと手招きをして、言った。「お前らってさ、あれの時、どっちがどっちなの?」ものすごい直球な聞き方だな...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係28・完

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係27

    【享吾視点】二人で一緒にドアを開け、「ただいまー」「ただいま」誰もいない部屋に向かって声をかけた。そして、見つめ合い、微笑み合い、どちらからともなく軽く唇を合わせる。「おかえり」「おかえり」コツンとオデコを合わせる。ああ……これからは、ここがオレ達の帰る家になるんだ。初めての新居での夜。終電で帰ってきたので、相当に遅い時間になってはいたけれど、もったいなくてすぐ寝る気にはなれない。「風呂、一緒に入ろーぜ?」と、いう哲成の誘いに乗って、初めて風呂に一緒に入った。哲成のマンションはユニットバスだったので、一緒に入ることはなかったのだ。「体洗ってやるー」「じゃあ、オレも」なんてお互いの体の洗い合いを始めたら、当然、そのまま扱き合いに突入して……「あー!もー!」ほぼ同時に達した数秒後、哲成がいきなり怒りだした。「そんな...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係27

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係26

    【哲成視点】8月の強い日射しの中、引っ越し作業が無事に完了した。「結婚の予定でもあるの?」と、梨華に聞かれたのは、一人暮らしには贅沢な間取りと、ダブルベッドのせいだろう。「いや。広いのは友達たくさん呼ぶためで、ダブルベッドは、花梨と一緒に寝るためだよ」しれっと答えてやったら、梨華は呆れたように、「一緒に寝るなんてあと数年だよ?」と、言ったけれど、それ以上の追求はしてこなかったので助かった。まさか、享吾と一緒に住むためなんて言えるわけがない。権利書を見られたらバレてしまうけれど、このマンションは享吾と二分の一ずつの権利で購入したのだ。ローンもそれで審査を通した。でも、表向きは、オレ一人のものとしていて、マンションの管理組合の登録もオレだけの名前にしてある。享吾の住所は、歌子さんとの家のままで、うちには「泊まりにき...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係26

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係25

    【哲成視点】「恋人みたいになりたい」と、享吾に言った結果、本当に、一緒にマンションを買うことになった。まさか、そんなことになるなんて、いまだに信じられない……嬉しくて夢みたいで、何だか毎日ふわふわしている。でも……実は、元々投げかけたことについては、まだ、解決していない。マンションに引っ越すまでまだ数週間あるので、享吾がオレが今一人暮らししている部屋に泊まりにくるんだけど……(また、もう寝てる……)享吾は夜、何もせず寝てしまう。それはもう、速攻で。一応、一緒にテレビ見てるときとかはベタベタくっついたり、ちょっとキスしたりはするんだけど、それ以上のことは、ビックリするくらい何もしてこない。(したくないのかなあ……)ベッドの中、横に寝ている享吾のスッとした鼻をなぞりながら、ジッと寝顔を見つめる。(オレは、してほしい...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係25

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係24

    【亨吾視点】朝、ベーコンの焼ける良い匂いで目を覚ました。視線を少し上にやると、コンロの前に立っている哲成の姿が見える。ここは、哲成が一人暮らしをしている都内のマンション。1DKなので、キッチンもすぐ近くだ。(そういえば、大学のはじめの頃もこんな感じだったな……)大学入学と同時に一人暮らしを始めたアパートに、はじめの頃は、哲成はよく泊まりにきてくれていたのだ。朝はコーヒーだけでいい、というのに「それじゃ大きくなんねえぞ!」とか言って、朝食を用意してくれたりして……(それから、哲成が森元真奈と付き合うことになって、泊りがほとんどなくなって……、オレが結婚してからは、こうして家で会うこともなくなって……)オレ達はどれだけ遠回りしてきたんだろう。望んでいたことは、こういう些細な日常だったのに……(でもこれからは、その日...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係24

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係23

    【亨吾視点】「オレはさ、お前ともっと……あの、恋人、みたいになりたいんだよっ」そう必死な様子で言った哲成の顔は、これでもかというくらい真っ赤で……(か……かわいい)どうにもこうにも口元が緩んで困った。そんなこと思っていてくれたなんて、全然知らなかった。むしろ、友達のままでいたいのか?と思うくらい、素っ気ないことが多かったのに。その上、ずっと気になっていたけれど、聞けなかった真実を教えてもらえた。「真奈は関係ねえだろ。ただの友達なんだから。んなことお前だって知ってるだろ」大学の時に、森元真奈と付き合うのは、家族のことが理由だと聞いてはいた。でも、そのわりにはその後もずいぶん長い期間付き合っていたし、結婚を考えている、とも言っていたので、きっかけはどうあれ、正式に付き合っているんじゃないかと疑っていた。肯定されるの...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係23

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係21-2

    【哲成視点】「心置きなく、恋人気分を味わってちょうだいね?」そう、バーのママの陶子さんは言ってくれたけど……どうすれば、恋人気分になるんだろうなあ、と思って、コの字型の反対側のカウンター席にいる、渋谷と桜井の様子を盗み見てみた。(…………距離が近い)メニュー表を一緒にみているのだけれども、ほとんど頭と頭がくっついているように見える……。(人目があるところでは、あそこまでできないよな普通……)でも、渋谷達と、もう一組、カウンターにいる女性のカップルは、すごく距離が近い。なるほどあれが恋人の距離……ふーん、と思っていたら……「恋人気分って、なんだ?」「………」享吾の冷静な声にビクッとしてしまった。そういえば、享吾には目的を言わず、だまし討ちのような形でここまで連れてきてしまったんだった……「いや、あの……」「渋谷達...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係22-2

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係21-1

    【亨吾視点】高校の同級生、渋谷&桜井カップルが連れてきてくれたのは、新宿にある女性専用のバーだった。偶数月の最終土曜日だけ、男性も入れることになっているらしい。『陶子』と、蔦の葉の絵で描かれた看板がとても洒落ている。地下にあるため窓はないのに、圧迫感のない、明るい不思議な空間のバーだ。カウンターに数席と、立ち飲みテーブルと、ソファ席がある。(出会いの場っていう意味もあるから、こういう形なのかな……)なんてついつい、経営者目線で分析してしまう。と、「いらっしゃい」カウンターの中にいたクレオパトラみたいな美人に声をかけられた。おそらくこの店のママ。凛とした佇まいの女性。「陶子さん、こんばんは」「今日はありがとうございます」渋谷と桜井が次々と頭を下げると、『陶子さん』はフッと笑みを浮かべて、オレと哲成に「こちらどうぞ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係22-1

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係21の前

    【慶視点】小学校、中学校、高校、の同級生である村上哲成から再び連絡があったのは、6月の下旬になってからだった。「また、相談があるんだけど……」というので、今回はうちに来てもらうことにした。料理上手の浩介が張り切って作った夕飯を食べて、これまた張り切って作ったつまみをつまみながら、飲みに移行して……「……奥さんって感じだな」食器の片付けのために、浩介が台所にこもったところで、テツがボソッと言った。「話には聞いてたけど、本当に、甲斐甲斐しい奥さんって感じ……」「なんだそりゃ」話?「誰が言ってんだよ」「皆川」「あー……」何度かうちに来たことがある高校の同級生だ。やたらと浩介の甲斐甲斐しさを羨ましがっている奴。テツはなぜか眉を寄せてジーッとオレをみるとボソボソと言葉を足した。「それでいて、会話とかは普通なんだな」「普通...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係22の前

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係20

    【享吾視点】哲成と「家族」になりたい。そのことに、今さら、ようやく気がついた。哲成は小学生の時に母親を亡くしている。父親は積極的に子供と関わる人ではなかったため、哲成は、余計に幼なじみの松浦暁生に依存していたのだろう。中学生の終わり頃、松浦の役目はオレにバトンタッチされた。それからはずっと一緒にいて、そんな日々がずっと続くと信じていた。でも、高校三年生の時に、父親が再婚したことで、哲成はその新しい「家族」に溶け込もうと必死になりはじめた。そのために、森元真奈という同じ歳の女と付き合ったりしたくらいだ。梨華ちゃんが小学一年生の時に、義母が家を出ていってしまい、哲成は職場を変えてまでして、梨華ちゃんと一緒にいることを選んだ。「そのうち結婚する」と言っていた森元真奈とのちに別れることになるのも、おそらくそのことが原因...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係21

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係19-3

    【哲成視点】「じゃ、テックンにあげる」「え?」梨華からカーネーションを差し出され、キョトンとしてしまう。オレは結局、清美さんに息子として受け入れてもらえなかった。彼女にとってオレは「再婚相手の息子」でしかない。そのことは、梨華も知っているはずだ。それなのに……(あ、もしかして、墓参りしろってことか?)亡くなった母のお墓は、母の実家の本家の敷地内にある。そちらとは父の再婚を期に疎遠になってしまったため、もう何年も墓参りすらしていない。……なんてこと、梨華は知らないもんな……等々、考えを巡らせていたら、「正直、あの人を母親って言われてもピンとこないんだよねー」梨華に肩をすくめながら言われて、「え?」と梨華を見返した。あの人?ピンとこない?「だってさ、小学生よりも前の記憶なんて全然ないもん」「…………」清美さんは、梨...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係20-2

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係19-2

    【享吾視点】母の日。5月2週目の日曜日。オレがオーナーをしているワインバーで、母の日イベントを行った。発案者は歌子だ。まあ、イベントと言っても、テーブルすべてにカーネーションを飾っていることと、入り口近くにカーネーション一輪の花束をたくさん用意して、お客様に「ご自由にどうぞ」と声かけをしているだけで、あとは変わらない。演奏する曲に少し年代上の曲をまぜたくらいだ。8時のステージを終えて控え室に戻って一息ついたところで、歌子が呼びにきた。オレの両親が到着したらしい。「カーネーション渡してね?」と、一輪押し付けられて、渋々テーブルに向かう……と、「…………え」その隣のテーブルに、哲成と哲成の18歳年下の妹の梨華ちゃんが座ろうとしているから驚いてしまった。「お久しぶりです」なんて、哲成とオレの両親が話してる。どうやら偶...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係20-1

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係19-1

    【享吾視点】「………あーわかったわかった。え?1時間?そりゃ厳しいなあ……」「………?」聞こえてきた哲成の声にぼんやりと目を覚ました。カーテン越しに射し込まれている光は朝日と思われる。今、何時だろう……(っていうか、オレ、あのまま寝たのか……)哲成が風呂に入っている間に不安感が強くなってしまったため、安定剤を服用したのだ。その影響か、一緒にベッドに横になった直後、唐突な睡魔に襲われ、途中から記憶がまったくない……(まあ、寝なかったとしても、何もできなかっただろうけど……)今まで20年近くも、「何もしてはいけない」と自分を律してきたのだ。それが体に染み付いているらしく、体が素直に反応してくれない……(あの不安感はそれが原因か?)せっかく、哲成がしてもいいと言っているのに。長年溜まりに溜まった欲望を果たせたはずだっ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係19

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係18

    【哲成視点】好きだよ。愛してるよ。そう言い合って、軽いキスを繰り返して……今日はこれ以上のことはしない、と言いながらも、このままでは進みそうだな……と思った矢先、(…………ピアノ)階下からピアノの音が聴こえてきて、唇を離した。「…………」「…………」見つめ合い……なんとなく気まずくなって目をそらす。(やっぱり、下に奥さんいるのに、こういうのはな……)ふっと息を吐いてから、少し間隔を空けて座った。ピアノの音は引き続き聴こえてくるけれど……正直、下手くそだ。「………。これ、歌子さんじゃないよな?こんな下手なわけないもんな」普通に話しかけると、享吾は少し安心したようにうなずいた。「ああ……たぶん、大人の生徒さん」歌子さんは、大人の生徒のために、土日祝もレッスンを受け入れているらしい。そういえば、発表会にも大人が何人か...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係18

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係17

    【享吾視点】地べたに座ってるのも疲れるよな、と言って、哲成がベッドに座るのを手伝ってくれた。そのまま、ゆっくりと足を擦ってくれる。温もりが伝わってきて、足に血が巡ってくるのが分かる。思い出話をたくさんしたい、と言ったのに、哲成はずっと無言だった。ザーザーと布を摩る音だけが部屋に響き渡る……と、「………お前さ」哲成がようやく口を開いた。「トイレとかどうしてんだ?」「トイレ?」いきなり、なんの話だ?「この足じゃ、トイレ行けないじゃん」「ああ……」「毎回、歌子さんに来てもらってる、とか?」なぜかムッとしている哲成。何だろう……「いや……左足は多少踏ん張れるから、壁伝いでなんとか」「ふーん……。風呂は?手伝ってもらってるのか?」「まさか。時間かかるけど一人で……って、あ」まさか、と思ってちょっと身を離す。やばい。まずい...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係17

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係16

    【哲成視点】2019年4月30日。平成最後の日。初めて、享吾と歌子さんの家を訪れた。妹の梨華に聞いた住所を頼りに行ってみたところ、本当に実家から徒歩20分ほどのところにあって驚いた。最寄り駅が違うので今まで会うことがなかったらしい。小学校が近くにある住宅街の一角で、駅から5分のところにあるのに、大通りからは奥に入っているため静かでとても環境が良い。(なんか……しゃれてるな)緑に囲まれた玄関口。英語で書かれたピアノ教室の看板。こんな洒落たところに二人で住んでるんだ。二人で相談してこの家を建てたんだ。……なんてことを思うと、胸のあたりがモヤモヤしてくる。(だから今まで来なかったんだよな……)18年半も享吾と歌子さんのことから目を背けてきた。18年半、オレは何をしてきたんだろう……(子育て………かな)そんなことを思っ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係16

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係15-2

    【哲成視点】渋谷慶と会うのは、20年以上ぶりになる。でも、待ち合わせに現れた渋谷は、若干歳を取ったものの相変わらずの超美形で、当時と同じくキラキラしたオーラを振りまいているので、間違えようもなかった。「おーテツ!久しぶり!」明るい声も変わらない。相変わらず人懐こい感じだ。「テツ、全然変わんねーな」ニコニコと言われたけれど……そんなことはない。オレは変わった。変わってしまった、と思う。「久しぶりだなー何年ぶりだー?」「んー……大学の時に高校の文化祭でバッタリ会って以来だから、20……何年だろうな」「うわーそうかー懐かしいな!」「…………うん」やたら嬉しそうにしてくれるから、何だか申し訳なくなってきた。オレは懐かしくて会いたかったわけではない。渋谷と桜井の話を聞きたかっただけなのだ。そんな後ろめたい気持ちを隠しなが...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係15-2

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係15-1

    【哲成視点】3月中旬。歌子さんに言われた。『そんなつもりないのに期待もたせるようなことするのはやめて?』『私、これ以上、享吾君が傷つくの、見たくないのよ』『だから……それができないなら、会わないで?』享吾の奥さんである歌子さんには『会わないで』という権利はある。でも、そんなこと、言われたくなかった。ふざけんな、と思った。でも……帰宅の道中で一人になり、冷静に考えて……ことの重大さに気が付いて血の気が引いてしまった。亨吾の病気はせっかく良くなっていたのに、オレに会ったことでまた復活した、ということだ。それが享吾にとって良い事のわけがない。だから、連絡は取るけれど会わない、という距離の取り方をすることにした。会ったらきっと、また触れたりして『期待させて』しまう。だからこのまま会わずにやんわりと離れていこうと思ったの...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係15-1

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係14の前

    【浩介視点】2019年4月20日土曜日急遽、慶が村上哲成という高校の同級生と会うことになった。昨日の夜、同じく同級生の山崎から連絡が入ったのだ。村上哲成が会いたがっている、と。慶と村上哲成は、小学校・中学校も同じだったらしい。みんなに「テツ」って呼ばれてた、小柄で眼鏡の男子生徒、という風に記憶している。バスケ部だった村上享吾と仲が良かったから、バスケ部関係で見かけたことは何度もあるけれど、おれは話したことはほどんどない。山崎は高3の時に同じクラスだったらしく、その同窓会で会ったときに、連絡先を交換したらしい。(急に会いたいって……何かの勧誘だったりしないよね?)と、思ったけれど、口に出すのは失礼だから飲みこんだ。慶は単純に、懐かしい友達に会えることを楽しみにしている。「何かあったら連絡して?」「何かって何だよ」...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係15の裏話

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係14

    【享吾視点】扉の向こうに立っている哲成を見て、ふいに、中学三年生の時のシーンが頭の中によみがえった。誰もいない家の中。入院した母のことを思って暗く沈んでいた自分。突然鳴ったインターフォン。そして……『よ!高校見学、行こうぜ?』ドアの向こう、にこにこしながら立っていた哲成。あれは平成2年のはじまりのことだった。その平成も今日で終わる。でも、眼鏡の奥の哲成の瞳は、あの時と少しも変わらない。クルクルした愛しい瞳……「キョウ、具合大丈夫か?」「あ……うん」後ろ手に扉を閉め、眉を寄せたままこちらにきた哲成に、肯いてみせてから、ゆっくりと上半身を起こした。(足……まだ無理だな)足の感覚はまだ戻っていない。無理に体勢を変えて動かないことに気が付かれたくないので、腰に負担はかかるけれど、布団の中で伸ばしたままにする。哲成は、立...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係14

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係13

    【哲成視点】「しばらく享吾君に会わないで……って言ったら、哲成君、どうする?」享吾の奥さんである歌子さんに、そう切り出されたのは、3月3週目の金曜日のことだった。先週に引き続き、享吾はバーに現れず、歌子さんが代役ピアニストとしてやってきたのだ。そして、最後のステージが終わった後、控室に呼ばれ、「言おうかどうしようかすごく迷ったんだけど……」という前置きの上で、言われた。(会わない……)それは享吾の希望ということか?先週、『体調不良』で休んだ享吾に、「お大事に」というスタンプを送ったところ、すぐに「ありがとう」と返事がきた。だから、『オレに会いたくないから来なかったのか?』という不安には気が付かないフリをして、その後は普通に世間話(侍ジャパンの話とか……)をしていた。この一週間、今まで通り、そんなやり取りを何度か...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係13

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係12

    【亨吾視点】2019年3月始めの日曜日。高校のバスケ部の同窓会に出席した。同窓会は、篠原というマメな男のおかげで、毎年のように行われている。オレは「予定が空いていたら行く」というスタンスのため、今まで半分くらいしか参加しておらず、去年と一昨年は気が乗らなかったので行っていない。でも、今回は必ず行こうと思っていた。なぜなら、桜井浩介に会いたかったからだ。桜井が出席に〇をつけたのを確認してすぐに、自分も〇をつけた。桜井浩介という男は、地味で真面目で大人しく、いつもニコニコしている、という印象しかない。情報通の荻野夏希によると、成績は常にトップクラスだったらしいけれど(ランキングを貼りだされた中学時代とは違い、高校は本人の点数と順位だけが書かれた紙が本人に配られるため、情報を集めない限り分からないのだ)、それを少しも...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係12

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係11

    【哲成視点】亨吾の手の温もりに、いい歳して泣きそうになってしまった……。それを誤魔化すために、「緊張してきた!こんなステージに立つ経験なんてないからさ~」と、明るく亨吾に話したところ、「何言ってるんだよ。合唱大会でソロまでやったくせに」と、言われた。何十年前の話をしてるんだ。……ああ、でも、「そうか。今回も伴奏、お前だな」「…………そうだな」ふっと笑った亨吾。懐かしい中学時代。あの時、亨吾はオレの母と同じ、キラキラした音で弾いてくれた。あの頃のオレ達、いつも一緒にいたよな……「あの音……聴きたいな」思わず言葉に出して言うと、亨吾が「分かった」と、アッサリうなずいた。「え?」分かったって?自分で言っておきながら、あわててしまう。そんなムチャ振りやらなくていいぞ!と、訂正しようとしたのに、いつの間に本番の時間で、押...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係11

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係10

    【享吾視点】バーのピアノで弾くのと、ホールのピアノで弾くのとでは、まったく勝手が違ったので、本番前に歌子に指導してもらった。「いつもよりペダル浅めで。響き過ぎてる」「左のメロディ、モヤモヤしてる。もっとハッキリ」「広い会場なんだから、遠くに飛ばすつもりで弾いて」等等。直して弾いたものが良い出来になっていくのが、なかなか楽しかった。中学一年生の時にピアノ教室を辞めて以来、独学で弾いてきたので、こういう指導を受けるのは本当に久しぶりだ。「村上歌子音楽教室、オレも入会しようかな……」本番が始まる数分前、舞台裏でかなり本気で言ったのに、歌子には「お断りします」と一蹴されてしまった。「今日はホールで弾くの久しぶりだろうからアレコレ言ったけど、普段の亨吾君に私から言うことは何もないわよ」軽く肩をすくめる歌子。首のラインがと...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係10

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係9

    【哲成視点】2019年2月。横浜市内にある音楽ホールで、妹の娘・花梨が通っているピアノ教室の発表会が開催された。ドラマの撮影でも使われるくらいシャレたホールなので、自分も出演することに、かなりビビっている……(といっても、30人の合奏にタンバリンで出るだけだけど)花梨とオレの参加する合奏は、発表会の最後の方だから、花梨はその少し前に妹の梨華が連れてくることになっている。でも、オレは当然、はじめから来ている。なぜなら、しょっぱなのオープニング演奏で、亨吾が歌子さんと連弾をするというからだ。開演まであと5分……というところで、「歌子先生の旦那さん、超カッコいいんだよ!」後ろに座った数人の女性たちの声が聞こえてきた。また言われてる……と、思わず耳をそばだててしまう。「ピアノも上手なんだよねー。さっちゃんママ通ってるん...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係9

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係8

    【享吾視点】2000年夏。哲成が妹の世話で忙しくて、一度も会えなかったため、結婚の件を知らせそびれていた。直接言いたかったから、メールや電話をした際も話せずにいたのだ。夏休みが終わり、ようやく哲成が店にきてくれた。まずは、ピアノを聴いてもらいたいと思った。好きだとは二度と言わない、という約束なので、気持ちを伝えるには音しかないのだ。けれども……(…………哲成、変な顔してる)演奏終了後、哲成が憮然とした表情をしていることに気がついて、慌てて駆け寄った。おそらく、先ほどまで哲成の隣にいた常連のトオルさんが、結婚のことを哲成に言ったのだろう。トオルさんよりも先に報告がなくて、不愉快に思っているのかもしれない。「もしかして……聞いた、のか?」「…………」見返すだけの哲成の様子に焦って言葉を継ぎ足した。「ごめん、会った時...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係8

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係7

    【亨吾視点】2000年9月23日。歌子の父親が経営するレストランで、オレと歌子の結婚パーティーを行った。外は大雨。ただでさえ、諸事情を隠した『計画結婚』なのに、こんなに足元が悪い中で来てくれる招待客の方々には申し訳なさでいっぱいだ。「婚姻届出した途端に降りだすなんて不吉だよな……」控え室で、思わず本音を言うと、戸籍上オレの妻となった歌子は、華やかに笑った。「まあ、この雨だったら、通常営業してたら閑古鳥が鳴いてたでしょうから、今日貸し切りにしたことは、店的にはラッキーだったわよね」「…………なるほど」歌子は、良いところ探しが上手なところが、哲成に似ている。「最後にピアノ弾くんだから、お酒はほどほどにね?」「飲まないから大丈夫」おそらく勧められるだろうから、断る口実のために、演奏を最後に持ってきたのだ。「オーナーシ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係7

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係6

    【哲成視点】2000年の8月は、小学2年生の、妹の梨華にかかりきりで終わった。夏休みの宿題は学童でもみてくれたけど、やはり、自由研究と苦手な算数の勉強はうちでやらなくてはならず、それに、海とプールと花火大会と、千葉に旅行にも行ったので、土日とオレの短い夏休みは全部つぶれた。でも、梨華に関わる時間を増やすために子会社に出向した甲斐もあり、夏休みの終わりには、学童の先生から「梨華ちゃん、ずいぶん落ち着きましたね」とお褒めの言葉をいただけたくらい、梨華の荒れた言動は治まってくれた。そうして夏休み期間はあっという間に過ぎて、ようやくホッとした9月の土曜日……亨吾がピアニストをしているレストランに、夜10時前に着いたところ、常連の一人であるトオルさんに話しかけられた。トオルさんは近所の楽器屋の店長で、自らもアマチュアバン...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係6

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係5

    【哲成視点】今思えば……義母は頑張っていた。頑張ろうとしてくれていた。脳梗塞で倒れた夫を支えつつ、幼い娘の世話もして……文句を言いながらも、リハビリにも積極的に関わってくれていた。オレも出来る限りのサポートはしていたつもりだけれど、仕事が忙しくて、義母に任せることが多かったように思う。懸命なリハビリのおかげで、父は倒れてから1年たたずに、社会復帰を果たすことができた。元通り、とは言えないけれど、日常生活もほとんど問題ないし、元々無口な人ということもあって、言葉の不自由さもほとんど気にならない。無事に危機を乗り越えられた、と安心していた。……けれど。「サンタさんが迎えにくるからママは行くね。テツ君、梨華のことよろしくね?」1999年12月。元々、遊び好きで派手好きだった義母は、献身的に尽くしてくれた反動か、男を作...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係5

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係4

    【享吾視点】約束通り、哲成が店にピアノを聴きに来てくれた。この長い付き合いの中で、ここでピアノを聴かせることだけが、唯一、本当の気持ちを伝えられる手段だった。なんとか均等を保ってこられたのは、この場所のおかげだったと思う。一度だけ……オレが結婚すると報告した夜だけ、溢れ出てしまったけれど、その一度以外、ずっと、ずっと、気持ちを外には出さず、友人関係を続けてきた。それが、一生一緒にいるために選んだ道だった。3年2ヶ月ぶりの、哲成のためのステージを終えて、控室に戻ると、妻の歌子に苦笑気味に言われた。「お父さんがここにいたら、確実に説教されてたわね。特に一曲目」「…………ごめん」一曲目に選んだのは、哲成の大好きなドビュッシーの『月の光』だ。つい感情を入れ過ぎたため、弾き終わった時には店中が静まり返ってしまったのだ。こ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係4

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係3ー2

    【哲成視点】リハーサル終了後、花梨を楽屋で着替えさせてドアを出た瞬間、廊下の椅子に座っている享吾とバッチリ目が合ってしまった……「……おお」「ああ」お互い手を挙げて挨拶し合う。これは確実に、オレのことを待っていたようだ。さっきまでは、その場の雰囲気で誤魔化して、個人的な話はしないですんだけど……これでは話さないわけにはいかないじゃないか。でも……普通に話せる自信が、まだ、ない。だから、(花梨をネタに帰るか)と、思ったのに、花梨があっさりと、「テックン、かりんトイレいってくる!」「え」「ここで待っててね!」とっととトイレに行ってしまった……。亨吾に目で促され、観念して、横にストンと腰を下ろす。「…………」「…………」数秒の奇妙な間の後、享吾がポツリと言った。「…………いつから日本に?」「……年末に」「そうか。だか...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係3ー2

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係3

    【哲成視点】3年2ヶ月ぶりに聴く亨吾のピアノの音は、やっぱり、包み込まれるみたいな優しい音がした。のは、いいんだけど………「テックン、下手!下手過ぎー!」「そんなこと言われても……」妹・梨華の娘である花梨は、梨華同様に容赦がない。梨華の代わりにピアノの発表会の親子合奏に出ることになったオレ。今日はリハーサルがあるそうで、その前に全員で合わせる練習をしているのだけれども、現在、幼稚園児にタンバリンのダメだしをされている……「ずれてるー」「そんなはずは……」「哲成」すいっと、亨吾が横にやってきて、こそこそっとオレに耳打ちをした。「お前は、合ってる」「え?」振り仰ぐと、亨吾は苦笑気味に、再びオレの耳元でささやくように言った。「鍵盤ハーモニカの子達が走ってるのに、みんなつられてるんだよ。ヒカルちゃんの手拍子にちゃんと合...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係3

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係2

    【哲成視点】3年2ヶ月ぶりに享吾に会った。「哲成……」そう言って、泣きそうな目でオレを見下ろしてきた享吾……(キョウ……)ズキッと胸が痛くなった。ああ、こいつはまだ、こんなにも、オレのことが好きなんだ。(オレは愛されてる……)安心と嬉しさと……申し訳なさと後悔と……もう、自分の気持ちをどうしたらいいのか、自分でも分からない。だから、「おお!久しぶりー!」明るく……何でもないことのように、言った。***3年2ヶ月前、オレは享吾の元を去った。理由は簡単だ。渋谷と桜井の幸せそうな写真を見て、『オレ達も、こんな未来を選べたら……』と、享吾が小さく、でも真剣に、本気の本気の本音、と分かる声で、言ったからだ。そんなこと、オレ達にはもう、許されないのに。渋谷慶と桜井浩介。オレ達の高校の同級生だ。渋谷は、オレは小学校も中学校も...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係2

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係1

    【亨吾視点】「オレ達、しばらく会わない方がいいと思う」哲成がそういって、オレの前からいなくなったのは、2015年の冬のことだった。原因は……オレの不注意だ。オレがあんなことを言わなければ、オレ達はこの21年と同様に一緒にいられたはずだったのに……それから3年2ヶ月。哲成からは一切連絡はない。でも、Facebookに定期的に風景写真をあげてくれるので、無事の確認はできている。それが無かったら、オレは気がおかしくなっていただろう。いや……おかしくはなっている、か。哲成がいなくなってからは、ずっと仕事で気を紛らせていて、そのまま繁忙期に入り怒涛の連日深夜残業で、本当に頭の中を仕事でいっぱいにしていたのだけれども……一段落ついた夏のはじまりの朝、突然、足が動かなくなった。鉛にでもなったかのように重くて、重くて……手で足...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係1

  • BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係 登場人物・あらすじ

    人物紹介↓主人公1・村上享吾(むらかみきょうご)公認会計士の資格を大学在学中に取得。卒業後、某監査法人で働いていたが、2年前に退職。現在はワインバーのオーナーをしている……ことになっている。容姿端麗。人目を引くイケメン。身長178cm。主人公2・村上哲成(むらかみてつなり)大学卒業後、某電機メーカーに就職。3年ほど前に、海外赴任を希望。それ以来、亨吾とは連絡を取っていない。色白、眼鏡。身長159cm。村上歌子(むらかみうたこ)旧姓・笹井亨吾の妻。亨吾より一つ年上。現在、自宅でピアノ教室の先生をしている。スタイルの良い美人。身長168cm。斉藤健一(さいとうけんいち)亨吾と哲成の高校の同級生。元バスケ部。慶と浩介とは高2の時に仲が良くなり、現在も友人関係が続いている。明るく社交的。身長170cm。渋谷慶(しぶやけ...BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係登場人物・あらすじ

  • BL小説・風のゆくえには~平成の終わりに

    【慶視点】浩介は『記念日』が大好きだ。おれはトンと興味がないので、ほとんど覚えていないけど、浩介はとにかく色々な『記念日』を設定?しているらしい。良く覚えているから、何かに書いてるのか?と聞いてみたら、答えは『否』だった。恐ろしい記憶力だ……しかし。その超人的記憶力を持ってしても、どうしても分からない日があるそうだ。それは『初めて出会った日』記念日。おれ達は、小学校3年生の時に一度だけ一緒に遊んだことがあるらしい。おれの幼児教室かなんかで一緒だった友達が引っ越しするとかで、浩介の最寄駅近くにあったその友達の家にいった際、バスケをして遊んでいたところ、偶然通りかかった浩介を、おれが仲間に誘った、らしい。おれのわずかな記憶と、浩介の記憶と、当時高校生だった姉の記憶が一致しているので、本当のことだと思われる。「やっぱ...BL小説・風のゆくえには~平成の終わりに

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係13・完

    ☆今回ほんの少しだけ具体的性描写があります。苦手な方・年齢に達していない方、ご注意いただきたく……【享吾視点】『好きだよ、キョウ』そんな言葉を聞けるなんて……『愛してるよ……哲成』そんな言葉を言えるなんて……夢のようだ。いや、夢なのかもしれない。夢なら覚めないでくれ……と思いながら、哲成の頬に、耳朶に、首筋に、唇を落とし、シャツを捲りあげて、その白い素肌に……と、思ったのに。「ちょ、ちょっと待った!ちょっと待った!」「…………なんだ」今さらの慌てたような声に、一応手を止めてやる。哲成は真っ赤な顔でこちらを見返してきた。「お前、何するつもりだ!?」「何って……」何を今さら……「何って何に決まってるだろ」「だからその何って何?!」「…………」「…………」これは……「もしかして……知らない、のか?」「知らないっていう...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係13・完

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係12

    【哲成視点】「もう終電間にあわないから、今日は泊まる」アパートの前で待ち伏せをして、帰ってきた亨吾に、内心ドキドキしながら言うと、享吾はアッサリと何でもないように「分かった」とうなずいた。でも、ほんの少し、瞳が動揺したように揺れたのを、オレは見逃さない。でも、買ってきたチーズケーキとエクレアを包丁で半分こしていたら、アップルティーをいれてくれたのは、いつも通り。こうして享吾は「いつも通り」をオレにくれる。(やっぱり、居心地がいい……)やっぱりこのままうやむやにして、ふわふわの優しい時間に包まれていたい……といつものように思ってしまったけれど……『テツ君、なんで勝手に結論出してんの?それは亨吾君と話し合って決める話じゃないの?!』説教してきた西本の言葉が頭の中によみがえってきて、プルプルと首を振った。西本の言うこ...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係12

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係11

    【哲成視点】享吾のことが『好き』そんな単純なことに気がついたのは、大学一年の夏の終わりのことだった。(今さら?)とも思った。今さら気がつくなんて遅すぎる。たぶん、もっとずっと前から『好き』だったのに、ずっと気が付くことができなかったのだ。実際、中学三年生の時に、享吾に告白された時も、『オレも好きなんだろうなあ』と思った記憶はある。享吾が西本ななえと仲良くしているのをムカムカしながら見ていた記憶もある。でも、これが『恋愛』の『好き』なのかと聞かれると、どうしても『よく分からない』という結論に至ってしまって………そうして何年も過ぎて、ようやくだ。ようやく、気が付いた。いや、気が付いた、というより、『自覚した』と言う方が正しいのかもしれない。その笑顔を、ぬくもりを、独り占めしたい。愛しくてたまらない。ずっと一緒にいた...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係11

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係10

    【哲成視点】享吾は高校まではオレのためだけにピアノを弾いていたけれど、今はアルバイトでレストランのお客さんのためにも弾いている。でも、オレが店に聴きに来た時は、オレのために弾いている、らしい。「音が全然違うのよ。お客さんでも耳が良い人は気がついてるわ」以前、歌子さんが教えてくれた。「哲成君が来てる時の享吾君のピアノは、とても、切なくて、優しい音がする」「優しい音……」確かに、オレに聴かせてくれるピアノの音はいつも優しい。優しさで丸く包んでくれる。オレはその優しさにずっと甘え続けてきた。享吾の店にはいつも夜の10時少し前に行く。それで、10時からの享吾のピアノの演奏が始まるまで、運ばれてきた飲み物を味わいながら、その品名を当てることを楽しみにしている。初めて店に来たときに「メニュー表の上から順番に注文する」と宣言...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係10

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係9

    【哲成視点】亨吾のためにオレが出来ること。それは「一緒にいること」だ。考えに考え抜いた結果、そう結論を出したのは、大学生になってからのことだった。大学生になって、亨吾は独り暮らしをはじめた。ご両親がお母さんの実家に同居することになったので、亨吾とお兄さんはそれぞれ大学の近くにアパートを借りることになったそうだ。「母の病状も良い方に向かってるらしくて……」めったに家のことを話さない亨吾が、安心したように言っていたのが印象的だった。だから、オレも決心した。この別離のきっかけを作ったのが、オレだというならば、オレはその責任を取って、何があっても一緒にいて、亨吾を支えよう、と。そしていつか、亨吾とお母さんが、笑って話せるようになったらいいな、と思う。母を亡くしているオレには、もう出来ないことだから、余計に、そう思う。亨...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係9

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係8

    【哲成視点】高校3年生のクリスマスイブ……オレは一晩中、村上享吾の寝顔を見ながら考えていた。(オレはこいつに何をしてやれるだろう……)ひょんなことで話してもらえた真実。享吾と享吾の母親が別れ別れになってしまった原因が、オレだったなんて……布団の中で繋いだ手に力を入れると、条件反射のように享吾もギュッと握り返してくれた。その温もりに胸が痛くなる。(中3の4月……オレがこうして享吾の手を掴んで、無理矢理手を挙げさせて、学級委員をやらせたのが、すべてのはじまりだったんだ……)オレは、こいつに何をしてやればいいんだろう……***高校3年生の5月に、突然、父が再婚した。小5の時に母が亡くなって以来、父は母の月命日にも欠かさずお墓参りにいっていたし、よくアルバムを見返していたし、母のピアノを処分もせずに毎年調律も頼んでいた...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係8

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係7

    【哲成視点】『お前のことが、好きだよ』中学の卒業式の後、村上亨吾は真剣な瞳を真っ直ぐこちらに向けて言ってくれた。『誰にも取られたくない。お前のことが欲しい、と思う』『でも、その感情を優先させて、お前に離れられるのは本末転倒なんだよ』『お前が欲しいって思う感情よりも、お前と一緒に一緒にいたいって感情の方がずっと大きいから』『だから…………一緒にいてほしい』だから、一緒にいた。ずっと、ずっと一緒にいた。***村上亨吾は、高校生になって、ますますかっこよくなった。見た目もだけど、中身も、何というか……遠慮がなくなった。中学の時は、色々なことに遠慮していたのに、卒業の頃から殻が破けてきて、高校になってからは、それこそ、翼が生えたみたいに自由だ。同時に、愛想が悪くなった、とも言える。元々そんなに愛想が良い方ではなかったけ...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係7

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係6

    【亨吾視点】「もう終電間にあわないから、今日は泊まる」あっさりと哲成に言われ、内心かなり動揺したけれど、得意のポーカーフェイスで「分かった」とうなずいた。この半年、哲成は時々うちに遊びには来ていたものの、泊まりはしなかった。しかも、森元真奈と付き合い出してからは、スキンシップも控えているので、哲成に対する免疫がかなり落ちている。一緒のベッドで寝て、理性を保てるかどうか……そんなこと知るわけがない哲成は、ご機嫌で自分で買ってきた品物をテーブルに並べはじめた。「これはどっちも食べたかったから、半分こな。包丁包丁~」「…………」チーズケーキとエクレアだ。おいしそうだな。いつもと変わらない哲成。こいつは何も思ってないんだな……哲成が勝手に包丁を持ってきて半分に切っている様子をフクザツな気持ちで眺めていたら、「どうかした...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係6

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係5

    【享吾視点】大学生になると同時に一人暮らしを始めた。家族で住んでいたマンションを引き払うことになったからだ。オレの母親は、オレが中学3年生の時に、精神を病んで数ヶ月入院し、退院後は実家に戻っている。祖母は、亭主関白だった祖父を看取って、ようやく自由な時間を得たばかりだったというのに、今度は娘の世話をすることになるとは思いもしなかっただろう……母の記憶は入院時とかわらず、結婚当初に戻っているため、オレと兄は混乱を避けるために会うことは許されず、父だけが週末に会いに行くようにしていた。それから約3年……、母の世話をしている祖母の気力と体力が限界にきていたこともあり、オレが高校を卒業したのを機に、父が母の実家で同居することになったのだ。「落ちついたら会わせるから、それまで待っててくれ」と、父は申し訳なさそうに言ってく...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係5

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係4

    【享吾視点】高校三年生。クリスマスイブ前日のことだった。「あ!キョウ!待ってたぞ!」塾に着いた途端、久しぶりに、跳ねるように村上哲成がこちらにやってきた。最近は学校でも暗い表情をしていることが多いので、その明るい様子にホッとした……のも束の間、「あのな、明日の夜、森元の家でパーティーやるんだって!」「…………は?」森元、の名前に、ピキッと自分の顔が固まったのが分かった。(森元……真奈)明らかに哲成に気がある女子だ。計算高くすり寄っているのに、鈍感哲成は全然気が付いていない……「森元のうちってすげー金持ちだから、すげー旨い物出てくるんだって!」「…………」「キョウも一緒に行こうぜ!」「え」一緒に?それは……聞きかえそうとしたところ、スッといつの間に、哲成の横に人影が寄ってきていた。「キョウ君も是非来て、ね?」「…...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係4

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係3

    【享吾視点】高校生活は、想像以上に楽しく、充実したものだった。生徒の自主性に任された行事の数々は、毎回クラスを上げてのお祭り騒ぎになるし、それでいて勉強も、少しでもサボると順位が下がるので油断できない。部活も、バスケ部は上級生の人数が少ないこともあって、入部早々にレギュラー入りし、かなりハードなことを要求されたため、それに応えるのに必死になった。村上哲成は、当初の予定通り数学部に入部した。こちらも大会に出場して好成績をおさめるなど、充実した活動を行っていた。部活の話をする哲成は、いつも楽しそうで、鼻を膨らませながら話すのが可愛くて、見ているだけで幸せな気持ちになる。クラスは、1年生の時は2組と8組で、棟も階も違ってしまったけれど、2年では1組と2組で隣同士だったので、体育が一緒だったり、修学旅行も部屋が隣だった...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係3

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係2

    【享吾視点】白浜高校に入学して、自分は井の中の蛙だったのだと、思い知らされた。入学早々の実力テストで、わりと本気をだしたのに、30番台を取ってしまったのだ。「32番ならいいじゃねーかよ!オレなんか109番だよ!」村上哲成がプンプン怒りながら言っているのが面白くて可愛くて、我慢できずグリグリ頭を撫でまわしていると、偶然、同じ中学だった渋谷慶が通りかかった。渋谷にも話を振ってみると、渋谷は綺麗な顔を真っ青にして、ボソッといった。「おれ、392番……」「え、マジで?」「とにかく英語が悪すぎた。エゲツナイあの長文」「なー。さすが白高!レベル高いよなー」「だなー」小柄な二人が絡んでいる様子を見るのは、中学の頃から好きだった。何だか癒される。思わず、少し笑ってみていると、「何笑ってんだよー!」と村上に横から抱きつかれた。「...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係2

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係1

    【西本ななえ視点】『テツ君と亨吾君は両想い』そう確信したのは中学3年のバレンタインの時だった。テツ君に中学3年間片想いをしていた身としては、大変複雑ではあったけれど、『変な女とどうこうなるよりは全然マシ!』と自分を励まして、卒業式の日に亨吾君の背中を押してあげた。その後、高校の時に何度か見かけた二人は、中学の時よりも更にベタベタしていたので、(やっぱり付き合うことになったんだなあ)と、嬉しく思っていた。嬉しく思えるまで吹っ切れた自分を自分でほめていたのに……なのに。中学を卒業した4年後に行われた同窓会で、頭の中が真っ白になるほどの衝撃を受けた。「テツ君の彼女の真奈でーす♥」そう言って、テツ君の横でニコニコの笑顔を見せたのは、小柄なテツ君よりも更に小柄で、フワフワの茶色い髪にフリフリのスカートをはいた、人形みたい...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係1

  • BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係 登場人物・あらすじ

    人物紹介↓主人公1・村上享吾(むらかみきょうご)大学2年。身長178cm。容姿端麗。基本的に無表情で淡々としているけれど、村上哲成の前でだけは素が出る。現在、1人暮らし中。主人公2・村上哲成(むらかみてつなり)大学2年。身長159cm。ひたすら明るいお調子者。色白、眼鏡。現在、父親と父親の後妻とその間に生まれた子供との4人暮らし。西本ななえ(にしもとななえ)大学2年。身長160cm。亨吾と哲成の中学の同級生。哲成に中学3年間片想いをしていた。森元真奈(もりもとまな)大学2年。身長145cm。哲成の彼女。母親が某化粧品メーカーの社長。笹井歌子(ささいうたこ)大学3年。身長168cm。亨吾のバイト先の先輩。上岡武史(かみおかたけし)大学2年。身長180cm。元バスケ部。何だかんだと実は世話焼き体質。1つ年下の幼馴染...BL小説・風のゆくえには~続・2つの円の位置関係登場人物・あらすじ

  • BL小説・風のゆくえには~一歩後をゆく裏話とおまけ

    短編『一歩後をゆく』は、浩介就職3ヶ月、慶大学4年生、浩介の一人暮らしのアパートでラブラブ半同棲生活送り始めたころのお話です。本日は、その二人の元を訪れた保険外交員・荻野夏希さん視点をお送りします。荻野さんは二人の高校の同級生。元バスケ部。慶とは中学も一緒でした。------【荻野夏希視点】雑談を交えながら保険の契約の説明をしている最中、「じゃあ、おれの保険金の受取、慶にするって………できる?」桜井君の真剣な目にドキッとした。(え、この二人って、まさかやっぱり、そういう関係……)って、思ったことは一瞬のうちに奥にしまい込んで、自信たっぷりに、肯いてあげる。「もちろん。できます」「そう……」桜井君の引き続きの真剣な表情。その桜井君を心配げに見つめる渋谷君の瞳……(ふーん……)渋谷君にそんな顔させられるなんて……や...BL小説・風のゆくえには~一歩後をゆく裏話とおまけ

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、尚(創作小説屋)さんをフォローしませんか?

ハンドル名
尚(創作小説屋)さん
ブログタイトル
創作小説屋
フォロー
創作小説屋

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用