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No.7-008 消えた子守唄 ――Next Christmas Time
父の体調不良と共に始まった、小さな変化。ギターの音色が途切れた夜、迎えを待つフレッドの隣には、声はなくとも温もりをくれる少女が寄り添っていた――【80s洋楽が響く創作物語】
2025/06/15 21:03
No.7-007 沈黙の少女 ――Next Christmas Time
託児所の裏で出会った、言葉を失くした少女。小さなぬいぐるみと無言のまなざしが、フレッドの心に過去の痛みを呼び覚ます――【80s洋楽が響く創作物語】
2025/06/08 21:32
No.7-006 リバプールへ ―Next Christmas Time
屋敷を離れた親子がたどり着いたのは、リバプールの町。簡素なアパート、聞きなれない方言、夕暮れの託児所、そして夜ごとのギターが、フレッドの新しい日々をあたためていく――【80s洋楽が響く創作物語】
2025/06/01 21:02
No.7-005 肖像画の貴婦人 ―Next Christmas Time
白布の下に封印されていたのは、美しい貴婦人の肖像画。明かされた記憶に、イライザの言葉が影を落とす。けれど父の静かな決意を聞いて、フレッドはそっと希望を抱いた――【80s洋楽が響く創作物語】
2025/05/25 21:32
No.7-004 灰色の屋敷 ―Next Christmas Time
北イングランドの古い屋敷に連れて来られた、幼いフレッド。冷たく威圧的な祖父や厳しいナニーの影に、笑顔が消えていく。家族の温もりを求めても、誰も寄り添えないまま、暗く重い日々が続く――【80s洋楽が響く創作物語】
2025/05/18 21:32
No.7-003 寂れた故郷 ―Next Christmas Time
feat. The Specials 「もしかするとヤス、日本の大学に行くかもしれないよ?」 「えっ、日本に帰っちゃうの⁉︎ じゃあバンドは――?」 フレッドは躊躇うように言葉を濁し、僕も深く頷きながら話を続けた。 「ヤスは僕等には言わなかったけど、今回日本に帰った目的は法事だけじゃなく、大学受験の模試を受けるためでもあるって」 ヤスの祖父は教育熱心な人で、孫が日本の大学に行くことを望んでいるという。 ヤスのお父さんもアメリカに留学していたぐらいだし、伯父と伯母、その子供のいとこ達も共に優秀で、祖父は一番可愛がっていた末っ子の忘れ形見であるヤスへの期待も大きいそうだ。 ユミコはヤスの将来に関し…
2025/05/11 21:02
No.7-002 我が家が一番 ―Next Christmas Time
「君たちのピアノ・マンも、それでOK?」 ヨーコがキーボード担当のフレッドに声をかけたけど彼は皆んなの会話に耳を傾けず、黙々とアイディア・ノートにペンを走らせている。 ヨーコが僕に小声で耳打ちしてきた。 「フレッドって、普段もこんなに大人しいの?」 「そうでもないんだけど、今は〝心ここに非ず〟なんだ」 理由を知っているメンバー全員ニヤニヤしながら一斉にフレッドを見た。その視線に気付いたフレッドが、突然口を開いた。 「ねえ、今の時期にクリスマス・ソングをリクエストするのって、変かな?」 えっ、まだ10月なんだけど⁉︎ ★ ★ ★ 夏も終わりに近づく頃フレッドは無事に大学が決まり、僕は失恋の傷を忘…
2025/05/04 21:32
No.7-001 ラジオ局で衝突 ―Next Christmas Time
feat. Queen 一日中プロモーションに追われた今日、最後のミッションはラジオ番組への生出演だ。 時間が押してしまいラジオ局に到着すると、すぐにパーソナリティーのヨーコと打ち合わせに入った。 ヨーコは小柄だけど、とてもエネルギッシュでチャーミングな女性だ。英語も完璧で、新人の僕等にも気さくに接してくれる。 「――で、中盤にはファンからの電話質問に答えてもらうから。2~3人ね? どんな内容になるか予測できないから、覚悟してよ⁉︎」 からかい交じりのヨーコの説明に、僕は少し溜め息を漏らした。 「ファンの質問だと、プライベートな内容になるだろうね? 僕等、放送禁止なこと言わなきゃいいけど」 す…
2025/04/27 21:08
きっかけは・・・『ボヘミアン・ラプソディ』
クイーンの映画 (2018) の方です 「コロナ禍の暇つぶし」に書いた物語のベースは、1985年に描いたオリキャラだけど(詳細はコチラ)それを思い出したきっかけが、2021年6月に金曜ロードショーで放送された『ボヘミアン・ラプソディ』でした。 映画自体は劇場で見て〜と言いたいところだけど見逃してしまい、DVDレンタルで内容を把握。 80s な自分にとってクイーンは 70s の大御所で、ちょっと管轄外。 正直、リアルタイムで見ていた「ライブエイド」のシーン目当てで、クイーンの〝大御所・ラスボス感〟の半端ない再現に、大満足して終了――といった感じでした。 (function(b,c,f,g,a,d…
2025/04/20 21:32
(宣伝)note 始めました!
久々の投稿でなんですが (笑) 毎回物語の末に添えている「ト書き」で書ききれない、熱い思いを「note」にUPしたいと思います。こっちの「はてなブログ」に書くと物語の流れを止めてしまうので、新たに立ち上げることにしました! 「note」へのリンクはこちらから! ★描いては消して・・・ イラストを制作していると「うぉー! ギャー! うっへっへ・・・」など一人ノリツッコミも激しく、友達に(LINEで)聞いてもらうのも申し訳なくなってきたので、制作過程の悲喜こもごもは、こちらにぶつけようかと。けっこうマニアなこだわり有り (笑) ★教えてChat先生! 去年ChatGPTによる監修を導入。間違いや表…
2025/04/13 21:32
新年、4年目突入!
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)ペコリ 〝ご挨拶〜始まりは1985年〟にもあるとおり、コロナ禍の暇つぶしで書き終えた物語をブログにしたのが2022年1月。当初は毎日のようにUPして、一年ぐらいで終わるだろうと思っていたんです。 でも始めてみたら「もっとアーティストや曲を絡ませたい! ト書き(という体のツッコミw)も挿絵も載せたい!」と、思った以上に手間をかける事態に陥ってしまいました (汗) 特にイラストは、落書きですら20年以上も描いていなかったので、最初は全く描く気になれず、せっかく買ったペンタブも放置…… なんとか重い腰を上げ…
2025/01/05 21:02
No.6-033 Blue Dreaming (章末) 最後に残るのは?
「僕が君を忘れるわけないじゃない⁉︎ 君のほうこそ僕を忘れてたでしょ? いや、忘れたかったよね、あんな追い詰めるようなことをしたんだもの……」 フレッドの言葉にパティは首を静かに横に振り、大きな丸い瞳を潤ませた。 「あの時は、ごめんなさい。黙って行ってしまって、ごめんなさい。ずっと後悔してて、私――」 そこへヤマグチさんがやって来た。 「おーい、早く車に乗ってくれ!」 急かされたメンバーは次々と楽屋を後にしていく。僕はオロオロしているフレッドの肩を軽く叩いて促した。 「一緒に来てもらったら?」 「あ、うん! サム、パティ、まだ時間ある?」 兄妹は顔を見合わせ頷くと、フレッドはホッとした様子で二…
2024/12/22 21:32
No.6-032 Blue Dreaming シャイな彼女と奇跡の再会
feat.Kajagoogoo 「なに言ってんだ?」ってぼやきながら、鏡に映った自分を見て分かった。 両耳のピアスは両性愛者バイセクシャルを表すからねーって、ちょっと待て⁉︎ 右にも付けろって言ったのお前じゃないか? 二日酔いじゃなかったら制裁を打つのに……覚えてろよ⁉︎ ★ ★ ★ スタジオに入った僕等は盛大な拍手に迎えられた。テレビカメラの前で代わり映えしない司会者の質問に、お決まりの答えを並べる。 それにしてもすごいスタジオセットだな。 日本のミュージシャンは、いつもこんな豪華なセットで歌っているんだ?さすが金持ち日本! 「どうぞ」と通訳の合図でセットの中に入り、司会者の紹介で曲が流れ出…
2024/12/15 21:02
No.6-031 Blue Dreaming 足りない愛のレッスン
feat.Level 42 「僕も振られたよ!」 「えっ!? もしかしてジェム、ケイトのこと本気だったの?」 驚くフレッドに一連の出来事を話して聞かせた。アルコールが進む進む。 「――そしてコレが、行き場を失った可哀想なピアスさ!」 ポケットから取り出して見せると、フレッドは興味津々に手に取った。 「もったいないねぇ、すご〜くきれいなのにぃ」 しげしげと眺める弟を見てピンときた! 「そうだ、君がつければいいんだよ⁉︎ 同じような瞳の色だし、兄弟でペアっていいじゃない?」 「えーヤダよぉ、穴を開けるの痛そうだもん。それよりジェムの右耳に嵌めたら⁉︎ せっかく開けた穴が塞がっちゃってるよ? ほらほ…
2024/12/08 21:32
No.6-030 Blue Dreaming ドライブ、夏の終わり
feat.The Cars バックミラーに映る二人の姿を確認すると、手を振るケイトの唇がスローモーションのように動いた。 「ありがとう、お義兄にいさん」 二人の姿が、完全に見えなくなる頃ラジオから『ドライブ』が流れ始めた。 [The Cars『Drive』Released:23 July 1984] 曲を口ずさみながら〝もう彼女を車で送るのは、僕じゃない〟そう実感すると辺りの景色が滲み出し、海に沈む太陽と流れるヘッドライトが揺らめいて、地平線を上手く捉えることができなかった―― ◆ ◆ ◆ 家に着いたら22時を回っていた。シャワーを終えてキッチンに向かうとフレッドの気配を感じて、元気よくドアを…
2024/12/01 20:32
No.6-029 Blue Dreaming
「ずっと、そう考えていて……だけど夢を諦めてしまうようで、なかなか君に言い出せなかった」 照れながらはにかむアシュリーにケイトは何度も頷きながら、彼の頬を両手で優しく包んだ。 「やっぱり私の好きな青は、この瞳とブライトンの海ね」 そう囁き、彼の唇に優しくキスをしたケイトは、もう無理に明るく振る舞う必要もなさそうだ。 二人が抱き合う姿を背に静かにドアを開けると、レイチェルの瞳から涙がこぼれた。僕は彼女の肩を支えて、そっと声をかけた。 「3度目のチャンスを待つ?」 レイチェルは肩を竦め、お互い小さく微笑みながら部屋を後にした。 ◆ ◆ ◆ アシュリーがレイチェルを送りに行っている間、僕とケイトは彼…
2024/11/24 21:02
No.6-028 Blue Dreaming
feat.The Outfield 「そもそも、ケイトが家を出た原因はお前だろ⁉︎」 確かに、愛する女性ひとに先を越されるのは男として辛いことだと理解できる。でもケイトにだって、辛く苦しいことがあるはずなんだ。 それなのに彼女は決して泣き言を言わない。だからこそ、自分の夢に近づくことができるんだ。 「もういいの、やめて!」 ケイトに腕を押さえられるも、言わずにはいられなかった。 「君は……いつも笑顔で明るく前向きで、逞しささえ感じる。でもそれは、弱さを隠すためのカモフラージュなんだ」 ケイトは母親を知らず、父親にも滅多に会うことなく育った。高齢の祖父母に心配をかけまいと明るく振る舞ってきたのだ…
2024/11/17 20:32
No.6-027 Blue Dreaming
「幸せって、好きな人と一緒にいることじゃないの? 家を出た私には、もう『あなただけ』なのに、何度電話しても連絡くれなかったのは……レイチェルを愛してたからじゃないの?」レイチェルが、たまらず声を上げた。「私のせいなの! あなたからの留守録を消して、アシュリーには一切伝えなかった。あなたからアシュリーを奪おうとしたのよ!」
2024/11/10 20:32
No.6-026 Blue Dreaming
feat. Cutting Crew 「でも、こんな口うるさい女、嫌われて当然よ!? レイチェルは私とは正反対ね、必死にアシュリーを庇って……きっと何もかも包み込む、聖母のよう人なんだわ。私はダメ、突き放してばかりでバチが当たっちゃった」 ケイトはゆっくりと視線を僕に移し、話を続けた。 「私、ジェムを好きな気持ちは嘘じゃないの。一目見て素敵だと思ったし、あなたと過ごす甘い時間は、女性として至福のひとときだった。だから、アシュリーがレイチェルを選んだように、私も次へ進もうって、そう決心したんだけど……」 涙と雨で顔をグズグズにしてもケイトは凛とした表情を崩さなかった。 「でも、もうこれ以上、気づ…
2024/11/03 20:32
No.6-025 Blue Dreaming
pick out:A Flock Of Seagulls 霧雨の中、足早に駐車場まで 向かっている途中、ケイトが不動産屋の張り紙に目をとめた。すると、偶然にも中からアシュリーが出てきたんだ。 驚きの表情の二人。ケイトは震える声で言った。 「……どうして、ここに?」 彼は僕に目をやり、控えめに口を開いた。 「……もしかして、二人で住む家を探してる?」 黙って俯くだけのケイトにアシュリーは話を続けた。 「だったら、戻ってくるといい。僕があそこを出るから」 「レイチェルと一緒に住むのね⁉︎」 鋭い口調のケイトをなだめるように彼は説明した。 「いや、彼女は変わらず親元にいるよ。あの家は一人で住むには広…
2024/10/27 21:02
No.6-024 Blue Dreaming
feat. Olivia Newton-John 「聞けばケイトは、彼の不甲斐なさに呆れて出て行ったそうじゃない? だから確信したの。アシュリーにはケイトじゃない、私が必要だって。これは『運命のいたずら』? いいえ、神様がくれた〝2度目のチャンス〟よ」 [Olivia Newton-John『Twist of Fate』Released:21 October 1983] レイチェルとアシュリーが上手くいけば、それは確かに僕にもチャンスとなる。そんな思惑を巡らしていると、彼女がさらに強く訴えかけてきた。 「ケイトは強い女性だし、誰にでも愛されてるわ。父の会社でも人気なのよ、ケイトが来ると社内が明…
2024/10/20 20:32
No.6-023 Blue Dreaming
「今は僕の思いのほうが強いかもしれない。でも、絶対にケイトからアシュリーを忘れさせてみせる」 そう自分に言い聞かせるように答えると、レイチェルは目を見開き小さく吹き出した。 「ふふ、ごめんなさい。じゃあ安心して話せるかしら? 私たち、同志になれるかも」 彼女の瞳が鋭く光り女の表情に変わった―― ◆ ◆ ◆ 「時々、カフェのこの席で本を読みながら、ケイトを待つアシュリーを見かけたわ」 窓から見える書店を眺めながら眩しそうに話すレイチェル。 「アシュリーはカフェに入る前、書店に立ち寄る常連さんでね。本の話を通じてお互いを知っていくうちに、彼は私にとって特別な存在になっていたの……」 彼女は紅茶を一…
2024/10/13 21:02
No.6-022 Blue Dreaming
feat.OMD せっかく恋人同士なんだからラブラブなドライブ・デートをしたかったのに、ケイトはどこか上の空だ。 アシュリーに電話したけれど留守電にもならなかったのが気になっているみたいで車内の空気も、なんだか重い。 「ケイト、疲れてる? 寝てていいよ。着いたら起こすから」 彼女は申し訳なさそうにしたものの、ほどなく静かな寝息を立てた。 不安な気持ちに駆られてしまうとラジオから流れる曲にさえつい、過剰反応してしまう。 〜♫ もし君が離れていくとしても、今はいかないで お願いだから僕の心を奪わないで もう一晩いると約束して そして僕たちは別々の道を歩むのだから ♫〜 [OMD『If You Le…
2024/10/06 20:32
No.6-021 Blue Dreaming
次の日、僕は郊外まで車を走らせた。助手席には愛しのケイトではなく弟を乗せてね! 「今日はヘレンとの予定がキャンセルになったから、久しぶりにお墓参りに行きたいな。ちょうどこの前、命日だったし」 僕はケイトのことばかり考えていたから少し恥ずかしい気持ちでフレッドの提案にOKした。 そんなわけで、墓地まで1時間ほどのドライブ。道すがら、音楽談義に花を咲かせた僕等兄弟は、「絶対デビューするから」とダッドに誓いを立てた。 それからフレッドのリクエストでホームセンターやスーパーに寄って、ロンドンに戻ってきたら16時を過ぎていた。 思ったより時間かかっちゃったけど(フレッドの買い物が長い!)まあ確かに、くす…
2024/09/29 21:02
No.6-020 Blue Dreaming
ロンドンに帰って来た僕等を見てフレッドは少し驚いた様子で、こっそり僕の部屋にやって来た。 「ケイトが戻って来たってことは、彼氏とうまくいかなかったの?」 僕はカバンを開けて、中身を片付けながら答えた。 「そういうことに、なるかな」 「ふーん……じゃあ、このまま一緒に住むことになるの?」 「そういうことに、なるかな。あっ、コレお土産――どうした?」 レコードを渡そうとしたらフレッドがニンマリしているのに気が付いた。 「別に、サンキュー!」 彼はレコードを受け取りドアノブに手を掛けると、 「あんまり見せつけないでよね⁉︎」 とウィンク一つ、部屋を後にした。 途端に顔が熱くなる。弟の勘の良さには、感…
2024/09/22 21:02
No.6-019 Blue Dreaming
feat.David Bowie まずは、派手で有名なロイヤル・パビリオン。外観はインド風なのに、中身はシノワズリー[中国趣味]一色。 それから、ザ・レーンズ。アンティーク・ショップや古着屋が連なるショッピング・ストリートだ。 「わあ、ステキ!」 アクセサリー・ショップに目を輝かせるケイト。 「見て行く?」僕が尋ねると 「ん……ジェムは、あっちで待ってて?」 と彼女は、セカンド・ハンズ[中古]レコードショップを指差した。さすが、分かってる! 夢中でレコードを物色していると、ほどなくしてケイトが手を振り戻ってきた。 ランチは、ケイトお勧めのレストランへ。 オーダーを済ませると僕は袋から〝デヴィッ…
2024/09/15 20:32
No.6-018 Blue Dreaming
「酷い、酷いアシュリー!」 「そうだ、あいつは酷い奴だ!」 「浮気してたなんて、許せない!」 「そうだ、ケイトを泣かすなんて許さない!」 「私じゃなくレイチェルをって、どういうことなの⁉︎」 「そうだ、ケイトのほうがグラマーなのに!」 〈ペチッ!〉 ケイトは軽く僕の頬を叩いて、まだ涙が残る笑顔を見せた。 「あースッキリした! こんな大声出したのって、初めてかも⁉︎」 彼女は背中を向けて海の方へゆっくり歩きながら、恥ずかしそうに口にした。 「不思議だな……私、ジェムにはこんな風に甘えて、不安な気持ちまでさらけ出せるなんて。きっと頼りがいがあるって、あなたのような男性ひとのことを言うのね?」 僕は…
2024/09/08 21:32
No.6-017 Blue Dreaming
黙ったまま俯いているアシュリーの腕にそっと手を添えて、レイチェルは静かに語りかけた。 「でもあなた、本当はずっとケイトを待っていたのよね? 彼女が戻ってきたなら、私なんて邪魔者で――」 「そんな! いや、その……僕が今こうしていられるのは君のおかげだし、だからこそ――」 「よく分かったわ!」 苛ついた様子でケイトが話を遮ると、なぜか極上の笑みを見せた。 「さようならアシュリー。今まで、どうもありがとう。私の荷物は、また後日あらためるから」 そして、ドアを勢いよく開け僕を手招く。 「行きましょう、ジェム?」 僕は違和感を抱くも何も言えないまま、ただケイトの後を付いて行った。 家を出て少し坂を登り…
2024/09/01 22:32
No.6-016 Blue Dreaming
掴まれた手を振り払うケイトを必死で止めるレイチェル。 「なんで今さら帰ってきたの⁉︎」 「あなたに、そんなこと言われる筋合いはないわ」 「ケイト落ち着いて!」 咄嗟にケイトを押さえた僕にレイチェルは目をやると、ケイトを睨み付けた。 「もう他の男性ひとがいるクセに……あなたはアシュリーを捨てたんでしょう⁉︎」 「捨てたって、なに言って――!」 そこへドアが開きアシュリーが入って来た。 彼は一瞬、驚きの表情を見せたもののすぐ視線を逸らし、買い物袋をテーブルに置いた。 アシュリーは、小柄で貧相な男だったけど、スッキリと整えた黒髪にブラック・スクエアの眼鏡から覗く伏し目がちな深みのある灰色の瞳は、確か…
2024/08/25 21:02
No.6-015 Blue Dreaming
pick out:The Who 「実際のところはどう? 落ち込んでる?」 「ん……」 そのままケイトはステージのほうを向き数秒後、ポソッと呟いた。 「明日、帰ろうかな……」 予想外の答えに、僕は動揺を隠しきれなかった。 「帰るって、ち、ちょっと待ってよ⁉︎」 「そろそろ仕事を始めないとね? それに――」 彼女はこっちに振り返ると躊躇いがちに理由を語った。 「私って待つタイプじゃなかったみたい。意地張ってたけど、なんでアシュリーは連絡くれないんだろうって心配になっちゃって……」 もしかすると、病気や事故にでも合ってるんじゃないかと不安になったらしい。 「僕も行くよ!」 思わず拳に力が入る。 「…
2024/08/18 20:32
No.6-014 Blue Dreaming
feat.The Style Council そんな連絡一つ寄越さない薄情な男なんか忘れさせてやる!って、つい躍起になってしまう。 今夜はフレッドもいないしバイトも休みだから、ちょっと背伸びをしてライブが楽しめるレストランにケイトを誘った。 「こんなところ初めて……大人の世界って感じね? ドキドキしちゃう!」 レストランの入り口で目を輝かせるケイト。 「ブライトンならナイトスポット、色々あるでしょ? 年上の彼だし、もっと大人な場所でデートしてるんじゃないの?」 なんて、ちょっと勝ち誇ったように意地悪く言うと、彼女は軽く溜め息を吐いた。 「彼はこういう場所は苦手だし、お金もないしね。それに私、ア…
2024/08/11 21:32
No.6-013 Blue Dreaming
まさか今でもその子を思っていたなんて! 項垂れる彼の肩を叩き、励ますように言ってみた。 「残念だけど、その彼女のことをいつまでも思い続けるのは、建設的じゃないと思うよ? ヘレンと付き合ってみなよ。今、君の側にいてくれる女性ひとを大切にしたほうがいい」 フレッドは納得いかない様子だったけれど、構わず続けた。 「それに女の子と付き合ったら、何か素晴らしい詩や曲ができるヒントになるんじゃないかな? やっぱりラブソングって王道だし」 するとフレッドの表情がパッと明るくなった。 「うん……そうだね、そうかもしれないね⁉︎ 僕、ヘレンと付き合ってみるよ!」 こうして彼は前向きになり部屋を後にした。 いいよ…
2024/08/04 21:32
No.6-012 Blue Dreaming
feat.Tracey Ullman 「実は……ヘレンと付き合うことに、なっちゃったんだ」 「へぇ! 良かったじゃないか、おめでとう!」 軽く拍手をしながらちょっとからかってみた。 「君ってモテるんだねぇ。他の女の子たちも、君に好意を持ってるんだろ?」 「モテないよ! 彼女たちのアレは、ゲームだよゲーム! 僕はからかわれてるだけなんだ。だから昨日、やっと断れて清々してたのに、ヘレンは――」 フレッドは顔を上げ、僕の肩を揺さぶってきた。 「彼女は他の子とは違うって、『皆んなは分かってないのよ』って泣きながら言うんだ!」 [Tracey Ullman『They Don't Know』Release…
2024/07/28 20:32
No.6-011 Blue Dreaming
「写真撮ってくれてる。ほら、ジェムも入って⁉︎」 「えっ、僕はいいよ」 ロンドンに20年も住んでいる身としては、さすがにライオンと一緒の記念撮影は恥ずかしすぎる! 「照れちゃって。ダメ、逃がさない!」 ケイトがクスクス笑いながら腕を絡めて、引き寄せてきた。 僕の腕は、彼女の胸の感触を捉えもう力なんて入らないよ⁉︎勘弁してくれー! って苦笑しつつピースしながら写ってしまった…… 子供たちの母親に礼を言われて、撮ったばかりのポラロイド写真を貰いニコニコしているケイト。 そんな明るく気さくで愛らしい彼女にどんどん惹かれていくのを、もう止められそうになかった。 こんな気持ちは初めてで、自分で自分の感情…
2024/07/21 21:32
No.6-010 Blue Dreaming
pick out:The Alan Parsons Project 男のピアスって今は一部の人がファッション感覚で身に付けてるぐらいだけど、昔は男女の区別なくしていたんだって。 例えば夫婦が戦争や仕事で長期間離ればなれになってしまうとき、同じピアスを片方ずつ分け合って必ずまた再会できるようにと願ったんだ。 ピアスは2個で1組だから、お互いを強く引き付け合うって信じられてたんだね。 あとカップルで歩くときは、大抵男の左腕と女の子の右腕が組まれるでしょ? それって男は利き腕の右手を自由にしていざというとき、女の子を守れるようにするためなんだよ。 つまり、男の左耳ピアスと女の子の右耳ピアスはいつもお…
2024/07/14 20:32
No.6-009 Blue Dreaming
feat.Wang Chung ケイトの提案で木漏れ日が揺れるセント・ジェームズ・パークを歩くことにした。 「きれいなところ……池も大きいのね」 「ここはロンドンの数ある公園の中でも、一番優雅で人気があるんだ。色々な人が来てるでしょ?」 サラリーマン、犬を連れた老紳士、並んでベビーカーを押すご婦人方に団体で賑やかに歩く観光客。ベンチで肩を寄せ合う学生らしきカップルを見て、ケイトが悪戯っぽく微笑んだ。 「私達も、カップルに見えたりして?」 そんな風に言われるとつい深読みしてしまい、淡い期待が思わず声になる。 「――兄妹とはいえ、血は繋がってないからね」 思い切って彼女の肩に手を回そうとした、その…
2024/07/07 20:32
No.6-008 Blue Dreaming
「ではこれから、ロンドンの正しい観光巡りをします! 準備はいいですか?」と、ちょっと先生風の僕。 「はーい!」と元気良く返事をするケイト。 二人で顔を見合わせ微笑んだ。 まずは、ケンジントン・ハイ・ストリートからケンジントントン・ロードへ。左側にハイド・パークの緑が見えて身を乗り出すケイト。 「ダイアナ妃が住んでいる、ケンジントン宮殿があるのよね?」 しばらくして右折するとエキシビション・ロードに入る。 「右は国立工科大学、奥に楽器博物館があるんだ。向こうに見えてきたのは自然史博物館。左はヴィクトリア&アルバート博物館で、この周辺は博物館のオンパレードなんだ」 「わあ、行ってみたいところばかり…
2024/06/30 21:02
No.6-007 Blue Dreaming
僕はいつもと違い(!)きちんと身なりを整えてから下に降りると、ケイトが満面の笑みで迎えてくれた。 「焼きたてのトースト、カリカリのベーコンエッグ。フライド・トマトにキュウリ、マッシュルーム、ベイクド・ビーンズ。デザートには蜂蜜ヨーグルト。これぞ、フル・イングリッシュ・ブレックファースト! どうぞ召し上がれ♩」 朝食はいつもコーヒーやシリアルの僕には、眩しいぐらいの豪華メニュー!昨日のパスタもそうだけど女の子が料理を作ると、こんなにも華やかになるんだ⁉︎テーブルに、庭の花まで飾ってあるよ。 ケイトが手渡してくれた新聞を見ながら、チラッとエプロン姿の彼女に目をやり結婚したら、こんな感じか……って思…
2024/06/23 21:02
No.6-006 Blue Dreaming
feat.Wham! そんなウィンク一つ、見つめられるとドキッとしちゃうよ⁉︎ ステイシーに似てるなんて(よく言われる)いつもなら憤慨するところだけど、僕はこの、笑顔の素敵な義妹にすっかり魅了されてしまったみたいだ。 ケイトは軽く頭を下げた。 「ブライトンの家には、ここの電話番号を留守録に入れておいたから、そのうちアシュリーから連絡がくると思うの。そんなわけで、少しの間お世話になります」 そこへ電話の音が。さっそくアシュリーって奴からか?と受話器を取ると、ステイシーだった。 「ケイト着いたのね? じゃあ、そういうことだから、あと頼んだわよ。私はこのままパリに行くから、まだ帰れないから」 ハイハ…
2024/06/16 20:32
No.6-005 Blue Dreaming
溜め息混じりでムクれたと思ったら 「つい、うるさく言っちゃうけど、彼に夢を諦めてほしくなくて……だって私の一番の夢は、彼の小説の挿し絵を描くことなの」 そう照れて、はにかむ彼女のクルクル変わる表情に、僕は目を離せずにいた。 ケイトは勢いで家を飛び出したもののずっと友達の家にはいられず、祖父母の元に戻ればアシュリーとの同居に理解を示してくれた二人に心配をかけてしまう―― そう駅のベンチで悩んでいたら、偶然、ステイシーに会ったそうだ。 「事情を話したら『ギルは今NYでいないから、家にいらっしゃい』って言ってくれて」 ステイシー の奴、自分も家にいないくせに相変わらず勝手だよな! 「ステイシーって素…
2024/06/09 21:32
No.6-004 Blue Dreaming
ケイトが鼻歌を歌いながら手慣れた様子で料理をしてる間に、僕は身なりを整えてダイニングに降りた。すると、まるでレストランのように色鮮やかなパスタとサラダが用意されていた。 そして美味しくランチをしながら、ケイトの話に耳を傾けた。 サラサラのブラウンのロングヘア。瞳はミスターと同じグレーだけど彼には、さほど似ていないと思う。(良かった!)声の感じが少しだけ、メアリーに似てるかな…… ◆ ◆ ◆ 「私ね、ブライトンに程近い、祖父母の家に預けられてたの」 祖父母はミスターの両親ではなく、母方のほうだという。 「小さい頃から絵を描くのが好きで、勉強はそっちのけだったから、16歳になるとギルがチューター[…
2024/06/02 21:02
No.6-003 Blue Dreaming
pick out:The Dream Academy なんて羨ましい奴なんだ!まあ、当の本人は迷惑気味で足取りも重く、出かけて行ったけどね。 昨日はバイトの遅番だった僕はもう昼近くなんだけど、起き抜けの目を擦りながらコーヒーを淹れにキッチンへ。すると、またチャイムの音。 モニターに映るのは、女の子が一人。さっきの子達の仲間だなと思いながら、エントランスに出て対応した。 「フレッドだよね? さっき女の子達と出かけて行ったよ。あっちの裏通りのほうに向かったから、急げば追い付くかも」 そう、手を伸ばして案内すると彼女は笑顔で、自ら手を差し出した。 「じゃあ、あなたがジェームズね? 初めまして、お兄さ…
2024/05/26 20:32
No.6-002 Blue Dreaming
「実は、パティを連れて来てるんだ。後で会ってやってくれないか……?」 躊躇うようなサムの言葉に、フレッドは明らかに動揺していた。 「も、もちろんOKだよ!」 真っ赤になっているフレッドの背中を皆んなでバンバン叩きながら、スタジオに向かった。 「おいおい、隅に置けないなぁ?」「あの人の妹とは、どういう関係?」「パティってどんな子? 可愛い?」 矢継ぎ早に飛んでくる皆んなの攻撃を、必死で交わすフレッド。 「わ、わかんないよ! もう何年も会ってないもの」 こんな突然に、しかも外国で初恋の相手と再会だなんて、奇跡じゃないか!? 僕は感動のあまり、可愛い弟に勢いよく飛び付いた。 「やめて、ジェム! テレ…
2024/05/19 21:32
No.6-001 Blue Dreaming
大阪公演の後、バンドは再び東京に戻ってきた。今はテレビ局の控え室にいて出番を待っているところ。 この番組は海外からのアーティストも多数出演していて、ありがたいことに僕等にもオファーが来たんだ。まあ、演奏は当て振りで、僕の歌も口パクなんだけどね。 ヘアメイクも整い出番を待つ間、皆んなそれぞれの形でくつろいでいた。 そこへ、スティーブンがやって来て 「フレッド、プロデューサーの知人が君に面会したいそうだが、心当たりはあるかい?」 と訝しげな顔で、後ろにいた男を手招きした。彼を一目見るなり、フレッドは驚いたように叫んだ。 「サミュエル・ヒューストン!」 「覚えていてくれたか、フレデリック・スチュアー…
2024/05/12 20:32
No.5-014 Don't Be Scared (章末)
「もう終わりだなんて思うなよ?」ヤスが真剣な表情を向けた。 僕は、いつまでも歌っているトニィを遠目に見ながら 『例え目の前に壁が立ちはだかっても、僕等は決して負けはしない』 そんな歌の意味を噛みしめた―― ★ ★ ★ 清水の舞台から京都の街を一望していると、マークがサングラスを外し眩しそうに呟いた。 「ウォルターに見せたかったな……」 あれからカナダの更生施設に入ったウォルターは身体はすっかり回復したものの、依存を断ち切るための治療は続いているそうだ。 でも、その施設で出会った10歳も年下の看護師さんとステディな仲になり、ボランティア活動に力を入れて充実した日々を過ごしているという。 「そのほ…
2024/04/14 21:02
No.5-013 Don't Be Scared
feat. Crowded House そして、久々に5人揃ったバンドは思い切り演奏を楽しんだ。 ――ああ、これ、この音と一体感なんだ、求めていたのは! メンバー全員がそれを噛み締めていると確信した。許されるならマークには本当に早く戻って来て欲しい。 「待ってるよ、マーク」 笑顔を見せる皆んなの姿が強く胸に残った。 ◇ ◇ ◇ マークがウォルターを連れカナダへ帰国して数日後、僕等はスティーブンのオフィスに集まっていた。 「もちろんジェム、君が無実なのは分かっている。しかし知っての通り今ノーマンレーベルの内情は非常に厳しく、イメージダウンやスキャンダルになる事は極力避けたいと、非常にナーバスな状…
2024/04/07 20:32
No.5-012 Don't Be Scared
「急に連絡よこしてスタジオ貸せって、お陰で予約してたバンドに『機械の調子が悪い』とか何とか誤魔化して、キャンセルさせる羽目になったんだぞ⁉︎」 「サンキュー、ライリー! 分かってんじゃん」 「このクソガキが! 変わらず元気そうじゃねぇか」 スタジオ・オーナーのライリーとマークが、お互い叩き合いながら抱擁を交わしているのをバイトを無断欠勤となってしまった僕は、バツの悪い思いで眺めていた。 するとライリーが 「おめーはよく、警官ボビーの言いなりにならなかったな? 思いのほか気骨があるじゃねーか! 見直しだぞ、頑張ったな」 そう笑いながら大きな手で僕の頭を揺らした。 恥ずかしさと嬉しさで目頭が熱くな…
2024/03/31 20:47
No.5-011 Don't Be Scared
feat. Big Country 「仕方ねーだろ」 マークはビッグバーガーを頬張った。 『シャバの旨い飯でも食いに行こうぜ! 社会人のオレちゃんが、奢ってやるよ』 そうドヤ顔で言われて入った店は世界中どこでも安定供給のファストフード……美味い飯? 「フィッシュ&チップスより断然、旨いだろうが⁉︎」 「やっぱハンバーガーは、最高のご馳走だよな!」 アメリカ(トニィ)とカナダ(マーク)の2大『ビッグ・カントリー』に徒労を組まれちゃ適わないよ? [Big Country『In a Big Country』Released:20 May 1983] でも、2人と一緒に食べれば不思議とご馳走になる。 …
2024/03/24 20:32
No.5-010 Don't Be Scared
pick out: EastEnders 「僕は無実だ」もう、説明する気も起きない。 「普段フラフラしてるから、こういう目に遭うのよ! 警察沙汰になるなんて――」 ほら見ろ、息子が無実かどうかなんてどうでもいいんだ。親の顔に泥を塗られたことに御立腹で口角泡を飛ばしている。 「聞いてるのジェームス!? フレッドにまで怪我させて! Aレベル[大学入学資格試験]前の大事な時期でしょう⁉︎」 それに関しては深く反省している。 「少し落ち着きなさい」 ステイシーをなだめるミスターに疑問を投げた。 「2人とも、ニューヨークに居たはずじゃ?」 「ああ、深夜の便で帰って来た。フレッドから大体の話は聞いている。…
2024/03/17 20:32
No.5-009 Don't Be Scared
feat. Tears for Fears 「動くな! 全員止まれ!」 心配したジョージが、警官を連れて様子を見に来てくれたんだ。 男は裏口から逃げ去り僕はヤスが伸ばした手を掴むと必死に叫んだ。 「病院に早く! フレッドが――」 ◇ ◇ ◇ それから1時間、僕は取調室でイラつきを抑えられずにいた。 「だから、何度説明すれば分かるんですか⁉︎」 「あれはジェムの物じゃない。あの場に落ちてたのを拾っただけだ!」 ヤスの必死の説明も真面目なロンドンのお巡りさんは聞いてくれなかった。 あのとき拾ったドラッグの小袋を持っていたせいで、疑いをかけられてしまったんだ。 もちろん、僕がドラッグをやっていないこ…
2024/03/10 20:32
No.5-008 Don't Be Scared
pick out: Bronski Beat 僕等はセント・ブライアンズの1階入り口までやって来た。 店の看板は外されていたけど外側からは、何ら変わった様子は見受けられない。 扉に鍵は掛かってなかったのでゆっくり寂れた暗い階段を下り地下入口のドアを開けると、甘い異臭を感じた。 元々ライブハウスやクラブではアルコールや煙草と同じようにマリファナ程度のドラッグは珍しいものではないけれど、今のこの状況はそんな類の物だけではないと容易に察せた。 ぼんやりとしたフットライトを頼りにそのまま受付、そしてスタッフルームの前を進むも人の気配は無い。 不意にヤスが足元の感触に気付きそれを拾い上げ、僕に手渡した。…
2024/03/03 21:02
No.5-007 Don't Be Scared
feat. The Stranglers 「君達こそ希望の光だ。君達なら世界を手に入れることができると、そう信じている――」 そのままウォルターは静かな寝息を立てた。 僕等はそっと病室を後にするとドクターが待ち受けていた。 「彼は警察が保護してきたんだ。失礼だが君達とは、どういう関係だろうか? 家族の方と連絡を取りたいんだが――」 僕は皆んなと視線を合わせると、躊躇いつつ答えた。 「僕等は、彼のライブハウスでお世話になってました。最近は店に行ってなかったから、彼がこんな状態だなんて知らなかったんです」 「ウォルターがジャンキーだなんて、信じられない!」 「ドラッグに溺れるような人じゃ、ないと思…
2024/02/25 20:32
No.5-006 Don't Be Scared
「だけど、売った相手が悪かった」 溜め息を吐きジョージは続けた。 セント・ブライアンズを奪ったのは表向きは再開発で暴利を目論む不動産業者だったが、その実バックに付いているのはある闇組織のシンジケートだと噂されている。 ウォルターはセント・ブライアンズを最後まで守ろうとしていたけど度重なる営業妨害に客も出演者も離れてしまい抵抗虚しく、彼等のいいように扱われているという。 「オレは音楽から離れてしまったし、もう駅の向こう側に行くこともないから、この目で確かめたわけじゃないが……」 とても信じられない話だった。ウォルターは、今どうしているのか?なぜ連絡が付かないのか? 僕等の気を察したジョージが「今…
2024/02/18 19:32
No.5-005 Don't Be Scared
feat. Depeche Mode 「実は色々あって、デビューが伸びちゃったんだ」 僕等は事の流れを説明した。 「そうだったのか……まあレーベル側の思惑はともかく、こっちとしては〝Depeche Mode〟じゃないが、掴めるものは掴んでおきたいね。何事にもタイミングというものはある」 「『全てのことに意味がある』 よね? きっと、もっと良いタイミングで、デビューできるはずよ」 [Depeche Mode『Everything Counts』Released:11 July 1983] 励ましてくれる2人に感謝し、トニィが本題を切り出した。 「ジョージ、去年会ったとき話してたよな? セント・ブ…
2024/02/11 20:32
No.5-004 Don't Be Scared
feat. Everything But the Girl 「どうぞ入って」 2人はドアを開け僕等をフラットに招き入れるとジョージは、うとうとしているベビーをそっとバスケットに寝かせた。トニィが中を覗き込む。 「可愛いね、男の子? 女の子?」 「男だよ、名前はエリック」 「ギターの神様と同じだね⁉︎ 将来はジョージパパを超える、名ギタリストになるかな?」 僕の台詞に、ジョージは軽く微笑んだ。 「できればコイツには、真っ当な道を進んでもらいたいけど」 「あら、私達は真っ当じゃないって言うの?」 アンは呆れながらティーポットとカップのセットをテーブルに置いた。 僕からすれば、2人は〝Eurythm…
2024/02/04 19:32
No.5-003 Don't Be Scared
「誰かサポートに入ってもらうとか?」トニィはそう言ってフレッドの顔色をうかがった。 曲はともかく、詩の大半を書いているフレッドには気を使ってしまうみたいだ。 「……僕達の曲を、メンバーじゃない人に弄られるのは嫌だよ。アイディアを盗まれたくないしね」 案の定、ムスッとするフレッド。Aレベル[大学入学資格試験]が近いせいか、イラついてるな。 僕は彼の肩を軽くさすってご機嫌を取った。 「オリジナル曲じゃなければ、サポートしてもらってもいいんじゃない? たまには息抜きも必要だよ」 しょんぼりとしていたトニィがパッと顔を輝かせた。 「だったら久々に、セント・ブライアンズで演らないか? ウォルターに頼んで…
2024/01/28 21:02
No.5-002 Don't Be Scared
pick out: G.I. Orange そら面白い! って皆んなで一生懸命木の箱を振っている姿が笑えるな。外国人観光客が多い京都はおみくじも、ちゃんと英語で書いてあるんだ。 「見ろよこれ?『大吉』だってさ!」マークは引いたおみくじを得意気にヒラヒラさせる。 「僕は『中吉』、北の方角がラッキーだって」フレッドも嬉しそうだ。 「私は『末吉』だ。これは、どのぐらい良い結果なんだい?」とスティーブン。 「オレは『吉』だった。ジェムは?」 「トニィと同じ『吉』だよ。悔しいな『大吉』狙いだったのに」 そして皆んなの視線はおみくじを紐に結ぼうとしているヤスに注がれた。 「あのさー、こんなのはお遊びなんだ…
2024/01/21 20:32
No.5-001 Don't Be Scared
清水寺、金閣寺、平安神宮 etc.――一日中オフをもらった僕等は待ちに待った二度目の京都見物にテンションを上げていた。 前回プロモーションで来日した時は番組収録を兼ねていたから観光らしい観光はできなかったけど、今日は自由に回れるってことで皆んな凄く楽しみにしてたんだ! 東京のハイテクな街並みも面白いけどやっぱり京都の、このエキゾチックな雰囲気には魅了されてしまう…… 僕は買ったばかりの日本製カメラでフィルム代のことも忘れあちこちシャッターを切って回った。 好奇心一杯のマークが 「うぉー! すげぇエキサイティング! ヤス、あれは何だ!?」 と、そこら中を駆け回り同行のカメラマンが困ってるよ。マー…
2024/01/14 20:32
クリスマスは自宅で
物語に入れられなかった アーティスト・楽曲シリーズ〔第7弾〕 クリスマスは当日より イブの方がメインって印象なのは 1980年代後半のバブル時期、 恋人達が主役に躍り出てから……? シャンパンで乾杯の豪華ディナー 夜景の美しいシティホテル プレゼントはブランド品の数々―― そんなトレンディーな方々の様子を TVや雑誌で垣間見つつ クリスマスは本来、家族で過ごすもの と鼻息荒くした英国かぶれの自分が 一番好きなクリスマス・ソングは クリス・レアの 『ドライビング・フォー・クリスマス』 一見、恋人達がイチャラブしながら ゲレンデに向かう(←色々混ざったw) ドライブ・ソング? と思ったけど 原題は…
2023/12/24 20:32
No.4-029 Lost The Way (章末)
「そんな時間あんのか⁉︎ また強引にプロモ入るんじゃねーの?」 「縁起でもないこと言うなよ!」 〈バサッ!〉 マークを小突いたトニィの振動で僕がシートに置いていた手紙の束が落ちてしまった。それをフレッドが拾いつつ 「まだファンレター読んでんの? 車の中で、よく読めるね……僕は気持ち悪くなっちゃうよ」 と呆れながら手渡してくれた。Thank you ! 「だって溜まっちゃってさぁ、昨日読めなかったから」 手紙の山を軽く叩くとマークが覗き込んできた。 「これってファン・レターってよりも、ラブ・レターだよなぁ?」 「オレなんか凄いの貰ったよ!『トニィ、第二夫人でいいから結婚して♡』って、もうルイスの…
2023/12/17 21:02
No.4-028 Lost The Way
feat. The Cure ゲートに向かって歩き出した2人にフレッドは手を振りながらほっこりとして呟いた。 「なんだかルイス、綺麗になったみたい。穏やかで満たされてる感じ……? きっと好きな人と一緒にいるからだね」 「欲求不満、解消されただけだろ」 鼻で笑うヤスの前に不意にルイスが踵を返して舞い戻って来た。ギクッとなる一同。 ルイスはヤスの正面で立ち止まると 「今度会う時までに、少しはレディへの接し方を学んでおきなさいね?」 そう言って、ヤスの頬にキスしたんだ! 「それはあんたの方が、先ずレディにならないと――痛っ!」 ヤスの腕を軽く小突いてルイスはクスクス笑いながらトニィの後ろに隠れた。 …
2023/12/10 20:32
No.4-027 Lost The Way
「泊めるならジェムん家ちの方が、広くて余ってる部屋あんだろ⁉︎」 そう、ルイスはヤスの家で世話になることになったんだ。 「だって僕の家は基本フレッドと僕の男2人だけだから、いつ始まっちゃってもおかしくな――痛っ!」 僕の下品な冗談にトニィの鉄拳が飛んだ。彼は僕を押し退けヤスの両手をガッシリ握ると大きく上下に振り出した。 「すまないなぁ、ヤス。君の家なら超〜安心さ!」 「あ〜らヤスアキ、私が居たら迷惑かしら?」ルイスが横目でヤスを見る。 「恭章、何してるの⁉︎ 寒いんだから、早くリビングに上がってもらって?」奥からユミコの声がして仕方なくルイスを手招きするヤス。 そんな2人を見て、ほくそ笑んでい…
2023/12/03 22:32
No.4-026 Lost The Way
feat. Deniece Williams 甘くキスを交わす2人にいつの間に集まっていたのかギャラリーが〈ヒューヒュー♩〉と口笛を鳴らし、拍手を送っていた。 誰かが 『男の子に声援を送ってあげて!』 [Deniece Williams『Let’s Hear It For The Boy』Released:February 14, 1984] と大きな声を出すと口々に2人に応援の声がかかり一斉に歌い出したんだ! そういえば、このホテルアメリカ人観光客の御用達だっけ。そりゃ『フットルース』で盛り上がるわけだ。 その様子に背中を押されたのかルイスは恥じらいながらトニィの耳元で囁いた。 「今日こそ、…
2023/11/26 20:32
No.4-025 Lost The Way
feat. Eighth Wonder 「でも、デビューがどうなるか分からないし……」 トニィはルイスを抱き寄せるも一人前になる見通しが立たないのに軽はずみなことはできないと、頑なだ。 それに関しては僕も気が気じゃなくて気休めも言えずにいたけれど。 「オレが待たせてる間に、君に相応しい人が現れたら――」 「相応しいって、何⁉︎」 ルイスは鋭い視線を送った。 「だったら私の方こそ、バンドマンの彼女として失格よね? 音楽の事なんか全然わかんないし、嫉妬深いし我慢も足りない。トニィの彼女に相応しくないでしょ!?」 「そんなこと、関係ないよ!」 「そうよ、関係ないのよ!」 ピシャリと言い放つとルイスは…
2023/11/19 20:32
No.4-024 Lost The Way
feat. Samantha Fox カクカク揺れる僕を尻目にフレッドがクスッと笑う。 「大丈夫だと思うよ? ルイスの方も〝その気〟なんじゃないかな!? あのスーツケースの中の高級そうなランジェリー、セクシーなドレスにブランド物の化粧品なんて、気合い十分――」 「見ないでよ⁉︎」 振り向くと、真っ赤な顔したルイスが立っていた。 「化粧品は、お姉ちゃんの会社のサンプル品だから」 別に気張ってるわけじゃないと憤慨するルイスの後ろに棒立ち状態のヤスもいたのは驚いた。 安堵のトニィが立ち上がり「良かった、心配したよ」とルイスを抱き締める。 そんな2人にフレッドは 「だって、スーツケースをあんな風におっ…
2023/11/12 21:32
No.4-023 Lost The Way
僕等の方はフレッドが買ってきてくれたドリンクを飲みながらホテルのロビーのソファに埋もれていた。 トニィの隣に座った僕は彼の様子をうかがいつつ、訊いてみた。 「昨日のトニィは、トニィらしくなかった。ルイスの前では、いつもあんな調子?」 「……どうしていいか、分からないんだ」 彼は項垂れ頭を抱えるも身を起こして、話し出した。 「ルイスとは同い年で家も隣同士だから、いつも一緒に遊んでいたよ。彼女は面倒見が良くてああいう性格だから、オレは怒られてばかりいたけどね。愛らしい彼女は近所でも人気者で、オレも一緒にいるのは嬉しかった。でも、いつからだろう」 顔を曇らせ溜め息を吐くと 「ルイスはとても綺麗になっ…
2023/11/05 18:32
No.4-022 Lost The Way
「と、とにかくLAに帰るんだ! オレ達のことは大丈夫だから」 「なんで⁉︎ こんな時こそ側にいたいのに、どうして分かってくれないの?」 2人のやり取りで察した僕は思わず口をついて出てしまった。 「もしかして、まだ⁉︎」 もしかすると僕は、トニィより先にルイスのヌードを見ちゃったのかもしれない……(Oh God !) ◇ ◇ ◇ 次の日の夕方慌てた様子のトニィから電話が掛かってきて、僕とフレッドはトニィが待つルイスの宿泊先ホテルへ向かった。 ロビーには「ルイスと、はぐれた」と青ざめた表情のトニィが立ち竦んでいた。 昨日のことで、デート中に話し合っていたらルイスが怒って駆け出して行き雑踏の中に消え…
2023/10/29 21:32
No.4-021 Lost The Way
僕はヤスの頭を、軽く小突いた。 「まさか学校の女の子にも、あんな態度じゃないだろうね? そんなんじゃ彼女できないよ!?」 「あんなウザい女に比べたら、クラスのやかましい女子たちのほうが、まだマシじゃん」 ヤスの奴、鼻で笑ってるよ。 そして、勢いよくドアが開きトニィとルイスが戻って来た。何か揉めているみたいだ。 「もう知らない、トニィのバカ!」 「とにかく最初の予定通り、明後日の便で帰るんだ!」 珍しくトニィが大声を出し、僕は慌てて二人の側に駆け寄った。 「どうしたんだよトニィ、ルイスが泣いているじゃないか⁉︎ ルイス、両親にOKもらえなかった?」 ルイスは首を横に振った。 「ママは理解してくれ…
2023/10/22 21:32
No.4-020 Lost The Way
僕等は帰る気にもなれずだからといって何をできるわけでもなくその場に、たたずんでいた。 そんな重々しい空気の中とうとうルイスが口を開いた。 「ちょっと、皆んな元気出しなさいよ?」 しかし、彼女に応える者はいない。 「まさか、デビューできないってわけじゃ、ないんでしょう?」 ルイスはトニィの袖を引っ張っるも、彼は深く考え込んでしまっている。 「……駄目なの? ねえ、どうなの⁉︎」 そんなルイスにヤスの堪忍袋の緒が切れた。 「うるせーなっ、少し黙ってろ!」 「あんたの方が、うるさいっつーの!」 僕は溜め息一つ、なだめるようルイスに説明した。 「仮にデビューできたとしても、それだけで成功できるわけじゃ…
2023/10/15 20:32
No.4-019 Lost The Way
順調に進んでいたスタジオ作業。しかし、同じレーベル内の米国本社と英国支社で、対立が表面化していた。知らぬ間に巻き込まれてしまった、彼らのデビューの行方は――?【80s洋楽が響く創作物語】
2023/10/08 21:32
No.4-018 Lost The Way
pick out: Japan ヤスはルイスを睨み声を荒げた。 「うるせーな! 俺達はプロとして色々考えてるんだから、邪魔すんな」 「なーにがプロよ? まだデビューしてないクセに」 「ドシロウトに一々、口出しされたくないね! 単純にその音を入れるだけじゃ駄目なんだ、バランスの問題なんだから」 「バランスを調整するのが、プロの仕事なんじゃないの⁉︎ プロならやってみなさいよ、チャイニーズボーイ」 「ジャパニーズだって言ったろ⁉︎ もう老化現象かよ!」 僕とトニィは、お互いの幼馴染同士のバトルに唖然となり手が付けられず、2人のバトルは続く。 「あんたみたいな頭の固いガキに、言われたくないわ! ジャ…
2023/10/01 19:32
No.4-017 Lost The Way
「別に。ただ、あの手の女は気に入らない。あの甘えた甲高い声も虫唾が走る」 ヤスにしては、珍しく感情的だ。そこへスティーブンが2人の男を連れてやってきた。 「紹介しよう。彼が米国本社の重役広報部長レッド・レイノルズだ。そしてこちらは、プロデューサーのチャールズ・カーツ君だ」 スティーブンの話では、レッドは先ず僕等の写真に目が止まりデモを聴いて興味を持つと直ぐ英国支社に連絡したそうだ。そして、ロバートとの経緯を知ると新進気鋭のプロデューサーチャールズに白羽の矢を当てた。 僕等が2人の前で演奏するとレッドもチャールズもバンドの才能を確信してくれたんだ。これでロバートは、お払い箱さ! 早速、心機一転ス…
2023/09/24 21:32
No.4-016 Lost The Way
フレッドの学校は共学だからクラスに可愛い子がいるかもしれないしね!? 「好きな子ぐらい、いるんだろう?」 僕の執拗な突っ込みに観念したのか真っ赤になりながらも、話してくれたよ。 「恋……かどうかは分からないけど、忘れられない女の子はいるよ」 「へえ〜どんな子⁉︎ その子、今どうしてる?」 好奇心いっぱいにそう尋ねると 「さあ……どうしてるだろうね。その子はダッドと住んでいた時、仲良くしてたんだ。ほら、前に話したでしょ? 僕にキーボードを教えてくれたガキ大将のサム、あいつの妹なんだ。でも――」 うつむいていた顔を上げ遠い目をして 「僕、彼女を傷つけちゃったんだ。謝る間もなく彼女達は引っ越して行っ…
2023/09/17 21:32
No.4-015 Lost The Way
feat. Thompson Twins 「ルイス、いつまで居られる? 両親にOKはもらってるよね?」 「来週末ギリギリまで居るつもりよ。トニィに会いに行くって言ったら、パパもママもお姉ちゃん達も喜んで見送ってくれたわ。Ohトニィ! 感動の対面を、やり直しましょう⁉︎ 会いたかったのよ」 と、いきなり抱き付くルイス。 「オレだって会いたかったよ!」トニィもしっかり抱き返した。 さっきまでの緊迫感は、どこへやら?突然の甘い空気に面食らってると 「ちょっとあんた達、気を利かせなさいよ⁉︎」 ルイスに睨まれてしまった。 「あ、ごめん、ごめん」 僕等はトニィにウィンク一つ残し、慌ててフラットを後にした…
2023/09/10 20:32
No.4-014 Lost The Way
pick out: Pretty in Pink 「そんなブス、私の方が全然キレイだし、スタイルもいいっつーの!」鼻息を荒くするルイス。 思わず彼女のヌードが脳裏に浮かび納得して顔を赤らめる僕の背中を、フレッドが気の毒そうにポンポン叩く。 その様子を見たルイスはさっきまでの勢いはどこへやら、躊躇うように呟いた。 「じゃあ、この2人ってことよね⁉︎ トニィがロンドンに留まっている理由は……バンド、デビューするんでしょう?」 「この2人だけじゃないよ⁉︎ 後ヤスと、今はカナダだけどマークもいるし、スゲェいいバンドなんだ!」 トニィは嬉々として言ってるけどそういうハナシじゃないと思うよ。 「……もう…
2023/09/03 19:37
No.4-013 Lost The Way
feat. Bananarama 「私が悪いって言うの?」 ルイスのひと睨みで大きく首を横に振るトニィ。 「いや……何でわざわざ……急にこっちに来てくれたのかと……も、もしかして――」 しどろもどろな様子にルイスはイラつき遮った。 「もしかして『もうオレのこと好きじゃない』とか『オレに別れを言いに来た』とか、言うんじゃないでしょうね?」 どうやら図星みたいだ。顔を引きつらせるトニィにルイスは凄い迫力で詰め寄る。 「私が! ただトニィに会うためだけに! わざわざロンドンに来ちゃ、いけないって言うの⁉︎ っていうか別れ話なんかで、わざわざロンドンまで来ないっつーの!!」 「ご、ごめん。でも電話して…
2023/08/27 18:37
No.4-012 Lost The Way
「――感謝祭」 僕等はハッとなった。そうだった、アメリカではサンクスギビング・デーの連休になるんだっけ。 「感謝祭に帰ってこないなんて……おば様も、がっかりしてたわよ?」 鋭い視線を向けるルイスにビクつくトニィ。なんだか、この2人からは甘い雰囲気が微塵も感じられなくて恋人同士に見えないんだけど……? トニィはご機嫌を伺うようルイスに話しかけた。 「あの、夏は会えなくて残念だったよ」 そういえばトニィは短いサマーホリデーにLAへ帰ってたんだっけ。 ルイスは無言で、舐めるように部屋を物色している。僕等兄弟は固唾を飲んで2人の様子を見守っていた。 おずおずと喋り出すトニィ。 「ボビーから聞いたよ、バ…
2023/08/20 18:37
No.4-011 Lost The Way
僕はルイスをなだめなきゃと変に焦ってしまった。 「大丈夫! トニィとあの人は何でもないよ、害はないよ?」 「あったり前でしょ⁉︎」彼女は一睨みして話を続けた。 「それでトニィからの手紙を頼りに、ここに来てみたの。詳しい住所は知らなかったけど、写真を見せたらタクシーの運転手さんが良くしてくれて……」 そういえばトニィがまだロンドンに来たばかりの頃、あちこち写真を撮りまくってたっけ。確かに家の前でも皆んなと写った覚えがある。 「でも、どうやって家に入ったの?」フレッドが怪訝な顔をする。 「チャイムを鳴らしたら女の人が出て……事情を話したら、中で待ってていいって言ってくれたの。彼女急いでいたみたいで…
2023/08/13 20:07
No.4-010 Lost The Way
「どうしたの⁉︎」 慌てたフレッドがバスルームに顔を出した途端、彼は顔面にシャワーのミサイル攻撃を受け、カーテンの影から見知らぬ若い女性が甲高い声で怒鳴ってきたんだ。 「何よあんた達⁉︎ レディが入浴中にスケベ! チカン! エッチ!」 僕は一瞬(本当に一瞬!)彼女のヌードを見てしまい驚いてよろけて倒れちゃってもう頭の中はクラクラ!何が何だか分からないうちにフレッドが引っ張って起こしてくれた。 びしょ濡れになったフレッドもしどろもどろだ。 「そ、それは悪かったけど、でも君は誰⁉︎」 「あーもう、分かってるから早く出てって! 私が出られないじゃない!」 僕等は慌ててその場を離れると濡れた服を着替え…
2023/08/06 20:47
No.4-009 Lost The Way
マネージャーのスティーブンが急遽アメリカへ向かい、バンドは束の間の休息を得る。初めての愛車を手に入れご機嫌なジェムだったが、帰宅するとバスルームから思わぬ悲鳴が――?【80s洋楽が響く創作物語】
2023/07/30 20:07
No.4-008 Lost The Way
「オレが思うに、一度ロバートの言う通り演ってみたらどうだろう? 1曲だけでいいから。そうすれば彼のやりたがっていることが分かるし、それが本当にオレ達に合ってるかも、解るんじゃないか⁉︎」 このトニィの意見を聞いて僕とフレッドは顔を見合わせると勢いよく彼に飛びついた。 「なんてグッド・アイディア!」「君は僕等の新たなリーダーだ!」 「おい、2人とも離せよ!? 首しめるなって!」トニィは照れて真っ赤になった。 彼は僕より7ヶ月ほど年下だけど大柄な体格のせいか頼り甲斐がある印象だ。安心できるお兄さんタイプだから誰にでも好かれるアメリカン・ボーイなんだ。 そんな彼が、密かに悩みを抱えていたなんてこの時…
2023/07/23 19:37
No.4-007 Lost The Way
「こんなの落ち着いてられないよ! ジェムがそんな奴だったなんて、がっかりだよ」 そう言われて僕も黙ってる筈がない。 「お前こそガキなんだよ。自分の理想ばかりで、周りの状況が見えてない。ロバートの、第三者の意見だって、ちゃんと聞くべきだ」 「聞いてるよ⁉︎ 聞いてて気にくわないから言ってるんだ。ハッキリ言わせてもらえば、ロバートの音は僕達には合わないよ。僕は自信あるんだ。僕達の音じゃなければ、売れっこないってね!」 「2人とも、兄弟ゲンカはやめろって! おいヤス、何とかしてくれ?」 トニィが助けを求めるも 「くだらないね」 そう呟くと、ヤスはスタジオから出て行ってしまった。頭を掻きむしるトニィ。…
2023/07/16 19:37
No.4-006 Lost The Way
feat. Culture Club - Time(Clock Of The Heart) フレッドの方もかなり気が立っていた。 「ロバートのやることに、疑問を感じないの!? 彼の作る音を気に入ってるの?」 「別に、そういうわけじゃないけど……良い時も悪い時もある、そういうもんだろう」 そう、あっさり答えると彼は怒鳴ってきたよ。 「僕達のデビューアルバムなんだよ⁉︎ 最高のモノを作りたいって言ったじゃないか! 良くも悪くもあるだなんて、良いモノしか認められない……100%じゃない、200%の力を出すつもりじゃなきゃ駄目なんだよ!」 こうなると、熱血少年にはウンザリしてくる。 「だけどこれ以上、…
2023/07/09 18:37
No.4-005 Lost The Way
feat. XTC - Dear God 「だからロバート! この詩の持つ意味を分かってるって言うなら、どうしてここに、そんな音を入れるの⁉︎」 「分かってないのは、君の方だよフレッド。ここは、もっと早いテンポで左右に振り分けないと、新鮮さが失われるだろう⁉︎ 君の音に対する考えは少々古いようだな。まだ若いのに残念だ」 「あー、また始まった……」 僕もトニィもウンザリしていた。休日も返上になってしまいヘンリー達スタッフも逃げ出すレベルだよ。ヤスだけは、2人のバトルを無視してサッサと次のサックスパートを進めているけどね。 僕はトニィの隣に座ると大きな溜め息を吐いた。 「まるで〝XTC〟並じゃない…
2023/07/02 17:37
No.4-004 Lost The Way
「ジョージが言ってたんだ。セント・ブライアンズは、たくさんのミュージシャンをバックアップしていて、金銭的に厳しい状態が続いてる。このままだと経営が危ないって。オーナーとウォルターの間も危ういらしい」 皆んな一瞬、言葉を失いフレッドが戸惑うように呟いた。 「ウォルターには、いっぱいお世話になってるし、何か力になってあげられるといいんだけど……」 「俺達にできることって……なんだろう?」 「……とにかく、先ずは良いアルバムを作ろう」 「そうだな!」 トニィも納得し、僕等は改めて決意を固めた。 ◇ ◇ ◇ それから暫くして、スティーブンがアメリカからロバート・ネルソンというプロデューサーを連れて帰っ…
2023/06/25 17:37
No.4-003 Lost The Way
feat. Eurythmics それにスティーブンが 「私が米国本社に行っている間に、ファーストアルバムの準備をしておいてくれ」 なんて言うもんだから遊んでいる暇なんて無かった。ファーストアルバムだものやっぱり最高のモノを作りたいんだ! 「おーい、開けてくれ?」 トニィとヤスがユミコからの差し入れを持って部屋に戻って来た。 「やったー! オニギリ、オニギリ♩」 僕がすかさずパクつくとフレッドも急いで手を伸ばす。 「ずるいよジェム、僕もツナがいい!」 トニィもグリーンティーをすすりながら、オニギリを頬張った。 「いつも悪いねヤス。君の家は、すっかり The Starlight Night 専用…
2023/06/18 18:07
No.4-002 Lost The Way
「電話も早かったし、さては振られたな?」 「何とでも言えよマーク。彼女は長電話するタイプじゃないんだ。なのに『全英No.1おめでとう』って、わざわざ電話をくれたんだよ。優しいだろ?」 今頃〜⁉︎ なんて突っ込みは聞いちゃいない、デレるトニィ。そのパン、何個目? 「でも本当は、一緒に来て欲しかったでしょ?」 フレッドが心配そうにトニィの顔を覗き込むも 「まあ彼女は学生だし、しょうがないよ。それに、日本の次はLAだから」 来週には会えると、嬉しそうだ。 「あ~あ、オレもちゃんと彼女つくろうかなぁ」 マークの奴、今のは本気マジだな。ちょっと探りを入れてみようか。 「それは良い傾向だね。で、君の好みの…
2023/06/11 17:46
No.4-001 Lost The Way
朝食を食べにレストランに向かう途中フロントのお姉さんがトニィを呼び止めた。 「先程ルイス・ミッチェル様から、お電話がございまして――」 「えっ、ルイスから⁉︎ ジェム、キー貸して!」トニィは慌てて、部屋へ戻って行った。 The Starlight Night の中では今のところトニィだけがステディな彼女持ちなんだ。信じられる⁉︎ 別に皆んなモテないわけじゃないのにね!(多分) 僕はブッフェからシリアルとコーヒーをセレクトして 「朝からラブ・コールか、羨ましいね」 とボヤキつつ、席に座った。朝は、あまり入らないんだ。 フレッドは、美しく盛りつけられた皿を両手に持って 「今、LAは何時だろうね? …
2023/06/04 17:36
リラックスできない!?
物語に入れられなかった アーティスト・楽曲シリーズ〔第6弾〕 今年のGWは有給を取って 9連休にしたのは 旅行や帰省ではなく ただただ、休みたかったから バタバタの年度末を乗り越えたものの 肩こり腰痛、むくみ、疲れ目が酷くて ここでリフレッシュ&リラックス しとかなくちゃね! で、思い出す 『リラックス』ってタイトルなのに 怪しさ全開で 全然リラックス感のない曲 フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『Relax』 ボーカルのホリー・ジョンソンが ゲイなのは当時から知っていたので この曲が、男性同士の行為の際 「リラックスしなよ」っていってる 内容だからと分かり、納得w 世界中で大ヒットしたも…
2023/05/06 14:06
No.3-032 Believe In(章末)
大阪公演のリハーサルに挑むマーク。ベースへの情熱は変わっていない。その姿に安堵しつつ、ジェムは来日公演の最終日にサプライズを仕掛けていた。果たして、マークはどんな反応を見せるのか――?【80s洋楽が響く創作物語】
2023/04/22 19:17
No.3-031 Believe In
feat. Howard Jones - Things Can Only Get Better 「ジェム、有難いけどそれは――」 マークの言葉を遮り話を続けた。 「君の言いたいことは分かる。僕等だって、この先どうなるかなんて分からない。このバンドが成功する保証なんて無いんだ。でも約束する、僕等は The Starlight Night を No.1 にして見せる」 トニィ、フレッド、ヤスも深く頷いている。動揺するマークに、僕は詰め寄った。 「だから君も約束して欲しい。絶対に、また僕等の元に戻ってくると――」 「そうだよ、音楽の道を諦めちゃ駄目だよ!」とフレッド。 「ベースはその時々で、サポート…
2023/04/15 17:16
No.3-030 Believe In
「ポールに相談した結果、この中でオレ達に相応しいと思うのはノーマンレーベルだ。なんたって母体のノーマン・ミュージック・レコードは、アメリカが本社の巨大なレコード会社だしな。ただ、契約金が他所に比べるとイマイチで――」 「君達が私をマネージャーとして雇ってくれたら、ノーマンレーベルの契約金を倍にしてあげよう」 そう言いながらドアを開けて入って来たのはポールの友人、スティーブンだった。 彼の言葉に、皆んな驚きを隠せなかった。 スティーブンは若い頃ポールのいた世界的に有名なバンドのサポート・ミュージシャンとしてポールと共に世界中を駆け巡り、音楽業界のことを知り尽くしていた。 ステージから離れた後は活…
2023/04/08 20:47
No.3-029 Believe In
「取り敢えず、シーケンサーという手はあるけど……」と僕。 「でも機械の音なんてな……」とトニィ。 「変わりの奴を探さ――」とヤスが言い終わらないうちにフレッドがテーブルを揺らした。 「そんなこと、できないよ! 僕は絶対認めない。マーク以外のベーシストなんて」 「じゃあ、ベース無しで演れって?」ヤスはフレッドの方を見向きもしない。 「だって、だってさ⁉︎ マークは辞めたくて辞めるんじゃないのに『ベースは君じゃなくても、いくらだっているよ』って感じで、やるせないよ」 憤るフレッドに構わずヤスは続けた。 「このバンドはマークがいたから生まれたんだし、彼が実質的なリーダーでもある。だからこそ彼を失った…
2023/04/01 12:36
No.3-028 Believe In
するとウォルターが気付いたように、まくし立てた。 「そういえばジェム、君も彼女はいないのかい? ちょっと小耳に挟んだけど、界隈で有名なグルーピーの娘としけこんだらしいって、ここの常連のリズ達が憤慨してたぞ⁉︎ 遊びが過ぎると誠実なファンを逃すから、気をつけた方がいい」 僕は慌てて、その場を誤魔化し店を後にした。 確かに、あのセクシーな子に押されるがままそうなっちゃったことがあったんだけど、マークには「シロウトが手を出す相手じゃねーよ」って、呆れられるしヤスには「趣味悪っ」って、ケーベツの視線を向けられフレッドも怒っちゃって、暫くの間口を利いてもらえなかったからトニィが庇ってくれて助かったんだ!…
2023/03/25 18:37
No.3-027 Believe In
そしてマークはいつものように戯けて見せた。 「ふだん口煩い姉貴がさ、だまーってんのがスゲェ怖かったけど、でもライキーに出るのはOKもらったから。オレのラストステージ、成功させてくれるよな⁉︎」 「もちろんだよ!」皆んな口々に声を上げた。 バンドからマークがいなくなるなんて考えもしなかったし、こうしていつもと変わりなく演奏しているとライブが終わった後は、マークのいないThe Starlight Night になるなんてとても信じられなかった。 ◇ ◇ ◇ ライブ前日、僕は開店前のセント・ブライアンズを訪ねてみた。 ウォルターはカウンターでドリンクの補充をしながら話してくれたよ。 「マークはあれで…
2023/03/18 19:17
No.3-026 Believe In
「オレの親父、小型船を扱う小さい会社の社長なんだ。社長ったって、ただの飲んだくれジジイだけどな。 オレも海は嫌いじゃないけど優秀でしっかり者の姉貴や病弱で年の離れた弟に比べるとオレは出来損ないでさ、親父の後を継ぐなんて微塵も思わず遊んでばかりいた悪ガキだ。 親父に反発しては殴られる、そんな日々が続いていた頃ウォルターがオレん家ちの居候になった。 プロのミュージシャンを諦めた彼はスタジオ経営に失敗して奥さんにも逃げられて…… 落ちこぼれ同士のオレ達は直ぐに気が合いオレはウォルターの影響で音楽を始めたんだ」 ウォルターと音楽を演っていた時は聞き分けが良かったとマークは笑う。 「だけどウォルターは『…
2023/03/11 18:17
No.3-025 Believe In
「うわっ、何だよ⁉︎」驚き慌てるマーク。 トニィがマークの背中から両腕を押さえると僕は彼のTシャツの左側の袖を勢いよく肩まで捲った。 「タトゥーあった!」歓声を上げるメンバー。 マークの左腕には、彼の大好きなダークヒーローのシンボル、コウモリが描かれていたんだ。 ヤスが隠し持っていたアルバムをマークの目の前に差し出すと彼は両手で大きく頭を抱えた。 「おーい勘弁してくれよー! トニィ、お前だな? コイツがLA出身だって聞いた時から、いつかこんな日が来るとは思ってたんだ。えーい、コイツめ、コイツめっ!」 マークがトニィを小突いて皆んな大爆笑!そんな和やかな雰囲気の中重々しい表情のウォルターがやって…
2023/03/04 18:37
No.3-024 Believe In
feat. Def Leppard 「マークだ!」叫ぶフレッド。 そこには、金髪ロングヘアでトレードマークのサングラスをしている今の姿からは想像も付かない派手な恰好をした16歳のマークがいた。 しかも袖を引き裂いたTシャツから覗く左腕に見えるのはタトゥー?そんなの、あったっけ⁉︎ 「ブラッディ・レイン……聞いたことないバンドだ」ヤスもアルバムを手に取って繁々と眺める。 僕は中身をプレイヤーに乗せて音を出してみた。 すると〝IRON MAIDEN〟や〝Def Leppard〟も呆れそうな程の強烈なドラムと切り裂くようなギター音が瞬時に放たれ、思わず絶句! 「ブラッディ・レインって、最近LAで人気…
2023/02/25 17:17
No.3-023 Believe In
すかさずマークは、ポケットからデモテープを取り出した。スティーブンも驚いたようだ。 「これは用意がいいな。早速、聴かせてもらうよ」 そして遠くから彼等に声が掛かると 「じゃあライキーでのライブ、頼んだよ。詳しい話はマネージャーにさせるから」 「ライキーでの君達のプレイ、楽しみにしている」 そう言い残し去って行く2人を見送ると皆んな一斉にマークを見た。 「デモテープを用意してくるなんて、凄いな」 「デモテープぐらい、いつも持ち歩いてる。いつチャンスが来るか、分かんねーからな」 相変わらず事を鮮やかに進めていくマークに感嘆の溜め息が漏れた。 僕は次の日『バージンレコードロック年間』と『メロディーメ…
2023/02/18 18:38
No.3-022 Believe In
ポールからのアドバイスで、業界の厳しさとレコード契約の重要性を痛感したジェム達。そこへ現れたのは、ポールの盟友スティーブン。彼との関わりが、バンドにさらなる転機をもたらす――【80s洋楽が響く創作物語】
2023/02/11 18:37
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