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2018/12/24

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  • 「島楓果処女歌集『すべてのものは優しさをもつ』(ナナロク社・2022年)」を捲る(其のⅠ)

    〇 相槌をうつタイミングがわからなくなってなんにも聞こえなくなる 「相槌をうつタイミングがわからなくなって」しまうこと自体は人間ならば誰でも体験することではあるが、そうした時に「なんにも聞こえなくなる」ことは、万人が万人、経験することではありません。もしも作者自身がそうした状態に陥ることが多い人間であるとするならば、作者は俗に云う「固まり型人間」なんでしょう。 今こそは相槌を打つタイミ...

  • 寺山修司の「地獄」 決定版(少なからず字句の訂正箇所あり)

    〇 兎追ふこともなかりき故里の銭湯地獄の壁の繪の山(田園に死す/少年時代) 街に銭湯が少なくなり、入浴設備の無い安アパート住まいの貧乏学生やサラリーマンなどが困っていて、社会問題化されている、とか? 斯く申す私・鳥羽散歩などは、大学なる後期高等教育を施す施設に入獄するための受験料を肇として学費一切、生活資金の大半をアルバイトで稼いで賄っていたから、謂わば貧乏学生中の貧乏学生であった。 だが、幸い...

  • 「『りとむ・創刊30周記念号』所収の『寺山修司短歌語彙』」を読む 執筆途上にて失禁!

    昨日・一月十七日の午前九時過ぎに、私は女房と連れ立ってイオン新百合ヶ丘店に食料品の買い出しに出掛けました。 実を言うと、「これから食糧の買い出しに出掛けるぞ!」といった気分で大風呂敷をふところに入れ、しかも、わざわざバスにまで乗って買い物に出掛けたのは、年が明けてから昨日が最初なのである。 と云うのは、昨年末の三十日と三十一日の二日間に件のイオン新百合ヶ丘店、及び、三和百合丘店にて、食品を肇とし...

  • 随想『ミュンヘン・サッポロ・ミルウォーキー』

    「ミュンヘン・サッポロ・ミルウォーキー」ってヤツが確かにありましたよね!今となっては何を言ってんだかわかんなくなってしまいましたが、あれは当代不人気の「サッポロビール」が「これ一発で起死回生を図らん」とばかりに人気タレントを起用して歌わせた<コマソン>だったんでしょうが、一年遅れの西暦2021年に、東京どころか横浜市や千葉市やさいたま市や首都圏内の県庁所在地、否、それどころか、東日本大震災の被災地...

  • 舌代!

    抱腹絶倒の「短歌バラエティ『引揚船、興安丸でお世話になった邑居さん!』」に続いて、その続編とも謂うべき、「随想『尋ね人の時間』」が、本日午後、北方四島以西の日本国内に於いて、恥かしながら一般公開の運びとは相成りましたから、拙ブログ「詩歌句誌面」の読者諸氏に於かれましては、何卒、ご高覧賜りたくお披露目申し上げます。...

  • 『尋ね人の時間』

    日本初のラジオ放送は、1925(大正15)年3月22日9時30分に社団法人東京放送局(JOAK:現在のNHK東京ラジオ第1放送)が東京・芝浦の東京高等工芸学校(千葉大学工学部の前身)内に設けた仮送信所から発した京田武男アナウンサーによるもので、第一声は 、「アーアー、聞こえますか。……JOAK、JOAK、こちらは東京放送局であります。こんにち只今より放送を開始致します」であった、と云う。 波長はが375m(周波数800kHz)、空中線電...

  • 今日の五首

    〇 縷々に亙れる言ひ訳も通るはづ無き今井瑠々なほ二十五歳! 「青二才」というべき場面なるも、「青二才」なるは「未熟な男性」を指して云う差別語ならむ?〇 立憲を見限り自民へ鞍替へし県議出馬のじやじゃ馬ならし! 勢い余って「じゃじゃ馬ならし」と、余計な「ならし」を付けてしまいましたが、「じゃじゃ馬ならし」は、皆さまご存じのウィリアム・シェイクスピアによる喜劇のタイトルである。 将来性を見込んで...

  • 今日の一首

    〇 米国の異例の厚遇強調す?開成なんでの岸田総理大臣! 二嶋 結...

  • 引揚船、興安丸でお世話になった邑居さん!

    星の流れに 身を占なって 何処をねぐらの 今日の宿 荒む心で いるのじゃないが 泣けて涙も 涸れ果てた こんな女に 誰がした 煙草ふかして 口笛ふいて あてもない夜の さすらいに 人は見返える わが身は細る 町の灯影の わびしさよ こんな女に 誰がした ...

  • 明日の即席詠十首

    〇 時代劇 大河ドラマは視る気なし主役が彼では虫唾が走る 二嶋 結〇 家康は狸親父がいいところ気弱な家康幕府作れぬ〇 家康があんな気弱な武将なら石田三成負けないはづだ〇 政宗も背いたはづだ身内から寝返りする者続出したはづ〇 九州の島津・細川・加藤らが反逆したら「どうする家康」〇 正室の築山殿に「瀬名」なんて尤もらしい名前つけるな!〇 阿部寛(アベカン) が武田信玄演じ...

  • 今日の駄作十五首 〰ヨシヒデが首相になろうが辞めようがオラにとつてはただのヨシヒデ〰

    〇 ヨシヒデが首相になろうが辞めようがオラにとつてはただのヨシヒデ〇 二部卒や集団就職うそだつた!オラにとつてのただのヨシヒデ!〇 ふるさとの湯沢駅(ゆざわうまや)に建つはずの胸像包むブルーシートよ!〇 胸像の建立プランを一頓挫させた事さへ汝の勲功!〇 胸像の建立プランも一頓挫!次に打つ手は何かな彼の?〇 愚息をば政務秘書官に任用せしは彼のヨシヒデの人たる由縁?〇 長男を...

  • 明日の十首

    『元宰相の最たる勲(いさを)』 二嶋 結〇 自らの統一教会疑惑を顕現せしめしは元宰相の最たる勲〇 凶弾に逝きにしことは咎なきも外祖父以来の蜜月悔し〇 銃撃殺せられにし自体は罪なきも「モリ・カケ・桜・統一教会」〇 昇天し神様の座にましませば己が罪業を悔いゐるならむ〇 己が過ちをあからさまにせず逝きたれば何処さまよふ元宰相の魂(たま)〇 奈良地検「責任能力認むる」...

  • 今朝の一首

    〇 「喜多さまのご無事を知りて休心」とばーばむらさき様よりメール 二嶋 結...

  • 今日の五十余首 二嶋結作『農家さん』

    『農家さん』 二嶋 結〇 病院の六人部屋の入口に「さん付け名札」を掛けてた昭和〇 火葬場の竈の前に「さん付き」の名札を掛くる悪しき習俗〇 農家さん!何んと云ふても農家さん!金融機関が「さん付け」で呼ぶ! 〇 農家さん!上々得意の農家さん!頭取までも「さん付け」で呼ぶ!〇 農家さん!お巡りさんに芸妓さん!さん付け呼ばはりさるる職業?〇 農家さん!お猿さん且つ喜多...

  • ご立派さん

    昨日の午後二時過ぎに「ばーばむらさき」様から、「喜多さまがご無事でいらっしゃいますように。早くご連絡があるといいですね。さだまさしの歌には心惹かれる歌詞が多いですね。私はなぜか<精霊流し>を聴くと涙ぐんでしまいます」という、真に丁重至極なる御コメントを頂戴致しました。 実を申し上げますと、<ばーばむらさき>様から前掲の如き御コメントを頂戴した三十分後に、件の<喜多さま>から、当「詩歌句誌面」宛て...

  • あさよみ

    『案山子』 作詞・作曲 さだ まさし 元気でいるか 街には慣れたか 友達できたか 寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る 城跡から見下ろせば 蒼く細い河 橋のたもとに 造り酒屋のレンガ煙突 この街を綿菓子に 染め抜いた雪が 消えればお前が ここから出て 初めての春 手紙が無理なら 電話でもいい 金頼むの 一言でもい...

  • 今日の一首

    〇 原発再稼働反対デモに湧く茱萸坂に取り残されたミトンの弓手 二嶋 結 昨今の我が国に於いては、「反体制的デモ行進」らしい「デモ行進」を目にする機会が極めて少なくなりましだが、掲出の一首の題材となったのは、先年、「茱萸坂」を中心とした国会周辺で行われた「原発再稼働反対デモ」である。 八十路坂の半ばを行く今となっては、すっかり老いさらばえてしまった私ではありますが、その当時の私は、今と違って...

  • 三十余首連作『郷里・旧喩騒町を歌う』

    『郷里・旧喩騒町を歌う』 二嶋 結〇 「ミヨシギセル」の発見者たる三好氏は佐竹南家の藩医の末裔!〇 三好氏の隣り屋敷は同級生・渡部杏子の生家の病院〇 夏至来れば柘榴の珠の割れるころ渡辺病院黒塀越しの〇 黒塀に縋りて柘榴を捥ぎ取るは悪たれ小僧の永沢庄司〇 鹿子畑とふ変な苗字の級友も既に黄泉路をたどる存在〇 創業は元和元年!ご破算の木村酒造の惣領息子〇 元来は...

  • 昔なつかしきリバイバル短歌一首

    〇 落ち蟬の骸(むくろ)つぶれてシャッター街 おらが総理は既に死に体 二嶋 結 九月初めの土日に、私は、凡そ十年ぶりに生まれ故郷の秋田県湯沢市に帰省した。 山形新幹線の新庄駅で奥羽本線の鈍行に乗り換え、秋田県側に入ってから二つ目の横堀駅が現総理・菅義偉氏の故郷駅であり、私の下車駅は、それから三つ目の湯沢駅である。 湯沢駅で下車し、駅前通りを五分ほど進み、大町と柳町の境目の交差点を左折してから...

  • 明日の十二首

    十二首連作「成城臼井の有料レジ袋」 二嶋 結〇 風立ちぬ!お腹膨れぬ!飛び去りぬ!<成城臼井>の有料レジ袋!〇 成城学園前駅・駅前の果物店が前身だとはややややこしい!〇 お高くて毛嫌いされてる臼井嬢「性情薄い!」と囃され泣いた!〇 紀ノ国屋・明治屋ぐらいは眼じやないぜ!盛者必衰<成城臼井>!〇 BENZ以外は駐車禁止と聞いてたが、成城臼井の駐車場 !〇 「BENZほか外...

  • 今日の一首

    〇 テレ朝の清張ドラマの暗闇に東北新社のクレジット見き 二嶋 結(ふたしま ゆい) 「総合」は勿論の事、NHKの「Eテレ」までも国営放送化し、痴呆化してしまった現在、私たち日本の庶民階級の間には、民放テレビに対する期待感が益々高まる一方である! 然しながら、同じように民放テレビと言えども「ふじテレ」や「日テレ」はバックボーンの新聞社が「サンケイ」であり、「読売」であるから、「NHK」よりはいく...

  • 連作六十余首

    二嶋結作『花は何処へ行つた(〜Where Have All the Flowers Gone〜 )』 ⁅令和改訂決定版⁆ 〇 戦場(いくさば)の兵士幾人(いくたり)胸に抱きピート・シガーはバンジョを奏づ〇 キングストン・トリオが歌ふ PPMもジョーン・バエズも歌ふ 花はどこへ行つた〇 禱るごとく恨むがごとく壁に滲む マレーネ・ディートリッヒの嗄(しはが)れた聲〇 アマランサスのやうなドレスに身を包み誰を睨むかカタリー...

  • 今日の三十余首(令和版・仮名手本忠臣蔵)

    「仮名手本忠臣蔵(令和新版)」 鳥羽散歩作〇 積年の恨み重なる吉良上野介義央を討たむは今日ぞ!〇 時ぞ今!今宵この時この機会!ビックチャンスを逃すな浪士!〇 折も折 恨み浄むる雪ぞ降る!元禄年間師走の半ば!〇 武装した四十七人ひたすらに声を潜めて松坂町へ!〇 気は急くも雪道寒く凍えさう四十七士に遠き吉良邸!〇 極月の花のお江戸に降る雪に赤穂浪士の恨みは募る!〇 ...

  • 今日の二十首

    〇 『饗宴』は岩波文庫で星一つ!星が二つの『病臥漫録』! 鳥羽散歩〇 湧かし湯の温泉宿で猫舌の男が呑んだ熱燗五合〇 ダルビッシュ・鈴木・大谷・吉田まで侍ジャパンのメジャーリーガー〇 <家庭内野党>名乗りし過去を捨てマノン・レスコオ遺産相続〇 性悪な女性マノン・レスコオは新大陸に追放すべし〇 初節句 雛人形を求めむと岩槻市へと急がむノラは〇 エコバック畳み抱えてイオンま...

  • 今日の一首

    〇 「フグの仔のシラスの中に混じりゐて食ぶると死ぬ」といふ伝へあり 鳥羽散歩 上掲の一首は、本日付けの朝日新聞朝刊の記事に取材したものであるが、「シラスの中に何か異種の魚の仔が混入している」こと自体は、少年時より知悉していて、それを見つけ出すのがその頃の私の楽しみの一つでありました。 以下の話は、私が神奈川県立の高校の国語教師となってからのことでありますが、その頃、私が高校一年生を相手に指...

  • 今日の一首

    〇 その死もて露見せしめし疑惑こそ元宰相の功績の一 鳥羽散歩 凶弾に倒れた元総理大臣の我が国政に於ける存在を顧みるに、その功罪は相半ばして、曰く言い難いものがあります。 然し乍ら、過ぐる秋の衆議院議員選出選挙期間中、彼自らが凶賊の邪悪なる弾丸に倒るるをもて統一教会と自由民主党議員などの政治屋との邪き関りの一部を露見せしめ得たることこそ、今は亡き安倍晋三氏の政治上の功績の一つに数え上ぐるべき...

  • 今日の一首

    〇 不思議だな?娘・沙也加の納骨に母の聖子は姿を見せず 鳥羽散歩 今日の「今日の一首」は、定番の「朝日新聞に掲載された週刊誌の紙面広告の見出しから取材した短歌」シリーズ中の一首である。 掲出の一首の初案は「不思議だな?神田沙也加の納骨に松田聖子の姿が見えず」であったが、再度熟慮した挙句に、「死者の<神田沙也加>と<愛娘の納骨式.にさえ臨席しようとしないが故に、物見高い週刊文春に批判記事を掲...

  • 今日の一首

    〇 青学の第五区・脇田コータロー抜かされ喘ぐ小涌園前 鳥羽散歩〇 青学の第五区ランナー幸太朗最初で最後の涙の力走 今年度の箱根駅伝は、前年度覇者・青山学院の前評判が最悪であった! 察するに、その原因たるや、 原晋監督が選手たちの練習に付き合いもせずにマスコミに顔を出したりするからなのであり。私たち箱根駅伝ファンとて、原晋監督のあのようなテイタラクを前にしては、青山学院大学駅伝部を見限ら...

  • 「岡本真帆処女歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社・2022年)」を読む(其のⅦ)

    〇 混ぜる人見る人うまく返す人 きょうは豚玉そとは五月雨〇 まだ何かあるんじゃないかと期待するエンドロールの後の一瞬〇 間違えて犬の名で呼ぶ間違えて呼ばれたきみがわんと答える〇 まぼろしのマトリョーシカを開け放ちあなたと会った日の花ふぶき〇 無駄こそが全てと思う消えていく雲に名前をつける夕暮れ〇 もう会うことはないだろうきみ 冬空の一等星は光り続ける〇 もう君が来なくっ...

  • 「岡本真帆処女歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社・2022年)」を読む(其のⅥ)

    〇 働いて眠って起きて働いて擦り減るここは安全な場所〇 花かんむり一輪ぬけばたちまちにこぼれてしまう時計のように〇 半身が足りないままで生きていく心はレモンサワーのくし切り〇 売春と言ってあなたが差し出した小さな白い花を買う春〇 パチパチするアイス食べよういつか死ぬことも忘れてしまう夕暮れ〇 ひとしきり笑って告げる「ゆめだね」で雪があなたをとじこめてゆく〇 火にかけて殺...

  • 「岡本真帆処女歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社・2022年)」を読む(其のⅤ)

    〇 泣きたくない、鼻詰まるから その声がもう鼻声で笑ってしまう〇 南極に宇宙に渋谷駅前にわたしはきみをひとりにしない〇 何度でもめぐる真夏のいちにちよまたカルピスの比率教えて〇 にぎやかな四人が乗車して限りなく透明になる運転手〇 偽物の山手線の駅名を二人で挙げる4時のカラ館〇 ねむってる駅ねむってる白い街ともだちだけどしたねむいキス...

  • 「岡本真帆処女歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社・2022年)」を読む(其のⅣ)

    〇 立ち止まる季節と思う青になるまでの時間に降り注ぐ秋〇 食べてみる?差し出したのがなんなのか確かめもせず君は頬張る〇 卵かけごはんの世界から人が消えれば卵かけられごはん〇 だいたいの30cm示すとき手と手にまぼろしの竹定規〇 誰からの誰への祝いなんだろうひとりで持て余す祝日は〇 地下鉄はぼんやり光る住んでいた街にもうすぐ雨雲が着く〇 ていねいなくらしにすがりつくように、私...

  • 「岡本真帆処女歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社・2022年)」を読む(其のⅢ)

    〇 さわれないたとえのひとつ反対の車線を走り去るターャジス〇 3、2、1ぱちんで全部忘れるよって今のは説明だから泣くなよ〇 ザネリにもいつか安眠できる日は来るのだろうか 虹の匂いだ〇 死にたいとそっと吐き出すため息の軽さで少し進む笹舟〇 締めていたはずのキャップを炭酸は抜けて潮風いつか忘れる〇 シルバニア家族が肩を寄せ合ってメルカリに出るための一枚〇 水上の乗り物からは...

  • 今日の一首

    〇 監督が名士面(めいしづら)して出しやばつて選手集めるアオガク負けろ! 謹賀新年も二日目! 正月に付き物のお節料理は勿論!マグロのトロも酢蛸も鯉の甘煮も食べ飽きてしまいましたし、入れ歯なのでお餅は元々食べられません! ところで、正月の二日と言えば「箱根駅伝」ですね! 大方の予想では、「今年はあの坊主大学がぶっちぎり優勝するだろう」とのことでありますが、「監督が金の草鞋を履いて日本全国から韋駄天...

  • 年頭の一首

    〇 着ぶれくて熟女狗ひき大宮の氷川神社の歳旦祭 鳥羽散歩 「氷川神社」は、埼玉県さいたま市大宮区高鼻町に在る武蔵国一宮を称する式内社。旧社格は官幣大社で、現在は神社本庁の別表神社。宮中の四方拝で遥拝される神社の1つ。東京都・埼玉県近辺に約280社ある氷川神社の総本社である。他の氷川神社と区別する際は「大宮氷川神社」とも呼ばれる。 埼玉県・東京都の荒川流域、特に旧武蔵国足立郡を中心にした地域には...

  • 大晦日の一首

    〇 本年はお節料理を高直(こうじき)で大晦日(おおつごもり)は合はぬ算用 鳥羽散歩⁅註⁆ 『大晦日は合はぬ算用』は、井原西鶴作『西鶴諸国ばなし』(巻Ⅲ)所収の短編小説であり、その概要を示すと、「ある浪人たちが宴会を開いた。客は七人。主催者も客も浪人である。宴会の途中、主催者の持っていた小判十両を包み紙ごと客に見せ、宴会の終わりに回収して枚数を確認したら、なんと一両足りず九両である。客たちの間に...

  • 今日の一首

    〇 老いぬれば朽木の洞に身を投げて命絶つとふ雀かなしも 鳥羽散歩 敗戦後のどさくさの最中に小学校に入学した私の夢のひとつに「焼き鳥をたらふく食う」ということがあった。 都会とは幾分事情が異なるが、北国の田舎町の住人である私たちは、年から年中お腹を空かしていて、その頃、町のあちこちに出来初めた一杯飲み屋の賑わいと、そのつまみの焼き鳥は、欠食児童の一人であった私の憧れだったのだ。 嘘か真かは...

  • 哀悼 篠弘 「独りして立つ」(<短歌>2022年・11月号掲載)を読む

    「独りして立つ」 篠 弘(まひる野)〇 カーテンにくれなゐきざす早暁にさやけき秋の日照を待つ〇 生涯の実像おほむね迫りきて腕時計の電池入れ替へにゆく〇 くづれたる歌書のたぐひを積み直し生きなづみくる齢と思ふ〇 時かけて歩みきたりて噴水のさわだつ池のおもて眩しむ〇 冷え込める季のはざまに食細くなりて迎ふる最熟年は〇 台風のそのつど洪水に亡くなりし御霊と会ひて去ら...

  • まままま

    〇 まがふなく人間われがただよひてデスクの隅のゴム輪を蒐む〇 麦畑の昏るるをゑがくゴッホの絵炎の芯が盛りあがりゐつ〇 酩酊のポーズをとりし背の芯に浴びせられたる声を忘れず〇 目薬の溢るるしづく掌に拭ふさびしきさまを二度くりかへす〇 芽ぶきそめて枯れし二本の白樺にこだはりてゐる中年われが〇 夕映ゆるさきがけとして柿の苗ひかりの列が立ち上がりたり〇 よどみなく企画の決まる感...

  • たたたた

    〇 大戦を凌ぎしレニングラードの白夜にうるむ星を仰げり〇 大理石の碧きを踏みて至福なる旅人われはダ・ヴィンチに立つ〇 宙吊りに窓拭くさまを目に入れて磯田光一の論を読みつぐ 〇 ドラえもんを「機械猫」と意訳して人民美術社そのままを出す 〇 のぼりゆく春の樹液の音を詠むこの帰郷者のことばがたぎつ〇 花の季の蜂の羽音にのぼりくるエレベータのボタンを押せり〇 はるかなるタワーに赤...

  • しししし

    〇 システムにしだいに与し損ねたる古代朝鮮史まなべる友が〇 疾風のしるきタべは昏れずして花狂(ふ)れそむる桐を見下ろす〇 首都高速のサイドをくねる神田川汚れしといへ雨脚ひかる 〇 主義なべて逆転しゆく呻吟にこの寒中は身にし沁むまで〇 知る顔のひとりとてなきロビーより留守番電話の妻の声きく 〇 十年を経て明るめる晩餐図聖(セイ)マタイそのたしかなる顎〇 数枚のコピーのずれを...

  • 哀悼 「篠弘第四歌集『至福の旅びと』(砂子屋書房・1994年)」を読む(其のⅠ)

    〇 いまだ解かぬ梱包ならぶ窓に見つテニスコートの白線のぶれ〇 会合にありて発言の機を待つに椅子軋ましむ若き一人が〇 海上にもの音ひとつなき刹那モノレールが金の鎖つらぬる〇 還らざるひと日は過ぎむ指をもてグラスにあそぶ氷片掬ふ 〇 返りくることばを待たむ直截に応ずる人は危ふかれども〇 革命の遺産となりし透きとほるスラヴをとめの白鳥の脚〇 簡潔につたふる若き通訳のことばは何...

  • 「内藤明第六歌集『薄明の窓』(砂子屋書房・2018年)」を読む(其のⅥ) 「歌集」という暗室の縛りから逃れ得た時、一首の歌は如何ほどの媚態を示し得るか?

    〇 まだ少し時間があれば聴かむとす野の鳥のこゑ梢吹く風 〇 むかしむかし水を湛ふる星ありと祖母が語りし日の繰れ方〇 もう少しゆけばかならず楽になる楽になるとぞ歩み来たれる 〇 もしやわれ躁にてあらむか次々と安請け合ひを重ねきたりぬ〇 やり直しきかぬ齢と知る時に空也の脛を思はざらめや〇 夕鶴の一羽飛び立つまぼろしを二十二階の窓に追ひゆく〇 ゆつくりとカッターの刃を押し出し...

  • 「内藤明第六歌集『薄明の窓』(砂子屋書房・2018年)」を読む(其のⅤ) 「歌集」という暗室の縛りから逃れ得た時、一首の歌は如何ほどの媚態を示し得るか?

    〇 夏草のやがて覆へる道ならむ近き記憶のかへることなし〇 並木道銀杏の葉より落ちる雨ときおり傘を強く打ちたり〇 韮の花白く浮き立つかたはらを汗垂りながらいづくへ帰る〇 伸びをして隣を見れば眼鏡なき猫の時間に秋の日は射す〇 花にあそび風とたはむれ水分の社の庭にまなこを瞑る〇 玻璃のそと渡り廊下を行く人は両手に髪を押さへつつゆく〇 春の雪遠く降るらしケータイの着信ランプが点...

  • 「内藤明第六歌集『薄明の窓』(砂子屋書房・2018年)」を読む(其のⅣ) 「歌集」という暗室の縛りから逃れ得た時、一首の歌は如何ほどの媚態を示し得るか?

    〇 絶え絶えに闇の底よりひびき来る消音(サイレント)ピアノの鍵盤(キー)敲く音〇 愉しかる一日なりけり事どもの軽き重きを問はざりしゆゑ〇 溜息のわれの口よりいづるらし夜の電車に四囲を見回す〇 通過点か行き着く先かわからねど死といふものがありて安らぐ〇 突つ立ちて葦吹く風を見てゐたり流され来たる朝のごとくに〇 手の甲に首の寝汗をぬぐひをりさを知らぬ中年のくび〇 天に向きは...

  • 「内藤明第六歌集『薄明の窓』(砂子屋書房・2018年)」を読む(其のⅢ) 「歌集」という暗室の縛りから逃れ得た時、一首の歌は如何ほどの媚態を示し得るか?

    〇 酒の味わかりはせぬが塩ありて豆腐のありてこの秋の夜〇 食卓を裏より見ればわが位置にビスの一つが外れてゐたり〇 「人類はまた戦ふよ」といひしとぞ空穂を想ひ忠一を思ふ〇 少しづつ形くづれてゆく雲かわれは見てをり眼の冴ゆるまで〇 それぞれの猫に七癖あるもので雑誌の小口で爪研ぐ夢二〇 存分に楽しみしゆゑ割れるのを待たずに捨てむ緑のグラス...

  • 「内藤明第六歌集『薄明の窓』(砂子屋書房・2018年)」を読む(其のⅡ) 「歌集」という暗室の縛りから逃れ得た時、一首の歌は如何ほどの媚態を示し得るか?

    〇 壁を指し鼠が走るといふ人の言をうべなふ、ねずみがはしる〇 感情が内へ内へと吸ひこまれ身動きとれぬからだなるべし〇 菊姫で口を浄めてのどぐろのねめる刺身を舌に載せたり〇 奇つ怪な形のままにふくらみて紙のマスクがベンチにわらふ〇 吉凶の間を生きゐて愉しかり灯火照らし自転車を漕ぐ〇 貴婦人の絹を紡ぎてはしけやし戦の船を購ひたりき〇 決めかねるこころを持ちて雨の道歩けば鳥の...

  • 哀悼 歌人・篠弘

    『電話会議に』 篠弘(まひる野)○ 柔らかき耳朶を指に揉みながら探しつづくる書棚のはざまに 作者ご自身の性癖とでも云うべき、日常生活の場面での何気ない動作。 「書棚のはざま」にネクタイピンや五百円玉などの小さなものを落としてしまうことはよくあることである。 そのうちに拾うつもりがそのままになってしまった子猫の指輪 ○ 必ずや出でてくるなり探さねばならぬ資料のあと二、三あり 結社の...

  • あさよみ 書き込み途上ではありますが、小用のため暫らくのあいだ失礼いたします。

    ディサービスの日 妹尾倫良 机に つっぷしている 若い女性スタッフとのおしゃべりも 戯れも いやだという 朝の体操も脳トレゲームも拒否 その真中に くず入れを放り投げた ━━やめえ そんなバカなことが できるか わしゃあ大学出じゃぞ 誰にも当らなかった 少尉どの歯の調子がよ...

  • あさよみ

    「小詩集」より 北村太郎 1 部屋に入って 少したって レモンがあるのに 気づく 痛みがあって やがて傷を見つける それは おそろしいことだ 時間は どの部分も遅れている 2 五月はみがかれた緑の耳飾り 二月は罐をける小さな靴 八月は錆びた西洋剃刀に裂かれた魚 3 夜 ...

  • あさよみ

    静物 吉岡実 夜の器の硬い面の内で あざやかさを増してくる 秋のくだもの りんごや梨やぶどうの類 それぞれは かさなったままの姿勢で 眠りへ ひとつの諧調へ 大いなる音楽へと添うてゆく めいめいの最も深いところへ至り 核はおもむろによこたわる そのまわりを めぐる豊かな腐爛の時...

  • あさよみ

    ただ過ぎ去るために 黒田三郎 Ⅰ 給料日を過ぎて 十日もすると 貧しい給料生活者の悉くは 次の給料日に集中してゆく カレンダーの小奇麗な紙を乱暴にめくりとる あと十九日 あと十八日と それを ただめくりとりさえすれば すべてがよくなるかのように あれからもう十年になる! 引揚船の油塗れ...

  • 「三枝昂之第十三歌集『遅速あり』(砂子屋書房・2019年)」を読む(其のⅠ)

    〇 哀楽を歌にかえたるやすらぎを想いて新聞選歌を終える 日経歌壇の選者としての実体験に取材した一首。実を申し上げますと、私もいつの年か、たまたま物は試しとばかりに投稿した作品が三枝昂之選の二席に入選し、存外のお褒めに預かったことがありました。 その折の私の場合も、「哀楽を歌にかえたるやすらぎ」に浸っていたのでありましょうか? 今となっては、何もかにも分からなくなってしまいました。〇 あした...

  • 「三枝昂之第十三歌集『遅速あり』(砂子屋書房・2019年)」を読む(其のⅥ)

    〇 まず風が、それから鳥が、やがて人が、はるか遅れて国が来し島〇 眉に雪 多摩丘陵が帰りゆくわれらが棄てし森の時間に 〇 水張田となりてととのう出羽の国かなたに雪の月山を置き〇 むきむきに角のとれたる消しゴムの出番少なき大小三つ〇 もうニュースは消しておのれに戻りたり非力な非力な言葉のために〇 桃の花咲く明るさや母の知らぬわれを歩みて十七回忌〇 呼びかけし心を今に受...

  • 「三枝昂之第十三歌集『遅速あり』(砂子屋書房・2019年)」を読む(其のⅤ)

    〇 七草に六つ足りないなずな粥この世に二人して食む〇 菜を刻む音かつぶしを削る音たぎりはじめる焙烙の音〇 農鳥はもう現れる…追いかけて追われて甲斐の二月三月 〇 肺年齢は大丈夫らしい呼気吸気いまだ冷たき空へと歩む〇 二十日月の明るさを言うメールありいつの世も人は人に告げたき〇 母の背で揺れながら見し花火あり甲府七夕大空襲の 〇 早過ぎたtake off だよ冬枯れの滑走路には夕日...

  • 「三枝昂之第十三歌集『遅速あり』(砂子屋書房・2019年)」を読む(其のⅣ)

    ○ 食べること飲むことそして歩くこと冬陽のように人恋うること〇 たんかんを分け合って食む五十年前の童女と童子にもどり〇 散る梅を流れる雪と見るこころ万葉集五の大友旅人〇 手のなかに胡桃ふた粒まろばせるふるさと甲斐のよき音がする〇 てのひらに一錠のせるあめつちの金木犀が散り敷くあした〇 てのひらに釘を打つ音雨の音いまもさまようわれらであろう〇 天頂を翔ぶ白鳥座また人を喪う...

  • 「三枝昂之第十三歌集『遅速あり』(砂子屋書房・2019年)」を読む(其のⅢ)

    〇 最初から廃墟であった青空の人民共和国という夢〇 里山に木の葉すくいて挙がる声おのこごの声その父の声〇 実朝がマッカーサーが今日われが仰ぐさねさしさがみの茜〇 シジュウカラに向日葵の種われに空メジロにみかん年が始まる〇 秋明菊は天上の花人々の粒々辛苦の外に咲く白〇 身体の不如意が一つ増えたことよき人が二人世を去りしこと〇 新米が届きて思う刈田という広さに帰る関東平野 ...

  • 「三枝昂之第十三歌集『遅速あり』(砂子屋書房・2019年)」を読む(其のⅡ)

    〇 甲斐が嶺の枯露柿を食み粉をこぼす多摩丘陵の夜の机上に〇 〈革命と恋〉という遠きこころざしもとより夏草ばかりであった〇 翳りなきあかるさとして素枯れたる一樹一樹も甲斐のみほとけ〇 河口まで三十二キロ堰堤はコサギ三羽を置きてせせらぐ〇 風を生むクロスバイクと漕ぐ脚とひかり隈なき河口へ走る〇 かたわらに居たのだろうか逝く水の面影橋の春のひととき〇 落葉松の針をつまみて手に...

  • あさよみ

    ⁅防衛費の増額⁆ 看過できぬ言行不一致 防衛力の強化をめぐり、岸田首相は「内容と予算、財源を一体で議論する」と再三繰り返してきた。しかし実際には「規模ありき」の予算に身の丈を超えた内容を詰め込み、肝心の財源は実体を欠くままでの見切り発車になった。重大な言行不一致であり、看過できない。 首相はおとといの安保関連3文書決定後の会見で、防衛費の安定財源確保について「今を生きる我々が未来の世...

  • あさよみ

    空蟬 作詩・作曲:さだまさし 名も知らぬ駅の待合室で 僕の前には年老いた夫婦 足元に力無く寝そべった 仔犬だけを現世(うつせみ)の道連れに 小さな肩寄せ合って 古新聞からおむすび 灰の中の埋火おこすように 頼りない互いのぬくもり抱いて 昔ずっと昔熱い恋があって 守り通したふたり いくつもの物語...

  • あさよみ

    ロボットは我々の仕事を取り上げてしまうのだろうか。 人々は.驚くほど長い間、そう問いかけてきた。英経済学者デイビット・リカードは、1821年に出版した「経済学及び課税の原理」の第3版に、「機械について」という章を加えた。産業革命初期の技術が、いかに労働者を傷つけ得るかを示そうとした。カート・ヴォネガットの1952年の小説「プレイヤー・ピアノ」は、自動化によってほとんどの雇用が失われた米国の近未来を想定し...

  • あさよみ

    焼き豆腐 妹尾倫良 となりの学区に 使いを命じられた いくつかの集落と 田んぼ道を歩き 出雲街道沿いの バス道 東へと 小さな店に近づく 人気のない店に 声かけして待つ そこで また 待った 何かの気配があった 見ると裏のコンクリートの土間 七輪が ひとつだけ 網がかかって 豆腐が一つ 焼けている ...

  • 「辻聡之処女歌集『あしたの孵化』(短歌研究社・2018年)」を読む(其のⅡ) 「歌集」と云う腐臭が立ち込める雑居房から解放されたとき、「連作」と云う鎖帷子の拘束から逃れ得たとき、一首の短歌は如何なる「風流踊り」を演じることが出来るのだろうか?

    〇 喝采まで遠き海辺に立ちながら練るほど銀にひかる水飴 「水飴」を作る曲芸で拍手喝采を浴びている光景を、私はかつて川崎大師の境内で視たことがあります。 彼の曲芸師は、自らの商品である水飴を、参道内の葛餅販売店の柱に打ち付けて練っていたのであったが、私達参詣者は勿論のこと、件の葛餅販売店の従業員の方々さえも、その有様を呆気に取られて傍観しているばかりでしたが、そんな時、突如として後方から拍手喝采...

  • あさよみ

    雪の日に 吉野弘 ――誠実でありたい。 そんなねがいを どこから手にいれた。 それは すでに 欺くことでしかないのに。 それが突然わかってしまった雪の かなしみの上に 新しい雪が ひたひたと かさなっている。 雪は 一度 世界を包んでしまうと そのあと 限りなく降りつづけねばならない。 純白をあ...

  • 「辻聡之処女歌集『あしたの孵化』(短歌研究社・2018年)」を読む(其のⅠ) 「歌集」と云う腐臭が立ち込める雑居房から解放されたとき、「連作」と云う鎖帷子の拘束から逃れ得たとき、一首の短歌は如何なる「風流踊り」を演じることが出来るのだろうか?

    〇 青から黄、赤へとうつる信号機おまえはわかりやすくていいね 交通信号機の色は「青・黄・赤」と極めて単純で見分けやすい。 但し、本来は「緑」というべきを「青」と言ってるのは、情操教育上あまり良いことではありません。〇 悪意から遠き足裏ちいさくてふれれば魚のように逃げゆく 炬燵に入っていて、向う側に入っている彼女の足裏に「へのへのもへじ」なんかを書いたりして悪戯しているのである。 彼女の脚は...

  • あさよみ

    鎮魂歌 木原孝一 弟よ おまえのほうからはよく見えるだろう こちらからは 何も見えない昭和三年 春弟よ おまえの二回目の誕生日にキャッチボオルの硬球がそれておまえのやわらかい大脳にあたったそれはどこか未来のある一瞬からはね返ったのだ泣き叫ぶおまえにはそのとき 何が起こったのかわからなかった 一九二八年 世界の中心からそれたボオルが ひとりの支那の将軍を暗殺した そ...

  • やややや

    〇 野菜ジュース満ちて光れる朝々を渡れネクタイを白き帆として〇 やってらんないすよと後輩 コピー機の排熱ほどの声に触れたり〇 幽霊の話題を挟む雑談の夜に湿りを帯びてゆく耳〇 雪の記憶語りて過ごす鳥たちも影へとかえる空の真下で〇 雪のなりそこない、おまえ、一心に袖を汚して溶けゆくのみの〇 ゆっくりと潜水しゆくウミガメのまぶたを水圧の手が閉ざす〇 夢と思うギャルの義妹も笑わ...

  • まままま

    〇 待ち合わせ場所へと続く国道にの看板 〇 まんなかにちいさな鱗てさぐりで探せばきみの背きみだと思う〇 みずからを誤字と知らざるかなしみを思えば十二月の街の火〇 水と塩こぼして暮らす毎日に水を買いたり祈りのごとく〇 みな白き家電並びぬ わたくしは汚れるために生活をする〇 水底に眠る海鼠の傍にはしゃぎいてきみがさざなみを産む〇 群れながら孤島のこころ貸し切りの車内で笑う職...

  • はははは

    〇 廃園を告ぐるプレート万緑に異界をひらくごとき白さで〇 ハエトリソウのごとき睫毛をひらかせて彼女は見たり義兄なるわれを〇 励ますという愉悦あり果実酒のグラスが濡らす紙のコースター〇 働いてお金をもらう咲いて散るようにさみしき自覚をもちて〇 はつなつの表面張力 卓上のゆるきグラスにわたしは満ちる〇 花園橋越えて植物園に到るきみの日傘に花の重力〇 花冷えにトリートメントの...

  • なななな

    〇 長雨に執務日誌は湿りたりペン先の鈍く沈みてゆきぬ〇 菜の花にあなたの遠くまぶしがるしぐさばかりが揺れやまざりき〇 ナポレオンは三十歳でクーデター ほんのり派手なネクタイでぼくは〇 二十数年ともに暮らしし弟の恋を知らざり知らざれど兄 〇 二十代最後の年が暮れてゆく時間を可視化する雪の窓〇 盗み見る義妹の腹にみっちりとしまわれている姪らしきもの 〇 望まれるように形を変...

  • たたたた

    〇 蛸を噛むきみを見ている上顎はぶれないきみの確かな頭骨〇 種を吐く 夕餉を終えて母の剥く八朔のそのひと房の翳り〇 たのしいと思う気持ちが静電気めいて近づくたびにはじける〇 食べられる野草図鑑よ話さずに忘れた春の話題のひとつ〇 誰ですかと問われる声で目覚めればしゅわしゅわという加湿器の音〇 父のめまいなおなおやまずのんのんと冬の蝸牛の眠りておれば〇 沈黙をチャイルドシー...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の36) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    36 何故か定型である。角川源義 西洋近代文化の摂取をとって、明治以後八十年の歳月は決して短か過ぎたとは言えない。 にも関らず、近代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することに、私たちは失敗して来た。 一九四五年以来、私たちは再び振出しに戻り、第一歩から踏み出すことを余儀なくされた。 今から二十八年前の五月三日の夜、角川源義は、角川文庫創刊の辞を、このように書い...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の35) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    35 歌誹諧を殴り倒せ 「父」はいだかれている。 今、若い歌人たちはうたう。 たとえば、「父よ、ありがとう」と。 戦後という時代にあっても、「父」は文学に於ける歌誹諧だった。 戦後的否定の的、あらゆる「日本的なるもの」の象徴だった「父」。 伝統性・民族性・その他一切の否定されるべきものの象徴だった「父」。 新時代の到来は、「その「父」を倒し得た時だった。 誰もが否定せざるを得ず、倒さざるを得なかっ...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の34) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    34 どこへ 失われた心の回復。 あらかじめ失われていたものの奪回。 それにこの五句三十一音がの定型を持って参加した者たち。 それがこれらの人々だ。 五音と七音との鬩ぎ合いの中から、ある者は血みどろに、ある者はやさしく、心のまるごとを表現しようとする。 或いは、表現し得ない闇を示すことで、心を伝えようとする。 そうするためには、何よりも信じるという行為が必要だ。 だから、彼らは、他ならぬこの定型の...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の33) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    33 なにものか 言霊と自己の交感にまなこを開いたはるか昔から、膨大な数の情念に塗りたくられたこの詩型と詩語。 そこに自己の情念の一片を注ぎ込む時、古代から近代までの声々との激しい同化と異化が渦巻いて激流する。 草上に燃すひとたばの手紙、パスカルの妻を思う埴輪の目、生活を翔びたつ哀しみの鷹。 それらの一つ一つが同化と異化の言語痙攣の果てに一行の世界に定着するとき、歌は情念に塗りたくられたその満身創...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の32) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    32 どこから いっさいの短歌的なるものの否定が提唱されて以後の文学の歩みと、この若い歌人たちの成長とは重なり合っている。 だが、いつの頃からか、歌を自己の表現の手段とし始めていたこの若者たち。 新時代の表現の旗手として小説があり、詩があった。 だが、歌い始めていたこのこの若者たち。 この若者たちに短歌のふるさとはない。 ものごころのついた時、すでにそれは断ち切られていた。 無い故郷を一人一人がさ...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の31) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    31 if.…… あなた方は何を視ようとしているのか、という問いがある。その日常に常に向けられた低い俯きがちな姿勢は、なぜそうも穏やかなのか。 戦争の時代を飢えの記憶として持ち、歌との出逢いに、前衛短歌が在った幸と不幸をひきずり、それ故、多分あなたたちはひとにやさしすぎるのだ。 子供の妻に、男に女に、そして、この詩型そのものに、それはたとえば飢えの記憶がそうさせるのであっても、枇杷の艶やかな実に降る六...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の25) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    25 ザ・ミレン 政治や社会を高らかにうたい、美を構築して、さまざまな成果を生んだ戦後短歌の流れの中で、自分たちの生活を凝視し続けて堅実な歌を詠み続けた人々がいた。 労働に勤しむ日々の視界にふときらめいて現れる海の夕日や、帰路の駅の時計にとり戻す自分の<現在>、それら生活の時間のかすかな抑揚がふと定型の韻律と触れ合う時、人々は低く、そして抑えがたく一首の短歌の中に自分の想いを連ねる。 万葉集の時代...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の24) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    24 エロス エロスとは何か? それは結合である。 言葉と言葉が、観念と観念が結合して新しい何かが生まれ出てくる。 ここにエロスの本質がある。 ここに取りあげた世代の特徴の一つは、かつての第二次世界大戦のその戦いの日々の中に於いて、死と直接に向き合いながら生きた時間を持った、と、いうことである。 更に、その死と向き合って生きた長い時間の中から、ある日突然赦免された、と、いうことでもあった。 これら...

  • あさよみ

    ま夜中のせみ 中野重治 ま夜中になつて 風も落ちたし みんなねてしまふし 何時ごろやら見当もつかないのに 杉の木のあたりに居て ぢいつと言うて鳴く じつに馬鹿だ 東京帝国大学生 中野重治 顔の黄色いのがゐる 眼鏡がゐる 羽織 るぱしか 釦の直径が一寸もある外套...

  • 「池田裕美子第三歌集『時間グラス』(短歌研究社・2022年)」を読む(其のⅡ)

    〇 改憲論者ふえゆくこの国いよいよに九条の枷ふりほどかんと 「憲法第九条」は、私達日本人にとって、果たして「枷」なのか? 私達日本国民は、この条項を保持する国の国民であるが故に、辛うじて「生命を保持して来た」のでは無かったか? 日本国第二章 戦争の放棄 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決...

  • あさよみ

    日本国憲法前文 日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民と協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その...

  • 「池田裕美子第三歌集『時間グラス』(短歌研究社・2022年)」を読む(其のⅠ)

    〇 あこがれはアンナ・パブロワの白鳥のパ・ド・ドゥー踊る白トーシューズ 「白トーシューズ」とは言え、靴なんかに憧れるとは、作中主体はなかなか複雑な御性格のお方ですね。 「あこがれはアンナ・パブロワ」といった辺りで止めておいたら如何かな?〇 いさかいてややに淋しき夕まぐれポトフに散らすパセリをきざむ 「ポトフに散らすパセリをきざむ」が、一首の<聞かせ所(=泣き所)>かも知れませんが、「味噌汁に...

  • 「本田一弘第四歌集『あらがね』(ながらみ書房・2018年)」を読む(其のⅥ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 豆をもて誰を打つべし責任をなすりつけあひ四ねんが経ちぬ〇 みちのくのしのぶもぢづり誰ゆゑにわが産土を捨てねばならぬ〇 みづからの歌のおもひをまつすぐに語る高校生のこゑ愛(は)し〇 水無月の雨に濡れつつ学校の中庭に立つモニタリングポスト〇 むらぎもの心を痛むみちのくの身元不明のなきひとのこゑ〇 もしわれが十七歳であつたなら二十分ではたうてい詠めじ〇 やはらかき土凍らせて...

  • 「本田一弘第四歌集『あらがね』(ながらみ書房・2018年)」を読む(其のⅤ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 はくれんは命のかたちひとりづつ死者の命のしろくふくらむ〇 八月のゆふべの開運橋を吹くしろたへの風よろこぶわれは 〇 枇杷の花香(にほ)ふゆふぐれ喪ひし人をおもへばにじみゆく白〇 福島に生まれしわれはあらがねの土の産んだる言葉を耡ふ〇 ふくしまの空気を吸って熟(みの)りたるあかつきといふ桃のゐさらひ〇 福島の子供の肥満増えてゐると文部科学省が発表したり〇 ふくしまの米は...

  • 「本田一弘第四歌集『あらがね』(ながらみ書房・2018年)」を読む(其のⅣ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 たましひを信ぜずといふそのひとに福島に降る雪を見せばや〇 短歌甲子園終はればこの年の夏が終はるとゆかりさんいふ〇 田ん坊の語ることばを訴(うた)ふべし磐梯山のまなざしのこゑ〇 ちのみごのうぶ毛のやうなふくしまの桃のはだへを愛せりわれは〇 中間貯蔵施設受け入れざるをえぬ双葉の真土 不聴跡雖云〇 土にかへることなき土が保管場へ搬ばれゆくをわれら見るのみ〇 てのひらに雪の一...

  • 「本田一弘第四歌集『あらがね』(ながらみ書房・2018年)」を読む(其のⅢ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 歳晩の夜を嬬とゐて目に見えぬ雪のことばをふたり聴きをり〇 さんぐわつじふいちにあらなくみちのくはサングワヅジフイヂニヂの儘なり〇 信夫郡信夫の山に除染土を搬出するといふ計画ありき〇 白川以北一山百文 東北を蔑みて来し犬の舌みゆ〇 白きものは畑をおほひ葱の葉の身のあをあをと直立つひかり〇 震災ののちに生まれしみどりごがもうすぐランドセルを背負(しよ)ふ春〇 震災の読み物...

  • 「本田一弘第四歌集『あらがね』(ながらみ書房・2018年)」を読む(其のⅡ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 樫の実のひとりに生まれ死にてゆくことを肯ふにんげんなれば〇 「仮置き場なければ家の庭先に保管せざるを得なくなります」〇 官軍につち奪はるるのみならず言葉殺されてたまるものか〇 木苺の熟れゆくひかり母と伯父ふたりのゐない五年目の夏〇 帰還困難区域の野辺をさ走れるゐのししのなくこゑをきかずや〇 基地といふ土は要らない沖縄のそらにつながる福島のそら〇 くうかんはうしやせん...

  • あさよみ

    衆議院本会議での野田佳彦元首相による、故・安倍晋三元首相に対する追悼演説(2022年11月25日) 本院議員、安倍晋三元内閣総理大臣は、去る7月8日、参院選挙候補者の応援に訪れた奈良県内で、演説中に背後から銃撃されました。搬送先の病院で全力の救命措置が施され、日本中の回復を願う痛切な祈りもむなしく、あなたは不帰の客となられました。享年67歳。あまりにも突然の悲劇でした。政治家としてやり残した仕事...

  • あさよみ

    角川文庫発刊に関して 角川源義 第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い力の敗退であった。私たちの文化が戦争に対して如何に無力であり、単なるあだ花に過ぎなかったかを、私たちは身を以て体験した。西洋近代文化の摂取にとって、明治以後八十年の歳月は決して短かすぎたとは言えない。にもかかわらず、近代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層と...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の30) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    30 名歌はなぜ名歌か 名歌は、「名高い歌、すぐれた歌」と意味づけられている。 かつて、茂吉は言った。「優れた歌は<写生>によっている、と。また、迢空は言ったる「雪をぎゅっと握りしめると、水になって手の中から消えてしまう。それが歌だ」と。 現代の名歌は、どんな歌なのだ?宮 柊二竹群に朝の百舌鳴きいのち深し厨にしろく朝の鹽佐藤佐太郎あじさゐの藍のつゆけき花ありぬぬばたまの夜あかねさす昼木俣 修地平の...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の29) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    29 卵をつぶしたコロンブス あなたは、一人の歌人として、批評家から焼けつくような熱いまなざしを送られたことがあるか? 短歌は、言うまでもなく、我が国の伝統的な定型詩である。 だから、その短歌に関わって批評を書く行為とは、最も遠い地点から敢えて接近を試みる途方もなく困難な行為なのだ。「歌壇には批評家がいない」と、よく言われる理由の一つがここにある。 歌壇に於ける批評家達は、散文によって、歌人とその...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の28) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    28 戦後青春の系譜 青春の一回性とは価値紊乱者の行為の別称であるだろう。 全ての価値をひとたび相対化せんとする意欲の中にこそ、そのシャトーやヴァンテージを越えた豊穣な葡萄酒の普遍的したたりがある。 泣き濡れて蟹と戯れ、幾山河を越ゆる淋しさに耐える者として歌われ続けてきた短歌に於ける青春の定式にとって、佐佐木幸綱の青春歌は新鮮な驚きであった。 デモのスクラムではなくラグビーのスクラムを、忍ぶる恋で...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の27) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    27 挽歌・故郷に帰る しかし、九州のとある村で掘り出された鏡には、鳥のような一つの姿がかすかに刻み残されていた。海峡の潮に灼かれながら、千余里を翔びわたってきた情念の匂いがその痕跡から伝わる。 出奔の道のり遥かさを告げるためには、人々との間にいざよう七つの浪が必要であった。 人馬座への献辞、死者や失踪者への挽歌、「西行」への相聞哀悼篇……… はるか東の方から風が運ぶ千の言語のざわめきのこちらで、日...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の26) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    26 風・・・・・・ 風は、軽やかに世界を吹き抜ける。 風は、さわやかにありとあらゆるものの間を吹き抜ける。 風は、今日、私とあなたとの間を冷ややかに吹き抜けた。 風は、吹き来たり吹き去って、その後にはただひと掬いの悲しみだけが残されている。山崎方代宿なしのわれの眼玉に落ちてきてときりと赤い一ひらの落葉こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろにワレハるなりこんなところに釘が一本打たれいていじれば...

  • 今日の一首(ドーハの喜劇!)

    〇 逆転し二対一で独逸に勝つ!サッカー日本、ドーハの喜劇! 鳥羽散歩 国営放送・NHKのアナウンサーが、未だ真夜中だというのに、「勝った!勝った!」と怒号を上げている。 私としては、「何が勝っただ!一弗が百四十数円という円安なのに、勝ったも無いもんだ!真夜中にこんなことをしているから受信料を払いたくなくなるんだよな!私にだって安眠権があるんだぞ!」とばかりに、チャンネルボタンをあちらこちらに回...

  • 「山中律雄第五歌集『淡黄』(現代短歌社・2022年)」を読む(其のⅡ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 死者生者けぢめなくして暁の夢に睦みて言葉をかはす〇 しろうをの透きとほる身をはかなめど口にはこべば口がよろこぶ〇 震災の津波に逝きし人あはれ型ひとつなる位牌がならぶ〇 墨染めの僧衣まとひて乗るバスのわれの傍へに人は座らず〇 窓外にスコップ使ふ人のゐてすこやかげなる音は身に沁む〇 相殺ののちも良きことあまたなるわれのひと世を妻に感謝す〇 そのときの加減におなじ色のなき...

  • 「山中律雄第五歌集『淡黄』(現代短歌社・2022年)」を読む(其のⅠ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 行き千歩帰り千歩といくばくの坂道を来て沼のべに立つ〇 諍へることなくふたり暮しゐて妻よあなたはしあはせですか〇 大きなる鯉のあふりにたゆたへる水の濁りはしばしにて澄む〇 こころざしどうでもよくて還暦を過ぎていちにちいちにち迅し〇 おのずから窪みにみづは集まりて秋の干潟にひかりを返す〇 海上に雲去りゆきてはつ夏の風吹く街は空軽くなる〇 公園の空よりくだり来し鳩が木立の...

  • 「稀覯誌『短歌 現代短歌のすべて そして、ピープル』」の記事より(其の23) 昨今話題の「KADOKAWA」は、過去に於いてこんなにも素晴らしい『雑誌』を出版した、という輝かしい歴史を背負っている出版社なんだ!

    23 拓かれた戦後 戦後という時代は、例えて言えば、道のない時代であった。いや、交錯した何本かの近代的な道の設計図は示されたのだが、人々はその前で途方に暮れていた時代であると言った方がよい。 また、戦後という時代は、何か新しい日常の道具を手に入れることの必要性を、人々が痛感していた時代というふうに言ってもよいかと思われる。 いずれにせよ、三十年前の私達の前には、この国の荒廃した風景が広がっていた。...

  • 「木下のりみ第三歌集『真鍮色のロミオ』(・2022年)」を読む(其のⅥ) 「歌集」という拘禁から脱し得た時、「連作」という呪縛から逃れ得た時、一首の短歌の前には、如何なる恍惚境が待っているのか?

    〇 前歯なき子供かわゆし前歯なき大人おそろし何故ならむ〇 巻き上がる蔓に支柱の尽きたれば深さ果てなし天上の青〇 眉剃りし野球青年負けて泣くくちびる噛むとき眉毛は大事〇 真夜中のガラスをたたくかなぶんぶん真鍮色の小さなロミオ〇 水面より足逆立てる不可思議の美ありて人はこれを競り合う〇 身の盛りともしきろかも風に伏しし萩のひとむら起き上がりたり〇 虫たちがまだ続けいる輪唱に...

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