メインカテゴリーを選択しなおす
『續姿三四郎』(45)(1991.11.8.)自分にとっての黒澤明作品で、『一番美しく』(44)とともに未見だったこの映画を、やっとビデオで見ることができたのだが、残念ながら、随分と我慢しながら見たという印象が残った。つまり、ほかのどの黒澤映画と比べても、全く不出来であったというのが偽らざる心境だった。まあ、黒澤にとっては、もともと気乗りがしない企画だったらしいし、先日見た稲垣浩監督の『江戸最後の日』(41)同様の、フィルムの悪さ、録音のひどさ、という戦時下故のマイナスを背負った不幸な映画という言い方もできるだろう。また、今や完璧主義の巨匠監督としてのイメージしか浮かばない黒澤の、若き日の模索の姿が浮かんできて、どこかほほ笑ましく感じるところもある。と、ここまで書いてきて、ではこの映画には全く見るべきとこ...『續姿三四郎』
『銀嶺の果て』(47)(1982.5.20.池袋文芸地下.「志村喬追悼特集」併映は『野良犬』)銀行強盗の三人組が北アルプスに逃げ込んだ。その一人の高杉(小杉義男)は雪崩に巻き込まれたが、残った野尻(志村喬)と江島(三船敏郎)は、雪に埋れた山小屋を発見する。そこでは、老人(高堂国典)とその孫の少女(若山セツ子)と、本田(河野秋武)という登山家が生活していた。谷口千吉の監督デビュー作で、脚本と編集を黒澤明が担当したというので、期待を持って見たのだが、いかんせんフィルムが古過ぎて、しかも保存も悪いらしく、途中で何度もプツリ、プツリと切れるのである。これはたまらない。せっかく盛り上がりかけたシーン、あるいはいいセリフが、妙なテンポになったりして、何だか間が抜けた感じになってしまった。しかも、映画の内容も、人物描写...『銀嶺の果て』