〇 雨のなか来し風が部屋をとほるときかずかぎりなき蝸牛のけはひ〇 海で生まれた風は昆虫たちの眼がきらきらとする山頂に着く〇 窪地に湛へゐるくらきものより生まれ飛びたつぎらぎらひかる翅たち〇 研究室では科学者たちが金属光を発する向日葵を組立ててゐた〇 さくらばな咲く日近づきやまかげの暗きしみづを蟹かき乱す〇 真赤な雨がふりだしてどんどん草の葉は鳥となり石塊は爬虫類となり〇 ...
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「松平修文第二歌集『原始の響き』(雁書館・1983年)」を読む
〇 雨のなか来し風が部屋をとほるときかずかぎりなき蝸牛のけはひ〇 海で生まれた風は昆虫たちの眼がきらきらとする山頂に着く〇 窪地に湛へゐるくらきものより生まれ飛びたつぎらぎらひかる翅たち〇 研究室では科学者たちが金属光を発する向日葵を組立ててゐた〇 さくらばな咲く日近づきやまかげの暗きしみづを蟹かき乱す〇 真赤な雨がふりだしてどんどん草の葉は鳥となり石塊は爬虫類となり〇 ...
「秋月祐一処女歌集『迷子のカピバラ』(風媒社・2013年)を読む(其のⅣ)
〇 廃墟・廃港・廃線・廃市・廃病院・廃家・廃井 あぢさゐのはな〇 泥棒市場(バザール)で買った時計のうごかない秒針のこと、結婚のこと〇 引き潮のときだけ沖にあらはれる教室 今日もおやすみでした〇 ひとつづつ交互に食べるたけのこの里よ 始発はまだまだ来ない〇 ふむぐうと抱きついてくる無表情 これは淋しいときの「ふむぐう」〇 「まつしろなパンダに生まれ変はる夢、これつて何かの罰だと...
「秋月祐一処女歌集『迷子のカピバラ』(風媒社・2013年)を読む(其のⅢ)
〇 倒れない程度に無理をするこつをはやくおぼえてカンガルー、カンガルー〇 大輪の花火はじける五億年後にぼくたちの化石をさがせ〇 地下街で迷子になつたカピバラにフルーツ牛乳おごつてやらう〇 地底湖に落としたカメラ ぎこちないきみの笑顔を閉ぢこめたまま〇 梅雨寒のホット・バタード・ラム熱しやけどの舌をちろつと見せて 〇 点在湖沼を巡るみたいにすこしづつ識るきみのくせ ひろがる波...
「秋月祐一処女歌集『迷子のカピバラ』(風媒社・2013年)を読む(其のⅡ)
〇 借りるビデオも決まらないまま語りあふギズモの耳の唐揚げの味〇 きみどりの目をしたうさぎに一晩中「くぶくりん」つて囁かれてる〇 「このあひだサラダに入れたアボカドの種に芽がでたから見にこない?」〇 この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく〇 「錆」といふ漢字の「円」のとこが好き まだ子どもだと思つてゐたら〇 「生涯にいちどだけ全速力でまはる日がある」観覧...
「秋月祐一処女歌集『迷子のカピバラ』(風媒社・2013年)を読む(其のⅠ)
〇 相手より長生きしようおたがひに(お化けは死なない)約束しよう〇 開けてごらん影絵のやうな家々のどれかひとつはオルゴールだよ〇 朝焼けを見すぎたぼくとやせこけた向日葵それが夏のすべてで〇 あまりにも脆弱なきみを守れずにぼくは葡萄でありつづけてる〇 あられもない寝相で夢をみるきみはまだタイトルの付いてない曲〇 いいことがつづくと怖いといふきみにでんぐり返しで近づいてゆく〇 ...
〇 朝より思ひ出せぬことひとつあり微雨すぎてのち匂ひたつ土〇 明日は雨と書きいだしつつ概況は恋文のやうに滞りをり〇 逢ひにくるやうに毎月ここに来て野末の測器の撥条を巻く〇 あぶら照り照りかへし凪ぐ湖のうへ湖底の水温書きとめてゐつ〇 雨あがりの果実のごとく試料容器(ポリビン)を籠に集めて帰り来にけり〇 あやぶみて見てゐる兄の心にもなり得ずきみの恋を聞きをり〇 いくたびか死...
「本多真弓処女歌集『猫は踏まずに』(六花書林・2017年)」を捲る(其のⅦ) 三訂版 本日早朝、特別大公開!
〇 ゆふぐれてすべては舟になるまでの時間なのだ、といふこゑがする 一艘の笹舟となって谷川を果てしなく流れて行くのが、私たち人間の運命なのである。〇 ユキヤナギ真夜に来たりて白き花こぼしたものかシュレッダーまへ シュレッダーの前に、白いユキヤナギの花を零したのは誰だ! 落花狼藉の振る舞いも此処に至れば、もはや「鬼畜生の振る舞い!」とでも言わなければならないのだ!〇 嫁として帰省をすれば待...
「本多真弓処女歌集『猫は踏まずに』(六花書林・2017年)」を捲る(其のⅥ)
〇 巻き込まれ型のへなちよこ探偵のやうな一日たぶん明日も〇 薪で焚くお風呂があつた祖母の家 火の神様を祖母は見てゐた〇 待つことも待たるることもなき春は水族館にみづを見にゆく 「みづを見にゆく」とは、如何にもナウい水族館見学である。〇 右利きのひとたちだけで設計をしたんだらうな自動改札〇 右向きにふとんで泣けば左眼の涙が一度右眼にはひる〇 ミントタブレットどうでもいいことの...
「本多真弓処女歌集『猫は踏まずに』(六花書林・2017年)」を捲る(其のⅤ)
〇 白菜を白菜がもつ水で煮るいささかむごいレシピを習ふ 考えてみれば自らの水分で煮られるというのは残酷かもしれない。〇 はじまりに光があつてさよならはいつもちひさく照らされてゐた〇 パトラッシュが百匹ゐたら百匹につかれたよつていひたい気分〇 パソコンを片手で打てるようになる納豆巻きを摂取しながら〇 ひかりごと啜る白粥はふはふといのちを生きていのちは産まず〇 ひきずれば死体は...
「本多真弓処女歌集『猫は踏まずに』(六花書林・2017年)」を捲る(其のⅣ)
〇 騙しゑを模写するやうなぼくたちの窓を過よぎつてゆく鳥の影〇 長女つていつも鞄が重いのよ責任感を仕舞ひこむから〇 躑躅咲く目黒行人坂をゆく黙(もだ)と黙とを重ねてのぼる〇 てのひらをうへにむければ雨はふり下にむけても降りやまぬ雨〇 ですよねと電話相手を肯定しわたしを消してゆく会社員 〇 とある朝クリーム色の電話機に変化(へんげ)なしたり受付嬢は 「人件費節減」という名目で...
「本多真弓処女歌集『猫は踏まずに』(六花書林・2017年)」を捲る(其のⅢ)
〇 さくらちるさくらちるとてわたくしは小金を稼ぎ新聞を読む〇 三年ぶりに家にかえれば父親はおののののろとうがひをしており〇 三年をみなとみらいに働いてときどき海を見るのも仕事〇 残業の夜はいろいろ買つてきて食べてゐるプラスチック以外を〇 ししくしろ黄泉で待つとや待たぬとやくづれはじめるまへにあひたい〇 死ぬまでにつかひきれないぐらゐあるわたしの自我とハンドソープは〇 出...
「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅥ)
〇 宮川の支流が街をゆっくりと流れて人は歩みを止める〇 むかし砂山なりしところまで牙をむく浸蝕にたじろぐ旅びと五人〇 もういちど呑んで夜明かししたき友 年々に逝きまた一人逝く〇 四十年かかわりてこし編集に如何(どう)ともしがたき視力の衰え〇 稜線のみはるかすまで秋雲の冷気するどくたなびきており〇 隣室の鼾をうけてわが輩もおおかた夜は眠りにつける〇 冷静になれよと目覚む印...
「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅤ)
〇 中ゆびと人差しゆびの黄にそみぬ亡父の晩年ほどではなきが〇 ながらみの宝庫の浅瀬 波よけのヘッドランドの無情に佇てり〇 ながらみもなめろうもある白里の小さき店に秋はふかまる〇 咽喉の飢え耐えがたくなり入りし店ビールの喇叭飲みは三十年ぶり〇 呑み過ぎを悔み年ねん編集に倦みて四十年 ままよあれかし〇 「飲みながら癒していきましょう」医師のことば天の韻きのごとく聞ゆる〇 排...
「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅣ)
〇 頽唐派歌人が名づけし「タキアラシ」母音の妙はうたびとの技〇 高橋くん小笠原くん小林くん わが朋友は先に逝きたり〇 たった半日ネオンを消してそらぞらし偽善的エコを呼びかくる都市〇 地球的規模の気候の変にやあらむ人為的ならむや 海は応えず〇 千里浜や九十九里浜はた日向灘浸蝕は日々の津波でもある〇 塚本邦雄存命ならば何と言わむ口語・パソコン・メール短歌を〇 塚本邦雄、菱川...
「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅢ)
〇 酒の旨き生の苦きを知るほどに解明できぬわれならなくに〇 佐原を過ぎ香取を過ぎて吹くかぜは大利根川の秋のはこびや〇 散歩後は況してさわやか昼の酒ストップできぬわが癖あわれ〇 然り然り酒呑みヘビースモーカー老いて摂生に努めんとせず〇 焼酎に煮込みとおでん 定番なれど屋台の味はしみじみ旨し〇 焼酎を三杯にウーロン杯を追加せし自家製塩辛のトロの味する〇 白里(しらさと)と呼ば...
「田中徹尾第二歌集『芒種の地』(ながらみ書房・2016年)」を読む
〇 安全な立場にあればようやくに本音を語る空がおりくる 〇 腕時計して午睡するふたしかさ秋の空気が全身つつむ〇 帰省する若き部下ありいえづとに長もち持たせ背中をたたく〇 心証はかぎりなくクロ 海の名の酒でも出して自白を待つか 〇 たまさかに語気を強めて指示すれば翌朝休むと電話がありぬ 〇 仲介の腕まだ錆びつかずあることを両者一歩も譲らざる場に 〇 遠つ人先ゆく雁は風を...
「服部崇処女歌集『ドードー鳥の骨 − 巴里歌篇』(ながらみ書房・2017年)」を読む
〇 アンコール演奏曲を弾きしのち不二子のやうに君去りゆけり〇 行きつけのカフェの給仕と初めての握手を交はすテロの翌朝〇 こんな日は博物館を訪ひてドードー鳥の骨かぞえたし〇 サルビアは深紅に咲けり病院が元病院となりたる今も〇 サンマルタン運河は夏のきらめきを注ぎて白き船を持ち上ぐ〇 道化師が片手をあげる逆立ちの姿のままで片手をあげる〇 二年目のパリの夜なれば驚かず青き火を...
「服部崇第二歌集『新しい生活様式』(ながらみ書房・2022年)」を読む
〇 新しい生活様式とはいかに雌松の伸びし今年の枝の〇 いにしへのころより路は斑猫にしたがへばよし晴れてゐる日は〇 インドネシアの議長の声がドビューンドドビューンとしか聞こえない〇 鍵を持つわたしがいつかやつてきて扉を開けてくれるだらうか〇 カマキリに食はれて終はる夏の日のあたまを去らずそれも人生〇 鴨川のデルタのうへのなつぞらをリリエンタール七世が飛ぶ〇 今日もまた入つ...
「室井忠雄第四歌集『麦笛』(六花書林・2022年)」を捲る(其のⅢ)
〇 旅人のわれは味わうあしひきの会津のやまのコクワひとつぶ〇 とりたての香魚香草香茸を使って今宵の料理をつくる〇 生栗を五つほど入れわがからだ午後五時半のバスタブに浮く〇 濡れないように包んでとどく朝刊の記事一面が豪雨災害〇 働けばしあわせになると信じつつ生きてきたりぬ昭和の時代は〇 八十歳を超える三井ゆきさんの騎乗のアレキサンダーアモの歩みぞ〇 『バカの壁』再読しおれ...
「室井忠雄第四歌集『麦笛』(六花書林・2022年)」を捲る(其のⅡ)
〇 カエル鳴きセミ鳴きウシ鳴くわが里にきみ嫁ぎ来て四人子をなす〇 火葬場担当でありし若き日死者を焼く原価を計算せしことのあり〇 学習すれば俳句は身に付きますが短歌にはそういう装置はあらず〇 九十歳まで生きた葛飾北斎は七十歳から本領発揮す〇 組内の葬儀三つを段取りて二〇一九年暮れゆきにけり〇 クレソンが収穫可能とメール打つ九月三十日朝霧たちて〇 ここの地を飛び立つ戦闘機に...
「室井忠雄第四歌集『麦笛』(六花書林・2022年)」を捲る(其のⅠ)
〇 灯りが全部消えているから平穏な夜明けであるらしグループホームは〇 足の届かぬ大人用の自転車に乗るため三角乗りという技のありたり〇 炙り鮎をのせてうどんを食いにけり鮎釣り名人のきみにもらって 〇 甘酒を売っていたから和菓子屋になっても「あまざけ」屋号は楽し〇 蟻は蟻のあとを歩くが先頭の蟻はなにをめあてに歩くのだろう〇 アルミニウムでつくる一円玉よりも価値ある紙の二円切手は...
〇 おおどかに微笑み背筋を伸ばしゆくこころの傷口ひらきそうな日 詠い出しの五音「おおどかに」は、ナリ活用の形容動詞「おおとかなり」の連用形であり、「こせこせしないでおっとりと・小さなことにこだわらず・おうように・おおらかに」といった意味である。 例えば、この一首は、「おおらかに微笑み背筋を伸ばしゆくこころの傷口ひらきそうな日」としても、文意は殆ど変らず、しかも、「おおどかに微笑み」とするよりも...
「清水あかね処女歌集『白線のカモメ』(ながらみ書房・2020年)」を読む(其のⅢ)
〇 桜咲く夕べも傘なき雨の夜も小さな橋をわたしは渡る その大小は問題ではない! 生きていればこそ、私たち人間は「桜咲く夕べ」のみならず、「傘のない雨の夜」にさえ、橋を渡るのであり、また、渡れるのである。 傘のなき雨の夜でもあの橋を渡らんとする君ならなくに〇 粛清という語の浮かぶ夕ぐれに甘く匂える藤のむらさき 「粛清」とは、「厳しく取り締まって、不純・不正なものを除き、整え清めるこ...
「清水あかね処女歌集『白線のカモメ』(ながらみ書房・2020年)」を読む(其のⅡ)
〇 傍らに船やすませて石橋のやわらかき弧は真夜の鐘聴く 長崎の眼鏡橋が描く「やわらかき弧」! その「やわらかき弧」を描く眼鏡橋の傍らには一艘の小さな船が舫われているのであり、その小さな船の辺りには、深夜を告げる教会の鐘の音が漂っているのである。 勤務校の修学旅行での実体験に取材した一首でありましょうか? 「優しさ」と「静寂」に包まれた「真夜」! 一首全体が、その「真夜」の「喩」なのである。 ...
「清水あかね処女歌集『白線のカモメ』(ながらみ書房・2020年)」を読む(其のⅠ)
〇 逢いたくて逢いたくなかったひとと逢う火星が地球に近づいた夏 「逢いたくて逢いたくなかったひと」とは、この地上での恋愛関係にある相手である。作者は、その相手と地球に近づいたか生徒は違うというのであり、人間世界のの男女が、くっ付いたり離れたりする関係と、火星が地球にくっ付いて来たり離れて行ったりする天体現象とを対照化しているのである。 〇 明るければいよいよ暗む液晶を手のひらに持ち冬のバス...
⁅001⁆ 一睡の夢も三夜にて婆様はまた横須賀に帰ると抜かす!⁅002⁆ 徳島に一泊旅行に出掛けるがたった三日で婆様は帰る!⁅003⁆ 徳島のホテルで〇いて騙すけどたった三日で帰るぞ婆様!⁅004⁆ 騙す方も騙す方だが騙されたふりして騙す婆様も婆様?⁅005⁆ キタさんは山好きだから徳島で婆様の山に登って来たの?⁅006⁆ だからさぁ……婆様と共に徳島の観音霊場巡りを遣った!⁅007⁆ 写真では分からない...
〇 便船は午後の三時に発つと云う時間潰しに何処かへ行こう〇 三時まで時間潰しをするならばCAFEへ赴きお茶でもしたい〇 暇なれば何処か素敵なCAFEに寄り婆様と共にお茶してみたい〇 以前から気になっていたCAFEなれば「風車の丘」でお茶してみたい〇 ちゅう訳で婆様を連れて多度津市の「風車の丘」に赴く爺様〇 多度津市の「風車の丘」に立ち寄るは斯かる理由があるからなのだ〇 風通しのすご...
「蒼井杏処女歌集『瀬戸際レモン』書肆侃侃房 2016年)」を捲る(其のⅠ)
〇 ああこれは、いやなわたしだプルタブをしゅぱっと引けば手首にちって〇 ああこれはいわゆるひとつのしみじみと真昼のサドルがあったかいこと〇 青空を押して回転ドアを出る 見るものすべてに檸檬の付箋を〇 空壜が笛になるまでくちびるをすぼめるこれはさびしいときのド〇 あ、この曲、なんだったっけな、パーカーの短いほうのひもをひきつつ〇 あたしもうだめかも なんて かめパンの首・尾・...
〇 マヨネーズのふしゅーという溜息を星の口から聞いてしまった〇 まんなかの頁にてのひらおしあてて糸綴じノートをひらいてゆくの〇 磨かれた駅のステンレスのごみ箱のへこみに映った今夜のわたし〇 水としおとおくはなれたキッチンのどの海の肉もパエリャにちぢんで〇 むしのいい夢だったこと豆をむくひとつぶひとつぶひとつぶひとつぶ〇 めすばとが歩いて逃げるおすばとがふくらんで追う ねむた...
〇 夏草に影を落としてぼうと立つ指切りしたのにね ゆび きり〇 七色のボールペンには七本のばねがあるのでしょうね、雨〇 なにをしてもおこられるときわたくしは夢の中でもプリンをこぼす〇 (なんでわたしこんなところにいるんだろ)って夢からはやく覚めたらいいのに 〇 に、してもひざにだれかの耳をのせ穴をのぞいてみたい夜長だ〇 拝啓のつづきをひねもす考えて潮騒になる窓辺のラジオ〇 ...
〇 体温が足の裏から逃げてゆくわたしでなければうまくゆくんだ〇 縦向きの見本見ながら横向きに落ちてくるのを待つ缶コーヒー〇 たぷん、と音が胃でしてわたくしは陸橋のぼる魚になった〇 タラップをおりてゆくときてのひらをひらいた場所から雨になります〇 だってもう消えたい湯ぶねの靴下のゴムのあとをたどって〇 地球壜の画像をさがすわたくしはむかしあるところかたまりでした〇 ちみし...
〇 下の名を知らないままで手を振って歩いて帰って竹輪をかじる〇 シャンプーの入った耳をとんとんと世界中をうらがわにして〇 新品の靴下につくピンセットみたいなあれを集めています〇 STAINLESS STEEL JAPANの字を見ているわたしをみつめているスプーン 〇 スポンジにふくませたみず はなびらの切手をまっすぐはるのでしたよ 〇 そうでした 秘すれば花で物干しに首のないシャツきちんとならべ...
⁅001⁆ 論調の変わり目よそに国葬の閣議決定いそぐ政権⁅002⁆ サル痘を運搬せしは「官僚」か?「政府関係者」との報道なれど?⁅003⁆ 如何せんタマがキモいよ新参の「松野・中条・猪瀬・青島」⁅004⁆ 比例区の超2%で横並び「社民・参政・NHK党」⁅005⁆ 往時には五十数万居たけれど今は半減青息吐息⁅006⁆ 遅れたと言えど三秒!然れどもそれを論拠に奈良警批判?⁅007⁆ 胸に覚えのある奴は遊説なんか...
⁅001⁆ み仏に再訪誓ってのち僕は妻に逢うため琴平駅へ⁅002⁆ み仏は西方浄土におわしまし我の眠れる夜に顕わる⁅003⁆ 駅までは車飛ばせば五分だが歩いて行けば約二十分⁅004⁆ 歩きにて金刀比羅宮へ近づくと金倉川に架かる橋見ゆ⁅005⁆ 右に見ゆる雅びな橋は金倉川に架かれる鞘橋ですよ⁅006⁆ 銅きで両妻唐破風!上屋根千鳥破風の鞘橋は国の有形文化財なり!⁅007⁆ 君んちの近くにこんな立派な橋在る...
⁅001⁆ 蔵王にはスキーに行った思い出が宿泊施設がめっちゃおんぼろで⁅002⁆ リフトから下りるタイミング失って悪童たちに笑われちゃった⁅003⁆ 吹く風に散りたる銀杏の葉を踏みて学生寮に帰った彼よ⁅004⁆ 栢の木に栢の木の葉が芽吹くころあなたに逢いに行きたい吾ぞ⁅005⁆ あんなにも観光客が来ていたがコロナ禍以来鳴く閑古鳥⁅006⁆ 唯一の顧客であった彼の孤老、背中丸めて食べてた生蕎麦⁅007⁆ ...
「佐竹游処女歌集『草笛』(現代短歌社・2014年)」を読む(其のⅠ)
〇 異端者を名告る愉悦も異端者の謗りを受けてたちまちに消ゆ 自らが異端者であるが如くに振舞って「愉悦」に浸るのは似非異端者であり、異端者の誹りを受けて怯むのも似非異端者である。 その孰れにしろ、異端者的存在として生き続けるためには、異端者としての自覚的な振る舞いが必要とされるのであるが、評者が自らを振り返り見ても、そうした自覚的な生き方をするためには、本人は勿論、周囲の人々の協力と犠牲が伴うの...
「佐竹游処女歌集『草笛』(現代短歌社・2014年)」を読む(其のⅢ)
〇 のぼる日に朝の大気はゆるみたり正方形に薔薇はひらきぬ〇 ヒグラシを聞かせてをりぬ魂を運ぶ舟なるわがししむらに〇 皮膚に皮膚重ぬるときにつぶれたる空気小さき声をあげたり〇 冬枯れの欅の枝と枝の間金糸のごときものかがよへり〇 星冷ゆる夜には君と野兎のやうにひとつになつてねむれる〇 ほそき頸なげだしねむる猫の仔をくづさずにわが膝よりおろす〇 頬と頬ふれつつわれら眠りけり魂...
「佐竹游処女歌集『草笛』(現代短歌社・2014年)」を読む(其のⅡ)
〇 さまざまなわれを束ねてわれはあるわれのひとりが草笛を吹く〇 思想にも鮮度はありて三年(みとせ)前買ひし評論すでに古びぬ〇 してるのにしてないふりをしてゐてはしてゐることをしかと語れず〇 詩のこころ乏しきわれに神は見す夕空を焼く銅の雲〇 死へ死へと駆け出しさうになるわれをリノリウムの床に捩ぢ伏せてゐる〇 食卓に皿ならべゆく朝の日をひとりびとりに頒たむがため〇 順接の接...
⁅001⁆ 仏厳寺の池に咲いてる古代蓮の元気の無さがとても気懸り⁅002⁆ 塀沿いの溝に滅茶苦茶咲くはずのピンクや白い花が咲かない⁅003⁆ 古代蓮の花はもちろん心なしか花托も何故か元気無さそう⁅004⁆ 茶色くて丸い花托は澱粉を豊富に含み食用に帰す⁅005⁆ 食感はトウモロコシの如くにて食物繊維を多量に含む⁅006⁆ 「カルシウム・カリウム・ビタミンⅠ」などと栄養豊富な蓮の花托よ!⁅007⁆ 住職の話に...
⁅⁆ 体調がすこぶる良いとは言えぬけど一時的なる気鬱にあらむ⁅⁆ 婆様に心配させたくないからと元気なふりをしてる爺様⁅⁆ 実家にて母の介護をしていたが爺様の様子が気になる婆様⁅⁆ 爺様のからだ気遣い婆様が七月三日に粟島に来る⁅⁆ 母親の介護を止めて婆様が七月三日に粟島に来る⁅⁆ 婆様はベターハーフの爺様の身をば案じて粟島に来る⁅⁆ 爺様の健康気遣う婆様の顔の皴など気遣う爺様⁅⁆ 婆...
「『日本の美しい花暦・一年中楽しみたい』(三才ブックス・はままっぷ」を読む
〇 ネモヒィラの爽やかさうな絨毯の上でダンスをするチューリップ (香川県・国営讃岐まんのう公園)〇 建物とチューリップとがマッチしてドイツの田舎のやうな優しさ (岡山県・岡山農業公園ドイツの森)〇 ムスカリとコラボしてゐるチューリップ!いろんな色のおべべが素敵! (東京都・国営昭和記念公園) 〇 山茶花は公園などの身近なる場所で見らるる有り触れた花 (富山県・富山県中央植物園)〇...
「岡部桂一郎遺歌集『坂』(青磁社・2014年)」を読む(其のⅠ)
〇 青梅のひと日ひと日を太りゆく九十を過ぎて判ることある〇 あしたより雨ふりつづく森のみゆ終るいのちをわれは疑う〇 頭から尾までの遠ささびしからん曇りのしたを縞蛇およぐ〇 あの坂をのぼって家に帰りたい 汽笛がぽーっと鳴っている坂〇 あの坂を登って由紀子が帰るなり枯れたすすきが揺れいるところ〇 雨よりも雪に感情あるごとくわれに向いて雪ふりやまず〇 生き死にのことにふるるな...
〇 あおあおと一月の空澄めるとき幻の凧なか空に浮く〇 飴ン棒口にくわえて幼かるわが過ぎし日のまた還り来よ〇 大いなるガラスに向かいあゆむわれ 映り近づき静かに消えぬ〇 掛け違うつぎのボタンを探す手のしばらく遊びいたる暗がり〇 「かなかな かな」死はなつかしき声で鳴く 近づきてまた遠ざかりゆく〇 「黒龍」の五勺の酒を呑みしかばほのぼのとして街をゆくかな〇 五時すぎの道に現...
「岡部桂一郎第四歌集『一点鐘』(青磁社・2002年・著者八十七歳)」を読む(其のⅤ)
〇 俳諧はこれもと人の喜笑により出でし思えば立ちあがりけり〇 白鳥座に一つの星の潰ゆとぞ読みたるのちの二夜また三夜〇 箸そえて皿にのりたるいなり寿司麻の実まじるいなり寿司これ〇 春風になびき仰向く竹群は青しなやけき幹の集まり〇 馬鈴薯と南瓜ひとつの籠にあり仲良くあらず自然豊けし〇 不思議なる音して去年の雪が降るきょーん、きゃーん、きゃーん、きょーん〇 浮遊する感じの白き...
「岡部桂一郎第四歌集『一点鐘』(青磁社・2002年・著者八十七歳)」を読む(其のⅣ)
〇 大正のマッチのラベルかなしいぞ球に乗る象日の丸をもつ〇 立ったまま笑いころげる葱坊主黙って風の通る葱畑〇 短針を静かに追いて長針の重なる時に人の吐息す○ 近づけば見えなくなるぞ伝説に立つ木はさびしその名箒木○ 竹林に立つ竹の精ことごとく垂直をせり鴉鳴きたり○ 定型の古びし紙に躍り出よ月夜の蛙,雨夜蟋蟀〇 手に触れし涙のしずくあるように月の雫はゆずり葉の上 ○ 東名高...
「岡部桂一郎第四歌集『一点鐘』(青磁社・2002年・著者八十七歳)」を読む(其のⅢ)
〇 逆立ちをすれば頭に血がのぼる両の手のひら大地支えて〇 里芋の畑の上に月が出て逝きたるものはもう帰らない〇 渋柿の皮をいくつか剥き終えてその親柿の枝にかけたり〇 種は土に落ちて育ちしそのところ杳き記憶を故郷という〇 「主よわれを憐み給え」オルガンの楽佇ち聞けば心荒れゆく〇 しんかんという音なれどわが心しんかんという月の音きく〇 しんかんとせる身めぐりのほの暗さ畳に落ち...
「岡部桂一郎第四歌集『一点鐘』(青磁社・2002年・著者八十七歳)」を読む(其のⅡ)
〇 顔映る鏡の奥の伐木の音のかすかにこだましている 〇 柿の木を人来て切れり柿の木の影がのこった日曜の塀〇 かすかなる冬の愁いはふるさとの泥の干潟に日を拝む蟹〇 紙きれをいたぶりながら引いてゆく風立ちにけりこの路傍感〇 黄の蝶が来たりて遊ぶ単線のレールは深きトンネルに入る〇 今日かぎり精一杯の表情に赤々燃ゆるダルマストーブ〇 首長きガラスの瓶の立つ窓に藍いろふかき空し...
「岡部桂一郎第四歌集『一点鐘』(青磁社・2002年・著者八十七歳)」を読む(其のⅠ)
〇 生死のけじめはないよなんとなく猫いて大き満月が出る〇 一円のアルミの硬貨落ちている畳の冬陽路傍のごとく〇 一合のコップに酒の盛りこぼれ受け皿浸すときの豊かさ〇 一枚の葉書をかいてポストまで 大きな春があとついて来る〇 一輌の貨車切り離されて遠ざかる枯野の夢はなお続くなり〇 いつしかに枯野にしずか囲まれて身うごきできぬ車見えおり〇 浮き浮きと団扇うちわ太鼓の音きこゆ皇...
〇 えらいこと何もでけへん お情けで生きているねん わい乞食やねん〇 構造の奥よりあまた紙きれの風に舞いつつ道に出てゆく〇 人類も平和もくそもあれしまへん木の浦部落夏の夕ぐれ〇 大師橋界隈昼にさしかかり一玩具店愁いみちたり〇 手のひらを反せば没り陽 手のひらを覆えば野分 手のひら仕舞う〇 のびあがる沖の白波悲しむなここ余部のあかつきの雨〇 春の風通りてゆけば紙袋おもむろ...
「岡部桂一郎第二歌集『木星』(木馬社・1969年))」を読む(其のⅡ)
〇 寒々とぬれたる木立 物質の重さたたえて暁にたつ○ 沈む日を見つむるなかれ魂焦げる匂いはげしき冬の野なれば〇 障子に電柱の影さしているわが四十の昼さがりにて〇 上空より撒かれしビラをひろう手よ見さだむるごと機は旋回す〇 ただひとつ昏れゆく心ぽったりと土に椿のくれないは落つ○ たなびける夕鱗雲この部屋にコードつたいて電燈ともる〇 大寒のにごる日の昏れ思わざる地下の穴より電...
「岡部桂一郎処女歌集『緑の墓』(白玉書房・1956年)」を読む(其のⅡ)
○ しばしばも来る夢にしてまおとめの乳に針刺すわがおこないよ○ 銃殺の音ならなくに落つる日が野の上に低くとどまれるとき○ 数条のレール光れる暁の薄明のなか紙ひとつ飛ぶ○ 砂の上に濡れしひとでが乾きゆく仏陀もいまだ生れざりし世よ〇 戰いの痣を額にして悲しかる面短躯の人土に立つ〇 ただれたる沒り日の空に梯子たてり色人のわれはれて〇 鳥獣の声も絶えたる現生に山々そびゆ新しき物質と...
「岡部桂一郎処女歌集『緑の墓』(白玉書房・1956年)」を読む(其のⅠ)
○ 哀恋はまたかえらめや薄明を街路樹に沿い緋の自動車くる〇 色のコスモポリタンとなるなかれくらがりに灼けし鐵の匂いする〇 うちむかうベアトリーチェにあらなくに陰の柔毛とわが暗き影と〇 うつくしき心をもてる人々にま白き飯は喉くだりゆく○ 愁いおびし灰色の壁つらなりてくれないに塗りしドラム罐ある〇 おさな子の声のする窓ものきざむ窓みな灯るとき無縁なり〇 おどおどと夜のランプが...
「川俣水雪処女歌集『シアンクレール今はなく』(静人舎・2019年)」を読む(其のⅠ)
〇 紫陽花は今年も咲けどいま在らば七十歳の高野悦子よ 高野悦子は、1949年1月2日栃木県那須郡西那須野町(現・那須塩原市)で出生。西那須野町立東小学校、西那須野町立西那須野中学校、栃木県立宇都宮女子高等学校を経て、立命館大学文学部史学科日本史学専攻に入学する。3年生だった1969年6月24日未明、山陰本線二条駅―花園駅間で上り貨物列車に飛込み死亡した。 死後、20歳の誕生日から自殺にいたるまでの内面の葛藤を...
「片岡絢処女歌集『ひかりの拍手』(柊書房・2009年)」からの抜き書き
〇 朝のホームに並ぶサラリーマンの顔死んだあとよりつまらなさうな〇 クレームの電話やうやく片付けて疲れた人がこつちを見てる〇 仕事終へ駅までの道わたくしが居なくても在る街が広がる〇 死んぢやつてからでは遅いお土産に今日はケーキを買つて帰らう〇 「住民票一通三百円です」ともう千回は言つてるだらう〇 地下水が雲となり雨となるやうにゆるやかに我らまためぐり会へ〇 なぜかまた怠...
「片岡絢第二歌集『カノープス燃ゆ』(六花書林・2022年)」を読む(其のⅠ)
〇 愛されてゐたのだずつと陽は照らす気付かなかつたわたしを照らす〇 赤ん坊の小さな服を陽に干せり 大きくなあれ 大きくなるな〇 あぢさゐの奥へ奥へと入りて思ふ 婚姻制度はばかみたいだな〇 あの人といふより私をみるときのあの人の目に会ひたいだけだ〇 会へずとも君の姿は目の裏に印刷されてゐるのだと言ふ〇 哀れなり片手に握るこんな板が君の言葉でひかるのを待つ〇 いたみもて世界...
⁅001⁆ 一昨年(おととし)に凌霄花の剪定を手抜きしたのはコロナ禍の所為?⁅002⁆ 二階家の屋根まで延びた凌霄花(のうぜん)の枝払いには難渋したぞ!⁅003⁆ 爺様がサボった所為で延びたのだ!「難渋した!」とはご挨拶だね!⁅004⁆ 本年は島に到着して直ぐに屋根まで伸びた枝を払った⁅005⁆ 太枝を断ち切ったから脇枝が下屋の屋根へと延びて行ってる⁅006⁆ 脇枝が葦簀代りになれば佳し!夏の陽射しを遮る為...
〇 相眠る墓をねがひし愚かさの白じらとして夜半にさめをり〇 相病みて我より広く生きしさへ淋しき春の霙みぞれふるなり〇 暁にさめつつ思ふ君の死を緩衝として保つ生命か〇 脚あげて少女の投げし飛行機の高きコスモスの中にとどまる〇 淡あはと霙に白む窓の下つめたき耳をしきて眠らむ〇 暗室の厚きカーテンに身を支ふ人に馳せ寄る君のこゑなり〇 生垣の高きに沿ひて去る見つつはや恃めなき思...
〇 笹の葉はさらさら風にそよぐともいまさら婆と共寝などせぬ! 鳥羽散歩〇 七夕の笹の葉さらさらさやぐとも吾はさらさら君に背かず ...
⁅001⁆ 元凶はアベノミクスだ!スガだとかホソカワなどはアベの僕(しもべ)だ⁅002⁆ 「身を捨てて国と国民護る」など法螺こく者は全て政治屋⁅003⁆ 己が身を捨ててしまえば国民の命護れる筈もなかろう⁅004⁆ 比較していくらかマシな候補者の名をば記してポトンと入れむ⁅005⁆ 最善は存在しない!だからとて危険をせずに投票しよう!⁅006⁆ 「立候補するような者には投票したくない」と云うのも...
今日の三十三首(「庭の千草」) 本暁改訂!讃岐国を含む日本全国、大公開! 乞う!ご高覧!
⁅001⁆ ベル型の可愛い花を下向きに咲かせているのはスノーフレーク!⁅002⁆ 下向きに花を咲かせて男性を騙すつもりか?スノーフレーク!⁅003⁆ 男なら誰も自分を可愛いと云ってくれると思いあがんな!⁅004⁆ 可愛いか可愛くないかはあくまでも主観的な判断なんだ!⁅005⁆ 赤いから毒々しいか?白いから可愛らしいか?差別をするな!⁅006⁆ 赤帯を巻いた男と黒帯を巻いた男が畳の上で!⁅007⁆...
「片岡絢処女歌集『ひかりの拍手』(柊書房・2009年)」からの抜き書き
〇 朝のホームに並ぶサラリーマンの顔死んだあとよりつまらなさうな〇 クレームの電話やうやく片付けて疲れた人がこつちを見てる〇 仕事終へ駅までの道わたくしが居なくても在る街が広がる〇 死んぢやつてからでは遅いお土産に今日はケーキを買つて帰らう〇 「住民票一通三百円です」ともう千回は言つてるだらう〇 地下水が雲となり雨となるやうにゆるやかに我らまためぐり会へ〇 なぜかまた怠...
〇 伊勢辰の千代紙買うて欲しいけどお家びんぼで買うてくれへん 鳥羽散歩〇 父ちゃんは喧嘩ばっかりしてるけど元は真面目な職人だった〇 六畳に親子三人暮らしてる父と母とは同じ布団だ〇 ねえ、あんた!美智子が目を覚ましてる!だから止めよう乳繰り合うの!〇 覚めてても覚めてなくても目を瞑り知らんふりして居るんだからね!...
百首歌ヘのアプローチ(『鬼灯提灯殺人事件』編) 讃州限定大公開! お代は読んでのお楽しみ!
⁅001⁆ 婆様が職場放棄し母を棄て久方ぶりに島に來るとか?⁅002⁆ 骨折の母の介護に厭きたから夫(つま)の介護をしたくなったか?⁅003⁆ 来島は物見遊山と心得つ爺の気持を斟酌せざる⁅004⁆ 粟島の独り暮しが楽しみの夫(つま)の気持ちに逆らう帰島⁅005⁆ スケバンのミハラジュンコも泣いている「当てにしていた二票が失せた」⁅006⁆ スケバンの応援演説するなんて!前の総理のスガヨシヒデ氏!...
⁅001⁆ 四回目したか皆さん?僕はした!〇接ではないワクチン接種! ⁅002⁆ 皆さんは四回目をもう済ませたの?〇交ならぬワクチン接種!⁅003⁆ 済ませたか。皆様方は?あれよあれ?参院選の期前投票!⁅004⁆ 我が国の二大商社も出資する「サハリン2」の譲渡命令?⁅005⁆ 香港は「中央による全面的な統治権を堅持すべし」と?⁅006⁆ 一月にしたばかりなのにまた値上げ!ヤマザキ製パン音を...
「松村正直処女歌集『駅へ』(ながらみ書房・2001年)」を押し入れの底から掘り起こして(其のⅠ)
〇 ああ君の手はこんなに小さくてしゃけが二つとおかかが三つ 「鮭おにぎりが二つ」と「おかかおにぎりが三つ」、しかも、彼女の掌が極めて小さかったから、彼女が握ったおにぎりも極めて小さいやつだ! そんな小さくて貧しいおにぎりでも放浪生活を続けて来た彼にとっては、とってもとっても嬉しかったに違いない! その気持ち、こんな僕にだって分かりますよ!〇 明け方の淡い眠りを行き来していくつの橋を渡っただ...
百首歌へのアブローチ(『まほろばの島』賛歌・其のⅡ) 堂々と百首完詠! 四国限定、本日早朝、出血大後悔!
⁅001⁆ 関東は梅雨明けにけり!ご当地の「梅雨明け宣言」いつ頃ならむ?⁅002⁆ ネタ切れで話は春に「逆戻り」!今を去ること七十日前⁅003⁆ 当日に買い物せむとて出でたるは四国本土のとある街なり!⁅004⁆ 「春に逆戻り」とは如何なる意味ならむ?「戻る」とは即ち「逆に進む」意!⁅005⁆ 上陸し須田の波止場に佇みて「何処へ行かむ?」と思案にくれる!⁅006⁆ 名代なる「フラワーパーク浦島...
『まほろばの島』に敬礼! 鳥羽散歩⁅01⁆ 仲南の田圃の脇の草原は減反施策の遺蹟ならむや?⁅補欠⁆ 仲南の田圃の端の草原は減反施策の残骸ならむ?⁅02⁆ 八郎潟、埋め立てたのは誰なんだ!旧(もと)に復(かえ)せよ連立政権!⁅補欠⁆ 八郎潟干拓事業を企てた秋田県知事・小畑 勇二郎氏⁅03⁆ 大幅な赤字解消に寄与せむと「JR四国の観光列車」⁅補欠⁆ 赤字解消施策の一環とし...
百首歌へのアプローチ(財田川橋梁近くのショキングモール&鎮座の桜) 讃州粟島限定!出血堂々大後悔!
前編(財田川橋梁近くのショキングモール)⁅001⁆ 糧秣の探索に行くその途上、鉄道写真を撮らむと思ふ⁅002⁆ 仲南の水田に映るレールカーの写真撮らむと吾は来にけり⁅003⁆ 鏡なす水田に映る映像を吾は名付けり「水鏡写真」と⁅004⁆ 仲南の水田の成せる水鏡!観光列車を映してお呉れ!⁅005⁆ 水鏡?読んだ事ない!読んだのは吾妻鏡と大鏡だけ!⁅006⁆ 畦道にアザミの花が咲いてゐる仲南町の六月半ば...
「鈴木晴香処女歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房・2016年)」を読む(其のⅡ)
〇 かつて火を熾していたこの両腕で君の体を引き止めること 彼女は銭湯の釜焚きに従事していたのでありましょうか? 銭湯の釜焚きは難儀極まる職業なのでデートする暇が無く、恋人に逃げられてしまったのでありましょうか? 両腕で火を熾せたら燐寸などとうの昔になくなったはず○ 悲しいと言ってしまえばそれまでの夜なら夜にあやまってくれ あの喪失の夜の事が憎い!憎い!憎い!たまらなく憎い! あの呉れて...
百首歌へのアプローチ(志々島賛歌) 瀬戸内海域限定!本日午後、堂々大公開!
⁅001⁆ 目指すのは横尾の辻の大きな木!その正体を確かめる為⁅002⁆ 以前から楽しみにしていた事で準備おさおさ怠りも無し⁅003⁆ 先ずはカメラのバッテリーチェックと撮影練習繰り返します⁅004⁆ 峠路の巨樹の正体判るかと思えば胸がわくわくします⁅005⁆ 一夜明ければ満月で野良猫も夫婦揃ってお月見してる⁅006⁆ 波止場には「あしま」と「つばめ」が停泊し!我が乗る船はおんぼろ「あしま」!⁅007⁆ ...
「鈴木晴香処女歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房・2016年)」を読む(其のⅠ) 参院選、当落既に確定し!吾ら庶民の夢絶たれたり!
〇 当たり前のように重たくなる花瓶 時間はこうして重さに変わる 同じ花瓶が軽くなったり重くなっりすること、私の経験則にてらしあわせてみても決してありません!であるならば、あなたご自身が老化した結果として、昨日は軽かった花瓶を今日は重いと感じたのでありましょう。また、「時間」というものは「重量」に還元されることはありません! 花瓶さえ持てなくなってしまったら、花も実もある人生ではない!〇 ...
「鈴木晴香処女歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房・2016年)」を読む(其のⅥ)
〇 眼裏にまだ君がいる真夜中に今度は私から好きと言う○ 三つめの砂糖は溶けて四つめは溶けないそんな境界に来て〇 目覚めたら喉が渇いていてだれも魚の頃の話をしない○ もう一度(例えば恵比寿の改札で)振り向こうと思えば振り向ける〇 もう一度ふたりが出会う世界では君から先に私を見つけて○ 呼び捨ててほしいと言えば黙り込む君と今夜はサーカスを見る○ 読んできた本の名前を教えあう二の腕に二の腕を触...
「鈴木晴香処女歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房・2016年)」を読む(其のⅤ)
○ 初夏の君の笑顔に糸切り歯見えたらしんと冷たい世界〇 花を買うことに理由がないように恋を束ねて片腕に抱く〇 花を切るための鋏で君からの最後の手紙を花びらにする○ 春の闇乳房はすこし冷たくて柔らかいもの 指が驚く○ パンケーキショップの甘い蜂蜜の香りがしたら右に曲がって○ 非常時に押し続ければ外部との会話ができます(おやすみ、外部)○ 開かれて光ってしまう淡水魚それとも躰 月の脱衣所〇 ...
「鈴木晴香処女歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房・2016年)」を読む(其のⅣ)
〇 側道を行く自転車の後輪が春の終わりを巻き込んでいる○ 大切なことは小さな声で言う君の隣で目を閉じている〇 太陽に向かって咲いている花に嫌気がさしている夏の午後〇 太陽を見つめたままのひまわりが赤いリボンで縛られてゆく○ 黙ることが答えることになる夜のコインパーキングの地平線〇 近づけば近づくほどに遠ざかる触れたときから失っている○ 沈黙のみずうみにいる君のためドアが開くたび揺れてい...
「鈴木晴香処女歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房・2016年)」を読む(其のⅢ)
○ 雑踏の中に通勤定期券 降りたことのない駅を結んで○ 残像の美しい夜目を閉じた後の花火の方が大きい○ 嫉妬してください例えばこの雨が君に降らない雨であること〇 シャボン液から指の輪を引き抜けば私は風の入り口になる○ 自転車の後ろに乗ってこの街の右側だけを知っていた夏○ 準急の過ぎゆくホーム太陽はとぎれとぎれに私を叱る〇 好きだって言わなくたってもセックスはできるものだというお告げあり...
⁅01⁆ 某党の政策ポスター、無残にも剥がされてゐつ!公示を前に⁅02⁆ 候補者に祟られたなら怖いから誰も剥がさぬポスターも在る⁅03⁆ 「多摩プラで三原じゅん子が演説をしてるの見た!」って云ってた妻が⁅04⁆ 多摩プラに顔を見せないリッケンの候補者二氏は棲み分けしてる?⁅05⁆ 選挙カーが朝からガナり立ててゐる「私は庶民の味方なんだ」と!⁅06⁆ 誰ひとり口に出さない憲法の九条改正に関わる事項⁅0...
⁅001⁆ 「折れた煙草の吸殻であなたの嘘がわかるのよ!」「だから入れない!」⁅002⁆ モノマネとマシンガントークのアケミさん、維新の会の比例区候補 (誰よりも速く喋れるワタシめにどうか議席を与えておくれ!)⁅003⁆ 首都圏の元知事二氏が立候補!党籍共に「維新の会」だ!⁅004⁆ 二氏共に当落線上彷徨えば「維新の会」の領袖来援! ⁅005⁆ 「物価高」「円安」そして「安保」問う!参院...
⁅01⁆ 梅雨入りだ!四国地方の梅雨入りは関東よりは当然遅い⁅02⁆ 西だから梅雨が早いと思うけど関東地方は首都圏だから?⁅03⁆ 平年は六月五日の梅雨入りが今年は遅れ十三日です⁅04⁆ 関東に七日遅れの梅雨入りで平年よりも八日遅れた⁅05⁆ 梅雨明けは七月十七日頃ですが「頃」にご留意?あくまでも「頃」!⁅06⁆ 梅雨と言えば何んと云っても紫陽花だ!梅雨の時期には紫陽花が咲く!⁅07⁆ 平常は桜の...
⁅01⁆ その時はその時だ!いざ鎌倉になれば馳せ来る友もあるから!⁅02⁆ その時は今ではないさ!その時を僕らみんなは逃がしてたんだ!⁅03⁆ 事を為すタイミングこそその時だ!それに留意しチャンス逃すな!⁅04⁆ 帰国した秋山翔吾外野手が永の御無沙汰詫びるその時!⁅05⁆ その時は島の恩師のキタさんも涙を流してテレビ観戦!⁅06⁆ その時は稽古不足で敗れたが今はと嘯く正代直也!⁅07⁆ その時は僕...
⁅01⁆ 領巾付きの帽子被った園児らが<SANWA>の.前の舗道を通る⁅02⁆ 領巾付きの帽子被った園児らが青信号を並んで渡る⁅03⁆ 領巾付きの赤・白帽を被っての保育園児の風船バレー!⁅04⁆ 領巾付きの帽子被るを拒否したる園児を憎む保育士もゐる⁅05⁆ 逆様に領巾付き帽子を被らせて義弟虐めて平気な義兄⁅06⁆ マージンの約三割がリベートだ!領巾付き帽の納入業者!⁅07⁆ 僕たちが国防色の戦闘帽被って...
○ 午後五時のメロディチャイム「やしの実」に耳を澄まして偲ぶふるさと 二嶋結○ 気が付けば川崎暮らし「やしの実」のメロディチャイムに故郷しのび○ いたづらに郷愁さそふ「やしの実」を夕方五時に流す川崎○ 午後五時のメロディチャイム「やしの実」のしらべうるさし今日の川崎○ 田舎から職を求めて川崎へ流れて来にし我なら泣くに○ はるばると仕事探しに川崎へ流れて来にし吾でも泣かず ○ 午後五...
「toron*処女歌集『イマジナシオン』(書肆侃侃房・2022年)」を覗く(其のⅠ)
○ iPodにくるりを同期させながらどの東京が好きか話した 作中の「くるり」は、「立命館大学出身の岸田繁と佐藤征史の2人からなるロックバンド」であり、「くるり」は、1998年(平成10年)『東京』(シングル盤)をリリースして、メジャーデビューを成し遂げたのである。 ところで、作中主体(=作者)と謎の人物とは、件の「くるり」の代表曲たる『東京』を「iPod」に「同期させながら」、数多ある東京の中で「どの東京があんたは...
百首歌へのアプローチ 讃州粟島以北!本日午後、優先大公開!乞うご閲覧!乞うご講評!
⁅001⁆ コーメイのエリート候補が自らの性交動画を違法公開⁅002⁆ キシダ破廉恥性権の<裏の顔>撃つ週刊文春⁅003⁆ 文春の「違法買収」報道に彼が反論できない理由?⁅004⁆ ハクホードー局長某のセクハラを訴えたから切られた<派遣>⁅005⁆ 魔野あずさ『はぐれ刑事純情派』出演女優の失踪理由⁅005⁆ 先輩は恐れ多くもあのお方?「行方不明リスト」に入った彼女?⁅006⁆ 「プロデュース101」出身...
「浦部晶夫第二歌集『晩晴』(不識書院・21020年)」を読む 讃州粟島以北、本朝、特別大公開!乞う、ご高覧!ご講評!
○ 暑き日もたそがれにけり白衣ぬぎひとまづ我はくつろがむとす 殊更に「白衣ぬぎ」なんて言わなくたって、そこんとこだけ強調して言わなくたって、宜しいではありませんか! どうせ、あんたは医者で、しかも、我が国血液医学の泰斗の名医で、こちとらは、貧乏で年老いた患者にすぎませんけどね! 暑き日も黄昏にけり!明日、吾の八十二歳の誕生日なり! 疲れたべ!草臥れたべな!暑き日を!白衣纏ひて...
「土岐友浩処女歌集『Bootleg』(書肆侃侃房・2015年)」を読む(其のⅥ)
〇 まっさらなノートのような思い出が音もなく降りこぼれる僕に◎ まっすぐに伸びた線路が表情をあかるく変えるように曲がった〇 マッチ売りの少女にもしも手袋と母があればと思う街角 〇 まるでそこから浮かび上がっているようなお菓子のそれでこそビスケット◎ もうひとりではなくなって青々と苔のひろがる神社を歩く◎ やり方は知らないけれど春先のゲートボールをころがるひかり〇 夕暮れがもうすぐ終わる...
「土岐友浩処女歌集『Bootleg』(書肆侃侃房・2015年)」を読む(其のⅤ)
◎ 八月の僕だけがいる教室の机のかどではじけたひかり◎ 発泡スチロールの箱をしずかにかたむけて魚屋が水を捨てるゆうぐれ〇 はてしなくつづく世界の片隅に光のふりそそぐ半夏生◎ ひそやかな暮らしのなかで中継の名人戦を見ているゆうべ◎ ひと言を伝えるようにはらはらと時雨落ち葉をたたいて消える◎ 人びとが代わるがわるに手を伸ばし橋から突き落とされたひかり◎ ぴったりの場所はどこにもないけれど海の浅...
「土岐友浩処女歌集『Bootleg』(書肆侃侃房・2015年)」を読む(其のⅣ)
◎ 例えれば冬のカラオケボックスの電話口から伝える言葉〇 ため息を眺めていたら指差したゆびが消えたら春の花々◎ 台形にととのえられた水田がかぼそく電柱をうつしとる◎ 尽くすほど追いつめているだけなのか言葉は君をすずらん畑◎ つま先を上げてメールをしていたらかかとで立っていたと言われる◎ 摘みとった白詰草のくびすじの、リラックマとかもう飽きました◎ てのひらを風にかざしているようにさびしさは...
「土岐友浩処女歌集『Bootleg』(書肆侃侃房・2015年)」を読む(其のⅢ)
◎ さっきまで鳥がとまっていたような配電線をたどって帰る◎ 習作のようにたなびく秋雲を見ているうすく色が注すまで〇 少年の世界のすべてではないが秋の野山が近づいてくる◎ 自転車はさみしい場所に停められるたとえばテトラポッドの陰に◎ 乗客は乗り込んだのに雨の日のドアをしばらく開けているバス◎ 勧めようとしている本を読み返す傘とかばんを近くに置いて 〇 すずかけの枝葉に傘がぶつかっていちめん...
「土岐友浩処女歌集『Bootleg』(書肆侃侃房・2015年)」を読む(其のⅡ)
〇 階段を転がるように降りていく枯れ葉は風の靴であること〇 帰るときかなり明るくなっているけやき並木をふたたび歩く○ 紙ふぶき大成功の、安田大サーカスというひとつの星座◎ 肝心なことはともかく夏草を見てきたことを話してほしい◎ 来た道を歩いて帰るさっき見た花火のことをずっと話して◎ 牛乳を電子レンジであたためてこれからもつきあってください◎ 空白について考えようとしてそのひとが立つ窓辺を...
「橘夏生第二歌集『大阪ジュリエット』(青磁社・2016年)」を読む(其のⅠ)
○ 肢もとにともるペディキュア 最下級貴族のやうに街を歩かう○ 姉が貼りしポスターはデビッド・ハミルトン少女を噛めば蜜があふるる○ 雨のそらに吹くシャボン玉 夭折の友にはつひに負けただらうか○ 「イグアナの娘」のわれに恋ヲスル日ガ来タルとは母は教えず○ ウォッカを喇叭飲みしてデンデラ野ゆく老婆はたしかにわたくし○ 産みしことなしと答へよ白昼に炎ほむらたちたるさざんくわの群れ○ 襟もとの琅玕...
○ あでやかな鞭となるべし浴室に水仙一茎をわれは見おろす○ 羅(うすもの)をまとへばつねに身になじむわたくしといふ存在はこれ○ 悦楽の悦といふ語に兄といふ文字みつけたる夏のいもうと○ かくて美貌の夏は来たれりまはだかの孔雀を愛でるタマラ・ド・レンピッカ 「タマラ・ド・レンピッカ(フランス語: Tamara de Lempicka、ポーランド語の読みはタマラ・デ・ウェンピツカ、1898年<1895年説や1897年もある>5月16日 ...
「春日真木子第十四歌集『ようこそ明日』(角川書店・2021年)」を読む(其のⅡ)
○ 視神経形成のはじめの青といふ胎内体験誰が覚えゐし○ 白粥を祈りのごとくたちのぼる湯気に託さな今日のわが生○ 震度4 家族五人吾を囲み共に揺られつ老いははぐれつ○ 全力もて車椅子より伸びあがる『正園』手書きの歌稿の前に○ 託されし今生分の女わざまだ足りぬとて厨辺に立つ○ 単調にとび去る時よ目を緩めほとほと遠き太陽を呼ぶ○ 「だいぢやうぶー ? 」問ひくるTELに「生きてます」短く答ふ心は潤ふ○ ...
「春日真木子第十四歌集『ようこそ明日』(角川書店・2021年)」を読む(其のⅠ)
○ ああ今日も二本の足に立ち上がり二本の手もて掴めよ自由○ あこがれに身を焼きながら日々をあれ リルケの一行われのふるさと 平成十五年・盟友高嶋健一逝く○ 朝に夜の電話なつかし健一のつね柔らかき和魂のこゑ○ 足疼き眠れぬ夜半なりおのづから選びてゐたり胎児のポーズ ○ いきしちにいきしちにとぞ生き継ぎて令和に迎ふ初の八月○ 一滴の雫に映る小宇宙いただきたしよこのふくらみを○ いま此...
「大下一真第七歌集『漆桶』(現代短歌社・2021年)」を読む(其のⅢ)
◎ 掃くわれを墓石に止まり見ていしがつまらなそうに鴉の去りぬ 「瑞泉寺の住職めが、今日はどんな理由があって仏心を出したのかは知んないが、庭なんか掃いてやがんの!くそ面白くもないや!」などと呟きながら、件の「鴉」は、材木座海岸方面へと飛び去って行ったのでありましょうか? 吐く吾を向ふ岸にて看てゐしがイタチ飛び込む多摩の水面に ◎ 花びらを踏みて咲きたることを知る白き山茶花墓所掃きに来て ...
「川島喜代詩処女歌集『波動』(歩道文庫・1969年)」を読む(其のⅠ)
○ いづこにも沈丁花の香のただよへる代々木上原の坂多き街○ 海ふかく沈める艦がかぎりなき潮のながれに音ひびくとぞ○ かぎりなき波動のなかに波がしら折ふしにして立てるさびしさ○ 紫雲英(げんげ)田のむかうにみえてかぎりなき海の波動を吾は恋ほしむ○ 秋分のひと日は晴れて遠方にゆくりなき蟬のこゑがきこゆる○ たかはらの遠くかたむく果にして吾より低く青き山みゆ○ 多摩川の流れはここにせばまりて秋日に...
「大下一真第七歌集『漆桶』(現代短歌社・2021年)」を読む(其のⅡ)
〇 咲きて散る花惜しまるる桜木に枝あり幹あり樹皮のざらつき〇 支え合うゆえに「人」とぞ教わりてあるいはぶつかる形とも見ゆ〇 寂しげに白梅笑い口開けて桜笑うと今に知りたり〇 人生に百五歳あり一歳あり新盆の経たんたんと誦す〇 水中を泳ぐ蛙は目を開けておるやおらずや 目薬をさす〇 戦争はいけないというそれだけのことなれどそれだけができない〇 卒塔婆にゆわえられたる鯉のぼり夕べゆらぐは童子の...
「大下一真第七歌集『漆桶』(現代短歌社・2021年)」を読む(其のⅠ)
〇 暁をかなかなの声そろいしがほどなくやみてやがて雨音〇 暁を羽根音重く渡り行く鴉あるいは漆黒の刻〇 暁をふたたび雨の降り出でてかなかなの声消さぬ静かさ〇 紫陽花の首をはねつつこれがかの男ならばと思うてならじ〇 あやまちてあまたの短歌消ししこと唖然沈黙そののち憤怒〇 泡般若・洋般若はビール・ウイスキー 智慧の水とて僧は嗜む〇 言い訳をする時少し口ゆがむ癖は子供の時と変わらぬ〇 盂蘭...
「永田愛処女歌集『アイのオト』(青磁社・2018年)」を読む(其のⅠ)
〇 「愛さんのことをむこうの両親に言うてよ」と父に妹の声 件の「妹」さんの最大の悩みは、自らの姉上が、一般的には結婚生活に適さないと思われる身体的な特質を備えている女性である、ということであり、彼女は、そうした点に就いて、先方の親元に予め了解を得た上で、敬愛する姉上を結婚生活に踏み切らせたいと思っているので、姉上本人に隠れて「愛さんのことをむこうの両親に言うてよ」と、自分自身と姉上との共通の父親...
〇 腹黒き悪人ばらを斬りまくる吾らが正義の味方・鬼平 鳥羽散歩〇 脚赤きペリカンたちが大挙して湖上を翔ける見開き画面〇 喜多さんが送つてくれた蚕豆を皮を剝かずにそのまま食べた〇 参院で国民民主が賛成し補正予算が通貨の模様〇 ドメインが無料だなんて!それは嘘!マジだマジだよマジに無料だ!〇 先般の荒川倉庫の火災にて贅沢かき餅価格高騰〇 酢を塗れば髪が再び生えて来て更年期...
〇 愛されて育った父が新聞やTVニュースと距離をおく夜 山川家もお父さんが子供の頃は家計に恵まれていたので、藍さんのお父さんは両親から愛された大切に育てられていたのであり、その為、藍さんのお父さんは、やれコロナだの、やれウクライナだの、やれ三権の長の一人の衆議院議長がセクハラしただのねって、暗いニュースばかりのっている朝日新聞や東京新聞や毎日新聞、そして、暗いニュースばかり流す、TBSテレビやテレ...
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〇 雨のなか来し風が部屋をとほるときかずかぎりなき蝸牛のけはひ〇 海で生まれた風は昆虫たちの眼がきらきらとする山頂に着く〇 窪地に湛へゐるくらきものより生まれ飛びたつぎらぎらひかる翅たち〇 研究室では科学者たちが金属光を発する向日葵を組立ててゐた〇 さくらばな咲く日近づきやまかげの暗きしみづを蟹かき乱す〇 真赤な雨がふりだしてどんどん草の葉は鳥となり石塊は爬虫類となり〇 ...
〇 廃墟・廃港・廃線・廃市・廃病院・廃家・廃井 あぢさゐのはな〇 泥棒市場(バザール)で買った時計のうごかない秒針のこと、結婚のこと〇 引き潮のときだけ沖にあらはれる教室 今日もおやすみでした〇 ひとつづつ交互に食べるたけのこの里よ 始発はまだまだ来ない〇 ふむぐうと抱きついてくる無表情 これは淋しいときの「ふむぐう」〇 「まつしろなパンダに生まれ変はる夢、これつて何かの罰だと...
〇 倒れない程度に無理をするこつをはやくおぼえてカンガルー、カンガルー〇 大輪の花火はじける五億年後にぼくたちの化石をさがせ〇 地下街で迷子になつたカピバラにフルーツ牛乳おごつてやらう〇 地底湖に落としたカメラ ぎこちないきみの笑顔を閉ぢこめたまま〇 梅雨寒のホット・バタード・ラム熱しやけどの舌をちろつと見せて 〇 点在湖沼を巡るみたいにすこしづつ識るきみのくせ ひろがる波...
〇 借りるビデオも決まらないまま語りあふギズモの耳の唐揚げの味〇 きみどりの目をしたうさぎに一晩中「くぶくりん」つて囁かれてる〇 「このあひだサラダに入れたアボカドの種に芽がでたから見にこない?」〇 この巻尺ぜんぶ伸ばしてみようよと深夜の路上に連れてかれてく〇 「錆」といふ漢字の「円」のとこが好き まだ子どもだと思つてゐたら〇 「生涯にいちどだけ全速力でまはる日がある」観覧...
〇 相手より長生きしようおたがひに(お化けは死なない)約束しよう〇 開けてごらん影絵のやうな家々のどれかひとつはオルゴールだよ〇 朝焼けを見すぎたぼくとやせこけた向日葵それが夏のすべてで〇 あまりにも脆弱なきみを守れずにぼくは葡萄でありつづけてる〇 あられもない寝相で夢をみるきみはまだタイトルの付いてない曲〇 いいことがつづくと怖いといふきみにでんぐり返しで近づいてゆく〇 ...
〇 朝より思ひ出せぬことひとつあり微雨すぎてのち匂ひたつ土〇 明日は雨と書きいだしつつ概況は恋文のやうに滞りをり〇 逢ひにくるやうに毎月ここに来て野末の測器の撥条を巻く〇 あぶら照り照りかへし凪ぐ湖のうへ湖底の水温書きとめてゐつ〇 雨あがりの果実のごとく試料容器(ポリビン)を籠に集めて帰り来にけり〇 あやぶみて見てゐる兄の心にもなり得ずきみの恋を聞きをり〇 いくたびか死...
〇 ゆふぐれてすべては舟になるまでの時間なのだ、といふこゑがする 一艘の笹舟となって谷川を果てしなく流れて行くのが、私たち人間の運命なのである。〇 ユキヤナギ真夜に来たりて白き花こぼしたものかシュレッダーまへ シュレッダーの前に、白いユキヤナギの花を零したのは誰だ! 落花狼藉の振る舞いも此処に至れば、もはや「鬼畜生の振る舞い!」とでも言わなければならないのだ!〇 嫁として帰省をすれば待...
〇 巻き込まれ型のへなちよこ探偵のやうな一日たぶん明日も〇 薪で焚くお風呂があつた祖母の家 火の神様を祖母は見てゐた〇 待つことも待たるることもなき春は水族館にみづを見にゆく 「みづを見にゆく」とは、如何にもナウい水族館見学である。〇 右利きのひとたちだけで設計をしたんだらうな自動改札〇 右向きにふとんで泣けば左眼の涙が一度右眼にはひる〇 ミントタブレットどうでもいいことの...
〇 白菜を白菜がもつ水で煮るいささかむごいレシピを習ふ 考えてみれば自らの水分で煮られるというのは残酷かもしれない。〇 はじまりに光があつてさよならはいつもちひさく照らされてゐた〇 パトラッシュが百匹ゐたら百匹につかれたよつていひたい気分〇 パソコンを片手で打てるようになる納豆巻きを摂取しながら〇 ひかりごと啜る白粥はふはふといのちを生きていのちは産まず〇 ひきずれば死体は...
〇 騙しゑを模写するやうなぼくたちの窓を過よぎつてゆく鳥の影〇 長女つていつも鞄が重いのよ責任感を仕舞ひこむから〇 躑躅咲く目黒行人坂をゆく黙(もだ)と黙とを重ねてのぼる〇 てのひらをうへにむければ雨はふり下にむけても降りやまぬ雨〇 ですよねと電話相手を肯定しわたしを消してゆく会社員 〇 とある朝クリーム色の電話機に変化(へんげ)なしたり受付嬢は 「人件費節減」という名目で...
〇 さくらちるさくらちるとてわたくしは小金を稼ぎ新聞を読む〇 三年ぶりに家にかえれば父親はおののののろとうがひをしており〇 三年をみなとみらいに働いてときどき海を見るのも仕事〇 残業の夜はいろいろ買つてきて食べてゐるプラスチック以外を〇 ししくしろ黄泉で待つとや待たぬとやくづれはじめるまへにあひたい〇 死ぬまでにつかひきれないぐらゐあるわたしの自我とハンドソープは〇 出...
〇 宮川の支流が街をゆっくりと流れて人は歩みを止める〇 むかし砂山なりしところまで牙をむく浸蝕にたじろぐ旅びと五人〇 もういちど呑んで夜明かししたき友 年々に逝きまた一人逝く〇 四十年かかわりてこし編集に如何(どう)ともしがたき視力の衰え〇 稜線のみはるかすまで秋雲の冷気するどくたなびきており〇 隣室の鼾をうけてわが輩もおおかた夜は眠りにつける〇 冷静になれよと目覚む印...
〇 中ゆびと人差しゆびの黄にそみぬ亡父の晩年ほどではなきが〇 ながらみの宝庫の浅瀬 波よけのヘッドランドの無情に佇てり〇 ながらみもなめろうもある白里の小さき店に秋はふかまる〇 咽喉の飢え耐えがたくなり入りし店ビールの喇叭飲みは三十年ぶり〇 呑み過ぎを悔み年ねん編集に倦みて四十年 ままよあれかし〇 「飲みながら癒していきましょう」医師のことば天の韻きのごとく聞ゆる〇 排...
〇 頽唐派歌人が名づけし「タキアラシ」母音の妙はうたびとの技〇 高橋くん小笠原くん小林くん わが朋友は先に逝きたり〇 たった半日ネオンを消してそらぞらし偽善的エコを呼びかくる都市〇 地球的規模の気候の変にやあらむ人為的ならむや 海は応えず〇 千里浜や九十九里浜はた日向灘浸蝕は日々の津波でもある〇 塚本邦雄存命ならば何と言わむ口語・パソコン・メール短歌を〇 塚本邦雄、菱川...
〇 酒の旨き生の苦きを知るほどに解明できぬわれならなくに〇 佐原を過ぎ香取を過ぎて吹くかぜは大利根川の秋のはこびや〇 散歩後は況してさわやか昼の酒ストップできぬわが癖あわれ〇 然り然り酒呑みヘビースモーカー老いて摂生に努めんとせず〇 焼酎に煮込みとおでん 定番なれど屋台の味はしみじみ旨し〇 焼酎を三杯にウーロン杯を追加せし自家製塩辛のトロの味する〇 白里(しらさと)と呼ば...
〇 安全な立場にあればようやくに本音を語る空がおりくる 〇 腕時計して午睡するふたしかさ秋の空気が全身つつむ〇 帰省する若き部下ありいえづとに長もち持たせ背中をたたく〇 心証はかぎりなくクロ 海の名の酒でも出して自白を待つか 〇 たまさかに語気を強めて指示すれば翌朝休むと電話がありぬ 〇 仲介の腕まだ錆びつかずあることを両者一歩も譲らざる場に 〇 遠つ人先ゆく雁は風を...
〇 アンコール演奏曲を弾きしのち不二子のやうに君去りゆけり〇 行きつけのカフェの給仕と初めての握手を交はすテロの翌朝〇 こんな日は博物館を訪ひてドードー鳥の骨かぞえたし〇 サルビアは深紅に咲けり病院が元病院となりたる今も〇 サンマルタン運河は夏のきらめきを注ぎて白き船を持ち上ぐ〇 道化師が片手をあげる逆立ちの姿のままで片手をあげる〇 二年目のパリの夜なれば驚かず青き火を...
〇 新しい生活様式とはいかに雌松の伸びし今年の枝の〇 いにしへのころより路は斑猫にしたがへばよし晴れてゐる日は〇 インドネシアの議長の声がドビューンドドビューンとしか聞こえない〇 鍵を持つわたしがいつかやつてきて扉を開けてくれるだらうか〇 カマキリに食はれて終はる夏の日のあたまを去らずそれも人生〇 鴨川のデルタのうへのなつぞらをリリエンタール七世が飛ぶ〇 今日もまた入つ...
〇 旅人のわれは味わうあしひきの会津のやまのコクワひとつぶ〇 とりたての香魚香草香茸を使って今宵の料理をつくる〇 生栗を五つほど入れわがからだ午後五時半のバスタブに浮く〇 濡れないように包んでとどく朝刊の記事一面が豪雨災害〇 働けばしあわせになると信じつつ生きてきたりぬ昭和の時代は〇 八十歳を超える三井ゆきさんの騎乗のアレキサンダーアモの歩みぞ〇 『バカの壁』再読しおれ...
〇 カエル鳴きセミ鳴きウシ鳴くわが里にきみ嫁ぎ来て四人子をなす〇 火葬場担当でありし若き日死者を焼く原価を計算せしことのあり〇 学習すれば俳句は身に付きますが短歌にはそういう装置はあらず〇 九十歳まで生きた葛飾北斎は七十歳から本領発揮す〇 組内の葬儀三つを段取りて二〇一九年暮れゆきにけり〇 クレソンが収穫可能とメール打つ九月三十日朝霧たちて〇 ここの地を飛び立つ戦闘機に...
読解なくして論評あらず。
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