夏休みも残すところ1週間。就活やバイトに追われ、結局夏休み中に花沢類と会ったのもほんの数日、しかもキャンパス内でだけだった為、「少しは俺に時間を割いてよ。」と言われ、今日は2人でドライブに行ってきた。少し遠出をして、街をプラプラ散策し、美味
夏休みも残すところ1週間。就活やバイトに追われ、結局夏休み中に花沢類と会ったのもほんの数日、しかもキャンパス内でだけだった為、「少しは俺に時間を割いてよ。」と言われ、今日は2人でドライブに行ってきた。少し遠出をして、街をプラプラ散策し、美味
花沢類に連れられて、美音さんが入院している病院にまで来てしまった。美音さんと特別親しい訳でもない。あたしなんかが.........と思ったけれど、断れずに付いて来てしまった理由はただ1つ。道明寺に会いたかったから。別に変な意味では無い。ただ
新潟の実家から道明寺邸に戻り3日が過ぎた。その間、一度も道明寺の姿を見ていない。あの日、新潟から急遽東京に戻った道明寺に「無事に着いた?」とメールを送ったけれど、未だに返事は無い。美音さんに何があったのだろうか。道明寺に会ったら聞いてみよう
総二郎の電話で呼び出され、東京の大学病院に着いたのは22時を回っていた。病室の前に行くと、あきらと総二郎が硬い表情で立っていて、俺を見つけると、「おう、待ってたぞ。」と、肩に手を置く。「美音は?」「安静に…って言われて眠ってる。中に美音の両
次の日、目を覚ますとあたしの両隣の布団は空だった。慌てて下におりると、リビングでパパとママ、進、そして道明寺が仲良く朝ごはん中。「つくし、遅いわよ〜。」ママにそう言われ時計を見ると、まだ8時前。「えっ、みんなが早くない?」困惑しながら急いで
新潟行きの新幹線の中。あたしの隣には長い足を窮屈そうに組み、座る道明寺がいる。新幹線に乗るまでは何かの冗談だと思っていたのに、まさか本当に新潟までくるとは思いもしなかった。だから、もう何度も聞いたセリフをもう一度この人に言う。「本当に付いて
パーティーの日以来、道明寺の機嫌が悪い。会えば突っかかってくるし話せば口論になる。「喧嘩でもした?」椿さんにも心配されるけど、思い当たる節は全くない。今日も朝から登校中の車の中で、「おまえさ、」と、喧嘩腰にあたしを睨むこの男。「何よっ。」「
パーティーが終わり邸は静けさを取り戻したというのに、俺の部屋ではまだこいつらがうだうだと長居をして騒いでいる。「早く帰れよお前らも。」「司ー、いーだろ久しぶりにおまえの部屋に来たんだから。」「どうせ、俺のコレクションを呑みてぇだけだろ。」長
毎年恒例の会長のバースデーパーティーが始まった。招待客は300人ほど、邸の中庭をメインにオーケストラの演奏と三ツ星シェフの料理が並んでいる。パーティーには花沢家、西門家、美作家ももちろん招待されていて久しぶりにF4の両親が顔を合わせた。そし
それから3週間がたった頃、邸の中がいつもより慌ただしい事に気付き椿さんに聞いてみる。「何かあるんですか?」「来週の日曜日、おじい様のお誕生日なの。毎年、邸にお客様をお呼びしてパーティーを開くのよ。今年はもちろんつくしちゃんも参加してね。そう
「最近、司とはどう?」大学内にあるいつものベンチ。邸で作ってきたお弁当を食べているあたしに花沢類が聞く。「どうって相変わらず態度だけは大きいけど…、まぁ、以前よりは近付きやすくなったかな。」「へぇ、話したりするんだ。」「するよ。でも、あの人
邸のジムで汗を流し、シャワーを出ると22時を過ぎていた。自室に戻るため廊下を歩いていると、どこからか楽しげな声が聞こえてくる。その声の方へ歩いていくと、そこは小さなキッチンが備え付けてある第2ダイニング。俺たちがいつも使っているメインダイニ
最近、道明寺の様子が変だ。どう変なのか、そう聞かれれば上手く言えないけれど、何となく態度が柔らかくなったような気がする。つい先日は朝の車の中で、「おまえの両親はどこに住んでる?」と急に聞いてくるから、「新潟に引っ越したけど」と答えると、「意
あの女が道明寺邸で暮らすようになって1ヶ月が過ぎた。ババァや姉ちゃんとはかなり打ち解けているし、タマをはじめ使用人や運転手たちとも距離が近い。俺だけがあの女を受け入れていないようでなぜだか居心地が悪い。でも、受け入れらんねぇ理由はある。俺に
それから数日後。バイトが終わりバスに乗り道明寺邸へと帰る。15分ほどバスに揺られていると、瞼が重くなってきたが、帰ってからもまだ宿題がある。頑張らなきゃ!と自分に言い聞かせながらバスを降り邸まで歩く。そして、邸の門にある呼び鈴を鳴らそうとし
道明寺邸に帰宅したのは19時を回っていた。エントランスに入ると、メイド頭のタマさんが出迎えてくれる。「お帰りなさいませ。遅かったですね。」「すみません、ちょっと用事があって。」「すぐにお食事をご用意しますので、ダイニングへお越しください。」
大学内にある図書館の中庭にあたしだけの憩いの場所がある。そこは木々に囲まれた小さなスペースで古いベンチが一つだけポツンと置かれている。他のベンチは鉄製で何度も色を塗りかけられて綺麗になっているのに、まるでそこにあるベンチだけ存在を忘れられた
次の日の朝、いつも通りの時間にエントランスに行くと女が車の前で待っていた。「おはようございます。」と小さく挨拶されたのを無視して車に乗り込むと、女も遅れて反対側から乗り込んでくる。これが毎日続くのかと思うとうんざりだが、会長の言うことは絶対
「何もそこまでする必要ねーだろっ。」邸にある書斎で、俺はババァに向かってそう怒鳴っていた。「会長がそう決めたんだから仕方ないでしょ。」「人助けにも程があるだろ。たかが道で倒れたのを助けてもらった位で、ここに住まわせるなんて狂ってるっ。」1か
それから1週間後、牧野家の全員があるホテルの一室に集まっていた。そのホテルの名は「楓ホテル」。一般庶民が立ち入ることなど出来ないほどの高級ホテルだ。そこのスイートルームに招かれたあたし達は、心臓が飛び出るほど緊張している。学長から「命を救っ
バイトの面接の日から3週間がたった。数日前に電話で「この度はご縁がなく……」と不採用の連絡を受け取った。それと同時にあたしの中で全てが吹っ切れた。大学を中退しよう。パパの会社が危ないと聞いたのは半年前。再就職先を探しながら、あたしのために高
新作です。時系列的に司とつくしが同級生という設定になります。少し長いストーリー予定。どうぞお付き合いくださいませ〜。…………………………バイトの面接日。大学に入学した時に両親に買ってもらったリクルートスーツを着て、電車に揺られ面接場所へと向
2日続いた雨が上がり、今日は快晴の空。定時で退社したあたしは、千石バーのあるビルへと向かう。1年前は週3で通っていたバーも、最近は2週間に一度行けばいい方。すっかり疎遠になってしまった。その訳は、3ヶ月後に迫った「結婚」そう、あたしはとうと
それから1週間後。俺と牧野は空港にいた。「牧野、」「ん?」「泣くなって。」「だって…」俺の隣にいる牧野は、さっきから鼻をグズグズさせて涙目だ。その理由は…、俺たちの前方にいる相手。そう、張社長とその母親だ。「道明寺さん、牧野さん、わざわざ.
胸ポケットから電話を取り出すと牧野からだった。この時間に俺がパーティーに出ているのは知っている。パーティーが終わったら2人で過ごそうと約束し、このホテルの近くにあるカフェで待たせていた。そんな牧野からメールでもなく電話がかかってくるなんて、
理不尽な噂は牧野の耳にも届いていたようだ。「なんか、わりぃな。」俺がそう言うと、「本当に悪いと思ってんの?」と、即答する俺の彼女。「ああ、俺の耳に入ったら片っ端から否定してやるから。」「でもさー、あながち間違いではないし……。」「あ?」「だ
クリスマスなので甘い小話をお送りします。少しヤバめです。ご了承くださいな笑………………出張明けで2週間ぶりにあたしのマンションに来た道明寺。夕飯を食べてリビングで寛いでいると、スルスル〜っとあたしの背後に周り抱きしめてくるのはいつもの事。大
付き合い始めてから1ヶ月。お互いライバル会社に勤めているから基本仕事のことは話さないようにしている。けれど俺も営業部を離れ、正式に『専務』という立場でババァの下に就くことが決まったので、それは牧野にも伝えた。「専務?」「ああ。」「偉くなるん
牧野から『あんたが、好き』と言われ、全身の緊張が解けてタガが外れる。店に誰も居ないことをいい事に、牧野の身体を引き寄せ俺の膝の上に乗せ濃厚なキス。余裕がなくて、必死で、かっこ悪いのは百も承知だ。けど、今この一瞬だけでもこいつを俺のモノにした
遡ること2時間前。俺は10日ぶりにNY出張から帰国した。タマが出迎える邸に着いたのは20時過ぎ。自室に行き、まずはバスタブに湯をはり、ゆっくりと身体を癒す。そして、バスルームから出たあと、部屋のミニバーにある冷蔵庫からビール缶を1つ取り出し
道明寺から返信が無いまま10日がたった。その間、少なくとも5回以上は電話をかけた。忙しいのだろうか、タイミングが合わないのだろうか、色々自分に都合よく考えたけれど、結局未だに連絡が無いと言うことは、あたしと話したくないという事なんだろう。そ
朝9時に出勤して、夜の19時に退社。気が向けば千石バーによりお酒を少しだけ呑んでマンションに帰宅する。そんな当たり前の日々がまた戻ってきた。でも、ふと気が緩むと時々思い出す、あの人の笑った顔や香水の香り。たった2ヶ月の短い交際だったけれど、
ジューンブライド。昔から6月の花嫁は幸せになるという言い伝えがあるのを、あの滋が無視するはずがない。メープルホテルで盛大に開かれた武田氏と大河原の結婚式。こだわり抜いただけあって、それなりに俺から見てもいい式だった。「こんなすごい結婚式、見
仕事仲間との飲み会。時間通りに店に着くと、「こっちこっち!」と佐々木さんたちが手招きしてくれる。でも、そこには道明寺の姿は無い。あたしには必ず来いと言っておきながら、自分はまさか不参加?と思った瞬間、それを見透かしたように「道明寺さん少し遅
「道明寺、あたし明日仕事だからねっ、外来担当だから忙しいの、それに、もう若くないし、体力もそんなに…………、んっ……」あたしの部屋に戻るなり、道明寺からの熱いキス責めに合う。キスの合間に発したさっきの言葉も聞いてるの聞いてないのか…………。
英德大学のF4専用ラウンジ。そこでスリランカから取り寄せた高級茶葉をつかった紅茶に舌鼓をうつ花の4人組。けれど、いつもと違うところが一つだけある。それは.........、「司、おまえさっきから何読んでるんだよ。」「.........。」「
邸に戻りババァの書斎に直行する。本当は牧野とのデートの余韻に浸りたいけれど、現実から逃げていても仕方がない。コンコン…と軽くノックをして書斎に足を踏み入れると、ババァが珍しくソファでワインを飲んでいた。「どこに行っていたの?」「デート。」素
1週間前ぶりに牧野から連絡が入った。『整理してから。』あいつが俺と向き合う前に整理することと言えば…………ムカつくがあのドクターの顔が浮かぶ。呼び出された場所に行くと、「お腹すいてない?」とかわいい顔で聞きやがる。「おまえは?」「すきすぎて
道明寺との初めてのデート。オフィス街から少し脇道に入ったところにあるレストランに入ると、20時近い時間にも関わらず結構店内は混んでいる。「少し狭いですけど、こちらの席で。」と案内されたのは、店のほぼ中央にある2人がけの席。180cm近い大柄
道明寺に向き合う…………、その前にもうひとつあたしにはやらなくちゃいけないことがある。震える手で電話をかけた。どこにかけていいのか分からずに、とにかく調べ得た代表番号に電話した。『牧野つくしが社長と話したい』そんな小娘の言葉に、戸惑っていた
付き合って5日目。電話では何度か会話をしたけれど、お互い仕事が忙しくて直接は会っていないあたし達。ようやく仕事終わりの金曜日、デートの約束をした。待ち合わせは、あたしの会社近くのカフェ。いつもより1センチヒールの高い靴と、おろしたてのブラウ
それから1時間後。あたしは自分のマンションにいた。ソファーに座りテレビを見ながらも、頭の中では全く違う光景が流れている。それは、道明寺にされたキスのこと。あれは……反則でしょ。あんなキスされたら、女の子はみんな勘違いする。まるで、彼女にする
その番号を押したのは、6年ぶり。「もしもし。」「…………。」「もしもし?」「……つくし?」「滋さん……。」お互いそれ以上は電話で話せなかった。ただ、約束の時間と場所を決めて電話を切った。そして、今日滋さんと6年ぶりに会う。 (ads
ロブスターの後に出たデザートは、全く味が分からなかった。なぜなら、道明寺が言った「おまえが好きだ。」の言葉が頭から離れず、他のことが何も考えられなかったから。ただ機械的に口の中へデザートを運び、お皿が空になった途端、道明寺に「行くぞ。」と手
それから道明寺が店に現れるまで15分足らずだったと思う。息を切らしながらあたし達が座るテーブル席まで来ると、開口一番「大丈夫か?」と、心配そうにあたしの顔をのぞき込む。「ん?え、うん、大丈夫だけど…」そう答えた途端、「ババァ!どういうつもり
『殴られてよかった。おまえと一緒にいれる。』返す言葉が見つからないほど、なんてバカなんだろう。固まるあたしを、洗面台に座ったまま引き寄せる道明寺。長い足の間に挟まれて至近距離まで迫ってくる熱っぽい視線に目を合わせないようにするのがやっと。「
飲み会で道明寺を『永遠のライバル』だと宣言した数日後、あたしは仕事を早退して病院に来ていた。この病院に来るのは今日で2回目。前回は急な腹痛で夜間に道明寺に連れてきてもらった。その時に出された薬が無くなりかけていたので、病院に予約の電話をかけ
牧野の前に差し出した結婚式の招待状。これは滋から渡されたものだけど、俺が必死で貫いた意思の証でもある。「これって…………」「結婚式の招待状だ。」牧野の肩に回してた腕をほどき、招待状を牧野に握らせる。「おまえには絶対来てほしいって言ってたぞ。
それから数日たったある日、朝の出勤時にあたしの携帯が鳴った。見ると、「急なお誘いですみません。今夜、前回のメンバーで食事会をすることになったのですが、牧野さんもご一緒にいかがですか?佐々木」とある。前回のメンバーとは、張社長と一緒に飲みに行
いつもより仕事を早めに切り上げて向かったのは、牧野のマンション。部屋にいるのかいないのか、仕事で帰ってくるのか来ないのか。何もわからないまま、それでも足が向かう。マンションの前まで来て、牧野の部屋を見上げると、案の定真っ暗。自嘲ぎみに笑い、
やばい……。なんかここ数日、気が緩むとなぜかあの男の事を考えているあたしがいる。そう、あの男とは『道明寺司』腹痛で病院に連れていってもらったあの日から今日で1週間になる。おかげさまであの時に出してもらった薬がよく効き痛みは再発していない。た
「よっ。」「司、来てくれたんだ。」メープルのウェディングルームにある応接室。結婚式の打ち合わせで今日も数組のカップルが衣装合わせや式のプランについて担当者と話し合いに来ている。そのカップルの一組が半年後に式を挙げる予定の滋たち。「道明寺さん
痛みに顔をゆがめて立ち上がれない牧野。「おいっ、救急車呼ぶか?」「いい、大丈夫。気にしないで……」そう言われても放っておけるはずもない。腕時計を見ると、23時半。この時間から病院は無理だろう。俺はポケットから携帯を取りだし、ババァにコールす
エレベーターから降りると、いつものように手前から3件目の店へと向かう……はずの俺の足が、今日は言う事を聞かずに、その先の階段へと進む。そして、階段を段飛ばしにのぼり、息を切らしながら7階まで上がると、牧野の姿をキョロキョロと探す。すると、7
マジでやべぇ。脇と背中に尋常な冷や汗をかいた。病院に戻った俺は、外来と病棟を走り回り牧野の姿を必死に探す。すれ違ったナースに、「牧野先生見なかった?」そう聞くと、患者の部屋からちょうど出てきた牧野の姿。「牧野っ!!」「児島、どーしたの?」「
優紀との温泉旅行から3週間後。あたしは張社長の会社に来ていた。先日の飲み会以降、初の顔合わせ。張社長に「あの時は酔っ払っていて、牧野さんに失礼なこと言って申し訳なかったね。」と言われ、そういえば、張社長から「婚期が遅れる.........」
牧野の家で『児島におまえは渡さない。』と、宣戦布告した俺に、あいつはなぜかすげー怒りだして、そのまま俺を部屋から追い出した。作ってくれたはずの玉子焼きも食べ損なって、スーツの上着も部屋に置いたまま。「どうかされましたか、最近。」「あ?」「い
かすかな道明寺の話し声で目が覚める。「…………ああ、…………頼む。何かあったら連絡くれ、…………。」あーー、昨夜はあのままあたしも眠っちゃったんだ。ボーッとする頭をフル回転させて、昨日のことを思い出す。そんなあたしに気付いたのか、道明寺が「
仕事が終わってマンションに戻ると、ドアの前に黒い物体が。恐る恐る近付くと、顔を見なくても分かるそのクルクル頭。ふぅーーーー。「…………道明寺。」「…………。」「ねー、道明寺っ。」「………………おせーよ。」顔をあげてそう呟く道明寺。こんなとこ
タクシーに乗りマンションに戻ると、大慌てでバスルームへと駆ける。優紀が来るまであと30分。それまでに髪を洗い、服を着替えてお化粧をして.........。朝から死ぬほどバタバタする羽目になった理由は、今は考えないようにして、準備だけに全集中
だるい。すげー体がだるい。2、3日前からなんとなく体がだるかったが、今日はそれがMAXだ。メープルでハマドと飲んだあと、部屋に戻ってシャワーを浴び、そのまま髪も乾かさずクーラーのきく部屋で眠ったのが今頃になって体調不良となって出た。「司様、
間接照明がともされたホテルの部屋に入ると、牧野が少しだけ尻込みしたように感じた。ほらな?勢いだけでこんな所に来て、ようやく事の重大さに気付いたか?どんな理由をつけてこの場から退出するのか……。潔く謝ったら許してやるぞ。そう思いながらこいつの
誤解されたくない相手。牧野が言った言葉が何度も頭をかすめる。あいつには、もうそういう相手がいる。俺が何かをすればするほど、あいつの幸せを壊す可能性がある。このまま黙って引き下がるべきだ。そう頭では分かっているのに、今度こそ、今度こそ…………
その夜、張支社長とあたし達は銀座の一等地にあるお店でお酒を交わしていた。出席者は昼間会議室で顔合わせをしたメンバーと張支社長の合わせて7人。あたし以外はみんな男だ。あたしだって出来ることならこんな男だらけの呑み会に参加したくなんてない。けど
ハマドとの業務提携に向けて連日遅くまでオフィスに残ってる俺の携帯に、10時を過ぎてからタマからの着信がある。携帯に直接電話してくるのは滅多にないことで、具合でも悪いのかと一瞬ヒヤッとしたが、「坊っちゃん、まだオフィスにいるのでしたら、帰りに
足のしびれを感じて体勢を変えると、急に身体がぐらつきお尻に軽い衝撃を受けて目が覚めた。ソファーから落下したのだと気付くまでに数秒。そして、ここはどこ?と辺りを見回してハッとする。あたしったら、道明寺司の部屋で寝てしまったのだ。慌てて腕時計を
腫れた頬と泣いた目を隠したいから、この大柄な男の後ろに隠れるようにして、夜の街を歩く。すると、少し開けた道路に出たところで、黒塗りの車がスーッと近づいてきた。ん?不思議に思う暇もなく、道明寺司がその車の後部座席を開け、あたしの身体を押し込む
いつもお越しくださってありがとうございます!この度、X(Twitter)でアカウントを作りましたので、感想やリクエストなど何かありましたらお気軽に書き込みしてくださいね〜✩.*˚『司一筋』として二次小説を書き始めてから約10年が経ちました。
「付き合ってるよ。あたしたち。」牧野のその言葉に、「ありゃりゃ。」と小声で呟く類と、牧野を凝視して固まる児島。「児島、さっさと食べて戻らなきゃ。」「あっ、……ああ。」黙々とラーメンを食べる二人をじっと見つめたままの俺に、「司、ラーメンは伸び
それから1週間後。仕事終わりに同僚たちと一杯呑んだ後、家に帰るにはまだ早いと、いつものように足が千石バーへと向かう。今日は親友の優紀も来ているはずだ。お互い30になっても独身のあたしたち。週末になればどちらともなくママの所で集合するのが常に
次の日、会社に着きエレベーターに乗り込むと、同期の村瀬があたしの顔を見てニヤリと笑う。「なによ。」「聞いたぞ。またライバルにやられたんだって?」そういう情報だけは早く出回るからタチが悪い。「今回の契約を逃したのは痛かったなぁ。またあの道明寺
タマの退院の日。「デートしようぜ。」俺の誘いをバッサリ切り捨てて、立ち去った牧野とはあれ以来会えていない。「司様、そろそろお時間です。」「おう。」タマの退院時間に合わせて、病院へ行くつもりの俺は、仕事を一旦切り上げて出掛ける用意をしていると
タマが入院して5日目。昨日聞いた牧野とあの児島だかいう医者の会話が頭から離れない。く27歳になったあいつに彼氏がいないとか、そんな都合よく考えていたわけじゃねーけど、実際現実に見せられると、かなり凹む。年頃の男女で、着替えを頼むような仲なら
「あ゛ーーーー、もうっ、腹立つ!」そう呟いてハイボールをガブッと1口呑む。「つくしちゃーん、明日二日酔いになるわよ〜。」「いーんです。どうせ明日出勤したら、部長のお説教から始まるし。」「だったら尚更、お酒臭かったらまずいでしょ。」そう言って
タマの病室にF4が勢揃いしたことで、廊下の賑わいは更に加速し、さっきまで遠慮がちに覗いていたナースたちも、今では堂々と扉を開けて熱い視線を送ってくる。それをあきらが優しく制して、扉を閉めようとドアに近付いた時、ナースの一人が叫んだ。「牧野先
タマが入院して3日目。土曜日の今日は、仕事も夕方で終わらせてタマの見舞いに向かう。病室がある5階のエレベーターを降りると、なにやら廊下まで聞こえるほど騒がしい。廊下の角を曲がると、タマの部屋の前に群がるナースたち。その光景をみて、一瞬で何が
6年ぶりに見る牧野は、ほんの少し大人になっていたが、一気に俺の気持ちを引き戻すのに十分だった。「道明寺、来てたの?」「……おう。」「面会時間はとっくに過ぎてますけど。」そう言っておどけて笑うこいつは、いつも会ってる友達のように話してくる。「
タマが目覚めた頃に…………と思っていたのに、結局病院に戻れたのは11時近かった。病棟は最小限の明るさだけを残し、廊下も静まり返っている。タマもたぶん寝ているだろうから、顔だけみて帰るつもりだった。タマがいる特別室の前に立ったとき、中からわず
「坊っちゃん。タマはとうとうお迎えが来たようです。」いつもと変わらない朝食の時間、コーヒーを片手に新聞を読んでいた俺に、タマが深刻そうにそう言った。「あ?お迎えよりも先に、頭がボケたのか?」「ボケてなんていませんよ。坊っちゃんは何かあるごと
1年後。寒さが厳しい3月の夜、2課のメンバーは会社から10分ほどの所にある居酒屋に集まっていた。普段使う大衆居酒屋とは違い、今日は少し高くてオシャレな所。なぜなら、今日は杉山さんの退職祝いの宴だからだ。「居酒屋なんかじゃなくて、もっと高級な
突然、俺の職場に乱入してきた姉ちゃん。「いつ日本に来てたんだよ。」「今日の朝着いたのよ。」「会社になにか用か?」「なにか用かって、当たり前じゃない。弟がお世話になっているチームの方にご挨拶をしに来たのよ〜。」と、さも楽しそうに言いながら、チ
チーム長がNYに戻るかもしれない。しかも、それを本人からではなくさくらさんから聞いた。『チーム長の口から聞けるまで待ちます。』なんて彼女にはかっこいい事言ったけれど、会社に戻るまでの道のり、モヤモヤがおさまらない。そして、会社に着くなり、『
交際も順調に進み数ヶ月がたった頃、あたしは仕事の打ち合わせでチームの冴島くんと一緒に取引会社に来ていた。今日の打ち合わせの相手は、ビジネス業界で『超美人』だと噂されている金森さくらさん。噂は聞いていたけれど、あたしは今日お会いするのが初めて
チーム長とそういう関係になってから、あっという間にあたし達の距離は縮まった。週末はもちろん、平日もあたしの部屋で寛ぎ、そのまま泊まっていくことも多々。でも、あたしとしては……どうも慣れない!こんな狭い部屋に馴染んでくれるのは嬉しいけれど、チ
月曜日。出勤するため電車に揺られていると、目の前のスーツ姿の男の人が視界に入る。背丈はチーム長より少し低いくらいだろうか。綺麗に整えられた髪、オシャレなネクタイ、長い指。普段なら何事もなくスルーする光景なのに、今日のあたしはそんな知らない男
ベッドの上。牧野の方に顔を向け、うつ伏せで寝ている俺。その俺の頭に軽い衝撃があり、小さな枕で叩かれたのだと、寝ぼけながらも気付く。そして、「もぉ、バカ…信じらんないっ。」と言ったあと、牧野はバスルームへと逃げるように走っていった。昨夜、牧
NYでの激務のかいあって、予定より一日早く金曜の夕方に日本に戻ることが出来た。飛行機をおり、その足で会社へ向かう。終業時間の20分前に営業部のフロアに滑り込むと、「お疲れ様です。」とチーム内に声をかけ自席へと座る。「えっ!チーム長!出張は明
NY出張の最終日、仕事を早く切り上げてマンハッタンにある老舗のデパートに来ていた。ゆっくり店内を見るのは久しぶりだ。まして、自分以外の誰かのために物を選ぶなんて初めてのこと。レディースのフロアに行くのでさえ躊躇していたけれど、いざ来てみると
2日前からNYに出張に来ている。滞在期間は約2週間だが、10日で終わらせる勢いで仕事中。なぜなら、早く日本に戻って牧野に会いたいから。こんな風に思うなんて俺自身が1番驚いている。1年間密かに想いを寄せてきたけれど、恋愛をする自分がなかなか想
牧野に何を食べたいか聞かれて、頭に思い浮かんだのは、小さな頃に食べていたタマの和食料理。「和食がいい。」そう答えると、「良かった。あたし和食しか作れないから。」とはにかむ姿がマジでツボる。この1年間、こいつの上司として間近で見てきた。仕事に
社内恋愛というのは結構大変だ。仕事中は周囲の目を気にしていつも以上によそよそしくなるし、仕事後のデートは誰かに見られていないかと常にソワソワする。「俺はいつ誰に見られても構わねーけど?隠すつもりはねーし。」と、チーム長はあっさり言うけれど、
軽い気持ちで先輩に付いてきてしまったけれど、いざお店に着くと相手が5人こちらも5人のれっきとした合コンだ。早くも逃げ出したい気持ちでいっぱいだけど、うちの先輩と経理部の前田さんが楽しそうに話しているのを見ると、なかなか帰ると言い出しにくい。
チーム長が強引な人じゃなくて良かった。結局あの後、キスひとつでジタバタしてるあたしに、「今日は大人しく帰る。」と言って頭を優しく撫でて去っていった。部屋に戻ったあたしは、なかなか頬の熱さが正常に戻らず、化粧水を何度も叩き込みながら1人で悶絶
約束通り19時に会社を出ると、「他の奴らに邪魔されたくねーから、移動するぞ。」と、チーム長に声をかけられ、そのまま背中を押されるように地下鉄の入り口を下りていく。そして、「おまえの家どの辺?」という質問に、「××です。」とあっさり答えて盛大
ギャラリーを出て数百メートル歩いたところで、あたしは堪えきれずにチーム長に言った。「チーム長、すみません!」「あ?」「あたし、自虐ネタを持ち出して余計な事言ってしまったかも……」「自虐ネタ?」「はい……もう、ほんとバカ……。」女性デザイナー
数日後。会社に出勤するなり、「えっ!!インフルエンザ?」と、大きな声がフロアに響き渡たる。一斉にみんなが声の方を見つめると、渋い顔で電話の相手と話をする木村さん。そして、「チーム長に代わるね。」と言って静かに内戦電話に切り替えた。数分後、電
次の日、社内では昨夜の飲み会の話題で持ち切りだった。「営業部の道明寺チーム長が、飲み会で好きな人がいるってあっさり答えたらしいよ!」「1年も片思いしてるって!」「告白したけど、相手の返事待ち〜!」今まで浮いた話のひとつもなかったチーム長が、
1課と2課の合同飲み会は、会社から徒歩10分の場所にある居酒屋の2階和室を貸し切って行われた。参加者は約40名。席は飲み会恒例の『くじ引き』で決められる。あたしが引いたのは9番。奥から3つ目のテーブルだ。正面には1課の木村さんと2課の吉口く
「付き合おうぜ、牧野。」確か、先週の金曜日あたしはチーム長にそう言われたはずなのに……、あれは聞き間違いか?それとも幻聴か?そう思ってしまうほど、今日のチーム長はいつも通りのクールさだ。あたしが週末どれだけ悩んでドキドキしたか、あの時間を返
その週の金曜日。残った仕事を次の週に繰り越さない。これがあたしのモットーだから、金曜日は決まって残業になりがちだ。今日も例外ではなく、定時から1時間した今も、パソコンに向かって事務整理をしていた。そんなあたしの横を、「お先に失礼しまーす」と
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夏休みも残すところ1週間。就活やバイトに追われ、結局夏休み中に花沢類と会ったのもほんの数日、しかもキャンパス内でだけだった為、「少しは俺に時間を割いてよ。」と言われ、今日は2人でドライブに行ってきた。少し遠出をして、街をプラプラ散策し、美味
花沢類に連れられて、美音さんが入院している病院にまで来てしまった。美音さんと特別親しい訳でもない。あたしなんかが.........と思ったけれど、断れずに付いて来てしまった理由はただ1つ。道明寺に会いたかったから。別に変な意味では無い。ただ
新潟の実家から道明寺邸に戻り3日が過ぎた。その間、一度も道明寺の姿を見ていない。あの日、新潟から急遽東京に戻った道明寺に「無事に着いた?」とメールを送ったけれど、未だに返事は無い。美音さんに何があったのだろうか。道明寺に会ったら聞いてみよう
総二郎の電話で呼び出され、東京の大学病院に着いたのは22時を回っていた。病室の前に行くと、あきらと総二郎が硬い表情で立っていて、俺を見つけると、「おう、待ってたぞ。」と、肩に手を置く。「美音は?」「安静に…って言われて眠ってる。中に美音の両
次の日、目を覚ますとあたしの両隣の布団は空だった。慌てて下におりると、リビングでパパとママ、進、そして道明寺が仲良く朝ごはん中。「つくし、遅いわよ〜。」ママにそう言われ時計を見ると、まだ8時前。「えっ、みんなが早くない?」困惑しながら急いで
新潟行きの新幹線の中。あたしの隣には長い足を窮屈そうに組み、座る道明寺がいる。新幹線に乗るまでは何かの冗談だと思っていたのに、まさか本当に新潟までくるとは思いもしなかった。だから、もう何度も聞いたセリフをもう一度この人に言う。「本当に付いて
パーティーの日以来、道明寺の機嫌が悪い。会えば突っかかってくるし話せば口論になる。「喧嘩でもした?」椿さんにも心配されるけど、思い当たる節は全くない。今日も朝から登校中の車の中で、「おまえさ、」と、喧嘩腰にあたしを睨むこの男。「何よっ。」「
パーティーが終わり邸は静けさを取り戻したというのに、俺の部屋ではまだこいつらがうだうだと長居をして騒いでいる。「早く帰れよお前らも。」「司ー、いーだろ久しぶりにおまえの部屋に来たんだから。」「どうせ、俺のコレクションを呑みてぇだけだろ。」長
毎年恒例の会長のバースデーパーティーが始まった。招待客は300人ほど、邸の中庭をメインにオーケストラの演奏と三ツ星シェフの料理が並んでいる。パーティーには花沢家、西門家、美作家ももちろん招待されていて久しぶりにF4の両親が顔を合わせた。そし
それから3週間がたった頃、邸の中がいつもより慌ただしい事に気付き椿さんに聞いてみる。「何かあるんですか?」「来週の日曜日、おじい様のお誕生日なの。毎年、邸にお客様をお呼びしてパーティーを開くのよ。今年はもちろんつくしちゃんも参加してね。そう
「最近、司とはどう?」大学内にあるいつものベンチ。邸で作ってきたお弁当を食べているあたしに花沢類が聞く。「どうって相変わらず態度だけは大きいけど…、まぁ、以前よりは近付きやすくなったかな。」「へぇ、話したりするんだ。」「するよ。でも、あの人
邸のジムで汗を流し、シャワーを出ると22時を過ぎていた。自室に戻るため廊下を歩いていると、どこからか楽しげな声が聞こえてくる。その声の方へ歩いていくと、そこは小さなキッチンが備え付けてある第2ダイニング。俺たちがいつも使っているメインダイニ
最近、道明寺の様子が変だ。どう変なのか、そう聞かれれば上手く言えないけれど、何となく態度が柔らかくなったような気がする。つい先日は朝の車の中で、「おまえの両親はどこに住んでる?」と急に聞いてくるから、「新潟に引っ越したけど」と答えると、「意
あの女が道明寺邸で暮らすようになって1ヶ月が過ぎた。ババァや姉ちゃんとはかなり打ち解けているし、タマをはじめ使用人や運転手たちとも距離が近い。俺だけがあの女を受け入れていないようでなぜだか居心地が悪い。でも、受け入れらんねぇ理由はある。俺に
それから数日後。バイトが終わりバスに乗り道明寺邸へと帰る。15分ほどバスに揺られていると、瞼が重くなってきたが、帰ってからもまだ宿題がある。頑張らなきゃ!と自分に言い聞かせながらバスを降り邸まで歩く。そして、邸の門にある呼び鈴を鳴らそうとし
道明寺邸に帰宅したのは19時を回っていた。エントランスに入ると、メイド頭のタマさんが出迎えてくれる。「お帰りなさいませ。遅かったですね。」「すみません、ちょっと用事があって。」「すぐにお食事をご用意しますので、ダイニングへお越しください。」
大学内にある図書館の中庭にあたしだけの憩いの場所がある。そこは木々に囲まれた小さなスペースで古いベンチが一つだけポツンと置かれている。他のベンチは鉄製で何度も色を塗りかけられて綺麗になっているのに、まるでそこにあるベンチだけ存在を忘れられた
次の日の朝、いつも通りの時間にエントランスに行くと女が車の前で待っていた。「おはようございます。」と小さく挨拶されたのを無視して車に乗り込むと、女も遅れて反対側から乗り込んでくる。これが毎日続くのかと思うとうんざりだが、会長の言うことは絶対
「何もそこまでする必要ねーだろっ。」邸にある書斎で、俺はババァに向かってそう怒鳴っていた。「会長がそう決めたんだから仕方ないでしょ。」「人助けにも程があるだろ。たかが道で倒れたのを助けてもらった位で、ここに住まわせるなんて狂ってるっ。」1か
それから1週間後、牧野家の全員があるホテルの一室に集まっていた。そのホテルの名は「楓ホテル」。一般庶民が立ち入ることなど出来ないほどの高級ホテルだ。そこのスイートルームに招かれたあたし達は、心臓が飛び出るほど緊張している。学長から「命を救っ
土曜日。今日はアリーナとの会食の日。専務も一緒に…という彼女の希望で、場所は楓ホテルの最上階にあるフレンチレストランを西田さんが予約した。約束の時間の30分前に到着したあたしは、夜景が見える席の配置や、お酒が飲めないアリーナにも喜んで貰える
牧野との買い物を終えて邸に着いたのは19時を過ぎていた。ラファエルとの仕事が一段落してからは、残業することもなくこの時間に帰ってこれる日も多い。車から降り、エントランスに入ろうとした時、邸の車寄せに1台の青のベンツがゆっくりと近付いてきた。
それから数日後、同僚と社食でランチを取っていると、専務の秘書である西田さんに声をかけられた。「牧野さん、少し打ち合わせいいですか?」「あっ、はい!」社食の隣にあるカフェスペースに2人で移動すると、コーヒーを注文し並んで座る。「土曜日のアリー
その夜、マンションの部屋で寛ぎながら、昼間専務から渡された資料に目を通していた。そこにあるのはアリーナの顔写真。本当に美人で惚れ惚れしてしまう。私よりも年下なのに大人っぽい雰囲気と、抜群のスタイル。透き通るような白い肌にピンクのリップがとて
朝礼が終わり、それぞれが席に着いてからも秘書課は専務の言葉でザワついていた。「ねぇ、専務が日本に残るってこと?」「NYには戻らないって事よね?」「またあのかっこいい姿を間近で見れるの?」女子社員たちが喜ぶ中、私1人だけが複雑な気持ちで頭を抱
あの日、三年ぶりに取った休みを牧野の家で過ごした。着いて早々に俺が『つくしさんと結婚したい。』と告げると、心底驚いた顔で固まった牧野の両親。俺の素性について詳しく牧野から説明すると、ますます頭を抱えた二人だったが、あれから半年、すっかり俺と
まさかババァが牧野に婚約指輪を渡すとは思っても見なかった。でも、その指輪は俺が想像していたのよりはるかに安価なものに見える。「牧野、指輪は俺が買う。だから、これじゃなく、おまえの好きなものを選べ。」そんな俺の言葉に、「道明寺、待って。……あ
週のはじめの月曜日。いつもの時間に目覚めると、喉に激痛が走り、身体が火照っていた。体温計ではかるまでもなく熱があるのが分かる。原因はもちろん2日前の金曜の夜。専務とホテルに行き、朝方まで裸で過ごしていたからだ。ダルい身体を起こし、リビングに
俺のため……?「俺に会うためにこのエレベーターに乗ってるのか?」「最初はそうじゃなかったけどっ……、でも今は…………、」たぶん、牧野がこのエレベーターを使うようになったはじめの理由は俺の想像通りだろう。だけど、今は違うらしい。いつも俺が追い
ババァの出現と突然のフライングプロポーズで、俺もゆっくりしていられなくなった。早く牧野に合う指輪を用意して、自分の口から結婚を切り出したい。そんな俺は、夜景の綺麗なレストランを予約して、最高のワインで乾杯をし、一生に残るプロポーズをするため
「牧野、俺が身体洗ってやる。」そう言って後ろから抱きしめると、急激に自分の下半身が反応してくる。「せ、専務っ、」焦るこいつの言葉は無視。身体を俺の方に向けさせ、泡々になっているスポンジを肩から乗せていくと、「あたし、もう洗いました。」と、顔
ババァが帰ったあと、大河原邸に残された俺たちに、「つくし、あたしも叔母さんと出掛けてくるから。今日はそのまま実家に泊まるから、あとはよろしくね。」そう言って滋が出ていった。「道明寺、ご飯は?」「あ?……そういや、まだだな。」西田にババァがこ
仕事が終わった7時過ぎ、迷いに迷った挙句あたしは専務が言ったカフェに来ていた。緊張しながら待っていると、15分後店内に専務が現れた。スーツではなく黒いスポーティーな装いにあの時と同じキャップ。185cm近い身長に精悍な顔つき、そして圧倒的な
チャイムもせず大急ぎで大河原邸に入ると、リビングのドアが開けっぱなしになっていて、そこに牧野の姿が見えた。そして、牧野と向き合っているのはババァ。「牧野っ!」「……道明寺?」俺の呼ぶ声に驚いて振り向く牧野。俺はそんな牧野を背中に隠し、「どう
「大事な人です。」彼女のその台詞に、今日自分がここに来た意味を思い知らされたような気がした。司には母親としてしてやるべきことの半分もしてこなかった自分。年頃の司が女性に興味を持たないのも、そういう愛情ある育てかたをしてこなかった自分に責任が
自分の名前が呼ばれたような気がして振り向くと、そこにはキャップを目深にかぶった専務の姿があった。「少し話がある。付いてこい。」驚くあたしにそう告げた専務はスタスタと夜の街を歩き出す。最悪だ。お酒に呑まれた昨夜の自分を殴ってやりたい。専務の後
半年ぶりの帰国だった。来週の株主総会に合わせての帰国だが、理由はそれだけではない。最近、司の周りが騒がしい。彼女に関する噂でマスコミの取材も増え、それはNYにまで飛び火してきている。当の本人は、隠す気配もなく「好きな女がいる。」と電話で言い
シャワーを軽く浴び、物音を潜めて部屋に戻ると、そこには寝ているはずの女の姿がなかった。サイドテーブルには1万円札と小さなメモ。『昨夜はありがとうございました。部屋代です。』それを見て、膝から力が抜け落ちる。寝不足、いや一睡もしていない頭には
道明寺との付き合いが深くなればなるほど、雲の上の存在のように感じるこの人。生まれた家柄も育った環境も天と地ほどの差があるあたしたちなのに、そんなことなんてなんの障害もないようにあたしの世界に入り込んでくる。そんな道明寺が昨夜、電話であたしに
新作です。1話から、とんでもない問題作のような予感が笑ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー『 専務、あたしと、…寝てくれませんか? 』深夜1時。東京のど真ん中で、あたしは長身のこの人を見上げながら言った。「あ゛?」一気に眉間に皺を寄せてあ