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2021/08/04

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  • 書評 芳川泰久「謎とき『失われた時を求めて』」新潮社2015年

    本書「謎とき」の前半と後半で論じられている二点に絞って、感想を述べたい。本書の後半で著者は、主人公と母親がヴェネチア滞在中に訪れる洗礼堂の場面(第6篇「逃げ去る女」)に注目する。このサン=マルコ寺院では、母親は聖母のイコンとして描かれ、母の聖別式も行われたと著者は主張する。また、聖別された母親のモデルを実際に当地に出向いて探した著者は、それを洗礼堂内で突き止め特定することができたと主張する。 しかし、先を急がずに、まずは母と息子のヴェネチア滞在の場面の最後の文を引用しよう。 いまその洗礼堂とモザイクを思い浮かべると、ひんやりとした薄明かりに包まれて私のかたわらにひとりの婦人がいたことを無視する…

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