作業療法のリハビリを受けていたある日のこと。その日の受け持ちの先生は、はじめてお世話になる若い男性。 「初めまして! 今日の作業療法を担当します。まずは身体の状態を見せてくださいね。・・・少し右手がむくんでいるかもしれませんね。ほら、左と比べると若干ここが膨らんでいませんか?・・でここをもみほぐしてやると、、ほら、左右同じになったでしょ? そもそもなぜむくむかというと・・・」 この先生は「おしゃべりニキ」と呼ぶことにする。 患者の病状やリハビリ進捗など、最低限の情報は各先生方で共有されているようであるが各コマのリハビリメニューは担当する先生の裁量にある程度任されるようだ。 おしゃべりニキのコマ…
先日看護師さんのサポートなしでのベッドから車いすへの移乗を許可いただいた。その際に万一転倒事故が起こってはならないということで、車いすの変更を先生から提案された。 新しい車いすがこちら。(株)松永製作所のネクストコアシリーズ。 上の写真のようにひじ掛けの部分を跳ね上げることができるため、ベッドから腰をずらす形で移乗できるようになっている。 車体側面のブランドロゴがかっこよく、かつ野心的である~GLOBAL STANDARD~ フレームの素材は不明だが少なくともカーボンでないことは確か。しかしながら剛性感は高く、かつ快適性もある。残念ながらコンポーネントの搭載はないためピスト車いすである。アルテ…
転院のタイミングの問題で、またしても1週間以上風呂に入れていなかった。自分のにおいが自分ではわかりにくい可能性があるため、周囲に迷惑をかけていないか心配である。 身体の状況は改善してきており、風呂についても前の病院でのようにフル介助の必要はなさそう。どの程度の介助が必要かを理学療法担当の先生にご判断いただき、いよいよ入浴日がやってきた。 介助入浴用の車いすに移り浴室に足(車輪)を踏み入れる。フル介助用浴室とは異なりしっかりと浴室の体をなしている。 今回サポートいただく看護師さんは体格の良い快活な男性。ムキムキニキと名付けよう。 「まず、かけ湯していきますねぇ~」 ムキムキニキがタライを手にする…
リハビリ病院での作業療法がスタートした。作業療法は主に手の動きなどの細かい動作や書字などの生活関連のリハビリもカバーする。 作業療法の担当は若い男性の先生。パーマが印象的なので「パーマニキ」と呼ぶ。 パーマニキは巨大な知育玩具のようなものを取り出し、僕の目の前にセッティングした。作業療法でもテストを行い、現在の状況をスコア化するらしい。 巨大知育玩具を使い、動作の正確性やスピードなどを評価していく。おおむね自己評価通りの結果で、健常な左手を100点とすると右手は80点程度。 パワーはほぼ戻ったものの、スピードや精密動作がやや劣る。スタンドのような評価軸だ。 ただ直径1mm程度の木の棒を指先でつ…
リハビリ病院に転院してきて数日。遅々としたスピードではあるが順調に回復してきている自覚があった。社会復帰にあたり自分でできることを一つずつ増やしていかねばならない。 転院当初は、ベッド・車いす間の移乗、車いすでの移動、トイレについては看護師さんのサポートが必要であった。もよおすたびに看護師さんを呼び、車いすに移乗させてもらい、トイレまで移動、車いすから便座への移乗+ズボン・パンツ下ろし、終わった後は逆の順でベッドまで戻る行程をふむ。 今更恥ずかしいとかないのでトイレの状況を看護師さんに見られているのは気にしないのだが、深夜にお呼びする際はとても気が引ける。 ある朝、 「何だか今日、いけそうな気…
リハビリ病院での言語療法が始まった。担当いただくのは、マスクから覗く瞳が優しい30代くらいの男性。「優男ニキ」と名付けよう。 言語療法は病気により認知や記憶の機能に悪影響が出ていないか確認し、改善していくことが目的。自分としては健常時と比較しこれらの能力が変わったようには感じていなかったが、自分では気づかない部分で影響が出ているかもしれない。 4畳ほどの小部屋で周囲の壁に数々の検査グッズを配した言語療法室。身体のリハビリとは趣の違う雰囲気に緊張感が高まる。 「これから5,6回言語療法の時間を使って認知機能のテストをしていきます」 優男ニキが説明を始める。記憶力・推理力・図形の認識・計算など様々…
リハビリ病院での初めての理学療法。担当の先生は30代前半とみられる男性。若くして威圧感すら感じさせる眼光が印象的なので「眼光ニキ」と命名する。 眼光ニキは手早く僕の回復状況を把握し、適切なリハビリメニューを提示してくれる。 「この段階では色々な装具を試してみることが大切です」 眼光ニキはそう言うと見覚えのある器具を取り出した。 (これは、、、前の病院でもおなじみ、フォレスト・ガンプ、、、) 「吉田さんはここまでは必要ないような気もしますので、これとこれも試してみましょう」 「それぞれ装着して歩いてみて、一番違和感がないものを教えてください」 眼光ニキに支えられながら手すり沿いに歩いてみる。 「…
2024年11月5日 救急搬送された病院からリハビリテーション専門病院へと転院した。介護用タクシー(というものがあることも今回初めて知ったが)に車いすごと乗車し、10分ほど走った。2週間ぶりに見る外の世界は何も変わっていないが、変わっていないそのこと自体が感慨深い。 リハビリテーション病院は専門病院だけあり多数の療法士の先生方と設備を備え、多くの患者さんでにぎわっていた。 「吉田さんはまだ若いから、改善していく可能性が高いですよ」 初回のオリエンテーションで主治医の先生がおっしゃった。 前の病院でもすべての療法士の先生から「まだ若いから・・」と言われていた。 「そうか、僕はまだ若いのか、、、」…
「吉田さん、転院の日が決まりました。11月5日です!」看護師さんから告げられた。 脳梗塞急性期の2週間をクリアしたので、本格的なリハビリを行うべく専門病院へ転院するとのこと。普段の生活とは全く違う状態だったため、とんでもなく長く感じた2週間だった。 現病院のリハビリの先生方にも報告する。 「転院が決まりました、大変お世話になりました。」 「吉田さんおめでとう!ただリハビリ専門病院はここよりもさらに一コマあたりの時間が伸びるし、土日も休みなくリハビリが入るので大変かもよ?」 言語療法担当のメガネ女子は相変わらずメガネの奥の眼光鋭い。 そうだ、この病院の土日祝はリハビリがなく、ヒマなのである。 そ…
「おじゃまします~」 さわやかな笑顔でメガネ女子が病室に現れた。 シフトで頻繁に変わる看護師さんやお茶を補給してくださる方など、とにかく登場人物が多く、加えて制服やマスクのせいで顔を覚えられない。ただメガネ女子は全身から醸し出される雰囲気から普通の看護師さんではない気がした。 「言語療法を担当します、メガネ女子です~」 そういえば救急搬送された日もこのメガネ女子が病床に現れ、イラストの名称を答えさせられたことを思い出した。 「今日は良い天気ですね~。吉田さんは休みの日に何をしているんですか?」 「そうですね、山登りとかサイクリングとかですね。」 ・・・ ・・・ アイドリングトークが10分ほど続…
別離はいつも突然にやってくる。 患者ごとのスペースはカーテンで区切られ基本的に患者同士が顔を合わせることが少ない平安貴族スタイルであるが、姿が見えないがゆえに声はより鮮明なイメージで届いてくる。 4人部屋の病室の隣のスペースにいる「歯ぎしりオジ」。オジと看護師さんのこれまでのやりとりで、病状が軽いこと・退院が近いことは認識していた。 その退院の日が突然訪れたのである。 朝8時、オジのスペースからゴソゴソと音が聞こえる。 「歯ぎしりオジさん、いよいよ退院の日ですねえ」と看護師さん。 「奥さんが1階にいらっしゃっているので準備ができたら降りてきてくださいね」 「ありがとうございます。すぐに向かいま…
2024年10月下旬、理学療法の初回リハビリを受けた。一コマ約40分程度の時間を使い、歩行をはじめとする日常動作の回復を目指す。麻痺している右半身のマッサージから始まり、足に運動刺激を入れる施術を受けていく。 「じゃあ、装具をつけて歩いてみましょうか」理学療法の先生がさらっとおっしゃる。 「そうぐって何ですか?」僕が聞くと先生はおもむろに以下のような器具を持ってきた。 「ああ、フォレスト・ガンプが幼少期に着けてたやつですね」 先生は若いためフォレスト・ガンプをご覧になっていないそうだが、40代以上はしばしばその例えをするらしい。 フォレスト・ガンプを装着し、歩行時の姿勢を見るため正面に移動式の…
いよいよリハビリが始まる。可能な限り身体の状態を戻し、社会復帰を急ぎたいところである。 脳梗塞の一般論としては発症から1~2か月の間が一番機能回復が見込める時期らしく、6か月ほどで状態が固定されるそうである。よって障害等級の判断は発症から6か月後とのこと。 つまり僕にとっては2024年11月、12月が勝負の月となるわけだ。 リハビリは「理学療法(立つ・歩くなどの日常基本動作)」「作業療法(主に手の動きなどの細かい動作)」「言語聴覚(認知・記憶など)」の3種類。 これを1日に3コマこなしていく。 それぞれの科目に専門の資格を持った先生が担当いただけるので安心して頼りたいと思う。 道のりは遠く 歩…
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