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2018/12/24

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  • 「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅠ)

    〇 朝は胸に夕は踵にあるやうな悲しさのためにくつしたを履く 「朝は胸に夕は踵にあるやうな悲しさ」、即ち、全存在に亙る「悲しみ」なのである。 彼は何がゆえに「くつした」を履くのかな? 察するに、件の「くつした」なる履物には、「悲しさ」を和らげる働きがあるのかも知れません。〇 雨垂れの音飲むやうにふたつぶのあぢさゐ色の錠剤を飲む〇 雨の服脱ぎたるそびらや添ひをればゆふかたまけて夏終はるらむ...

  • 「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅥ)

    〇 窓がみなゆふぐれである片時のアビタシオンに人のぼりゆく〇 真昼とはさみしき語感 蜘蛛の巣のひかりに絡められてゐる空〇 ママ、ママとまちがへながら吾に来し子は春に降る雨の目をして〇 路傍にしやがみて犬を撫づるとき秋をひとつの胡桃と思ふ〇 身にふれて濡るるからだを覚えたりこの薄絹は雨にあらねど〇 森の木と森のてまへに並ぶ木はすこし思考がことなるやうだ〇 やまももがうつそ...

  • 「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅤ)

    〇 長靴のつめたい踵にはりつきて誰の草笛だつたのだらう〇 肉体の温度せつなし夜の樹をぬけくる雨のとうめいな黒〇 ねぢれたる季節の風は窓にきて骨の色した卵を生めり〇 はつなつのひかりはほそく射しながらわたしの指の上を寒がる〇 はなびらの踏まれてあればすきとほり昼ふる雨の柩と思ふよ〇 葉のすみをすこし燃やしてよごれざるままに冷えたるじふやくの白〇 春といふ浅き器に草つみて農...

  • 「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅣ)

    〇 たうとつに蝶は噛むのと子は聞きぬ なにかが苦いやうな顔して〇 たくさんのがらくたたちがひかりだしそのはしつこが夜明けのやうで〇 たて笛に遠すぎる穴があつたでせう さういふ感じに何かがとほい〇 たまごからこぼれるやうに醒めにけり あなたが空と陸である夢〇 ダアリアを剪りつつ邪悪ね、と言ひぬ けふこひびとに差し出すダアリア〇 誰かいま白い手紙を裂いてゐる 夜のカップのみづ揺...

  • 「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅢ)

    〇 さらさらとさみしき冬日 花の茎ゆはへて水にふかくふかく挿す〇 サルビアの咲きてあかるむところまで晩夏の微温き水を運びぬ〇 紫苑から曼珠沙華へとつづくからひとりつきりが尊さになる〇 春泥をあなたが踏むとあなたから遠くの水があふれだします〇 食卓のトマトつめたくしたたりぬ軽羅にあはく蔓をひろげて〇 錠剤のひとつぶづつをのせてゆくてのひらは匙のうすさをもちぬ〇 梳かれつつ...

  • 「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅡ)

    〇 階段といふ定形をのぼりつめドアをひらくと風がひろがる〇 悲しみが降りやまぬゆゑあなたから白い枯れ葉を取り出してます〇 かんたんな気持ちで見知らぬ町に行き樹下をすぎゆくバスに乗りたし 〇 北の木のただいつぽんの佇みに質量のなき手をそへてゐし〇 北むきの窓辺の古きさむき椅子ふかく掛けたるとききしみをり〇 きだはしを下りると雨につつまれてもう赤茶けた火のあとの蓮 〇 樹の...

  • 「渡辺松男歌集『牧野植物園』( 書肆侃侃房・2022年)」を読む(其のⅠ)

    〇 あのへんは遠く清流だつたのだスカイツリーを天魚(あまご)がおよぐ〇 網戸の目一ミリ四方の密集をすりぬけてきし飛行機の影〇 石狩川河口へ曇天下にゆきて影なきわれは河口に見入る〇 烏骨鶏の卵(らん)をひるまにのみこめば黄身のかたちが空にもありぬ〇 えいゑんはとまりて落下せぬ雨を五十階にてつまむほそき手〇 炎暑にて無人の町のみづたまり蒸発をして足跡となる〇 落ちながら大き...

  • 今日の十余首(週刊誌の紙面広告より取材)

    〇 「貢ぎたる金を返せ!」」と母親が元恋人に迫る計算!〇 四回目不合格ならその時は?母なればこそ我が子気遣う!〇 統一教会系の陳情を「党公約に入れろ」とは元政調会長の弁?〇 ヒライ氏が隠して居たる狂団の黒いイベント出席写真?〇 「『マザームーン』に三回も逢っていた」とか?副防衛相・ヤマモト某!〇 「ホソダ氏が買収容疑で告発された?」回答拒否で逃げまくってたが!〇 「副代...

  • 「谷村はるか処女歌集『ドームの骨の隙間の空に』(青磁社・2009年)」を読む(其のⅣ)

    〇 破壊欲果てないわたしたちのため破壊途中にとどまるものよ〇 八月以外の十一か月の広島にしずかな声の雨は降りくる〇 人が人に贈る至高のやさしさは理由(わけ)きかぬこと雨があがった〇 一晩中呼びつづけたい名のために濁った街を抜け球場へ〇 昼ビール汗となり伝う首すじを許そう許しあおう死ぬまでを〇 広島が毎日わたしに言ったこと「愛を惜しめば、きっと悔やむ」と〇 ヒロシマと書き...

  • 「谷村はるか処女歌集『ドームの骨の隙間の空に』(青磁社・2009年)」を読む(其のⅢ)

    〇 タワレコでPOPを読んで時は過ぎるああこんなにも人間は言葉〇 誰も誰も誰かを欠いたあの日からこの街に無傷の人おらず〇 つばめ空の真中で止まる島の昼その静けさで壊せわたしを〇 東京のビール工場の屋上に海を嗅ぐわれら海の上に棲む〇 東京は雨の日がいい路上へと滲んだほうの町を見ている〇 父ちゃんと娘の前にひとつずつニュートーキョー大ジョッキは置かれ〇 鳥よおまえほのあたた...

  • 「谷村はるか処女歌集『ドームの骨の隙間の空に』(青磁社・2009年)」を読む(其のⅡ)

    〇 顔を上げろ会ったって誰も気づかないどこにでも居るカラスなんだから〇 かなしみのみなもとのひと遠い空にひとりいるから孤独ではない〇 枯らしたのはおまえだという声にただ抗いたくて水撒く真夏〇 川はいつも光って見つめるのだ簡単にひとりを失うたびに〇 気がつけば田に水は満ち人はみな尊いわたし以外の誰も〇 苦しんで水に飛びこむ何人も何人も受けとめたこの川〇 声がするドームの骨...

  • 「谷村はるか処女歌集『ドームの骨の隙間の空に』(青磁社・2009年)」を読む(其のⅠ)

    〇 会えば争うような気がして行かれない黒い川面を渡るこうもり〇 秋冬春ひとつ記憶を翌日の自分へと手渡してきただけ〇 諦めの海に浮かんだわたしたちは島、緩衝の水めぐらせて〇 アーケードの切れ目の雨に降られればあなたの固い意志がさみしい〇 ある日は通しある日は撥ねたわたしというこの容れ物のこの卑怯な皮は〇 言い訳はしないましてやきみのせいにしないわたしが行く場所のこと〇 諍...

  • 今日の十余首(泡沫の家)

    〇 新築の記念にせむと庭隅に凌霄花を植えたる彼の日〇 家主の背丈年々減り行くも凌霄花の背丈は伸びる〇 年々に壁に張り付き枝伸ばし屋根に届いた凌霄花〇 剪定のチャンス逃して伸び過ぎた凌霄花は始末に負えぬ〇 伸び過ぎた凌霄花は邪魔つけだ!可哀そうだが伐り戻しせむ!〇 怠らず剪定すれば「切り戻し」せずに済むはず凌霄花〇 長期間下屋の日除けや目隠しの役目果せし凌霄花〇 要す...

  • 「関口ひろみ処女歌集『あしたひらかむ』(雁書館・1998年)」を読む

    〇 逢へばきみつくづく遠し撓ませて撓ませてなほ告げえぬことば〇 吾を容れず拒まず海は銀ねずのまなぶた薄くひらきゐるなり〇 いつ逢ひても見慣れざる貌きみはもちおのが寒さのうちに棲むなり〇 きみとゐる春の茶房にやはらかく水押す鳥の胸おもひたり〇 きみの黙のみなもとに掌をふれたきをフォークにパスタからめゐるのみ〇 きみへ漕ぐ櫂とはつひにならざりしかひなを二本さげて佇む〇 きみ...

  • 「木畑紀子第六歌集『かなかなしぐれ』(現代短歌社・2019年)」を読む(其のⅡ)

    〇 春耕にいまだ間のある田の溝をひとりごちつつゆく細水(さざれみづ)〇 青春よ炎上をせよごみ処理場煙突に向き合掌をせり〇 胎内で五億年の旅してゐると聞けば生れ来むいのちは奇蹟〇 〈抱き禅〉とこは呼ぶべきぞ新生児あやしてただに揺るる一時間〇 啄木が息子であらばせつなからむ馬鈴薯の花雨にしづくす〇 断つ、捨つ、棄つ 言葉の鞭を身に当ててつひに愛惜の品と別れぬ〇 つなぐ手をふり...

  • 「木畑紀子第六歌集『かなかなしぐれ』(現代短歌社・2019年)」を読む(其のⅠ)

    〇 「会いたいなぁ」呟いてみる会へぬ日も会ひたきひとの在ることは幸〇 秋ふかき運動公園に呆とをりバスケのゴールは底抜けの網〇 雨の野に摘みし薊とむきあへばひとりごころの針の花なる〇 怒るちから減りたるわれはみづからのさびしさの世話してやらんかな〇 痛みとはつひに身替はりできぬものわれはわれ以外の痛みを知らず〇 うまれ来むいのちつつむとひそやかに毛糸あみつぐ鶴の婆われ〇 ...

  • 「四国八十八箇所霊場巡行~我が空想の歩き巡礼~発心の道場・阿波二十三箇寺」(其の四)

    第四番ー黒巖山 遍照院 大日寺(徳島県板野郡板野町黒谷字居内28番地) 御本尊:大日如来 私・鳥羽散歩が<四国八十八箇寺の歩き巡礼>発心の発端は、神奈川県川崎市麻生区王禅寺東にお住いの棚井良和氏の御著『四国遍路記』を拝読させて頂いた事である。 同著の二十二ページに「板野の町を通り過ぎたあたりで、自転車に乗った女性から冷たいお茶を頂いた。わざわざ追いかけて来たと聞いて恐縮してしまった。接待のことは...

  • 「四国八十八箇所霊場巡行~我が空想の歩き巡礼~発心の道場・阿波二十三箇寺」(其の参)

    〇 三番札所ー亀光山 釈迦院 金泉寺(徳島県板野郡板野町大寺字亀山下66) 御本尊:釈迦如来 二番札所の極楽寺から約半里の距離にあったので、八十路の坂を越えた私の足でも一時間足らずで辿り着くことが出来たのである。 境内に伝教大師・空海が湧かせたという「黄金井戸」があり、「金泉寺」という寺名の由来とされているとか。 「黄金井戸」は地蔵堂の中に在り、それを覗いて見て、「自分の顔が井戸水に映らない...

  • 「四国八十八箇所霊場巡行~我が空想の歩き巡礼~発心の道場・阿波二十三箇寺」(其の弐)

    〇 二番札所ー日照山 無量寿院 極楽寺(徳島県鳴門市大麻町檜字段の上12) 御本尊:阿弥陀如来 第二番札所の極楽寺は、昨日の宿泊先の旅館からほど近く、霊山寺からも半里足らずの近距離であったので、俄か遍路の私は、「歩き遍路」としての本分を守ることが出来た。 金剛杖を突きながら、水を引き入れたばかりの田圃の畦道や民家の裏の細道を辿って行くと、朱塗りの仁王門が姿を現した。それを潜り抜けて参道を進むと...

  • 「四国八十八箇所霊場巡行~我が空想の歩き巡礼~発心の道場・阿波二十三箇寺」(其の壱)

    〇 一番札所ー竺和山 一乗院 霊山寺(徳島県鳴門市大麻町板東字塚鼻126) 御本尊:釈迦如来 東京駅発、博多行きの「のぞみ15号」に新横浜駅から飛び乗って、徳島駅行き・高速バスの乗換駅である新神戸駅に到着したのは、飛び石連休初日の午前十時五十分頃であった。 「旅は道連れ」という言葉があるが、「三人掛け自由席の両隣りの乗客が妙齢の美女であったならば、どんなに楽しい旅になるだろう」などと、年齢に相...

  • 今日の十余首 国民の声を無視して「国葬」の「閣議決定」逸る政権!

    〇 札所巡りも十六ケ寺を残すのみ土佐廻国は歩き遍路で〇 この齢で歩き遍路は無理だからベンツ飛ばして土佐を廻ろう〇 イノシシが築地破りて闖入し玉邸いまや壊滅の危機〇 熊本城のそれとまでは言えないが石垣らしき築地であつた 〇 収穫を間近に控えた薩摩芋イノシシどもに奪われちやつた 〇 孫たちに食べさせたいと思つたに猪突猛進サツマイモ喰う!〇 老い耄れを見捨てて帰る婆様に文句た...

  • 「土岐友浩第二歌集 『僕は行くよ』(青磁社・2020年)」を捲る(其のⅣ)

    〇 春風に振り回されてあたらしい定期券から水辺のにおい〇 阪急の駅を降りればいつも冬休みのような街だと思う〇 本当は教師になってほしかったのでは 孔雀が羽をひろげる〇 水切りの石は進路を変えながら沈んでいったかげろうの島〇 明治には戻れないのにみずがめに猫を突き落としたのは誰だ〇 もともとは思索の道のはずだったという水路のほとりを歩く 〇 落下したヒポカンパスがたちこめ...

  • 「土岐友浩第二歌集 『僕は行くよ』(青磁社・2020年)」を捲る(其のⅢ)

    〇 大切なものじゃないから目に見える イオンモールに降るぼたん雪〇 『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』が駒ヶ根のTSUTAYAにあった〇 遠くまで来たはずなのに桂川イオンシネマで空襲を見る〇 図書館はあまりなじみのない場所で窓から見えるまひるまの月〇 飛び石の四角いほうに乗ってみる 街がまぶしく見えないように〇 長すぎて覚えられないその花の名前が風に微笑んでいる〇 ...

  • 「土岐友浩第二歌集 『僕は行くよ』(青磁社・2020年)」を捲る(其のⅡ)

    〇 カステラは乾きやすくて本題に辿りつかない感触がある〇 カフェオレのカフェとオとレをぐるぐるとかき混ぜる三月の終わりに〇 暗すぎる五月の橋の真ん中で精神のない巨獣をおもう〇 繰り返し口にしてみる よくできたアップルパイのような言葉を〇 原作だと地震は出てこないから、と教えてもらう予告のときに〇 この店のパンが好きだな虹の色よりもたくさん種類があって〇 これ以上用がない...

  • 「土岐友浩第二歌集 『僕は行くよ』(青磁社・2020年)」を捲る(其のⅠ)

    〇 あなたは神様ではない 制服の袖に隠したてのひらの傷〇 あ、僕とおなじ十四歳だって 夜のフェンスの奥の紫陽花〇 奄美大島に「カメラを止めるな!」のやたらと目立つポスターがある〇 ありふれた悲しい話には歌を オムライスには少し焦げ目を〇 いつからかあなたの胸のなかにいて撃ち落とされたサン=テグジュペリ〇 いないのにあなたはそこに立っているあじさい園に日傘を差して〇 Wiki...

  • ささささ

    〇 さっきまで鳥がとまっていたような配電線をたどって帰る〇 習作のようにたなびく秋雲を見ているうすく色が注すまで〇 少年の世界のすべてではないが秋の野山が近づいてくる〇 自転車はさみしい場所に停められるたとえばテトラポッドの陰に 〇 乗客は乗り込んだのに雨の日のドアをしばらく開けているバス〇 勧めようとしている本を読み返す傘とかばんを近くに置いて〇 すずかけの枝葉に傘が...

  • かかかか

    〇 階段を転がるように降りていく枯れ葉は風の靴であること〇 帰るときかなり明るくなっているけやき並木をふたたび歩く〇 紙ふぶき大成功の、安田大サーカスというひとつの星座〇 肝心なことはともかく夏草を見てきたことを話してほしい〇 来た道を歩いて帰るさっき見た花火のことをずっと話して〇 気づいたら雲が出ていて、ひまわりの頸の硬さを教えてもらう〇 牛乳を電子レンジであたためて...

  • 「土岐友浩処女歌集 『Bootleg』(書肆侃侃房・2015年)」を捲る(其のⅠ)

    〇 ああ僕が思い出すのは島で見たあの星空だ、あの海よりも〇 あきらかな嘘とそうではないものを見分けて読んでいく航海記〇 あきらかにちょっとおかしい看板を広い通りに出しているカフェ〇 あざやかな記憶のしかし桜草死を看取ったらあとは泣かない〇 あしもとを濡らしてじっと立ち尽くす翼よりくちばしをください〇 あたらしくできた日陰で聴いている ここはどこ、から始まる歌を〇 あの海...

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