なぜブログを書くのか ― 文芸の心音を聞く 活発な読者として
2年半に渡り月1回くらいのペースで、ブログを書いてきました。ブログ記事のテーマは、文学全般、とりわけフランンス文学、芸術、建築、創作、書評、料理、旅行などで多岐に渡りますが、計30編ほどになりました。アクセス数は予想を上回り、33,000を越えました。 学生時代から私は好きな本を何度も手に取っては、メモなども作り読後感想などを書きちらしてきました。定年後も折を見ては関連する書籍に目を通し続け、新たな知見も得てきました。しかし、私は次第に自分なりに考察したことを文書にまとめてみようと思うようになりました。どうやら、私はおとなしく本から得た知識を蓄積しておくだけでは満足できない質のようです。従順な…
各セクションのタイトルにカーソルを運び、クリックすると当該ブログ記事へ飛ぶことができます。なぜブログを書くのか ― 活発な読者として ’23・9第一章 フランス文学 マルセル・プルースト「失われた時を求めて」対話的創造のほうへ Ⅰ コンブレの就寝劇 ’23・8 Ⅱ 恋人アルベルチーヌ もうひとつの愛 ’23・8 Ⅲ ゲルマント公爵家と主人公の変貌 ’23・9 Ⅳ 立ち広がる新しい小説世界 ‘23・8 プルーストの文はなぜ長いのか ’22・7 越境する芸術・文化 ’23・3 書評 工藤庸子「プルーストからコレットへ いかにして風俗小説を読むか」 1991年 ‘23・5 書評 芳川泰久「謎解き『失…
Ⅳ.立ち広がる新しい小説世界 「失われた時を求めて」 対話的創造のほうへ 4/4
アルベルチーヌも、祖母も、作曲家ヴァントゥイユも、作家ベルゴットも、多くの人物が死んでゆき、喪失の悲しみは深まります。コンブレも第一次世界大戦の戦闘地域になり、戦死者が多く出ます。パリもドイツ軍機による空襲に世界ではじめてさらされます。闇は深まり、黄昏めいた光が拡がります。 しかし、繰り返し味わう失望や無力感の流れに抵抗し逆行するようにして、母や祖母や恋人アルベルチーヌから、またヴァントゥイユの音楽やエルスチールの絵画から、またフランソワーズの料理や衣服などといった生活で発揮される巧みな腕前からさえも、新たな創造への呼びかけが聞こえてきます。身近な所で編まれる人との関係性から創造の萌芽が芽生え…
Ⅲ.ゲルマント公爵家と主人公の変貌 「失われた時を求めて」 対話的創造性のほうへ 3/4
この長編小説では当初主要テーマとして照明を浴びて舞台前面を占めていたパリ社交界や恋愛模様が、読み進むにつれやがて少しずつその重要性を薄めてゆきます。反対にそうした全般的な流れに逆らうようにして、それまで目立たなかった脇役たちが舞台の袖から中央へと登場してきます。長く主役をはってきたものは翳り、それに代わりそれまで出番も少なく、役割も明確ではなかった端役たちが互いに関連を持ち始め、新たな役回りも得て、作家志望の主人公を創作へと導きます。 以下のⅢ章では、まず19世紀から20世紀に移る端境期のパリ貴族階級で起きる大きな変動を描きます。また、それとともに間欠的に起きる主人公マルセルの内面における大き…
Ⅱ. 恋人アルベルチーヌ もうひとつの愛 「失われた時を求めて」対話的創造のほうへ 2/3
第二篇「花咲く乙女たちのかげに」に恋人になるアルベルチーヌが登場します。彼女は英仏海峡を臨む保養地バルベックの海を背景にして現れる娘たちのグループのひとりです。女性もまたがるようになった自転車を好んでいて、その頬は冬の朝の輝きのように紅潮します。娘たちとイタチ回しという遊びをしていて彼女の手を握った時など、「無数の希望が一気に結晶する」のを感じ、「官能的なやさしさ」を主人公はおぼえます。しかし、彼女が下品な言い回しを使うのを耳にするうちに、グループの娘たちと同性愛的関係にあるのではないかと疑い始めます。しかし、彼女の姿は変化し続け、はっきりした像を結びません。 主人公はコンブレでジルベルトとい…
マルセル・プルースト(1871−1922)の長編小説「失われた時を求めて」は大伽藍に例えられることもあって、何やら近寄りがたい長編のように語られることがあります。しかし、その特有な展開の仕方に慣れれば、けっして難解な書物でも美の巨峰などでもありません。重要な場面もむしろ身近な所で繰り広げられることが多く、多彩なアプローチが可能な小説だということがわかるはずです。安定していた社会が傾く時の迫力に富む描写もあり、人生にうがたれる深淵をのぞきこむような場面も描かれはします。でも一方では、人間に秘められている可能性も繰り返し語られているし、親近感もユーモアも感じることができる小説です。それまでの近代小…
芭蕉は江戸に旅立つ門人にはなむけとして、次のような俳句をひねりました。 梅若菜丸子の宿のとろろ汁 猿蓑 新春の道中には、梅もある、若菜もある。丸子の宿(静岡市内)ではおいしいとろろ汁が待っている。色彩豊かで味覚まで刺激されます。芭蕉の弟子を励ます気持ちが伝わってきます。 この名句ほど素敵で心温まる食の列挙はできません。でも、貧しい食体験からでも、私なりのめずらしい 季節のガレット ソバ粉で作るクレープ「ガレット」。中には卵やハム、きのこやベーコンなどの具が入り、仕上げに塗られるバターが香ばしいです。 リンゴ酒の「シードル(Cidre)」を添えてみても、サッパリした感じの食事が楽しめます。リンゴ…
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