地這う龍 二章 その8 初対戦のゆくえ
趙雲の槍が、ツバメのような速さでひゅんっ、と空を裂き、張郃《ちょうこう》の胴をえぐろうとしてきた。張郃は思い切りのけぞって、刃《やいば》をかわした。馬から転げ落ちそうになるが、なんとか内ももに力を込めて、こらえる。態勢を整えようとした刹那、その視界に、趙雲の胴体が見えた。趙雲は大胆な攻撃をしたがゆえに、胴体ががら空きになったのだ。いまだ!張郃は、すでに激しい打ち合いで痺れがきている手を励ましつつ、趙雲の胴めがけて槍を突き立てた。だが、その渾身の一撃は、がん、という無情な金属音とともに跳ね返された。趙雲は、攻撃を見切っていたようだ。一瞬、間近に見える趙雲の端正な顔が、歪んだように見えた。いや、歪んだのではない。趙雲の表情の正体を知り、張郃はぞくっと背筋をふるわせた。かれは笑っていた。虐殺の喜びに笑っているの...地這う龍二章その8初対戦のゆくえ
2024/01/01 09:59