彼を知ったのは、小学生の年少の頃。 わりと、一発ですぐ彼が兄たちと似たものを持ってる――なにかしらの障がいがあると気づいたのは、私がよく兄たちやそのお友達のことも見ていたからもあると思う。 彼は、とにかく落ち着きがなくて、よく忘れ物をして。勉強も運動も苦手。 よく、周りからは「またお前か」「こんな簡単な問題も解けないのかよ」「へんな走り方だな!」 いつも、そんなようなことを同級生から言われていた。...
最近、心に刺さった言葉が 「ほとんどの人は、そこまで深く考えてない」 自閉症、脳性麻痺、統合失調症な三兄妹の、とある話。日々のこと、小説の話など。
精神障害者ですが、小さな本屋の店員になりました。兄は発達障害者です。
小さな頃。兄妹の中でも特に悠也は。 何をするにしても、どこへ行くにしても。ちょっと目を離すとすぐに。 ――いなくなる。 スーパーでいなくなる時、大抵の場合どこに行くのか、ある時真陽は気づいた。 要は、悠也の興味のあるものの場所だ。 店内でいなくなると、まず真陽は、出入口へ向かう。ほとんどの場合は、自動ドアで遊んでいることが多い。 しかし、そこにもいないとなると。次は、おもちゃやお菓子のあるコーナ...
真陽が思うに。 梨子は、大人に甘やかされて育ったのだろうなと、思える子だった。「おばあちゃんがね、何か欲しいものはないかって、うるさいの。ふふっ」 そして、かなり攻撃的だ。 小学校の、いつもの遠回りな帰り道。 雨上がり、傘を振り回して何をしたいのかと、思っていたら。なぜか真陽から傘を奪い取って。 ――投げた。道路へ。 しかもそれは、保護者パトロールで、母の七瀬が一緒の時ですらしたのだから、驚きを...
一緒にいるうちに、その井浦梨子という少女は、だんだんと持ち前のワガママさを発揮しだした。 例えば、小学校の帰りの通学路。 真陽が自分の道を帰ろうとすれば。「わたし、この後ずっと1人になるんだけど」 それは、お互いさまのはずなのだが。「じゃあ、わたしが不審者に攫われてもいいの!?」 そうまで言われては、何も返せない。しかも、二人の家が中途半端に歩けなくない距離だったのも悪い。けれど、梨子の通学路は...
――今思えば。 あの頃で既に、真陽の精神状態は何らかの「ケア」があった方が良かったのかもしれない。 小さい頃は。ごくごく当たり前に。 楽しければ笑うし、悲しければ泣く。 それが、いつからか。真陽は、笑うのも泣くのも、人前ではほとんどしなくなった。 どうにも、真陽はいじめっ子からすれば、格好の餌食になりやすいタチだったらしい。 元々は泣き虫だったのだが。 泣けば泣いたで「泣けばいいってもんじゃない...
真陽が小学生になるあたりでは。 わりと毎年、兄たちの通っていた特別支援学校の行事を、両親とともに見学に行っていた。 運動会、文化祭はもちろんのこと。 土曜日にやっていた授業参観も、親と一緒に見学したのだって、一度や二度じゃなかった。 そんなわけもあって。 七瀬と同じくらいかには、兄たちの交友関係もなんとなく、聞いている。時がたった今でも、名前を覚えているひとも何人か。 真陽の、当時のイメージでは...
今日の午後3時、私は2度目のワクチン接種をしてきました。そんな今回は、コロナワクチンについてのお話を。まず一番には、父から接種券がきて、近所の病院で接種してきました。父は、症状としては。ちょっと腫れたり痛みがでるくらいで、それほど深刻に「辛い」というほどには見えなかった記憶があります。 長男は、ワクチン接種を拒否しました。「打てない」のではなく「打ちたくない」ということです。本人いわく、痛いのは嫌だ...
おはようございます。もう、日常のなかでマスクは欠かせないアイテムとなっていますが。なかには、そのマスクが苦手な方もいるとは思います。耳の形が…とか、マスクの意味が分かってなくて…とか。どうしても苦しくて…とか。そして、付けることが出来ても、すぐにはずしちゃう、なんて方もいるかと思いますが。 我が家の場合、問題となるのは次男です。「耳からはずしちゃう」とまではいかないんですが。ずり下ろされてしまうんで...
よく、世間の話では、こんな現象がある。 「あの芸能人のおめでたい話に、彼はコメントを出していない」「実は、あのグループは不仲なんじゃないか」「あの人とあの人は、実はあんまり仲良くないのかもしれない」 そう。 芸能人で、コメントを出していないのは、仲が悪いからなのか。 本当は、あの二人は、犬猿の仲なのでは? よく、そういう憶測が、ネットでは特に、飛び交っているものだ。 しかし、なかには。「肩を組ん...
その子どもは、小学校に入ってすぐから卒業に至るまで、学年の「問題児」扱いをされていた。 それで、日頃何をしていたかといえば。 物を壊す、投げる、そして、ベランダへと出る。 ベランダで何をするかというと。「ここから飛び降りてやるぞ!?」 それが、よく言うセリフだった。 これだけだと、本当に一人の「問題児」という認識になるけれど。 見るひとが見れば、それだけでなさそうなのが、分かるのではないか、と...
お久しぶりです。あまりにも、更新したのが前だったこともあり、「何を書けばいいのか……?」と、なっていたのですが。先日、クリニックのカウンセリングにて、こんな話をされました。「月凪さんの場合、なにか1つのことでも、すごく深く考えるんでしょうね」 に続いて「大抵のひとは、そこまで考えてないですよ」私にとっては、ちょっとした衝撃でした。それを、作業所のスタッフさんに話すと。「あ~、そっかぁ……」なぜだか、納...
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彼を知ったのは、小学生の年少の頃。 わりと、一発ですぐ彼が兄たちと似たものを持ってる――なにかしらの障がいがあると気づいたのは、私がよく兄たちやそのお友達のことも見ていたからもあると思う。 彼は、とにかく落ち着きがなくて、よく忘れ物をして。勉強も運動も苦手。 よく、周りからは「またお前か」「こんな簡単な問題も解けないのかよ」「へんな走り方だな!」 いつも、そんなようなことを同級生から言われていた。...
私が小学生の頃、初めて彼女と関わった。 先に言っておくと。 私は典型的な「いじめられっこ」だった。主に男子から。 だから、からかう言葉や虐げるようなセリフは、何千何万と聞いてきた。「キモい、ブス、うざい、菌、害、死ね」といった言葉だ。 本題はそこではない。「彼女」も、似たようなことを言われていた。あえて私と違う点を言うなら。 ――たぶん、とても人望がなかった。「あの子、全然あいさつしないよね」「車...
よくひとは、「障害」の害を嫌い、「障がい」とあえて表記することがある。 理由なんて、簡単なこと。「害=悪」のような、悪いイメージを抱きがちだから。 けれど調べてみると、大元は「害」ではなく「碍」であった。 元々、「障碍」と「障害」は、明治以降の一般社会でほぼ同じ意味で使われていた。 しかし戦後の当用漢字表やその後の常用漢字表に「害」の字のみが入るなどして、「障碍」という表記は少なくなっていったと...
私には、かつて悩んだ問題があった。「接客で大切なこととはなんだろう」 とある、小さな本屋が、私の仕事場だ。 といってもあまりお客は来ない。それもあり、店員は接客に慣れている人ばかりでもない。 本屋と同じ系列で、ほかにも店がある。 ある日、そちらを仕事場としている友人が、本屋の店長に、こんなことを訪ねていた。「接客の際の言葉使いについて」 例えば。「こちらでよろしいでしょうか」「ごゆっくりご覧くだ...
この世界では、たくさんのカタチの「情」がある。 ――戦争とは、全ての感情を踏みにじる最たるものだ。 ふと思う。何故、人間同士でのいざこざは、戦争に発展するのか。 「戦争は科学を発展させる」 「戦争なんて名ではない、もはや殺戮だ」 それは、決して相容れない言い分となるのだろう。 それこそ、ドラマや映画、小説などの、「架空の世界」では、闘うことをカッコいいとされるのは、よくあるパターンだ。 しかしそれは...
世の中というのは、間違ったことだらけだ。そして、それを「間違いだ」と主張することで、袋叩きにされることもある。 ここで一つ、問いかけたい。 世の中にいる「障がい者」は、みな善人なのか? ここから、私のこれまでの経験を少々。 私には、家族に障がい者がいる。それも生まれつきにだ。 なのでよく、「特別支援学校」という、主に何かしらの障がいを持つ児童が通っている学校を知っている。子どもの頃には、よく混じ...
私は、福祉施設の本屋に行ってます。じつはもう、一年以上は経っていますね。更にじつはなんですが、本屋の仕事の一つのなかに「ラジオで本を紹介する」ということもしています。 といっても、地元のローカルラジオ番組のなかの十数分くらいの時間なのですが。ちなみに、これまでは「月夢」(つきゆめ)というペンネームで紹介していました。今月(18日15:20分頃は「はるか、ブレーメン」という本を紹介します。そのなかで語るかもし...
エッセイですね。前作「思うこと、感じたこと。」より年齢が少し大人になっているので、区切りとしようと思うとともに。 もっと上手く言葉を紡げるように、という気持ちを持って。1. 想いを形にする意味 ずっと、ずっと前に。【人というのは矛盾する生き物だ】と、私は言葉を紡いだ。それも、はじめはペンをとり。 そこから考えると、今はかなり楽に書いたものの修正が利くようになった。これも科学の発展というものか。 そん...
私は、これまで何度も見てきた。 『障がいを持つひとに、優しくしようと思いました。 困っていたら、助けてあげたいと思います。 身体の不自由があるのに、こんなに頑張ってて、すごい! 障がいを持つ子のきょうだいは、きっととても優しい子に育つ。 障がい児のおかげで、うちは楽しく明るい家庭になった。 この子がいると、笑いが絶えない。』 あちらこちらで、何度も耳にした言葉たち。良くも悪くも、たくさん聞いた。...
こんにちは。スマホのアプリって、時々いきなり使えなくなる事がありますよね。ちょっと困った事に。スマホになった頃からずっと使い続けていたメモのアプリが、なぜだか使えなくなってしまったのですよ😅で、代わりのアプリを色々探していたら。「書く習慣-毎日一つのお題 思い浮かんだことを書いてみて」というアプリがありまして。要は、お題に沿って文章を書く、というものですね。短くても長くても良くて。ジャンルも問わず(...
武器ではなく命の水をおくりたい 中村哲医師の生き方(宮田律さん)を読んで 彼──中村哲医師──は、今は亡き方。暗殺されたのだ。彼は常日ごろから、武器では戦争は終わらないこと。本当に大切なのは、「衣・食・住」の、特に水だと、主張する。 きれいな水が出ないから、ケガも治らず悪化させる。雑菌だらけの水を飲めば、体の内側から病に侵される。 例えば。食べ物を買うお金がないから、スリをする。これは言い換えれば、...
私には、次男のような愛嬌も無ければ、長男のように数字に強い訳でもない。「自分には何もない」それをずっと、思って生きてきた。でも、一つならあった。「言葉」ちょっとした出来事があって。日用品、そして私から、謝罪と日頃の感謝の手紙を書いて、ご近所さんに渡して数日。「手紙読んだよー。ありがとうね」そう言って、おじさんがあんなに笑ってる顔を、なんだか久しぶりに見たな。そういえば、と。わりと私、ここ近年でちょ...
まだ人を殺していません 小林由香さん 義兄「南雲勝矢」が、人を殺したとして逮捕された。「葉月翔子」は姉夫婦の息子である「良世」とともに生活することになる。 そこから、子を育てることに不安を持つ翔子と、殺人鬼の息子となった良世との、言葉に表わせないような日々が始まるのだった──。 この本は、単純な「殺人犯の息子の話」ではないと感じたのは、読み始めてすぐでした。 というのも、預かる側の翔子は、娘を交通事...
ご無沙汰です。昨年は、個人的にいろんな事がありました。これまでは、「就労移行支援B型」の作業所にほぼ1年、通所していました。そのなかで、別の作業所に興味はないのかという話になり「そういえば、本屋に行った人がいたらしい」と聞いてみたら。なんとびっくり、私でも行ける施設がちゃんとあるのですよ!見学、お試しの期間を経て。昨年の12月から、正式にとある本屋の店員になりました。今のところ、主にしているのは、本の...
作者の通所している施設には、それぞれ何かしらの障がいを抱えるひとが通所している。 精神の人もいれば、発達の人もいる。 気持ちが不安定になりやすいひと、コミュニケーションが得意でないひと。車椅子のひと、はっきり言葉を紡ぐのが苦手なひと。 彼らも、自分に出来る範囲のことを。そして時に、周りからの助けを借りることもありながら日々を生きている。 それらのなかには、身体に麻痺があるひともいる。 今回はその...
ご訪問、ありがとうございます。今回は次男の話をメインに。少し前に、福祉施設(入居、デイサービス)の見学をするにあたり、そちらの職員さんが家に訪問されまして。父、母、次男とで、ご挨拶をしました。その来た勢いのままに、次男本人を施設に連れ出せるか、とのところにまで話が進んだとか。しかし。次男には「精神病院への入院」をした時のトラウマがたぶん根強く。 きっと、「どこに連れて行かれるの!?」「ぼくなにされ...
辿りついてくださり、ありがとうございます。私事として。実は、私にとっての仕事場が、変わりました!といっても、同じ建物内、同じ系列の別のフロアです。長らく、「地域活動支援センター」に属していたのですが。すぐ隣の、「就労継続B型」でやってみないか? と提案を受けたのですが。ちょっとした事情で、そのさらにお隣のフロアの「就労移行」という場で2ヶ月だけ、所属することに…。それが、昨年の11月の終わりのこと。12...
最近、一品料理がだいぶ適当になってきました。(良い意味で)前は、もうちょっと調べて調理していたんですが。ここ最近は、ほぼ「カン」に近いものに……😅ただ、家では「変わり種」の料理であるのは変わりないせいもあるのか、しっかりと平らげてくれるんですよね。てなことで。一挙大公開です!「しいたけの肉詰め」「あつあけの梅合わせ」「チンゲンサイの酢漬け煮」「ナスとしらたき、魚肉ソーセージの煮込み」「なんちゃってゴ...
つくづく、戦争によるひとへのダメージとは深いものがある。 令和4年の5月末。 世界が「戦争犯罪」という言葉に様々な反応をしているなかの、とある話。 北海道の海の、とある位置にて。 観光船が沈む事件が起きた。 その「とある位置」には、過去の戦争にて命を落としたたくさんの魂が眠っている。 その当時は、戦争目下ということもあり骨を拾ってくれるなんてこともなく。 家族には、紙一枚の知らせで、それは「終...
こんにちは。スマホのアプリって、時々いきなり使えなくなる事がありますよね。ちょっと困った事に。スマホになった頃からずっと使い続けていたメモのアプリが、なぜだか使えなくなってしまったのですよ😅で、代わりのアプリを色々探していたら。「書く習慣-毎日一つのお題 思い浮かんだことを書いてみて」というアプリがありまして。要は、お題に沿って文章を書く、というものですね。短くても長くても良くて。ジャンルも問わず(...
武器ではなく命の水をおくりたい 中村哲医師の生き方(宮田律さん)を読んで 彼──中村哲医師──は、今は亡き方。暗殺されたのだ。彼は常日ごろから、武器では戦争は終わらないこと。本当に大切なのは、「衣・食・住」の、特に水だと、主張する。 きれいな水が出ないから、ケガも治らず悪化させる。雑菌だらけの水を飲めば、体の内側から病に侵される。 例えば。食べ物を買うお金がないから、スリをする。これは言い換えれば、...
私には、次男のような愛嬌も無ければ、長男のように数字に強い訳でもない。「自分には何もない」それをずっと、思って生きてきた。でも、一つならあった。「言葉」ちょっとした出来事があって。日用品、そして私から、謝罪と日頃の感謝の手紙を書いて、ご近所さんに渡して数日。「手紙読んだよー。ありがとうね」そう言って、おじさんがあんなに笑ってる顔を、なんだか久しぶりに見たな。そういえば、と。わりと私、ここ近年でちょ...
まだ人を殺していません 小林由香さん 義兄「南雲勝矢」が、人を殺したとして逮捕された。「葉月翔子」は姉夫婦の息子である「良世」とともに生活することになる。 そこから、子を育てることに不安を持つ翔子と、殺人鬼の息子となった良世との、言葉に表わせないような日々が始まるのだった──。 この本は、単純な「殺人犯の息子の話」ではないと感じたのは、読み始めてすぐでした。 というのも、預かる側の翔子は、娘を交通事...
ご無沙汰です。昨年は、個人的にいろんな事がありました。これまでは、「就労移行支援B型」の作業所にほぼ1年、通所していました。そのなかで、別の作業所に興味はないのかという話になり「そういえば、本屋に行った人がいたらしい」と聞いてみたら。なんとびっくり、私でも行ける施設がちゃんとあるのですよ!見学、お試しの期間を経て。昨年の12月から、正式にとある本屋の店員になりました。今のところ、主にしているのは、本の...