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  • 日々の恐怖 4月30日 箱(1)

    日々の恐怖4月30日箱(1)Sさんの家には、古くから受け継がれる箱がある。サイズは30㎝×30㎝×30㎝というから、それなりに大きい。見た目は船箪笥のようなもので、上面に持ち手がある。前面に取っ手と錠前がついており、開け閉めができる構造になっている。ただし、錠についた鍵穴はなんらかの金属で埋められていて使えない。一応、鍵も一緒に伝わってはいるが、こちらはひどい錆でやはり使えない。施錠された状態で受け継がれているため、中身はその有無も含めて不明である。いわゆる開かずの箱だった。Sさんの家は女系で、箱は母から子へ受け継がれてきた。それは、この箱を受け継いだものが当主となるという意味でもある。Sさんがこの箱の存在を知ったのは高校生の時だったが、その時すでに、箱を受け継ぐのは彼女であると決まっていた。彼女には兄と弟がい...日々の恐怖4月30日箱(1)

  • 日々の恐怖 4月28日 新聞の集金

    日々の恐怖4月28日新聞の集金集金に行ったその家は、オートロックタイプのワンルームマンションでした。玄関ホールから呼び出しチャイムを鳴らしました。鳴らしてしばらく経って、「はい。」と男の人の声がしました。寝起きなのか、ひどくテンションの低い声でした。集金に来たことを告げたら、黙ってオートロックのドアが開きました。エレベータで目的の部屋へ行き、玄関のチャイムを押しました。チャイムの後にちょっと間があって、”かちゃり。”と鍵を開く音がして、ドアが少しだけ開きました。しかい、いくら待っても人が出てきません。仕方ないのでドアを引いてみました。やっぱり玄関には誰もいません。「すいませ~ん、○○新聞です~。」声をかけましたが、反応がありません。何度声をかけてもチャイムを鳴らしても、反応がありません。奥の部屋からはテレビの音...日々の恐怖4月28日新聞の集金

  • 日々の恐怖 4月24日 兄が見たもの

    日々の恐怖4月24日兄が見たものKさんの祖父の家は能登の方のけっこう立派な農家だそうで、毎年お盆時期には家族総出で里帰りする。その家の奥の仏間には立派な透かし彫りの欄間があり、Kさんとそのお兄さんはよくおじいさんから、「この続きの間から欄間を通して仏間を覗くと、不思議なものが見えると言われている。」と聞いていました。そこである日、Kさんとお兄さんが他の家族が不在の際、脚立を持ちだしてそれを決行しようとしました。まずはお兄さんの番、ということで脚立を上り、欄間の彫刻の間から隣の仏間を覗いたお兄さんは、5秒ほど無言で覗いた後、静かに脚立を降り、それを畳んでしまいました。不思議に思ったKさんが何度聞いても、お兄さんは無言のままでした。結局、Kさんは覗かせてもらえいないまま、お兄さんも一言も何を見たかを話さないまま、そ...日々の恐怖4月24日兄が見たもの

  • 日々の恐怖 4月21日 中古の家(4)

    日々の恐怖4月21日中古の家(4)帰省した日に友達と待ち合わせをしたら、他に男が1人やってきた。友達の会社の後輩だそうで、ご丁寧に名刺までいただいた。友達が、「彼、おまえが夏に言ってたあの家の話を知ってるんだよ。あの地域の出身で、今もそっちの地域の支店にいるんだけど、最近、俺がそこの支店に立ち寄ることあってさ。その時、飯ついでに聞いたら話に食いついてきてくれて、おまけに独自に調べてくれたんだって。けっこうすげえよ。」わざわざその日も電車で出てきたそうで、ちょっと唖然とした。それで、3人で飲みながら聞いたことだ。その家は、所有者はたしかにあのご夫婦だった。その旦那さんは、小学生のころに両親を亡くしてしまい、独り者の叔父に引き取られて育った。就職するまで叔父と二人暮らしだった。その旦那さんが結婚し、その後、賃貸のア...日々の恐怖4月21日中古の家(4)

  • 日々の恐怖 4月17日 中古の家(3)

    日々の恐怖4月17日中古の家(3)それでいろいろと思い出した俺は、友達にその話をしてみた。ちょうどそれくらいのときに、ばったりその家を発見した。まあ遠目からだったもんで、友達に、「たしかあそこだ。」と教えた。ビビリな俺はちょっと怖くなっていたので、すぐに、「帰ろう。」と言った。すると友達は住所だけ確認して、「おもしろい話聞いたら教えるわ。」と付け加えた。友達はずっと地元にいて、金融系の営業をしているので顔が広く、仕事でもわりと広範囲で動くため、「なんか聞けたらいいねえ~。」と言っていた。それからちょっとして去年の冬だ。その友達から、『冬は帰省すんの?』とメールが来た。『たぶんする。』と返すと、『日にち決まったら教えて。飲もうぜ。』ということになった。まあいつも帰省時に電話一本で会ってるし、家も近いのに、”何を今...日々の恐怖4月17日中古の家(3)

  • 日々の恐怖 4月12日 中古の家(2)

    日々の恐怖4月12日中古の家(2)父は後部座席の母に、「母さんわかった?」と聞いた。母は、「いや、私は特になかったけど、雰囲気重いなぁ・・・、とは思った。」と返事した。それで父が言うには、弟が泣き出したときに指さした方向を見たら、見えはしなかったが、「出て行け。」という声が確かに聞こえたと言った。その声は、すごくじめっとした老人っぽい感じの声だったそうだ。父は、「いやあ、あそこ絶対いるだろ、やばかったな。」と言った。その後、父と母は終始、事故物件がどうのとかいう話をしていた。俺はそれを聞いて、あそこだけは住みたくないな、と思った。結局、翌年に一軒家はわりと近所の物件に無事決まってホッとした。それから10数年後。地元を離れて就職している俺は、毎年夏休みがある。去年も1週間休みを取り、帰省した。すぐに高校時代の友達...日々の恐怖4月12日中古の家(2)

  • 日々の恐怖 4月10日 中古の家(1)

    日々の恐怖4月10日中古の家(1)高1の頃に父がちょっと出世して、一軒家を買おうかということになった。それで日曜を利用して不動産巡りみたいなことをしていた。その中で見た中古の家があった。両親と俺と弟(当時5歳)で行った。所有者はたしか40歳くらいのご夫婦で、夕方に現場で待ち合わせた。そのときに住んでいたのは、ざわついた繁華街の賃貸マンションだったので、郊外のその一軒家は、外から一見するととても魅力的だった。家の中に入れてもらったら、やけに光が弱くて雰囲気が悪い気がした。それでもご夫婦は、「日中はけっこう光入りますよ。」みたいなことを。1部屋ずつ見てたら、いきなり弟が、「ビヤアアアア!!!!!」って泣き出した。「あそこに怖い顔した男の人がいて、こっち見てる。」って。廊下の隅っこを指さし、母にびったりくっついて、...日々の恐怖4月10日中古の家(1)

  • 日々の恐怖 4月5日 村岡君(4)

    日々の恐怖4月5日村岡君(4)大学を関西で過ごした私はそのまま関西で就職し、月日が経ちました。まだ交友が続いている村岡君が所要で関西に出てくることになり、大阪の梅田で久しぶりの再開を果たしました。まあ、メールや電話でのやり取りは結構あるので、まあまあの感激でしたが。私は二人で飲みがてら、あの時何が起こったのか長年気になっていることを聞いてみました。あの時、竹林で何かを探していた女は、雷光と共にすべる様に教室の方角に向き直り、そのまま、”すう~っ。”と、こちらに移動してきたそうです。古い着物姿に何かを入れた袋、うつろな瞳、着物のカスリ模様まではっきりと見えたそうです。そしてそのまま廊下の壁と窓をすり抜け、教室の窓もすり抜け、そのまま空中で雪が解けるように消えたそうです。「お前、ホンマに見えたんか?」私の問いに酒を...日々の恐怖4月5日村岡君(4)

  • 日々の恐怖 4月1日 村岡君(3)

    日々の恐怖4月1日村岡君(3)突然大きな雷光があたりを照らし出しました。と同時に、生徒たちや隣組の先生が悲鳴をあげました。「うわっ、こっちに来よるっ!」見える生徒たちが悲鳴をあげながら教室を逃げ回ります。廊下の生徒達も恐怖で泣きながらあわてて教室に入ってきます。「なんじゃあ、こりゃあ!」と隣組の先生もまるで松田優作のジーパン刑事みたいな声をあげて、でも体が動かないのかそのまま立ち尽くします。教室には怒号と悲鳴と泣き声の生徒達が逃げ惑います。まるで長い時間のように思えましたが、実際は数十秒だったのでしょう。やがて、「消えたっ!」と誰かの声が聞こえ、教室にはパニック状態だけが残りました。泣いている生徒、腰が抜けてへたり込んでいる生徒、そして立ち尽くすジーパン刑事。ただ、見えない私達にはまったく何も見えませんでしたし...日々の恐怖4月1日村岡君(3)

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