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  • 【涙が、】4

    「・・・・・・・・・・・・んかった、」 時雨さんの、小さな声。「・・・・・・届かんかった、・・・・・・駄目やったぁ、・・・・・・おれ、・・・・・・」 あの日、時雨さんはなにを掴みたかったんだろう? 『届かんかった』 ・・・・・・・・・・・・その、意味を、・・・・・・・・・・・・、 僕は今更ながら考えてしまった。

  • 【涙が、】3

    そういえば、いつだったか。 「ぼくがさぁ。くっそ甘いラブソングなんてつくっちゃって。しかもそれをうたっちゃったりしたら、気色悪いよなぁ、」 移動中のクルマの中だった。隣から、ぼそっとそんな声が聞こえてきた。 運転していたのはスタッフさんだ。三列シートのワゴン車の中。計登さんは一番後ろのシートを占領して眠ってた。時雨さんは確か仕事が入っていて、それを終えて現地で合流するって流れだった。 僕はスマホゲームをしていた。手こずっていたミッションを漸くクリアして、片耳だけイヤホンを外した処で、眠っていたと思ってた十秋さんがそんなこと云いだしたから、ちょっとだけ驚いた。 寝てなかったのかな。そう思って。ス…

  • 【涙が、】2

    「時雨がさ、」 そこで言葉を切って、計登さんは煙草を咥えた。 カチ、と。ライターが点火する。 ゆっくりと、・・・・・・言葉を探しているんだろうか、・・・・・・ゆっくりと吸い込み、そして、細く、長く、煙りを吐いた。「時雨さ、アイツは、・・・・・・・・・・・・脆い。よな」 僕と計登さんは事務所の屋上に居る。小さいけれども自社ビルだ。風が少し強い。計登さんは僕に煙がかからない様に、風下に立っている。眼を細め、フェンスに凭れて。煙を細く細く、ゆっくりと吐き出す。「例えば、だけどさ、」 計登さん、少し痩せたな。そんなことを僕は考えていた。「・・・・・・・・・・・・俺、だとしたら。時雨は、ああはなってなか…

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