駐車場の奥から3台目にいつも停めている愛車のSUV車が見えた。遠目からでは中の様子は分からなかったが、近くまで近づくと、助手席に黒い人影が見えた。どうやら大人しく車の中で待っていたのだろう。いつものように運転席を開けると、助手席の人影がビク
駐車場の奥から3台目にいつも停めている愛車のSUV車が見えた。遠目からでは中の様子は分からなかったが、近くまで近づくと、助手席に黒い人影が見えた。どうやら大人しく車の中で待っていたのだろう。いつものように運転席を開けると、助手席の人影がビク
3日後、俺はロスへの飛行機に乗っていた。親父が何の目的でつくしの会社を調べていたのか、そして同じ頃、遺伝子情報解析センターで誰のDNAを調べていたのか。親父に聞けば早い。でも、俺はこの目でもう一度つくしの息子である冬季の顔を見たかった。「私
どこから手をつければいいか…と考えると、やはり執事の坂東の周辺を調べるべきだと行き着く。坂東は俺が物心ついた時から道明寺邸で働いていた。歳は50代半ば、親父やババァと同じくらいだろうか。次の日、俺は道明寺邸に関する資料が置かれている書斎に足
石橋家のパーティーを終え道明寺邸に戻ると、スーツを着替えることも無くソファーで目を閉じ、自分の考えに集中させる。坂東と繋がっているのは石橋夫妻ではなく娘の希美だ。だとしたら、何が目的なのか。考えられることはひとつしかない。俺と結婚し、道明寺
婚約して3年目で初めて石橋家の門をくぐった。石橋家は曽祖父の代に石橋産業を創設、その後、祖父は政界にも手を広げ官房長官にまでのし上がった人物だ。曽祖父と祖父で約80年余り日本を代表する企業として名を馳せ、現在はその息子である石橋まことに引き
その一週間後、俺は日本に帰国していた。年末までロスで過ごすと話していたのに、急に日本に帰ると言い出した俺に、「やっぱりあんたに心愛のお守りは無理だったのね。」と、姉ちゃんが呆れて言う。「ちげーよ。やり残した仕事を思い出した。」「リモートワー
「逆にあたしが聞きたい。先に手を離したのはそっちでしょ。信じてたのに、裏切られたのはあたしの方。」静かにそう言ったつくしに、俺はあの頃と同じように言い返す。「自分の浮気を正当化しようとすんじゃねーよ。何度も言うけど、俺は後ろめたい事は一切し
午後2時。幼稚園へ冬李(とうり)君を迎えに行く時間。いつものように部屋を出てマンションの駐車場へ下りると、そこに1人の男性がいた。「あなたは……」「先日はどうも。」深く頭を下げるその男性とは、心愛ちゃんのお母様の弟さんで、つくしさんには「も
「ママっ、ねぇ、ママ聞いてる?」後部座席に座るとうりの声であたしは我に返る。「ん?ごめん。何?」「あのね、僕、ママに怒られることしちゃった。」「怒られること?」「うん。今日、チーズたっぷりのピザを食べたんだ。」いつもなら笑って許すその言葉も
「ピザがいい」男の子のリクエストに応えて、俺はすぐにピザのデリバリーに電話をかけた。アメリカンサイズのピザは想像以上にデカいだろうと予測してMサイズを2枚と、他にもポテトを頼む。「困ります。」と、遠慮するベビーシッターを横目に、「そのままあ
心愛のベビーシッターを……と自分から引き受けたはいいが、現実はそんな甘いものじゃないと早くも3日目で後悔している。3歳児は怪物だ。自分ではほとんど何も出来ないくせに、口だけは達者で、あれをして、これをしてと俺にせがんでくる。疲れたからと少し
昨夜は勢いで司の言葉に「お願いします」と飛びついたはいいけれど、一夜明けて冷静になって考えてみるとまずい気がしてきた。司を連れてロスに帰れば、もしも万が一つくしちゃんに遭遇してしまうことがあるかもしれない。何年も暮らしている私でさえ今まで出
夕方5時を過ぎた頃、ようやく人気作家の類が俺たちのいるバーにやってきた。「遅くなって悪い。」「おつかれ〜。すげぇ、人気じゃん。」「サイン会なんてしなくていいって言ってんのに、出版社側が毎回うるさいんだよ。こんな事なら顔出しNGにしておけば良
あの日から1ヶ月が経ったが、私の頭の中にはあの光景が忘れられない。花江さんに駆け寄る男の子とその母親。それは間違いなく、つくしちゃんだった。彼女と最後に会ったのは5年前。銀座の小さな喫茶店で人目を避けるようにして会った。お母様にも司にも知ら
紫門 椿。旧姓は道明寺 椿。8年前、ホテル王である紫門(さいもん)家の一人息子と結婚しロサンゼルスに移住した。結婚してからは、紫門家の仕事も手伝いつつ、母が所有する楓ホテルのオーナーとなり、旦那とともに忙しく世界中を飛び回る日々。そんな日常
4年後。「司、小雪のお昼寝バッグ持った?」「ああ、もう車に積んだ。」「帰りは私が迎えに行くって先生に伝えてね。」「分かった。こはる、そろそろ時間だぞ。」「あっ、遅刻しちゃう!じゃあ、行ってくるね。」パタパタとリビングを駆け回り、俺と小雪の頬
嫌な予感は的中した。道明寺邸から帰ってきて数日、こはるの体調が良くない。食べすぎたのか胃痛と吐き気が続き、今日の朝は微熱まである。ベッドに横になるこはるに「大丈夫か?」ここ数日、俺は何度も同じ言葉をかけていて、その度に「大丈夫。」と答えてい
笹倉邸の俺たちの住居スペースには、今日も甘い雰囲気が流れている。いつの間にか寝室も一緒になり、2度目の新婚生活を満喫している俺たち。「行ってくる。」「行ってらっしゃい。」そう言葉を交わし、軽くこはるの唇にキスを落とす、と同時に俺の携帯が短く
最近の俺たちは、まるで新婚のような暮らしをしている。別々だった寝室もいつしか一緒になり、仕事中以外は常に一緒。どこに行くにも2人で……が当たり前になった。そして今日は、月に一度のこはるの検診日。午後から仕事の休みを取って俺も一緒に病院に付い
「で?司とは最近どーなの?」大学内にあるベンチでいつものように講義の合間の休憩を取っていると、横のベンチで昼寝をしていると思っていた類が急にそんなことを言い出した。「コホッ!な、なに、急にっ。」「んー、司の機嫌があんまり良くないから、牧野と
翌日、いつもより30分早くエントランスへ下りて行くと、運転手の焦った声が聞こえてくる。「お待ちくださいっ、もう少しで司様もいらっしゃいますので!」それに、「大丈夫です。ちょっと寄るところがあるので今日はバスで行きますので。」と、牧野の声。思
ドンッ!ボンッ!バシッ!!「痛ってぇ!おまえさ、少しは手加減しろよっ。」「はぁ?突然おかしなことしてきて、何よあんたっ!」バシッ!!もう一度俺の胸を思いっきり叩く牧野の耳が照れているのか真っ赤なのに気付き、俺の顔が緩む。「な、なに笑ってんの
新潟から東京に戻り、邸に着いたのは夜になっていた。エントランスに近付くと、そこには見慣れた車がとまっている。類のポルシェだ。「あっ、花沢類の車?」と、牧野もその車に気付き嬉しそうに呟く。気に食わねぇ。類の車を見ただけで、こんなに素直に喜ぶの
昨夜は寝付けなかった。朝方までウトウトを繰り返し、ようやくうっすらと明るくなりかけてきた頃、深い睡眠が訪れた。そのせいで、目覚めたのは9時半すぎ。ダイニングに炭酸水を取りに行き、そのついでに……とわざわざ1回に下りエントランスに近い牧野の部
昨夜は寝付けなかった。朝方までウトウトを繰り返し、ようやくうっすらと明るくなりかけてきた頃、深い睡眠が訪れた。そのせいで、目覚めたのは9時半すぎ。ダイニングに炭酸水を取りに行き、そのついでに……とわざわざ1回に下りエントランスに近い牧野の部
部屋に戻りタバコの悪臭が染み付いた服を脱ぎ捨てると、ようやく少しだけ頭痛が和らいできた。今日は長い1日だった。このまま目を閉じて、明日の朝になれば全てを忘れてしまっていたい。そう逃避してしまいそうになる思考を、トントンとノックする音が再び現
9月中旬、類とふたりで出掛ける約束をした。脅迫文や嫌がらせ、就活などでバタバタとした日々を過ごしていたから、こうしてのんびりと過ごすのは久しぶりだ。大きな公園で草むらに並んで座り、時間を気にすることなくダラダラするのがこんなに幸せに感じると
警察で聴取を受け、その後病院で検査をし、全てが終わったのは次の日の正午近かった。その間、牧野のそばにはずっと姉ちゃんが付き添っていて、こういう時は男の俺は何も役に立たない。ただひたすら、ヤキモキした気持ちを抱えながら車の中で終わるのを待つだ
牧野の肩の怪我が治りかけてきた頃、事件が起きた。金曜の夜、部屋で寛いでいるとタマが血相を変えて俺の部屋に飛び込んできた。「坊ちゃん!」「っ!なんだよ、ノックもしねーで。」「これ、見てくださいな。」タマがそう言って俺に差し出したのは、2センチ
それから数日たったある日。いつものように大学の図書館で自習している途中、トイレに席を立った。数分後、席に戻りそこに広げていた教科書を見てあたしは唖然とする。そこには赤ペンで大きく、「泥棒猫!!」と殴り書きがされていたのだ。意味がわからない。
その夜、22時をすぎた頃あたしの部屋の扉が小さくノックされた。タマさんか?そう思ったけれど、いつもならこの時間は寝ているはず。「はい?」「俺だ。」扉の向こうから道明寺の声。道明寺があたしの部屋まで来るなんて初めてのこと。静かに扉を開けると、
夏休みも残すところ1週間。就活やバイトに追われ、結局夏休み中に花沢類と会ったのもほんの数日、しかもキャンパス内でだけだった為、「少しは俺に時間を割いてよ。」と言われ、今日は2人でドライブに行ってきた。少し遠出をして、街をプラプラ散策し、美味
花沢類に連れられて、美音さんが入院している病院にまで来てしまった。美音さんと特別親しい訳でもない。あたしなんかが.........と思ったけれど、断れずに付いて来てしまった理由はただ1つ。道明寺に会いたかったから。別に変な意味では無い。ただ
新潟の実家から道明寺邸に戻り3日が過ぎた。その間、一度も道明寺の姿を見ていない。あの日、新潟から急遽東京に戻った道明寺に「無事に着いた?」とメールを送ったけれど、未だに返事は無い。美音さんに何があったのだろうか。道明寺に会ったら聞いてみよう
総二郎の電話で呼び出され、東京の大学病院に着いたのは22時を回っていた。病室の前に行くと、あきらと総二郎が硬い表情で立っていて、俺を見つけると、「おう、待ってたぞ。」と、肩に手を置く。「美音は?」「安静に…って言われて眠ってる。中に美音の両
次の日、目を覚ますとあたしの両隣の布団は空だった。慌てて下におりると、リビングでパパとママ、進、そして道明寺が仲良く朝ごはん中。「つくし、遅いわよ〜。」ママにそう言われ時計を見ると、まだ8時前。「えっ、みんなが早くない?」困惑しながら急いで
新潟行きの新幹線の中。あたしの隣には長い足を窮屈そうに組み、座る道明寺がいる。新幹線に乗るまでは何かの冗談だと思っていたのに、まさか本当に新潟までくるとは思いもしなかった。だから、もう何度も聞いたセリフをもう一度この人に言う。「本当に付いて
パーティーの日以来、道明寺の機嫌が悪い。会えば突っかかってくるし話せば口論になる。「喧嘩でもした?」椿さんにも心配されるけど、思い当たる節は全くない。今日も朝から登校中の車の中で、「おまえさ、」と、喧嘩腰にあたしを睨むこの男。「何よっ。」「
パーティーが終わり邸は静けさを取り戻したというのに、俺の部屋ではまだこいつらがうだうだと長居をして騒いでいる。「早く帰れよお前らも。」「司ー、いーだろ久しぶりにおまえの部屋に来たんだから。」「どうせ、俺のコレクションを呑みてぇだけだろ。」長