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恋愛小説 ハッピ-エンドばかりじゃないけれど https://bruwspalix.hatenablog.com/

おとなになったばかりの男女の大学生が、真剣だけど行ったり来たりを繰り返す恋と友情の物語です。小説を書くのが初めての私にとっては、彼らがどのように成長していくのか、実は興味津々なのです。自分自身も彼らと共に成長していければと思っています。

こわれたタイムマシン
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2023/06/16

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  • 第38話 梅雨空も 美里の心に虹かかる

    どうも今年の梅雨は当たりのようで、毎日毎日雨がしとしと降って気持ちが塞いでしまいそうだ。きょうも朝から降り続いた雨が、夕方近くなって霧雨になっている。 気持ちが憂うつなのはそればかりではない。雨の日は花の売れ行きがイマイチなのだ。ただでさえ雨の日には荷物が多めになるので、更なる荷物になる花を買う客が少なくなるのも頷ける。余程の花好きなら別だろうけど。 店先に出て今日は暇だなあ、なんて思っていたら欠伸が出てきてしまった。思わず周りを見回したが、誰もいないのでホッとする。 そんなことを考えていたら、右手から自転車が近づいてくるのが見えた。結構スピ-ドが出ているようで危ない。 そう言えば初めて悠介と…

  • 第37話 助けた女性は超セクシ—!

    悠介はJR山手線の最寄り駅で降りて、大学キャンパスへ早足に急いでいた。 新宿駅で15分ほど足止めを食ったためだが、なんとか次の講義には間に合いそうだ。 ほんの少し前に起こった出来事を思い出そうとして、柄にもなく顔を赤らめてしまった。 救護室に彼女を運び込んで寝かせてから、ホッと大きな息を吐いて彼女をあらためて見てみた。実はどのような女性か顔も服装もはっきり見ていなかったのだ。 満員電車内で起こったことで、彼女の顔を見られなかったし、抱きかかえてからは(初体験だったこともあり)女性の体を何処かにぶつけないように細心の注意を払っていたせいか、そのような些細なこと(!)に思いが及ばなかったという事ら…

  • 悠介、人生初のお姫様抱っこ! 第36話

    今日も相変わらずの雨降りだ。 中央線の荻窪駅で次の電車を待っているが、なかなか到着しない。また事故かなんかあったのかもしれない。電車は来ないのに、人はホームにどんどん入ってくるので溢れんばかりの人人人である。 ホ-ムが人ではちきれそうになった時、やっと電車が入ってきた。 超満員状態の車両から降りる人はほとんどいないのに、乗りたい人は山ほどいる。 そうすると、乗りたい人はある程度弾みをつけて車両に乗り込んでいく。後ろから押されるのに身を任すのが最も安全だろう。 やっと車内には入れたものの、つり革や手すりは近くには無い。つまり浮草のようにゆ-らゆらと波間に漂うように身を任せるしかない。 いつの間に…

  • 親友たち(3)美里の運命の人 第35話

    大学生男女と女子高生の恋の物語。今回は美里の運命の人についてです。

  • 親友たち(2)夜道の防犯対策はアレ 第34話

    大学生男女の恋の物語。今回は悠介と親友の純一が、更なる襲撃に備えて対策を練ります。

  • 親友たち(1)初キスの熱い想い 第33話

    大学生男女の恋の物語。今回は美波が親友に、従兄の悠介への告白とキスしたことを話すシーンです。

  • 恋する女の顔―美里の熱い想い― 第32話

    大学生男女の恋の物語。今回は美里が王子様に再会します。

  • その事件後 第31話

    大学生男女の恋の物語。今回は襲撃後の当事者たちそれぞれの思いです。

  • 襲撃者 第30話

    大学生男女の恋の物語。今回は悠介たちが夜道で襲われる話です。

  • 悠介の葛藤 第29話

    大学生男女の恋の物語。今回は2人の女性を好きになった男の葛藤です。

  • 第28話 イケメンの客

    その日、美里がフラワ-ショップの店番をしていたのには少々訳があった。 母が急用で外出しなければならず、しかもアルバイトの人の都合がつかなかったので、急遽美里が駆り出されたという訳だった。幸いにも今日の授業は午前中だけだったので、昼過ぎには店に出ることが出来た。 その男が店に入ってきたとき、美里は先客の相手をしていたのだが、その客が帰った後、その男を見てドキッと胸が締め付けられるほど、鼓動が高まるのを感じた。 黒のニットカーディガンを白のTシャツの上に着て、下はオリ―ブ色のチノパンツという、どこかのファッション雑誌から抜け出ていた様な、あるいはマネキン買いをしたような男の姿にちょっと圧倒されたの…

  • 第27話 彼女は魔女?

    【お知らせ】 このブログの小説は、これまでほぼ毎日1話ずつ投稿してきましたが、内容をより充実して継続していけるように、次回投稿を4日か5日後に、その後は投稿間隔を当初考えていた2,3日に1回程度とさせていただきたく考えています。(場合によっては短くなるかもしれませんが。) このところ、スト-リ-に迷いが出てきて、中々話が進んでくれないことがままあるからです。もう少し先を見据えながら、目の前の1話1話を丁寧に紡いでいきたいと思います。 私自身としては、とにかく面白いものを書いていくことを第一に考えていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。 第27話 彼女は魔女? 悠介は自分が何を言われた…

  • 第26話 美波の告白

    美波の風邪はなかなか治らなかった。 もう3日も寝たままだ。熱があるから起きるのも億劫だし、食欲もほとんどない。熱が39度を超えることも度々で、喉も痛い。きっとそのうち咳も出てくるに違いない。 ちょっと怖かったのだが、あれからあのような怖い夢は見ていない。 このような体が弱っている時にあんな怖い夢を見たら、本当に気絶してしまうわよ。うん、もしかして失神しちゃうのかな? まあどっちでもいいや、そんなこと。 そんなことを考えていたら、またとろとろと眠ってしまったようだ。 不意に目が覚めたら、なんとベッドの横に悠介が立膝を立てているのに気付いて卒倒しそうなくらいにびっくりした。 美波は何か言おうとした…

  • 第25話 美波の災難

    その夜、美波の帰りが遅くなったのには特にこれと言った理由はなかったのだが、最寄りのメトロの駅を降りたのが9時半をとうに過ぎていた。 メトロの出口は大通りに面しているから車や人の往来は多いが、1本また1本と脇道に入るにつけ人通りがパタッと途絶えてしまい、街灯がポツンポツンと侘しく地面を照らしている坂の多い夜道を歩くのは、何とも言えない薄気味悪さがある。 -毎日通っている道なのに、何故か今夜は感じが違うみたい…。 それに加えて、家までの道のりで最も厄介なのは途中に小さい公園があることだった。昼間の明るい時間であれば、そこを抜けていけば近道なので通ることもあるが、夜しかも9時過ぎであればとてもではな…

  • 第24話 愛のさざ波

    悠介の従妹である美波はどうしているであろうか? 今日はゴ-ルデンウィーク明けの月曜で通常通りの授業があったから、美波が帰宅したのは4時過ぎだった。朝からどんよりとした曇り空で、日中でも5月にしては肌寒いと感じるくらいの陰鬱な一日だったこともあり、美里はリビングのソファ―に腰掛けたら、どっと疲れが出たような気分だった。何となく体が怠く感じる。 -連休中に遊び癖がついちゃったからかな? あ-あ、連休が過ぎちゃうとつまんないなぁ。 連休前半は例の向井のことで頭が一杯だったし、昨日までの4連休も夕方からは気を抜けなかったから体より神経が参っているのかもしれない。 一体いつまでこんな生活を続けなければな…

  • 第23話 女たらしの噂

    美里は胸の中でうずうずしている気持ちを持て余して、ついに真理に電話するのを抑えきれなかった。文字では書ききれない程の長さになりそうに思えたから。 「うん、彼のこと色々分かったし私のこともまあ一応話せたし、うまくいったのかな?」 「そう、じゃあ美里の人生初デ-トは大成功という訳ね。良かったじゃない。おめでとう!」 でも結局は電話で話した翌日に会うことになった。 こういう話の大事なところは会って話さないとダメなのよ、と真理が駄々をこねたからだが、美里にしても会って話すことは、むしろ願ってもない嬉しいことなのだ。直接会って《成果》を話し、真理の反応を確かめながら喜びを共有する、こんな素敵なことがある…

  • 第22話 初デ-ト(2)

    どうしていいか途方に暮れていた彼であったが、目の前の惨劇にやっと名案を思い付いたかのように「アッ、そうだ」と呟くと、パンツの後ろポケットに入れていたハンカチを取り出して、女性に渡していい程度の綺麗さであることを確かめてから、美里に両手で差し出してきた。 美里は無言でそれを受け取り涙を拭きとった。もう泣き虫の私はどこかに行ってしまったようなので、美里はホッとした。 「ありがとう。」 「それ、良かったら持っていていいよ。僕はもう一つ持ってきたから。」 もう一つ……その言葉を聞いたらまた目が潤みそうになってきた…。 -今日の私は感傷的すぎるわ。どうしちゃったんだろう、本当に。 美里たちは自然と並んで…

  • 第21話 初デ-ト(1)

    第21話を始める前に、「主な登場人物」と「あらすじ」からどうぞ。 書いている私自身でも、時々名前を間違えそうになるので…。 主な登場人物 城ケ崎悠介 私立W大学理工学部2年生 一見優男で優柔不断なところもあるが、反面いったん決めたらとことんやる一途な一面もある。曲がったことが嫌いで、家族(特に女性陣)から不器用な性格と言われる。小さい頃から失恋ばかりで、恋愛に関しては成功体験ゼロ。2歳上の姉と両親との4人家族。この物語の主人公。 松崎美波 悠介の従妹 K大女子高3年生 悠介が小さい頃から密かに思いを寄せている、スレンダ—で可憐な女子。性格は大人しい。過去のある事から、悠介とは必要以上に意識し合…

  • 第20話 我が良き友よ

    -この件は美波には言わないでおこう。言ったって怖がらせるだけだから。 夜道を急ぎながら悠介は先程のことを考えていた。 あの車は間違いなく悠介を狙ったものだろう。いや、狙ったというよりも「脅しをかけた」と言った方が当たっているかもしれない。脅して怖気させようとしたのかな、それとも単なる嫌がらせだろうか。 -知りたいのだったら、本人に聞くしかないか。 まあ、それができれば苦労はしないのだが。 悠介は夜道を歩きながら細心の注意を払っていた。もしも家の住所を知られたら、この先非常に厄介なことになるかもしれなかった。端的に言えば危害を加えられることもあるかもしれない。 何も知らない家族を危ない目には会わ…

  • 第19話 教えてください。あなたはどっちの側にいる人なの?

    -アーア、困ったわ。 また美里はため息をついてスマホの画面を見つめた。 ここ数日、美波は同じことを繰り返していた。 もし悠介さんと付き合うようになったら、いつかあの父親に対する憎しみを悠介に対しても抱くようになってしまうのではないか? 美里は父親が家を出ていった日のことを思い出していた。中学2年になったばかりの春の夜だった。桜は咲いていたが、花冷えのする一日で、出ていく彼は美里に声を掛けることも無く黙って出て行った。もう相手の女のことしか頭になかったのだろう。 美里が高校に入学してから、母はぽつりぽつりと独り言のように美里に話すようになった。お父さんに女ができたのはいつからだとか、帰宅が遅くな…

  • 第18話 美波さん、あなたは彼のことが好きなんですか?

    夕食を終えて部屋に戻って来た美波は、ため息をつきながらベッドに寝転がった。 食事中に母が何度となく聞いてくるのが鬱陶しかった。このところあまり元気が無かったから心配してくれているのは分かるけど、ちょっとウンザリする。明日の学校の準備があるから、と言って早めに席を立った。 まあいいや、と呟いて、気持ちを今別れてきた悠介に切り替えた。 -やっぱり彼に話してよかったわ。 向井の件はまだ解決はしていないけれど、悠介に相談してからは今のところ何も起きていない。 -このまま何もなければいいのだけど…。 いつまでも悠介に頼っている訳にもいかない事はわかっている。大学の授業に出なければいけないし、勉強もしなけ…

  • 第17話 危機一髪

    芦田祐子という美波の親友は、ぽっちゃりとした愛嬌のある顔立ちの少女であった。 美波が言っていたように、しっかり者で好奇心が強いというのは、上目遣いで探るように悠介を見る仕草で何とはなしに分るような気がする。年上の悠介に緊張していたり遠慮するような素振りはないようだ。 昨日美波との別れ際に、悠介は2つのことを美波に頼んでおいたのだ。 まず、彼女が最も信頼出来て、向井健のことを少しでも知っている人物に合わせてもらうこと、そしてその人に全てを話し我々に協力してもらうよう頼むことだった。悠介が恋人役をやる限りは、最小限でも口裏を合わせておく必要があるからだ。 「今日は来てくれてありがとう。大体の話は美…

  • 第16話 賽は投げられた

    君は一人じゃない、なんてカッコいいこと言って安請け合い(?)したものの、すぐには名案が湧いてこなかった。大体、悠介の周りにスト―カ―は勿論のこと、スト―カ―被害を受けた人もいなければ、そのような話も噂も聞いたことは無かったからだ。 「ちょっとネットで調べてみようか。何かヒントがあるかもしれないからね。」 スト―カ―と言う言葉で検索してみると、すぐに知りたい情報が見つかった。 「君の場合に該当するのは、繰り返しメッセ-ジを送ってくること、そして待ち伏せだな。」 読んでいるのは、ある県警ホームぺ-ジの情報だった。読んでいてやはりそうか、と唸った。悠介は美波にスマホの画面を見せながら言った。 「この…

  • 第15話 君はもう一人じゃない

    美波との待ち合わせ場所は、美波の通う高校と僕の大学とのほぼ中間にある、御茶ノ水にあるコーヒ-チェ―ン店にした。付き合っている訳ではないし、別にロマンティックなところで会う必要は無かった。 彼女から届いたメッセ-ジは「相談に乗って欲しいことがあるので、会う事出来ますか?」だったと思う。会って欲しい、には驚いた。電話では話せないことなのだろうが、あのことがあってからそれ程経っていないのに…。 -やっぱり、あれの返事かな? 店内を眺めてみて美里の姿がなかったので、入り口が良く見える空いていた小さなテ-ブルに腰かけて待つことにした。約束の時間にはまだある。 念のためメッセ-ジが来てないことを確認して店…

  • 第14話 もう心変わりですか?

    -どうしたんだろうか? 悠介は心配を通り越して不安に襲われた。 -いくら何でも、何も来ないってどういうことだよ! 会った翌日、つまり今日の朝にメッセ-ジを送ったが返事は無かった。夕方も送ったが返事なし。 -なんだよ! また不機嫌の魔法にかかっちゃったのかよ⁉ こうなるとお手上げである。 別れる前の彼女の態度からは、異変を予感させることは無かった自信がある。という事は、別れてから彼女の身に何か起こったのだろうか? そうとしか思えなかった。 -ヤレヤレ、女って言うのは面倒くさい生き物だな! と愚痴を言いながらスマホをベッドに放り投げて、壁に貼ってあるヌードポスタ―を横目で眺めた。 あんなに悠介を虜…

  • 第13話 私には男の人を愛せることが出来るのでしょうか?

    合コン相手の男子学生4人と別れた後、美里は今晩泊まることになっている真理のマンションで話の続きをすることになった。本当は4人で今晩の「戦果」を確認し合いたかったのだが、一人がちょっと悪酔いした様だったので、実家が同じ沿線のもう一人が家へ送り届けることになったのだ。 まあ、来週にいくらでもこの話は出来るからいいや。 真理の賃貸マンションは、私鉄沿線にある女性専用のワンル-ムマンションだった。セキュリティはいいらしい。 でも室内は窮屈なんだろうなぁ、と想像していたのだが、いざ入ってみると奇麗に片付いているせいか思っていたほどでは無かった。ただ、そうは言っても最も大きい家具であるベッドの存在感は大き…

  • 第12話 あなたはもう氷の女王ではない

    宴は混沌としてきたようだ。 女性陣は全員未成年なので、我々4人も軽い飲み物を頼んでいたのだが、女性陣のひとりが我々のビールを、小鳥が水飲み場で水を飲むように上品に飲んだのだが、量はごくわずかでも飲みなれていないから、すぐに酔っぱらったような状態になってしまった。 それが引き金になったのか、この頃になると全員の仮面はとれてあちこち笑い声に包まれていた。 8人はほぼペア-毎に分かれ、悠介は知り合いだと勘違いされて例のミサトとかいう「婦人警官」と話すことが多くなった。他のペア-は話がはずんでいるように見える。 一方、悠介たち2人は話すことが多くなったとはいえ、けっして話が弾んでいるという訳では無かっ…

  • 第11話 悪夢の再来?

    翌日大学へ行くと吉報⁉が待っていた。 企画していた合コンの日取りが決まったのだという。日程もそうだが、もっと重要なのはどこの誰とやるかだ。 それはF女学院の1年生4人ということだった。それなら上出来、と言っていい。 F女学院大学は、数あるお嬢さん学校の中でも美人が多いと噂される女子大である。 こちらの4人は、悠介と滝本、合コンのセッテイングをした吉福、それに商学部の黒川というメンバ―になった。全員付属高校から一緒の連中だ。これは面白くなりそうだぞ、という期待が膨らむ。 話し上手、というよりホラをさも本当のように話す話術が絶品の滝本、選抜された4人の中で一番の長身(185センチ!)の割には身のこ…

  • 第10話 杞憂が現実に! 満員電車内はホラ-劇場‼

    それは杞憂には終わらなかった。 その日は朝から雨が降っている陰鬱な日だった。 悠介は最寄り駅である荻窪から新宿まで中央線の快速に乗り、ぎゅうぎゅう詰めの車内で、足場を気にしながらあっちに揺られこっちに揺られ、浮草のように身を任せていたら何だか眠気を催してきた、まさにその時だった。 突然、右手首を掴まれた。いやガッチリと固められたように、全く右腕を動かせなくなっていた。身体も金縛りになったみたいに、何故か身動き一つできない。 -何だぁ、これは? 何が起こったんだぁ? そう思った途端、女性の鋭い大声が車内に響き渡った。 「痴漢です!痴漢で-す!」 そう聞いたと思ったら、僕の右手が、右腕が上の方に引…

  • 第9話 恐ろしく気の強い女

    その日は日曜日の午後で、悠介は母親に頼まれて母方の祖母が入院している病院に届け物をした帰りだった。 祖母の病状は良くなかった。顔色も悪かったし元気も無かったが、ショックだったのは、元々小柄だった体がさらに一回り縮こまったように小さくなり、顔も手も皺だらけにやせ細っていたからだった。 いつも悠介ちゃん、悠介ちゃんと優しい声で呼んでくれた祖母の姿はそこには無かった。 -もう長くは無いかも知れないな。もしかすると、おばあちゃんの顔を見るのは、今日が最後かもしれない…。 そう思うと目頭が熱くなり、視界がぼんやり霞みだした。 僕が子供の頃、祖母は本当に優しい人だった。僕は祖母に叱られたことが無かったと思…

  • 第8話 痴漢にされた男

    4月中旬とはいえ、日曜日の午後の気温は25度にも達して日差しは強かった。 その時、美里は店先の乾ききった歩道に水を撒いていたのだが、少し前に店を出て行った中年の男の客に腹を立てていたので、店の前を右から近づいてくる自転車に全く注意していなかった。 「全く頭に来ちゃう。私の体をじろじろ見て、可愛いね、ですって。本当に嫌らしいオジンだわ。ぶるるるッ、虫唾が走るはわ、気持ち悪い!!」 そういって思わず水の入った柄杓を乱暴に振ってしまったら、柄杓から放たれた水しぶきをかわそうして、真横からスピ-ドを出して通り過ぎようとしていた自転車と衝突しそうになってしまった。 何とか自転車をかわしてホッとした途端、…

  • 第7話 後悔 彼がいてくれたら

    「へえ-、それじゃあ従兄の悠介って人には断ったわけ? なんかもったいない感じ。」 「どうしてそう思うの?」 「だって、彼は美波のことが好きで告白したんでしょ?だったらチョットは付き合ってあげてもよかったのに、って事よ。」 「そうじゃなく、何で私が断ったことになるかってことよ。はっきりと断ったわけではないわ。」 「だって美波がそう言ったじゃないの。好きは好きでもお兄さんみたいな感じ、とか、付き合うのはピンとこない、とか。それって告白を断る際の定番じゃないの。知らなかった訳じゃあないでしょ?」 「あの時は動揺してて、どう返事していいか分からなかったから、とりあえずそう返事をしたんだけど…。つまり今…

  • 第6話 あり得ぬ再会は、気まぐれな運命の悪戯?

    うわあ― と欠伸を噛み殺しながら、あ-眠い、と呟いた。 昨日は学部の仲間と居酒屋で飲んだ後、終電近くまで麻雀してしまったのだ。 今朝の1時限目は体育で選択したテニスの授業だが、今回は雨が降っているので本部キャンパスの教室での講義である。先程から名前が呼ばれ出欠席がとられているところだ。 高校時代に一応テニス部に入っていたので、テニスはまあできる。つまりこの授業は遊びみたいなもんである、という訳ではないが、昨日は少し騒ぎ過ぎてしまったようで、喉はガラガラだし体も疲れているようだ。 また欠伸が出そうになるのを必死で堪える。 点呼が終わり、では始めましょうか、と教授が言ったその時、廊下でバタバタと音…

  • 第5話 これって友情なの?

    「ヒヤァ-、お前に告白するような女子がいるとは驚きだな。それも従妹とわな。それで、お前これからどうすんの?」 と言って、悠介を見ながらニヤリと笑った。 「どうするって、どうしようもないだろう? これからは電話で会いたいなんて言えないし…。でも正直に言えば、俺は結構楽観的に考えていたんだよな。彼女はOKと言うんじゃあないかと思っていたから、ショックは大きいよ。」 「様子見るためにメッセ-ジ送るのはどうだ? そのくらいは許してもらえるだろう。」 「いや、彼女のメルアド知らないからダメだ。」 月曜の午後の陽光を浴びながら、キャンパス内の18階建てのビルといくつかの3階建ての建物に囲まれた小さな広場の…

  • 第4話 「戸惑い」

    美波は微動だにしないで僕の目をじっと見つめている。まるで僕の告白が真実かどうかを見極めようとするかのように。緊張しているせいか、顔が蒼白に変わり強張って見える。 彼女は一つ深呼吸をすると、ゆっくりと話し出した。 「驚いちゃった、急にあんなこと言うんだから、本当に驚いちゃったわ。悠介クンがそんな風に私のこと思っていてくれているなんて…」 と戸惑いながらも、笑顔が彼女の顔に戻って来たようだ。それは、はにかんでいるような、戸惑っているような複雑な笑顔にみえた。 「そういう風に思ってくれて嬉しいんだけど… でも何て返事をしたらいいか…」 どうしたらいいの、と訴えるような目を向けてくる。 もうここから悠…

  • 第3話 「告白」

    ランキング参加中創作家達の集いの場 あの時、美波ちゃんにあんなこと言われた時は、悠介は心臓が飛び出るほど驚いてしまった。 あの場が一瞬凍りついた、様に感じられた。 凄く嬉しかったけど同時に恥ずかしかったのも事実だ。それに叔母さんが慌てて美波ちゃんをたしなめていたので、彼自身も妙にオドオドしてしまったと思う。何か聞いてはいけないことを聞いてしまったように。僕の母も何とも言えないような顔をしていたと思う。 でも、もっと後になって考えた時に、何故叔母さんはあんなに慌てていたのか、単に思い付きで口走る子供の戯言なのに。いや、だからこそ慌てたのかな。 高校生の時、従兄妹同士の結婚について色々調べてみた。…

  • 第2話 密かな思い

    美波は受話器をそっと置いた。 まだ胸がドキドキしている。 -驚いたわ、電話してくるなんて思ってもみなかった。 先ほど母から、悠介クンから電話よ、と聞いた時には思わず、エーっと声を上げてしまった。 今年正月に会った時はあまり話が出来なかったような気がする。話したのは主に、従姉の麗子さん、つまり悠介クンの姉とだけだった。 悠介クンとは、親戚一同がいる前ではどうも話しずらいし、目を合わせるのが何故か恥ずかしい。 -どうしてなんだろう。いつからこんな気持ちになったのだろう。 彼は2歳年上の従兄だけど、私は彼のことを小さい頃から「悠介クン」と呼んでいる。母がそう呼んでいたので、わたしも物心ついたころから…

  • 第1話 従兄妹同士

    あらすじ 付属高校から理工系学部に進んだ大学2年生の城ケ崎悠介は、男子高出身だったこともあり、高校以来女子学生との出会いが少ないのが悩みと言えば悩み。どちらかと言えば周りの仲間たちに埋もれて存在感の薄かった悠介が、これから出会う人たちとの交流・交際を通して成長していく恋愛物語です。 週に2,3回程度追加予定です。 主な登場人物 (第10話まで) 城ケ崎悠介 私立W大学理工学部2年生 一見優男で優柔不断なところもあるが、反面いったん決めたらとことんやる一途な一面もある。曲がったことが嫌いで、家族(特に女性陣)から不器用な性格と言われる。小さい頃から失恋ばかりで、恋愛に関しては成功体験ゼロ。2歳上…

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