「ママっ、ねぇ、ママ聞いてる?」後部座席に座るとうりの声であたしは我に返る。「ん?ごめん。何?」「あのね、僕、ママに怒られることしちゃった。」「怒られること?」「うん。今日、チーズたっぷりのピザを食べたんだ。」いつもなら笑って許すその言葉も
「ママっ、ねぇ、ママ聞いてる?」後部座席に座るとうりの声であたしは我に返る。「ん?ごめん。何?」「あのね、僕、ママに怒られることしちゃった。」「怒られること?」「うん。今日、チーズたっぷりのピザを食べたんだ。」いつもなら笑って許すその言葉も
「ピザがいい」男の子のリクエストに応えて、俺はすぐにピザのデリバリーに電話をかけた。アメリカンサイズのピザは想像以上にデカいだろうと予測してMサイズを2枚と、他にもポテトを頼む。「困ります。」と、遠慮するベビーシッターを横目に、「そのままあ
心愛のベビーシッターを……と自分から引き受けたはいいが、現実はそんな甘いものじゃないと早くも3日目で後悔している。3歳児は怪物だ。自分ではほとんど何も出来ないくせに、口だけは達者で、あれをして、これをしてと俺にせがんでくる。疲れたからと少し
昨夜は勢いで司の言葉に「お願いします」と飛びついたはいいけれど、一夜明けて冷静になって考えてみるとまずい気がしてきた。司を連れてロスに帰れば、もしも万が一つくしちゃんに遭遇してしまうことがあるかもしれない。何年も暮らしている私でさえ今まで出
夕方5時を過ぎた頃、ようやく人気作家の類が俺たちのいるバーにやってきた。「遅くなって悪い。」「おつかれ〜。すげぇ、人気じゃん。」「サイン会なんてしなくていいって言ってんのに、出版社側が毎回うるさいんだよ。こんな事なら顔出しNGにしておけば良
あの日から1ヶ月が経ったが、私の頭の中にはあの光景が忘れられない。花江さんに駆け寄る男の子とその母親。それは間違いなく、つくしちゃんだった。彼女と最後に会ったのは5年前。銀座の小さな喫茶店で人目を避けるようにして会った。お母様にも司にも知ら
紫門 椿。旧姓は道明寺 椿。8年前、ホテル王である紫門(さいもん)家の一人息子と結婚しロサンゼルスに移住した。結婚してからは、紫門家の仕事も手伝いつつ、母が所有する楓ホテルのオーナーとなり、旦那とともに忙しく世界中を飛び回る日々。そんな日常
4年後。「司、小雪のお昼寝バッグ持った?」「ああ、もう車に積んだ。」「帰りは私が迎えに行くって先生に伝えてね。」「分かった。こはる、そろそろ時間だぞ。」「あっ、遅刻しちゃう!じゃあ、行ってくるね。」パタパタとリビングを駆け回り、俺と小雪の頬
嫌な予感は的中した。道明寺邸から帰ってきて数日、こはるの体調が良くない。食べすぎたのか胃痛と吐き気が続き、今日の朝は微熱まである。ベッドに横になるこはるに「大丈夫か?」ここ数日、俺は何度も同じ言葉をかけていて、その度に「大丈夫。」と答えてい
笹倉邸の俺たちの住居スペースには、今日も甘い雰囲気が流れている。いつの間にか寝室も一緒になり、2度目の新婚生活を満喫している俺たち。「行ってくる。」「行ってらっしゃい。」そう言葉を交わし、軽くこはるの唇にキスを落とす、と同時に俺の携帯が短く
最近の俺たちは、まるで新婚のような暮らしをしている。別々だった寝室もいつしか一緒になり、仕事中以外は常に一緒。どこに行くにも2人で……が当たり前になった。そして今日は、月に一度のこはるの検診日。午後から仕事の休みを取って俺も一緒に病院に付い
店を出てタクシーに飛び乗ると、類から携帯に動画が送られてきた。さっき見たあの動画だ。まさか4年前のあの呑み会で動画を回していたとは夢にも思わなかった。けれど類には感謝してもしきれない。これをこはるに見せれば、こはるに対する俺の気持ちが証明出
あきらが日本に帰国した。半年後の結婚式を控えて色々と準備が忙しそうだ。あきらの婚約者はアジア系アメリカ人で、仕事の付き合いで3年前に知り合い、その後ゆっくりと関係を深めていった。昔はマダムキラーと呼ばれていたあきらだが、結婚相手として選んだ
あの日以来、俺たち夫婦はお互いを意識しあっている。それもそのはず、あんなに濃厚なキスをしたあと、普通に何も無かったようには暮らせない。正直、近頃はあのキスを思い出し夜も眠れなくなるほどだ。攻めて攻めてこはるの舌を誘い出し、吸い上げ唾液を絡ま
出張最終日の夜。父と夫は経済界の重鎮らが集まるパーティーに招かれていて夕方からその準備でバタバタとしていた。「こはるも一緒に行かないか?」そう父に聞かれ、即座に首を振ってみたけれど、テーブルに置かれた招待客リストを何気なく眺めているうちに、
事故を目の当たりにして、どうやら私たち夫婦は感情のコントロールがおかしくなってしまったようだ。まぁ、こんな事は珍しいことでは無い。病院に勤めていると、生死をさまよう患者やそれを見守る家族らが、時に慰めあったり時に喧嘩をしたり、揺れ動く感情を
次の日、午後から本屋を数件周り最新の医学書を探したり、NYで一番大きなシューマーケットでスニーカーを購入したりしたあと、約束の17時少し前に老舗のデパートであるバーグドルフグッドマンへ向かった。一日中歩き回っていたから足がもうヘトヘトに疲れ
こはるが仕事をやめて1ヶ月がたった。もともと、活発に出歩くタイプでもないし、仲の良い友達が沢山いる訳でもない。だから、この1ヶ月ほぼ邸の中だけで過ごしていると言ってもおかしくない。今までバリバリ働いていたから、さぞかし退屈で憂鬱なのでは…と
読者様から情報提供頂きました。最近『iPhone15が当たりました』などといった詐欺サイトへの誘導が頻繁に出るようです。心当たりのある方はこちらのサイトをご参考までに決して個人情報などは入力しませんように。ブックマークから入ると詐欺サイトが
次の日、6時に目覚めてしまった。今日から仕事は行かなくてもいいのに、そんな日に限ってこんなに目覚めがいいなんて。寝室のカーテンを開けて大きく伸びをする。『今日から自由だぁー』と思わず叫びそうになって思い出した。そうだ、リビングを隔てた向こう
牧野から『あんたが、好き』と言われ、全身の緊張が解けてタガが外れる。店に誰も居ないことをいい事に、牧野の身体を引き寄せ俺の膝の上に乗せ濃厚なキス。余裕がなくて、必死で、かっこ悪いのは百も承知だ。けど、今この一瞬だけでもこいつを俺のモノにした
遡ること2時間前。俺は10日ぶりにNY出張から帰国した。タマが出迎える邸に着いたのは20時過ぎ。自室に行き、まずはバスタブに湯をはり、ゆっくりと身体を癒す。そして、バスルームから出たあと、部屋のミニバーにある冷蔵庫からビール缶を1つ取り出し
道明寺から返信が無いまま10日がたった。その間、少なくとも5回以上は電話をかけた。忙しいのだろうか、タイミングが合わないのだろうか、色々自分に都合よく考えたけれど、結局未だに連絡が無いと言うことは、あたしと話したくないという事なんだろう。そ
朝9時に出勤して、夜の19時に退社。気が向けば千石バーによりお酒を少しだけ呑んでマンションに帰宅する。そんな当たり前の日々がまた戻ってきた。でも、ふと気が緩むと時々思い出す、あの人の笑った顔や香水の香り。たった2ヶ月の短い交際だったけれど、
ジューンブライド。昔から6月の花嫁は幸せになるという言い伝えがあるのを、あの滋が無視するはずがない。メープルホテルで盛大に開かれた武田氏と大河原の結婚式。こだわり抜いただけあって、それなりに俺から見てもいい式だった。「こんなすごい結婚式、見
仕事仲間との飲み会。時間通りに店に着くと、「こっちこっち!」と佐々木さんたちが手招きしてくれる。でも、そこには道明寺の姿は無い。あたしには必ず来いと言っておきながら、自分はまさか不参加?と思った瞬間、それを見透かしたように「道明寺さん少し遅
「道明寺、あたし明日仕事だからねっ、外来担当だから忙しいの、それに、もう若くないし、体力もそんなに…………、んっ……」あたしの部屋に戻るなり、道明寺からの熱いキス責めに合う。キスの合間に発したさっきの言葉も聞いてるの聞いてないのか…………。
英德大学のF4専用ラウンジ。そこでスリランカから取り寄せた高級茶葉をつかった紅茶に舌鼓をうつ花の4人組。けれど、いつもと違うところが一つだけある。それは.........、「司、おまえさっきから何読んでるんだよ。」「.........。」「
邸に戻りババァの書斎に直行する。本当は牧野とのデートの余韻に浸りたいけれど、現実から逃げていても仕方がない。コンコン…と軽くノックをして書斎に足を踏み入れると、ババァが珍しくソファでワインを飲んでいた。「どこに行っていたの?」「デート。」素
1週間前ぶりに牧野から連絡が入った。『整理してから。』あいつが俺と向き合う前に整理することと言えば…………ムカつくがあのドクターの顔が浮かぶ。呼び出された場所に行くと、「お腹すいてない?」とかわいい顔で聞きやがる。「おまえは?」「すきすぎて
道明寺との初めてのデート。オフィス街から少し脇道に入ったところにあるレストランに入ると、20時近い時間にも関わらず結構店内は混んでいる。「少し狭いですけど、こちらの席で。」と案内されたのは、店のほぼ中央にある2人がけの席。180cm近い大柄
道明寺に向き合う…………、その前にもうひとつあたしにはやらなくちゃいけないことがある。震える手で電話をかけた。どこにかけていいのか分からずに、とにかく調べ得た代表番号に電話した。『牧野つくしが社長と話したい』そんな小娘の言葉に、戸惑っていた
付き合って5日目。電話では何度か会話をしたけれど、お互い仕事が忙しくて直接は会っていないあたし達。ようやく仕事終わりの金曜日、デートの約束をした。待ち合わせは、あたしの会社近くのカフェ。いつもより1センチヒールの高い靴と、おろしたてのブラウ
それから1時間後。あたしは自分のマンションにいた。ソファーに座りテレビを見ながらも、頭の中では全く違う光景が流れている。それは、道明寺にされたキスのこと。あれは……反則でしょ。あんなキスされたら、女の子はみんな勘違いする。まるで、彼女にする
その番号を押したのは、6年ぶり。「もしもし。」「…………。」「もしもし?」「……つくし?」「滋さん……。」お互いそれ以上は電話で話せなかった。ただ、約束の時間と場所を決めて電話を切った。そして、今日滋さんと6年ぶりに会う。 (ads
ロブスターの後に出たデザートは、全く味が分からなかった。なぜなら、道明寺が言った「おまえが好きだ。」の言葉が頭から離れず、他のことが何も考えられなかったから。ただ機械的に口の中へデザートを運び、お皿が空になった途端、道明寺に「行くぞ。」と手
それから道明寺が店に現れるまで15分足らずだったと思う。息を切らしながらあたし達が座るテーブル席まで来ると、開口一番「大丈夫か?」と、心配そうにあたしの顔をのぞき込む。「ん?え、うん、大丈夫だけど…」そう答えた途端、「ババァ!どういうつもり
『殴られてよかった。おまえと一緒にいれる。』返す言葉が見つからないほど、なんてバカなんだろう。固まるあたしを、洗面台に座ったまま引き寄せる道明寺。長い足の間に挟まれて至近距離まで迫ってくる熱っぽい視線に目を合わせないようにするのがやっと。「
飲み会で道明寺を『永遠のライバル』だと宣言した数日後、あたしは仕事を早退して病院に来ていた。この病院に来るのは今日で2回目。前回は急な腹痛で夜間に道明寺に連れてきてもらった。その時に出された薬が無くなりかけていたので、病院に予約の電話をかけ
牧野の前に差し出した結婚式の招待状。これは滋から渡されたものだけど、俺が必死で貫いた意思の証でもある。「これって…………」「結婚式の招待状だ。」牧野の肩に回してた腕をほどき、招待状を牧野に握らせる。「おまえには絶対来てほしいって言ってたぞ。