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  • 猫舌

    ナオキはヒリヒリする舌を持て余し、所在無げに部屋のなかを行ったり来たりしていた。右に行っては本棚を眺め、そこから一冊を取り出して読み始めたかと思うと、左に行ってパソコンに向かうと電源を入れるという訳でもなくただワーキングチェアに腰掛けて大義そうにため息を吐き出すだけであった。ナオキは立ち上がると今度は階下に降りていきキッチンで蛇口を捻った。当然、水が流れ出た。ナオキはそれを不思議そうに見つめていた...

  • 黒い惑星

    作業用ポッドに乗り宇宙空間にただひとり浮かんでいた。何の音もない広大な空間は上にも下にも右にも左にも果てしなく広がり、その無限の空間のなかにただ私1人が浮かんでいた。下の方に地球によく似た惑星が見えた。半分は暗闇に染まり、もう半分は光に当てられ色彩豊かな表情を見せている。私はその様を茫然と見つめていた。残りわずかな酸素が無くなった時、私の人生は終わりを迎えるのだろう。そして、ひとつのチリになって宇...

  • 朝の散歩と曇り空

    薄曇りの朝方、近所を散歩する気になった。薄らと雲が空全体を覆っていてすこし閉塞感を覚えた。やや右に湾曲しているこれといってなんの特徴もない道を歩いていると、道の右側の草むらで男が草刈りをしていた。前方の草むらで草刈りをする男はがっしりとした体つきをしていて、白いTシャツとウグイス色の作業ズボンを履いている。草刈りをする男は心ここに在らずといった感じで、ただ機械的に草刈機を左右に動かしている。刈り残...

  • 恐掛神社の春祭り

    路地裏の三叉路に風が吹き付ける。通路と通路の真ん中の洲になっている敷地に店を構える主人はサンバイダーが大きく音を立てて唸るのを横目にコーヒーカップを磨いていた。時折、コポコポとサイフォンが音を立てた。「それでお神輿は今年はやらないんですか?」バイトのカナエが客の西条にそう聞いた。西条はカウンターに座り、雑誌を読みながらコーヒーを飲んでいた。「ええ、やりませんね。今年だけじゃなくて今後はやらないでし...

  • 少年よ、大志を抱け

    懇願する女の首に鎌をあて、横にひいた。鮮血がほとばしり、女は横にどっと倒れた。涙を流しながら半目を開けて口をパカパカしている女が動かなくなると後ろから悲鳴が上がった。次の狙いを定め、鮮血に染まった鎌を握りしめると悲鳴の主に飛びかかった。パトカーのサイレンが響く。きっと交通違反か何かだろう。向こうが交通違反で、こちらはマナー違反だ、と僕は思いながらミカの寝顔をみた。ぐぅぐぐぅぅ、ぐぅぐぐぅぅ、、すぴ...

  • 伸子と咲江

    アパートの外は曇り空で薄暗く強い風が吹いていた。伸子はアパートのリビングで咲江に連絡するためにスマホを手にして文字を打っている。咲江は高校時代の友人である。お互いに気を遣い合う仲だった。2人が対面する時、座りが悪い空気感が漂う。それでも離れないのはどういう訳なのかわからない。伸子は高校卒業後、インフラ系の会社に就職し、隣町の支店に配属となった。咲江は専門学校に進学して医学療養の知識を学んだのち、県...

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